可愛いの魔法　（〆）

いえ、…無事で何よりでした。
（　小一時間振りの再会を果たした彼女達の華やかで感動的な光景を後ろから眺めていれば、不意にマネージャーから彼女にしては珍しい表情を向けられ、些か当惑しつつも急いで会釈を返し。星明かり程度ならまだしも、ロケバスの明々とした電灯の下では濡れた胸元は隠し切れまいと、身を翻しては残してきたインカムとカメラを回収するついでに衣服も乾かす目算で再度廃ホテルへと足を向け。鳩尾辺りの生地を掴んでぱたぱたと空気を送りながら216号室の扉を開くと、ライトで地面を照らしながら目当ての二つを拾い上げ、ついでに衣服の乾き具合も確かめる。全ての目的を完遂して開け放していたドアを潜ろうとした時、ふと誰かに名前を呼ばれた気がして振り返るも、そこには沈黙した客室が広がるのみで。何も言わずに引き返してしまったから誰かが探しているのかもしれないと推察すると、足早に先程の場所まで駆け戻って　）

──…あれ、逆巻さんは？
（　ロケバスから出てきたメンバー達からも口々に災難だっただとかお疲れ様だとか、激励の言葉が飛ぶけれどこうして戻って来られたのは彼のおかげ他ならない。恐怖に怯えるばかりで碌にお礼を言えていないことに気が付き振り返るけれどそこに相手の姿はなく、牧さん曰くまた廃ホテルに入って行ったと言う。もしかして機材を回収しに？お守りのネックレスを返せていないのに。そんな懸念に眉を下げては、一番の撮れ高を逃したであろうスタッフ達の残念がった声を上げる姿を横目に、ロケバスの中には入らずホテルの出入口すぐ傍で相手のことを待ち　）

…あれ、まだ此処に居たんすか。
（　出入口に近付くにつれ歩調を緩めると、軽く息を整えながら廃ホテルを出る。その傍に佇む少女の姿に僅かに驚きを滲ませては、入りさえしなければ怖くはないのだろうかと一度背後の朽ちた建物を振り返り、また視線を戻して。左手の中に二つ抱えた機材を手品の始まりのように彼女の方へ向けると、丸ごと手渡そうとしてはたと止まり、結局カメラだけを差し出すことにして　）
…あ、機材。回収してきました。データ壊れたりしてないといいんすけど。

またホテルに戻ったって聞いて、これも返してないのに心配で…。
（　ホテルから出てきた相手から声が掛かると、無事であることにほっと胸を撫で下ろして表情を和らげる。きょろ、と周りを見回して誰の視線もこちらに向いていないことを確認してから、首元のネックレスのチェーンを指先に掛けて見せながらこそっと伝え。返却より先に、インカムを手元に残したままで差し出されたカメラのみを受け取っては、相手の気遣いを感じながらもインカムはもちろんカメラの状態も気になるけれど、何か変なモノが映し出されていたらと思うと自分で確認するのは気が引け。それは後でスタッフさんに頼もうとカメラを提げればまずは謝礼とネックレスの返却をと思うけれど、片手ではネックレスを外せず申し訳なさそうにあせあせと目を不等号にしながら　）
やっぱり回収しに行ってくれてたんですね…、ありがとうございます。ほんっとにいろいろお世話掛けちゃってすみません…それでその、ネックレス…お返ししたいんですけど…！

…ああ。…少しじっとしてて。
（　撮影前に預けたお守り代わりのアクセサリーのことなど今の今まで忘れていれば、衣装の下から覗く銀色が自身の私物だと気が付くのも、言外に伝えられた意図を汲み取るのも一拍ずつ遅れ。漸く理解するとインカムをポケットへと滑り込ませ、半歩程近付いて相手の首の後ろへと両腕を回す。斜め上から覗き込むようにしてチェーンを外したなら、そのまま己の首元へと付け直しつつ「はい、確かに」と受領の言葉を添え。遠目にロケバスからスタッフの一人が降りて来るのが見えると、顔はそちらを向いたままながら一応は彼女に宛てて呟き　）
もうじき出発ですかね。

ありがとうございます…。
（　撮影前もこうしてネックレスを着けてもらったことをふと思い出せば、その時はあまりの畏怖で気にならなかったけれど改めて考えると少し気恥ずかしいかもしれない。相手はこういうこと、慣れているのかななんて思いがなぜか頭を過ぎる。ちら、と相手を見上げると他の方向に視線をやっていて、言葉にもつられてロケバスの方へ視線を向けるとどうやら間もなく出発らしい。一刻も早くこの心霊スポットを去りたいからよかった、と安堵するけれど走馬灯のように今日の災難を思い出せば背筋がぞわり、粟立つ感じがして。居ても立っても居られなくなると今度は自分から手を繋いでは先導してロケバスへ　）
あ、そうかもしれないですね。…、早く行きましょう逆巻さんっ、長居は絶対無用です。

（　今まで必死に堪えていた、というよりはたった今怖気を思い出した、といった様子の相手に腕を引かれるままロケバスへと小走りに戻る。外に出ていたスタッフに事情を話すと共にインカムを渡せば、皆が両側に着席する通路を注目されながら歩くのが嫌で、目を惹く少女の陰に隠れるように気配を消して彼女の後ろに続き。目指す座席は行きと同じく最後列の窓際、つまりはロケバスの隅。どうか誰にも気付かれませんようにとの祈りも虚しく、よりにもよってプロデューサーに「役得だったね、ヘアメイクさん。お疲れ様！」と何のことを指しているのか判然としない労いを掛けられては、引き攣った愛想笑いで強引にやり過ごして　）

（　ロケバスに乗車するとなんとなく視線が集まっているような気がしつつ、メンバー達に手招きされ彼女らのすぐ傍に座る。漸く腰を落ち着けたような気がして少し長めの溜息を吐いていると、後ろの方から賑やかしいプロデューサーの声が聴こえてきて。さりげなく後ろをちらりと見やると相手は二つ後ろの席に腰を下ろしたようで、その会話の内容は自分も何のことかいまいちピンとはこず、なんだか気に入られているのかなと思うけれど明らかに表情が渋く。助け舟を出したい気持ちも山々だけれど、前に座るメンバーがこちらを振り返っていろいろと話を聞きたがりそれの対応に追われていれば、行きは気が重くて長く感じたものの帰りの道中はあっという間な気がして　）

（　結局プロデューサーから掛けられたのはその一言のみで、以降は話し掛けられるどころか見向きもされず。それが分かると居心地の悪さからも徐々に解放され、気兼ねなくスマホを取り出しては写真のフォルダを開く。多少のトラブルはあったものの、街の光から遠く離れた山中でしか出会えない満天の星空を待機時間中存分に収められたことで、一日を通しての充実度はそれなりに高く。目許を和らげながら画面と向かい合っていれば、車両は自宅マンションの前に停まり、ゆっくりと自動ドアが開く。少ない荷物を抱えて車内へ定型文の挨拶を残すと、一直線に自身の部屋の前へと進み、開錠の後に閉じられたプライベートへと消えて行って　）
お先に失礼します。お疲れ様でした。

（　話が落ち着いた頃には見覚えのある住宅街に入り。というのも高校の通学路からは１本外れた道ではあるけれど、コンビニなどの用があってたまに通っている道。そんな馴染んだ景色をぼんやり眺めていればふいにロケバスが停車し、誰かこの辺に住んでいるんだ、と思えば後ろから車内通路を通り降りようとする人物に双眸を瞬かせ。まさかここに住んでるなんて。マンションの全貌を見るように少し覗き込んでいれば、他の人達に遅れ慌てて挨拶を返すことになりまたもや若干の注目を浴び。少し恥ずかしそうに窓の外へと視線を逸らしては扉の向こうに姿を消す相手の背中を車内から見送ると、胸元の余韻をそっと握りながら、ぽつ、と小さく呟いて　）
…あっ、お疲れ様です！…おやすみなさい…。

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（　／　回収させていただきます！初めてホラー体験の描写を書きましたが書いててなんだか怖くなりました（）というか機材回収時のあれ、逆巻さん危ういところでしたよね…？読んでいてちょっとぞくっとして、背後様お上手…となりました。無事でよかった…。
逆巻さんの優しい気遣いが至る所に感じられるホラー回、とてもよかったです。ありがとうございました*　）

（／　私も書いていて怖くなったのでよく分かります、筆が乗れば乗るだけ怖い（）個人的に怪異は存在するかもしれないし存在しないかもしれない、くらいが一番面白いので、逆巻の怪奇現象ニアミスはああいった塩梅になりましたが、何か感じていただけたのなら嬉しいです…！そして実はプロデューサーの最後の一言もホラーポイントでして、一体何を見られたのか…ひぇ（　多分最後の手繋いだところだけ　）
今回もありがとうございました！怯えるひな季ちゃんを守らねばと始終騎士のような心持ちで、可憐なアイドルに頼られる正真正銘の役得回でした…。　）

（　／　やっぱり怖くなりますよね…？少し参考になればとそれ系の動画を見てしまったので私は尚更でした（）ホラーの表現からオチまで本当にしっかりしてらっしゃる！なんだか今後もそのプロデューサーさんに絡まれるというか、茶々入れられそうだなあと思いました。そういえばうっかりカメラのデータのくだりの着地点を入れ忘れてしまったのですが、多分都合良く映像が乱れてくれていることでしょう…。ついでにやばいのが映ってもいそうですが…（ちゃんとホラー）
可憐かな…可憐にできてたかな…！？怖がりすぎて上手く恋愛面を出せなかったので、ただの子ども感が強かったかもと少々反省しておりますが…逆巻さんはとにかくイケメンで至福でした…！逸早く駆け付けてくれたり背中ぽんぽんしてくれたり、ネックレスのくだりもありがとうございます…！　）

（／　そこまでしてくださっていたとは…！有り難いやら申し訳ないやら、ちゃんと眠れてますか…（）やばい映像の件はひな季ちゃんの耳に入らないことを祈るばかりですね、克服どころじゃなくなっちゃう…。
ひな季ちゃんは存在自体が可憐なので何しても可憐です、大丈夫です（　ぐっ　）何より怒涛の一日でしたし、むしろ恋愛面の感情は寮に帰って落ち着いた辺りで吊り橋効果と共にじわじわ浮かんでくるくらいが自然なのかなと！とにかくひな季ちゃんに逆巻をアピールせねばという思いから、これでもかと言うほど詰め込ませていただきましたが、功を成していたのなら幸いです…！　）

（　／　疑似体験した方が書きやすいかなあと思い勝手にやっていたことなので！臨場感があったかは不明ですが、しっかりぐっすり眠れているので大丈夫です◎　あまりの怯えっぷりに可哀想に思った編集さんが、プロデューサーには内緒でこっそりと削除してくれているかもしれません…！
大丈夫ならよかったです…！上手くまとめられず帰宅後のことは省略してしまいましたが、その夜ひとりで眠るのが怖かったひな季はベッドの中でまたぬいぐるみをぎゅっと抱いて寝てます、絶対。お陰様で着実にひな季の中で逆巻さんの存在は大きくなっていることでしょうｏＯ
それから連絡なのですが、19日の日中は用事がありお返事ほぼ返せませんが、夜になればいつも通り返せるかと！それから6月3日はお昼過ぎからお返事ができなくなります、返せるのは深夜か翌日になるかもしれませんので、ご了承のほどよろしくお願い致します…！　）

（／　ひな季ちゃんの怯えポイントが事細かに描写されていて密かに感服の念を抱いていたのですが、成る程そういうことでしたか…。お陰様で此方もより心霊スポットの臨場感を楽しませていただきました！聖人編集さん…！きっとそうですね、真実は編集さんのみぞ知る──。
ぬいぐるみを抱いて寝ているだけでも既に可愛いのに、ぬいぐるみを度々無意識に逆巻に見立ててるひな季ちゃん、さすがに可愛すぎてそろそろ背後が爆散しそうです（）ありがとうございます…。
リアルのご都合についてのご連絡もありがとうございます、把握致しました！どうかご無理はなさらず、余裕のできた時にお返事くださいませ。（　ここまで蹴り可です＊　）

次のシチュエーションですが、このまま相合傘イベに移る形で大丈夫でしょうか…？もし何か挟みたいシチュエーションがあったり、一息入れたい場合は、試運転形式での雑談・地方ライブまたはイベント（にかこつけたご当地観光）回・別世界線に移動してのパロディ回等々、取れる選択肢はいくらでもありますのでご遠慮なくお申し付けください…！　）

（　／　そうですね…三日間はお互いにコンスタントなお返事ができない状況ですので、一息いれましょうか*
様々なご提案ありがとうございます！なにやら楽しそうなものばかりで新鮮でわくわくしております、地方ライブにイベント…！300レス記念の雑談でもいいかなと思ったのですが、本当にあっという間でしたので記念雑談は500レス目くらいまで引っ張ってしまってもいいかなと考えております…。それで、別世界線に移動してのパロディとは…！？極端なイメージしか湧かず（逆巻さんがアイドルな世界線）、１・２個ほど例を挙げていただけると助かります…！　）

（／　一度本編の方は休憩ということで、承知致しました。キリ番レスのお祝いについても賛成です。このままのペースだと月に二、三回お祝いすることになりますからね…、勿論喜ばしいことではあるのですが…！
別世界線のパロディとして例を挙げさせていただくなら、逆巻とひな季ちゃんが同じ学校に在籍する学生パロ、アイドルひな季ちゃんと俳優逆巻の芸能界パロドラマ撮影、漫画家ひな季ちゃんとアシスタントもしくは担当編集、売上低空飛行ホスト逆巻とお客様、姫君と騎士、何かしらの御伽話パロ…等でしょうか。他にひな季ちゃん側からこんな役柄や世界観をやってみたい！というご要望があれば、是非お聞かせください…！　）

（　／　あんまり頻繁にお祝いしてもマンネリになる可能性がありますからね。ではキリ良く500レスくらいに到達したら一度お祝いとしましょう…！
またもやたくさんの案を挙げてくださってありがとうございます。背後様の頭の中はアイディアの宝庫ですね…！その中でしたら学生パロ・ホストパロ（接客が気になりすぎます）・御伽噺パロに特別興味そそられました。御伽噺パロはその中でも、赤ずきんちゃんと狼がぱっと思い浮かび、定番にひな季が赤ずきんでもいいのですが逆巻さんが赤ずきんくんとしてでも大いにアリだなと…！
こちらからの提案ですが、素敵な提案をたくさん受けてそちらに興味がいってしまって何も浮かんでおらず…。また浮かび次第提案させていただきますね！　）

（／　学年や関係性等のあらゆる状況設定ができる学生パロも楽しそうだし、何の制約も受けずひな季ちゃんに甘くできるホストパロも捨てがたいし、到底人なんて食べられそうにない狼ちゃんと赤ずきんくんの物語も気になるところ…！元はレス突破記念企画として考えていたので、しっかり作り込んでやるというよりはお遊び的に一区切りつく程度までやるくらいの感じになるかと思いますが、背後様の今一番惹かれるものはどれでしょうか…？丸投げで申し訳ありませんが、どうにも決め難く…！どれに決まっても喜んでお引き受け致しますので、お気軽に指定していただければと思います…！　）

（　／　記念企画だったのですね！本当にどれも楽しそうで惹かれます～…！今回選ばなかったものもいずれできると分かっていても悩んでしまいますが…今回は狼ちゃんと赤ずきんくんでいかがでしょうか。〝赤ずきんくんのことを食べちゃいたいくらい大好きだけど、尊すぎて食べられない狼ちゃん〟というのをやりたいなあと…！
また、今回は赤ずきんを題材としましたが、御伽噺パロ２としていつかの機会に他のお話パロもやってみたいです*　）