隣国同士の王子様は仲がいい(〆)

っ…(ベッドに籠ったままでいた矢先、外から聴こえてきた声にピクリと肩を揺らし、顔を上げて。誰とも会いたくない、そう思っていても相手の声を聞いてしまえばわずかにでも会いたいと思えてしまい、フラフラと誘蛾灯に導かれる虫のように窓際まで歩み寄って。しかし、窓枠に手を掛けた瞬間、涙がポロポロと溢れ落ちていき、ハッとなって慌てて拭おうとするも涙は止めどなく溢れてきてしまい、相手と会うと話せなくなりそう、そう無意識下で感じ取れば咄嗟に「やだ、開けたくない…」と涙声で呟いて)

…そばにいさせてくれるだけでいいんだ、だから開けて(相手の涙声を聞くと、すぐにでも抱きしめたいと思いつつ、話をせずとも、そばにいさせて欲しいと言い、窓に手を添えて、｢おじさんの事、聞いた。だから、そばにいたい｣と言い)

でも、だって…(相手からの優しい言葉に心は揺れ動き、涙声のまま戸惑いの言葉を呟くも次第に相手に会いたい気持ちも増えてきて。それでも一度断った自分から会いに行くのは憚られる気持ちもあり、カチャリと窓の鍵を開ければ「…たまたま、窓の鍵が開きっぱだった、だけだから…」と呟いて)

！…お邪魔するよ(相手が鍵を開けてくれれば、窓を開けてはそう言いつつ中に入り、窓を閉めてから鍵もしっかり閉めて、泣いている相手を抱きしめて、｢俺の可愛い弟で婚約者が心配で来ちゃった｣と言い、相手の髪を優しく撫でて)

アル、にっ…とう、さっ…父さんがぁぁ…(相手が窓から部屋に入ってくれ、抱き締めながら頭を撫でてくれればもう我慢をすることすら出来ず、相手の服が涙等で汚れてしまうのも気にできる訳もなく泣きながら必死に伝えようとして)

…うん、そうだね(服が汚れようと、気にすることなく、相手の頭を撫で続け、仲良くしていた自分ですら辛いのだから、相手は何倍も辛いだろうと思い、慰めていて)

俺っ…父さん、にっ…何も、恩返し…できて、ないのにぃっ…(実父を亡くした喪失感を、たくさん目をかけてくれた父に何も恩返しが出来ていない悔しさを…この気持ちを相手にぶつけるのはただの八つ当たりであることは重々承知の上だったが、泣きじゃくりながらそう溢しながら「俺、アル兄との、結婚式、父さんに…見せたかったっ…」とも伝えて)

…大丈夫、きっとおじさんはジェルのこと、見ててくれてるよ(相手の頭を撫で続けながら、自分も良くしてもらっていた分、結婚式を見て欲しかったと思い、相手の父は見ていると、どこか自分に言い聞かせるようして言い)

(相手の言葉にただただ嗚咽を漏らしつつ相手の胸で涙を流し続けており、部屋のノック音には気付けずにいて)

(食事を持ってきていた使用人が一応様子を伺いに部屋へノックをして少し待つも、声は聞こえてこず「失礼いたします…」と一言断りを入れてから部屋に入ろうと扉を開けて。しかし、テーブルには一切手付かずのままで残ってる料理があり、寝室の方かとそちらへ確認をしようとし)

大丈夫、大丈夫だから…(相手を抱き締め、励ますように何度も大丈夫だと言い、相手の両耳を塞いでやり、部屋に来た使用人に「悪いけど、出てって。ジェルミアは、今は誰とも会いたくないんだから」といつもより冷たく言い)

「っ、申し訳ありませんっ…」(相手からの冷たい声による言葉に慌てて頭を下げ部屋を後にするも、いつ相手が来たのか分かっておらず首をかしげながら部屋から離れて)

(相手の胸で嗚咽を溢しつつ涙を流してから少しの時間が過ぎ、散々声を上げて泣いてた事もあったからか僅かに喉の痛みを感じつつもしゃくり上げながら「…ね、アル兄、もすぐに、会えな、くならない、で…？」とポツリと溢して。急逝した父も老化によるにしても早すぎる他界だったからこそ身近な存在がすぐに亡くなる事へ若干トラウマになりつつあり、それが相手にも起こってしまったら、そんな不安が込み上げてきていて)

うん、俺はずっとジェルといるよ(きっと突然相手の父が亡くなって、周りがいなくなるのではと不安なのだろうと思い、相手と一緒だと言い、どうすれば不安を除けるかと考えて)

…約束だよ？ウソだったら、追っ掛けて怒るから…(相手からの言葉を全く信じれない訳ではないが、涙の止まらぬ瞳で相手の方を見上げながらそう伝えて)

うん、嘘つきだって怒ってよ(相手の頭を撫でながら、もし死んだら怒っていいと伝えて、相手の涙を拭ってあげ、「ほら、元気出して。ご飯、まだ食ってないみたいだけど、食えそう？」と優しく声を掛けて)

…少し、なら(相手に涙を拭って貰い、僅かに潤みが残る瞳のままだが相手からの優しい言葉に小さく頷いては少しなら食べれそうだと伝え。勿論普段は出されたものは食べきるタイプではあるが今はそこまでの食欲は湧かず。そんな中でポツリと「…父さんのさ、国葬、明日あるけど…俺、行きたくない。また、たくさん泣いちゃいそうで嫌だ…家族だけの告別式、は行くけど…」と小さく呟いて)

じゃあ、ちょっとだけ食べようか(相手が少しならと言うと、相手が食べられるくらいの量だけ食べようと言い、机に置かれている料理を取りに行き、持ってきて。「…実はさ、俺も告別式出たくないんだよね。隣国の王子の俺によくしてくれたり、ジェルとの結婚許してくれたりしたのに、お礼何も出来てないのにおじさんとお別れなんだもん」と寂しげに言い)

…ね、アル兄。父さんのところ、行く…？(相手に食事を取り分けてもらい、それを少し食べていれば相手の寂しそうな言葉が聞こえ、口の中に入ってる食べ物を飲み込んでから相手の方を見上げながらそう問い掛けては「父さんが寝てる部屋、俺の部屋から近いし…」と付け加え)

俺、会っていいの？(相手に食べさせてあげていれば、相手から相手の父のところに行くかと提案され、家族でもない自分が会ってもいいのだろうかと思い、そう尋ねて、「お兄さんたちとか、おばさんいるだろ？」と言い)

うん、良いの…だって、アル兄と結婚するんだし、父さんはアル兄にとっても大切なんだもん(相手からの問い掛けに頷きながら答えては「それに兄さんたちや母さんは明日のお葬式の事で忙しいだろうから…多分今日はあまり会わないと思う」と付け加え)

…じゃあ、会いたい(相手の言葉を聞くと、相手の母や兄たちがいないなら、大丈夫だろうと思い、会いたいと言い、「ご飯、もう少し食べる？お腹いっぱい？」と尋ねて)