蠱惑

……ん、…八、神さん…？（ぐっすりと眠っている中、不意に優しい声が耳元を掠めれば重たい瞼を持ち上げ寝起きで少し掠れた声で相手の名前を呼ぶも、直ぐにハッと我に返り自分が眠ってしまったことに気付けば顔を青ざめさせては俯き顔を隠し）っぁ…、ご、ごめんなさい！僕、寝るつもりは…っ、

(こちらの声に目を覚まし顔を見るなり怯えたような顔をする相手を安心させるかのように頭を撫でると立ち上がり)…帰るぞ。

……っ、…。（伸びてくる相手の手を見て思わず殴られると次に来る痛みに目を瞑るも予想は大きく外れ、優しく頭を撫でられればきょとんと驚いたように目を丸くし。だが直ぐに我に返れば、急いで自分も立ち上がり相手に遅れを取らないよう歩き出し。）っ、は、はい。…あの、お仕事はもう終わったんですか…？

…ああ。(相手の質問に答えるとこちらの歩幅に合わせ遅れないよう付いてくる相手を横目でチラッと見てはコンビニに入り)…腹減ってんだろ。(酒を数本手に取り食べ物を選んでおり)

あ、いや、大丈夫です！僕のことは気にせず、八神さんの分だけ買って下さい…！（仕事終わりでお腹空いて居るのだろうかコンビニに入る相手に黙って着いていき。自分の分も買ってくれようとする相手に、ぶんぶんと首を横に振って）

(相手が断ると不機嫌そうに眉間にしわを寄せ自分の分だけ買うとコンビニを出て家に向かって歩き出し)

あ…（相手の表情が途端に不機嫌そうに歪んだのに気付けば目を逸らして鋭い相手の視線から逃げ。そして、何も言わず黙って会計を済ましてはコンビニを後にする相手に慌てて置いて行かれないように着いていき。暫くし相手の家と自分の家との別れ道までやってくれば遠慮がちに自分の家へ繋がる指を差しては、ぺこりと頭を下げて帰宅路に着こうとし。）えっと、それじゃあ、あの、僕の家こっちなので。えっと…、し、失礼します。

(タバコを取り出すと歩きながら吸い始め、分かれ道まで来ると帰ろうとする相手の腕を掴みこちらの家へ向かって歩き出し)今日は俺の家で寝ろよ。

えっ、あ、え？や、八神さんの家…？（失礼しますと挨拶をしてそのまま家へ帰ろうと一歩踏み出すも腕を掴まれそれは叶わず。突然過ぎる相手の行動に困惑した様子で自分の腕を引く相手を見つめれば、遠慮がちにも反乱し）ま、待って…っ、あ、あの、急にそんなこと言わられても、お母さんに聞かなきゃ…っ

(突然の事で困惑したのか進みの悪い相手を振り返り見ると立ち止まり、相手の言葉にこちらの家には行きたくないのかと勝手に解釈し)急にそんなこと言われても？…お前、最近反抗してくるようになったよな。帰りたいなら好きにしろよ。その代わり二度と俺に顔見せんなよ。(こう言うと相手は必ずこっちに来ると分かっており自信満々に上記を述べ、掴んでいた手を離し再び歩き出して)

っ、ぁ…、っや…、ま、まって、っ、…（相手の声がワントーン低くなった気がするのはきっと気の所為なんかじゃなくビクッと肩を揺らしては、相手の言葉にサーッと顔を青ざめさせながら離れていく相手の背中を瞳を揺らし見つめ。現在、自分を好きと言って見てくれるのは相手に見放されそうになれば慌てて相手の後を追いかけ。そして、相手の腕を掴んでは俯きながら身体を震わせて）も、反抗しない…っ。帰らない、八神さんの家行くから…っ、だから、嫌いにならないで…っ、

…生意気に反抗なんかしてねぇで、最初から俺の言う事聞けよ。(相手が慌てたように走ってきてこちらの腕を掴むと来てくれた事や嫌われたくないと涙目になりながら訴えてくる相手に満足し家に着き玄関先で相手の頬を掴むと噛み付くように口付けして)

…っ、ごめんなさい…。（最初から言うこと聞けと言う言葉に震えた小さな声でぽつり溢すようにもう一度謝罪すれば、今度こそ大人しく相手に腕を引かれるがまま相手の後ろを着いていき。そして相手の家に着き扉を開けて中に入った瞬間、乱暴に頬を掴まれ強引に相手の方へと顔を向けられそのまま口付けられればビクリっと大きく身体を震わせるも、先程反抗しないという言葉を律儀に守り、小さく身体を震わせながらも相手からキスを受け入れ。）っ、ぁ、…っん、…！

(身体を震わせながらも大人しくこちらの口付けを受け入れる相手を見ては頭を撫で、口付けを終えるとリビングに行きソファーに座ると先程買った酒を出しては飲み始めて)

っ、…は、（キスが終わり離れていく相手に安心したように身体から力を抜き。離れていくその背中を眺めながら恥ずかしげに俯き前髪を弄り、ソファーに腰を下ろし晩酌する相手にどうしたらいいか分からずその場から見つめ）

(酒を飲みながらも相手の事が気になり目線を向けるとその場に立ったままで、どうしたらいいか分からないとでも言うような顔をしている相手に隣に来るよう声を掛けて)…腹減ってねぇの？

し、失礼します。（どうしようと相手を眺めていると相手と目が合い咄嗟に目を逸らすも、こっちに来るよう促されればゆっくりと歩き出すとそのまま相手の側まで近寄ると遠慮がちに隣に腰を下ろし。こくんと頷くと自分のことは気にしないで下さいと俯きながら何とか伝えては緊張した様子で身を固くし。）
…あ、はい。平気です。その、あんまり普段から食べないから

(少し距離を開けて遠慮がちに座る相手に食べるよう声を掛けるが、いらないと言われると相手の二の腕辺りを掴んで)細いもんな、お前。

えっ、あ…、そ、そうですか、ね？確かに全然筋肉ないし、貧相ですよね。すみません、未祖母らしくて…。（突然二の腕辺りを掴まれれば驚き一瞬固まるも直ぐに恥ずかしそうに俯くと、目を伏せたまま自分とは違い身長も高く綺麗に引き締まった相手の体を見ては思ったままを口にし）…八神さんはすごいですよね。筋肉もあるし、身体も高くて性格も僕なんかとちがって男らしくて。…カッコいいです。

(相手にかっこいいと言われ嫌な気はせず気分良く酒を口にして、掴んだ腕に力を入れるとこちらに引き寄せて)俺と違ってお前は可愛いな。