臣下 2023-01-08 21:16:01 |
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そうみたいだな。…物音も…無い。
(ずっと二人きりかのように錯覚してしまう静寂。屋敷でも今のところ最も大きいこの部屋の扉が、家主であるあの男のものである可能性は高いだろう。扉に耳を近付けて室内の物音を窺うも、変わらない静けさが鼓膜に届く。人の気配も感じられないため思い切って扉の取手に手を掛けて、ほんの僅かにだけ部屋を覗こうと試みるとドアには鍵が掛かっている様子でガチャ、と金属質な音が響き。困った様子で眉尻を下げ動きを止め)
……鍵が掛かってる。どうしたもんか…
(/諸事情により数日お返事遅れそうです。すみません…!!把握の方よろしくお願いします…!)
別の部屋に鍵があるのか…、っ!
ニール…!
( ドアノブを動かしても鍵がかかっていてびくともしない。鍵はどうやら別の場所にあるのか。鍵を探すとなれば時間もかかるため、どうしたものか考えていると遠くから足音が聞こえてきて。急に張り詰めた緊張感に、彼の顔を見ると小声で名前を呼び、少し離れた物陰に咄嗟に隠れ。足音に耳を澄ますとどうも2人程いるようで、こちらに向かって歩いてくるようだ。その足音は鍵のかかった部屋の前で止まる。)
…使用人か?
(/了解しました!連絡ありがとうございます。)
…危ねぇとこだった…。
ん?奴ら…部屋を開けてる。
(突然現れた使用人に危うく見つかるところだったが、彼が即座に隠れ場所を見つけてくれたおかげで事なきを得た。狭い物陰で肩を寄せながら胸を撫でおろすと、声を潜めつつ扉の前の様子が見えるよう僅かに顔を出す。どうやら使用人の一人が中へ入るべく鍵を開いているらしく、解錠の音の後扉が開くのが見え。しかし何かを思い出したのか、中へ入る前に慌ただしい様子で一階の方へと戻って行こうとしており。彼らがいつ戻ってくるか分からない危険性はあるが、この時間がチャンスだと興奮気味に相手の方へと向き直り)
一階に戻るんじゃねぇか…?今ならあの部屋に入れるかも…
あぁ…行ってみよう。
( 彼の言う通り、部屋に入るなら今しかない。しかもあの使用人が戻ってくる前に急いで部屋の中を見る必要がある。相手の案に頷くと、足音をできるだけ立てないように素早く部屋の中へと侵入し、辺りを見渡す。どうやらここは執務室のような部屋らしい。机の上には書類がたくさん詰まれている。ここならば、なにか彼の汚点が出てくる、そんな気がして書類の山を手に取るとパラパラとその内容を読み進め。)
…ん?それ…
(雑然とした机上を見る限り重要な証拠を見つけ出すのは途方もない作業。うんざりとして表情を曇らせるも、執務で慣れているのかさすがの速さで読み進めていく隣の彼を何気なく眺めては途中一枚の手紙に見覚えを感じて思わずぐっと距離を縮め手を伸ばし。見覚えのある封蝋と、差出人の名は美術協会から。急ぎ内容を確認すると、先日の画展の優秀賞に関わる捏造の依頼と、賄賂の詳細が書かれている。汚い金の取引があるあの男の現状に呆れ顔でため息を吐きつつもにやりと口角を上げて)
……いいもん見つけたんじゃねぇの?
さすがだ、ニール。
( 書類を見ていると急に縮まった距離に少しどきっとしつつ、彼が言う美術協会からのものの内容を読んでみる。確かにそこにはっきりと記された不正の数々、思わず此方もにやりと口元に笑みを浮かべて相手を賞賛する言葉を述べる。その手紙をコートの内側ポケットへ仕舞うと、早くこの部屋から出なければと扉へ向かおうとする。しかしそのタイミングで部屋の外から足音が聞こえてきて。)
…不味い、もどってきたな。
!…隠れよう。
( 使用人が戻ってきたのだろう。どうしたものか周囲を見渡すとクローゼットがある。大の大人2人ならばなんとか入ることが出来るだろう。一旦そこへ行こうとクローゼットを指さし相手にこそっと耳打ちして。)
…っ、そうするしかねぇ。
……そっち、狭くねぇか?
(相手に褒められ胸を高鳴らせていたのも束の間、間近に迫る使用人の足音に表情を引き締めると相手の指示通りクローゼットへと移動する。クローゼットの扉を開くと中は狭いが立って密着すれば二人入れないことはないだろう。慌てていたため自身が入ったのち相手の腕を引き中へ迎え入れ、咄嗟の判断で扉を閉めたが、向かい合う形になってしまい、薄暗いなか若干の照れに頬を赤らめぶっきらぼうに気遣って)
(/レスペの方落ち着きましたのでこれからは通常通りお返事できると思います!ありがとうございました◎)
…っ、大丈夫だ。ニールはきつくないか?
( ここに入ることを提案したのは自分だが、思っていたよりも狭い中でしかも相手と向かい合う形になってしまい鼓動が早くなる。扉を閉めるとさすがに暗くなるが、相手の表情が見えるくらいには距離は近い。少し頬が赤い相手に、自分と同じように意識しているのだろうかと思うと何だか気恥しく、なんとも言えない気持ちになる。相手の気遣いに返事を返しながら、外の使用人の動きに耳を済ませると、2人組は5分もしないうちに廊下に出て行き、また鍵をかけて出ていったようだ。)
…出ていったか?
(/了解しました!)
大丈夫。…だけど…
(気遣ってくれる相手に平然を装って返答するも、狭い二人きりの空間に鼓動の音が響いて聞かれてしまいそうな錯覚を起こす。永遠に思われた数分間を擽ったい気分から視線を横に流し逸らしつつ過ごし、やがて緊迫から解放される施錠の音と遠のく足音に安堵の息をつくとまだ油断ならない状況にもかかわらずちょっとした悪戯心が疼く。逸らしていた視線をゆるりと戻し、相手の澄んだ碧の瞳を正面から覗いては唇が触れそうな距離まで近付きつつ未だ声を潜めた小声で揶揄って)
…今は王子サマのキスが欲しい気分。…なぁ、駄目?
こんなときに…、
仕方ない、な。
( 少し安堵をしていたのも束の間、ぐっと縮まった距離に目を見開くと、悪戯っぽい表情を浮かべた相手に、こんな状況でなんて奴だと思いつつも、自分も相手に触れていて平気な訳がなく。相手の綺麗な瞳をこちらも逸らさずじっと見つめて。先程よりも更に高鳴る鼓動は絶対相手に聞こえているだろうと思いながら、相手の腰に手を回すと相手の唇に己のそれをかさねあわせ。)
…ふ、お返し。
(呆れたように呟く凛とした声も、なんだかんだ甘い相手も愛おしい。腰に触れる手といっそう近付く距離に二人分の鼓動と温かな体温が伝わって、相手からの口付けの感覚もたまには良いものだと幸せを噛み締める。普段の顰めっ面からは想像出来ない柔らかな笑みを漏らすと、小さくリップ音を立てて啄むような口付けを返して。ずっとこうしていたいが名残惜しさを堪え、誰か来る前にとクローゼットの扉に手を掛けると出て行こうとして)
……さっき外から鍵をしてたよな?…この部屋の窓から出られそうなら、そっちから出た方がいいか…
( 相手の優しい笑みには、さっきまで呆れた様子だったにも関わらずこちらも笑みを返し。このように自分に向けられる笑顔や表情が自分だけのものだと思うと幸せな気分になる。少し惜しいがクローゼットを出ると再び部屋を見渡し。窓に近付くと、一応窓の外には先程の部屋同様に木がある。しかし、先程と違い窓から少し離れた場所に生えており、ここから飛び移るのは危険が伴う。)
窓の外は…ちょっと厳しいか?
他に出られる所はないだろうか。
困ったな。…他に出られそうなところといえば……ん?ここ、もしかして隠し扉が…
(相手の後ろに立ち背伸びをするようにして窓の外へ目を凝らすも、木以外に脱出の手助けになりそうなものはなく考え込む。この距離を飛び移る気にはなれず、思案するため近くの本棚に何気なく背を預けてもたれたその時、かちりと何かが動く音がして棚全体が少し後ろにずれた気がする。恐る恐る本棚の端を押すと、まるで扉のように奥へ開いて下へ続く梯子が掛かっているのが見てとれる)
どこに繋がってんのか知らねぇが……どうする?
全く…怪しいところだらけだ。
何があるか知らないが行ってみるか。
( 本棚がまさか隠し扉になっているとは思わず、驚きの表情を浮かべるが、ここまで怪しいところだらけだと逆に笑えてくる。このままここにいるのも時間の無駄なので、なにがあるかは分からないがとりあえず行ってみようと相手の顔を見て頷き。下に続く梯子に足をかけると、自分が先に行くと伝えて。 )
貴族の奴ら、命を狙われた時のために逃げ道を隠してることも多いって聞いたぜ。これがそうだと良いんだが…
(相手を先に行かせるのは心配なところもあるが、こういった状況でも毅然として頼りがいのあるところは彼の美点の一つでもあり若干心配げに眉を動かすも見守って。薄暗い梯子の下は何が広がっているか分からず、相手の靴先が梯子と触れ合う小さな音だけを頼りに梯子の深さを推測しながら後へ続き。時折相手の様子を気にして視線を下げては潜めた声で声を掛け)
…大丈夫か?無理すんなよ。
あぁ。…下までついた。
やっぱり暗いな…。
( 相手が心配してくれるが、大丈夫だというように慎重に下へ下へと下りていく。思いの外結構下まで続いており、段々と上の光が消えて暗闇に身が落ちて。1番下まで辿り着くと、暗闇と何もない静かな空間が広がっている。灯りになるようなものは何も無く、一先ず相手がおりてくるのを待ち。)
ニール、大丈夫か。
…っと。俺もついたぞ。
にしても暗いな、あんま見えねえ。
(相手の返答の響く位置からもう数段だと読み取れ、残りの梯子を下りて地面へと降り立ってからほぼ暗闇の視界で曖昧な相手の輪郭を探す。およそ隣へ並ぶも彼の姿が明確には見えず、手を伸ばし相手の手首あたりを感覚で握って軽く引き寄せようとして)
…手探りで行くしかねぇか。とりあえず、梯子と反対側に進もうぜ。
わかった…。
( 手首を掴まれる感覚にはさすがにびくっとして。暗闇で何も見えないというのはこれほどまでに恐怖なのかと思い知らされる。しかし隣に相手がいてくれるという安心感に、その恐怖心は僅かに安らぎ。梯子と反対側に進むと手探りで何か障害物がないかと探りながら歩いてゆく。暫くすると突き当たりに行き着いたのか、扉のようなものがあり。)
扉だ。鍵は…かかっていない。
……開けてみよう。
(怯えたように僅かに跳ねた身体の揺れを感じ取り、安心させるように握る手にしっかりと力を込めて進む。無言の中に彼の温もりと息遣いだけが確かにあり、気を落ち着かせて扉の前まで至ることができた。指先で探って扉のささくれた木材の感触を確かめ、押せば開きそうな鍵の抵抗のないその先へ向かおうか一瞬迷って手を止める。相手の手首を掴んでいた手をするりと手先の方へと移していき、緊張で少し冷えた指先で相手の指を絡ませるようにして繋ぎなおすと扉の向こう側へと改めて踏み出すことにして。薄く開いた扉の先からは夜の鈍い藍色が覗き、夜の湿った心地よい風の匂いがする。屋敷内の誰かの部屋に出たらと心配したが、どうやら外に繋がっていたらしく急に緊張から解かれて思わずふっと笑みを溢し)
…ふ、外だ…。やったな…レオナルド…!
はぁ…よかった…っ。
( 途中から指を絡めるようにして繋がれた手からは相手の体温が伝わり不思議と安心感を覚えさせてくれる。ゆっくりと開け放たれた扉の先は部屋ではなく外に繋がっており、夜に輝く星の光が目に入るとほっと肩の力が抜け。大きく息を吐くと、此方も相手につられて笑みを零す。しかしゆっくりしているわけにはいかない。はやく城に戻らなければならない、と繋いだままの相手の手を引き先を急ごうと歩み始め。)
早く戻ろう?
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