匿名さん 2023-03-24 20:11:47 |
通報 |
わたしの屋敷にお忍びで遊びに来ませんか?これをお貸しすれば多少なり見目は隠れますし…これでも名の知れた家柄なので、ここよりうんと外部からの干渉は少なくて済みますよっ。( ぱ、と明るく人差し指を立てながらにこやかに提案 / 現時点、下心は一切なくて / そっと笠を脱ぎぼやけていた素性を晒しては、あどけない八重歯覗かせつつ垣根を超えて手を差し伸べ / 肘あたりからぶらさがる袋にちらり視線向け )ちなみに本日、これからのご予定はいかがですか?頬もとろける椿餅をご用意できますが。
…それは、大変ありがたいお話ですが。( 口調は真似つつも表情の乏しさはまるで正反対に、差し出された手のひらへぽんと自分の手を重ね / 相手の気遣いよりもお屋敷と椿餅への興味が決定打だった様子で / ついていく意思を示した後、率直な疑問を投げ掛けたなら / 「…あ、おじいさんとおばあさんに言わねぇと」と手を差し伸べられた側が差し伸べた側を引き寄せて、垣根の内へと入れるだろうか )どうして貴女がそんなことを。
( 白魚のような手が重なるも直後外見から想像し得ぬ言葉使いに、ずきゅん / 所謂ギャップ萌え / 誘い出しつつも彼女の手に引かれ、足先を敷地内に着け垣根を超えてしまえば / 垂れ衣が風に靡き魅入られた先程と蝶の如くふわり庭先に舞い / おず、と答えたなら笠をそうっと彼女の頭上へ )…へ。……、貴女が困っているように見えた、から…?
──…ご令嬢は、少し人が良すぎるな。( 思わぬ返答に数秒の沈黙を置いて、仄かに破顔した表情は垂れ衣の奥 / そのまま家人に「遊びに行ってくる」とだけ伝えれば / 屋敷へと連れられる道中、特別指示や指摘がないようなら握った手はそのままに / 名を尋ねるけれど、先に名乗るのが礼儀かと思い直し「私はかぐや」と続けて )…そういえば、お名前は。
かぐや、姫さま…。え、あまりに麗しく似合いすぎでは…!?( 垂れ衣の奥に覗く仄かな笑みがなんだか頭から離れず / 道中繋がれたままの手にどきどき、重ねて緊張でふるふる / しかし確実に我が屋敷まで送り届けようと、半歩先ゆく横顔はきりりと口角を引き締め / 途中小さな小さな小石だったり、水溜まりに気が付けば繋いだ手を柔く引き寄せて )わたしは…姓は永瀬、名はひな季、と…。あっ、足元気を付けてくださいね…!
…声まで美人、名前まで美人、か。( 既視感のある反応にぽつり / 言われ慣れたためか取り立てて快も不快もなく / 歌でも詠むように「永瀬のひな季さま」と静かに反芻しては / 最初はおもしろく眺めていた過剰なほど丁重な扱いにも少々飽き始め、悪戯心から何もないところで躓く振りをして相手の方へとよろめき )ぅ、わっ……。
?…──姫さま、( ぽつと呟いた言葉に、何か気になるのかと微かに小首を傾げていれば / ふいに何かに躓いてしまったらしい彼女がこちらによろめいてくると、衝撃マーク浮かべ / 咄嗟に椿餅の袋を持っていた手を差し伸べては、繋いだ手で彼女を引き寄せるように抱き止め / とさ、と袋は地面に落ち / 心配そうに眉尻を垂らしながら垂れ衣の奥を覗き込み / あたふた )大丈夫ですかっ…?すみません、わたしったら何か見落としを…!
…ひな季さま。落としてる、大事な椿餅。( 両手で支えられると、同じ笠の下に入った相手の表情がよく窺え / 上流の子女らしからぬ慌てように更に擽られる悪戯心 / ふと屈んで地に落ちた椿餅の袋を拾って渡し / 偽物の憂い顔で、袋に彼女の手を沿わせる拍子にその甲をさらりと撫でてみて )この菓子みたいに、私のこともひな季さまが運んでくれたらいいのに。
え、…あ!ありがとうございます──…それはさすがに、( 落としたことに気付かされると、また衝撃マークをひとつ浮かべ / 袋を拾ってもらうも手の甲を撫でられれば仕草にも表情にも、どき / しかし溢れた彼女の願望に神妙な顔付きになれば / 気が付かなかった! / はっ…とした表情でほろり言葉溢し )名案すぎません…?すみませんがこれはそのまま持っていてもらえますか、…では失礼しますね、かぐや姫さま。( 今し方受け取ったばかりの袋を彼女に持たせては / 一言添えてから、ひょいとお姫さまだっこ / そのまま歩き出して )
…、えっ。うそ──( まさか本気にするとはつゆも思わず / 意味が飲み込めずに一拍置いて素の驚駭が表れると同時、足元に浮遊感をおぼえて / 最初こそ恐々としがみつくように腕を回していたものの、じきに慣れたのか大人しいながら幾分か肩の力の抜けた様子で / 無事に屋敷まで運ばれ、ようやく地に足をつけては、信じられないような目を相手の方へと向け )…どんなご令嬢だよ…。
舞が得意なので体力には多少自信が。持続力はありませんが…えへへ…。かぐや姫さまが軽くて助かりました!( 屋敷に着きひと働きを終えれば、ふう、と額拭う素ぶり / ふと視線に気が付けば、褒められてるわけでもないのにはにかみ笑い浮かべ / むしろ彼女の軽さに信じられないような目を向け )それにしてもほんと、羽根のような軽さで…もうちょっと食べた方がいいですよ…。そうだ、椿餅食べましょ!さあさ、中へどうぞ。( 門番に話し掛け開けてもらえば、座敷へと誘導 / 〝女子会するから〟と部屋の周りは人払いを頼み )
はあ…多少、自信が…。( 何でもないことのように語られる事柄に追及する気も失せ / かくいう自身も月の住人というファンタジー存在 / 助言には軽く両腕を広げて体付きを確かめた後、「ひな季さまだってそう変わらないのに」とこぼして / 先導に従って門をくぐれば、名家に相応しいお屋敷を瞳の動きだけで見回し / 使用人に椿餅を手渡したなら、通された座敷へすぐさま器に盛られたそれと茶が運ばれてきて / それからそっと笠を外して側へと置き )お邪魔します。…ここがひな季さまの部屋?
( 〝変わらないかな…?〟と持ち上げた袖から覗く腕を見つつ / 座敷へ辿り着き間もなく使用人から茶菓子たちが運ばれてきては、礼を告げると使用人たちは言いつけ通り部屋から離れていくと )いえ、これは客間で。急にわたしの部屋へ通されても困りませんか?( つい先刻知り合った仲なので一応、と / 一握りの常識持ちつつ畳の上に座れば / 器に盛られた椿餅を手のひらで指しながら、にぱり )さ、どうぞどうぞ。覗き見る女性も求婚する男性もいません…ごゆるりお寛ぎください、かぐや姫さま。特にこの椿餅は絶品で!( 人様へ勧めておきながらひと足先に二股の竹串で椿餅を刺せば、ぱくり / 幸せそうに緩む頬に手のひらを添えながら )えへへ、とても美味しいので…!
…?特には。( そんなこと気にしたこともなかった、とでも言うようなきょとん顔 / 脇の甘い性格 / 使用人が去って二人きりとなった空間の静けさは故郷を思い出すようで / なんとなしに外を眺めつつひとつ息を吐き出せば / 勧められるまま椿餅をぱくり / 絶賛も頷ける味に瞠目すると、口元に手を添えて小さく呟いた後、相手と目を合わせて通じ合うように頬を綻ばせ )…!たしかに、これは絶品…。
それじゃあ次に遊びに来てくれた時には、わたしの部屋で女子会しましょうね!( 次があると信じてやまないまなこ / きらきらと煌めかせ / 椿餅を口にした彼女から賞賛を得ると、満足げに八重歯を覗かせ )でしょでしょ、歯切れよくくどすぎず何個でも食べられそう、な…──。( 彼女がふいに見せた笑みに、とすっと心を射抜かれ / 一瞬時が止まったような / 彼女の手をそっと両手で包みこめば / 自然と口からまろびでて )わたしと結婚しませんか。
はいはい。( 誘いに応じるか否かは気分によるところが大きいため、確約はしないおざなりな返事 / すっかり魅せられてもう一口と竹串に伸ばした手を掬い上げられれば / 「──…は?」ここには覗き見る女も求婚する男もいないけれど、「求婚する女はいるのか…」 / 呆れ気味に呟いた後は相手を値踏みするようにじっと見据えて / やがて打算を終えると、覚悟を確かめるようにひとつ尋ね / もしそれに肯定が返ったなら、「じゃあ何か面白いことして」と大雑把な無茶振りをするだろうか )…どうしても私と結婚したい?
はいっ、頑張って幸せにするので──…え?( まさか同性相手に求婚してしまうなんて / 言った後にどうしよう…と汗をだらだら / そこへ彼女から問い掛けがあるとすぐに返答するも続く無茶振りに、きょとん / 「おもしろいこと…?」生まれてこの方受けたことがない無茶振りに神妙な顔付きで反芻し / 手を握り神妙な顔付きのまま考えるように斜め上、左右、下へと思考とともに顔を向け )おもしろい、こと……。
一生を共にするなら芸の一つくらいできる相手じゃないと。( 当惑する彼女の反応を、見逃すまいとするかのごとく注意深く眺め / つんと乙に澄まして高慢な台詞を放つも、何を見せられたところで求婚に応じる気はなく / 催促するように眼前に落とされた言葉を拾い上げて繰り返して )おもしろいこと。
芸…っ、そんな犬じゃあるいし…。( 衝撃マークを浮かべては / 人差し指同士をつんつんと合わせながら、ぽつりと小さな小さな反抗心 / ほぼ犬です / 困ったように双眸をぎゅむむと瞑ったのちに絞り出したのは )ちょっと待っていてください!( 徐に立ち上がっては、たたたっと自室へと向かい / ほんの数分後、使用人の驚く声や止める声のなかスパーン!と再びこの部屋の戸を開けては / おしろいで顔を白くさせた出立ちで部屋に戻れば )いかがでしょうかぐや姫さま!〝面〟白いです!……、どうか、どうか笑ってやってください…。( 勢いこそ良いものの、ふるふると羞恥で震え出しては / おしろいの奥を赤く染め上げていけば、ぱたっと三つ指つきながら頭を垂らし )
……、面白くない。…けど、それが面白い。( 開け放たれた戸から現れたおしろい塗れの顔に呆気に取られ / 沈黙に耐えかねた彼女が頭を垂れてから動き出せば、目の前で膝を折って容赦のない一言 / しかし直後に意見を翻し、顎に添えた人差し指で掬うように顔を上げさせた先には、仄かながらも確かな笑みがあって / 犬を褒めるように「よしよし」と顎の下を撫でやり )──また遊びに来るよ、ひな季さま。…笠、借りても?( 自分が満足したなら唐突にすっくと立ち上がり、どことなく機嫌良さそうに先程は保留にした約束を交わすと / 行きと同じく帰りも運んでもらおうかとたくらむも、〝面白い〟顔を見て考え直したようで )
トピック検索 |