鬼が人と共存できたのは、文明開化の直前までだった。
人より自然に近い存在である鬼は、オーバーテクノロジーの代償として環境汚染が広まる中で、徐々に淘汰され数を減らしていった。
江戸にその名を轟かせた< 鬼神野一族 >も、栄枯盛衰の体現者となりつつあった。
年老いた先代当主は、武と智の双方に長けた長男へ、満を持して鬼の頭の座を譲った。
鬼の中の鬼と謳われた笑顔を見せぬ新当主は、当主襲名を表明する集会の場に登壇した。
眷属たちも皆、新たな当主の発言へ一心に興味を注ぐ中、彼は言った。
「俺は人間を嫁に取る」
これが、伝説に語られる史上最も荒れた全鬼集会だ。