29087 2023-02-03 15:10:13 |
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(レジ袋を両手で受け取って「あら、ありがとう」と感謝の言葉を述べ、そのまま丁寧に膝の上に乗せる。受け取った際に手に伝わった微かな冷気、レジ袋から透けて伺える丸みを帯びたシルエット。目の前で確認することこそしないが、それが今まで避けてきた甘味ものであることは容易に想像でき、思わず文句を言いそうになり。 しかし、そこで文句を言おうものなら先程と同じ空気になってしまうのも分かるため、ぐっと気持ちを抑えて相手の顔に視線を移す。漸く自分が誰と話しているかが分かってきた様子の相手の顔を見つめ直すと、今がチャンスと言わんばかりにしっかりと息を吸って「改めて自己紹介させていただくわ。アンジェリーナ・ヴァレリーエヴナ・アヴェリン…よろしく。」と、できる限り真剣な表情とはっきりした声で名乗ってから、両手を相手に差し出して何も言わずに握手を求め)
(フィギュアスケートについての知識もなければその世界の選手たちが気を付けていることなど知るはずもない。だから、良かれと思って持ってきたプリンなどの甘いものは相手にとってスタイル維持の敵であることに気付くことなどできなくて。相手が文句をこらえたことなど知る由もなく、積み上げられた雑誌に手を伸ばそうとすると、それを遮るかのように相手から真剣な表情で自己紹介をされながら握手を求められればその凛としたたたずまいに、こちらも襟を正して対応せねばと己の中で気を引き締めて。相手のその真剣な表情に応えるように、こちらも真剣な、しかし柔らかみも少しだけ含んだ表情で「竜胆翔悟です。よろしくお願いしますね。」と、己のものに比べて華奢な相手の両手を包み込むように握手を交わしながら自己紹介をして。「みんなからは“ショウ”とか“ショウゴ”とか言われてるけど、好きに呼んでください。」と、呼び方は何でもいいことを告げれば「アヴェリンさんはどう呼べばいいですか?」と、日本と異国では文化も違うため、相手の呼び方などに失礼がないように前もってどんな呼び方がいいのだろうかと、まずはファミリーネームから呼んで。)
はぁ、ようやく肩の荷が降りたって感じがするわ…アンジェリーナでもアンジーでも、出来れば名前の方で呼んで。名字で呼ばれるのはあまり好きじゃないから。
(握手を交わして自己紹介を終えれば、すっと柔らかい表情を浮かべて安堵のため息を漏らす。緊張の糸もいつの間にやら解かれたようで、どう呼べば良いかと言う問いにも先ほどまでの自身からは想像もできないほど軽く答えて。 相手の名前を頭の中で何度か繰り返して一通り呼び方を考えれば、相手に「消灯時間までには終わらせるつもりだけど、それまでは付き合ってもらうわよ。竜胆さん?」と相手の手を取って液晶テレビを指さすと、そこにはメダル等が置かれた景色にはそぐわない無骨なパイプ椅子が設置されており。 指をさしてはみたが、元々椅子を置く予定も無かった為に急遽職員に運ばせた物こ、お世辞にも質が良いとは言えないそれに客人を座らせるのもなんだか気が引ける。他に座り心地の良さそうなものと言って見つけたものは自身のベッドのみであるが、聞くだけ聞いておこうかと「嫌だったらこっちに座ってもいいけど。」とベッドに視線を移して)
じゃあ、アンジーさんって呼びますね。
(呼称について、相手からファミリーネームではなく下の名前で呼んでほしいと注文が来れば相手から提示された呼び方で自分なりに呼びやすい方を選んで。と、自己紹介が終わると、なぜか幾分リラックスする相手に首を傾げて。自己紹介をすることがそんなに気の張り詰める出来事なのだろうか。まぁあれだけ真剣な表情で自己紹介をするのは慣れないことなのかもしれない。それはともかく、先ほどのような張り詰めた空気が続くよりこちらのほうが居心地がいいと、こちらもつられて少しだけリラックスすることができるが、問題の用意されたフィギュアのメディアに目を向けて。本当にこれら全てを制覇できるのだろうかと冷や汗を浮かび上がらせていると、なんと相手はこれらを今日中に終わらせるつもりだそう。前言撤回、やはり気を引き締めてかからねばと切り替えるも「あはは…。」と乾いた笑いが漏れ出して。教えた苗字を早速呼ばれながら相手に指さされたのはテレビの前に設置された無骨なパイプ椅子。これからここでフィギュアについて叩き込まれるのだろうと考えているとそれが嫌ならベッドもあると言われるが「いや、これで大丈夫ですよ。」と、問題ないことを告げて。一般庶民の自分からしたらこのようなパイプ椅子に座るなど普通のこと。ましてや異性が使っているベッドに上がり込むなど気がひけるため、大丈夫なことを証明するために早速そのパイプ椅子に座って。)
そう、それなら良いのだけど……じゃあ、早速始めましょうか。
(相手は構わないとパイプ椅子に座ったが、やはり自分としてはどこか気になるところもあり。今度また誰かを招くことがあれば、その時は来客用の椅子を用意してもらおうと考える。 先ほど貰った差し入れを空に近い状態の冷蔵庫に丁寧にしまえば、そのまま相手の隣に車椅子を止めて、テレビの電源を点けると同時に幾つも置かれたDVDのうちの一枚をプレーヤーに入れる。 そのジャケットには『初出場』とロシア語で書かれていて。初めは注目すべき点なども分からないだろうと思い、相手に向かって「何処が凄いのかは見てから説明するから」と言い終われば、暗転していた画面もちょうど切り替わり。 切り替わって流れたのは氷上を軽やかに滑る自分自身。黒を基調として、煌びやかな装飾の施された衣装は綺麗と表す他なく、流麗な音楽と一体化して演技をする姿は正しく『冰上の妖精』のようで。)
(パイプ椅子に座れば、相手は前置きも置かずに早速DVDをプレイヤーへと挿入する。ディスクが入っていたジャケットには異国の文字で書かれていたため、なんと表記されていたかはわからない。フィギュアスケートを鑑賞するときの心構えなども分からぬまま、このまま始まるのだろうかとほんの少しだけ不安に駆られていると、傍の相手が解説は後にすると伝えてくれればならばひとまずは見ることに集中して。やがてテレビに映ったのは、スケートリンクに立つ1人の少女。よくよく見てみれば、隣の相手を少しだけあどけなくした感じであり、察するにこれは彼女の昔の演技のビデオだろう。身に纏った黒い衣装に彼女の雪のような白い肌がよく映えて、その対比が実に美しい。やがて演技の開演とばかりに荘厳なBGMが流れ始めればそれに合わせるようにテレビの中の少女は滑り始める。ここまでは家族が見ているのを横目で見たり、ザッピングの途中でよく見る光景だろう。しかし見ていくうちに、流麗な音楽に合わせて彼女の『妖精』のように舞う演技に段々と惹き込まれていき、フィナーレが近づいていくほど握られた両手の拳に思わず力が入り。やがて、相手が完璧なフィニッシュで演技を終えればテレビの中の観客たちからどっと歓声が湧き上がるのに対し、自分はというと「わあ…。」と、高揚しているかのように瞳の奥を輝かせながら静かに感嘆の息を漏らして。)
(パイプ椅子に座れば、相手は前置きも置かずに早速DVDをプレイヤーへと挿入する。ディスクが入っていたジャケットには異国の文字で書かれていたため、なんと表記されていたかはわからない。フィギュアスケートを鑑賞するときの心構えなども分からぬまま、このまま始まるのだろうかとほんの少しだけ不安に駆られていると、傍の相手が解説は後にすると伝えてくれればならばひとまずは見ることに集中して。やがてテレビに映ったのは、スケートリンクに立つ1人の少女。よくよく見てみれば、隣の相手を少しだけあどけなくした感じであり、察するにこれは彼女の昔の演技のビデオだろう。身に纏った黒い衣装に彼女の雪のような白い肌がよく映えて、その対比が実に美しい。やがて演技の開演とばかりに荘厳なBGMが流れ始めればそれに合わせるようにテレビの中の少女は滑り始める。ここまでは家族が見ているのを横目で見たり、ザッピングの途中でよく見る光景だろう。しかし見ていくうちに、流麗な音楽に合わせて彼女の『妖精』のように舞う演技に段々と惹き込まれていき、フィナーレが近づいていくほど握られた両手の拳に思わず力が入り。やがて、相手が完璧なフィニッシュで演技を終えればテレビの中の観客たちからどっと歓声が湧き上がるのに対し、自分はというと「わあ…。」と、高揚しているかのように瞳の奥を輝かせながら静かに感嘆の息を漏らして。演技が終了してから数秒、未だに演技の余韻に浸っているとハッとようやく我にかえり、一度深く息をついてから落ち着かせれば相手に視線を向け「すごい…すごかった…!どこがとは詳しく言えないです…けど、とにかくすごかった…!」と、精一杯称賛しようとするが、己のフィギュアスケートの知識では拙い言葉しか紡ぐことしかできなくて。)
(/すいません!少しだけ書き直しました!)
…どう?綺麗でしょう、格好いいでしょう。これがフィギュアスケート、これもほんの一部なんだから。
(冷え込んだ会場は演技の終わる頃には熱気に包まれる。歓声を浴びた時の達成感に勝るものなどなく、見終わった後には自らリンクを駆ける感覚を思い出し体の奥底が熱くなり、その熱量のこもったまま、自分の演技に見入っていた相手にそう問いかけ。 自身はと言うと腕を組んで、不満げに唸り声を出しており。若い頃の自分の演技を見ていると言うこともあり、まだまだ甘い部分があることを見逃しておらず。画面の中で小さくガッツポーズをしている若い頃の自分に説教するように「なに満足してんのよ」と小さく愚痴をこぼし。 暫くの余韻のあとにDVDを入れ替えれば、相手に向かって「このまま解説に移ってもいいけど…先に見終わってからにする?」と尋ねて)
…どう?綺麗でしょう、格好いいでしょう。これがフィギュアスケート、これもほんの一部なんだから。
(冷え込んだ会場は演技の終わる頃には熱気に包まれる。歓声を浴びた時の達成感に勝るものなどなく、見終わった後には自らリンクを駆ける感覚を思い出し体の奥底が熱くなり、その熱量のこもったまま、自分の演技に見入っていた相手にそう問いかけ。 自身はと言うと腕を組んで、不満げに唸り声を出しており。若い頃の自分の演技を見ていると言うこともあり、まだまだ甘い部分があることを見逃しておらず。画面の中で小さくガッツポーズをしている若い頃の自分に説教するように「なに満足してんのよ」と小さく愚痴をこぼし。 ステップはもう少し長く入れても良かったのではないか、着地はもっと軽やかにできたのではないか、みるみる内に改善点が浮かんでくるが、そんな時に相手から「すごい」とばかり中々の勢いで褒められれば「すごい、ばっかりじゃ分かんないわよ。まあ、楽しんでくれてるみたいで良かったわ。」と眉を少し下げて柔らかく笑い。 暫くの余韻のあとにDVDを入れ替えれば、相手に向かって「このまま解説に移ってもいいけど…先に見終わってからにする?」と尋ねて)
(/いえいえ、お気になさらず…!私の方も書き足させていただきましたが、読みにくくなっていたら申し訳ありません…!)
(フィギュアスケートと言われても、日本から有名な選手が多く輩出されていても、己の周りにやっている人がいるのか知らないくらいに自分には馴染みのないスポーツ。だから、ニュースで日本人選手の健闘が取り沙汰されても「へぇ、」と聞き流すくらいに興味を持つことはなかった。しかし、今こうやって真剣に鑑賞すれば、たった数分に一つの物語が凝縮されていることを見せつけられ、己の中でフィギュアスケートに対する価値観が180°変わり。彼女に向けて拙い称賛の言葉を精一杯紡いでいると、相手が少しだけ苦い表情を滲ませていたところをめざとく気づいていて。タイムを競う競技をやっている自分にはわかる、これは、己の結果に納得のいっていない表情。怪我を抱えて前線を退いていながらも、その鋭い視線はアスリートのそれであり改めて、相手がすごい人物なことを知らされて。己の不器用な言葉に眉を下げられるととにかくこの感動を伝えたくて、我を忘れていてようで気がつけばその取り乱した様子に恥ずかしそうに頬を赤く染めて。このまま解説をしようかと問われると、一度ずつ解説を挟むと、テンポが悪くなりそうだと思えば「一度、全部見てみたいです。」と言い、本音はまたあの感動を味わいたいのであって。)
(/迅速な対応ありがとうございます!いえ、読みにくくなどありません。逆にこちらの文はいかがでしょうか?読みにくかったら何なりとお申し付けください。)
分かったわ、順番に見ていきましょう。
(相手の言葉を聞けば、リモコンを持って次の映像を再生していく。フリー、ショート、エキシビション、様々な種目で輝かしい成績を残しており、二年前のオリンピックでは歴代世界最高得点を更新しての金メダル取得など、その勢いは止まるところを知らず。次の映像へと進むたびに技術が洗練されてきていて、映像が最新のものになるにつれて、まだ若いというのに佇まいも圧倒的なカリスマ性を誇る様になり。 選手として出場する度に上がっていく他社や業界からの期待やハードル、そしてそれに応えるように成長していく自分。そして今はその環境へ戻ろうとしている。必ず戻れると信じてはいるが、それに比例して不安も込み上げる。忘れようと大きくため息をついて目を閉じ、暫くしてから隣の相手に「どう?他にも見たいものがあればDVDを渡すけど。」と話しかけ)
(/いえ、此方も読みにくい等はございません。寧ろとても読みやすいと思っておりますので…!)
(相手が流す映像は年代順にされてあるのか、画面の中の相手は綺麗に成長していき、それに比例するかのように演技もハイレベルになっていることが素人目にもわかり。そして遂にはオリンピックの優勝映像まで流されると、感動を通り越してあんぐりと口を開けたまま呆然として。隣にいる人物は本当にとんでもない人物なのだと見せつけられれば、己が近づいてもいい人物なのだろうかと不安になってきて。一つ、また一つと映像が見終わり、一区切りついたのかほかにも見たいものがあればと問いかけられるとさすがにもう胸いっぱいなのか「少し、フィギュアについての話を聞いてみたいです。」と、一度演技観賞も区切りをつけ、座学としての知識を持ってから、また演技の映像を見てみたくて。「あぁでも…。」と、不意に何か思ったのか、そう呟くと「実際にアンジーさんの演技、見てみたいな。」と映像で見るのと生で見るのとではまた別の感動があるのだろうなと、その会場の空気を想像してみながら遠くを眺めるように呟いて。)
(/そう言っていただけて光栄です…!では本体は引っ込んでおきますね。また何かありましたらお申し付けください。)
あら、もしかしてファンになっちゃったのかしら?当然と言えば当然だけど。
(見終わったDVDを机の上に綺麗に並べながら、相手の呟きを聞いて自信たっぷりにそう言い放つ。相手がフィギュアに興味を持つようになった理由が自分の演技であることなども含めて満足げにしていたが、実際に演技を見てみたいと言われるとちらりと自身の足に視線を向け。分かってはいたが、まだ動きそうにないとのしかかる重い事実に若干苦い表情を浮かべる。 しかし、目の前の自身に興味を持ってくれた青年にはその表情を見せまいと少し間を置いて「今は無理ね…けど、すぐに見せてあげるわ。」と勝気な表情で微笑んで。 次は解説用に年別の資料をまとめた後に「復帰して最初の演技は日本でするから、絶対に見にきてね。」と相手の両手を取って、ファンに感謝の言葉を述べる様に伝えて)
(/はい、此方も背後の方は引っ込ませていただきますね。こちらは蹴っていただいても構いませんので…!)
ファン…か、うん。もうそうなのかもしれませんね。
(フィギュアに対しての価値観が変わったのは紛れもなく相手のお陰。それに、教材である映像もすべて彼女のものだったのだからフィギュア選手としての相手に惹かれてしまうのも当然だろう。しかし、その有名人がこれほどまでにファンを近寄らせていいのだろうかと腑に落ちない点はあるが、相手に言われると既にファンになっているかもしれないと伝えて。相手が実際にスケートリンクを滑る様を想像しながら、思わず呟くとハッと我に帰ればまたいらぬことを口にしてしまっただろうかと焦り。しかし、隣の彼女は勝気な表情でその日が来ることを確信するかのように述べれば不要な心配であったことに胸を撫で下ろし「うん、絶対に来ますよ。その時が。」と相手を勇気づけるように、希望に満ちた表情でそう述べて。解説用らしき資料をまとめているあいてが、ふいにこちらの両手を取って見に来るようにと釘付けられると、先ほどの自己紹介の際の握手と、ファンになってからのこの握手は価値が違って、とんでもないファンサービスをしてもらったと顔を赤らめれば「その時は一番いいチケットを取らないとですね。」と、相手の復帰記念の公演ならば、特等席でそれを見届けねばと言って。)
ええ、ちゃんと良い席を取れるようにして。その時はあなたの事も見つけてあげるわ。
(相手が自分のファンになったと確信すれば、上機嫌で相手にそう伝える。良く両親から「人と話すのが下手」と言われたが、それが今ではどうであろうか、知り合って間もない相手とも上手く喋れている。次に両親に会った時には「ちゃんと話せたぞ」と自慢してやろうと思っているらしいが、知り合って一日も経っていない相手にしては距離の詰め方が多少強引であるし、やはり何処かズレた所があるのに本人は気づいていないらしく。 一度「復帰して」と言ったからには必ずそれを成し遂げなければならないし、いつか来るその時のために衣装のデザインの要望や技の構成も考え、体が治って練習ができるようになってからの日々に備えておかねばと心中呟き。 会話も程々に、ちらりとベッドの横のデジタル時計に視線を送ってみる。消灯時間まではもう少し時間があり、解説だけならば余裕を持って出来そうだと考えれば、テレビの前に技の採点基準などが図示された資料を広げ「それじゃあ、そろそろ解説に移りましょうか。ジャンプにも難易度があって…」と各技の解説を始める。久しぶりに他人にフィギュアのことを話せるというのもあり、心なしか楽しそうに話していて)
それで余所見して失敗、なんてことないようにしてくださいよ。
(相手からフィギュアスケートのことについて教わっていると、屋上で見た冷徹な彼女が嘘のように上機嫌で活き活きとしている。本当にフィギュアのことが大好きで、真摯に向き合っているのだなと感服すれば、この数時間でこちらとしてはかなり打ち解けたと思ったようで上記のように軽口を叩いて。特等席を、良い席をと話していたことで気になったことが一つ。実際の大会のチケットはいくらになるのだろうかと、携帯で軽く調べてみて。そうして出てきたチケットの相場。一番グレードの低いチケットで万を超えており表情をしかめてしまい、まさかと恐る恐るページをスクロールし、やがて表示された相手と交わした約束の最高のグレードの席はというと1が一つと0が五つの並び。そのあまりの値段に目を見開きながら「じゅっ…!?」と思わず声をあげそうになれば慌てて口を抑えて。いつ、彼女が完全復帰するかはわからないが、例えアルバイトや働いて稼いだとしてもなかなか勇気のいる値段。どうせ博物館の入場料より少し高いくらいだろうとたかをくくっていた己を殴りたくなって。映像からうってかわって今度は座学。最初は楽しそうに話す相手の解説を聞き、映像と、相手から聞く知識が噛み合えば興味深そうに聞き入って。しかし、時刻はそろそろ良い時間。体内時計と映像とは異なる文字の羅列に段々と睡魔に侵食されればうつらうつらと首が船を漕いで。)
あら、失礼しちゃうわ。私がそんな失敗をするわけがないじゃない。
(解説の合間に棚にDVDを元通りに並べながら、相手の軽口に此方も軽い口調で応じて。 解説の続きに移ろうとしたが、ふと相手の表情を伺えば、今にも眠りに落ちそうなほど首を揺らしている。その様子を見て時刻を確認すれば、消灯時間もかなり迫っていた事に気がつき、資料を閉じてさっと積み上げれば、相手の肩をとんとんと叩いて「竜胆さん、今日はここまでにしましょう。」と話しかけて。そろそろ看護師が自分の部屋を訪ねてくるころだろうし、既に伝えているとはいえ、人によっては勘違いなどをされると面倒なことになる。耳を澄ませて人が来ていない事を確認すれば「戻るなら今のうちよ。ほら、早く」と相手に伝えて)
ん、うんん…。あっ、ごめん…。
(夢現の意識の中でも必死に相手の解説を聞こうとするも、聞けば聞くほど聞きなれない単語が睡魔にやられた頭の中を右往左往し、眠りへと拍車をかけて。肩を叩かれ、今日は解散だと告げられると、己がそんな様子を見せてしまったばかりに相手に気を遣わせてしまったことを謝罪して。今のうちに帰るべきだと言われると、確かに相手からしたら自分など路傍の小石だろうが、彼女にスキャンダルのゴシップが流れ始めたら大変だろうと思って。意識をはっきりさせるように、顔をぶるぶると振り、パイプ椅子から立ち上がればそれを畳んで隅に寄せ「アンジーさん、今日はありがとう。すごく楽しい時間だった。」と、曖昧な意識から浮上したばかりなのでなかばむにゃむにゃとしながら感謝の言葉を述べれば「じゃあ、またね。」と、己にとっては相手のようなスターと知り合え、そのうえ2人の時間を送れたことなど奇跡であるのに、まるで、日常生活の中で明日も会う友人に対して送る言葉を相手に述べながら部屋を後にして。)
(/一区切りつきそうですが、次の自分の返信あたりでスキップしますか?その際、どのあたりまでスキップするかの意見はありますでしょうか?個人的にはアンジェリーナ様がリハビリしているところを目にするところかなと思っているのですが…。)
気にしないで、私から招いたんだから。
(相手の謝罪の言葉に気にすることはないと首を横に振ってからそう伝えると、まだ眠気の残っていそうな相手を見て一度に詰め込みすぎたかと少しだけ反省する。相手とこうして話すことが再びあるかも分からないというのに次は説明する内容を絞ることにしようと考える自分がいることに気づくと、久しぶりに両親や職員意外と話せたことに浮かれていたのではないかとまた一つ反省し。 そんな自分とは反対にまたねと声を掛けてきた相手を見ると、今日くらいは良いだろうと少し気を抜いて「…ええ、また。」と相手の背中に手を振って部屋を出るのを見届ける。 相手が部屋を後にしてから暫くすると、予想していた通り看護師が自分の部屋に到着して。ベッドへと寝かされている途中、看護師から「何か嬉しいことでも?」と尋ねられれば、普段よりは柔らかい表情をしている自分に気がついて。看護師には「何も?気のせいじゃないかしら。」と答えたが、今日を楽しかったと思う自分がいるのも事実であり、また一つ目標のできた明日からの日々は沈み続けていたこれまでより少しだけ前向きに過ごせそうと感じて。)
(/はい、スキップしてしまっても良いと思います…!私も主様の言うシーンまでで大丈夫だと思います。敬語について指摘する場面をうまく入れられなかったので、次のシーンでそのシーンを入れさせていただいてもよろしいでしょうか…?)
(彼女の個室から己の部屋までの帰り道。もう幽霊などを信じなくなった年齢まで成長したが、それでも薄暗くなった病棟はやはり不気味で鳥肌が立ってしまうほどで。しかし、今日の少女との奇跡のような時間を過ごせたことで、その余韻でまだ高揚しているのか暗い廊下の中でも不安に包まれることなく己の部屋へと戻ることができ、安眠することが出来て。翌朝、前日に伝えられていた経過診断を終えると長い長い自由時間がやってくるが、ベッドの中でじっとしているのもすぐに限界がきて気晴らしに軽く歩こうかと病院内を見学がてら散歩し始めて。特に意識することなく歩き回って辿り着いたのはリハビリルーム。「(もしかしたら、アンジーさんがいるかもしれない。)」と、ぼんやり思いながらなんとなく部屋を覗いてみればその予感が的中して。そこにはプラチナブロンドの髪を揺らし、必死に平行棒に捕まりながらリハビリを行う彼女がおり、苦しそうな表情を浮かべ、倒れそうになりながらもそれでも諦めずに一歩、また一歩と歩を進める相手に胸を打たれてしまい。相手のリハビリを邪魔しては悪いとその場を去り、今度は昨日と同じように屋上に来ればまたいちご牛乳を買って一口呷ると「すごいなぁ。」と、相手のフィギュアスケートに対する情熱を垣間見た気がして、その想いの強さに思わず感服の一言を呟いて。)
(/了解いたしました。上記の様になりましたがいかがでしょうか?敬語についての件了解いたしました。アンジェリーナ様の方からこのような流れにしたいというものはありますか?
そして、こちらからの相談なのですがこれからの一日はどうしましょうか?また、アンジェリーナ様の講座にするのでは一日潰れそうにないなと思って…。)
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