匿名さん 2023-03-24 20:11:47 |
通報 |
…え。ひなちゃん退屈じゃない?( 相手のために描いた線画がまさか戻されるとは思わず / ひとつ瞬くと体の前に置かれた画用紙に目を落とし、それから少女の瞳をやや上方から覗き込んで )
?…──ううん、楽しいっ!( 何かが創りだされていくのを見るのは、今も昔も変わらず好きで / 上方から掛かる声に顔を上げれば、きょとんと双眸を瞬かせると / にぱ、と八重歯覗かせながら笑い掛け )…ぬりえ、完成したらひながもらってもいーい?
…ならいいけど。( と言いつつも暫し様子を窺うように視線を留め / 少しして、その言葉が本当なのだと悟れば漸く色鉛筆へと手を伸ばし / 時折実物を確認するかのように目を遣りながら大まかに肌色を塗り進めては )いいよ。…ひなちゃん何色が好き?
やったあ!( 嬉々として表情を綻ばせ / 色鉛筆が紙の上を滑り始めては、また視線をそこへ落とし彩られていく様子を眺め )ん、と。……ピンクとか、水色とか、紫とか、白とか。ふわ~ってした色がすき。──…すぐるくんの色もすき、ふわ~ってしてて猫ちゃんみたい…!( ふいに好きな色を問われれば、一番は決めきれずに指折り数えていく中で / ふと視界に映る柔らかそうな彼の髪色 / 瞳をきらきらさせながら、無意識に手を伸ばして )
ふわ~ってした色…。( 抽象的な表現を咀嚼するように口の中で繰り返し / メイクを施す際と同様に、画用紙上の少女の肌にも血色感を足して丁寧に彩れば / 髪は黒に近い色をベースに相手の挙げた種々の色を取り入れてふわ~っと / その最中、髪に触れようとする小さな手には退きも近付きもせぬまま / ちらりと瞳だけを動かすと、猫じゃらしにつられる猫のような仕草につい目元緩め )…ひなちゃんも猫みたいだけど。
ふわふわ~…、…えっ。( レイヤーが入っている分、毛先がふわふわと動きやすいウルフヘアの表面だけを指の腹で感触を楽しむように撫でて / 周りにお花もふわふわ飛ばしていると / 柔らいだ彼の瞳と、ぱちっと目が合えば / 幼心ながらにとくんと小さなときめき / 「そ、そうかなあ」とはにかみつつ手と視線を下ろしていくと )…──!ひなの知ってるぬりえと違う…すごぉい…!( 多彩かつ繊細な色使いに、わあっと見惚れ / 絵に瞳は釘付け )
( 嬉しかったのか恥ずかしかったのか、照れくさそうな表情で手を下ろす相手にまた密やかに笑むと / 絵を褒められて満更でもなさそうに / 自身も画用紙に視線落としつつ、5歳児に合わせた語彙で達成感を滲ませ )…プレゼントだし、頑張った。
っ……ぜーったい、すごーく、大事にするからね!( 微かに瞠目した瞳はきらきらと光を取り込み / 嬉しい気持ちが溢れては、周りにぱぱっと花を咲かせながら笑顔をも咲かせ / 絵の完成をそわそわと待ち侘びて )
…ん。( 体が元に戻っても記憶は保たれるのだろうかと不意に疑問が過っては、一音だけで返す代わりに頭を軽く撫で / 桃の花まで忘れずに色をつけたなら、色鉛筆を置き、画用紙を机の上で相手の方へと回転させて / 今度こそ受け取ってもらえるだろうと期待のこもった眼差しで )──…できた。…はい、ひなちゃんにあげる。
( 小さな頭で撫で受けては、その温かさをなぜだか知っているような / ほわ、と心包まれる気がして / やがて完成した絵がこちらに向けられると / 瞳いっぱいに光を取り込みきらきらと輝かせながら、両手で受け取ると口をほわぁと開いて )…──わあぁ…!すぐるくんありがとうっ、ひなの宝物にするね!( 繊細に彩られた自分の顔と花に感動しきりで / じっと間近で眺めてみたり、紙を上に掲げるようにしてみたりして / ふと、特に掲示物もない壁に気が付けば、じっと見つめたのちに指を差して )この絵、あそこにかざりたい…!
…、あぁ──ちょっと貸して。( 指先に従って振り返れば、そこには一見壁のようなマグネットボード / 渡したばかりの画用紙を一度引き取ると、裏側の四隅に小さなマグネットシートを貼り付け / 目的の壁の前まで連れて行き、再度絵を持たせたなら / 脇の下に手を差し入れ、「…いくよ」の声掛けと共に自分の目線の高さ程まで小さな体躯を抱え上げて )
?──…( 何してるんだろう?と不思議そうに動作を見守り、されるがままにぽかんとして / 絵を再び持たされたかと思うと / 合図と共に、ふわっと目線が高くなっていけば )…ひゃ~っ、高ぁい!( きゃっきゃとはしゃぐような嬉々とした声音で驚いて / 紙の隅に何か付いていることに気が付けば、よく分からないながらも壁にえいっと押し付けて / ぺた )!…絵、かざれました!
おめでとう。( 浮かせた体をゆっくりと慎重に下ろせば、腕の筋肉が役目を終えると同時にそっと息を吐き出し / 集中力と体力の両方を消耗したせいか、萎れたようにダイニングの椅子に腰掛けては、堪え性のなさを露呈して )…ちょっと休憩。
すぐるくんのおかげ、ありがとうっ!( 達成感に満たされながら地に下ろされると、飾った絵をじっと見上げて / 宝物がいつでも眺められる位置に場所取れて、ご機嫌に表情を緩め / くる、と振り返れば休憩と言いながら既に着座してる彼 / 電球マークぴこん / リュックから今度はおやつであるポッキーを取り出すと、それを持って彼の元へ / 隣の椅子をずずっと引っ張ってきて寄せると、椅子に登ってから着座 / ポッキーの箱を掲げ )いっしょにおやつ食べよう?
俺もありがとう、一番いい場所に飾ってくれて。( 横向きに腰を下ろした椅子の背凭れに肘をかけ、ダイニングからもよく見える絵を眺めては / 労力に見合うだけの笑顔に此方も口角を上げて応え / 何やら動き出す少女をその場から見守り、やがて隣に登ってくれば体の向きを変えて / 美味しいものをシェアしたいのは昔からかと「いいの?ひなちゃんのなのに」と言いつつも誘いには乗り気に / 飲み物が必要だろうと腰を浮かせると )…そうだ、何か──牛乳飲む?あったかいやつ。
いいの、いっしょに食べたいもん。( 働きぶりを褒められたような気がして、いっそうまなじりを下げて微笑み / 貼っただけ / シェアすることにはもちろんと、首を縦に振り / ぺりぺりとお菓子の箱を開けつつ / ホットミルクの提案に元気なお返事 )飲むー!あのね、ちょっとだけおさとう入れたのがいいな…。( 親指と人差し指で〝ちょっと〟を示しながらささやかな要求を加えて / えへ )
わかった。…じゃあ、手拭いて、100数えて待ってて。( 幼児故の味覚か本来の彼女の好みか、付言された要望に振り返って答えるとウエットティッシュを相手の前へと移動させ / それだけ言い置いてキッチンに向かったなら、牛乳を注いだ二つのマグカップを電子レンジの庫内へ / 1分40秒で取り出したホットミルクは火傷しない程度の温かさ / 1本だけスティックシュガーを添えてダイニングテーブルまで運んで )
はあいっ、……、ひゃく…。( 毎度ながらしっかりと元気な返答をしたなら、一旦お菓子の箱を置き / 目の前に置かれたウェットティッシュで手を拭き終えると、とてて…とごみはごみ箱へ / さて、と反芻するけれど5歳児にはスムーズに100まで数えられる自信がなく / 20くらいまでは滞りなく数えると、しかしそこからはゆっくりと間違えないように100までを綴り始め / 両手のひらとにらめっこするように、指折りつつ / とっくに100秒経過 )うーん、しち、ななじゅういち…。
──…ちょっと早かったな。( 所望の品を持って戻っても未だ続いていた数唱を聞いて独り言のようにこぼすと / テーブルにホットミルクとスティックシュガーを置いて元の位置に座り、隣から覗き込むようにして意思確認を )…持ってきたけど、最後まで頑張る?ひなちゃんも休憩する?
……ぁ、う……。( 隣に座る布擦れる音に、はっと顔を上げては覗き込む彼の瞳とぱちりと目が合って / ほんの少し視線を下げた先には、ほこほこ温かそうな湯気の立つホットミルク / 数を止めた指先と、湯気立つそれを交互に見遣ると )…きゅ、きゅうけいする…!( 多分それが冷めても常温でも気にならないような物だったなら、きっと続けていただろう / あったかいものはあったかいうちに! / 双眸をきゅっと不等号に瞑りつつ、それをくださいと小さな手を伸ばして )
トピック検索 |