匿名さん 2023-08-11 23:24:56 |
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( 幾度か手元の盃を煽りながら、主人の返答を待つ。眼前に並ぶ酒瓶は一つ一つ大きく容量もあり、よもや全て飲めるなど予想外だったのか常から大きい琥珀をより一層大きく瞠り。表情から感心を示したのも束の間、逆に同じような質問を寄越されると手の動きを一度止めて考え込む素振りを見せ。今に至る迄の記憶を丁寧に辿っていくものの酒の影は微塵も存在せず、況て飲みたいという願望も恐らく抱いた事はなかった筈。矢張り自身に酒の経験はないだろうと確信すると、簡潔に事実を淡々と告げて。 )
多分、飲んだことないと思います。…まあ、業務に支障を来すかもしれないですし、飲みたいとも思いませんよ。
ほんっと真面目だな?
もう少し大人になったら、一緒に飲んでもらうから。覚悟しとけよ。
( 酒なんて彼女の歳の頃には既に飲み始めていた自分にとっては酒と無縁の生活など考えられないし、仕事に支障を来すなど考えたこともない。少し笑って、もう少し彼女が成長したら一緒に酒を飲み交わすことができるだろうか。想像を膨らませ愉しげに笑い、再び注がれた盃を口にする。庭の桜の花は昼間のようにはらはらと地面に落ちていく。ふと気が付くと相手の髪に桜の花びらが付いており、そっと桜の花びらがのっている場所へと触れようと手を伸ばして。)
……。
( 彼に返答した直後、身体中を流れる血の巡りが早くなった感覚を覚える。脈打つ拍動とは打って変わって、頭はぼんやりと霞掛かったように朧気で、次第にふわふわと浮いている様な愉快な気持ちへ。双眸は焦点が定まらず、まるで普段の彼女らしからぬ放心状態は誤飲した酒によるものだが、既に酔いが回った彼女には思考回路は停止しており。髪に付着した花弁に伸ばされた主人の掌には気付かず、ゆっくりと顔を其方に向ければ微かに桃色に染まった頬と、へらりと緩んだ笑顔を彼へ向けて。何時もは表情に乏しい彼女の初めて見せるその表情は、中性的に着飾った見目とは似つかず少女の顔そのもので。 )
……っ、玉翠。
( 桜の花びらに触れた瞬間此方を見て微笑む彼女の表情に時が止まった。少女らしい表情、これまで長い間一緒にいたが見たことがない。ふわふわと柔らかな、花が似合う、いや花よりも何よりも美しい。彼女がそうなっていることについて、もしやと彼女の飲んでいる飲み物の瓶を取ると、そこに書かれている表示を読む。案の定、自分が飲むように促したそれは果実酒で。やってしまったと思い、申し訳なさそうに彼女に謝り。まだそんなに飲んでいないだろうが、初めて酒を飲む彼女には未知の体験だろう。)
すまない、それ果実酒だった。
大丈夫か?
…?だいじょうぶですよ、りゅうけいさま。
( 謝罪を受けても酒によって働かない思考では何についての謝罪か理解出来る訳もなく。寧ろ気分は嬉しいや楽しいといった感情一色で、さして問題なさそうに返答する。若干舌足らずになった喋り方は酔い故だろう。にこにこ、と擬音が聞こえてきそうな程緩み切った頬を隠すこともせず、尾も嬉々として揺れ動き。顔を主人に向けた侭素直に心情を吐露し。 )
たのしいですね。
…とりあえずそれ以上飲むな。
( にこにこ、と笑うその表情は普段とは違う顔で。思わずドキッと高鳴る鼓動。戸惑いもあるが、酔うとこんな風になるのか、とか。こんな姿他の男の前で見せてはいけない、とか。存外女慣れしているつもりの自分でも頭の中はぐるぐると回り。すっと、彼女の手元にある盃に手を伸ばすとそれを自分の方へ。もうこれ以上飲ませてはいけないと、困った様子で。だとすれば、酒では無い飲み物は一体どれなのだろうかと、瓶を今一度見渡すがそれらしいものはない。唯一あるとすれば、瓶に入った水だ。)
あっ、…かえしてください。
( 唐突に手元にあった筈の盃を取られると、思わず一声上げる。主人の手中に収まってしまったそれに視線を落とせば、次第に顔は不機嫌そうなものへと変わり。頬を膨らませ上目で睨み付けてはいるものの、どうにも覇気のない表情。親切にも酒ではない飲み物を探してくれている彼の努力など目もくれず、再び自身の盃を取り戻そうと距離を詰めれば手短に催促を。 )
…、それ以上近づいたら口付けするぜ?
( いつになく距離が近い彼女。盃を取り返そうと必死なだけなのだろうが、こんなに近くに彼女を感じたことはあっただろうか。あえて自分からもぐっと距離を縮め相手の細い腰に手を回すと、悪戯な笑みを浮かべあえて彼女が諦めるような意地悪を。余裕そうな振りをしてみてはいるが、鼓動が速くなっているのが相手にバレないだろうかと少し緊張して。)
( 主人も主人で引く気がないらしい、彼の手中にある盃だけを見詰めていた双眸は唐突に告げられた牽制によって視線を変え。じとりと主を睨み続けた後、やや身体を後ろに反らせては距離をとる。いくら酒を摂取した状態であれど、従獣としての性はしっかりと奥底に根付いているのか、そのような行為を従獣である自身にさせてはならないと盃を取り返すのを諦め。とはいえ名残惜しいことには違いなく、口を尖らせぼそりと一言。 )
…いじわるです。
好きな女にいじわるしたくなるのは男のサガなんでね。
( 酒を飲んでも消えはしない染み付いた従獣としての行動に、さすがだなと思いつつも、盃を手に入れられないことへの不満そうな表情がとても可愛く。離れようとする身体に僅かに力を込め相手の腰をこちらに引き寄せると自分から顔を近付け。きっとこれ以上の行為は絶対に許して貰えないだろうなと思っているが。)
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