殺人鬼 2023-04-15 18:52:00 |
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学生はそうかも知れねーけど弁護士や教師は専門的な知識がなきゃ受からねーだろ。いや、教師は違うのか?でも免許をとるくらいだし…。(確かに堅実に勉強していれば満点や学年トップとまではいかなくてもそれなりの成績を維持できるだろう。だが自分は特段、成績に頓着があるわけではなく。ただ赤点だらけだとあの無関心な親達に文句を言われるかも知れない。いい点を取っても無関心な癖に悪い点を取ったらと文句というのは理不尽極まりないが。目の前に置かれた参考書に反射的に目を向ければ目に入って来たのは長文の英語。恐らく長文読解の問題なのだろう。全く出来ないという訳ではないが得意でもなく。得意でもなく好きでもない上、英語の問題の中でも面倒臭そうな問題にうんざりした表情を浮かべ。家の差別的な環境に縛られるのが嫌で寮のある高校生に入ったというのに寮は改装、家出すれば監禁され。何故、こんなことになっているのかと重い溜め息が零れ。)
教員免許を取るだけの試験ならばそこまで難易度は高くないですよ。採用試験が難しいのです。それに専門的な知識だって毎日時間をかけて勉強すれば必ず理解できます。その英文のように(教員免許取得試験ならば自分は受かるだろうが、採用試験となると苦労するだろう。自分とて最初は法律用語や判例といった専門的な分野を理解するのに、大いに苦労した。毎日勉強を続けて理解することができるようになった。ただ、それは学生という身分で時間があったからで。社会人になってから勉強を始めていれば、もっと合格に時間が必要だっただろう。うんざりとした顔と大きな溜息を見ると、彼は英語が嫌いなのだろうかと思う。いや授業内容は何となくで理解できると言っていたので、得意でもなければ苦手でもないのだろう。いくら時間が掛かってもいいから長文を解いて下さい、と言外に告げる)
時間を掛けてって…それはもう学生時代から夢がある奴の話だろ。それにそういう職種に就くにはそういう学科のある大学に行くべきで…。(大学。学費の問題さえなければ、両親がもっと自分に興味を持ってくれていれば大学進学を考えることもあったのだろうか。とはいえたらればの話は考えても時間の無駄だと理解しており。昔はよく考えていたが考えたところでそれは願望でしかなく叶うことないもので。妹が大学に行きたいと言えば両親は快く学費を払ってくれるだろう。だが自分が言った場合はどうだろう。高校くらいは卒業してないと体面が悪いということで払ってもらっているがもし大学でも寮に入るとなると寮費も掛かり。流石にそうなるとアルバイトで賄うのは無理そうで。それならば就職したほうが早く家族とは離れられ。就職してお金がある程度貯まれば即家を出るつもりで。言外に相手の圧を感じると緩慢な動作でペンを取り嫌々ながらも参考書に目を移し。)
弁護士も教員も大学に行かずとも、成ることはできるのですよ。教員は制限付きですが。大学に行かずとも勉強さえ出来れば成れるものは多いのです。…キミには夢は無いのですか? あ、私から逃れたいなどというのはナシで。(自分は大学に行って試験を受けたが、自分の同期弁護士には予備試験を経て司法試験に合格した者もいる。彼に夢を聞くが、何も言わないと自分から逃れたい願望を上げるに決まっているので、しっかりと条件を付けておく。この子はきっと親から受けた仕打ちで、夢も希望も持てない子になってしまったのだろう。しかしそんな彼を自分が変えてあげるのだ。きっと彼も喜ぶに違いない。自分の幸福を彼にもシェア出来れば、幸福になれるに違いない。そんな歪みと傲慢を含んだ目で、参考書に取り組み始めた彼を見つめる)
へぇ…まあ大学に行く予定もねーし俺には関係ねーな。夢…?別に一人でそれなりに暮らせれば。(大学に行くには自分には問題が多すぎて現実的ではない。特に今、なりたい職業やほしい資格がある訳でもなく。相手に釘を刺されなくてもそんな相手の警戒を強めるようなことを言うつもりはなく。勿論、相手の元から逃れたいというのは目下の目的ではあるがそれは一先ず今の話の中では出さず。まだ高校生になったばかりだからなのか家庭環境のせいで諦めたのかはわからないが夢と言うほどのことはなく家族のいないところで慎ましやかでも質素でものんびりと暮らしていければそれで満足で。そのためにはある程度のお金がいる。今はまだ入学して少しして寮の改装等のゴタゴタで見付かっていないがバイトも探そうと思っていたところで。)
一人で暮らしたい、ですか。でもそれは叶いそうにありませんね。ここでそれなりに暮らす、ではダメなのですか(一人でそれなりに暮らしたいという願いは、現状を見れば自分から逃れたいことと同義じゃないか。内心でため息を吐く。自分は彼を殺害する意思も、安易に暴行する意思も持ち合わせていないのに。自分は彼を丁重に扱っているのに。どうして分かってくれないんだろう。どうして逃げたいなどと思うのだろう。ここで暮らすことはダメなのか訊ねる。普段はあまり感情を顕にしないのだが、不満そうに苛立ちの混じった声で訊ねる。訊ねてからはっと我に返る。落ち着け。彼は単に願望を口にしただけ。そもそも聞いたのは自分だから深い意味は無い。拉致同然に連れ込めば快く思われないのも当然だ。だから落ち着け。感情を抑えないと。心の中で忙しなく自分に言い聞かせ)
…あんたはまだ殺人を続けるつもりだろ?俺はそれを何でもない顔で流せる程、大人じゃない。(相手は今まで何人殺して来たのだろした時の手際からして初犯でないことは明らかで。自分を殺さないとはいえ自分以外の人間をこの先も殺していくのだろう。自己の欲求を満たすために。自分が相手のやっていることを知らないのならば結果がどうであろうと考える余地はあったのかも知れない、とは思い。しかし殺人に関しては目撃者、監禁に関しては当事者で。それを何でもなかったような顔をして何事もなかったように日々を過ごせる程、大人でもなく図太くもなくて。ただ一人でそれなりに暮らす、というのは相手に出会う前からの夢であり且つ目標ではあり。一人で、というよりかは家族と離れて、のほうが正しくはあるが。相手が自分の情報を頼んだ人物が調べたら家庭環境のことも全てわかるだろうがそんなことは勿論、知る由もなく。偶然居合わせだけの自分を気に入られた実感はまだ無く。)
では……キミも人を殺してみませんか。私と一緒に。んふふ…その快楽を知りませんか(彼が躊躇するのなら、こちら側に引きずり込んでしまおう。そう思った矢先、携帯が通知音を知らせる。画面に目を遣るとメールが届いていた。調査会社からのメールだった。彼の自宅、本名や家庭環境などの概略が書いてあった。本名は東雲蒼だということ。父と母と妹と同居していたこと。しかも父と妹とは血縁がない。そして両親は妹を贔屓していること。どうやって短時間のうちに調べたのかは謎だが、さすがこの調査会社は全幅の信頼を寄せていいと再確認する。とにかく彼のことについて知っていることが広がったのでグッドだ。早速このカードを使おう)キミにも消えて欲しい人間はいるのでは? 例えば…差別的な父親、それを黙認している母親、その恩恵を受けている妹…。酷い人達ですね。キミも相当嫌な思いを沢山してきたはずですねえ…?(微笑みを貼り付けたまま、一言一言力強く言う。彼は彼らを憎んでいるのだろうか。こんな扱いを受けてまで憎まないのだとしたら、彼は相当な人格者ということになるが果たして)
だから…人を殺したりする訳ねーって言ってるだろ…。何度言えばわかるんだよ、あんたは。(自分が誰かを殺したりする意思はないと伝えたはずで。こんな話になっては参考書に集中するどころではなく回答途中にも関わらさず少々乱暴に参考書を閉じ。そこに聞こえた携帯の通知音。自分の携帯は相手に壊されて使えないのでなったのは相手の携帯とわかっているのについ反応してしまうのは現代人の癖や依存症故なのか。とは言え相手の仕事は弁護士。初めて食事をしていた最中に掛かってきたようなクライアントからの電話や依頼主、または依頼者からの連絡だろうと思い。別にそれらに興味もなければ知る必要もなく。相手が殺人鬼ということは世間にバレていないのでそれ関連の連絡がくるはずはなく。)…なっ、んであんたがあいつらのこと知ってんだよ…。それにあんな奴らを殺したことで一生を棒に振るなんて馬鹿げてる。関わらないのが一番だ。(あいつら。それは両親と妹のことだがとても家族に向けるような呼び方とは思えず。出来ることならば顔を合わせたくもない。だが家族を手に掛けたところで満足どころか虚無感が募りそうで。)
キミが首を縦に振るまで何度でも言います。ふふ…棒に振るから嫌ですか。つまり倫理的にダメだとは思っていないのですね? では棒に振らなければ…捕まらなければ良いのですね?(こじつけも甚だしいが、こういうことは相手に思い込ませれば良いのだ。相手が言及しなかったことは無言の肯定と捉え、追求する。法廷で検事も弁護士も使う常套手段だ。尤も、男子高校生に通用するかは分からないが)私は既に二十人以上殺したでしょう。もはや数も分かりません。ですが捕まっていません。疑いの目すらも向けられたことは無い。…私がキミの一生を棒に振ることがなきように協力してあげます。あんな人達、殺してしまいなさい…東雲蒼クン(彼の手を取って囁くように言う。ふと思った。自分はどうして彼の家族にこんなにも憎悪を抱いているのだろう。縁もゆかりも無いのに。この感情が何なのかは分からないが、彼が蔑ろにされたという事実だけでも腹立たしく思う)
そういう問題じゃねーんだよ。関わりたくねーんだよ、俺は。寮の改装が終われば会うこともなかったんだ。こんな状況でなければな。(憎さはあれど殺す気はなく。そもそも殺すという思考に至ること自体が自分にとっては不思議で。暫く家出をして寮の改装が終われば一切合わないつもりで。高校生のバイトで貯めたお金でどこまで出来るかはわからないが出来るだけ早くにバイトを見つけてお金を貯めてあの家を出て家族と離縁しようと思っていた矢先の監禁で。)…いらねーよ。殺さなくても目の前から消えてくれればいい。(あくまで自分の目的はあの家族との関わりを絶つことで蔑ろにされていたことに対する報復や復讐を考えている訳でもなく。相手がどれだけ殺してそしてどうやって捕まらずにきたのかはわからないがそれでも相手と同じことを自分がするなんて考えられず。)
…キミは両親が離婚して現在の家族構成となりました。血が繋がっているのは母親だけ。その母親は新しい父親と一緒に妹を贔屓している。その腹から産んだ子よりも、血の繋がっていない『他人の子』を選んだ…。キミは負けたんです。赤の他人に愛情を奪われた。愚かな母親のせいで。(拒否する彼を見て何かが切れた音がした気がする。堰を切ったように言葉を浴びせる。いつもの冷静さは失われ、ねちっこく言葉を区切って喋る。落ち着け、やめろ。ともう一人の自分が囁く。恐らく理性というやつだろう。実際、彼が自分の言う通りに殺人を犯せば、当然捜査が入り、行方が分からない彼が疑われる。そうすれば彼と一緒にいる自分も疑われる。彼とは既に書店に共に行っているため、防犯カメラにも映っているだろう。だがそんなことを考える程の余裕は既に無くなっていた。子供を蔑ろにする親なんか居なければ良い。それは彼が身をもって知っているはずだ。なのに。どうして。この子は親を殺さないのだろう。人間を殺せる悦びを知ろうとしないのだろう)
…だから?だから殺せって?あいつらからの愛情なんてとっくに諦めた。今更、そんなもんもらっても仕方ねーよ。勝ち負けとも思ってねーし。(たった一人の母親。離婚した当初は子供心ながらに自分が母親を守ってあげなくては、と思っていた。しかし母親が再婚し自分を蔑ろにしておきながら血の繋がりすらない妹ばかりを可愛がっている姿を何年も見せられれば自分が愛情をもらえることはないのだと悟り。それならば愛情がほしいなんて感情も失くなり。相手の言っていることは間違っていない。何かしらの手を使って調べられたのだろう。だが今の自分の置かれている家庭環境まではわかっても感情までは調べられなかったようで。妹が贔屓されているのも自分より他人の子が選ばれたのも愛情を奪われたのも母親が愚かなのも全て合っている、わかっている。それでも1つだけ間違っていること。自分は友人もいたし匿ってくれる親戚もいた。そんな自分の人生が負けだとは思わず。)
…ぁ。…そうですね。キミの人生です。私に勝ち負けを判定する権利はありませんでしたね。申し訳ありません(彼の言葉で、まるで冷や水を浴びせられたかのように、急速に冷静さを取り戻して。ようやく冷静な判断ができるようになれば、自らの発言を詫び。少し熱くなり過ぎた。そもそもこんなこと言ってはいけなかったのだ。彼をこちら側に招こうと躍起になり過ぎた。羞恥心と自己嫌悪が胸中で渦巻く)…………私は少し溜まった仕事をします。この部屋から出ず、大人しくしていて下さい…(か細い声で呟くと気まずさに耐え切れなくなり、リビングから出て行く。リビングの戸を閉めた途端にその場に座り込む。彼を我がものにしようとして失敗した。法廷でこちらの主張を却下された時より喪失感がある。大きく溜息を吐くと、頭を抱える。一人の男子高校生に感情を乱されるとは、自分はこんなに未熟ではなかったはずだが。他人に理解されなくても何の痛痒も感じなかった。だが彼に理解されないだけで、自分自身を完全に否定されたように感じる。同時に喪失感と孤独感が襲う。そんなことを考えている内に普段の労働の疲れからか、ドアに寄りかかったまま、うつらうつらと船を漕ぎ始め)
まあ勝ち負けがあったとしても勝っても負けても大して変わんねーよ。もし勝ったからってその後の人生が全て上手くいく訳じゃねーし。(妹が勝者で自分が敗者だとして何が変わるのか。勝者だからといって羨望や尊敬を抱かれる訳でもない。敗者だからといって同情や憐れみを向けられる訳でもない。何も変わらずその先の人生を進んでいくだけで。ただ珍しく動揺や困惑を見せた相手に不思議そうな目を向け。考えても相手の胸中なんて分かる訳もなく。)何してんだ、あんた…。(一人部屋に残されてしまったが鍵を掛けられた訳でも拘束されている訳でもない。まだこの部屋の構造は分かってないが今なら逃げれるチャンスなのではと思い付き。ボストンバッグは手元にないがそれはこの際、仕方なく。逃げられるのならばボストンバックくらいの犠牲は受け入れ。部屋でじっとしているようにと言われたが相手の言葉に元々従う気はないしこのチャンスを逃せば次のチャンスはいつくるかわからず。暫く悩んだ後、静かに席を立ち出来るだけ音を立てないように扉まで近付くとそっと開き。このまま逃げられると期待を抱くが相手が寄りかかっていためすぐにつっかえ隙間から様子を窺うと相手の姿が少しだけ見え。しかし動かないことから眠っているのか気絶しているのかと恐る恐る声を掛けて相手の様子を見て。)
んぅ…………おや。何をしているのですか(ぱっと気が付くと背中に違和感があった。振り返ると扉が少しだけ開き、彼が隙間から覗いていた。どうやら少し居眠りをしていたらしい。それにしても。部屋に居るように言ったはずなのに、なぜ扉を開けたのか。やはり脱走するためか)悪い子ですね。私は何もしないように言ったはずですが(先程の昏い感情の蘇りと、中途半端な睡眠を取ったことで増長し眠気のせいで不機嫌そうに言う。さっと立ち上がるとリビングへ入る。彼の返答を待たず、その肩をガシッと掴むと自分の所へ引き寄せ、そのままソファへ倒れる)……少し私とお昼寝しましょう。キミも疲れたでしょう(彼をさながら抱き枕のように、しっかりと抱きながらも変わらず不機嫌そうに。しっかりとホールドした状態だと彼の体温が直に伝わって来るため、心地よい)
いや、それはこっちの台詞なんだけどな…。(何をしているのか問いたいのはこちらで。仕事をしてくる、と言っていたはずの相手が何故こんなところで扉に寄り掛かっていたのか。そのせいでここから抜け出すことは阻まれ。相手の警戒を余計に強めてしまったかと内心思ったが顔には出さず。)そんなこと言われても部屋に一人で残されてどうしろって言うんだよ。(勿論、これがチャンスだと部屋の外には出ようとしたがそれは予想外の形で阻まれたので実際に自分に出来たことは椅子から立ち上がり歩いたくらいで。相手がリビングに入ってきたことで今回の脱出は失敗だと諦め。)へっ、うわっ…!危ねーな。というか離せって。(肩を掴まれたかと思えば反転する視界。気付いた時にはソファの上で相手に抱き締められていて。相手が男だからなのか殺人鬼だからなのか腕の中から逃れようと?き。)
大人しく勉強をするなり、飲み物を飲むなり、疲れを癒すなり…。できることはあったはずです。キミは悪い子です。本当に悪い子だ…少し静かにしてください(逃げようとする彼をがっしりとホールドすれば、いよいよ抱き枕のような感覚がしてきて。ため息混じりに彼に囁くと目を瞑る。自分は彼を簡単に説き伏せられると思っていたのに、こんなにも苦労するとは。彼の発言を思い返してみれば、余程他人に縛られるのが嫌なのだろう。自宅で抑圧--彼に言わせればこの表現も適当では無いのだろうが--された反動だろうか。自分は縛ろうとするつもりは無い。ただ彼に理解し実行して欲しいだけ。そしてその快楽を知って欲しいだけ。それだけで良いのに。それが彼には縛ることと同義で苦痛なのだろうか。彼に拒絶される度に不安に駆られる。お願いだから僕を拒まないで--そう言ったら彼はきっと軽蔑した表情を向けるだろう。気が付けば身体が小刻みに震え)
離せって…。あんな状態で集中できるわけねーだろ。人ん家の冷蔵庫を勝手開けるわけにもいかねーし…休むってのも何があるかわかんねーのに休まらねーよ。…あんた、具合でも悪いのか?(実際に先程までは逃げることを優先していたものの頭の中は混乱していて。家族のこと、家庭環境のことをあまり考えたくなくて家出してきたというのにこんなところで思い出させられるとは思っておらず。監禁されたという衝撃が大きくてあまり考えなくて済んでいたのも事実で。 勉強をするにしても飲み物を飲むにしても休むにしても寮の自室や実家のようにすることなど出来ず。気が休まらないのは実家も同じだが蔑ろにされていたとはいえ身体的暴行や食事抜き等の虐待を受けていた訳ではなく。このような状況でも勝手に他人の家の冷蔵庫を開けるのを躊躇ってしまうのは最早性分とも言えるべきもので。抱き締める力が強まっても逃れようと抵抗するも抵抗している最中、相手が震えているのに気付けばドア先で寝てしまっていたことといい体調でも崩しているのかと声を掛け。)
ええ、とても具合が悪いです。キミのせいでね…。分かったらその律儀な心で、今だけはこうさせて下さい。後生ですから…(家の主が構わないと言っているのに冷蔵庫を開けられないという律儀さと育ちの良さは教育によるものだろうか。それとも彼が自分で会得したものだろうか。自分としては後者が望ましいが、意外と以前まではまともな家庭であったのかもしれない。具合が悪いのかと問われれば小さく頷き、これまた小さな声で呟く。自分はこんなにメンタルが弱くなかったのだが、彼のせいでめっきり弱くなった気がする。こんな感情になったのは人生で初めてだ。初めてのことと言うのは戸惑いを覚えるもの。そしていずれそれに慣れれば大丈夫。そう自分に言い聞かせても、これに慣れることはできなさそうで。考え事をしながら彼の体温を感じていると、急激に眠気が襲ってくる。起きた時に彼が居てくれるか、居て欲しい、そうでなければ--そんなことを想いながら、意識が夢の世界へと渾然していき)
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