狐緋人

狐緋人

主  2023-03-12 23:09:40 
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___其ノ社滅ビル時、狐緋人モ滅ブ。禍憑鬼ヲ退治シ社ヲ死守セヨ。___






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  • No.41 by 稲荷 燈  2023-05-23 22:29:35 




(理沙と守の初舞台であった日の翌日。珍しく面接が入っている事をタブレットで確認しては歓喜の声を上げるもWEB履歴書を見て呆然とする。年齢は60代。WEB履歴書という物に慣れていない様子が文面からひしひしと伝わって来る。概要欄の所には“面接の際には手書きの履歴書を持参致します。”と丁寧に記載されていた。)

「…どんな人なんだろう。」
(ポツリと独り言を溢す。記載されている電話番号へと連絡を入れ日程の調整を行おうとしたものの電話の向こうの彼は“いつでも大丈夫。”との事。話は早い方が良いと本日の日程で問い合わせて見れば今から向かう旨を伝えられ、司令室のソファーで昼寝をしている相手を叩き起こしに行き。)

(昼食を済ませ面接の時間が近付いて来た頃、会議室にて準備をして入れば玄関のセンサーが反応すると共にインターホンが鳴りテレビモニターに年配の男性が映り込む。会議室のロックを明け、エレベーターで上がって来た男性を玄関前で待っていれば深々とお辞儀をされる。)
『先程連絡をさせて頂いた者です。』
(仕立ての良いスーツ、姿勢、佇まい、年齢差無視に紡がれる綺麗な敬語、どれを取っても貫禄を感じる。「初めまして。急な日程でしたのにご対応頂きありがとうございます。中へお入りください。」と男性を会議室に案内すれば相手がテーブルを挟んだ席に立っており、男性は再び丁寧な挨拶をしていて。)
「まず、志望動機をお聞かせ頂いても良いでしょうか。」
『…先日、不思議な事がありました。定年退職を迎え、最後の出勤だった日の事です。部下達に花束を貰い、穏やかに退職の日を迎えようとしていたその日に禍憑鬼が現れました。避難司令に遅れた部下がいましてね。若い命は残さなくてはと、私が囮になろうとしました。』
「…。」
『実は、二年前に妻を亡くしていましてね。恐れも無く、受け入れようと思っていたのです。どういう事か全くわからないんですが、何故か…禍憑鬼が消失しまして。生き延びてしまったという訳です。…私は仕事人間で、退職したら妻とやろうとしていた事が沢山ありました。妻も仕事も無くなった今、何か私にでもできる事があるのでは無いかと、』
「ここがどういう会社か分かっていますか?」
『存じてます。』
「確かに、貴方には自分自身で気付かない内に何らかの力が発現したのかもしれない。部下を守る姿も上司の鏡。素晴らしい生き様です。………ですが気になる事が一点。貴方からはどこか、生きる事を諦めているような様子が伺えます。」
(男性は表情を変えないまま自分を見詰める。眼鏡越しの男性の瞳が全てを物語っていた。)
「命を守る組織です。自分の命も守らないといけません。約束できますか。」
(男性は答えない。タブレットを置いたまま立ち上がれば、先程男性から受け取っていた履歴書に視線を向ける。大手企業の部長。男性の佇まいからも納得がいった。「コーヒー、淹れ直してくるね。」と相手に告げれば相手と男性を二人残し給湯室へと向かって。)

  • No.42 by 稲荷 日影  2023-05-30 00:49:03 

(燈が席を空けて数分、奴は面倒事を俺に押し付けて一服しているに違いない。ずるいぞ。)

「なぁ。えー、あー。」

(何て呼んだらいいか分からず手元にある履歴書に目を通す。部長ねぇ。)

「あー部長さんでいいかな?とりあえず。」

『好きに呼んでいただいて構わない。』

(部長の受け答えは淡々としているが、そこに生気は感じられない。)

「聞きたいことが3つある。こちらから質問いいかい?」

『ああ。構わない。』

「そうかい。じゃあ1つ目、どこでの会社の存在を知った?表向きは極普通の企業けど?」

『数か月前、元勤務先の近くで禍憑鬼が出現し避難勧告が出た。隣のビルが襲撃された時に私は見た。巫女装束の様でありながら近代のものの様な服に太刀から斬撃を飛ばし禍憑鬼を一刀の元に伏した女性を。』

「‥‥。それとウチに何か関係が?」

『服にMEFと書かれていた。調べていくうちにここにたどり着いた。それに、』

「それに?」

『あれはコーヒーを淹れ直しに行った彼女だろう?』

「はは、お見事。」

『ああ。』

「では2つ目、何をしにここへ?」

『私がこの不思議な力を授かったのは何故か、何の為に。それを知りたかった。』

「それについては説明しよう。部長さんがその能力を自覚したのは最近だったね。」

『ああ。』

「それはね、部長さんの言う通り授かったものだね。後天的に。正確には受け継いだものかな。」

『受け継いだ…。誰から…。』

「亡くなった奥さんから。」

『妻から。…いや待て妻は一度もあんな光を放ったことなど…。』

「力ってどんな時に現れると思う?」

『わからない。』

「力っていうのはね。人の感情や思いの具現化なんだ。感情や思いの強さによって力が引き出される。もしくは神をもその思いに憑かせる。奥さんが亡くなったのはご病気?」

『…ああ。』

「無礼なことを聞いて悪い。つまり奥さんはずっと生きたいと願っていた。そして部長さんあなたは奥さんに生きていてほしかった。」

『ッ…その通りだっ!!!…、すまない。』

「いや、それが思いというもんだよ。」

『‥‥。』

「奥さんの生きたいという思いが力を発現させ、自分の最後に奥さんは部長さん、あなたに生きてほしいと思った。二人の思いが重なり感情の心門が開いた。生きていてほしいという思いが対象を浄化し元の形に変換するというこの世で最も優しい能力になってあなたに託されたんだ。」

『…そうか。』

「最後の質問。燈の最後の問には何故答えなかった?」

『…。私には豊子のいない世界で生きる資格などないのだよ。私たちには子供はいない。というより出来なかったんだ。豊子はずっと悔やんでいた…。私はそんな妻の姿を見たくなかった。毎日仕事に明け暮れ気付けば部長という立場になっていた。ある日妻が病院で子供と楽し気に話しているのを見たんだ。あんな豊子の顔は初めて見た…。私は立ち尽くしたよ。足が動かなかった。その後病室に行った時には妻の目元は泣き腫らした後があった。私は…どうすることも…できなかった。』

「だから死んでもいいと?」

『豊子を悲しませてしまった私だけこの世に生きていていいはずがなかったんだ…』

「さっきも言ったが本当にそう思うか?」

『この気持ちは拭えないさ。君も愛するものが出来れば分かる』

「そうか…なら死んでもらおうかな」

『…どういうことだ』

「そのまんまの意味さ…ついてきな」

(席を立つと訓練場にいる守と理沙に少々使用する旨を伝える。訓練場に向かい足を進める途中)

「そういえばさっき、君にも愛する者ができればわかるって言ってたよな。」

『…ああ。』

「俺にも妻がいてな、うちはお互いいつ死ぬかわからん仕事をしているからか悲しいとかそういう感情は表には出さないんだ。それに俺は彼女の強さを知っている。そして…」

『…そして?』

「どんな時も彼女を信じているし信頼してもらっている。だからどちらかが死ぬ時はは笑っているはずだよ。」

『…そうか。』

「それにあいつは簡単には死なないね。なんたって最強だから。部長さんも見たんだろ?」

『…なんのことだ?』

「刀から斬撃飛ばして一刀両断なんて燈らしいよな笑」

『ッ!まさか!』

「まあ、本人は覚えてないだろうけどね。さ、着いたぞ」

(訓練場に着くと守と理沙が片付けをして待っていた。燈には連絡入れたけどまぁいいか。どうせ《中に入る》からな)

「部長さん、死ぬ準備はできたかい?」

『…ああ。』

「そうかい。」

『最後に名前を聞いても?』

「んー、はは。《対マガツキ専攻対策結社【エモーショナルフォクシー】》代表取締役社長兼狐緋人、陰陽頭 稲荷家当主 稲荷日影。」

『そうか。君が…』

「なんか言ったかい?」

『…いや、なんでもない。始めてくれ。』

「そうかい。着装!」

(瞬時に狐緋人の制服とガントレットに切り替わる。そして手を合わせると同時に術式を唱える。)

「《御ソワカ御ソワカ・逢瀬愛染号哭の時・死してこの身修羅の道・合わせ会わせて冥利の道連れ》裏返せ【冥道彼岸】」

(術式と共に世界が裏返る。辺りには彼岸花が咲いている。一人佇む部長の前に一人の女性が現れる。)

(さて部長さんはどうするのかな。こういうお涙頂戴は燈の方が得意なんだけど…まぁあとは本人に任せよう。術の解除は俺がするよー。)

  • No.43 by 稲荷 燈  2023-06-09 01:27:22 




(喫煙所にて、短くなった煙草を灰皿へと捨てる。相手から入っていた連絡に今更ながらに気付いては溜息を溢す。カツカツとヒールの音を鳴らしながら訓練場へと向かい中へと入れば術を唱えている様子の相手の姿。)
「日影も容赦無いね。あのおっさんが本当に奥さんと一緒になる事…死を選んだら本当に戻って来れないのを分かってやってるんだから。…あー怖い怖い。」
(面接だからと格好付けたスーツは非常に疲れるしヒールは痛い。慣れない事をするもんじゃないなと思いながら、目を瞑ったまま術を唱え続ける相手に額に自分の額をつける。)
「それじゃ、お邪魔します。」

(一瞬の浮遊感と共に目を開けば一面に広がる彼岸花に圧倒される。中央には抱き合う二人の姿。
完璧にお邪魔虫じゃん、なんて悪態付きながら術の力で制服を纏いながら二人の元へ歩みを進める。
自分に気付いた二人がこちらに向き直る。)
「初めまして。ご主人からの依頼?を承った者です。」
『…依頼?…何の事?ねぇ貴方、』
『豊子、良いんだ。気にするな。そして待たせて悪かった。やっとお前の所に行けるんだ。』
(不安そうに眉を下げる女性。表情を変えないまま刀を構えれば男性、元い部長は優しい表情のまま瞳を閉じる。)
「では、現世との魂の境目を断ち切ります。…痛いのは一瞬なのでご心配なさらず。」
『…!!!待って!!!貴方、何をするつもりなの!!!』
「ご主人のご希望通り、奥様の元へと、」
『駄目よ!!!そんなの駄目!!!!!私はこんなの望んで無いわ!!!』
(女性の言葉に耳を貸す事も無く部長に斬りかかる。………も、その刹那。鋭い光に目が眩み、強制的に術は遮断され部長と自分の“肉体”は訓練場に戻されてしまって。
何事かと目を見開く相手に部長は掴み掛かる。)
『どう言う事だ!何故…何故私は生きている!!!』
「-もうやめて。貴方。-」
(いつもの自分の気怠げな様子の声色とは違うはっきりとした声が響き渡る。)
「-貴方の気持ちは嬉しい。でも、望んで無いの。…生きて、欲しいのよ。-」
『豊子、なのか…。』
「-ゆっくり、こちらに来てください。私が知らなかった新しい日常の話を土産に。ずっと見ていますから。…ほら私お友達がとっても多かったでしょう?あっちで貴方の事をたくさん自慢する予定なの。-」
『…何を、言っているんだ。俺は自慢できる様な夫じゃ、』
「-本当は、死ぬ為にここに来たんじゃ無いでしょう。ずっと見ていたのよ。これまでも。皆を守るヒーローが夫だなんて、自慢してもしたりないわ。-」
(涙を溢す部長の頬を撫でた後、“自分”は相手に向き直る。)
「-ごめんなさいね。お嫁さんの身体を借りてしまって。若い子の服ってなんだか恥ずかしいわ。足が寒いんだもの。-」
(悪戯っぽく笑った“自分”はその一言を最後に気絶するように倒れ込んで。)

  • No.44 by 稲荷 日影  2023-06-10 22:30:38 


「…守。理沙。燈を医務室まで頼む。」

(二人の返事を聞いてゆっくり部長の方へと振り返る。)

「まぁ。状況が飲み込めねぇだろうから少し話をしないか?」

(部長は少し虚ろな表情で首を縦に振った。)

「いちごミルク飲むか?」

(いちごミルクの缶を部長に差し出す。)

『いや。私は妻と違って甘いものは苦手でね。遠慮させてもらおう』

「そうかい。では。何でも質問してくれよ」

(部長は部下に説教をするかのような顔つきになった。)

『そうか。私の覚悟は決まっているが…では納得のいく答えであれば私は君たちに雇ってもらうとしよう。』

「はッ。この堅物め。」

『最初の質問だ。君が見せたあの幻覚のようなものは一体なんだ。』

「あー。あれは陰陽術だ。【冥道彼岸】といって言わば死とのめぐり合わせ。常世が裏返った世界に入れたんだ。」

『ここにはそんな馬鹿げた力を持つものが沢山いるのか?』

「いるわけないだろ。あの術式は俺が作ったんだから。」

『二つ目だ。君がその術式を作ったのなら君にしか解けないはずだ。なぜあの時、燈くんと言ったか?彼女に斬られる寸前に術が解けたんだ。』

「それなんだが、部長さん。あんたどこで奥さんと出会った?」

『…。私は登山が好きでね。剣山に登っていた時だった。こんな山の中に着物でいた彼女には驚いた。…出会ったのはその時だ。』

「なるほどね。まぁ大方予想通りだ。」

(部長は少し目線をこちらにやると『予想通り…?』と投げかけた。)

「なぁ。奥さん、豊子さんの旧名って《堀川》じゃないか?」

『ッ!…そうだが。どうしてそれを。』

「17年前、俺と燈の最初の任務は人探しだった。『剣山にて刀鍛冶の娘が行方不明。捜索願う』だ。」

『‥‥ま、さか』

「勘がいいな。そう、依頼主は19代目堀川国広。豊子さんの親父さんだ。」

『おかしい。仮にそうだとして豊子の持っていたこの力は!』

(部長の声が次第に荒くなるが無視して話を続ける。)

「当代堀川の人間は刀を鍛える際、不思議な鍛刀法を用いると言われている。それが《穢れの浄化》だ。なんでも玉鋼につく邪気を祓いながら刀を打つんだと。どんな方法かは分からんがこの力を堀川は受け継いできた。」

『そこまでは分かった。だがなぜ術が解けた?』

「共鳴したのさ。あの時のように。」

『何のことだ。』

(部長がいぶかし気に聞く)

「いや。俺たちの初任務は失敗に終わったんだ。あれが俺と燈の最初で最後の失敗だった。結局その後も豊子さんは見つからず。その時堀川から安倍の本家に納められたのがその時の国広によって鍛え直された《闇斬・燈》燈の刀だ。」

『ああ。』

「闇斬・燈には病、つまり悪意や負の感情を斬る性質がある。はは。燈の事だ。あんたの魂の境目を斬ろうとしたんだろう?」

『あ、ああ。』

「そんときに部長が豊子さんから受け継いだ浄化する力と闇斬の性質が共鳴と反発を繰り返して裏と表を強制的に繋いだ。逆に強制的に繋いだことで俺の術が解けて豊子さんの魂が一時的に表にこっちに残ったってわけだ。」

『そう、だったのか。』

(部長は少しの静寂の後、俺に向き直って告げた。)

『最後の質問だ。こんな老体で堅物の私でも君たちの仲間たりうるか?』

(その目には先ほどのものとは比べ物にならない程の光が宿っていた。)

「はは、そんな嫌味が言えるならまだまだ若いよ。ようこそMEFへ」



‐その夜‐

「お疲れ。燈。」

(起き掛けの燈に労いの言葉をかける。)

『お疲れ。太陽は?』

「もう寝たよ。今日も保育園でいっぱい遊んだそうで」

『そう、それで部長さんは?』

「奥さんのお墓に花を添えにいくそうだよ。」

『…そう。』

「優しいね燈は。」

『…はぁ。なにがよ』

「んー。体は現世に残して魂だけを切り離す。向こうで何かあっても俺の術で魂と体を結合させられる。」

『お見通しかよ。』

「はは。夫婦、だからね。」

『それに優しいのは日影もじゃない。』

「え?」

『ずっとこらえてたものが今流れてるじゃない。あんたの頬を。』

「はは。こりゃ参った。」

『さ。一服しよ?』

「ああ。」

(二人はタバコに火を付け夜空に向かって吐いた。願わくば豊子さんに安らかにという思いが届くように。)

  • No.45 by 稲荷 燈  2023-08-13 00:25:23 




(翌日、疲れからか冷房を付け忘れていた様で蒸し暑さに目を覚ます。太陽は一足先に目を覚ましていた様で扇風機を占領していた。「おはよ。」と寝惚け眼のまま言いエアコンのスイッチを入れる。)
『お母さん、今日お休み?』
「と、信じたいんだけどお盆中は何かと仕事が多いんだよな。」
『んー。そっか。お父さんは?』
「どうだろ…。ってか、何かあるの?」
(太陽がおずおずとした様子で差し出して来たのは回覧板に挟まれていた花火大会のチラシ。)
『見に行きたい。』
(最近仕事は立て続けだった。息子の我儘くらいは聞き入れたい。徐にスマホを取り出し連絡するはMEFにいるであろう理沙。)
『-はいはーい。おはよ燈。どしたの?-』
「おはよ。守もいる?」
『-まだ来てないよ。そろそろじゃない?-』
「そっか。あのさ、伝えて欲しいんだけど。今日一日私と日影休みたくて。」
『-それは全然大丈夫だけど、…珍しいね。何かあったの?-』
「太陽と、花火大会行きたいの。」
『-ああ!えーめっちゃ良いじゃん!じゃあ出現情報あったら私と守で行くから大丈夫!気にしないで楽しんで!-』
「ホワイト会社でありがたいよ。ごめんね、お願い!」
(スマホをテーブルに置いては瞳を輝かせながらこちらを伺っていた太陽へと向き直る。)
「よし。じゃあ夕方になったら花火大会行くよ。折角だし甚兵衛に着替えて行きなよ。」
『やったーーー!かき氷食べる!』
(大袈裟なまでに喜ぶ太陽を微笑ましく見詰めては天気予報の雨の知らせを不安げに見ていて。)

(時刻は夕方。天気予報は正しかった様で空には暗雲が立ち込めているも太陽は楽しそうにはしゃいでいて。
偏頭痛予防にと薬を流し込んでいた相手も太陽が並びたがった屋台に一緒に率先して並んでいる。
かき氷屋の屋台に並んでいる最中、二人の隙を見計らい一瞬離れてはビールを片手に二人の元へと戻り。)
『僕、青いかき氷が良い。』
(500円を握り締め、自分の番になった太陽は屋台のおばさんにお金を渡し、引き換えに受け取ったブルーハワイのかき氷に瞳を煌めかせる。
そろそろ雨が降り出しそうな空模様。
念の為に来客用テントの中のベンチに座らせては、自分はビールを片手に先程購入した焼き鳥を食べる。
相手と出会った頃は全力のぶりっ子をしていた為、こんな姿を晒す未来は想像出来なかっただろうな、なんて考えていて。)

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