匿名さん 2023-04-29 15:14:24 |
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っ、ひ、…
( ジン、と傷口にしみた消毒液にびくりと体を硬直させて小さな悲鳴を上げてはぎゅうと蘇芳色の瞳を瞑って。包丁の切れ味が良かったせいか、切った時の痛みより今の方が余程痛く感じてしまう。椿は生理的に出てきた涙で瞳に膜を張りながら、侍女でありながら主人に手当をさせてしまっている事実にだんだんと申し訳が立たなくなってきてしまい。「 ありがとう、ございます…。 」とよわよわ彼にお礼を言えば、怪我をし慣れていない自分とは対照的に手馴れた手つきの彼に慣れてるのかしら、なんてぼうっと考えて。遊郭では下手をしたら折檻というのが日常だったが、マァ当然のようにその後の手当に必要な消毒液だったり包帯などは支給されるはずもなく体に折檻の痕の残った遊女たちも何人書いた記憶がある。ここはそういったものは使っていい場所なんだ、と改めて再認識しては自分の手当を真剣な顔で進めてくれている彼を見つめて。 )
( 染みる消毒液に耐えきれないのかピクピクと跳ねる指を、処置がしやすいように優しく包み込むように抑えて、消毒の後は絆創膏をぺたりと貼れば「 よし。 」とひとまず応急処置は終えることができたようで。痛みで張り詰めていた気が緩んでいく相手がへなへなとお礼を述べると「 どういたしまして。これから気をつけるように。 」と、食事を用意してくれるのは嬉しいのだが、そのせいで椿のしなやかな指が傷付くのは見たくないと、相手の身を心配するがそのことは口にせずにいて。手当も終わったことでさぁ食事だと救急箱を直せば「 さぁ、ご飯にしよう。 」気を取り直すように振り返り、未だに湯気を立ち上らせる暖かな朝食をいただき、外出の用意をしなくては。 )
はい、昨日と献立は同じになってしまいましたが、召し上がれ。
( 綺麗に、丁寧に絆創膏の巻かれた指をきゅ、と包むようにしては彼の言葉にふわりと微笑んで。ぱたぱたと炊飯器の方に駆け寄り彼の分と自分の分のご飯をよそって、それぞれ完成した料理たちをテーブルに並べていけば彩りの良い食卓が完成する。卵焼きは少し形崩れをしてしまったが、マァ昨日初めて1人で作ったものにしてはしっかりと形が作られており、味噌汁はアクシデントこそあったものの味としては昨日と遜色ないものができたのではないかと割と自信作で。「 おみそ汁の具はおとうふとねぎです。あとね、お魚は上手に焼けました。……卵焼きは、少し難しかったんですけれど、 」と1つずつ自分一人で何とか作った料理たちを説明していけば、どうかしらと彼の顔色を伺うようにそっと上目遣いで彼を見つめて。 )
ふむ。
( 椅子に付けば、食卓に並べられたのは昨日の朝食と同じ献立。たった一度とはいえ、変に冒険せずに作り慣れたものを作った相手の堅実さに心の中で敬意を表して。上記のように品定めをするように一度並べられた皿全てを眺めて、気になる出来のものはあるが肝心なのは味だと思えば「 いただきます。 」と静かに手を合わせて。まずは味噌汁を一口。「 ふぅ。 」と流れ込んできた熱を吐き出すように一息つけば次は卵焼きを、その次は焼き魚を。そうやって並んだ皿に一通り手をつければ「 うん、美味い。 」穏やかに笑みを浮かべながらそう呟いて。昨日の朝食に比べれば拙いところはあるものの、椿が切り傷を負ってまで作ってくれた想いが染み込んでくるような味と暖かさで、それからも次々に相手の作ってくれた朝食を食べすすめて。 )
─── …よかった。
( 〝美味い〟と、彼の優しいテノールの呟きが鼓膜を揺らせば、まるで春の花がじんわりと咲くようにパッと微笑んで。昨日彼と作ったばかりとはいえ、人生で初めてのひとり料理。形が崩れたり指を切ったりと失敗こそあったもののこうしていちばん美味しいと思って欲しい人にそう言って貰えたのが嬉しくて、椿はなにだかふわふわと宙に浮かぶような気持ちになって。これで一安心だと自分も箸を取れば、彼に続くように少しずつ食を進めて。この調子ならばきっとほかのお料理もひとりで作れるようになるかもしれないと、御屋敷の中に料理の本がないか今度探してみようと思案してはもうすっかり指先の痛みや朝の妙な怠さのことは忘れてにこにことご機嫌そうで。「 早くほかのお料理も作れるようになりますね 」と、寝起きのぽやぽやとした可愛らしさはすっかりなりを潜めてしまった傾国の美丈夫にふわりと微笑みかけては、こんな風に穏やかな朝が毎日来たらいいのになあとぼんやり思って。 )
向上心はいいことだ。けど無理はしないように。
( 焼き魚の塩味と脂を味噌汁で流し込んでいると、花のような笑顔をパッと咲かせてこれから料理のバリエーションを増やすという相手に、上記のようにその勤勉な姿勢は敬意を表するが今朝のように切り傷を増やしてまではしてほしくないという、椿の白魚のような手に傷がつくのは我慢ならんという半ばわがままのようなものも混ざっていて。そうして二人で穏やかな朝食の時間を終えれば「 ご馳走様。 」と優雅な所作で手を合わせて挨拶をして。「 片付け、俺がやるよ。 」と、寝坊して相手に朝食を作ってもらった身として、これくらいはやらねばと思えば相手と自分の分の食器を流しに盛っていって洗い始めて。 )
……ご馳走様でした。
( 自分で作った料理を食べるのも悪くない。……とは言っても、こうして料理の元となる材料は全て主人が労働して稼いだものなのだから無駄遣いをしないようにしなければと考えながら自分も両手を合わせて。と、片付けを率先して担当してくれようとする彼に思わず目を丸くしてしまえば慌てて彼の後をぱたぱたと追って「 そ、そんな!家事は私のお仕事ですから…! 」と止めようとするも既に洗い始めてしまった彼を見て〝気を遣わせてしまった〟と眉を下げてはその隣にちょこん、とちまく立っては「 お皿拭きは私がやります。…ありがとうございます、 」と、本当はちょっぴり傷口に水が染みたりするのが怖かったので彼の申し出は願ってもいないことだったのかふにゃりと笑って。それに2人でやった方が直ぐに終わって早く出かけられるし、と彼には言わずに自分の中だけで呟いては布巾を持ってこくん、と頷き。 )
手、切ってるだろ。絆創膏が剥がれたらダメなんだからこれくらいやるよ。
( 皿を持てばぱたぱたと慌てる相手に、そんな状態のおなごに水仕事なんてさせられないと頑なに譲らずに己がやろうとして。一人暮らしの賜物か、手慣れた手つきで皿を洗っていると、水拭きだけでもと食い下がり、隣に立ちはだかる相手に、働き屋の癖が抜け切っていないのだなとやれやれと小さく息を吐き、まぁ水を扱わないそれくらいならとこちらも折れれば「 ん、じゃあ頼むよ。 」と泡をゆすいだ皿を相手に渡していき。作業する人間が増えれば仕事が進む速度も比例して早くなり、思いの外早く片付けが終われば「 よし、じゃあ出かける準備をしようか。 」と待ちかねた時間に備えようと。「 そうだな…1時間後くらいに出発するから、それまでに支度をすること。いいな? 」と時間も決めれば己もその準備をするために私室へと向かって。 )
お任せくださいな!
( 彼から直々に頼まれればぱあっと表情を輝かせてこくんと頷き、次々に渡される食器たちを丁寧に布巾で拭いていき。随分と手際の良い彼をぽけーっと眺めてはお独り暮らしが長いのかしら…と邪推しつつも皿を拭く手は止まることなく動き、自分一人で行う時よりも余程早く作業が終わり。1時間後に出発だと告げられれば「 畏まりました。お洒落して参りますね。 」と人懐こい笑顔を浮かべながら小さくガッツポーズをして見せて。彼と同じく私室へと向かえば、もう着る服は既に決めていたのかクローゼットから直ぐに白いワンピースを取り出して。ふんわりとしたパフスリーブに細腰をキュッと強調させるような切り返し、ひらりと広がる全円スカートは何枚ものレースが重なっているようなチュール素材で襟元は可愛らしい丸襟となっている可愛らしいこのワンピースはこの屋敷に来た日に彼が選んでくれたものである。靴は可愛らしいパールが足首を彩る白のパンプスを履いて、髪は美しく波打った黒髪を惜しげも無く下ろして顔周りを耳にかければ、頭に白いレースの中に金の小花刺繍が散りばめられたカチューシャをつけてコーディネートは完成。白粉やら頬紅を軽くはたいて、大人過ぎず子供過ぎないさくらんぼ色の紅を引いて化粧も完成。大きな姿見でなんどもくるくると回ってどこもおかしな所がないと確認すれば、準備が出来たと玄関の方へと向かって。 )
( ふんすと鼻息を荒くしそうなくらいに気合いを入れて、愛い笑顔を浮かべながらお洒落をしてくると宣言する相手に、おハナさんがとびきりの服を選んでくれたのだからそれはそれは大層な美女が出来上がるのだろうなと、その気合いの入れように思わず笑みがこぼれてしまえば期待が高まって。さて、自分の方はというと、外出なのだから仕事行きよりもカジュアルなものをと黒のスラックスに爽やかな水色のカッターシャツを身につけ、上から黒のジャケットを羽織れば、せっかくなのだからと普段はやらない髪のセットをして、オールバックに整えれば額にかかっていた髪が上げられたためか精悍さに磨きがかかり。仕上げにいつものように花の香水を振って準備完了といったところで、集合場所の玄関へと向かえばそこには天女と見紛うほどの椿がいて。てっきりおハナ特選の服を着るかと思っていたのに、こちらが選んだ可憐な白ワンピースを身に纏う相手を見ればなんだかむず痒くも嬉しく感じ。顔に白粉と頬紅がはたかれれば、もともとが化粧いらずの美貌だというのに更に磨きがかかっていて、これでは遊郭に通う男どもを手玉にとることなど赤子の手をひねるようなものだろう。つくづく、相手の美貌に畏れを感じればあまりの美しさに一瞬言葉を忘れていたのかハッと我にかえり「 綺麗だ…。綺麗だよ。椿。 」と感嘆の息を漏らすように相手を褒め称えて。 )
( / 服装の表現がお粗末で申し訳ありません…。椿様の表現には驚かされてばかりです。
外出の流れなどいかがいたしましょうか?ひとまずなんでも揃う百貨店のようなものに行くよう考えておりますが、それ以外にどこか行かせますか? )
、─── っ、…。
( 物語の中で少女が王子様に恋をするときに花が散るようなよく有るようなことだが、成程これは。いつも下ろした前髪をオールバックに整えれば切れ長の月のような彼の黒瑪瑙がよりハッキリと強調されて彼の視線が射抜く全てを恋に落としていくような感覚にすら陥ってしまうほどの美しさ、それからふわりと香る花の香水も合わされば桃源郷に自分が迷い込んでしまったのかと思ってしまうような感覚に陥り椿の呼吸と周りの時間がはた、と止まってしまったかのようで。此方を綺麗だと評する彼の言葉にすら桃のような優しい甘さを称えているようで、椿は少し見惚れたあとによわよわと目尻を下げては「 直政様も、…とても素敵です…。 」と恥じらう乙女のごたる桃色の頬を隠すようにもじもじと足元に視線をやれば、嗚呼どうしようこのままじゃ今日1日彼を見られないわと自身の天の川のような黒髪を肩からさらりと落としながらきゅ、と胸元で両手を握り。 )
( / お褒めいただきありがとうございます…!!
とんでもないです、男性のお洋服の構造や説明がとても難しい中此方でも鮮明に脳裏に浮かぶような文章とても助かっております…!
そうですね…!相当色んなお店が集まっているでしょうし、椿が百貨店に行ったことないでしょうから、本日はひとまず百貨店だけでいいんじゃないかなぁと思います…! )
( お互いのことを褒め称えれば、2人してまるで付き合いたての番のようによわよわてれてれと甘ったるい空気を醸し出し、そのむず痒さにこちらも頬を赤らめながら、相手の生娘のような反応と言葉を受け取って。こちらははたちを超えたというのに、まるで思春期同士の交際のような椿との時間に、調子を狂わされてばかりだと自嘲気味に心の中で思えば、相手が水揚げを済ませてしまったのならいったいどれだけの男が群がったのだろうかと鳥肌を立たせて。と、このまま2人でもじもじしていたのでは一向に外出に出ることができないため「 んんっ 」と咳払いをして気を取り直せば「 よし、行こうか。 」と声をかけながらいつものように、相手に手を差し出し、その手に相手のちいちゃな手が乗せられればその手を引いて屋敷を出て。 )
( / いえいえ…!こちらはファッションに疎くて調べながら手探りでやっておりますので変なところがないか不安です。
了解しました!以前言っていた水族館や遊園地などはまた今度ですね! )
─── …はい、
( 彼の暖かくて大きな手に包まれれば、本当に絵本の中の王子が姫にするようにいつもの様にエスコートをされてふにゃふにゃと微笑んで。屋敷の外に出ると今日も気持ちの良い日本晴れで、花街にいた頃にはこうして健康的にお天道様の下を歩き回るなんて想像もできずになんだかくすぐったい様なまだ慣れていないそわそわとした気持ちが胸を踊らせて。そう言えば、とふと彼の方へ視線を向けては「 今日はどちらに行かれるんですか、? 」と、良いところとは言われていたが具体的な行き先を聞いていなかったと思い出したのかふわりとした黒髪を揺らしながら緩く首を傾げて。舞に必要な道具などどこに売っているのかしらと、常に身の回りに道具があるのが当然の生活を行っていた椿には想像がつかずただただ不思議そうに長いまつ毛に縁どられた蘇芳をぱちぱちと瞬きさせて。 )
( / 私も男性の服装については全く疎い側ですのでどうぞお気軽にやっていっていただければと…!!
そうですね…!以前仰っていた看病のくだりも今回でやってしまおうかなと思っているので、また次回に回せればと……!)
( 外に出れば穏やかだった朝の陽射しが燦々と輝く日光になっていて、この様子だとジャケットは要らなかっただろうかと思いながら、相手の手を引いていて。そうして車の中までエスコートし、自分も車に乗っていざ!と車を走らせると、傍の相手がまるで遠足を翌日に控えた小学生のように期待を胸にしながら問いかけてくれば「 そうだな…。 」と、なんでもそろう百貨店に行くことは計画していても、相手に一口に百貨店と言っても想像が出来ないだろうからとどう説明したものかと考え込み。しばらく考え込んでもうまく説明できる言葉が見当たらず、諦めて「 なんでも揃うところ。まぁ、行ってみてのお楽しみだな。 」と、簡潔な説明だけをしては相手の期待を煽るようにはぐらかし、「 おハナさんの店より大きい、とだけ言っておこうかな。 」と、相手が想像するところを見るのも面白そうかと思ってヒントだけ出して。 )
( / なるほど!帰ってきて疲れが溜まって…という感じですね! )
おハナさんのお店より……大きい……。
( 彼の言葉にぽつりと不思議そうに瞳を丸くしたものの、今まで自分の中での大きな建物と言えば郭しか思い浮かばなかった自分にとっておハナの店でさえお城と見まごうほどに大きかったというのに、それ以上とは。むむむ。と端麗な眉を寄せながら真剣に悩むものの、やはり外に出たことのない自分には想像がつかず。「 直政さまはよく行かれるんですか、? 」と、ふと隣の彼を見上げてはその場所に彼はよく行くのかと。もしかして舞に必要な道具だけじゃなくてもっとたくさんの他の品物が売ってるのかもしれないわ、と名探偵ぶって正解の分からぬ問題を当てようと世間知らずながらも自分の中でだんだんと情報を整理していって。……マァ今のところおハナの店より大きいことと舞に必要な道具が売っているということしか分からないのだが。 )
( / そのような形にしていこうかなと思います…!!!
よろしくお願いします…!! )
そうだな…。
( 運転している最中、隣からそこを贔屓しているのかと問いかけられればフロントガラスから目を離すことなくなにやら考え込むように遠くを見つめて。確かに贔屓にしてはいるものの、よく行くかと問われるとそうでもない。ちょうど赤信号で止まればどう言ったものかと悩み果て、頭の中に浮かんだのは「 特別な時に行ったりするな。 」と、なにか大事な時に赴くことが多いと、更に相手の想像力を煽るような台詞を吐いては赤から青に変わった信号を確認すれば発車させて。そうして運転すること数十分。「 よし、着いた。 」と呟いた時に見えるのは五、六階建てはあろうかという高さの百貨店で。おハナの店のように外観は豪奢とは言わないが、それでも見るからに清潔で上等な外観で、何より、賑やかささえ伝わってくるような大きさで車から降りれば「 さぁ、行こう。 」と助手席の相手に手を伸ばして。 )
( / 了解しました!こちらこそよろしくお願いします! / 蹴可 )
とくべつなとき……、
( ふむ、と彼の言葉を復唱しながらそれぞれ貰ったヒントたちで自分の中の知りうる限りの建物を想像するも、矢張りどのヒントをとっても遊郭しか出てこず首を捻り。だって女を買うのはお金がかかるから特別な時だけって姐さんのお客さんが言ってたし。そんなこんなと思考の海にどっぷりと使っている間に目的地に到着したらしく、彼の言葉でふっと意識を浮上させては目の前にドンと鎮座する大きく上等な建物にぱちぱちと何度も瞬きをして。入らなくてもこの店には上等な人間しか入ってはならないというような謎の威圧感を感じるし、確かにこれは特別な時でなければ足を踏み入れてはいけないのかもしない、と少々怖気付いては、いつものように優しく差し出された彼の手におずおずと自分の手を重ねて車から出ると、「 あの、……私、ほんとに、ここに入っていいんでしょうか… 」と不安に揺れた蘇芳で彼を見上げてはどうしよう、と言いたげに問いかけて。 )
( 相手がこちらの手を取る時はその小さな手できゅ、と本当に力を入れているのかわからないくらいの力量で握り返してくるのだが、今回はそれに拍車をかけているような、おずおずといった感じで手を取ってくれば、いつもと違う様子に首を傾げて。不安に惑う蘇芳をこちらに向けながら、そのおかしな様子の原因を問いかけてくると「 なんだ、そんなこと気にしてたのか。 」と、身請け初日であられもない姿で夜這いに来たり、約束を破った主人に確たる態度で対応したくせにこんなことでおろおろしだす相手におかしなものだと思わず笑みをこぼしながらそう言って。まぁ初めての場所にはそれなりの不安というものがあるのだろう。その不安を解消してあげるように繋いだ手を優しく力を込めて握り「 大丈夫。ほら、普通の人だって入っていってるじゃないか。 」と、百貨店の入り口を指差せば、さすがに整った服装ではあるが、今の椿の服装に比べればいくらかグレードが下といったもので。 )
だから大丈夫。俺と、おハナさんの服を信じろ。
直政様と、おハナさんのお洋服を…。
─── … はい!
( 彼が指した通り、あの大きな建物には少し金持ちの一般人…遊郭で言うのであれば散茶の女、頑張って格子の女を買えるであろう服装の人々や家族も入っているのを見かければ先程よりも焦った心は少しだけ落ち着いて。それに引き続き彼から告げられた言葉にぱちり、と瞬きをすれば彼の夜空のような黒瑪瑙とそれから自身の着ているふわりと広がる可愛らしい白のワンピースと、それから艶々と美しく光るヒールを見て。するとなぜだか先程まで自分の胸中を閉めていた不安はどこへやら、だんだんとその不安の芽たちはそっとまた地中に眠っていってしまい。優しく自身の手を握ってくれる彼の手にまた応えるようにキュ、と握り返してはいつものような花のような笑顔をぱっと浮かべてはこくりと浮かべて。自分には魔法のかかったお洋服と魔法使いさんが着いているんだ、と実感すればなにだかとても勇気が湧いてくるようで、これもまた彼の魔法なのだなとふと思えばやわやわと目尻を下げて微笑んで。 )
よし。
( こちらの励ましになんの疑いもすることなく、可愛らしい笑顔を浮かべながら元気よく返事をしてくる相手に、こちらもつられて笑うように上記のように呟いて。単純というか素直というか、己の言葉一つで簡単に御せてしまうと、昨日のような冷たい態度がまるで嘘のように子供だなと苦笑してしまいながら、相手の手を引けばいよいよ百貨店の中に入っていき。そうして視界に広がるのは清潔な内装に、さまざまな店が立ち並ぶ店内。陶器に顔が写りそうなくらいに輝く食器が並ぶ店に、趣味の良い革のバックが並ぶ店、これまた煌びやかに輝くアクセサリーが並ぶ店と見るからに高級志向の店が軒を連ねており、しかし己はそんなことも意に介さず「 楽器は売ってあるのかな…。 」と呑気に案内板を眺めていて。 )
( / 扇、三味線はともかく他にはどんな店を回らせましょうか? )
─── ……すごい……。
( 見渡す限りにずらりと並ぶ色様々な店に蘇芳の瞳を何度も瞬きさせては感嘆の声をぽつりと零して。どの店の店員も皆おしとやかな百合の花のようで、美しい女たちがものを売っているということでは遊郭と似たようなものなのに店員の女たちは皆健康的にふっくらとしており血色も良く、なにだかとんでもない差を感じてしまい。だがやはりどの店も高級志向で、とてもではないが一般庶民ではホイホイと簡単に財布を開けるような場所ではないのは椿の目にも分かる。そんなことを気にせず楽器店を探す素振りを見せる彼にヒュ、と血の気が引いては「 ほ、本当に買うおつもりなんですか… 」ところころとした鈴の声を震わせながら恐る恐る確認して。だってこういう所の楽器ってことはあれでしょう、全部新品で高級な素材でできてるものしか売っていないもの。扇なんて花魁に持たせるようなものしか売っていないわ。と語らずともその瞳はどうしようどうしようと焦っていることがわかり。……実を言えば確かに芸妓としてはそんなにお高い楽器や扇を触れるのはとっても心が踊るのだが、本当に一刻だけでいいのだ。買わずとも、その、貸し出しとかで。そんな心は恐らく彼に伝わることなく、椿はただただこのひたすらに物を買い与えられている現実の打開策を考えて。 )
それが今日の目的だからな。それに、昨日、約束を破ってしまったし。
( ふーむ、と案内板を眺めていると、がやがやとした雑踏の喧騒の中でもよく聞き取れる鈴のような声が、どこかおろおろとした声で問いかけられると、まだ気にしているのかと、仕方ないなと苦笑しながら上記のように述べて。今日はそれらを買うためにここに来たのであって、その目的を果たさなければいったい何をしにここに来たのだろうか。いやまぁこの百貨店の中には様々な店があるのだからそれ以外にもやれることはあるのだが、あくまで今日の1番の目的はそれであるし、昨日、相手との約束を破ってしまった罪滅ぼしだとそれらしいことを言い張って。しばらく案内板とのにらめっこをしたあと、『 楽器店 』なる文字を見つければ「 ほら、行こう! 」と相手が心の内で何を思っているかなど知る由もなく、その手を引いて楽器店へと歩を進めて。 )
そんな、謝っていただきましたしそれはもう─── わッ、
( 自分はもう気にしていないと伝えようとするが早いか、彼の手に優しく引かれれば驚いたような声を上げつつも大人しく彼について行き。イヤ、言ってしまえば確かに昨晩は自分も怒りすぎてしまった自覚はとてもあるのだが。それはそれとしてその事を引き合いに出されたら自分も何も言えなくなってしまうのか椿はエエイなんとでもなれと言いたげにぴかぴか美しい様々な新品の楽器の並ぶ高級そうな楽器店へと歩みを進めて。楽器店にたどり着けば、それはもう椿からしたら宝の山のような場所で2つの蘇芳をきらきらと輝かせながら言葉もなく店内をジッと見つめて。琴や三味線に始まり、初めて見る西洋の楽器まで。椿はどきどきと興奮で高鳴る心臓すらも気にならぬ様子で無意識に繋いだ彼の手をキュ…と握って。 )
( / 返信したつもりが出来ていませんでしたすみません…!!
そうですね…!お洋服はもう揃えましたし、お化粧品…?あとは直政様の趣味のものなどがあれば椿は喜んでその買い物について行くかと…!! )
( 目的の楽器店へと辿り着けばさすが専門店というべきか、様々な楽器や楽譜などがずらりと並んでいて。黄金に輝くトロンボーンやサックスといった吹奏楽器に琴やハープなど、おそらくそこに目的のブツがあるだろう弦楽器。そして店の中央には堂々と鎮座するグランドピアノと、普段楽器を嗜まない己でも、その異世界感になんだか子供のようにわくわくしてくると、隣の相手もこちらと同じ気持ちのようで握られる手に力が加われば「 行こうか。 」とこちらからも優しく握り返しながら手を引いて店の中に入り。足が向いたのは三味線が置いてあるだろう弦楽器のコーナー…のはずなのだが、その道中で目を奪われる楽器たちにたびたび足を止めながら「 ほー 」や「 ふ~ん 」と感心するような息をこぼして。そうやって店内で歩みを進めていけば少々時間はかかったがようやく弦楽器のコーナーに辿り着き、その中でも三味線が並ぶ列に来れば「 えーっと…一番良いものは…。 」とまるでそれが当たり前のことのようにこの並びの中で一番なものをと探し始めて「 椿も、気になったのがあったら教えてくれ。 」 と有識者の相手の判断も参考にしようとして。 )
( / 大丈夫ですよ!
化粧品もいいですね!個人的にはアクセサリー関連で買い足したいなというのと、太夫が着るような、うなじやら肩周りやらがはだけている花魁衣装を椿様に買うのはいかがかな、と。そういうときにしか着る場面は無いかもしれませんが雰囲気が出るかと思いまして。 )
─── ……すてき、
( 初めておハナの店に行った時と同様…下手すれば其れよりもずうっときらきらと瞳を輝かせ、様々な楽器に釘付けになるようにその蘇芳の瞳は語らずとも〝楽しい〟と書いてあり。店内にあるどれもが美しくシッカリとした作りの三味線ばかりで、張り詰めた弦は新しく練習中に切れてしまうだなんてことは絶対に無さそうな頼もしい様子に椿の心は奪われてばかりで。気になるもの、と言われてちらりと視線をさ迷わせては、値段よりも先に三味線の方に目が言っているにもかかわらず鍛え上げられた審美眼はやはり高級なものばかりを追ってしまい。だがしかしさすが楽器、1番値段の低いものにもかかわらず値の張るそれらは到底椿からオネダリできるような代物ではなく。それでもやはり芸妓心はどうしてもその三味線たちを弾きたいとうずうず疼いてしまい、「 あの、…買う買わないは、別にして。試し弾きをさせていただいてもよろしいでしょうか。 」とおずおずと申してみて。だってこんなに高級な楽器、一生に一度触れるか触れないかかどうかだもの。 )
( / 花魁衣装もアクセサリーもすてきです…!!!!
せっかく花街育ちですし、たしかにそういった装いで設定を活用していけて良いとおもいます…!!! )
あぁ、それもそうだな。
( 三味線の傍にある値札には楽器として、それも高級志向なものでかなりの値が張り、結構するのだなと感心するが己の金銭感覚ではまだ動揺するほどではなくて。はて、どれがいいのだろうかと並ぶ三味線を眺めるが初心者がどれがいいものかとわかるはずもなく、ただうんうんと困ったように唸っており、そんな折に傍の相手が控えめにとにかく試し弾きを、と請うてくると、有識者が触らなくてはわからないというのに確かに眺めているばかりじゃダメだろうと気付かされて。「 すいません。 」と店内の従業員に声をかければ立派にそれでも上品にひげを蓄えた紳士がこちらに気づいて歩み寄ってきて。それから三味線を椿に試し弾きさせて欲しい旨を説明すれば快く快諾してくれて、「 いいってさ。どれにする? 」さぁ早速と言わんばかりに食い気味で問い掛けて。 )
( / 許可していただき、ありがとうございます!それではそのように進めさせていただきますね! )
……。
直政さま、少し後ろを向いていてくださいまし。
( 彼の言葉に少し迷ったように視線をさ迷わせたものの、ソリャアもういちばん高いものを弾いてみたいのが芸妓の性で。だがしかしそれを選んだらきっと彼はそれを買ってしまうので、いっそのこと値段を見せずに弾けば良いのだ。自分は試し弾きで素晴らしい三味線に触れられるし、彼は自分の耳に1番馴染む音を選ぶことが出来る。高いからと言って其れが万人に受け入れられるとは限らないのだ。椿はちいちゃな手で彼の広い背中をそっと押せば自分に背を向けるようにくるりと。そうして漸く店員の紳士に「 この子と、……ええと。この子。それからこの子をお願いします。直政様も、もう此方を向いて構いませんよ。 」最も高級な三味線と、それから自分の審美眼で選択した三味線を2つほど。まずは3つの中からいちばん安価な……とは言っても一般的に見たらとても高価な値段だし遊郭で実際に弾いていたものよりも余程値の張るものなのだが、其れをそっと手に取ればあれだけいつもの様に触っていた三味線に触れるのがなにだかとても久しぶりなような気がして椿の頬は緩んでしまい。紳士の用意してくれた椅子にそっと腰をかければ撥の感触を確かめるかのように何とか握った後にビィン、……と一音。鼓膜を震わすその音は母親の声よりもよく聞いた音で。そのまま何度か弦を弾いた後に遊郭でよく演奏した曲の一節を弾けば実に癖の無い良い音色だと満足気で。 )
( / ありがとうございます…!!
是非そのように進めていただければ幸いです…!!/蹴り可 )
( / 一旦本体会話だけ失礼します!三味線に関してですが、椿様の方からなにもなければ偶然にも一番高価なものを聞き当てることにしようかと思っておりますがいかがでしょうか?なにか考えがあるなら何なりとお申し付けください! )
…?いいけど…。
( 椿に加えて店員が混ざれば有識者が2人に増え、これならば素人の自分が出る幕はないだろうと、2人に全面の信頼を置いて見守ろうとするが、突然椿から後ろを向けと言われると、首を傾げながらその意図が読めずにいるも相手の小さな手のなすがままに後ろを向かされて。振り向く許可が出ればどうやら後ろを向いている間に相手は三本の三味線を選んでいたようで、しかし己が後ろを向く必要があったのだろうかとあらためて首を捻って。相手が椅子に座り、撥を握りいざ、と弦を一音弾くと静かな店内に春風のような優しい音が強くしなやかに広がっていき。それから椿は興が乗ったのかある唄の一節を弾けば「 おぉ…。 」と三味線の音色もそうだが弾き手の腕前はもっとすごいものだと感心して。そうして二本目の三味線の音も聞けば次は一本目のものとは違い、強く吹き抜けるような力強さの音で、同じ楽器といえどここまで性格が違うものなのだなと唸って。そうして最後の三味線の番。さてこれはどんなものかと期待していたところで、一音目からこれまでの二つのものとは一線を画すものだとハッキリわかるほど心に訴えかけてくるような音で。一つ目の三味線の優しさと、二つ目の三味線の力強さを兼ね備え、そのいいとこ取りをした音は長くしなやかに響いていく…かと思いきや、その余韻はなんの未練もなく消えていくように無駄な音は一切ない。椿の弾く一節を聴き終えるとあまりの音に感動すら覚えるほどで鳥肌さえ立ち、一瞬我を忘れかけるが意識を取り戻せば「 すごかったな。 」と三味線もそうだがその持ち味をここまで引き出した相手を賞賛すれば「 で、その三つが欲しいのか? 」と、椿が欲しいのなら全て買ってあげようと突飛なことを口にして。 )
( / 了解いたしました!そのように進めさせていただきます!上でごちゃごちゃそれっぽく書いておりますが当方、三味線には何の知識もありませんなでご了承ください…。 )
みっ、……ち、違います!
( 最後の三味線を弾き終えれば、ふぅと一息細く息を吐く。大好きなものにこうして触れられる時間というのは、一瞬のようにも永遠のようにも感じられて椿の中の胸の高まりは抑えられずにどくどくと高鳴る心臓はそのままに撥をぎゅ、と握りしめいた頃。唐突に問われた彼からの質問にぎょっと目を丸くして別の意味で心臓がドキドキとしてしまえば慌てて否定し。なんて金銭感覚をしているんだ、下手をしなくても一般企業の人の暫くの月収くらいにはなるのに!と椿はぶんぶん首を振れば、「 か、買うかどうかは別だと言いましたのに…!それに直政様がお気に召した音の一挺だけで十分ですから…!! 」と、自分がしっかりお金の管理をしなければ…!と斜め上の決意をして。自分は値段など気にしなくても三味線を弾くことが出来ればそれで良いのだが、恐らく小さい頃から一流を浴びてきたであろう彼の耳に合う三味線でなければならないというのは芸妓としての維持のようなもので。ふ、と椿は最後に弾いた三味線をそっと撫でながら「 これ。三絃師の袴田先生が作られたものですね。…1度だけ先生の前で弾かせていただいたことがございます。棹の感触と音の響き方が同じな気がします。 」と確認をするようにふわりと花のような微笑みを零しては、もう数年も前のことになるが遊郭にて三味線職人である男の前でその男の作った三味線を弾かせてもらったことがあると昔のことを思い出したらしく。 )
む、そうか…なら、俺は今のがよかったと思うよ。
( 相手を驚かせる発言や金銭感覚の具合で一見浮世離れしているようにも思えるが、その実無駄遣いは一切しないタチで、だからこそ懐は潤沢にあり己の財力なら三味線の三つくらいならなんの問題もないからと先ほどのような発言をして。ぶんぶんと首を振りながら一挺で十分だと、まるで釘を刺すような発言に遠慮しなくていいのに、と言いたげだが椿が言うならばと引き下がり、そして己が一番良かった音がと言われれば今椿が持っているものが一番印象的だったことを告げて。相手のしなやかな指先がつ、ーと三味線の棹を滑り、昔のことを懐かしむような、そんな笑みを浮かべると、椿の口ぶりからするとどうやらその界隈では有名な人物の作品のようで。『 えぇ、仰る通り、袴田先生の作品でございます。 』と店員が説明をし始め、『 先生曰く、最高傑作でこれ以上のものは作れないとまで言われたほど。名を「余韻嫋嫋」。大名弦でございます。 』と、素人からしたらこの会話ではとにかくすごい!ということしかわからず、まぁ椿も店員も太鼓判を押すのなら間違いのだろうと思えば「 これにするか? 」と三味線を夢中に眺める相手の顔を横から覗き込みながら問いかけて。 )
( / 調べるまでやるのがすごいです…!こちらも見習わなければ。 )
、…………ほんとうに、良いのですか?
( 尊敬する三味線職人の手懸けた最高傑作。これを自分のものに出来たのであればどれだけ良いだろうか。だがしかし名の知れた三絃師であるさるお方の最高傑作となれば値段も花魁と一晩遊べるような値段だ。こちらを覗き込んでくる美丈夫にキュ、と眉を下げては、言葉とは裏腹にまるで小さな子供が拾ってきた犬猫を飼いたいと強請るような蘇芳色の瞳を彼の方に向けて。目は口ほどに物を言う、とは言うがそれでもただでさえ身請けからここまで彼が自分にかけている金額は果てしないものであるのにそこから更にこの三味線を強請るなど口を裂けても言えるはずがなく。なにか返せるだろうか、と自然と考えてしまう脳はつい先日彼に急がなくていいと窘められたばかりなのにどうしても花街の女らしい生き急いだ考え方をしてしまう。だがしかし〝欲しい〟とただ一言甘ったるく囁くという花魁の手も使えるようなことはなく、椿は困ったように自身の主人の回答を待つばかりで。 )
( / いえいえ!本当に自分が無知で何も世の中を知らないだけですので、背後様はどうぞ気軽にお話して貰えたら幸いです…!! )
椿が弾いてるところ、見ていたいからな。
( 相手の口振りからは多少の遠慮が滲み出るも、その蘇芳の瞳は嘘はつけないようで、その視線には欲しい!と訴えかける感情がダダ漏れで。相手には1番のものをと意気込んで買いに来たのだし、なにより椿が尊敬する製作者の最高傑作とここで出会ったのも何かの縁なのだろう。そして、先ほどの三味線を弾く姿は家事をして活き活きとしている相手とは違ってどこか艶やかに活き活きしていて、そんな姿もこれから見ていたいと思いながら上記のように述べて。相手の気が変わらぬうちに引き下がれないところまで行こうと思えば「 ご主人、これをくれ。 」と、相手が鈴のような甘ったるい甘え文句を口にするまでもなく、一般人が手を出すことはできないほどの大きな買い物に、眉一つ動かすことなくただそう言えば、紳士は深く頭を下げて、2人を会計まで案内してくれて。 )
( / 当方もなるべく知識を深めようとはしていますが、拙いところはどうかご容赦ください…! )
、─── …直政様。ありがとうございます…!
( 端麗な眉一つ動かさずに三味線の購入を決める彼に1度ぱちり、と大きく瞬きをしたあとに嗚呼これからあの子をたくさん弾けるのねと感動で瞳に張った涙をぎりぎりで零すことなく、その大きな蘇芳で彼を見つめてはお洋服を与えられたり家事を楽しそうにしている時よりも、何よりも嬉しそうにふにゃりと破顔しては主人へと礼を告げて。どきどきと高鳴る心臓は、なにだか花魁から〝周りの人には内緒だよ〟ときらきら光る綺麗な簪を貰った時の高揚感によく似ている。廓の子達に言ったらみんな驚くかしら、先生にまた会えた時に言ったら笑ってくださるかしら、なんて年相応のわくわくふわふわとした気持ちを体からめいっぱいきらきらさせながら自然と緩んでしまう頬にそっと両手を添えては、椿はんふふ、とやっぱり笑ってしまい。 )
( / とんでもない!私も拙いところばかりですがこのままお話させていただけたら幸せです…!! )
( 自分にとっては痛くも痒くもない額ではあるが、それでもやはり普段で考えると大きめの買い物で、しかし相手と生活を始めてからおそらく1番と言わんばかりの笑顔を向けられると帳消しになるくらいうかばれる。遠慮しい相手とはいえ、やはりとびっきりのものが手に入るとなればそれほどまでに嬉しいのだろう。両手に頬を添える相手を見ているとあらためて、ここに連れてきてよかったと思いながら会計に案内する店員についていき。しかし、その道中にまるでこの店の首領だと言わんばかりに店の中央に居座るグランドピアノの前を横切れば、ふと何を思ったのか足を止めてじっとそのピアノを眺めて。 )
( / いえいえ、こちらからもお願いすることです…!当方、少し本体がごたついているので下手な文になってしまいますが、このままお相手を願えたらと。 )
( 自分にとっては痛くも痒くもない額ではあるが、それでもやはり普段で考えると大きめの買い物で、しかし相手と生活を始めてからおそらく1番と言わんばかりの笑顔を向けられると帳消しになるくらいうかばれる。遠慮しい相手とはいえ、やはりとびっきりのものが手に入るとなればそれほどまでに嬉しいのだろう。両手に頬を添える相手を見ているとあらためて、ここに連れてきてよかったと思いながら会計に案内する店員についていき。しかし、その道中にまるでこの店の首領だと言わんばかりに店の中央に居座るグランドピアノの前を横切れば、その荘厳な佇まいに目が釘付けになって思わず立ち止まって。「 椿は…ピアノは弾けるのか? 」と視線はピアノに向けたまま、傍の相手になんとなしに問いかけてみるがその視線は至って真剣そのもの。その様子は一歩間違ってしまえばポンと眉ひとつ動かすことなく買ってしまいそうなほどで。 そしてそのピアノの値札には「 一千万 」、と…。 )
( / すいません!少し書き足しました! )
ピアノですか、?
いいえ、弾いたことがなくて…。でもあんなに素敵な音色ですもの、自由に弾けるようになったら、─── …う、嘘です!!私!三味線一筋ですもの!!
( はた、と立ち止まった彼にハテ何だろうとその視線の先を自分も追えばそこには荘厳たる佇まいのグランドピアノ。そういえば人生で一度も弾いたことがないわ、とぼんやり思えば丁度彼から質問が来たので考えていたことをそのままつらつらと返し…かけたものの、ふと届いたとんでもない値段のつぶやきと彼の表情を見ては下手をすればそのままポイと買ってしまいそうな危うさを瞬時に察知したのか途中まで話しかけた言葉の掌をアッサリと返せばぶんぶんと首を振りながら〝それは本当にダメなやつだ〟と言わんばかりに。もしこの人は私が悪い子だったらどうするのだろう、いやでも彼にとってはこの金額は端金なのかしらと混乱した頭でぐるぐると考えては彼の手をきゅ、と繋いでは「 ほ、ほら直政様。店員さんが待っていますから。 」とせめて彼の視界から取り敢えずこのグランドピアノを外そうと会計の方へと彼を誘導するように軽くくい、と引っ張って。 )
( お忙しい中ありがとうございます…!!
ご自身の体調第一に、無理なさらないでくださいね…!!)
あ、ほら、自由に試し弾き出来るってさ。ちょっとだけちょっとだけ。
( 『 自由に弾けるようになったら 』相手の呟きを耳聡く聞いていたようでふーん、へーえ、なるほどーと、言質は聞こえたと、だんだんと瞳をきらきら輝かせながらどこか無邪気に笑顔を浮かべれば、名札の横にある触っていいとの記しを指差して。椿のちいちゃな手ではひとまわりもふたまわりも大きい己の体を引っ張ることなど出来ず、逆にその手をむんずと握り返せば良いではないか良いではないかと引っ張り返してずかずかとピアノの前まで連れて行き。相手を強引に椅子に座らせれば自分もその隣に座り「 ほら、触ってみな。 」と相手の白魚のような手の上に自分の手を重ねながら鍵盤へとリードして。 )
( / ありがとうございます!なるべく早く返信できるようにしますので…! / 蹴可 )
な、直政さま、ぁああ……
( 矢張り自分の力では彼を引っ張ることは叶わず、逆にピアノの方へ誘導されてしまいいつものようにされるがままに連れていかれ。厭、たしかにピアノを触ってみたかったのは事実ではあるのだが、これで〝楽しい!もっと弾きたい!〟というような顔を一つでもしてしまえば彼はこのグランドピアノさえも買ってしまいそうな勢いなのである。なにだか弾力のある椅子に座らせられれば目の前に鎮座するツヤツヤと輝くその高価な佇まいに椿は思わずぱちぱちと瞬きをするばかりで。そっと彼の大きくて優しい手が自分の手に重なるようにして鍵盤へとリードされれば、いつものえすこーととは違う距離の近さに不思議と心臓がドキドキと高鳴ってしまうような感覚がして、初めて触れるピアノよりもそちらに意識がいってしまう。「 そ、その!直政様は、ピアノをお弾きになるんですか? 」 その緊張を紛らわすように、鍵盤に指を置く仕草が妙に様になっていた彼の方をぱっと見れば思ってたよりもずっと距離が近くて、いつもよりも近くに見える夜空色の黒瑪瑙とぱっちり視線が噛み合ったことにぱっと視線を逸らし。 )
( / 返信が遅れてしまい申し訳ありません。本体の都合により多忙なため、今週は返信できそうにありません。来週からなら返していけると思いますので、そこまで待っていただけるとありがたいです。 )
( 相手の細っこい手を鍵盤へとリードすれば、どれ、自分も一つ触ってみようかと己の手も置いて一つの鍵盤を弾いてみると、その荘厳な佇まいに違わぬ厳かな、されど繊細な音が静かな店に広がっていくと「 おぉ…。 」と思わず感嘆の息を漏らしてしまい。そうやって、心が慌ただしくなっている相手とは対照的に呑気に感心していると、その相手の蘇芳の瞳と目を合わせながら問いかけられると「 そうだな…。小さい頃に教養の一環で習わされてたな。 」と昔を思い出しながらそう言えば、それからはめっきり触らなくなったけど、とその教養が今になって役に立っているのかは不明なことに笑ってしまいながら付け加えて。今はもうピアノに触らなくなってしまったが昔のように弾けるだろうかとふと気になれば、幼い頃に習っていたお気に入りの曲を弾き始めれば、どうやら腕が鈍るというよりも体が覚えていたらしくピアニスト顔負けの演奏を披露して。 )
( / 返信が遅れてしまい、大変申し訳ございません!先週もバタバタしていてなかなか顔を出すことができませんでした…!これからはちょくちょく顔を出せると思いますので、続けてお相手をお願いしたいのですが、まだいらっしゃいますでしょうか…? )
─── すてき、
( ぽぉん、とふわふわと軽いようで、だがしかしずっしりと重厚感のあるピアノの音色に椿の心は釘付けで。鍵盤をひとつ叩くたびに違う音程の音が鳴り、辺りに広がっては散っていく。まるで花火のような音色たちに椿の蘇芳はきらきらと光り、それからそれらをまるで鍵盤の上で指が踊っているかのように音を彩る彼の横顔に、思わず椿も見惚れてしまう。教養の一環、というよりも彼の音色は素人目で見ても(聴いても)ピアニストの演奏と遜色ないほどの腕前で、椿は思わずぽつりと鈴のような呟きを零して。彼の演奏が終われば、小さな手で一生懸命にぱちぱちと拍手を送りながら「 とってもお上手です!素敵、音が踊っているみたいだわ! 」とまるで小さな子供が宝物を見つけたかのようなきらきらとしたまんまるの瞳で彼を見つめて。 )
( / お久しぶりでございます…!!
勿論です、お忙しかった後なのに顔を出してくださってありがとうございます…!!ぜひ私の方からもこれからもお相手をさせて頂けたら嬉しいです…!! )
───ふぅ。
( 指が鍵盤の上で踊り始めればついつい興が乗ってしまったらしく、呼吸も忘れて目の前のピアノと対話して。今弾いている曲の一節を弾き終え、不足した酸素を補うように大きく呼吸をすると傍らの椿の小さな拍手でようやく我を取り戻し、おとなげなく我を忘れて一心不乱にピアノを弾いていたことに気恥ずかしさが残るのか「 ん゛んっ。 」と咳払いをして。まるで幼い子供がはしゃぐように賞賛の言葉を贈ってくると「 久しぶりに弾いてみると、意外といいものだな。 」と、鍵盤に指を滑らすように触れながらそう言えば「 ほら、椿も適当に触ってみなさい。 」と自分だけ楽しんでしまっていたことを思い出せばそう促して。 )
( / お優しいお言葉ありがとうございます!改めて、これからよろしくお願いします! )
て、適当に…。
( 彼に促されるがままに、恐る恐る今度は1人で鍵盤に指を這わせてはぽん、ぽぉん、と拙くはあるが元々音楽の際はあるのだろう、曲とまでは言わずとも不協和音になることはなく音を奏でて。指を深く沈めれば深い音が、反対に跳ねるように鍵盤を押せば音も同じように跳ねていくのがなにだか楽しく椿はキラキラとした瞳でそれらをじっと見つめて。初めは片手だったのが両手に、高音と低音をそれぞれ奏でてハーモニーを重ねれば、ぱっとだれから見ても高揚したような表情で「 直政様、ぴあのって不思議ですね!とっても楽しい! 」とにこにこぺかぺか笑って見せて。遊郭にある楽器たちとはまた違う音を奏でるこの大きなグランドピアノは、最初は得体の知れない怖いものだったのが今ではすっかり素敵な音を出す魔法の楽器に早変わりし。直政様みたいに踊るように弾けるやうになったらきっと楽しいわ、どこかで習えるのかしら。なんて考えるくらいには根っからの芸者である椿の心はピアノに掴まれてしまったようで。 )
( / 早速少し遅れてしまいました…… !すみません!
こちらこそです…… !!改めてよろしくお願い致します!/蹴可 )
ほぉ…。
( こちらが勧めるがままに、恐る恐るといった様子で椿の白魚のような指が一つの鍵盤を鳴らすと、そこからは吹っ切れたのか遠慮がなくなった様子で一つ、また一つと音を鳴らし始めればどうやら気に入ってくれたようだと笑みを浮かべながら安心して。そこからは興が乗ったのか両手で弾き始め、ただむやみやたらと弾いているのかと思うもそれにしては妙に整ったハーモニーを奏で始めれば、やはり芸者としてのセンスや天性の才能がそうさせているのだろうかと感心して。あらかた満足したのか、きらきらとした表情をこちらに向けながら弾いてみた感想を興奮気味に述べてくると、先ほどまでのびくびくした様子はどこへ行ったのかと苦笑して。しかしそうか…椿がそういうのなら、これで懸念材料はなくなったなと、顎に手を当てればその表情は本格的にこのピアノの購入を考えている様子で。 )
( / すいません…。また遅れてしまいました…。 )
?、─── あ゙ッ。買いませんよ!だめです!
( 彼の視線に何かしらと不思議そうに首を傾げたものの、何日も衣食住共にしてきてどことなく彼の考えていることがわかってきたのかハッと気付けばぶんぶんと首を振りながら彼が考えているであろうことを否定して。…最も、主人である彼が買うと言ってしまえば自分は全く口を出せない立場なのだが。確かにぴあのを弾くのはとっても楽しかったし彼のように弾けたらどんなに楽しいかとすらも思うがそれにしたって値段がとんでもないのだ。今まで彼が自分に使ったお金の総額を考えるだけでも目眩がする程なのに、そこから更にこのぐらんどぴあのを加味したらそれこそ遊郭で1番の女を暫くは傍におけるほどだ。椿はちらり、と名前の通り椿色の瞳を彼に向けては「 …直政さま、? 」と子猫が母猫を呼ぶような声で彼の名前を呼びながらきゅ、と彼の服の裾をちいちゃな手で掴んで。 )
( /いえいえ!私も遅れてしまったので…!お気になさらず…! )
そうか…だめか…。
( 己の中ではもうピアノを買うことは確定事項だったのか、すでに頭の中ではこのピアノを屋敷のどこに置こうかなどと考えていて。しかしそうやって真剣な表情で考え込んでいると、傍らの相手がぶんぶんと首を振ってピアノの購入を却下してくれば、さすがに少し高価すぎただろうかと思って。蘇芳の瞳をこちらに向けてこれ以上金をかけるつもりかと不安そうな蘇芳の瞳で見つめてくると先ほどまでの真剣な表情とは一転してしゅんとあからさまに落ち込むような様子を見せて。「 うん、じゃあ行こうか。 」と寂しそうな表情を浮かべてそう言えばチェアから立ち上がり、そうか…そうか…と呟きながら会計へと歩を進めて。その道すがら「 椿と一緒に弾きたかったなぁ…。 」とぼそりと呟いて。 )
( / ありがとうございます。これからはこまめに顔を出すようにしますので! )
ぅ、…………。
( ぽそり、、と隣から聞こえた悲しげな呟きにギュ!と胸が痛んではぴたりとレジに向かう足が止まり。確かに自分も彼と一緒にぴあのを弾けたらとってもとっても楽しいだろうなあと思うし、実際に欲しいとだってほんのちょっぴり望んでしまっていたが。それでも欲しい!と気軽に買える値段では無いのがどうしても胸に引っかかる。椿はそこで数十秒悩んでから、彼の服の裾をくい、と引っ張ってはそっと彼の耳元にさくらんぼ色の唇を寄せて「 あの、ええと、直政さま。ぴあの、……ほしいから、買って? 」と消え入るようなちいちゃな遠慮がちな声で囁き。─── いーい?椿。良い女さね、何をお強請りしても許されるのよ。男はね、可愛い女を甘やかすのが大好きなんだから。 …そんな姐さんの言葉を思い出したから。 )
( /すみません多忙につき返信がとても遅れてしまいました…!!!
一旦全て落ち着いたのでこれからは2日に1回は必ず顔を出せるかと…!すみません…!! )
( 椿から購入の許可が下りなければ仕方がない。今日は三味線を購入して終わりにするとしようと、背中を縮こま背ながらさめざめといった様子で会計まで歩を進める。しかし、会計まであと一歩というところで不意に後ろから服の裾を引っ張られてその一歩を止められてしまえばなんなのだろうと相手の方へと振り向くと耳元で鈴の音のような声で囁かれて。その言葉を聞いた途端、先ほどまでの悲しげな表情がみるみるうちに笑みが浮かび上がれば、したり顔を相手に一瞬向けてから「ご主人、あのピアノも会計に入れてくれ。」と相手のお強請りを聞いてからすぐにそう言って。そう、先ほどまでの落ち込んだ様子は演技であり、相手を揺さぶるための謀略。相手からの許可が下りればもう悲しそうに演じる必要はないと、落ち込んだ様子から一転して嬉々としてピアノの購入手続きを進めて。 )
( / 大丈夫です!自分が言うのもなんですがのんびりと待っておきますので! )
!!!!!
( 椿の精一杯のお強請りに、怒るか呆れるか…さて彼がどう返すかと恐る恐る不安げに揺れる蘇芳で彼を見上げてみると、そこにあるのは端麗な唇をしてやったりと言いたげに歪めて早々に会計に進む主人の姿。椿はぱち!と音が鳴るのではないかと言うほどパッと瞳を大きく見開いては彼の表情の意味をゆっくりゆっくり時間をかけて咀嚼していき、やっと彼の先程の表情や声色が演技だということに気付けば「 な、直政様!!!うそつきです!! 」と彼の策に嵌った椿はワッと真白の頬に朱色を散らしては、もう自分では口出しのできないところまで進んでしまったピアノと三味線の金額にあわあわと緩く波打った美しい黒髪を揺らしながら右往左往するしかなく。……最も、ふたつの合計金額は恐ろしくて見ることが出来ないのだが。 )
( / お優しい言葉ありがとうございます…!
前述の通り、本日よりコンスタントにお返事出来ますのでまた御相手頂けたら幸いです、! /蹴り可 )
椿が欲しいなら仕方がないな。うん、仕方がない仕方がない。
( ピアノの購入に関しての保険や契約、配達などの書類を書き込みながら上記の様に、あくまでピアノを欲しがったのは椿であり、自分はなんら悪くないと言い張るかのようにわざとらしく呟いて。ようやく騙されたことに気付いた相手が、静かな店内に響き渡るほど声を上げてぽこぽこと頬を茹らせれば「ん~?なんのことかな?椿が買ってって言ったんだろ?」と悲劇の自分を演じていた己のことを棚に上げながらすっとぼけて。諸々の手続きを終え、そうしてやってきた支払いの刻。あいにく三味線とピアノの合計金額を一括で払えるほどの現金は持ち合わせていない(というか持っていると危ない)ため、おハナの店の時と同様に小切手で支払い。小切手に書かれた千ウン百万の数字の羅列を確認し、そして購入の確認である己のサインを書き込めば、晴れて三味線とピアノは椿のものとなり。 )
ぅ、……。
( 確かに彼の言葉通り、〝欲しい〟と口にしてしまったのは紛れもなく椿であり其れに何も言い返せなくなってしまえば聡明な女にならなければ…!!!と新たに心の中で椿の目標が確立し。このままでは彼の策に嵌って色んなものを彼の思うがままにされてしまう。よくない。そうこうしている内に支払いの刻がやってきたようで、見たら絶対に後悔するのに椿は白魚のような両手で小さな顔を覆ってはその指の隙間からそろりと彼のサインしている小切手を覗き見て。「 っひぇ 」見たのは一瞬。それでもその一瞬で認識できたゼロの数は自分が見た事のある数字よりも余程多くて思わず目眩すらする心地になってしまう。こんなのただの労働だけではよほど返せる額ではなく、それこそ本当に花魁レベルの女を何夜も抱くような金額なのだ。椿は小さな悲鳴を漏らした後によろよろと彼の服の裾に捕まれば、「 な、直政さま…なんとお礼を、…いいえお詫び…?私何をしたら… 」と焦りと混乱と喜びと。ぐるぐると色んな感情が混ざりあった頭のまま平気な顔をしてとんでもない額の買い物を済ませた美丈夫に問いかけて。 )
( ピアノはともかく三味線は今日、これからもこの百貨店を回るには少々過ぎた荷物であり、店の主人に状況を説明すればこの百貨店での買い物が終わり、取りに来るまでこの店で預かってくれるとのこと。主人と己でそう約束を取り付けていると、背後から服の裾を掴まれればなんとも表現のしがたい表情をする相手がおり。この恩をどう返したらよいのかと、またも生き急ぎ始める相手に「 まーたそんなこと言ってる…。 」と、どこか呆れるような声でそう呟いて。「 気にしなくていいって、これから返すんだって言ったろ? 」と、数日前、相手があられもない格好でこちらの部屋に乗り込んできたときのことを思い出させるように問いかけて。しかしまぁ、己にとっては痒くもない額の買い物とはいえ、確かにこれはやりすぎたかもしれないと思い、今日のもう一つの目的である扇を買えばしばらくは大きい買い物は控えようと考えて。店を出てもなお、あわあわとした様子でいる相手に仕方なしと一つ小さなため息をつけば「 じゃあ、今日帰ったら按摩でもしてもらおうかな。 」と少しでも罪悪感を削ってもらおうと労働を課して。 )
!仰せのままに…!
( 彼から仕事を仰せせつかれば、ひどく安心したように分かりやすくホッと息を吐けばいつものようにふにゃりとした少女の笑顔に戻り。最も按摩なんかでは今までの金額には到底及ばないのだがそれでもやはり何もしないという罪悪感は薄れたのか不安げに揺らいでいた蘇芳は落ち着きを取り戻して。やはり数日そこらでは今までの17年間の生き方というのをヒョイと変えられるもの手間は無いが、椿のこれは元々の性格もあるのだろうかくい、とまた彼の服を小さな手で掴んではぱちぱちと音が聞こえるかのような長いまつ毛を瞬かせては彼の黒瑪瑙と己の蘇芳を交わらせながら「 ぴあのも、三味線も、大切にいたします。ありがとうございます。 」と改めてにこにこふにゃふにゃ微笑んで。 )
うん、それでいいんだ。
( それほどまでに大きな負い目を感じていたのか、簡単な仕事を与えただけでもそれで安心したように一息つく相手に、やれやれと仕方がなさそうにため息をつくが、決して疎ましく思っているのではなくまるで親が子供のやんちゃに付き合っているような風のため息で。さて、次の目的地はと百貨店の見取り図を眺めていると後方から服をちょいちょいと引っ張られれば、なんなのだろうかと引っ張られた方を振り返り。先ほどからずっとあわあわとしていたが、どうやらやっと、ピアノを買ったという事実を飲み込んでくれたのか、改めてお礼を述べられると、笑みを浮かべながらそうやって甘えていればいいと上記の様に言って。気を取り直して見取り図を見ていれば、どうやら芸子御用達の店がある様子。それを目にした途端「 よし、次はあっちだ。 」と相手の手を包み込むように握ればその手を引いて目的地へと向かい。 )
つ、次……?
( 何やら次の目的地を見つけたらしい彼の優しくて暖かな手にゆっくりと手を引かれては、ぱち!と長いまつ毛を瞬かせながら蘇芳を丸くして。直政様のお買い物かしら、と見当違いなことを考えながらワンピースの裾をひらりとはためかせながら彼の後ろを着いていき。だがしかし、と改めて店内にある様々な店舗たちはどれも高級志向で、働いている女たちは全て砂糖菓子のように美しい女たちばかりだ。お人形さんみたい、とぽけ…とぼんやり見つめていれば宝石店の美しい女の店員がにこ、と微笑みかけてくれたのでピャ!と肩を跳ねさせたあとに慌ててお辞儀をして。─── 廓にいた姐さんたちとは違う綺麗さだから、少し緊張きちゃう。椿は無意識に彼とつないだ手に柔く力を込めては次は余所見をせずに彼について行き。 )
扇も欲しいって言ってたろ?
( 椿と約束していた三味線ともう一つの品物、「扇」。自分にはよくわからないのだが、舞には必要なものらしく、相手の本当の舞を見るのであれば買うしかないだろうと目的の店へと歩を進めて。善は急げと歩いて着いた芸子御用達の店はどこか怪しげな雰囲気を醸し出しており、一般人が入るには少し勇気がいるような店構え。しかし当の本人は、そんな雰囲気に臆せず、椿の手を引きながらずんずんと店の中へと入り。どうやらこういった店に入るのは慣れているらしい( 芸子の店に入るのは初めてだが )。店の中には芸子達が使う化粧類や簪などといった小物が並んでおり、そのどれもが、見るだけで一級品だとわかるような品質のものばかり。そして目的の扇の棚へとたどり着けば「 さぁ、どれが欲しいんだ? 」と、やはりここは本職である相手に任せた方が無難だろうということで相手の審美眼を頼りにして。 )
( / すいません、扇が売ってある店というのが上手くイメージできなかったので店を勝手に想像してしまいました…。 )
ッ、─── 。
( まさか次も自分のための買い物だとは思わなかったのか、椿は大きな蘇芳の瞳をぱち!と見開いては口をぱくぱくと開閉して。人間驚きの頂点になると声も出ないというが正にこれがそうなのだろう。呆然としながら彼に連れられた店内は芸妓時代によく見知ったものたち─── 最も自分が使っていたものより余程高価な花魁レベルしか許されないものだが ─── が陳列されており、今までに行ったどの店よりも何だか呼吸がしやすくて椿はゆっくりと息を吐いて。嗚呼、あれ姐さんが旦那様に強請っていたものだわ、だとか、一度だけ付けてもらってすごく良い匂いのした覚えがある白粉だとか、自分が生まれ育った世界のものたちに溢れている店内は目移りしてしまう。目的の扇が数多く飾られている一角にたどり着けば、彼の言葉に先程まで安堵していた表情はぴゃ!と緊張し、ざっと見た限りでも1番安い扇ですらとんでもない値段がするのを確認すれば椿は少し悩ましげに眉を下げて。「 きょ、今日じゃなくても……良いのではないでしょうか……? 」暫くの沈黙の末、漸くその口から溢れ出た言葉は流石に今日一日で使わせてしまった金額を考えれば最もな言葉だ。確かに欲しいと言ったし舞を見せるのであれば必要なものだが、それでも如何せん使わせすぎてしまったのである。椿はちらり、と彼の方をおずおずと見上げれば、夜色の瞳を申し訳なさそうに見つめて。 )
( / 私も扇専門店には全く明るくないので、むしろとても有難いです…!!! )
なーに言ってるんだ。今日買っても後で買っても同じことだろう。
( 整然と並べられた扇はそのどれもが美術館に飾られていてもおかしくないような芸術品であり、格式高い雰囲気を漂わせている。傍らに添えられた値札に書いてある値段もこれまた格式高い数値であるが、己はというとそんなことも意に介さずにどれがよさそうかと素人なりに扇を眺めながら吟味していて。椿も扇選びに集中しているのかしばらく沈黙していると思いきや、今日は買わなくていいのではないのだろうかと急に遠慮し始める相手にまるで素っ頓狂なものを見たかのように首をかしげて。いつか買うのであれば、速いに越したことはないだろうと怯えの生じる蘇芳の瞳を見つめ返しながら上記の様に説得すれば、相手の背中を押すように両肩を掴んで、扇もっとよく見えるように棚の前へと歩かせて。 )
( / 良かったです! )
あう、……。
( 彼の優しくて暖かい手に両肩を軽く押されて最もな台詞を吐かれてしまえば何も言うことが出来ずに椿はただただ視界いっぱいに広がる美しい扇たちを眺めて。だがしかし扇というものは豪華絢爛な柄も、奥ゆかしいシンプルな柄も、こういうお店の物は総じて高いのだ。基本的に扇は舞う踊りによって持つものを変えることが正しい舞なのだが、それを言い始めてしまったらそれこそキリがなくなってしまう。椿はちらり、と2つの蘇芳で彼を振り返れば「 あの、……直政さまが好きな、柄はなんでしょう…。 」と、自分が得意云々よりも彼の好きな柄を問い掛けて。これでも花街で生まれてからずっと舞を続けてきた芸妓、大抵の舞なら踊ることができるし例え知らないものでも数回見れば踊ることが出来る。ならば彼が一番好きな舞扇のもので踊りたいと。霞、雲、桜、露草、流水、波、小石、それから色紙。基本的な舞扇はこれらの柄が主流だが、この店には月や他の花など様々な柄の扇があるようで椿はこてりと首を傾げて。 )
俺の好きな柄…か。
( いくら芸術品のような扇といえども、先ほどのピアノと三味線に比べれば比較的安価な値段。楽器みたいにかさばらないのだし、どうせなら幾つか…いや、なんならこの棚にある扇を買い占めるか…?などと金持ち特有のズレた金銭感覚で恐ろしい考え事をしていると、椿なりの心遣いだろうか好きな柄は何かと問いかけられて。好きな柄…とは言われても、今まで芸子遊びなどしたことがないのだし、そのあたりの美的感覚などは洗練されていないためどうしたものかと悩んでいれば「 好きな色は赤色だな。 」と、柄はともかく己の好きな色を教えるだけでも選択し絞れるのではないかと思い、ふと口にして。「 あまり主張しない落ち着いた赤色…そうだ、ちょうど椿の瞳の色くらいの赤が好きだ。 」などと、補足して加えた説明はまるで口説き文句のような台詞で、己がどんなことを言っているのか気付いていないのか、そんなことも意に介さずにその蘇芳の瞳を眺めて。 )
、……。
( 彼の言葉に、椿の蘇芳はまんまると大きく丸められて真白の頬はぽぽぽと薄紅色に染まる。自分のことが好きだと言われた訳では無いのになぜだか心の臓が大きく高鳴り、それと同時にきゅうと締め付けられるような感覚すらする。此方の全てを見透かしてしまうような涼し気な視線を受けて椿は何度かぱちぱちと瞬きを繰り返した後に彼の黒瑪瑙から逃れるようにふい、と視線を逸らしては「 で、では赤色の扇がいいです、ね。 」 と少したどたどしくも成る可くいつも通りの振りをして扇たちの方へと向き直り。だが大人しく扇を吟味できるような精神状態ではなく、まだ火照っている感覚のする陶器の頬を白魚の両手でそっと包めば早くこの熱を引かせようとふるふる小さく首を振り。 )
、……。
( 彼の言葉に、椿の蘇芳はまんまると大きく丸められて真白の頬はぽぽぽと薄紅色に染まる。自分のことが好きだと言われた訳では無いのになぜだか心の臓が大きく高鳴り、それと同時にきゅうと締め付けられるような感覚すらする。此方の全てを見透かしてしまうような涼し気な視線を受けて椿は何度かぱちぱちと瞬きを繰り返した後に彼の黒瑪瑙から逃れるようにふい、と視線を逸らしては「 で、では赤色の扇がいいです、ね。 」 と少したどたどしくも成る可くいつも通りの振りをして扇たちの方へと向き直り。だが大人しく扇を吟味できるような精神状態ではなく、まだ火照っている感覚のする陶器の頬を白魚の両手でそっと包めば早くこの熱を引かせようとふるふる小さく首を振り。 )
( 己がどんな台詞を口にしたのかも気にもしていないのか、椿が不自然な様子で視線を逸らしたことにただ首をかしげるだけで、その頬が本人の瞳の様に赤く染まっていることにも気づかず、扇の棚へと向き直る相手の背中を見送って。自分もなにか、いい扇はないかと、素人目ではセンスはないかもしれないが、あくまで芸術品観賞のつもりでそれらを眺め。あらためて眺めてみると、どれもが雅でありながら力強い、確かな芯を持つ力強い雰囲気を醸し出しており、「ほぅ」と感嘆の息を漏らして。そうやって眺めていると、一つの扇に目を惹かれ。その扇は赤色の風景に銀色の月が浮かんでおり、地面には椿が咲き誇っているといったデザインで。「 椿、これなんかどうだ? 」と相手に声を掛けながら経験者の意見を聞いて。 )
、─── すてき。
力強いけれど繊細で、とっても綺麗です。椿の描かれた舞扇は背景が雪化粧から白のものが多いのですけれど、こうして1枚の絵のような舞扇もきっと踊りに映えますね。
( 此方がなんとか顔の熱を冷まそうと首を振ったりぱたぱたと手で仰いでいる間、いつの間にやら彼はお気に召した舞扇が見つかったようでその声に導かれて視線を向ければそこには在り来りな舞扇の絵とはまた一味違う様子の扇子が飾られており、椿は舞扇に書かれた椿とおんなじ色の瞳をキラキラと輝かせながらぽつりぽつりと感想をこぼして。自分のような経験者はどうしても舞扇といえば似たりよったりな柄のものを選んでしまうが、こうして彼のように全く新しい視点から見られる人の選ぶ舞扇というのはなかなかに興味深いものばかりで椿はにこりと微笑み。「 旦那様のお好きな椿色ですし、それにお月様はなにだか直政様のようで私好きなんです。 」 ふわふわとまるでなんでもないようにさらりと述べた言葉は、椿の意識のしないところでの好意と言葉。暗い世界を明るく優しい光で照らす月は、遊郭という世界から自分をすくいあげてくれた彼によく似ている。椿はうんうん、と満足気にその扇を眺めてはふと彼の方を見上げてまたふにゃりと微笑み。 )
ん、そうか。
( 素人目なりに気になったものをなんとなしに選んでみたが、どうやら経験者の眼から見てもなかなかの逸品らしい。自身のお気に入りの色であるその瞳をキラキラと輝かせてこちらの選んだ扇について感想を述べられる椿の言葉に、己の目利きは正しかったようだと安堵したのと同時にどこか褒められた気もして嬉しくなったようで。しかし、そうやっていい気になっていたのも束の間、賞賛の言葉のあとに月はまるで直政のようだと、それが好きだとさらりと告白しながらこちらに蕩けるような笑みを浮かべる相手にドキリとさせられてしまい、突然の言葉に頬にほんのりと熱を帯びれば「 …ッ、ん゛ん。うん、そうか。 」と、なんでもないように装うために一旦咳払いして気を取り直そうとしていて。「 ほら、椿はなにか気になったものはないのか? 」となかなか収まらない頬の熱に気付かれないように再度、扇の棚へと相手の背中を押して。 )
わたし、この扇がいいです。
( 湯上りのように頬を火照らせ咳払いする彼にきょとん、と不思議そうに首を傾げそれを覗き込もうとした椿だがそれは彼に背を押されたことにより叶わず。気になるもの、と言われてもやはりどれもピアノや三味線ほどでは無いとはいえ一般的に見れば十二分に値の張る品々ばかりなせいか強請るにも気が引ける。そりゃあ芸妓としては一流の?──とは言ってもここにあるものは全て一流なのだが─── もの、もっと言ってしまえば値の張るものに目が言ってしまうが、ただの少女である椿として気になるものと言えば先程彼が勧めてくれた扇に1番心惹かれているようで。椿は白魚のような手で先程の奥義をそっと手で示せばにこりと少女らしい若々とした笑顔を浮かべて。「 直政さまが私に似合うって見つけてくださった扇ですもの。 」とふにゃふにゃと柔らかい声でそう付け足せば、ダメかしら、と彼の顔を伺うようにそっと椿色の瞳で彼を見上げて。 )
( / 仕事に追われなかなか返事ができず申し訳ございませんでした…!!
もしまだいらっしゃる様でしたら引き続きお相手いただけたら凄く嬉しいです…! )
…そうか。
( どうやら椿はこちらが選んだ扇のことをいたく気に入ってくれたようで、その扇に細やかな手を沿わせて春の風のように柔らかい声で問いかけてくれば、こちらも、己が選んだ扇を選んでくれたことを嬉しく思い、笑みを浮かべながら上記のように返して。なんだかんだで扇を買うことを了承してくれた相手の気が変わらないうちに事を進めてしまおうと、そうと決まれば店員に合図を送って呼びよせては「 この扇をください。 」と、2人で決めた扇を指差して。『かしこまりました』と頭を下げる店員が丁寧な手つきで扇を持ち出し、会計の場へと先導すればそれについていき。しかしその道すがら、ガラスで隔てられた棚の向こうに掛けられてある、最上等な着物に目を奪われて。その着物は花魁が誘惑のために着る艶やかなもの。身につけられていない状態でも妖しげな美しさを放つそれにただ一言「 綺麗だ…。 」と呟いては、これを着た椿はきっと言葉にすることができないほどの美貌なのだろうと思いながら、何故か椿とその着物を交互に視線を見遣って。 )
─── 、花魁の…着物…?
( ふわり、と自分の耳を擽る彼の優しいテノールと視線にふと顔を上げて彼の視線の先を見遣れば、そこには今まで自分の世界の全てだった艶やかで煌びやかな花魁の着物。ごくひと握りの彼女らは、これを着て鳥籠の中でただただ人形のように佇んで微笑みだけで男を落としてしまうのだ。偶然にも椿はその美貌でなく芸者の腕で女遊びの世界を生きてきたが、少しでも境遇が違っていれば自分も今頃それらのように鳥籠の中で生涯を終えるところだっただろう。椿もそれに一瞬瞳を奪われた後に、なぜ彼がこちらを向いていたのか分からずにこてりと首を傾げ。しばらく考えた結果、花魁と遊んでみたいという事なのだろうか、なんて素っ頓狂な考えが浮かべば「 あの、直政様。大丈夫ですよ、私は構いませんから。 」なんて言葉足らずに彼の服の裾をくい、と優しく引っ張った後にいつもの花のような笑顔よりも少しだけ曇った笑顔を浮かべて。ヂリ、と胸を焦がすような痛みと一気に心に拡がったもやもやの名前は知らぬまま、椿は彼に人形遊びならば好きにして欲しいと。自分は彼の愛玩人形のひとりなだけであって、それらに口を出す資格はないのだから。 )
( /ありがとうございます…!
ぜひこれからもよろしくお願い致します! )
( この着物を買うと言ったら、また椿に怒られるだろうか。いや、実際は起こられてはいないのだが、今まで使った金額のことを考えるとそれはもうすごく拒絶されてしまうかもしれない。そんなことを心配しながら件の彼女に察してと言わんばかりに視線をやって。すると、椿はその視線の真意を汲んでくれたのか『大丈夫。』『構わない』との言葉を貰えるとまるで欲しかったものを買う許可を貰えた子どもの様に目を輝かせて。相手にそんなつもりはないのだが、己の中で『買っても大丈夫』『買っても構わない』と勝手に変換されてしまい、二人の間で相互誤解が生じていることにも気づかず、相手から許可を貰えたのならばもう何も気にすることはないと二人を会計まで案内する店員に声を掛ければ「 この着物もください。 」とガラスの向こうで妖艶に鎮座する、花魁衣装(数百万)を指さしながら声をかけて。 )
─── へッ、?
( 何だか無性に胸の奥がジン、と締め付けられるように痛いけれど、その痛みは無視をして。きらきらとまるで幼い少年のように黒瑪瑙を輝かせる彼にニコリと人形らしく微笑んだ直後、彼の薄く形の良い唇から発せられた言葉は自分が思っていた言葉よりもずっとずっと理解の追いつかないもので。椿はぽかん、と大きな瞳を丸くしてちいちゃな口をあんぐり開けて一言言葉にもならない上記を発せば、じわじわと時間がたつにつれて其の言葉に意味が体に馴染んだのか次は頭の上に沢山のハテナを散らす。「 まッ、待ってください直政様!こ、これ、すうひゃくま、お、花魁と遊ぶんじゃないんですか!? 」といつもであればころころと転がる鈴のような可愛らしい声を思わず少し大きくしてしまえば、彼と、花魁衣装と、値札と、それぞれを三角形に交互に見ながら混乱を露わにして。 )
―――花魁?何を言ってるんだ椿?
( 額が額なためか、声を掛けられた店員は数秒の間固まっていたが、我を取り戻せば太客を逃してなるものかと言わんばかりに花魁衣装の購入の手続きをてきぱきと進めて。その店員に一拍遅れて我を取り戻し、ピアノを買うときとおなじくらいに取り乱す相手の言葉に何を言ってるんだと言わんばかりに上記の様に首をかしげて。花魁と遊ぶつもりなどないし、花街に行く予定もない。相手の口から出てきた言葉からどうして相手がそんな勘違いをしたのだろうかと推理すれば「 まぁ、椿がこれを着たら花魁になるから、花魁と遊ぶことにはなる…かな。 」なんて素っ頓狂なことをのんきに考えれば、会計の準備ができたらしい店員について行くが、この際花魁に必要な化粧道具なども最上のものを店員に見繕ってもらって。 )
─── へ、
( とんとん拍子に進んでしまう花魁衣装の購入に加えて化粧道具等もここぞとばかりに最高級のものばかりを取り揃えていく店員たちの嬉しそうな顔と意味深な言葉を残して店員のあとをついて行く彼の背中を呆然と見ては、じわじわと椿の真白の頬には朱が散っていき。どういう意味、花魁と遊ぶってなに、私が花魁で、遊ぶ?なんて花街で育った彼女にとっては彼の言った意味がわからずに、否分かるのだが、兎に角椿の頭は混乱するばかりでぐるぐるとパンクしてしまいそうな頭のまま「 な、直政様、待って、 」とぱたぱた不安そうな顔で彼の後を慌てて追い。そのまま彼の腕をきゅ!と小さな手で掴んでは火照った表情ときゅうと下げられた眉で彼をジッと見つめては「 あ、遊ぶの…?わたしと、……? 」と普段の一歩下がるような丁寧な敬語ではなく年相応の少女の声色でぽつぽつと問いかけて。 )
( 己の発言で椿がパニックに陥っていることなど気付かず、店に並んでいる中で一番値の張るおしろいや、艶めかしささえ漂わせる色彩の口紅など、店員の手によって最上級品の化粧道具が次々と選ばれていき。購入するものをあらかた選び終えたらしく、あらためて会計へと案内されようとしたそのとき、傍らの相手から引き留められると、いったいなんなのだろうかとふりかえればそこには顔を真っ赤にしてなにやら不安そうな表情でこちらに問いかける相手にそのおかしな様子に首をかしげて。この男、初日の勇気を出した時以外、今まで純粋な椿しか見ていなかったためか、相手と『そういう』ことをするということが頭からすっぽ抜けているらしく、だからこそ相手の言う『遊ぶ』とは三味線や舞踊を見る芸子遊びのことを言っているのだろうかと勘違いしていて。今まで、三味線や扇に目を輝かせていた相手を見ていたため、できることなら相手の好きなようにさせたいと思い、これまで遠慮ばかりしていた相手を心配させないように、真っすぐ見つめながら「 あぁ、俺は椿と『思いっきり遊ぶ』ぞ。 」と真剣な眼差しで言い放っては会計へと歩を進めて。 )
思い、きり……。
( こちらを射抜いてしまうような彼の黒瑪瑙と、それから世の中の乙女だったらメロメロと腰が砕けてしまうのではないかというような文句に椿はただただ蘇芳を丸くして言葉を繰り返すことしか出来ず。思いっきり遊ぶって何されちゃうのかしら、私はじめてなのに、何から準備したら、嗚呼でも優しくしてくださるかしら、なんて生娘の疑問と不安とどきどきは留まることを知らずに、会計へと先に歩いていってしまった彼を追えることなくたたただ乙女の柔肌を赤らめることしか出来ず。初めて彼の屋敷に来た日にありったけの勇気を振り絞って着た…もとい身につけたあの下着たち。もう出番が来ないだなんて思わなかったけれどまさかこんなに早く来るだなんて。……それとも直政様はあの衣装だけが良いのかしら。悶々と少女の頭を占める桃色たちはどんどんと話が進んでいき、椿はハッと我に帰ればまた彼の方へとぱたぱた追いついて「 直政様、私一生懸命つとめさせていただきますね、! 」と上手に会話の噛み合ってしまう勘違いを加速させていき。 )
( 二人の間に盛大なすれ違いが発生しており、頭の中がピンクに染まっていく相手をよそに己はというと会計の場へと来れば、ピアノと三味線を買った時と同じように、小切手の支払いにサインをして。扇も花魁衣装も、厳かな箱にしまわれているのを眺めている間に、椿がぱたぱたと寄ってきて意気込みを込めた言葉を聞けば、それほどまでに三味線と舞踊を見せたいのだなとまたも勘違いをして。そうまでしてくれる相手の気持ちを汲み取ろうと、こちらも相手の気の済むまで付き合おうと決意すれば「 うん、期待してる。今日は寝かせないからな。 」と、嫌になるまで相手の芸子遊びに付き合おうと、またも変に噛み合う会話で二人のすれ違いが加速していき。そうして店での買い物が済めば時刻はすっかり昼食時。相手の手を引いて店を出た瞬間、いつぞやの時の様に空腹を告げる椿の腹の虫がこちらに聞こえるまで鳴ると一拍置いたのちに「 ぷっ、…くくっ…。 」と顔を相手から逸らしながら必死に笑いをこらえれば「 そろそろ昼食にしようか。 」と、いまだ笑いの余韻をこらえながら相手の腹の虫の機嫌をとろうとして。 )
もお!!!直政さま!!!
( いつかのように椿の腹の虫が空腹をきゅる、と知らせれば此方から顔を背けて笑いを噛み殺せていない彼の様子にぱっと顔を赤くしてぷんすこ怒り。否、そもそもの発端は自分なのだけれど。だがやはり食欲には勝つことが出来ないのか昼食にしようという彼のご機嫌取りにぴく、と反応しては「 …食べます、 」 と少女然とした鈴の転がる声で頷いて。所詮食欲というのは人間の三大欲求。どんなに人形のような顔をしてもそれらには抗えないので。 )
ごめんごめん。
( いくら無意識のことといえど、己の腹の虫の音を聞かれれば恥ずかしいらしく、その真白の頬を林檎のように真っ赤に染めながら怒って見せられると先ほどより多少は収まったものの未だ笑いの余韻が残った表情で気さくに謝り。相手からの了承も貰えたことで、椿の手を引いて着いたのは百貨店の上層階にあるレストラン街のフロア。中華、洋食、和食と様々な種類の店が並んだこのフロアもやはり高級志向の店ばかりで、その豪奢なフロアを前にして「 椿は食べたいものはあるか? 」と問いかけて。 )
( / 突然の相談なのですが、椿様の方からなにかこうしたいといった流れなどはありますか? )
食べたいもの……。
( 空腹を告げてくるお腹とは裏腹に、自分の喉が何を欲しているかと言われたら特に浮かぶものもなく椿は首を捻る。今までの生活でここ数日のように色んなものを食べたりということが滅多に無かったせいかそもそも知っている料理のバリエーションが少ないのだ。椿はしばらく悩ましげに眉をきゅ、と下げた後に彼の方をそろりと見上げては「 直政様が好きなものが食べたいです。 」とふにゃりと幼い花の笑顔を浮かべて。……それにそもそも、高級なお料理は名前を見てもいまいちわからないので。舌の肥えた人が選ぶのなら間違えていないだろうと。 )
( / そうですね…!以前お話していた風邪のシチュエーションができたらかわいいなあとひっそり思っておりました…! )
俺の好きなもの…か…。
( 今日の己の舌からはこれといった希望は特にない。だからこそ、今日は椿の素直な直感に身を任せてみようとしたのだが、結局は選択権が己に回ってきてしまえばほんの少し眉根を下げて困ったような表情を浮かべて上記の様に悩み始めて。洋食はこの間、星ノ喫茶に連れて行ったためそれ以外の和食か中華か、と絞っていくと不意に香辛料の香りが鼻腔をくすぐり、その香りがするほうを見やった先には豪奢な店構えの中華料理店が。そういえば、椿はまだ中華料理は経験がないだろうと、新しい経験をさせるいい機会だと考えれば「 よし、中華にしよう。 」と、椿の手をきゅ、と力を込めて握り善は急げと言わんばかりに早速中華料理店に向かい。 )
( / そういえばそんな話をしていましたね!その流れでいきましょうか!昼食の場面が終わり次第、椿様の様子がおかしいーという流れにしますか? )
ちゅう…か…。
( 彼の口から告げられた聞き馴染みのない料理にぱち!と蘇芳の瞳を丸くしてはたどたどしく彼の言葉をオウム返しし、そのまま彼の大きな手に小さな手を引かれてその目当ての店へと向かい。姐さんのお客様が確か食べたことがあるんだったかしら、私たちの国のお隣?近く?の国の料理だった気がする。だなんて不思議そうに首を傾げつつも、だがしかしその心はまだ出会ったことの無い料理と彼の勧めるものならば美味しいのだろうという期待と好奇心から踊っており、椿の頬は自然と緩んでしまい。─── 少しだけ、一瞬だけくらりとした頭は気の所為ということにして。 )
( /かしこまりました…!!
ではちょっとずつ異変を自覚させて表に出させて行きますね…!よろしくお願いします…!)
( 椿の手を引いてやってきたのはレストラン街の中でも規模の大きな中華料理店。艶やかなチャイナドレスに身を包んだ美しい女性が二人を案内し、店の中に入ればそこはまるで別世界と見まごうほどの豪奢な内装で。金色に煌く龍の彫像や、繊細な刺繍が施された壁面と、やりすぎではないかと言っていいほどの豪華絢爛な店の中を臆することなく進んでいけば、今回の二人の席に着き。チャイナドレスの美しい女性が、メニュー表を渡してからしずしずと下がっていけば、その艶やかな姿に一瞬目を奪われながらも一つ咳払いをして気を取り直してから。 )
どれにしようか、椿。
( / 大変遅れてしまい申し訳ありません…!本体がバタバタしていたり、流行り病にかかってしまったりしてなかなか返信することができませんでした。もし、まだいらっしゃるならぜひお相手をお願いします…! )
─── … 。
( 連れてこられたのは豪奢な内装や煌びやかな女たちの揃う、なにだか花街のような料理店。スリットの深く入ったセクシーなチャイナ服(という単語は勿論椿は知らないので彼女にとっては不思議な形のお洋服)から垣間見れる瑞々しい生足がやけに扇情的な真っ赤な唇の美しい女の店員に目の前の主人が瞳を奪われたのをちゃっかりと目撃してしまった椿はむ、と唇を尖らせれば〝私もこの服を着ればいいのかしら〟なんて自分でも無意識に小さな嫉妬心の花を探しては彼の問い掛けをうっかり聞きこぼしてしまったのか「 はえ、……あ、……ええと。ごめんなさい直政さま。もう一度、 」と店内にいるチャイナ服の女たちとはまた違う男の庇護欲を掻き立てるような幼い顏をきゅと不安そうに変えて。 )
( /わ!今本当にみんな罹患されてますものね…!体調は如何でしょうか、どうか無理なさらずご自身の体調第一になさってください…! )
料理はどれにしようか。
( こういった店には慣れていないのか、委縮するかのように幼い顔を不安そうに浮かべる相手が問い返してくると、その小動物のようなか弱さに庇護欲を掻き立てられながらも、その不安を落ち着かせようと優しく上記を口にして。そうして相手がメニュー表とにらめっこをしている間も、料理の皿を持って店内を優雅に歩くチャイナ服の美しい女性たちの、その深いスリットから覗く眩しいおみ足が扇情的でちらちらと目を奪われて。ふと、思い出したのはあの時爆弾を身につけてきた椿の体。紐のガーターとニーハイソックスに飾られた、椿の健康的な太ももを思い出しながら、「 あの服、椿に似合いそうだな。 」なんて下心丸出しの言葉を思わず口にして。 )
( / 隊長の方はもう大丈夫です!ご心配をおかけしました。これから早く返信できますので! )
お、お料理……えっと、……
、へ、ッ?
( 彼が料理を聞いていたのだと改めて教えてもらえればあわあわとメニューに目を落とすも、それらは難しそうな文字ばかりでいくら姐さんに字の読み書きを教えて貰っていたとはいえ椿が読むには少々難しいものたちばかりで。焼き……売る……?とメニューと睨めっこをしていればふと耳に届いた彼の言葉に素っ頓狂な声を上げながらぱっと顔を上げて。そうして彼の視線に釣られるように美しいチャイナ服に身を包んだ豊満な女性を見れば、〝やっぱりああいう服の女性がいいのね……!〟とまた椿の胸の奥に小さく美しい嫉妬の花が開いて。「 ……直政さまは、ああいう服の女性がお好きですか? 」はたしてくらくらと先程から回らない頭のせいか、それとも嫉妬の花のせいか。ふだんならば聞かないような言葉を思わずぷっくりとした唇から零してしまえばむ、と拗ねたような表情を隠すことなく小さな仔猫が親猫を取られた時のようにつん、と唇をとがらせて。 )
( /今度はこちらが大幅に遅れてしまいました…申し訳ありません…!!!
仕事が一段落いたしましたので、ほぼ毎日これからはお顔を出せるかと思います……! )
ん?あ、あぁ…確かにあそこにいる女性は雅で素敵だ。
( 店内のチャイナドレスを身にまとった女性を眺めるのもほどほどに、これから注文する料理を決めるためにもう一度メニュー表に視線を戻すと、目の前の相手のぷるりとした唇から小さな嫉妬の言葉が紡がれればその言葉に含まれている嫉妬にこの朴念仁は気付くことなく、チャイナドレスの女性をさりげなく褒めるような上記の言葉を発して。「 だけど、容姿や服で女性としての美しさが決まるわけじゃない。そしてその美しさは見る人によって変わるものだよ。 」と、どこか哲学的な言葉で諭しては、頼む料理があらかた決まったらしく。)
―――それで、頼む料理は決まったかい?
( / 返信が大変遅れてしまい、ほんっとうに誠に申し訳ありません。年末年始で少しバタバタしてしまっていました。これからは顔を出せますのでまだお相手してもらえたら幸いです…。 )
……????
( 容姿や服で女性としての美しさが決まる訳では無い。その彼の言葉に椿はこてり、と首を傾げてはまんまるの蘇芳を何度か瞬きさせる。今まで自分が生きてきた世界の常識とは真逆の言葉に理解が追いつかなかったのであろう、遊郭では美醜が殆どだったのだ。美しい女はそれに伴っているように器量が良かったし、醜女は其れらを見ながら妬むような狭量の女が多かった。そう云えば、美とは余裕なのだと姐さんから聞いた気がする。椿はそれらをふと思い出しながらスッカリ思考の海に浸かっていたものの彼の言葉にぱっと意識を浮上させてはまたメニューに瞳を滑らせたあと「 あの、……ええと、直政さまの、オススメがいい、です。 」と矢張り異国の言葉も混じった見たこともないメニュー名たちではどんな料理か全く分からなかったのか恥ずかしそうにメニューで薄紅色に染った顔を隠すようにしてもじもじと答えて。 )
( /とんでもないです私も遅れてしまいましたし…!お互い気にしない方向で…!!!
こちらこそぜひまたよろしくお願いします! )
ふむ、俺のおすすめか…。
( 中華料理という初めてのジャンルに混乱してしまったらしく、決めあぐねたのかこちらに主導権を回してくると今度はこちらが悩み始めて。相手にとっては初めて食べる中華料理、どうせならいろいろなものを食べさせてあげたいとちょっとした親心のようなものが芽生え、メニュー表を見ながら吟味して。「 …よし、! 」とあらかた決まったらしく、一つ声を上げて店員を呼べば様々な料理を次々に頼んでいき。注文を終え、チャイナドレスの女性を見送れば何故か頬を薄紅色に染めらせる相手に気付き )
椿?顔が赤いぞ…?
( / お優しいお言葉ありがとうございます…!こちらこそよろしくお願いします! )
な、なんでもないです!お気になさらず!
……え、えと、注文ありがとうございました。
( 花街出身の教養のない自分と、資産家の御曹司で教養のある彼。ただの飲食店での注文ひとつでもその違いが明白になってしまったのがなにだかとても恥ずかしくて、白磁の肌に朱色を散らしながら〝もっとお勉強をしなくちゃ〟と新たな決意を胸に抱いた頃。此方の様子に気付いた彼に慌ててそれらを誤魔化しながらへにゃ、と微笑んでみせては先ずは自分の代わりに注文をしてくれたことに対しての感謝をひとつ。一体何を注文してくれたのか、おそらく商品名を言われても分からないのでそれは料理が到着するまでのお楽しみとするとして、椿はそういえば先程お姉さんたちが来てるあのお洋服が自分に似合いそうだと彼が言っていたな…と思い出せば「 ああいうお洋服は、どこに売っているんでしょうか。私にも買えるかしら…。 」と思わずポロリと零して。ああいう服を着てお家で家事をしたら喜んでくれるかしら、と彼に喜んでもらう為に零した言葉ではあるのだが、如何せん露出がちょっと多くて恥ずかしいな…という気持ちはあるのでそれを実行する勇気があるかどうかはまた別のお話で。 )
( /バタバタとしていた仕事や引越しが一段落し、流石に遅くなりすぎてしまったしもういらっしゃらないだろうな…と諦め八割で覗いてみたらまさか上げ続けて下さっているとは思わず、本当に本当お待ちいただきありがとうございます……!!!
そして遅くなってしまい本当にすみませんでした。全てが落ち着きましたので、もし背後様さえ宜しければまたお話をさせて頂きたいのですがよろしいでしょうか……? )
…あれを着たいのか?
( 注文を済ませて料理が運ばれてくるのを待つ間、ぼそりと相手の唇からこぼれた言葉を聞けば、何故か、それを着る本人よりもどこか楽しみそうに、興味津々そうにしながら上記のように問いかけて。さきほどは花魁の服を買うのにも躊躇していたというのに、自ら進んで服を、それも妖艶な服を欲しがる姿にこちらもその気になり。とはいえ、服に関しては多少、自身の身だしなみを気にするくらいで女性の、それも異国の服となれば流石に門外漢なので「 そうだな…。おハナさんに相談してみれば、手に入れられるかもしれないな。 」と、以前世話になった呉服店の女主人ならばと提案して。そうやって話していると、どうやら食前の茶が運ばれてきたようで、己の前には烏龍茶、椿の前には自身がチョイスした茘枝紅茶が運ばれて。 )
( / 何気なく上げたのが椿様の目に届いたようでよかったです…!こちらこそ、返信が遅れてしまう時もあるかもしれませんがそれでも、椿様さえよろしければまたお相手をお願いしたいと思います。 )
っ、…!
もし、着たら、……直政様は、嬉しいですか、?
( うっかり口からまろびでた呟きはどうやら彼に器用に拾われていたようで、ぱち!と紅玉をまんまるにしたあと頬に淡く朱を散らしながらおずおずと問いかけて。似合う、とは言ってくれたけれど彼がそれを喜ばなければ意味が無いので、自分からそんなことを聞くのはとても恥ずかしいし内緒で買って驚かせるのが大人の良い女な気がするけれど、椿にはまだそんな技量も内緒にできる演技力もないのでバカ正直に問いかけた次第。そうして自身の前に運ばれてきたのは爽やかで甘い果物の香りのする紅茶。甘さの中にさっぱりとした夏のような爽やかさのあるそれは人生で初めて嗅ぐ香りだが、初めて入った中華料理店て無意識に緊張していた椿の心を暖かくほぐしていき。「 ……良い香り、 」と穏やかにふわりと笑いながら小さく呟いては美しい橙の水面に目線を落として。 )
( / とんでもないです…!これからはコンスタントにお返事が出来ると思いますので、ぜひまたよろしくお願い致します……!!!!/蹴可 )
そうだな…もし、椿があの服を着てああやって給仕をしてくれたら、華やかになるだろうな。
( 目の前の相手がこちらの問いかけに反応するように、その蘇芳の瞳をぱちりと丸めておずおずと問いかけてくれば、注文を厨房へと伝えに行く女性の後ろ姿を見ながらチャイナ服を着た椿を今一度、想像してみて。男を誘うようなおみ足を見せつけてくるスリットに、体のラインがくっきりと出るタイトなデザイン。それをメリハリのある体を持つ椿が身に纏えば先ほどの女性にも負けない華やかさになるだろうと述べれば「 もちろん、普段の椿も十分華やかだけどな。 」と、いつもの和服の相手も見目麗しい美しさだとあけすけなく褒めて。茘枝の甘い香りに表情をほぐされる相手の表情を見れば「 ここの料理の国の人々は茶を好んでて、色んな種類の茶があるんだ。その茶なら、椿も飲みやすいと思う。 」と、こういった中華の店に何度か来たことがあるらしく、その際に味わったもので気に入ったものを注文して、その茘枝紅茶ならば気にいるだろうという考えで、己の前に運ばれてきた烏龍茶の芳醇な香りを堪能してから一口啜り。 )
華やかに、……。
わたし、おハナさんに相談してみます。
( 矢張りああいった服での給仕というのは男性の心を刺激するものなのだろう、椿は今度おハナさんのお店に行ってそういう服があるか聞いてみよう…と、たった1人お家にいる昼間の時間の予定表に新たに予定を組み込んで。ただただ彼に喜んでもらいたい、といういじらしい乙女の恋心は強い行動力に変わるものなのだ。普段とは違う服の自分も、そして普段の和服の自分もきちんと褒めてくれる彼の優しさにまた淡く頬を染めながら「 有難うございます…。 」とわかりやすく嬉しそうにはにかめば和装も洋装もなにでも着こなしてしまう彼の隣に立っていても恥ずかしくないように、という自分の密やかな目標が報われたような気すらして。かれの説明にふむ、と真剣に耳を傾けていれば彼のおすすめしてくれた茘枝紅茶を火傷をしないようにしっかりとふう、と冷ましてから1口静かに啜って。ふわり、と広がった果実系の爽やかな甘みと紅茶の程よい苦味が合わさった味は、いつも飲んでいる紅茶よりもずっとずっと飲みやすくて程よい甘味を感じ。「 !あまくておいしい…! 」とぱちぱちと瞬きをしながら新鮮な驚きと美味しい!という分かりやすい反応を見せては上品に口元に手を添えながらふわりと微笑んで。 )
あー…おハナさんには俺から話しておくよ。
( とんとん拍子で、椿があの服を着ることが決まれば、当の本人はこちらが述べたことを鵜呑みにして、件の女主人に相談してみようと意気込めばそれに待ったをかけて。確かにおハナさんに話せばいいだろうが、椿とおハナさんを二人にしてしまえば余計な気を遣って、また変な服を椿に持たせるかもしれないと心配してのことでこちらから話しておくと言って。こちらが選んだ紅茶を上品に啜って、たちまち花の咲くような笑顔を浮かべればその様子にこちらもつられて笑みを浮かべて。二人とも茶の香気と味に解されていると、いよいよ料理が運ばれてきて、献立は麻婆豆腐に青椒肉絲、餃子に小籠包、叉焼と様々な料理が二人の前に並べられ、二人で食べるには少々種類が多い気もするがそれぞれが半人前といった量なのでそこまで多いわけでもなく。「 さぁ、食べようか。 」と、t手を合わせて。 )
?
ありがとうございます。
( 彼からの待ったに蘇芳をまんまるにさせて首を傾げては何故かしら、と思いつつも素直に彼に従い。何かおハナさんに他のお仕立ての用事があるのだろうな、と半ば無理やり自分を納得させてはあの服を着るにあたってちょっぴり運動して体を絞らなきゃ…と棒切れのような足と男性の両手で簡単に掴めそうな程の細い腰を持つ周りのウエイトレスたちをちらりと見やって。次々に運ばれてきた料理たちはどれも山椒の香りが効いていたり柔らかな湯気の立つものたちばかりで、廓では無論こんなに湯気が立った状態での料理を食べられることなど滅多に無かったのできらきらと瞳を輝かせ。「 はい!いただきます。 」と彼と同じように両手を合わせては、どれから食べよう…と目の前に広がるきらきらとしたご馳走たちを輝く瞳で見つめて。 )
( / 一度、本体会話だけ失礼します。今、本体の方が立て込んでいて、今週の返信は無理そうです。申し訳ありません。来週からは返信できるようになります。本当に申し訳ありません。 )
( / とんでもないです!どうか無理なさらず…!!
暑い日が続いておりますし、体調にはお気を付けてくださいね。顔出しありがとうございます…! )
まずは麻婆豆腐から食べてみようか。
( 初めて目にする料理たちに期待いっぱいといった様子で目を輝かせながらどの料理に手をつけるか迷っている相手に助け舟を出して。麻婆豆腐に含まれている香辛料で、食欲が増すだろうという考えからで、相手が心の中で密かにダイエットを決意していることなど知る由もなく、今日はお腹いっぱい食べさせようとしており。女性なら少しくらい、脂が乗っていたほうがいいのだ。それに椿もまだまだ成長の途上。栄養をしっかり取らせなければという心遣いで、麻婆豆腐を気持ち多めに取り皿に取り分けて「 はい、どうぞ。 」と差し出して。 )
( / 大変お待たせしました…!本体が落ち着いたのでこれから高頻度で返信できます。 )
まーぼーどうふ…。
( 聞き馴染みのない名前の中にある豆腐、という単語で豆腐を使った料理なのだと辛うじて判別できる程度で、椿は幼い子どものように辿々しい口調で目の前のふわりと香辛料の香りが香ってくる1品の名前を呟いて。少し多めに更に盛られた麻婆豆腐に「 あ、ありがとうございます…!! 」と本来ならば自分がやらなければならない仕事を彼にさせてしまった罪悪感も含めつつお礼を言って受け取り。小皿に盛られた麻婆豆腐は艶々と光る豆腐と香辛料の香りのする餡掛けのようなものがとても食欲をそそり、椿の蘇芳の瞳はきらきらと輝いて。いただきます、と小さく零した後にさっそく一口食べればふわりと口の中に広がる優しい辛味と鼻に抜けるような香辛料と豆腐のまろやかさにぱち!と瞳をまん丸にして。口元に手を添えつつ暫くむぐむぐと咀嚼をしては、「 美味しい…!ちょっぴりある辛味も豆腐でまろやかになってて、この餡掛けのようなものですごく食べやすいです! 」と人生で初めて食べる中華はどうやら椿のお気に入りになったようで、周りにきらきらと星を飛ばしながらまた一口と食べて。 )
( / とんでもございません…!!
無理せず、これからもよろしくお願い致します…!! )
( 先日の喫茶店での食事のように、初めて口にする料理に感動して、目をキラキラと輝かせればその様子を見てこちらも気が良くなったのか、「そうか…!じゃあ次は餃子を…」と、頼んでいた料理を勧めていき。人が美味しそうに食べている様子を見るのは気持ちよく、またそれが己が奢るものとなるとまた格別で、だからこそ餃子に小籠包、叉焼と、ダイエットを決意した相手の覚悟を打ち崩すように次々と料理を勧めていけば、やがて卓上にあった料理の皿は2人で全て平らげてしまい。お互い一息ついて、これで楽しい食事の時間は終了…かと思いきや、「 椿、デザートも来るからな。 」と別腹と言わんばかりに頼んでおいた胡麻団子、杏仁豆腐、月餅といったデザートと茶が運ばれてきて、今日はとことん椿を太らせ…お腹一杯になってもらおうとしていて。 )
( / こちらこそ、よろしくお願いします…!
これからの進み方なのですが、これ以降、百貨店でやることやりたいことがなければ、以前相談していた「疲労」で体調を崩す展開かなと思っているのですがいかがでしょうか? )
んふふ。
ぜんぶ美味しいです、─── ハッ。
( 今までの人生で食べたことの無い異国の料理たちはどれも新鮮な美味しさに満ちており、与えられるがままににこにこもぐもぐとご機嫌で食べていることしばらく。デザートまで用意されていると伝えられたあたりで漸く先程体を絞ると決意したばかりなんだったと思い返せば、明らかに1食の摂取カロリーを大幅に超えているであろう現状に乙女の脳内は警笛を鳴らし始めて。目の前に広げられたデザートたちはどれも初めて見るものばかりで、ふわりと漂う甘い香りが更に椿を誘惑するように決意を揺らがせ。だがしかし目の前の彼はきっと自分を食べさせることに楽しさを見出していることは火を見るよりも明らかで、椿は「 お、お腹がいっぱいなので、でざあとは少しだけ頂戴しますね! 」と自分の中で精一杯の譲歩をしながら心の中で明日はいつもよりもたくさんお掃除して運動しなきゃ…と決意を。 )
( / 疲労での体調を崩す展開で大丈夫です…!!
帰りの車でだんだんと本格的に体調を崩すしていくような形で小出しにさせていただきますね…!! )
そうなのか?ほら、これとか美味しいぞ。
( デザートと共に配膳されてきた烏龍茶で口の中をさっぱり流していると、目の前の相手が不自然にデザートを遠慮すると、どうしたのかと首をかしげて。女性には、確か「甘いものは別腹」という言い伝えがあったはず。であればこのくらいの量の甘味は食べられるだろうと、椿の頭の中でどれだけの決意と葛藤がせめぎ合っているのかを知る由もなくせめてこれらだけは食べてほしいと勧めるようで、胡麻団子を一つ摘まんでは「ほら、あーん…。」と、相手の口に向けて。 )
( / ありがとうございます!この食事のシーンが終わり次第、車のシーンに移らせてもらいますね。 )
ぅ、……。
ひ、一口だけ。
( 元々の甘いものが好きな性分に加えて、好いた相手手ずから口元に胡麻団子を差し出されれば断れるはずもなく。決意をした瞬間に甘いものを口にしてしまう罪悪感はあれど、小さな口を開けてそのまぱく、と胡麻団子を口にすればやはりこれも人生で初めて口にするものだったのか、自分の知っている団子とはまた違う味や食感の胡麻団子に長いまつ毛に囲われた大きな瞳をぱちぱちと瞬きさせながら咀嚼し。「 おいしいです…!いつものお団子とはまた違う風味です! 」と先程までの遠慮の姿勢はどこへやら、キラキラと蘇芳の瞳を輝かせてはにこにこぴかぴかと頬を弛めて。 )
( /かしこまりました!
これからもぜひよろしくお願い致します……! /蹴可 )
( やはり甘味の誘惑には抗えなかったのか、こちらが差し出した一口の胡麻団子にぱくりと喰らいつけば大きな蘇芳の瞳をきらきらと輝かせて感動を表現するとこちらはそうだろうそうだろうと満足するように頷きながら笑みを浮かべて。この流れで「 これは杏仁豆腐って言って…。 」と次の甘味を勧めて、結局一つの胡麻団子を皮切りに、椿の強固な覚悟( など直政は知る由もないのだが… )はいとも簡単に崩れ去り、勧められる甘味を全て平らげてしまい。最後に茶で口の中を流せば2人で満足といった様子で料理店をあとにして、「 どうだった?初めての中華料理は。 」と気に入ってもらえただろうかと問いかけ、もっとも椿の表情を見れば聞くまでもないだろうが…。 )
………………ハッ!
( 矢張り甘いものの誘惑には抗えないのが若い少女の性分であり、ふと我に返ったときにはスッカリ目の前の甘味の皿たちが綺麗に平らげられており。満足!とにこにこ微笑んでいたものの我に帰った瞬間に今何が…?!と蘇芳の瞳はまん丸に丸められており、先程の決意から一瞬で時が進んだような今の状況に驚いているようで。だが彼から穏やかに中華料理の味についてを聞かれれば、やっぱり明日から頑張ろう…と普通の街中にいる女学生のようにダイエットは後回しにすることを決意。「 あの、とっても美味しかったです!日本のお料理とは違う調味料を使っているから、色んな味がして…自分でも作れるようになりたいです。 」とほろほろと穏やかな華のように笑って見せれば料理のレパートリーに中華料理も新たに増やしたいと答えて。 )
それはよかった。
( 初めての中華料理について、顔を華のように綻ばせながら改めて言葉にして感想を述べられると、その笑顔を見れて、また満足そうな感想を聞けて、こちらも満足だという様子で上記の様に述べて。純粋で朗らかな椿は知的好奇心も旺盛なのか、中華料理を作れるようになりたいと告げられると「 ふむ、じゃあレシピを用意しないとな。 」と、その好奇心を尊重するためにと呟いて。その後も、本屋で中華料理のレシピ本を買ったり、食材を買ったり、椿の日用品を買ったりと百貨店を十分に楽しみ、帰りの車には二人の両手いっぱいになるほどの買い物袋が詰め込まれ。あたりはすっかり薄暗くなった時刻、夕焼けの優しい光が二人の乗る車を照らしており、その光を眺めながら「 今日はどうだった? 」と視線は進行方向そのままを向きながら傍らの相手に問いかけて。 )
すっごくすっごく楽しかったです!
……それと、私こんなにも色んなものを与えていただくことが初めてで。胸がいっぱいです。
( もうすっかり太陽の光が暖かな橙色になった時頃。夕陽に照らされてほんのり薄紅色に染まった頬をそのままににこにこと頬を綻ばせながら彼の問いかけに興奮気味に答えた後に小さな声でぽそぽそと後半部分を付け足して。ぽかぽかと暖かな気持ちに包まれた胸元に手をそっと添えれば、夕陽を受けてきらきらと輝く愛おしそうな紅玉で彼の方を見つめては「 直政さま、ありがとうございます。 」と何かを与えてもらう度に感謝を伝えてはいたけれど、改めて感謝の言葉を口にして。─── だがしかし暖かな気持ちになっていることは間違いないのだがその熱っぽい感情は熱から来るもので、慣れていない環境に気付かないうちに体調を崩していたのか本人の自覚のないままに火照る体はどんどんと椿の体調を静かに蝕んでいき。 )
…椿…?
( 安全運転を心がけ、進行方向にしっかりと視線をやっているため、夕陽に照らされた椿の蘇芳がまた一段と美しく輝いていることに気づくことが出来なかったが、椿の今日の感想を聞いているとその無邪気な様子につられてこちらも微笑んでしまい。しかし、その当の本人の声色の様子がだんだんと曇っていくと、どうしたのだろうかと訝しむように表情を強張らせて。運転の合間、チラリと彼女の方に視線をやるとその蘇芳には虚な色が混じっており、様子がおかしいことに確信を抱けば己の片手を椿の額に当ててみて。確信通り、手のひらからは明らかに高い相手の体温が伝わってくれば「 熱があるじゃないか…! 」と目を見開けばこうしてはいられないとはやる気持ちが足に伝わり、アクセルを深く踏んで屋敷へと急行して。 )
?、……ねつ…、
( ぽかぽかと火照る体はどうやら素敵な一日をすごした興奮から来たものではなく、いつも心地よい温かさの彼の手が額に触れればひんやりしてて気持ちいいなと感じる程度にはくらくらと体が熱に侵されており。彼の言葉をたどたどしく鸚鵡返ししては、熱?わたしが、?あれ…でもからだがあつい、嗚呼でも今日は直政様が寝かせないと仰っていたのに、舞はいつ見せるんだっけ。とぐるぐると上手く回らない頭で様々なことが浮かんでは消えていき、次第に混乱しくらりと回った感覚に抗うことなく静かに遠くなっていく意識でふと、遊郭ではこうして体を崩したら、売り物にならないと折檻をされるか暗くて寒い部屋でたった一人で熱が下がるまで隔離をされるかの二択だったことを思い出し。椿は折檻をされたことがなかったけれど、またあの部屋に行かなきゃならないのかしら。嗚呼厭だな、怖いな。と思ったその瞬間に意識はぷつんと途切れ。 )
椿…?おい、椿!くっ…!
( アクセルの踏み込みの深さと比例して車窓から流れる景色が早くなり、周りの車をも追い越していくほどの速さになるが、傍らの相手の容体がどんどんと悪化していけばその様子に早く連れて帰らねばと焦り。ついには曖昧だった言葉も帰ってこず、椿の意識が途切れれば全身から嫌な汗が流れ始めて心臓がどくどくと嫌な鼓動をあげて。ようやく屋敷に到着すると、今日買った品物には目もくれず、まずは椿を抱き上げて相手の寝室に運びベッドに寝かせて。改めて様子を確認しようと額に手をやればその体温は先ほどよりも熱く、頬も化粧のものとは思えないほど不自然に赤く染まっており、体調を崩していることは目にも明らかで。一度部屋を出て行き、またすぐに戻ってくればその手には鞄が提げられていて、鞄からなにやら取り出したかと思えば出てきたのは聴診器。この大祝直政は製薬会社の御曹司であり、既に親の事業の一部を担っている。当然医療知識も備えており、椿が着ているワンピースを緩め、その身体に聴診器を当てて心音を確かめていき。「 ( 心音が乱れている…。呼吸も。けど、これなら…。 ) 」と相手の様子を冷静に分析していけば「 過労から来る熱だな…。 」と診断結果を小さく呟いて。重篤な症状ではないとわかり一息つくも、身請けして間も無く連れ回したのが良くなかったのだろうかと己なりに反省して、その額に冷やした濡れタオルを添えてはそばで苦しそうに肩で息を上下させる相手を見守って。 )
( / 申し訳ありません!製薬会社云々の設定を追加させてもらいましたがよろしかったでしょうか…? )
……さ、……ねえ…さん……。
( 暫くただ胸を上下させながら苦しげに息を繰り返していたものの、熱にうなされながら小さくぽそりと姐である花魁を呼んでは固く閉ざされた瞳からは一筋の涙が零れ。─── こういった時に母を呼ばない理由は、椿に母の記憶などはないから。生まれて直ぐに母は梅毒で死んだので、腕に抱かれた記憶すらも微笑みかけられた記憶すらもない。ただ或るのは母のように暖かく優しい温もりの姉花魁のみ。この場にはいない姉を探すように…もとい、狭くて暗いあの部屋からの手口を探すように白い手を彷徨わせてはほろほろと音もなく涙を流して。 )
( /もちろんです!
ただでさえ完璧なのに医療知識まで兼ね備えているとなれば街の女性たちが放っておかないのも当たり前ですね…素敵です…!! 蹴可 )
椿…。
( 額に濡れタオルを添えた後も、汗が流れれば拭いてやり、息苦しそうにしていれば肩をさすってやったりと手厚く看病していて。その最中、掠れた声でうわごとのように姐さん、姐さんと切実に呼びかける相手の姿に遣り手婆の話を思い出して。産みの親は感染症で仏となって、それからは姐さんと慕う1人の花魁に育てられたと言う。こちらに心を開いているとはいえ、この屋敷に来てまだ数日で慣れないこともあり、また、体調を崩す今のような状況だからこそ心細くなって、心の支えとしていた人を無意識に求めているのだろう。何かを求めるように彷徨い始めるその手を片手で励ますように優しく、しかし力強く包むように握ってはもう片方の手で次々に流れ、零れ落ちる涙を拭ってやりながら「 大丈夫、大丈夫だ。 」と元気づけるように囁いて。 )
、………だ、っこ。
( 姐女郎を探してさ迷っていた手が大きくて暖かな手に包まれては、椿はそれに釣られるようにふと涙に濡れた蘇芳の瞳を薄らと開けて。まだ熱で頭が混乱し、涙でぼやけた視界ながらも目の前にいる自分の手を包む優しい手の相手に幼い子どもが抱擁を強請るようにたどたどしい区長でぽそりと言葉を零しては、人肌が恋しいのかこんなにも大きな布団でひとりぼっちなのが不安なのかまたほろほろと蘇芳の瞳からは涙が溢れていき。目の前にいるのが誰か、そんなことを考える頭の余裕はないけれどそれでも〝自分が頼りにしている相手〟だということは本能的に感じ取っているのか出来るだけ彼の前ではいつもしゃんとした姿を見せようと背伸びをしている椿も今だけは年相応よりもずっとずっと幼いような様子で。 )
…っ。
( 誰かを求めて彷徨う椿の手を勇気づけるように、体温を分け与えるように、程よく力を込めて握ったり、撫でるように揉み込むようにと力の込め方を変えながら見守っていると、たどたどしい口調で抱擁を強請る言葉が出てくると突然のことに一瞬言葉を失って。普段から男を惑わせてくるような無邪気な言葉が相手の口から出てくることはあってもこうやって、甘えながら惑わせてくる言葉はなかったはず。まさか寝惚けているのだろうかと疑いながら、どうするべきかとうーんうーんと悩み果てて。少しの間考えた結果、これも看病だと己に言い聞かせると握り込んだ椿の手を一度離すと着ていたジャケットを脱ぎ、シャツのボタンも少しだけ緩めてから相手と同じ床に入れば椿の要求通り、全身で体温を分け与えるように抱きしめて。 )
……えへへ、
( 自身の要求通りに、まだ誰かはハッキリとは理解していないけれど信頼の足る人物に優しく抱擁されればふにゃりと花が綻ぶように笑顔を見せて。そのまま己の柔らかな肢体を押し付けるように彼にぎゅう、と抱きついたりすりすりと頬ずりをしては一通り甘えて落ち着いたのかはたまた満足をしたのか、そのまま泣き疲れた子供が眠ってしまうように静かな寝息を立て始め。先程まで見ていた悪夢はこうして彼に抱き締められていることによって今は見ていないのか、今は人形のような表情で静かに呼吸を繰り返しているだけ。ただし彼に抱きついている手だけには依然力が込められているので、彼を解放する気はさらさらないようで。 )
( 赤子をあやし寝かせるように、抱きしめるために椿の背中に回した手でとん、とん、と穏やかなリズムで優しく撫でるように叩いており、それがどうやら心地よかったのか先ほどの病に魘されて浮かべていた苦しそうな表情がいつものように花びらが綻ぶような笑顔に変わっていけばこれでよかったようだと安心して。しかし安心したのも束の間、椿は寝ぼけているのか、こちらを抱きしめる力を強めて柔らかな肢体を押し付け、その上頬擦りもしてくれば、その官能的な感触に情欲が掻き立てられて。ワンピースの上からでもその豊かな胸が押し付けられ、ひしゃげる感触がはっきりと伝わってくると辛抱たまらんと鼓動が早まるが、いくらなんでも病人にそんな欲を持つなんてダメだろうとなんとか理性を保ち。そうやって欲望に打ち勝ち、椿も落ち着いて寝入ったところでそろそろいいだろうとベッドから出ようとするが、こちらの背中に回された異様に力が込められた相手の手によって阻まれて。無理矢理剥がしてしまうことも出来るがそうすると相手の睡眠を妨げてしまうだろう。身をよじってなんとか這い出そうとするがそれも叶わず、かえって相手の柔らかな肢体に擦り付けることで全身でその感触を味わってしまうことになり、自身のある部分に血流が溜まっていき。 )
─── …直政、さま、?
( それからどれくらい経っただろうか、ふと椿がゆっくりと紅玉を露わにしては目の前にいる美丈夫の名前をぽそりと呼んで。まだ夢現のぽやぽやとした頭では事の経緯が理解出来ず、嗚呼これは夢かしらなんて上手く回らない頭で考えれば夢ならばどんなに彼に甘えても何をしようともなんにも問題がないかとするりと彼を抱きしめていた手を彼の両頬に添えて。女たちが焦がれてやまないシミ一つない肌と役者のように涼しく甘い顔立ち、自身を見つめる真っ直ぐな黒瑪瑙に引き寄せられるようにぼんやりとした瞳で彼を見つめればそのまま艶やかな唇を彼の頬に押付けて。ちゅ、と小さな音のあとに柔らかく愛おしそうに紅玉を細めては「 お慕い申しております、 」と、今この状況を夢だと認識しているからこそ自分の気持ちを素直に彼に投げ掛けて。なんて素敵な夢なのかしら、ずっとこの夢が続けばいいのに。なんて考えてまたふわりと微笑んでは、白魚のような指で彼の頬をつう、とひと撫でしたあとにまた満足したのか今度は彼を拘束することなく瞳を閉じて屹度もう朝まで起きないであろう深い眠りについて。 )
…っ、お、おい椿…!
( 椿の異様に力がこもった抱擁からなんとか抜け出そうと必死に、かといって起こさないように慎重に身を捩るが、どうやらその動きで相手を起こしてしまったらしく、小さく、見目好い瞼がほんのりと開いて蘇芳が覗けば万事休すかと動きがぴたりと止まって。しかし、椿はこの後に及んで寝ぼけているらしく、その流れるような細指でこちらの両頬を抱えたかと思いきや相手の顔に浮かんだ表情はまるでこれから接吻をするかのようなもので、その顔がどんどんと近づいてくれば上記のように取り乱しながら相手を逃れようとして。しかし、反応が遅れてしまい、そのまま相手のキスを唇に…ではなく頬に受け止めながら、心からの告白が耳に届くとあまりの事態に固まってしまい。「 ( 椿が…俺を? ) 」と突然の告白に頭の中が混乱しながら、こちらの胸の内を乱した件の相手はそのまま力尽きたように、拘束もわすれて眠りこけており、そんな相手を眺めながらこれはきっと、恋に恋する乙女の勘違いというものなのだろうと、期待しないように自分こそ勘違いしないようにと釘を刺して。それに、自身は椿を金で買った狼藉者であり、そんな自分が椿に愛される、愛する資格などないだろうと自重して。なんとか落ち着きを取り戻してベッドから出て部屋からも出ると、一度浴場に行って汗を流して部屋着に着替え、もう一度椿の部屋へと戻ればそれから相手の汗を拭いたり、額のタオルを変えたりと一晩中寝ずの看病をして。 )
( / 突然の告白ありがとうございます…!とても萌えます!これからですがいかがいたしましょう?気持ちを通じ合わせるのはもう少し引っ張りますか? )
─── ……すぅ、…。
( 夢を見た。とても幸せな夢。自分は今までの人生の中でも見た事がないような美しい生地の白無垢を着ていて、真っ赤な紅を唇に乗せてもらって、この世のものでは無いような美しい花畑を歩いている夢。その先には誰か男の人がいて、此方には背中を向けているから誰かわからないけれど屹度どこかで会ったことがあるような、とても大切な人のようなそんな感覚がする。その人に振り向いて欲しくて、手を伸ばして、でも不思議とどうしてか体が上手く動かなくて、その人の名前を ─── 「 ……直政様、…。 」ぱち。と瞳が開けば、目の前にはもうすっかり見慣れた天井。不思議といまさっきまで見ていた夢のことは思い出せずに、どことなく体がスッキリしているような気がする。椿はふる、と静かに上体を起こせば、何故か百貨店で買い物をした後からなんにも思い出せない自身の記憶を辿るように首を傾げて。 )
( / こちらこそ、椿からの抱擁に翻弄される直政様が可愛らしくて背後がにこにこしております…!ありがとうございます!
思いを通じ合わせるのを引っ張るのも良いですし、椿の気持ちを知った今自身の気持ちが混乱して( もしくは自己嫌悪? )少し距離を置いたりしてしまうのもありかなと思います…!!勿論今すぐに気持ちを通じ合わせて幸せな生活を送るのも素敵かと思いますが、背後様としては何かご希望はございますでしょうか……? )
…。
( 椿が眠りについてからも、様子が急変したりしていないか、苦しそうにしていないかと注意しながら相手を見守っていて、その甲斐あってか容体が安定して、寝息も穏やかなものに変わればひとまず峠は越したようだと安心して。しかし、安心しきってしまったのか、今まで張り詰めていた緊張が急に緩んだことで一気に疲れが押し寄せてきたようで、急に睡魔に襲われて。それは自室へ戻ることさえ許してくれず、椿が眠るベッドに突っ伏して、眠りに落ちればそのまま相手の傍で一晩過ごして。そうして迎えた朝。まだ眠りに落ちた意識がシーツの衣擦れの音と、ベッドのスプリングによる揺れを感じ、「 ん、んん…。 」とぼんやり目を覚ませば「 あぁ、おはよう椿…。 」とまだ半開きの瞼を眠そうに擦りながら声をかけ。その微睡の余韻を抱えたまま半ば無意識の行動で相手の額へと手を当てれば「 …。熱は収まったけど、まだ少し熱いな。 」と曖昧な意識でも的確な診断をすれば )
椿、気分はどうだ?
( / こちらとしては早々に気持ちを通じ合わせていちゃいちゃさせたいと思っております…!こちらの勝手な解釈ですが、どうやら夢で直政に届かない?追いつけない?ようなシーンを見たようなので、それがトラウマとなってなりふりかまわずに気持ちが溢れてしまう…という流れはいかがでしょうか…? )
わたし、……夢を見て。
すごく素敵な白無垢を着てね、とても綺麗な場所にいたんです。でも、どんなに頑張っても直政様のいる場所まで行けなくて。手が届かなくて。それがとても悲しくて、寂しくて。
( いつもは暖かくて心地の良い彼の手が、今は自分の体温が高いせいか少し冷たくて気持ちが良い。椿は此方を見つめる少し曖昧な意識の黒瑪瑙を真っ直ぐに見つめては、気分がどうかとの彼の問いにほろほろと言葉を落としていき、額に当てられた彼の手を両手でそっと取ればそのまま彼の手を自身の頬に当てて。もう意識は完全に起きているし熱のせいで意識が混濁している訳でもないのだけれど、こんなにも近くにいるはずの彼に届かない夢を見てしまった不安感からか静かな蘇芳からはぽろりと一粒涙を零して。今こうして自分の傍に彼がいて、手が届く。そんな小さなことが酷く幸せで嬉しくて。椿はそっと瞳を伏せた後にあらためて彼を見つめては「 こんなにも直政様のことをお慕いしているのに、好きな方に触れることも近づくことも出来ないとても怖い夢を見たのです。……屹度、立場も弁えずに愚かにも心の全てを主人に明け渡してしまった花街の女への罰ですね。 」と今度はハッキリと、夢見心地の中ではなくあんなに恐ろしい夢を現実にしないようにと涙に濡れた少し悲しげな瞳で応えて。 )
( / わ!素敵です……!ありがとうございます、是非そうさせて頂きますね…!!!
もし上記のような流れでちょっと違うかも?と感じましたら遠慮なく仰ってください…!!! )
…っ、椿…?
( 相手の体温を確認し終え、熱も弱まったことがわかれば胸を撫で下ろしながらその額から手を離そうとするが、不意に椿の手がそれを阻んでそのままやわっこい頬へと導けば急に何事かとぴくりと反応して。そうしてその蘇芳がこちらを真っ直ぐに捉えながら、椿の小さな口からとても悲しい、悪夢の話がほろほろと紡がれると昨晩、眠りにつく前の相手の言葉と行動が頭をよぎり、何かを思い詰めるような表情を浮かべながら黙って話を聞いて。改めて、相手からの好意の言葉を聞くことができると己の中で釘を刺したはずの感情が揺れ動いてしまい、とどめとばかりにその蘇芳を濡らして悲しげな表情を浮かべてくると胸の奥がきゅうと締め付けられるように苦しくなって。このまま、椿を受け入れてしまった方が楽になれるしお互い幸せになれるのではないか。そう考えてこのまま椿を抱き締めようとするが、ふと頭によぎったのは花街で女遊びをする下卑た男たちの姿。椿を買って屋敷に迎え入れた時点でその者どもと同類なのだが、己の中でいまだに折れない何かがあるのか、その白磁の頬から手を離せば「 …今の椿は熱があるから少し落ち着かないんだ。薬を出すからそれを飲んでゆっくり休みなさい。 」と、ゆっくりと相手から離れて部屋から出て行って。 )
( / ありがとうございます…!椿様の儚い雰囲気に本体も胸が締め付けられる思いでした!せっかく気持ちを露にしていただいたのですが、2人のすれ違う模様も見てみたいなと思ったので少しだけ引っ張らせてください…!直政自体、受け入れる方にすでに揺れ動いているので、いつも通り仕事に行ってそれから帰ってきた時にまた気持ちを聞ければコロッと堕ちると思いますので…! )
、ッ……。
( するり、と頬から離れた心地よい温もりはそのまま手の届かないところまで離れてしまい、遂には何も口を開くことが出来ないままに扉の向こうへと出ていってしまう。いくら熱が下がっていないからと言って、夢で見る程に愛おしい男への気持ちが混乱から来るなどあるはずがない。自分が花街出身の女だから信じて貰えないのかしらだとか、この気持ちが迷惑になってしまったのかもしれないだとか、もしも私が彼とお似合いのお家柄の人間だったらだとか、心に咲いた不安の花や後悔の蕾たちは1度咲いてしまえば留まることを知らずにただただ椿の心を黒く染めあげていくばかりで。─── まるで簪を突き立てられたような心の臓の痛みも、音もなくはらはらと頬を滑り降ちる涙も、屹度扉の向こうにいる彼は気付くことは無いのだろう。椿の「 …どうして、 」とぽつりと呟いた鈴のような声は、誰に届く訳でもなく布団の上に落ちて、そして消えてゆき。 )
( / もちろんです!多少の障害やすれ違いがあれば盛り上がるものですから大歓迎です……!
かしこまりました!どうにか直政様に完全に振り向いていただけるように、コロッといっていただけるように!椿も背後も頑張らせていただきます! )
( 椿の部屋を出て行った後は己のための朝食と、相手のための粥を用意しており、調理している間、頭の中では先ほどの好意の言葉が無意識に反芻されていて、その度に胸に喜びが溢れ出すがそれでもその感情を認めまいと頑固に首を横に振って。そうして出来上がった粥と薬を相手の部屋へ持っていけば、作り置きのものもあるので昼はそれを食べること、薬を時間通りに飲むこと、水分をしっかり摂ること、自分は別の場所で朝食を摂り、そのまま仕事に行くことを伝えれば椿の気持ちを知ってしまったことで気まずさなのか、ぎこちなさを滲ませては早々に部屋から出て行き。そうして別々の部屋で、別々の朝食を同じ時間に摂る様はまるでいまの2人の距離感を表しているようで、己の屋敷なのに若干の居心地の悪さからかはやる気持ちが箸の速度に表れ、いつもより早めに食べ終えてしまえば出勤の準備を整え、最後に相手の部屋の前で扉越しに「 じゃあ椿、仕事に行ってくる。ゆっくり休みなさい。 」と顔も合わせずそのまま屋敷を出て行って。 )
( / ありがとうございます…!どんな椿様が見れるかいまから楽しみです…! 次で仕事から帰らせますのでよろしくお願いします! )
─── … っ、いって、らっしゃいませ…。
( 彼が作ってくれたお粥は、とても優しい味で体調を崩した椿も食べやすいものだった。けれど何故だか椿の食べる速度はいつもよりも随分とゆったりしたもので一口食べてはスプーンを置き、を繰り返すうちにどうやら彼が仕事に行く時間になってしまったようで、顔を合わせることも無く仕事に行くことを伝える彼の言葉にギュッと心臓が締め付けられれば彼に届くか届かないかほどの声でしか答えることができず。屹度自分が身分も弁えずに気持ちを伝えたから、と今の自分たちの距離感についてを酷く後悔してはなぜか先程よりもとてもしょっぱくなってしまったように感じるお粥を食べ切り、薬を飲み、そうして体調は随分と良くなったはずなのに未だ治らない胸の痛みを抱えながら彼に申しつけられた通りにしっかり休まねばと瞳を閉じて。それから、たまにふと目を覚ましては水分を取り、昼の時間になれば昼食と薬を摂取し、また眠り、と泥のように一日を過ごせば体調こそ万全になったものの拭いきれない不安感と治らない胸の痛みは変わらずに彼が帰ってきたら不躾な事を言ってしまったことを謝罪しようと胸に決めつつまた眠り姫のように長いまつ毛に縁どられた瞳を閉じて。 )
( /かしこまりました!
こちらこそよろしくお願い致します……!!! )
( 胸の中につっかえを抱えたまま会社へと出勤し、いつも通りに今日の業務に取り掛かるが頭の中で椿に告げられた告白の言葉が頭の中を何度もよぎり、普段からは考えられないようならしくないミスを連発してしまい。そうやって慌ただしく1日の終業を迎えれば、ふと、椿がチャイナ服を欲しがっていたことを思い出し、ついでに誰かにこの悩みを聞いてもらえれば胸のつっかえも解消できるのではと思い至ればちょうどいいと、服のことならとおハナさんの店へと立ち寄って。 )
『 おや、ナオさんじゃないか…って、なんだいそのシケた顔は。 』
( 以前、椿と共に訪れたシックで豪奢な呉服店に入ればちょうど用事がある女主人が店の中で巡回をしていたようで、顔を合わせるなり自分では気づかないほど陰気な表情を浮かべていたようで指摘されてしまい。「 あぁ…うん、実は…。 」と、まずは訪れた要件である、椿がチャイナ服を欲していたこと、その本人から好意を告げられたこと、そしてそれを自分は受け入れれずにいることを相談して。こうして花に相談できるのは相手の朗らかなところや器の大きさからなのかもしれない。自分の相談を静かに聞いてから、しばらくしてから相手は『 ナオさんはナオさんの言う下衆どもとは違うよ。私が保証する。 』と力強く、かつ優しい口調で語り始め。『 私から見た2人は花街に漂う悪意は全く無い、見てるこっちが恥ずかしくなるくらいの春だったよ。それにナオさんは椿チャンを手込めにしたりしてないだろう? 』と迷う自身の背中を押すように雄弁に語れば『 もう一度、椿チャンの顔をよく見て、話を聞きな。それで椿チャンがどれだけナオさんを慕っているかわかるサ。 』と最後にはにっかりと笑って勇気づけるような言葉を投げかけて。そういえば、好意を伝えてくれたとき、相手はどんな顔をしていたのか、粥と薬を持って行った時、どんな顔をしていたのかが思い出せなくて。扉越しに声をかけた時、どんな顔をしていたのか、そうやって自問自答すれば己がひどく薄情者に思えてしまい、一刻も早く相手の顔を見たいと思い至れば「 ありがとう、おハナさん。もう一度、椿と向き合ってみるよ。 」と力のこもった言葉を紡いだ表情はどこか憑き物が取れたように晴れやかで。そうやって店を後にしようとすると『 あぁ、ちょっと待ちなナオさん。 』と引き止められ、何かと思えば『 これ、ウチの新作でさ、ちょっとだけ試してみてよ。 』とパフューム瓶から一吹き、二吹きと香水が自身に振り掛けられ。甘く、爽やかな花の香りが纏われ、その香りに思わず魅了されるようで、「 うん、素敵な香りだ。 」とこれから大事な話をしにいく己をリラックスさせてくれるようで、気持ち晴れやかに店を後にして。 )
ただいま。
( 屋敷へと帰れば、普段なら出迎えてくれるはずの椿は顔を見せてくれず、代わりにしんと静まり返った屋敷の空気が出迎えてくれて。言いつけ通り、相手は休んでいるのだろうと思い至ればそのまま相手の部屋へと赴けば「 椿?入るぞ。 」とノックし、声をかけてから扉を開けて部屋に入り。ベッドで瞳を閉じる相手はまるで物語に出てくる姫君のように可憐で儚く、今にもどこかへと飛んでいきそうなほど弱々しい雰囲気を漂わせていて、その額へ手を当てると、養生の甲斐あってか熱は完全に収まっており。ふと、目をゆっくりと開ける相手に「 具合はどうだ? 」と顔を覗き込むながら問いかけ。しかし、その直政の身体からは香水の匂いがぷんぷんと漂っており。じつは、これは以前、椿とお花の店に行った時にお花がつけていた香水の香り。それに気づかなかったのはそれほど自分が思い詰めていた証拠で、お花がその香水を振りかけたのは椿への発破であり、『 早くしないと私がとって食べちまうよ。 』という警告にも等しいお花の粋な心遣いで。 )
( / 早速帰らせました!文が長くなってしまい申し訳ありません…! )
!
ごめんなさい、私お出迎えもできず…!
( 不思議と夢は見ず、ただただ深い海の底から上がってくるように意識を浮上させればいつの間にか帰ってきていた彼の黒瑪瑙と瞳があい慌てて上体を起こして。それに釣られてはらりと天の川のような髪がはらりとひと房肩から流れては、ふと目の前の彼から香ったのは紛れもなく以前彼と共に行ったことのある呉服店の女主人の香りがして。おハナさんのところに行ったんだわ、こんなに香りが移る程に長い時間、近くに。彼のことを思えばなんにも間違っていないのだ、御曹司である彼と呉服屋の女主人であるおハナならば立場的にもお似合いだし世間の人間だって納得の2人だろう。頭ではそう理解しているはずなのに、椿の心だけはそれを強く拒んでいるのか、カッと目の奥が暑くなったと思えばまたぽろぽろと涙を零しながら「 ……ごめんなさい、私、わかっているんです。直政様にこんな気持ちを持つべきではないって。貴方に、こんな浅ましい気持ちを伝えてはならないと思っていたのに。……でも、どうしても嫌なんです。直政様の隣に居たいと思ってしまうんです。本当に貴方に見合う人間では無いのに、どうしようもなく、……想って、しまうんです。 」と、涙に濡れた蘇芳で真っ直ぐに彼を見つめながら愛の言葉というよりも謝罪や許しを乞うような辛く悲しい言葉に近いそれらが落ちる花弁のように零れていき。自分は花街出身の、彼に買われただけの遊女崩れ。身分を弁えずに咲いてしまった恋の花たちが彼に受け取られることがなくともその花の存在だけは彼に知って欲しいと、我儘なのは理解しつつも小さな手でそっと彼の大きく優しい手に触れて。 )
( /とんでもないです!ありがとうございます!
おハナさんが本当に優しくてかっこよくて背後が「幸せになって…!」とときめいてしまいました…! )
いいから、今日の椿は休むことが仕事だ。
( こちらと椿の瞳が邂逅するなり、相手は慌てて上体を起こしてくると、その様子を見て普段の体力が戻ってきたことがわかったようで安心し、取り乱す相手の肩を両の手で制止させて落ち着くよう促して。そうして一呼吸おけば、おハナさんに言われた通り、改めて椿からの言葉を聞こうと「 なぁ、つば…き…。 」と声をかけようとするが、その前に相手から話し始めれば、今朝の言葉とは違い、こちらに向けて懺悔するような切実な言葉が次から次へと紡がれていき。蘇芳の瞳からほろほろと雫がとめどなく溢れる顔を見ながら、おハナさんと約束したことを思い出し、相手のベッドに腰掛けながらたがが外れてしまったかのように紡がれる言葉を黙って聞き入り。相手の本当の気持ちを受け取り、あぁ、降参だ、と心の中で小さく呟けば「 椿、顔を上げてこっちを見て。 」と小さく囁いては己の手を取る相手の手をこちらの頬へ導き、そうしてこちらの両手は相手の両頬をしっかりと捕えると目を閉じながら顔を近づけ、そのまま己と相手の唇を重ね合い。2人の体温を感じ合うかのような優しい口付けはしばらく続き、やがて息継ぎのために「 ぷは、 」と離せば2人の唾液が混ざり合った銀の架け橋がかかり、それを拭う暇もなく「 俺も、椿のことが好きだ。楽しそうに家事をして、ご飯を美味しそうに食べて、朗らかに笑う椿が好きだ。 」と愛の言葉を紡いでいき。「 今朝はすまなかった。俺にはまだ、椿の気持ちを受け止める覚悟ができていなかった。でも、今は違う。 」と、今度は目を逸らさずに信念の灯った瞳で相手の蘇芳をしっかりと捉えながら「 椿、愛している。 」と改めて愛の告白をすれば今度は軽く触れるようなキスをちゅっ、と相手の唇に贈り。 )
( / 無理やりねじ込んだ展開ですが気に入っていただけたようでよかったです…!
そして、やっとゴールインですね…!椿様の切なく、儚い言葉でこちらはイチコロでした!背後はやきもきしていましたがこれで一安心です…!)
、直政さ、ま ─── っん、
( 嗚呼どうしようこれで捨てられてしまったら、でもこの気持ちを知られないままよりも余程いいかもしれない。そんなことをぐるぐると考えていれば、心地の良い彼の声が囁かれて自らの手は彼の頬に添えられる。玉砕覚悟で怯えた瞳をおずおずと彼の方へと向ければ、ふわりと頬に手を添えられたと思うが早いか唇に降ってきたのは柔らかく熱い感触。ぴく、と思わず瞳を閉じればまるで夢心地のような現状は本当に夢なのではないかと思ってしまうけれど、紛れもなく頬に触れている彼の手の温かさと唇の暑さがこれが現実だということを椿に伝えてくる。水揚げもまだな生娘にとって接吻というものはどこで息をすれば良いのかもわからず、馬鹿真面目に息をするのを忘れれば漸く唇が解放されて荒く呼吸を吐いて。2人を繋ぐ銀の糸がいやに艶めかしく、くらくらの逆上せるような意識の中でも彼の言葉がハッキリと頭の中に入ってきて椿の蘇芳は大きく見開かれて。心の臓に直接突き刺さるような彼の愛の言葉たちが、黒瑪瑙が、全てが現実と呼ぶにはあまりにも椿に都合が良すぎて、愛していると改めて傷が降ってくればまた椿は小さく肩を跳ねさせて。はらり、と今度は悲しみではなく紛れもない喜びの涙を零せば「 ─── …はい、私も。直政様を愛しております。 」とそのまま彼にぎゅうと今度は彼が自分の香りになるようにその身体を押し付けて。 )
( / 漸く想いが通じあって背後も一安心です……良かった……これで気兼ねなくイチャイチャさせることが出来ます……!!!!(?) )
うん…、うん…!
( 今この部屋には、というよりはこの屋敷には2人しかおらず、静かなこの空間のせいで軽いリップ音は確かに2人の耳に響いて。その接吻で、感極まったのか、椿の蘇芳から暖かな涙がほろほろと流れ、その小さな口から明け透けのない、真っ直ぐな愛の言葉が紡がれればその言葉を噛み締めるように上記のように頷きこちらからも抱き締め返して。相手の嬉し涙の表情に釣られてしまったのか、こちらの目頭がじんわりと熱くなるのを感じ、やがては堪えきれずに一粒の涙を流せば、あぁ、愛とはこんなにも素晴らしいものなのかとお互いの気持ちを繋げ合えた幸せをしかと享受してはお互いの体温を感じあって。しばらくして、体を離せばその視界には先程重ねた唇が目に入り、キスを施した時の相手の唇の暖かさとぷるりとした柔らかさを思い出せば、自身の唇を一撫ですると「 椿、もう一度だけ、してもいいか? 」と、涙と熱に浮かされて潤んだ瞳で相手の蘇芳を見つめ、その片頬を己の手で包みながら了承を得ようとして。 )
( / 早速ですが、イチャイチャを仕掛けました…!しばらくはイチャイチャさせたいと思います! )
( 姐さんは昔から〝 椿には必ず素敵な方が現れるから、それまで誰にも触らせてはいけないよ 〟と何かがある事に椿を守ってくれていた。他の新造たちが17歳ぴったりに水揚げされていく中、その分自分が稼ぐからと椿には1年だけ猶予をくれていた。そのおかげでこうして、口付けも、抱擁も、ぜんぶぜんぶ初めてを彼にあげることができるのだ。お互いの体温が完全に溶け合った頃にふと身体を離せば、いつも凛と涼やかな彼の瞳が涙に濡れ熱に浮かされたような色をしておりぞわりと腰元に粟肌が立ち。もう自分は頭のてっぺんからつま先に至るまで全部が彼のものなのにこうしてお伺いをたててくれる彼の優しさとそれから確認なんてしなくても全部奪って欲しい乙女心がぐちゃぐちゃと混ざったどろりと蕩けた蘇芳で彼をじっと見つめ返して。「 ─── …もっと。1回じゃ、嫌です。 」するりと強請るように彼の首に手を回せば、火傷しそうな程なのに心地よい彼の感触が恋しくて もっとと鈴のような声で応えて。 )
( / もちろんです…!!
椿も慣れないながら、もっともっとと際限を知らずに強請ってしまうかもしれませんがそれを受けるも流すもお任せ致しますので…!!! )
…っ!椿っ、!
( 今の己の表情は一体どうなっているのかさえわからないが、目の前の椿はどろりと蕩けるような、熱に浮かされているような表情をうかべており、あぁきっと、自分もこのようなだらしのない表情を浮かべているのだろう、なぜなら先ほど気持ちが通じ合った相手なのだからと直感的に感じとり。鈴のような声で男を堕落させる言葉を紡ぎながらこちらの首に腕を絡ませてくると、もう辛抱たまらんとこちらも椿の後頭部と首に手を回して、逃れられない状況を作れば先ほどとは比べ物にならないほどの激しい接吻をして。舌も相手の口内へと侵入させ、その中全てを味わい尽くすように貪っては2人のいる部屋にはぴちゃぴちゃと艶かしい水音だけが響き渡り。 )
( / 了解しました!とはいいつつも始まりからかなり飛ばしてしまっています…!こちらも椿様が求める限り応えさせるつもりなのでよろしくお願いします…! )
ん、……っ、は、
( 先程の接吻が子どものお遊びのような、生き物のように口内を弄ぶ彼の熱い舌に自分の舌を差し出すことしか出来ずに椿はただただ鼻から抜けるような甘ったるい息を零すばかりで。ただただ唇を合わせているだけなのに、下からぞわぞわと湧き上がるような擽ったいようなむず痒さに思わず動いてしまった足にシーツに皺が寄れば小さな布擦れの音がしゅる、と鳴り。この豪邸に2人しか居ないからこその静けさが自分の口内から聞こえるとは思えないほどの淫靡な水音がいやに耳に届いてしまい、熱は下がっているはずなのに羞恥から来る涙で瞳に膜が張り頭がぽやぽやと上手く働かない。嫌では無いのに、未知の感覚に体が怯えて体を引こうとしてしまうけれど後頭部に添えられた彼の手がそれを許さずに、椿はただただまな板の上の鯉のように自分を差し出すことが精一杯で。 )
( /こちらこそよろしくお願い致します…!
また何かございましたら、遠慮なくお呼び出しください…!!/蹴可 )
んっ、む…は、ぁ。
( 椿の口内をひとしきり味わったところで、一度呼吸を整えようと唇を離せば一度に比べて格段に濃厚なものを施してしまったためか、先程の銀糸よりも粘度のある架け橋が2人の間に掛かり、ぷつりと途切れるとそれを指で掬いながら舐めとって。ふと、キスをしている時に無抵抗の相手を思い出せば、心の中で悪戯心のようなものが芽生えたのか、相手の寝巻きの襟をぐいと開かせるとその白磁の首筋にちゅっ、と軽いリップ音を響かせながらキスを施して。その後も先ほど、相手が逃れられないよう拘束した時のように肩と腰を抱き抑えれば首筋、鎖骨、胸元にと執拗にキスを落としていき。 )
─── っは、……はぁ、
( 酸欠のせいか、それともこの雰囲気がそうさせるのか、くらくらと目が回るような感覚に落ちそうになれば不意に唇が離れて椿は荒い呼吸を繰り返してなんとか動悸を沈めようと。自分と彼を繋ぐ銀の架け橋がやけに扇情的で、それを指で拭うその仕草すらも椿にとっては悪い毒のようでまた大きく鼓動が跳ねて。彼の一挙手一投足が全て自分を好きなように弄ぶ操り人形のようで、寝巻きの襟を開かれたことに悲鳴をあげる隙もないままに首筋、鎖骨、胸元と順にキスが落ちてくれば「 ひ、 」だとか「 っん 」だとか、先程の深いキスの最中よりも糖度の高い声が漏れてしまい思わず両手で自分の口を抑えて。まるで自分の声ではないようなその甘ったるい声は彼が体のどこかに唇を落とす度に我慢しようとも抑えた手の隙間からどうしても漏れ出てしまい、恥ずかしくて逃げ出そうにも彼の甘い鎖のような拘束がそれを許さずに椿はただびく、と過敏に体を揺らして。 )
…だめだよ。
( 椿の肌にちゅ、ちゅ、とわざとらしく音を立てながらキスを落とすたびに、相手の体がまるで魚のように跳ね、熱と糖度の籠った煽情的な声を漏らすとその反応を楽しむかのようにキスを続けて。しかし、相手はその声を我慢しようと両手で口を塞ぐと、それでは椿の反応が見れないと、面白くないと意地の悪い心を覗かせればそのガラスのように繊細な細い両手首をこちらの右手一本で拘束し、そのままベッドに縫い付けるように押し倒して。それからはまた、もっと椿の声を聞きたいと瑞々しい肌にキスを落とし、時折、生暖かく濡れた舌を這わせ、空いている手もわざと反応させるかのような手つきで相手の肢体を撫で始めて。しばらくの間、椿の反応を楽しんだあとはまた唇を重ね合わせ、相手の口内を味わうかのように激しいキスを始めて。 )
あ、……っんん、
( 口を押えていた両手をいとも簡単に大きな手に捕まえられてしまえば、快楽で力の抜けきった体は簡単にベッドへ縫い付けられてしまう。遮るものが何も無くなったさくらんぼ色の唇からはひっきりなしに甘い声が漏れてしまい、部屋に響く自分の嬌声と水音がひどく生々しいものに感じて椿は恥ずかしそうに脚をすり合わせることしかできず。こんなに気持ちいいことは今までに人生で経験をしたことがなくて、恥ずかしくて今すぐに逃げ出してしまいたいのに体はもっとと彼を求めてしまうので自分で自分の気持ちがぐちゃぐちゃとかき混ざり酷く混乱してしまう。この混乱の元となっているのは間違いなく目の前の彼なのに、その彼に助けを求めるように蕩けた蘇芳を向けては悪戯に口内を弄ぶ舌にまたそんな気持ちも全て覆い尽くされてしまい。 )
( 椿の両手を封じてしまえば、狙い通りにキスを落とすたび、つー、と手を相手の肌に這わせるたびに甘い嬌声が一段と大きく頻度も高くなれば自分の思い通りに鳴いてくれる相手に思わず意地悪に口角をあげて。その唇もやがてこちらの唇で塞いでしまえば許しを請うようなその蕩けた蘇芳もこちらの劣情を煽る材料にしかならず、舌同士を絡ませれば口内の唾液を一滴も残さず吸い尽くし。そうやって相手を弄び、お互いの熱も最高潮に達する…といった直前でまるでお預けを食らわせるようにキスを中断して椿の上から退けば「 はぁ…はぁ、は…。 」と自身も興奮で呼吸を忘れるほど我を忘れていたようで肩を上下させながら呼吸を整えて。いくらか落ち着いてくると、まだ肩で息をする相手の頬を優しく撫でながら、「 椿、俺は一度部屋に戻る。 」とまだ微かに震える呼吸で告げれば「 …怖くないなら…準備ができたら、部屋に来なさい。 」とこの期に及んで相手に無理をさせないような、残った理性を必死に振り絞って告げた言葉で、この先まで着いて来れる覚悟があるのなら、乙女にはいろいろと準備があるのだろうという配慮で猶予を与えては自身は2人の息遣いが響く部屋から出て、自室へと向かって。 )
っは、……はぁっ、…
( くらくらとした倒錯的な呼吸は唇を離されてなお通常には戻らず、甘い吐息混じりの呼吸を繰り返してはふと自分から離れた彼にするりと頬を撫でられ。それにすらもぴく、と浅ましく反応してしまったものの彼の言葉の意味がわからないほどおぼこい訳でもなく、椿はこの期に及んでまだ此方に選択権を委ねてくれる優しくも残酷な彼の背中を見つめながら未だに体から抜けないじんわりとした熱を持て余して。この熱を発散できるのは紛れもない彼だけであり、ふらりとベッドから降りれば彼の言う〝準備〟をしなければと熱っぽさの抜けない体でふらりと風呂場へと歩き始めて。熱いシャワーを頭から被れば先程まで蕩けていた頭も段々と冷静さを取り戻し、〝今自分が何の為に自分を自らの意思で清め、また自らの意思でこれから彼の部屋に行くのか〟を考えてしまえばなんて自分ははしたない女なんだろうといつもの白磁に戻った肌にまた赤みがさして。だがしかし疼いてしまった体が収まらないのもまた事実で、つま先までピカピカに磨きあげればここに来た初めての夜に着用した例の爆弾をまたその身に付けてはその上から浴衣を軽く気付けてそれから軽くお化粧もしてしまったりして。本当はあの爆弾を身に付けなくても良かったのだけれど、でもおハナさんに勇気を貰えるような気がしたから。─── 怖くは無い。ただ少しだけ、不安なだけ。椿は小さな深呼吸をすれば、まるで初めてこの屋敷に来た時の夜の時のような緊張を滲ませながらも彼の部屋の扉をノックして。もうなんの言い逃れもできない。だって彼は自分に選択肢を与えてくれて、自分が選んでこの場に来たのだから。彼の了承を得てから部屋に一歩踏み出せば、「 ……直政様、 」と存外想像していたよりもどろりと甘ったるい声で彼の名を呼んで。 )
( 己の部屋に戻ってからは、自室に併設されてある簡易的な浴室で体を隅々まで清めながら、湯を被ったおかげでいくらか鮮明になった頭の中で先程までの言葉を思い出して。相手に選択肢と猶予を与えておきながら本当に来なかったなら、今こうやって準備する己はなんと滑稽なのか自嘲とするが、それでも相手は部屋に訪れることは確信しており、我ながら意地の悪いものだと苦笑して。湯浴みを終え、簡単にバスローブだけを纏えば次は会場の準備。部屋全体の明かりは薄暗くし、ベッドのサイドテーブルのランプを灯らせてベッドのあたりだけ明るくすればムードは出来上がり。最後にサイドテーブルで伽羅のお香を焚けばあとは相手を待つだけで、こうやって準備をしていると、なんだかその気になり過ぎやしないかと自己嫌悪に陥ってしまうが、どくどくと暴れる鼓動のせいでそれどころではなくなっていき。気分を落ち着かせるため、窓から覗く優しい光を放つ満月を眺めながら相手を待っていると不意にノックが聞こえては心臓の鼓動が一段と飛び跳ねて。ベッドに座ったまま平静を装いながら「 どうぞ。 」入室を許可すれば、浴衣を軽く着付けただけの椿がおり、その合わせ目からはつい先日の、誘惑することしか考えていない黒下着が見え隠れしており、湯浴み直後で上気した頬やらしっとりと水分を含んだ髪やらでどくん、と鼓動と血流が早まって。溶けた砂糖のように甘ったるい声でこちらを呼び、扉の前で立ち止まる相手を迎えに行けば、片腕で椿の肩を抱いてそのままベッドに連れて行こうとするが、その直前、後ろ手で部屋の錠をガチャリ、とわざとらしく音を立てるようにかけ。この屋敷には2人しかいないのだから錠をかける必要もないのだが、椿は今夜、もうこの部屋から出られない、出させないという決意から無意識にそうしてしまったようで。そうして椿をベッドまでリードして2人で腰掛ければ「 本当に、いいんだな? 」と真剣な瞳で相手を見つめて切り出して「 気持ちいいのに痛い。満たされるのに切ない。椿が悦ぶことばかりではないのかもしれない。本当にいいんだな? 」と、相手がこの部屋に来た時点で、部屋の錠をかけた時点でもう他に選択肢はないようなものだが、気兼ねないようにするための己の中での免罪符が必要なのか、最終確認をして。 )
!
( ドキドキと煩く跳ねる鼓動の中、彼が後ろ手にがちゃんと閉めた錠の音だけがやけに響いて椿は思わず小さく肩を跳ねさせて。薄暗い部屋の中でほんのりと照らされたベッドがなにだかとても生々しくて、彼の匂いの他に燻った木の香りのようなとても深い香りのする部屋に先程水を頭から被り冷静になった筈の頭がまたくらくらと混乱し。ベッドに腰かけ、真剣な黒瑪瑙を真っ直ぐに此方に向ける彼は先程のどろりと溶けた熱情の中にも氷のような緊張が在るような気がして、椿は彼の言葉に小さく頷いて。こくん、と頷けばそれに釣られて黒の天の川がさらりと揺らぎ彼と同じシャンプーの香りが鼻腔を掠めて。椿はゆっくりと音もなく立ち上がれば、そのまま真っ直ぐに彼の目の前に立ち軽く着付けただけの浴衣をはらりと肩から落とし。煌々と部屋に差し込む美しい満月と穏やかながらどこか艶めかしさのあるランプの灯りに照らされた生娘の柔らかな体は、ほんのりと血色が良く。「 ─── …椿の、ぜんぶを。もらってくださいませ。 」以前のように腕をお腹で組んで体を少しでも隠そうとすることなく、彼に強請るように両手を差し出して。 )
わかった。
( まともな灯りはサイドテーブルのランプと窓から差し込む月光だけという仄暗いこの空間で、椿の白磁の肌がはっきりと確認できるほどの至近距離で真剣な黒瑪瑙を相手に向け続け、やがてこちらの最終確認にも意を決したように小さく頷けば、その覚悟を受け取りお礼のように軽いキスを贈り。己の身体からはお花から着けられた香水の匂いはすっかり消え失せていていつものシャンプーの優しい香りを漂わせており、椿も、その天の川のような黒髪が揺れればお香を焚いていながらもはっきりとわかる、おそろいのシャンプーの香りがふわりと漂っていて。そんな小さな幸せもこれからの時間を盛り上げてくれる最高のスパイス。ふと、椿が己の前に立ちはだかったかと思えば、初めて彼女を迎えた時のように浴衣をはらりと肩から落とし、体を少しでも隠そうとしていた腕はあの日と打って変わってこちらに強請るように差し出すだけで、完全に顕になった下着姿を見せつけてくるとその美しさにどくんと鼓動が早まって。窓から差し込む優しい満月の光も、ランプの穏やかな灯りも、椿の柔らかな肢体とそれを飾る黒下着を彩るように艶やかに照らしていて、まるでトドメを刺すかのような、迷う背中に最後のひと押しをするようなどろりと甘ったるい言葉を紡がれると「 あぁ、わかった。 」とその覚悟を受けとるように椿の両手を取って立ち上がり。そうして椿を抱き上げて優しくベッドに寝かせると、まずはちゅ、ちゅ、と軽いキスを降り注がせ、それが段々と濃厚なものに変わっていけば「 愛しているよ。椿。 」とこれまでにないほど愛情のこもった声色でそう囁いたのを皮切りに、椿の瑞々しい生娘の身体に女の悦びを一晩かけて教え込んでいき。 )
( / ついにゴールインできましたね…!ひとまず直接的な表現はアウトですので次でスキップしたいと思っております! )
─── 私も、お慕い申しております。
( ふわりと彼に抱き上げられれば、まるでガラス細工を扱うようにそっとふかふかのベッドに寝かせられる。いつも彼が寝ているのだから当たり前だけれどもベッドからはほんのりと彼の香りがして、少しだけ緊張が和らいだのか椿の体からは程よく緊張が抜けてゆき。今日だけで一体何回のキスを彼と交したのか、もう数え切れない程だけれどそれでもいちいち彼の唇が触れるだけで椿はぴくりと小さく反応しそれから頬を赤らめて。だんだんとそれが深く濃密になってつれて、また彼の黒瑪瑙が先程のようにどろりと蕩けた妖しい光を帯びたものになっていくのを見て椿はぞわりとこれから訪れるであろう快楽に体を期待に震わせ。愛している、と今までの人生で聞いた事がないほどに愛情深く、また慈しみに満ちた優しい声色で囁かれれば椿もまた、椿人形と呼ばれていた顔を花のようにふわりと綻ばせながら囁いて。─── 知らない男に酷く扱われ奪われるとばかり思っていた自身の初物は、前後不覚になるほどの快楽と愛情に満ちた幸せなもので椿はそのまま最後にはこてりと気を失ってしまい。 )
( / ゴールインおめでとうございます…!次は…婚姻とかかな……!と背後は早くもソワソワしております!
スキップについてはもちろんです!軽く最後の最後に次(翌日?)に飛ばしやすいようなロルを入れておきました…! )
( 初物ということで、最初は椿の身体に負担がかからないように優しく、優しく、穏やかに熱を貪っていたが、肌が重なるたびに相手の身体が跳ね上がり、甘い嬌声をあげれば、それはこちらの興奮を煽るばかりで、だんだんと拍車がかかり、相手を気遣う余裕もなくなっていき。相手を悲しませてしまった分、悦ばせようとひたむきに椿を愛し、満月の夜空がだんだんと薄闇に、そして東の空にはぼんやりと太陽が滲み始め、ついには2人のいる部屋に曙光が差し込む時間まで2人の甘い時間は続き。ちょうど力尽きてしまったらしい椿の顔は朝陽に照らされて、どこか幸せそうな表情を浮かべながら瞼を閉じる相手に「 おやすみ、椿。 」と、小さく囁いてその唇に優しく軽いキスを贈れば、こちらも体力の限界だと隣に寝転び。眠りに落ちてしまう前に、相手の頭に腕を回して腕枕の形に、空いた手で相手を包み込むように優しく、それでいて力強く抱きしめればこちらも力尽きたように、生まれたままの姿で眠りに落ちて。 )
( / そうですね…!いつかは白無垢を着てもらって、指輪をつけあって…といろんなイチャイチャイベントをしていければなと思っております!
ご配慮ありがとうございます!お陰様でロルを回しやすく、椿様も美味しくいただけました…! )
─── ん、…。
( もうお天道様が真上に在る頃。なんとも言い難い体の気怠さと鈍い腰や下半身の痛み、それでも不思議と満ち足りた気持ちで椿は薄らと蘇芳を開けば、目の前にあるのは生まれたままの姿で涼し気な美貌で眠る主人の姿。微睡みの中でもそれを認識すれば椿の脳は一気に目覚め、昨日何があって、自分がどれだけ乱れてしまったのかを思い出せば林檎のように頬を真っ赤に染めて。嗚呼そうだ、私は昨日 ─── と自身の体の至る所に咲いている小さな花のようなキスマークを見下ろしては浅ましくもまた体を小さく震わせてしまい。なんとも言い難い下半身の怠さの中に在る物足りなさに気付かぬ振りをしては、昨日…というか今朝まで嫌という程唇を交わしていたにも関わらず、静かに目の前で眠る彼がなにだかとてもかわゆく見えてしまい椿は静かにその唇に自らのそれを重ねて。 )
( / わぁあ素敵です…!漸く思いも通じたことですし、ぜひイチャイチャイベント重ねていきましょう……!!!!
とんでもないです!こちらこそあらためてよろしくお願い致します…!/蹴り可 )
ふっ、ん…?
( 興奮によって気づかなかったのか、流石に一晩中動いていたとなればかなりの疲労が蓄積されており、2人を照らす陽光がすでに直上にまで登っても静かに寝息を立てていて。すると、気持ちよく眠っていたというのにその静かな呼吸が阻害され、夢現の意識が息苦しさによって現実へと引き戻されれば未だ重い瞼を必死にこじ開けてはこちらの眠りを邪魔するものを確認して。というのもこの屋敷には2人しかいないのだから犯人は決まっているもので、やはりというかぼんやりとした視界でもそのはっきりとわかるほどの美貌の顔が映り。この顔の近さ、やけに寝息が苦しいかも思えば寝込みを襲って唇を奪ってきたのか。そんなおいたをする椿にはこうだ、と不意をつくように、繋がれた唇から舌を侵入させ、相手の舌と絡ませて。ひとしきり味わった後、口から舌を抜き取れば2人の唾液が混ざり合った糸がつー、と伸びて2人の間に垂れ落ち、枕のシーツに染みを作り。相手の口端にも垂れてしまった唾液をこちらの指で拭い取ってあげながら「 おはよう、椿。 」と穏やかに微笑みながら挨拶をして。 )
ん、む ─── ッ!?
( なかなか起きない彼にこれ幸いと言わんばかりにちゅ、ちゅ、と子供の戯れのようなバードキスを続けていたのも束の間、完全に油断していた口内にぬるりと彼の肉厚な舌が入りこめばびくりと体を跳ねさせて思わず瞳を丸く見開き。何時から起きて…!?という驚きの声が言葉として漏れ出ることはなく、ただただ唇と唇の間から昨夜の情事を彷彿とさせるような甘ったるい吐息が盛れるばかり。散々に口内を蹂躙された後にようやく解放されては、ぼんやりと熱にとろけた視界には自分と彼を繋ぐ扇情的な銀の架け橋とその向こうで満足気にどこか艶やかな肌をした美丈夫が微笑んでおり。「 お、…はよ、う、ござい…ます、… 」と甘ったるく荒い呼吸を繰り返しながらもなんとか朝の挨拶を返しては、彼が眠っているのを良い事に勝手にキスを落とすだなんて行為を見られていたこともそれから昨日の行為も、全てを引っ括めて頬に朱色を散らして昨夜で少しだけ枯れてしまったのか小さな掠れた声で挨拶を返し。 )
あぁ、昨日は散々鳴いたからな…。
( 先程まで繋がっていたせいか、唾液でてらりと妖しげな艶を放つ椿の小さな唇から、普段の鈴のような声からは想像できない枯れた掠れた声が聞こえてくると、昨夜の乱れた姿の椿をわざわざ蒸し返すような台詞をほざいて。相手の唇と同じように、お互いの唾液で潤った唇を確かめるように指で撫でれば「 やっばり、花街では寝込みを襲うよう教わるのか? 」と、生娘といえど、花街ではそういった床の上での必勝法のようなものも講義されるのかと、こちらが寝ている間に好き勝手して、自身で恥ずかしがる相手に追い討ちに等しい意地の悪い言葉を投げかけて。ふと、視線を下に見遣ると椿の美しい肢体に刻まれたいくつものキスマークが目に映り。椿の肌のその瑞々しい感触が癖になってしまいそうになるのと、吸いつくたびに艶やかな声があがるのがどうしてか楽しく思えて執拗に吸い付いてしまったのだったと昨夜のことを思い出し、何を思ったのかそのキスマーク一つ一つを辿るように指先で撫でれば「 綺麗だ。 」と、うっとりとした、どこか熱のこもった視線でそう呟いて。 )
っ、……!
私、まだ、床の事はなにも……っご、ごめんなさい…。
( 声の枯れた理由について言及されてしまえば、パッと両手で口を押えてまた一段と頬を赤らめ。自分でも昨日散々あられもない声を出してしまった自覚はあるけれど、そもそも彼が手で口を塞ぐのを許してくれなかったのだからと責任転嫁をしようとするもそうすれば自ずと昨晩のことが脳裏を過り椿は何も言えなくなってしまう。そうして続けて質問された彼の言葉に思わず言葉を詰まらせては、恥ずかしそうにふる、と首を横に振りながらも先程のキスは教えられたものではなく自らが我慢を出来なくなってしまった結果だとちいちゃな声で答えてははしたない女だと思われてしまったかもと恥ずかしそうに謝罪を。つぅ、と突然体をなぞられれば「 っん 」とまだ簡単に快楽を拾ってしまう椿の体はびくんと跳ねて、彼の熱っぽい溶けた瞳が自分の体をじっと見つめていることに小さく首を振って「 み、見ちゃだめ…… 」と恥ずかしそうに零して。 )
…じゃあ、あれが椿の素直な心ということか。
( 先程のキスは花街で教わったものではなく、椿が自発的に、したかったからしたものだと恥ずかしそうに答えられると、昨晩…というより今朝までの乱れた相手の姿とは打って変わってまるでうら若き少女のような純真を告白してくると、なんだかこちらまでむず痒くなって。気を失う前まではあれほど曝け出してくれたというのに、今更一糸纏わぬ姿を見られることに抵抗があるのか恥ずかしそうに嫌々と首を振る相手だが、その行為はこちらの興奮を煽ることにしかならないことに相手は気づいていないようで。一瞬意地の悪い心が芽生えそうになるが、健全な( というには程遠い格好をしている2人だが )朝から戯れあっては歯止めがかからなくなるだろうから「 …悪い。 」と目を逸らして珍しく追い討ちはかけないようで…なんてことはなく、己が目を逸らして相手が油断したところに、がばりと覆い被さって鎖骨あたりに吸い付けば真新しいキスマークが咲き誇り。先ほどと同じように新しくできたキスマークをなぞれば「 うん、綺麗だ。 」と囁いて。さて、と朝から戯れ合うのもいい加減に、どちらのものともわからない体液で汚れた体を清めようと思えば「 体、流しに行こうか。 」と先にベッドから降りて寝転がったままの相手に手を差し伸べて。しかし、先にベッドから降りたことによって一瞬相手に背中を向けるが、その背中には相手が夢中で縋りつき、引っ掻いてしまったらしい爪痕が無数に刻まれていて。 )
っ、……だ、だって。
昨晩は、すごくかっこよくて素敵だった直政様が…眠っていらっしゃる姿が、可愛くて。
( 私は床のことをなんにも知らないのに朝からあなたに欲情してキスをしました、と白状しなければならないなんてなんと恥ずかしいことか。椿は耳や首までを真っ赤に染めながらちいちゃな声で白状をしていけば、己に突き刺さる彼の視線が耐えきれなくなったのか恥ずかしそうにパッと両手で顔を隠してしまい。屹度意地悪される、と覚悟をしていたのにアッサリと視線を逸らした彼にどこか拍子抜けしつつもほっと安心したように一息を吐いた途端、油断した椿の体はあっという間に組み敷かれて太陽の光がまんべんなく差し込む明るい室内に柔らかな体を晒して。そうして彼に鎖骨あたりにじゅ、と吸いつかれては、「 っひゃ 」と甘さを含んだ悲鳴が漏れて。綺麗だ、なんて微笑まれてしまっては怒ることも出来なくなり、ただただ椿は恥ずかしそうに自分の手で体を隠すことしか出来ず。立ち上がる彼をぼうっと視線で追えばその逞しい背中には無数の引っかき傷のようなものがあり、まだ真新しいそれは紛れもなく自分が付けてしまったものだろう。快楽の波に流されないようにと必死に彼にしがみついたその証は、痛々しい中にも昨夜の激しさが垣間見えてどこか生々しい。「 な、直政様ッ……背中、私、たくさん引っ掻いて……申し訳ございませ ─── っぁ、 」と悲鳴にも似た声で謝罪をし慌ててベッドから降りようとするも下半身に上手く力が入らずにそのままかくん、と床に座り込んで。 )
わ、わかった…!わかったから!
( こちらとしてはそれほど問い詰めたつもりではないのに、明け透けもなくこちらを褒め称えたり、我慢できなかったと告げたりする椿の白磁の肌が朱色に染まっていくとそれ以上はなんだかこちらまで相手の恥ずかしがる姿に釣られてしまいそうに止めさせて。ベッドの外から手を差し伸べているとなにやら悲痛な声色で慌て始める相手に首を傾げて。その瞬間、こちらに寄ってベッドから降りようとする相手がまるで操り人形の糸が切れたようにかくりと床にへたりこんでしまえば「 だ、大丈夫か?椿…。 」と顔を覗き込みながらそう問いかけて。やはり、初物に一晩中というのは酷すぎただろうか、椿の身体に負担をかけすぎただろうかと心配して。己はというと昨晩の余韻である、甘く疼く腰の痛みはあるが相手のように腰が抜けるというほどのものでもなくて、その場から動けないでいる相手を抱き上げればまた昨晩のように優しくベッドに寝かせてあげて。それにしても、と先ほど椿が言いかけた『 背中 』『 引っ掻いて 』と言葉を頭の中で反芻していると、そういえば、なにやら背中がひりひりするようなと気にし始め。自身では確認することができないため今の今まで気づくことが出来なかったが、鏡で己の背中を確認すると、そこには相手にとってのキスマークの代わりとばかりに椿の痕跡が無数に刻まれていて。「 あぁ、気にしないでいい。それだけ椿も必死だったってことだから。 」と気遣っているのか、それとも意地悪なのか、またも昨晩の乱れた姿を蒸し返すような発言をしながら己もベッドに上り、負担をかけてしまった椿の腰を労わるように撫でて。 )
ご、ごめんなさい……足に力が入らなくて、…。
( 情けなくぺたんと座り込んだ姿を見られてしまったのが何だかとても恥ずかしくて情けなくて、姐さん達がこんな風になっているところは見た事がないのにと顔を林檎のように真っ赤に染めながらもちいちゃな声で応えて。ふと彼に抱き上げられればそのまま昨夜のようにベッドに優しく寝かされて、このままでは1人で風呂場に行くのもままならない…と情けなさと恥ずかしさで頭がぐるぐると混乱するような気すらもしてしまい。どうやら背中の引っ掻き傷に気が付いたらしい彼に気を遣っているのかそれとも意地悪で言っているのかどちらともつかない…更に昨晩の情事をふと思い出すような発言を受ければ羞恥で潤んだ瞳で彼を見つめながら「 っ、……だ、だって…気持ち良すぎて、おかしくなっちゃうかと、…思って、……。 」とよわよわ小さな声で乙女の反論を。 )
いいんだ、俺が少し羽目を外しすぎたから。
( 今まで経験したことがない鈍い痛みに困惑するように、顔を赤ながらしおしおと申し訳なさそうに、消え入りそうな声で謝罪する椿に、相手をこうさせたのは他でもない己が無理をさせてしまったせいなのだからと反省するかのように上記を述べて。相手をベッドに寝かせると太陽が直上まで昇った時間帯では今の椿の姿は少々刺激が強く感じ、ふと目に入った、無造作に脱ぎ捨てられた己のバスローブを相手に着せてやるが何故だか煽情さに磨きがかかってしまい、どくり、と鼓動がいくらか早くなり。相手の腰を優しく撫でていると、羞恥に潤んだ蘇芳を向け、こちらの、相手の痴態を蒸し返す言葉によわよわと反論するが、その台詞もその表情も、こちらの劣情を煽るばかりで、眉根を下げて少し困ったような表情を浮かべれば「 椿、君はあまり男を惑わせないようにした方がいい。 」と、先ほどから、寝込みのキスを注意された時といい、キスマークだらけの肢体を眺められる時といい、新しいキスマークをつけられた時といい、椿の一挙手一投足が男を煽る材料なしかなっていなくて。もちろん、悪気があって、故意でやっているのではないだろうがそれでも自然と男を誘惑してしまうのはさすが花街育ちというべきか、もしくはその美貌によるものと天性の才能というべきか、とにかく無意識でやられてはこちらも理性がもたないため釘を刺すように注意して。 )
( / 大丈夫ですよ!こちらとしては掛け持ちをしていることは全然気にしていないので、これからも末長くお相手願います…!返信ペースも気にしないのでお身体にお気をつけください…! )
い、いいえ!
……私も、もっとと強請ってましたから、…。
( 彼の反省したような声色に慌てて否定をすれば、元はと言えば体力のない自分の責任だしそもそもあの時だって彼を拒んでいなかったのだから同罪だ。椿は柔らかくて温かなバスローブを着せられて小さな声でお礼を言えば、それでもバスローブの襟元から覗くふんわりとした膨らみに昨日たくさん彼に愛された証であるキスマークがたくさん見えるのが少し恥ずかしくてほんのりと耳を赤くして。小さな声で反論をすれば、なぜだか彼は困ったような顔をして此方に釘を刺すような注意の言葉を零すので椿は一体どれのことか分からずにいつの話だろう…と首を捻り。そもそも自分が誘惑しようと自覚のある状態で彼を惑わせたのは昨晩のあの爆弾衣装を着た時だけだったので、「 ……(あの衣装は)お嫌、でしたか……? 」と絶妙に彼と会話がズレた状態で問いかけて。 )
( /お気遣いありがとうございます…!
背後様こそお体にお気をつけてお過ごしくださいませ…! )
( こちらの言葉を否定して、己の落ち度でもあったと反省の弁をこぼすと、相手の小さな唇から紡がれる言葉によって昨晩の記憶がいやでも蘇り。相手の発言を否定できなかったのは、事実相手が悪い部分も多分にあったこと。お互いの熱が最高潮に達し、やがて弾け散って一息つこうとしても、椿の腕と脚は一向に解放してくれずに次を求められたことを記憶の中で思い起こせば、相手はこちらに非はないと言ってくれたのにこちらは相手の言葉を否定せず、バツが悪そうに目を逸らしてしまい。こちらの言うことが理解できないのか、もしくはどのことを言っているのかわからないのか、不思議そうに首を傾げながら嫌だったかと問いかけると「 そんなことはない。 」と、相手ほどの美貌の持ち主に誘惑されてしまうのは男冥利に尽きるもので即座に否定して。頬を赤らめて潤ませた蘇芳を負ける仕草も、ほとんど隠しきれていないのに、恥ずかしそうに身体を隠そうとする仕草も、今のバスローブの合わせ目からキスマークが浮かび上がる胸元を覗かせる姿も、それは男を炊きつかせることにしか繋がらず、椿はそれを知らず知らずのうちにやっていることもあってことさらタチが悪い。これが魔性というものなのだろうか、なかなかわかってくれない相手に頭を抱えれば「 椿は、俺がいつも胸をはだけさせて、目を潤ませてたらどう思う? 」と、今の相手がどのような状況かを例え話で遠回しに指摘して。 )
( / ありがとうございます!それでは背後は引っ込みます! /蹴可 )
な、直政さまが…。
ええと、……扇情的だから、…あんまりしないでほしいです…。
( 彼の突然の例え話にきょとん…と不思議そうに蘇芳をまん丸にしては、ゆっくりと起き上がりながらそのままベッドにぺたりと座って。そうして何の話かしらと思いながらも彼の言った通りの状態の彼を想像しては、そのあまりのセクシーさにぽぽぽと頬を赤らめながらも素直に首を振って。あんまりにも想像したままの彼がセクシーでどんな女もメロメロにしてしまいそうだから、ただでさえ素敵なのにこれ以上色気まで振りまかれては困ると端麗な眉を困ったようにきゅうと下げて。「 だ、だめです。 」と潤んだ瞳で彼を見つめては、はだけた胸元も相まってついたったいまさっき彼が言っている状態だということには本人も気が付かないまま真剣な瞳で答えて。 )
そうだよな?
( こちらが例として挙げた己のあられのない姿を頭の中で思い浮かべたらしく、その姿に頬をあからめていくと、己の容姿に絶対の自信があるわけではないのだが、そうだろうと言わんばかりに返事をして。しかし相手はそのあられもないこちらの姿を悶々と頭の中で浮かべ続けているらしく、こちらがはだけた胸をそのままに、ベッドにぺたんと座り込み、眉根を下げて潤んだ蘇芳でこちらを見つめてくれば、その姿はこちらが提示したものをそっくりそのまま鸚鵡返ししているような状況で。この行為も椿の天然さからかもしくは無意識からか、そのタチの悪さに困り果てては「 それをやめろと言っているんだ。 」とほんの少しだけ語気を荒げると「 その姿だと、乱暴されても文句は言えないぞ。 」と改めないと悪い狼にイタズラされてしまうと、片方の手首で相手の細っこい手首を捕まえ、もう片方の手で相手の腰を抱き寄せて脅しをかけるように囁いて。 )
へ、?─── …っきゃ、!
( 其れ、と言われてまた不思議そうに首を傾げるも珍しく語気の強い彼の言葉に椿の蘇芳に不安が翳り、そのままするりと簡単に彼に拘束されてしまえば小さな悲鳴を漏らして。彼に囁かれた言葉にまたびく、と体を揺らしては漸く彼の言っていることが自分の今の格好の事だと気がつけば、手首も腰も簡単に拘束されてしまい更にはびくともしない異性の力強さにぞくりと粟肌がたち「 き、気をつけます、…… 」ときっと今蕩けた瞳をしてしまっているだろうと、そんな瞳を彼に向けないようにぎゅ!と瞳を瞑りながら返事をして。生まれ育った花街はやはり階級にこそよるもの客が居ない時女たちははだけた浴衣でバタバタと忙しなく動いていたため、生まれ育った環境の感覚をそもそも治さねばと改めて危機感を持とうと心に決めて。 )
よし、いい子だ。
( ようやく今の己の姿がどんな状況かを理解してくれたらしく、拘束していた腰と手首を解放し瞳を固く結ぶように閉じて改めると反省する相手に、素直にこちらの言うことを聞いてくれる聞き分けの良さを、その天の川のような髪を優しく梳くように撫でながら褒めて。かといって、素直すぎるほど素直な相手のことだからその態度を全く見せてくれなくなりそうなもので、「 椿がそういう気分の時にだけ、その姿を見せてくれればいい。 」と、散々釘を刺しておきながら、椿の艶やかな姿を見るのは嬉しいことは嬉しいので、たまにはそう言った一面も見せてほしいと注文して。 )
!
……わ、私が…そういう気分の時だけ……。
( 大好きな彼の手に優しく髪を梳かれれば、わかり易く嬉しそうに表情を緩めて。だがしかしその後に続いた彼の言葉にパッと蘇芳を丸めては、それって何だか逆に恥ずかしいのでは…?と素朴な疑問が浮かんだけれど主人である彼の願いならばしっかりとその通りにしようとバカ真面目に心に決めた後にこくん!と彼の言葉に頷けば自分ばかりではなく、と真剣な瞳で彼を見つめては「 あの、私ばかりではなく直政様も。遠慮なさらずに、仰ってくださいね。 」と次はしっかりとバスローブの合わせ目を閉じた状態で、自分ばかりではなく彼もそういった気分の時は遠慮なく言って欲しいと強請り。 )
…いいのか?ずっと腰が立たなくなるかもしれないぞ?
( 椿ばかりではなくこちらがそういうときも。なんて、献身的にその身を差し出す相手に、なにやら意地の悪そうな表情になっていくと、その気になれば今の相手の状態がずっと続くことになると、遠回しにこちらはずっとそんな気分であると脅しをかけるように耳元でそう囁いて。実際のところは自分もそこまでできるのかはわからない。いや、頑張ればできるかもしれないが…。そうして脅しをかけるのもほどほどに、相手の耳元から口を離して「 なんてね、 」と、先程までの脅しをかける声色から一転、冗談だと茶化すような声の音で呟けば「 さて、身体を流したいけど…まだ歩けそうにないか?もう少し休んでいるか? 」と、負担をかけてしまった相手の腰を労わるように撫でながら問いかけて。 )
っ、……!
………もう!驚かさないでください!
( 静かに彼の唇が耳元に寄せられ、囁かれたのはまさに足腰の立たない今の状況がずうっと続くかもという脅しに近い言葉。椿は漸く赤みの引いてきたはずの頬にまた朱色を散らしては思わず彼の方を見たものの、それがすぐに冗談だと告げられれば怒り慣れていないながらも少しの期待と不安の種をこちらに撒いた彼にぷんすこと抗議を。彼が献身的に腰を撫でてくれたおかげで、先程よりも余程体に力が入るようになればゆっくりとベッドから降りながらも「 はい、もう平気です。ちょっぴり足がガクガクするけれど…歩けます。 」と産まれたての子鹿…という程では無いけれど、やはり普段通りにとはいかない様子だが先程よりもしっかりと地に足を付けて立てるようになり。彼の忠告通りしっかりとバスローブの胸元を緩まないように手できゅ、と抑えてはふわりと微笑んで。 )
でも、遠慮するなと言ったのは椿だろ?
( まるで沸いたやかんのようにぷんすこと抗議をする相手に、冗談を言わせたのはこちらを煽ってその気にさせた椿の所為でもあると、ゆっくりとベッドを降りる相手の手を取って介助しながらそう言って。ゆっくりと地に足をつけて大丈夫だと、こちらの言いつけ通りバスローブの合わせ目をきっちりと閉じながらこちらに笑みを向けるが、そのおぼつかない足取りを心配するように「 掴まって。ゆっくり歩くから。 」と相手の腕を支えるように取り、気遣いながら歩を進めれば、相手の浴衣と黒下着が無造作に床に脱ぎ捨てられた部屋を後にして。一歩、また一歩と椿のペースに合わせて屋敷を歩けば、普段よりも時間をかけて浴場にたどり着き、2人ともほぼ裸の状態だったのでそのまま浴室へと入ることができ。いまだに足取りがおぼつかない相手を浴室内の座椅子に座らせてからシャワーを出せば水がお湯に変わるまでしばらく待ち。その間、隠すものがなくなってしまったことでお互い一糸纏わぬ姿でいて、目に入った椿の身体を眺めていると「 だいぶ汚してしまったな。 」と、ところどころ乾いた汚れを見て、我ながら昂りすぎてしまったなと苦笑して。 )
( いつもの倍ほどの時間をかけて彼の手を借りつつもゆっくりと浴場へ向かう途中、彼と二人きりの部屋の中よりも誰もいないとは分かっていつつもお天道様の光の差し込む広い廊下をこうしてバスローブ姿で歩く方がなにだかとても恥ずかしい気がして急いで浴場へと行きたいのに一晩愛された体はそう簡単には言うことを聞いてくれず。そんな羞恥心を味わいながらも無事に浴場に着けば、ただ羽織っていただけのバスローブをするりと脱いでそのまま浴室へと。彼の好意で風呂場の座椅子に座り、シャワーの温度が温まるまでの時間も昨晩あんなに隅から隅まで見られているというのにこうして明るい場所で生まれたままの姿というのはまた違う恥ずかしさがあり椿の手は無意識に己の体を隠すように位置して。彼の言葉にぱっと顔が赤くなればちいちゃなよわよわした声で「 あ、あまり見ないでください……。 」と彼が今見ているのは己の体に未だ色濃く残る証であることはわかっているけれど明るい場所で見られることには慣れていないためかふるふると首を振って。 )
( 浴場までの道のりの廊下は窓から差し込む陽光に燦燦と照らされていて、そんな眩しささえ感じる道のりを方や申し訳程度にタオルを一枚腰に巻いただけの半裸の男が、方やバスローブを一枚羽織っただけの半裸の女が歩いていて。屋敷には2人以外居ないため、誰かの目を気にするということもないのだが、あまりにも退廃的なその画は背徳感を感じさせて胸に熱情が沸き立って。こちらの視線に気づき、一糸纏わぬその肢体を白魚の手でなんとか隠そうとするがそれだけでは面積が足りるはずもなく、隠せていない汚れの一つに手をなんとなしに沿わせると「 悪い、椿の身体が綺麗だったから…。 」と、思わず見惚れてしまっていたのだとおだててなんとか許してもらおうとして。シャワーから出る水がお湯に変わったことを確認すれば、椿に渡して自分で身体を流してもらおうとして、自分はその間、ボディタオルで泡立てて、十分に泡だったことをタオルを相手に渡せば「 背中は俺が流そうか? 」と冗談ぽく笑みを浮かべながら、慌てふためく相手を想像しながら軽口を言って。 )
ひゃッ、………もうっ!
悪いと思っている方はそうやって触ったりなさいません!
( つう、と指先で汚れをなぞられては小さく悲鳴をあげて、浴室内は良くも悪くも声が響いてしまうので昨晩の部屋のよりも甘ったるい声が自身の耳に届いてしまう気がして椿は頬を桃色に染めながらおだてても無駄だと言わんばかりにぷんすこと頬をふくらませて。シャワーが温水に変わってから手渡してくれる主人の優しさにありがとうございます、とお礼を言ってシャワーを受け取れば汚れを流していくように満遍なく水を弾く瑞々しい肌を濡らしていき。ほう…と落ち着いたように息をやんわりと吐けばもこもこと泡立ったボディタオルを差し出しつつ意地悪いからかいを零す彼に「 じっ、自分で流せます!それに、…私が直政様のお背中を流したいから…。 」と期待通りに慌てて首を振った後に小さな声でいじらしく彼の背中を流したいのだと答えれば、是否を問うように彼を見上げてはこてりと首をかしげて。 )
それだけ、椿の身体が魅力的だってことなんだよ。
( 乾いた汚れの一つに手を這わせると、可愛らしく、そして甘ったるい短い悲鳴があがり、普段より掠れた鈴の声が風呂場中に響いて、こちらの予想通りに声を上げる椿にくすくすと意地悪に笑みを浮かべて。それだけ椿の身体は美しく、いわゆる、好きな女の子にちょっかいをかけたい悪戯小僧のような心境であり、その美しさを自覚させるように上記を述べて。からかいには乗らないと、首を強く横に振ってこちらの提案を断りながら自分がしてあげたいのだと、その蘇芳をこちらに向けてゆるりと首を傾げながら告白されると、相手からの提案に「 そうか…じゃあ、頼もうかな。 」とその好意を受け取ろうとして。もう一つ、座椅子を取り出して相手の前に座り込めば「 よろしく頼む。 」と、相手が洗いやすいよう背中を向けて。…しかし当然、その背中には相手の爪痕が刻まれているわけで、その爪痕をむざむざと無意識に見せつけることになって。 )
っ~…もう…!
( 魅力的、だなんて想い人に褒め殺しをされてしまえば乙女は何も言えなくなってしまうもの。椿は真っ赤になった頬をそのままにふい!とそっぽを向いてはこれ以上は何も言うことが出来ずに口を噤んでしまい。それに、こんなにも美丈夫である彼はきっと他に美しい曲線の女の体など沢山見てきているであろうにそう褒めてもらって嬉しくないわけが無い。椿は思わず緩んでしまう頬を彼に見られないようにいそいそと彼の背中を流そうとするも、こちらに背中を向けた彼の背には間違いなく昨晩自分がつけてしまった爪痕が有りその痛々しさと羞恥にきゅ…と眉を下げて。「 ……痛いですか、? 」と細い指先でその引っ掻き傷をゆっくりとなぞっては、早く治りますようにとその傷に唇をそっと落として。 )
( 己がこれほどまでに椿のことを褒めるのはそれほどまでに、相手の身体は非の打ち所がない美しさで、会社の御曹司という立場上、接待や付き合いで花街へと立ち寄ることもあり、侍らせることもあった。そのどれもが美しい曲線を誇っていたが、椿のそれはまるで神が作り出した芸術作品と言っても差し支えのない黄金比で。相手に背を向けてから、椿の奉仕を待っていると、ふと、凛、とした声で問いかけられると鏡には申し訳なさそうに眉根を下げる椿の顔が映っていて。やはり、まだ罪悪感を感じているのだろうとその表情から察すれば「 問題ない。それに、椿の方が痛かっただろう? 」と反対に相手のことも気遣って。初物、ということで出血を伴ったこともあり、シーツには赤い染みが出来ていた。そのことを思い出せば己よりも椿の方が痛みは大きかったはずだと、その罪悪感を払拭しようと慰めて。そうやって椿を励ましていると、不意にその傷に白魚の指先が這わせられれば突然のことにびくり、と肩を震わせて。驚いた、傷に響いた、にしては不自然なほどの身体の跳ね方で、続け様にいまだ跳ね上がった脈拍が落ち着かないままその傷に唇が落とされると「 --、っぅあ。 」と、まるでこちらが相手の身体に手を這わせた時の椿のような声が風呂場に木霊して。 )
いえ、………痛いよりも、…その、いっぱいいっぱいでしたので……。
( 彼の言葉にふる、と小さく首を振れば恥ずかしそうに鏡越しの彼の視線を感じてはおずおずと彼の背中に隠れながら痛みに関してそこまで気を配る余裕が無かったと応えて。確かに全く痛みがなかったかと言われたら多少はあったけれど、それが直ぐにどこかへ行ってしまうほどに彼は此方に気を使ってことを進めてくれていたので痛みによって行為自体に恐怖感を感じたりすることは全くなく。つう、と彼の背中の傷を撫でた途端に跳ねた彼の体と浴室に響いた可愛らしい声にきょとん…と瞳を丸くしてはぞわぞわと体の下の方からいたずら心が湧いてくれば「 ふふ。……どうなすったんですか? 」とくすくすと思わず笑ってしまえば、またちゅ。ちゅ。と何度か彼の背中に唇を落としては反応を伺い。 )
そうか…。それならよかった。
( 初めて繋がった時も、最中も、そして足腰がおぼつかない今も、全ては己の欲望のままに働いた行動の結果で、椿に相当な負担をかけてしまったと自分の中で反省してずっと相手の様子を心配していたが、ちゃんと快楽に溺れていてくれたのだと告げられれば幾ばくか心持ちが軽くなり。自分でも驚くほど情けない声をだしてしまえば思わず手で口元を抑え、「 つ、椿…、やめ、んっ…。 」と悪戯をする相手を諌めようとするがその言葉も相手の戯れつきによって阻まれてしまい。その様子を見て面白かったのか追撃とばかりにぷるりとした唇がいくつも背中に落とされると、声を出してなるものかと歯を食いしばるがそれでも「 っく、 」だとか「 っんん、 」だとかあられもない声が唇が漏れ出して。そのまましばらく椿の戯れつきが続けば「 椿…もう、やめなさい。 」と乱れた呼吸を整えようと肩で息をして、官能的な感触で潤んだ瞳を浮かべた男が出来上がり。 )
ふふ。可愛らしいお声。
( 昨晩ですら聞こえなかった彼の可愛らしい漏れ出る声ににっこりとさくらんぼ色の唇を釣りあげては、乱れた呼吸を肩で繰り返しながら潤んだ黒瑪瑙をこちらに向ける彼に官能的に微笑んでさきほどのお返しとばかりにそっと彼の耳元に上記を囁いて。最後にちゅ、とキスを落としてはそのまま引っ掻き傷をぺろりと舌で舐めて悪戯は終了。普段あんなに冷静で素敵な紳士である彼がこんなにも子猫のように身を震わせて鳴いていることにどこかぞくぞくとした悪戯心が芽生えてしまうも、これ以上主人の命に背くことも出来ないため彼がたっぷりと泡を立ててくれたボディタオルでゆっくりと首元から優しく洗い始めて。 )
( / 一度、本体会話だけ失礼します。返信が遅れてしまい、申し訳ございません。現在、背後の方が少し立て込んでいてなかなか時間が取れずにいます。あと少しで片付くので、早くて火曜日に遅くて水曜日に返信できるようになりますのでもうしばらくお待ちいただけたらと思います。ご迷惑おかけします。 )
( /いつも楽しく御相手して頂きありがとうございます…!!
こちらの事はお気になさらず!リアル優先でお互い楽しめたらと思っておりますのでお互い様ということで…!
厳しい暑さも続いておりますので、どうぞ体調にはお気をつけてお過ごしくださいませ……! )
( 己の視界が届かない背後ということもあってか、相手の悪戯がいつ、どこに施されるのかがわからなく、故にその柔らかな感覚を耐える準備ができないためにその唇が落されるたび声を漏らしてしまい。やがて唇の雨がやっと止んだかと思えば、とどめとばかりに耳元でささやかれ、背中の傷に舌が這わせられると「 っ、ぅあ。 」と一段と高い声が風呂場に響いて。自分も知らなかった弱点を相手に看破され、それでここまで辱められるとは。しかし、このままで済むはずがない。この借りはこのあと必ず返すことを胸に誓っては相手の奉仕を大人しく受けていて。先ほどとは打って変わって、心が落ち着いていくような椿の手つきに、「 ふぅ、 」と穏やかに一息つけば「 気持ちがいいよ、椿。 」と背後の相手に上手だと声をかけて。)
( / 大変お待たせしました…!これからはお気遣い感謝します!これからは早めに返信できますので、これからもよろしくお願いします! )
ふふ、良かった。
軽く按摩もさせていただきますね。
( もこもこと柔らかくきめ細やかな泡が彼の背中に満遍なく行き渡ったな、と思えばその泡や滑りも使って彼の肩を小さな手で按摩していき。力こそある訳でもないがポイントを抑えてしまえば強い力もさして必要ではないので、少しでも日々の仕事の疲れが取れればいいなと気持ちの籠った慣れた手つきで。あまり按摩し過ぎてしまうと揉み返しが来てしまうだろうとある程度のところで終わらせれば、しっかりとシャワーの水が暖かくなったのを確認してから「 流しますね、 」と一言入れてから彼の背中の泡を流していき。この屋敷に来てからと言うもの、仕事らしい仕事( 家事は常日頃しているけれど )をしたという実感がなかったので、こうして直接主人の体を労ることが出来て満足なのか椿の瞳は満足気な色に満ちており。 )
( /とんでもないです…!
こちらこそよろしくお願いします…!!/蹴可 )
あぁ、ありがとう。
( 背中全体に泡が行き渡ったところで椿の華奢な手が普段の仕事と昨晩から朝にかけての時間で凝り固まった肩を揉みほぐし始めると、泡によって滑りも良くなってどこか艶かしい感触だが、その程よい力加減に気持ちよさそうに一息ついて。暖かな湯気をたてるお湯によってこちらの背中が流されると、傷口に響いたのかぴくり、ぴくりと体を震わせるが徐々に慣れてきたのかその跳ねも収まっていき。一通り泡が流れていったことを確認すれば、その頃を見計らったように「 ありがとう椿。お返しに俺も椿の背中を流すよ。 」と気持ち捲し立てるように、笑顔を浮かべているはずが目だけは笑っていない表情で早口に行って。遠慮する相手を逃がさないように、あくまで『 お返し 』をしてあげようと座椅子の前後を交換すれば、もこもこと泡だったボディタオルで始めは優しく椿の背中に泡を伸ばしていき。「 お加減はいかがですか? 」などとちゃらけながら泡を伸ばしていけば、椿が油断したところを見計らってボディタオルを置いて、今度は己の指で撫でるように泡を伸ばしていき。まるでくすぐるかのように、もっちりと柔らかいその背中を、臀部を、腹部をと艶かしく指先を這わせれば、先ほど散々悪戯された『 お返し 』をして。 )
へ、
いえっ、その、私は自分で出来ますので、─── 。
( 主人の背中を流し終わった達成感に心を満たされていれば、ふと彼から告げられた有無を言わさない提案にぎくりと肩を跳ねさせてはやんわりとそれから逃げようとしたもののそうは問屋が卸さないと言わんばかりにあっさりと座椅子の前後が交換されてしまい。きっとさっき沢山調子に乗ってしまったから仕返しされるんだわ…!とつるんとした真っ白な背中を彼に無防備に晒しつつ最初こそ警戒を怠らなかったけれど、蓋を開けてみればなんとも優しい手つきで普通になんのイタズラもなく背中を流してくれているだけなのでほっと安堵の息を吐いて。彼の問いかけにふわりと微笑めばすっかり油断しきった声で「 ふふ、はい。とっても気持ちが良いで、…っひぁ、!? 」と返しかけた返事は突然するりと背中を彼の指がなぞればびくりと肩を跳ねさせて悲鳴をあげて。まるで蛇が這うように身体中をその細く長い美しい手に弄ばれては、両手で抑えた口から小さく嬌声を洩らしながらいやいやと首を横に振り。最も、彼に触られることは全く嫌ではないのだけれど浴室というよく声の響く環境で自分のあられもない声が部屋よりも数段響いてしまうのがたえられないということであり「 な、直政さま、…ッご、ごめんなさ、ひっ… 」と先程の自分の悪戯を謝罪しながらもやはり口を開けば甘ったるい声が漏れてしまうのですぐにその口は手で隠されて。 )
ほら、じっとしてないと洗えないぞ。
( こちらの予想通り、油断していたその肌に指が這った瞬間、一気に緊張が張り詰め、その身体が跳ねるとまだまだ始まったばかりだと相手を優しく押さえつけるが、意地悪な表情が鏡に映って。くすぐったさになんとか声を耐えようとするが、それでもこの風呂場には漏れ出る嬌声が響き、思うように鳴いてくれる相手の抗議を「 ん~?何か言った? 」と、本当は聴こえているはずなのにその途切れ途切れの声では聞き取れないとわざとらしくおどけては、こちらの指に吸いつくような瑞々しい椿の身体を隅々に洗っていき。あらかた椿の身体を洗い終えれば、お湯でその泡を洗い流していき、「 はい、終わり。 」とようやっと『 お返し 』の時間は終わり…と思いきや、仕上げとばかりに背後から、洗い流されて綺麗になったその首筋にじゅう、と吸い付き相手の見えないところに新たなキスマークをつけて。先ほど散々辱められたお返しが出来て満足といった様子で、今度は辱められた相手の抗議をよそに湯船に浸かれば「 ふぅ、 」と気持ちよさそうに一息ついて。 )
ほら、じっとしてないと洗えないぞ。
( こちらの予想通り、油断していたその肌に指が這った瞬間、一気に緊張が張り詰め、その身体が跳ねるとまだまだ始まったばかりだと相手を優しく押さえつけるが、意地悪な表情が鏡に映って。くすぐったさになんとか声を耐えようとするが、それでもこの風呂場には漏れ出る嬌声が響き、思うように鳴いてくれる相手の抗議を「 ん~?何か言った? 」と、本当は聴こえているはずなのにその途切れ途切れの声では聞き取れないとわざとらしくおどけては、こちらの指に吸いつくような瑞々しい椿の身体を隅々に洗っていき。あらかた椿の身体を洗い終えれば、お湯でその泡を洗い流していき、「 はい、終わり。 」とようやっと『 お返し 』の時間は終わり…と思いきや、仕上げとばかりに背後から、洗い流されて綺麗になったその首筋にじゅう、と吸い付き相手の見えないところに新たなキスマークをつけて。先ほど散々辱められたお返しが出来て満足といった様子で、今度は辱められた相手の抗議をよそに湯船に浸かれば「 ふぅ、 」と気持ちよさそうに一息つけば )
椿も入るかい?
( / すいません、少しだけ書き加えました。 )
っ、は、……はぁっ、…。
( ゆっくりと疲れを癒すはずの風呂で何故だか肩で息をしながら漸く終わりを告げた彼の言葉に安心したのも束の間、首筋に彼の唇の感触と吸い付くようなくすぐったさを感じればそのままびくりと肩を跳ねさせては当然油断していたためあられもない嬌声が浴室の中に響いては落ちて。もう!と思わず彼に抗議の視線(とは言っても周知で瞳は潤み頬は赤いのでなんにも怖くないのだが)を向けたものの、どうやら散々仕返しが出来て満足したらしい主人はさっさと浴槽に浸かっては満足気な息を吐いて此方に問いかける彼に少し毒気を抜かれてしまい「 、……お邪魔します。 」と小さく頷けばそのまま浴槽に足を踏み入れて。じんわりと体の芯から温まるような暖かい湯に先程、そして昨夜から今朝にかけてさんざん弄ばれた体はゆっくりとほぐれていくようで。気持ちいい、とふんわり頬が緩めば広い湯船が故に少し彼が遠いのが寂しくてススス、と静かに彼のほうへ寄って。 )
( こちらの誘いに素直に乗る相手がちゃぷりと湯船に入ってくれば、その美しく静かな所作もまるで一つの絵画を眺めているようだと見惚れるようにまじまじと見つめて。暖かな湯によって疲れと、疼くような倦怠感がほぐれていき、そうやって2人で湯船の暖かさを享受していると、ふと側からざぷ、と静かな漣の音が聞こえてきて。何を思ったのかはわからないが、どうやら椿がこっそりとこちらに寄ってきているようで、それを察したのか相手の方へと向き直り両手を広げては椿を迎え受ける準備をして。 )
!
( まるで此方を受け入れるように両手を広げた彼にぱぁあ!と分かりやすく表情を輝かせては、そのまま彼にぎゅうと抱き着いて。服越しでは無い生肌同士の抱擁は風呂に入っているお陰でじんわりと暖かく、更にはしっとりとした彼の肌がどこか官能的な気分すらもして。「 あったかい。 」と、雫の落ちる音や水の動く音だけが静かに響く浴槽の中で椿の幸せそうな鈴の声が落ちれば、眠る訳では無いけれどこの幸せを噛み締めるようにそのまま心地よさそうにそっと瞳を閉じて。 )
あぁ、暖かいな。
( 少しは恥ずかしがるかと思っていたのに、こちらの意図を察してぱぁ、と表情を輝かせて腕の中に飛び込んでくれば少し当てが外れてしまったが、と苦笑をするがそのまま椿の身体を抱き止めて。生肌ということもあってか、椿の豊かな胸が直接押し付けられるとその官能的な感触に情欲が煽られそうになり。しかし、これまで散々心に波立たせていたため、今くらいは大人しくしていようと思えば、お互いの身体から香るおそろいの石鹸の香りと、お湯で暖められた体温をじんわりと感じて。その腕を椿の背中に回して優しく、それでいて力強く抱きしめれば上記のように穏やかに述べると、今度は相手をくすぐるような手つきではなく、愛でるように穏やかにその背中を撫でて。 )
ふふ。
……直政さま。
( 彼の腕に抱かれる心地よい感触と、お互いの体から香るおんなじ石鹸の香り。それから愛でるように、硝子を扱うように繊細でいて優しい手つきで背中を撫でられれば椿はぱち、と瞳を瞬きさせたあとにふわりと花が綻ぶように微笑んでは彼の名をそっと呼んで。特段何かを伝えたい訳では無いけれど、愛おしい人の名前を呼ぶだけで胸がふわふわと宙に浮くような幸せな心地になれるのが嬉しくて椿は彼に擦り寄るようにまた改めてぎゅうと彼に回した手に痛くない程度に緩く力を込めて。 まさかこうして自分が愛する人と共に幸せを享受することができるだなんて、花街で暮らしていた頃には想像もしていなかったので正直まだ夢の続きなのではないだろうかと勘違いしそうになってしまい。 )
…なんだ?
( お互い黙って抱き合ったままでいれば、2人のいる浴室は落ちる雫の音と身じろぎ一つでたつ波の音が聞こえるだけで、穏やかに暖かさを感じているだけとはいえ、椿の柔らかな肌の感触に乱される鼓動の音が相手に聞こえていやしないかと心配になり。波立つ心をなんとか平穏に保っていると、不意に腕の中の相手が花を咲かせるように笑顔を浮かべてこちらのことを呼んできて、それがただの戯れだとまで気付けることはできなくてなんなのだろうと上記のように首を傾げて。そのまま、相手からも抱き返されて子猫のように擦り寄られると胸の中に愛おしさが溢れ、ふと「 ありがとうな、椿。この屋敷に来てくれて。 」と突然改まったようにお礼を述べて。「 椿が来るまではこの屋敷に俺1人だったからさ、椿が来てくれて毎日が楽しくて、こうやって愛し合って、すごく幸せだ。 」と多少のすれ違いはあったものの、それを乗り越えてこうやってお互い一糸纏わぬ姿で身を寄せ合うことができていて、それもこれも椿のおかげだと耳元で幸せそうに「 だから、ありがとう。 」ともう一度お礼を述べるとお湯によって上気して潤っている唇に軽いキスを落として。 )
( / これから、どんな展開、またはイベントを起こしていきましょうか? )
いいえ。
なんにも。…ただ、お名前を呼びたかっただけです。
( 花街にいる頃には考えられなかった暖かい風呂と、それから姐さんとおんなじように自分を抱きしめてくれる愛する人。全てが満たされていてあたたかいこの気持ちのことを〝幸せ〟と呼ぶのだろう。椿はふる、と首を振れば不思議そうに首を傾げている彼に微笑みながら上記を答え。だがしかし次に告げられた彼の言葉にぱち、と紅玉を丸めては彼が自分と同じように幸せを感じていたのだとわかり愛おしそうに耳元で囁く彼の言葉はじんわりと椿の胸の中に解けていき。ちゅ、と軽い音を立てて落とされた唇はほんのりと浴室の上記で保湿され、椿はそれを幸せそうに受ければ彼の頬にそっと小さな手を添えて「 …私も、直政様に出逢えてとても幸せです。あの街から、私を見つけ出してくださってありがとうございます。 」と、何十何百人もいる花街の女たちの中からたった一人、自分を見つけてくれた彼へと心からのお礼を返して。 )
( / そうですね…!ちょっと悩みますが、やはり身分差のある2人なのでそこらへんにフォーカスを当てて行けたらな、と思います…!
やはり御曹司のご子息様ですし、親が勝手に決めてしまった婚約者とか直政様に気のあるご令嬢などから一悶着あったら楽しいかなと……! )
( / 返信が遅れてしまい、大変申し訳ありません。現在、背後の方の精神がやられてしまっていて、文を綴ることが難しくなっています。なんとか回復に努めますのでもう少しだけお待ちください。)
( /ご連絡ありがとうございます!
とんでもございません!季節の変わり目ですし体調等崩される方も多いと思いますので、どうかご無理だけはなさらずご自身の体調や心を第一にゆっくりとお過ごしくださいませ。無理に回復しようと頑張ってしまうと逆効果とも聞きますので、此方はお気になさらずご自身のペースでのんびり休養なさってくださいね。 )
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