可愛いの魔法　（〆）

いらっしゃいま──…あっお兄ちゃん！いらっしゃい～！（　扉の開閉に合わせて鳴るドアベル　／　反応して顔を上げた双眸に相手の姿を捉えるなり、ぱあっと笑みを咲かせながら駆け寄って　）一名様ご案内です～、こちらにどうぞ。…もうちょっとで終わるから待っててね。（　手のひらで店内へと促しつつ窓際の席に案内し　／　メニューを差し出しながらこそっと伝えて　）

飲み物だけ先に注文しとく。（　相手の第一声で関係が知れ渡ると、此方を向いた店員に軽く会釈　／　案内に従って着席しては頷きを返しつつメニューを受け取って　）…ミルクティー、砂糖なしで。（　さらりと通覧した中から目に留まった一つを指し　）

ミルクティーの砂糖なしですね、少々お待ちください。（　注文伝票にそれを書き込むと接客モードでにっこりと笑みを添え　／　くるりと踵を返して厨房に向かう後ろ姿はどことなくご機嫌　）──…お待たせ致しました、ミルクティーです。メニュー決まった？（　銀のトレーに乗せてミルクティーを運んでくるとおしぼりと共に置いて　／　トレーを胸に抱きながら小首を傾げ　）

…（　自分より余程しっかりとした働き振りの背を感心しつつ見送り　／　飲み物を待つ間、所在なげにスマホに指を滑らせ　）──…メニューは朝から決まってるから、ひな季が終わってから一緒に注文する。（　声を掛けられて少し頭下げるも妹と分かれば微かに表情緩み　／　メニューのレモンクリームパスタを目で示して　）

了解っ。（　親指と人差し指で丸を作ってにっこり　／　程良いタイミングで店長から「もう上がって大丈夫だよ」と声が掛かり　）あ、はーい！じゃあ着替えてくるね。（　手をひらりと一度振ると身に付けた制服を着替えに向かって　）

（　相手の姿が見えなくなると、暫しメニューを眺めた後にまたスマホを弄り始め　／　私服に着替えた妹を迎え入れる頃には頼んだミルクティーはもう半分で　）…お疲れ。

うん、ありがとう。（　私服姿で席に戻れば、労いの言葉に笑みを返し　／　自分の分のおしぼりと二人分のお冷をテーブルに置き　）…あ、飲み物おかわりする？（　半分に減ったグラスに気が付いて指を差しながら　）

（／　長らくお返事ができておらず申し訳ございません…！相変わらずの低浮上ながら明日か明後日には返せる予定ですので、今暫くお待ちください…！　）

（　／　丁度上がっていたので即レスですみません…！かしこまりました、お忙しいなかご連絡ありがとうございます*　のんびりお待ちしておりますので、どうかご無理なさらず暑さに気を付けてお過ごしください…！　）

ああ…、貰おうかな。（　丁度カップ持ち上げ　／　言われて初めて気が付いたように内側を覗くとそのまま一口　）…ひな季は？もう決まってるなら頼むけど。（　自分の元にあったメニューをひっくり返して渡しつつ　／　全て一度に注文するつもりで　）

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（／　お待たせ致しました…！お優しいお言葉をありがとうございます…、背後様もくれぐれも体調にはお気を付けくださいね。それでは、引き続きよろしくお願い致します。こちら蹴り可です◎　）

んー…わたしはガパオライスにしようかな。（　メニュー表を受け取ると大きく書かれた季節限定欄から選び　／　注文するよりも先に『お決まりですか？』と笑みを湛えた店長から声が掛かり　）あ、店長。はい、ミルクティーとガパオライスと…お兄ちゃんはレモンクリームパスタだよね？（　確認するようにメニュー指差しつつ　／　『お兄さん？店長の牧と申します。いつもひな季ちゃんには頑張っていただいて助かってます』と綺麗な笑みで笑い掛けて　）

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（　／　こちらの体調にもお気遣いいただきありがとうございます。昨夜は顔出しができずすみませんでした…！もしやり取りの中で返しづらかったり、展開に悩んだりなどありましたらまたいつでもご相談くださいね。こちらこそ引き続きよろしくお願い致します！　）

（　店長だという女性を何気なしに眺めていれば、唐突に呼ばれて妹の方を振り返り　／　しかし答えるより先に声が掛かると、また上方へと顔を向け　）…こちらこそ、妹がいつもお世話になってます。（　相手とは対照的に上手く笑顔が作れず、普段と然程差異のない表情で　）

（　『今日もひな季ちゃんの髪型可愛いですね。自慢のお兄ちゃんだってよく言ってますよ、ね？』とこちらに視線を配る店長と目が合えば　／　あたふた　）て、店長！言わないでくださいよ～…！（　目をぎゅっと不等号　／　照れを頬に滲ませ　／　『ふふ。食後にデザートサービスするので、お好きなもの選んでおいてくださいね』と微笑み掛けた彼女はその場を後にして　）

…仲良いな。（　申し訳程度のお辞儀で去り行く背を見送り　／　再度二人きりになると、少し沈黙した後にぽつり　）

すごく良くしてくれて、優しい人だよ。（　メニュー表を片付けていれば　／　柔和な笑み浮かべながら、えへへ　）──…あ、きた。ありがとうございます。（　先に飲み物が来て、暫くしてから料理が運ばれて来ては店員にお礼告げつつ　／　フォークを差し出し　）はい、お兄ちゃん。

…バイト楽しい？（　浮かぶ笑みをじっと捉えると　／　大方の予想がついているせいか特段声を落とすこともなく　）ん。（　あっさりとした応答と共にフォーク受け取ると、興味深げに届いたばかりのパスタに目落として　）

楽しい！（　うん、と首を縦に大きく一度振り　／　無邪気な笑みを咲かせ　）もし…改善点とか、そういうのあれば何でも教えてね。（　スプーンを握り締めながら少し緊張した面持ちで動向を見守り　／　どきどき　）

──…そ。（　薄く微笑む表情は紛うことなき兄の顔で　／　それから間を置いて「俺もよく言われる、お前は妹の話しすぎだって」と思い出したように一つ前の話題蒸し返し　）…ん。…俺好き、これ。（　ちらりと目配せだけしてフォークに巻き付けたパスタを口に運び　／　しっかり咀嚼した後に嚥下すると、また視線合わせて　）

…えっ、なになに、わたしの話ってどんなこと話してるの？（　微かに和らぐ表情は綺麗で、満足そうにまなじりを下げ　／　意外な話に双眸を煌めかせてはやや前のめり　／　興味津々　）えっへへ…やったあ。お家でもそれ作ってあげるね！（　大好きな兄に褒められては嬉しさ込み上がるように破顔　／　評価に満足しては漸く自身の料理にも「いただきます」と手を付け　）…うん、おいしっ。

いちいち覚えてないな…、他愛のないことばっかで。これ好きだったなとか、今新メニュー考案してるとか…多分そんなとこ。（　フォークにパスタ巻き付けつつ、何でもない口調で淡々と　）…贅沢だな。（　カフェのコーヒーにカフェのパスタの並ぶ食卓を想像しては　／　美味しそうに料理を頬張る相手に自らも相好を崩すと、不意に内心零して　）…ひな季と食べる食事が一番美味いよ。