* Say the name! ( 17 / 1:1 )

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名無しさん  2022-12-02 18:14:09 
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◎此方は 17(宝石) nmmnでの1対1限定募集となります。
御相手様が見つかり次第 募集〆です。



募集要項 >>1
サンプル >>2









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  • No.9 by  *  2022-12-08 02:52:02 




( / わーい、解釈が一致したなら何よりです~!
jhは男らしさもありつつやはりあざとさも持ち合わせているので、あざとく煽る様な方法で態と焦らしたりしそうですよね ... !mgも早口で捲し立てたり突っかかってくる所が解釈一致でにまにましてしまいました()
仰る通り時々jhが隙を突かれてmgと立場が逆転しそうになったりするのも良いですね!その場では顔に見合った可愛らしい態度を取っても、後々倍になって返って来そうで怖いですが .. ;;;

ありがとうございます。恋人になるまでの甘酸っぱい駆け引きも存分に楽しみましょう ... !!

いえいえ、とんでも有りません。親身に設定の相談に乗ってくださる主様で本当に良かったです~!
勿論です!他に相談する事があれば絡みを進めながら背後同士で決めていければと思います。
コンセプトや年齢については特に拘りがなく、主様にお任せしたいのでそのまま初めて頂いて宜しいでしょうか .. ? )



  • No.10 by mg  2022-12-08 03:41:30 









__ ん"ん"...、


( 夢の中で昨夜...いや、今日の事を思い出していた。_AM1:00。カムバ前怒涛の練習漬けにへろへろになった体を叩いて引き摺り、何とか事務所の練習室から宿舎まで辿り着いた今朝。その過程でジムに向かった何人かの後ろ姿を覚えているのは心底ドン引きしたからだ。ろくに飯も食わないまま床に倒れて、そのまま眠ってしまいたいくらいだったが。汗だくで眠るのはいくらベッドの上じゃないにしろ許せず何とかシャワーを浴び、髪を乾かし、歯を磨き...最低限のスキンケアも済まして静かに夢の世界へと旅立ったのが、あろうことか共用リビングの床だった。__という、今日がオフでなければ一日中後悔に苛まれる所だったが、ショックは大きい。貴重な睡眠時間を床で...。デカいくせに何処でも寝れてしまう自分を今ばかりは恨む。眩しく白い朝日...まだ誰も起きて来ていないこの時間に、痛すぎる体をむくりと床から起こした。「 ...、ウソ、じゃん... 」 ボサボサの髪、いかにも寝起きの掠れた声。酷すぎるビジュもそのまま、胡座をかいたままあろうことかまたウトウトし始めていて。



( / そう!!なんです...!! 絶対あざとく煽ってきます...そして倍になって返ってきそうなの分かりすぎて。どうしましょう...*様の仰るjhmgが最高すぎてオッチョナオッチョナになっております、、、

と~っても楽しみです~!
では特にコンセプト年齢は決めず、流れで進めていきましょう◎
何なら創作の方がやりやすいかもしれないですし*

そして僭越ながら投下させていただきましたがいかがでしょう...?;;
すっごく謎な場面からスタートしてしまいました......。
お返事がしにくい、解釈違い等気になる点がありましたら何なりとお申し付けください...! )




  • No.11 by  jh  2022-12-08 15:41:37 







── やぁ~、もしかして其処で寝てたの ... ?


( ぴょこん、と所々天を仰ぐボサボサに跳ねた髪を眺めていると愛おしさが込み上げてきてしまう。...と言うのも心当たりがあるからである。練習漬けの日々でメンバー達も疲れが溜まっているだろうが、かく言う自身も体力の無さには定評があり、日を跨ぐまで続いた予定を練習室で終えれば後は帰るだけ。へとへとの体で宿舎に帰宅し、一瞬このまま寝てしまおうかという邪念が脳裏に過ったものの、やっとの思いで風呂とスキンケアを済ませ残りの力を振り絞りベッドに潜った ... 所までは覚えている。しかし記憶の片隅には大きな図体の彼が床に横たわっている姿がぼんやりと。恐らくリビングを通った際に目にしていたらしい。普段なら絶対に起こしてやるのだが、何分1分1秒を争う程くたくたに疲れ切っていた為、丁寧に体を揺すって一から声を掛けていては自分まで床で就寝する事になってしまうと悟ったのだろう。やはりあやふやに霧掛かった記憶の中には親切に起こしてやった形跡はない。そのお陰でと言うべきか、しこたま睡眠を取るつもりだったにも関わらずアラームなんて鳴る筈もない時間に重い瞼が開き目が覚めてしまい、それだけ良質な睡眠だったのか否か、仕方なくベッドからもぞもぞと起き上がれば、冷蔵庫のミネラルウォーターを目的にリビングへ。─... そして今、ボサボサの髪を眺める現在に至る。未だ眠気に襲われているらしく、こくりこくりと揺れる頭を背後から見ながら頬を緩め、本来なら罪悪感を覚える場面だが、今日がオフである事と意中の彼と思わぬタイミングで二人きりになれた事を内心嬉しく思ってしまう。いつも通りの軽い調子で声を掛けつつ、先程までベッドに潜っていた為少し首元がはだけたパジャマのまま、胡座を掻く相手の目の前にしゃがみ込むと目線を合わせ。「 ... ぼさぼさじゃんか」悪怯れる様子もなくボサついた髪を直す様に手櫛をしながら撫で、くすくすと笑いを溢すが寝起き故目尻がとろりと下がっており。 )




( / うわぁ~~!!初回文の方投下して頂き本当にありがとうございます ... !主様のmgが愛おし過ぎて此方もオッチョナ状態になってます!もしや天才なんですか .. ぐぎぎ;;;
素敵なロルで見惚れてしまいましたし、解釈違い等も全くありません。凄く絡みやすい場面から初めてくださってありがたいです!

了解致しました、流れで進めて行って必要があれば創作やコンセプトなど何でも話し合って決めていきましょう◎

此方も絡ませて頂いたのですが如何でしょうか?初回という事でロルが無駄に長ったらしくなってしまいましたが、普通の時はもう少しコンパクトなので主様はお好きな長さで返してくださいね。
又、此方のjhに解釈違いなどあれば遠慮なく仰ってください ... !それとロルについてですが、当方小説風ロルを回すのが初めてなので、至らない点が多々あるかと思います。ロルに関しても不備や改善点があれば何なりとお申し付けくださいませ .. ! )




  • No.12 by mg  2022-12-08 22:13:34 





ん~、...ひょん、...。

( 逸早くカムバックした夢の世界。そこで聞いたのは言うまでもない、気の抜けるほど柔らかくて...優しい声音。これが現実なら、嫌だ!と否定してしまいたくなるのは、寝起きのかっこ悪い姿を“彼”に見せたくないからだ。とはいえ、練習生時代から何度もだらしない姿を彼にお披露目してきたのに、今更何を、と思うかもしれないけど。...、恋なんてそんなものでしょ。俺にとってかけがえのないヒョンであり、恋慕を抱く相手であり...。“彼”を通してその気持ちに気づいてから、自分からしても俺の立ち振る舞いは随分と変わったように思える。瞼には相変わらず白い光を感じるのに、中々意識は戻ってこない。夢心地の頭で考えるのは、今繰り広げてる夢の世界の中ですら“彼”を恋しがっているということ。_ふわり、と恋しい匂いが不意に香った。「 はに、ひょん......、」夢の中で“彼”は優しく笑った。だから名前を呼んで...。ふと、違和感に気づいたのは、髪に触れる感覚が温かかったから。...。浮上した意識に、垂れた頭を上げて薄らと目を開ける。途端飛び込んできた白い光と...それに、溶けてしまいそうな.....。寝惚けたまま、髪を撫でる手を確かめたくて、自身の手をそっと重ねた。そうしてぱちくり、何度か繰り返した瞬き。「 ...ぇっ、へっ? 」阿呆みたいに開けた口から間抜けな声を漏らして、そのままの姿勢で固まることに。まるで光に消えてしまいそうな儚さは天使のようで、同じ視線の先の、薄らと細められた目元には長い睫毛が携えられて、とろんと下がった目尻は眠たげでどこか色っぽい。それに...それに...、ただ眠っていたことを示唆してるだけの少し乱れた襟元、そこから覗く肌に...なにも、その、やましいことなんか...ない...んだってぇ!!「 ...やっ、やぁ...!カムチャギヤ!...ヒョン、いつから居たんだよぉ... 」完全に夢だと思っていたのは現実だったらしい。変なことを聞かれていたら、どうしよう...。恐る恐る尋ねた朝の“彼”、ジョンハニヒョンに。慌てて重なった手を離し、くぅん、と肩を竦めるのは図体の大きい犬のようで。





( / あ~~良かったです~...!! 特殊なロルなので、これで大丈夫かと常々不安でしたが;; そんな勿体ないお言葉をいただけてとても感謝しております...。

どれも快諾してくださってとても助かります...!!
ありがとうございます...!

はあ~~それにお返事ありがとうございます、、もうもう、感無量です、、オッチョナが止まりません......。長さも全然気にならない位ですし、小説風に合わせていただけるなんて嬉しすぎます。しかも初めてだなんて...お上手すぎますしjhすぎますし。解釈違いなんて以ての外です、、どうしましょう...。
このままだと色々収まらなそうなので、ここで大人しくしておきますね。
この先楽しみで仕方ありません!!
改めてよろしくお願い致します~!! )

  • No.13 by  jh  2022-12-09 02:26:43 






... むぉやぁ~、人をおばけみたいに。


( 自分の気持ちなんて重々承知してコントロールしている筈なのに、いざこういう状況になると嫌でも浮き彫りになるらしい。清々しい朝日を浴びながら項垂れて微睡む彼が、髪も乱れているのに可愛くて堪らないなんて相当重症だろう。不意に鼻に掛かった低くて柔らかな声が自身の名前を呼び、目の前の旋毛へ視線を遣ってみるがやはり眠っているらしく ... 俺の夢でも見てるのかな、なんて一層柔らかい笑みが深くなってゆく。そんな呑気な想像を繰り広げていると、目を瞑って眠っている様子が伺える為少々気を抜いていたせいで、髪を撫でていた手に温かい掌が重なると途端に心臓が跳ねる。嗚呼ほら、分かってるんだよそんなこと。自分から触れるのは平気なくせに、彼から触れられるとこんな風に身体が言う事を聞かなくなったのはいつからだろうか。少なくともまだ幼さの残る彼と最初に出会った頃はこんな事になるなんて思いも寄らなかった。幸い目の前の相手はまだ瞼を開いていない。トクトク、控えめで小気味良いリズムを刻む鼓動が間違っても手から伝わらない様に、重症なのはもう分かり切ってるんだから早く治ってくれ、と心の中で唱えてみる。すると突然開いた瞳と目が合い、何故だかぽかんと口を開けて動揺している様子の彼とは対照的に、ゆったりとした口調で冗談混じりに述べては“んふふ”と小さく笑う。重ねられた手がぱっと離れてしまうと少し残った彼の体温に若干の名残惜しさを感じてしまうが、整った端正な顔立ちにも関わらず、悩まし気に眉を垂らして大きな体を縮こめる愛らしい姿を見るといじらしくて仕方ない。そんな彼に悪戯心が芽生えるのは最早恒例行事で。「いつからって ... ずっと居たけど、... 覚えてないの?はにひょん好きぃ~って言ってたよ」勿論名前を呼ばれたこと以外は真っ赤な嘘だが、はったりとは思えない程堂々と悪戯っぽく口角を上げる。... まぁ嘘なんだけどね。内心そう呟くものの、どうしてこの子はこうも可愛いのか。─ 分かんないのかなぁ、そんな反応されたらいじめたくなるだけなのに。先程の優しい笑みとは打って変わって、眠気から下がった目尻をそのまま意味あり気に更に細めては、元々鋭いにも関わらずすっかり飼い主の様子を伺う犬の様になった健気な瞳をじっと見つめて。徐に彼の首の後ろへ手を回し、すりすり ... と頸を指で撫で回してみる。「そんなにヒョンが好き ...?... なら俺の部屋でこっそり2人で二度寝しよっか」そのまま頭ごと優しく引き寄せ、鼻先が触れてしまいそうな程顔を近づけては、やけに甘ったるい声音で。 )




( / とんでもないです、大丈夫どころか寧ろmg
の心情が分かりやすくてとっても楽しいですよ ... !感無量です!主様と出会えて本当に良かったです。ありがとうございます~~!

此方こそお返事頂いて昂っております、感謝しか有りません .. !ロルの長さもコンパクトに調整しようと思っているのですが、やり取りが楽しすぎてまたついつい長くなってしまいました ... 。その都度長さにムラがあるとは思いますが、大目に見て頂けると幸いです!
本当ですか、勿体無いお褒めの言葉嬉しい限りです~!やはり良い関係を築いていきたいので、途中でもっとこういうjhがいいなぁなどご意見ご要望があればいつでも遠慮なくご相談くださいね ... !
当方もこの先が楽しみで今からウキウキしています!
もし何か相談する事もなく、絡みに集中したい様でしたら背後の会話は一旦蹴って頂いても構いませんのでご遠慮なさらず!
此方こそ、これから何卒宜しくお願い致しますね .. ! )




  • No.14 by mg  2022-12-09 16:47:08 




...覚えてないよ、

( 数分前よりも白く染め上げられていくリビングで、愛しい彼と二人きり。その事実にすら心臓の鼓動は早まるのに。...ハニヒョンの言うことを真に受けてはいけない!いくらカメラが回ってなくてもね。この人は昔っから根っからのイタズラ好きだ。だけど決して悪い人ではなく、メンバーも口々に“一番優しい”と言うほどだし、実際メンバーの不調や違和感に逸早く気づくのは決まってハニヒョンだ。...だから、だからこそ。この胸の内をとっくに知られてるんじゃないかって危惧するのは今更なんだけど。今だって彼の発言を嘘だと全力で否定したいのに、それが出来ないのは。紛れもなく内に秘めたこの感情のせい。_片方の手で口をおさえ、目をぱちくりとさせる。「 ...っ、俺、ヒョンを好きって...? 」そんな。そんな阿呆みたいな行動で彼にこの想いが知れてしまったら、俺は一体...。寝起きと寝不足の頭でぐるぐると必死に回す思考は全く役に立たないものだ。まるで全てを見透かすようにじっと絡まった視線を慌てて逸らしたのに。寝起きの冷たい指先が肌に触れる感覚にぴくりと肩を揺らす。てばっ...!ヒョン、、あんで~~!! 心の叫びもままならないまま、緊張から恥じらいから...分かりやすく喉仏を上下させてごくんっと息を呑んだ。耳を擽るやけに甘ったるい声音。尚も肩を竦めたまま何か言いたげに口を動かし、目と鼻の先の彼の表情なんて伺う余裕もない。あ、ああ...もう...!早まっていく鼓動に、これ以上早くなったらしぬんじゃないか。大層バカな危機感を覚えると、彼の肩を手でぎゅむと掴んで、怪我をさせない程度に強めに引き剥がした。「 はあ~っ!ヒョンってばからかわないでよ!俺“好き”なんか絶っっ対に言ってないじゃん!あ~本当に、ヒョンのせいで気狂いそう...っ 」 まるで犬がばうばうと吠えるように早口で。一気に言い終えると、わざとらしくため息をつく。そうしてむしゃくしゃなまま床に手をついて立ち上がると、額に垂れた前髪が鬱陶しくて乱雑に前髪をかき上げた。その下...、じっ...と見下ろした先に、こちらを見上げる彼が...やっぱり、可愛くて...。大きな手を差し伸べてみる。ヒョンの言う通り、二度寝をしようか、それともせっかくリビングにいるんだ。昨夜から何も食べていない空腹を満たそうか...。未だ収まらない鼓動を落ち着かせる為に、違うことを頭に巡らせて。

  • No.15 by  jh  2022-12-10 00:52:17 







ふーん ... 、

( てっきり直ぐに否定されるかと思えば口を抑え瞬きを繰り返す彼。人一倍顔に出やすい感情豊かな彼のことだ、案外的外れでもないらしい。そう受け取って良いだろう。絡めた視線を逸らされてもゆるりとした笑顔を僅かに口元に残して考える。以前から自分と同じように好意を持っていると考慮していたが、漸くパズルのピースが埋まってきた。もっといじめようか、それとも少し引こうかなぁ。... まぁ、こいつの可愛い反応が見れるならどっちでもいいんだけど。分かりやすく空気を飲んだ音が微かに鼓膜に届くと思わず笑ってしまいそうになる唇をチャックし、合わない視線もお構いなしにじっと見つめ続ける。すると唐突に肩を捕まれ引き剥がされてしまったのだ。何だよ~、もっと楽しみたかったのに。「 やぁ、これのどこが揶揄ってるんだよぉ。それに何で絶対言ってないなんて分かるのさ。お前から好かれてないのは分かってたけど ... 」お決まりの面倒臭いモード全開で斜め下に視線を下ろして、朝日が照らし白い光に染まった床を眺めながら睫毛を伏せてみせる。勿論捲し立てられた言葉を真に受ける筈もなく、態と芝居がかった台詞をつらつらと。「 ... え~い、あらっそあらっそ 」然しいつもの様に彼がため息を吐くとそろそろ話は終わりの合図。途端に物分かりよくコロッと態度を変えて、立ち上がった相手を見上げれば平然と“えへへへ”と笑い声の様に態とらしく口に出す。乱雑に髪を掻き上げる仕草はビジュアルも含めて側から見れば男らしさそのものなんだろう。そりゃかっこいいのは認めるけど、俺からすればただの可愛い弟で、それでいて可愛い獲物 .. じゃなくて世界でたった1人の好きな子なのに。そんな事を思いながら上目でその様子を見上げていると不意に差し伸べられた大きな手。迷う事なく自身の細いが骨張った手を乗せて掴み、遠慮なく体重を掛ければふわりと軽く立ち上がって。「 お前お腹空いてるんじゃない .. ?ヒョンと朝ご飯でも食べる? 」ぽん、自分より高い位置にある肩を軽く叩き、先程までの発言は何処へやら。あっさり彼の前を通り過ぎ、すたすたと気紛れにキッチンへ向かいカーテンから差し込む白んだ光の中へ。さてと、何にしようかな。料理をするつもりもない癖に冷蔵庫を開け気の抜けた鼻歌混じりに中身を物色してみる。「 みんぎゅや~、 」飼い犬でも呼び付けるかの如く顔だけ振り返り、首を横に緩く傾けながら彼の返事を待って。 )





  • No.16 by mg  2022-12-10 02:12:57 





おん、お腹減ったよ~...。

( 彼のわざとらしい言葉に殆ど重要な感情ってのは含まれてなくて、俺がさっさと切り上げてしまえば彼は決まっていつも全身の気が抜けてしまうくらいの緩い声を上げるのだ。そのせいで恨めないどころか彼を可愛いと許してしまうのだから...本当に、罪だと思う。_彼と比べれば体格差に分かりやすく違いが出るほど、俺の方が筋肉もあるし背丈もある。それにナムジャとは思えないほどの綺麗な顔立ちと相俟って、骨格こそはナムジャそのものだが線の細い彼。重なった手を握って、遠慮なく掛けられた体重を支える時、気持ち悪くもにやりと口角が上がったのはそれをしみじみと実感したからだ。つい先程までとは打って変わり、彼の視線が少し下になる...正直、この瞬間が好きだ。未だとくとくと早めの鼓動に知らんぷりを決めると、こちらを見上げてなにか発する様子の彼をキョトンとした表情で見つめた。上から見るとはっきり伺える長い睫毛に縁取られた目、その瞬きを数回見遣ると、「 ヒョン...!一緒に食べてくれるの? 」嬉々として答えたが、まだ見ていたかった瞬きも何も、彼は猫のようにあっさりとその場を去ってしまった。だけど悲しさは一切ない。未だ誰かが起きてくるには早すぎる朝、もう少しだけ彼と二人きりで居られるから。一足先にキッチンへ向かう後ろ姿を見て、恰も嬉しそうに頬を緩ませる。少し離れて見る愛しいシルエット、パジャマですら着痩せして見える細さと、...あ、ちょっと寝癖ついてる。ようやく霧の晴れた頭で落ち着いて彼を見れた所、不意に名前を呼ばれては瞬時に わん! とでも言うように駆け寄るのは。もはや体に染み付いている、というのだろうか。俺を待ってくれてるヒョン、首を緩く傾けたのが可愛くて。堪え性なく感情がありありと表に出ては今さっき見つけた寝癖に手を伸ばして、指先で軽く撫でてやるとにっこりと微笑むことに。それもまた特に意識してやったことではなく、冷蔵庫を開ける後ろからひょこ、と顔を出して中を覗いてみた。...あれは...、昨日のキムチの残りと...誰かの化粧水まである。「 なに作ろうかなぁ。ヒョン食べたいものとかある? 」横から手を伸ばして一応使えそうな物を取り出してみながら彼に尋ねてみる。簡単なものでいいから、適当に残り物を使える炒飯かさっと茹でるだけのラーメンか。ハニヒョンは辛すぎるの得意じゃないからどちらにしろ味は優しめにして...なんてすっかり頭の中はメニューでいっぱいで。

  • No.17 by  jh  2022-12-10 09:40:51 






... 何だよ、

( 本当にわんこみたいなやつ。だって駆け寄ってくる姿は大型犬そのものだ。今だって喜んでいるのが丸分かりな表情を浮かべちゃって。確かにお前は人懐こい子だし、これが他の子達だとしても普通に喜んだと思うけど、それだけじゃないでしょ?俺は知ってるんだから。なんせパズルのピースは揃ってきているからね。─... しめしめと考えを巡らせていると、不意に指先で髪を撫でられる。たったそれだけなのに、嗚呼もう。寝癖の事などいず知らず治っていた鼓動がまた軽くリズムを刻み出し、其れを何気なく無意識にやっているのが分かるから余計に気に食わない。いいかキム ミンギュ、俺から触れるのは勿論いいけど、お前から触れるの時は先に了承を取ってからにしろ、... なんて理不尽な心の声も今は頭の中だけで完結せざる負えない。幸いある程度なら表情に出さずにいられる性分故、悟られないように冷蔵庫の中身を見ているフリを決め込む。しかし自身の後ろから顔を出し一緒に冷蔵庫を覗く彼は何とも可愛らしく、そんな横暴な思考もふわふわと何処かへいってしまう程。自分もお腹が空いてるだろうに、親切な問いかけに胡座を掻き何を食べようか思案してみるものの、やはり弟が食べたい物が1番ではないかと自分の顎に手を添えて。「 ん~ ... ?お前が食べたいのでいいよ、ヒョンはいいから好きなのにしな 」作る訳でもないのに何処か世話を焼く様な柔らかい口調でそう答えるが、次の瞬間ぎゅるる ... と短く腹の虫が鳴ってしまい。かく言う自分も昨日の昨日の夕方頃から何も口にしておらず、今更になって空腹に気がつけば、腹の音を聞かれた事に関しては特に羞恥を感じでいない様子で“なはは”と単調に笑う。「 ... ねぇ、やっぱりみんぎゅが作った炒飯が食べたいなぁ 」冷蔵庫から物を取り出す動作を邪魔しないように、背後に立つ彼の胸板に背中を預けて寄りかかって。悔しいけど逞しい胸筋がパジャマ越しの背中からでも伝わってくる。それにときめきそうになってるのもヒョンとしてどうなんだって話だけど。... ぱっと顔を真上に反らす形で彼の顔を見上げ、やはり気が変わった事を少し甘えた声色で提案することに。... あ、鼻の先の小っちゃいホクロ、真下からでもよく見えるんだ。なんて思わず人差し指で鼻先につん、と触れて逆さまに見える彼に向かって無邪気に微笑みかける。「 ネ~、作ってくださぁい 」忽ちひらりと彼の胸元から抜け出し、軽く言い放ちながらもキッチンのコンロの前に立っては側で茶々でも入れようかと。 )




  • No.18 by mg  2022-12-10 18:15:05 






( あぁどうして、ただ彼となんて事ない日常のやり取りをしているだけなのにこうも嬉しくて堪らないんだろう。_自分ではなく此方の希望を優先してくれた言葉、せっかくなら彼が食べたいと思うものを振る舞ってあげたかったけど、それなら簡単に…なんて思案をかき消した腹の音...自分のものではないそれに、自然と頬が緩むのは。早く満腹にさせてあげなきゃ!と思いつつも気の抜けた笑い声につられたから。んはっ、と八重歯を晒したりして。たかが生理現象なのに、それすらも可愛いと思う。重症だね俺は。...手に食材やらを持ったまま、その場から退こうか悩んだ時。ねぇ、と始まる言葉に 「 ...ん?」 耳を澄まそうとピタリと動きを止めた。刹那密着してきた体、その重さも相俟って「 おぉぅ、」と間抜けな声を漏らす。そんな状況で、しかも無意識なのか...つい数秒前よりも甘みを含んだ声音でされた提案に、たかが一言二言覚えてられるか不安だけど...。「 ...炒飯?いいよ。美味く作るね、」 クールに装った平静、それを毎度毎度打ち壊すのが大得意なのかこのヒョンは。話す時に自然と顔を覗き込む癖がある自分、だから上から覗き込むように彼の髪を見つめていたのに、今度は視線が、突然間近でばちりと合うのだから。背に滲む冷や汗、引き攣った笑顔。追い打ちをかけるかのように伸びてきた指先が触れると、反射的に薄らと目を細めて、その先で花が咲くように笑う、彼のあどけない笑顔...。...~っっ。途端激しく鳴り出した鼓動は、彼の背中に伝わっていないことをひたすらに願った。チェバル...っ頼む、落ち着けキムミンギュ...、あ~オットッケ、、気づかないでヒョン...!! 煩い脳内と一層激しさを増す鼓動で気が狂いそうだ。本当にこのヒョンは...俺が好きなのを知ってて、わざとやってる訳ないよね?_ 作ってくださぁいなんて、呑気な…俺はこんなにも大変なのに…。なんて泣きべそかきそうな勢いで。「 …、はぁい、あるげっそ… 」 彼が触れた鼻を擦りながら気にする素振りを見せて、すっかり居なくなった温もりを追いかけることなくしおしおと食材をキッチン台へと置く。そこで肩を大きく上下させるほど深呼吸を一つすれば、落ち着く訳もない鼓動をそのままに腕捲りをして。「 はーぁ、ハニヒョン今日…ご機嫌じゃない? 」 彼の希望通り、キムチポックンパでも作ろう。ご飯は…誰かが炊いてくれてるかな。お、タイマーが押してある。このご飯炊けたら使おう。なんて思案しながら。

  • No.19 by  jh  2022-12-11 01:59:46 






( 笑顔が引き攣ったかと思えば動揺したりコロコロと変わる表情が本当に可愛い。しおしおと弱々しくキッチン台へとやって来て、今度は凛々しいはずの眉が慣れ下がって今にも泣きべそをかきそうな表情。... お、触った所気にして指で擦ってる。あんでぇ、そんな顔しちゃ。俺が見てるんだから。もっと触りたくなるじゃんか。先程背中に伝わってきた彼の激しい心臓の音はしっかり把握済みで、思い出して密かに口角が上がる。つい最近まで、もしかしたらこの子も俺と同じ気持ちなのかもしれないという期待と推測で済んでいたのに。お前のせいでもう確信に変わっちゃうよ、みんぎゅや。彼の一挙手一投足を眺めながら、肩を上下させて一つ呼吸を置く姿にくすりと笑いを溢す。相変わらず分かりやすいやつ。腕捲りをしたことで露わになった頑丈そうな腕に早速触れたくなってしまうが、今は我慢我慢 ... 。なんて内心ちょっとした葛藤を繰り広げていると、鼻に掛かった低い声に視線を上げる。「 あぁ ... うん。バレてないと思ったんだけど 」バツが悪そうに視線を逸らせば首の後ろに手を遣り、珍しく歯切れ悪くもにょもにょと呟く。ご機嫌、なんて何気なく言った言葉なんだろうが、彼にそれが伝わってると思うと何だか気恥ずかしいのも事実で、睫毛を伏せて控えめにはにかみ。「 誰かさんと朝から2人きりになれたから浮かれてるの。... 皆には内緒ね? 」不意にこしょこしょと耳打ちをして、彼の耳に一層甘い囁き声と微かな吐息を注ぎ込み。実際彼がリビングで眠っていてくれたお陰で朝から上機嫌だし、それは紛れもない本心だが、生憎タダで教えてやるような良い性格はしていない。... もっともっと俺を意識すればいい。目一杯意識して、早くヒョンのとこまで堕ちてきな。そうして耳元から顔を少し離せば悪戯っぽい笑い声を残した後、距離を詰めていた体をあっさり離す。先程までの恥じらいなど何処かへ行ってしまった様な涼しい顔でくるりと踵を返すと。彼に背を向けて調理器具が収納されている棚を開けると、使い込んだフライパンを取り出し。「 使うのってこれ? 」用意出来る事は準備しておこうとコンロの上にフライパンを置いておき、何事も無かったように戻ってきたのはキッチン台に立つ彼の隣。台の上に昨日の残りのキムチが置いてあるって事は朝ご飯はキムチポックンパかな。「 ウリミンギュの~、クッキングショ~ 」ライブを付けている訳でもないのに呑気な音程に乗せ。すっかり見学モードになればぱちぱち、と軽い拍手を一つ。 )




  • No.20 by mg  2022-12-11 03:31:52 





( ヒョンが昨夜練習を終えて帰宅してからどうなっていたかは容易く想像がつく。今起きていること自体珍しいと思えるのは睡眠時間をろくに取っていないと確信出来るから…なんだけど。そう、今起きているどころか、こんな早朝からしかも上機嫌に俺にちょっかいを掛けてくる彼。何か目的があって俺が寝落ちしていたリビングへ訪れたのだと思うのだが、ここに居たのがヒョンと仲の良いシュアヒョンだったりよく一緒に居るのを見掛けるドギョミだったら上機嫌の理由は納得できる。元々俺とハニヒョンは仲が良いとは言い難いし、すれ違う部分が多いから…。俺は妥協して今こそ“大好き”が勝っているが、彼からしたら朝目覚めて一番に会う人物が俺だなんてきっといい気持ちはしないはず。…料理をする前に基本の手洗いを入念にしながら、気になってこの件を尋ねてみたのだ。そうしたらどことなくバツが悪そうに視線を逸らされてしまうから疑問を覚えるのがその1。聞かない方が良かったかなと思い直せば「 アニエヨ、ただ、… 」“ヒョンってば心臓に悪いことばっかりしてくるじゃんっ”なんて言えるはずもなく。返す言葉を探していたら、横目に見た彼の表情…控えな笑みとまた詰められた距離に、今日既に何度か感じてる危惧を改めて感じることになるなんてさ…。キュッ、と流れる水を止める手が一瞬ビクつくほど動揺を顕にして、最早今回ばかりは耐えられず胸元の衣服をくしゅと掴んだ。…?? 誰かさん、と、朝から…、内緒…だってぇ…?疑問その2。なんたって彼の話す言葉はまず信じる前に疑えと何度も習ってきたはずなのに。こうもすっと胸の奥深くに落ちてしまうのは、やっぱり俺が一方的に彼を好きなせいなのだろうか。それにしても…例え嘘としても、だ。“朝から二人きりになれた誰かさん”は俺で間違いないということ。その事実を理解した途端、「 …うぁ、ヒョン~…っ、」彼に聞こえるかどうか、ほんの微かな声で呟くとせっかく洗った手を上に上げキッチン台に肘を立てて顔を伏せることになった。ぷしゅ~と効果音が出そうなほど耳を赤くして、今は情けなさなんてどうだっていい…。変に思われてもいいから、冷静になる時間が必要だった。顔は見れてないのに聞こえた悪戯な笑い声に容易く表情が想像できる。少し離れる足音と影…変な体勢で固まっていたが、ふと飛んできた声に顔を上げると 「 おぉん、こまうぉよ… 」と頷いて返す。もう実はと言えば走って部屋にこもりたいくらい恥ずかしくて、このヒョンといるとおかしくなりそうで耐えられなかったが。何とか立て直すと頬をぱんぱんっと両手で軽く叩き、しっかりしろキムミンギュ…!と喝を入れるなり格好悪くもまた手を洗うことになる。今日何度目か分からないため息をはぁぁ~。とつけば、まるでライブ放送かのようなテンションに合わせつつも…。「 い、いぇ~い。…って、もう~ヒョンはあっち座ってて!全然進まないよ~!すぐ出来るから、ね、」これ以上心臓が持たないと、半ば無理やりテーブルの方を指さすと其方へ行けと提案する。そりゃぁ隣に居てくれても嬉しいけど…なんたってまじまじと見られてもさ恥ずかしいじゃん。口ではそう言うが。既に動かし始めてる手は、用意したまな板に水洗いした食材を乗せて、取り出した包丁を握るとさくさくと刻んでいく。「 …手伝ってくれる訳でもないでしょ? 」ちらりと見やった隣の彼と、野菜と一緒に置いてあるピーラー。唇を突き出す表情は少々不満げに。

  • No.21 by  jh  2022-12-11 09:45:47 






( なんて言ったらいいのか。お前じゃ駄目な理由を探したらそこら中に幾らでも転がってる。趣味は合わないし、何処を取っても正反対。優劣なんてつけられる筈もないんだけど、こうして何年も活動していると特に仲が良い面子も、話しやすい子だって出来るのは突然の事で。... だけど俺はお前がいいんだよ。目まぐるしい日々の中でいつ意識し始めたかなんて思い返せばキリがない。海外のホテルで顔を合わせたあの時だったかもしれないし、練習室であんな遣り取りをした時だったかもしれない。どんなにちぐはぐでも、すれ違ったって、何も問題じゃないんだ。例えば折角手を洗ったのに分かりやすく胸元の服を掴んじゃうその仕草。盗み見た赤く染まった耳だって見逃す訳ないだろ。正直食むのを我慢しただけ感謝してほしいくらい。何より消え入りそうな程微かに自分を呼ぶ情けない声だってしっかり鼓膜に届いていて。それが可愛くていじらしくて胸がきゅん ... っと締め付けられた。それを無自覚でやっているんだから、俺なんかよりよっぽどタチが悪い。こんな風に思ってることもお前は知らないんだろうね。まぁ後々ゆっくり教えてあげるんだけど。目の前で自分の頬を叩いて、再び手を洗う彼を微笑ましく見守りつつも、テーブルの方を指さされては、大人しく聞く筈もなく眉を寄せる。「 やぁ~、せっかく盛り上げようとしてあげたのに。なんだよ邪魔者扱いしてぇ~ 」ぷんすこ、という擬音が正しいのか。間延びした声で言うものだから全く迫力はないが、隣で茶々を入れようと思っていた事を、例に漏れず物は言いようを体現する様に主張して。勿論そこを動かずまな板の上で食材が刻まれていくのを腕を組みながら見下ろすものの、ふと彼からの視線に気がつくけば、可愛らしく唇を突き出した不満げな表情に今度は返事の代わりににんまりとした笑みで返す。そうとなれば行動は早い。そそくさと自らも手を洗い、ケロッとした様子で隣に肩を並べてると置いてある野菜とピーラーを手に持ち。「 ... なんかこうしてると新婚さんみたい 」千切り用のピーラーでそれなりに手際よく野菜を切りながらふと徐に。「 お~ ... それとも同棲中のカップルかな? なんなら片思いの相手の家にお泊りでもいいけど 」視線を手元に落としたまま手を動かし、野菜が残り半分になったところで手を止め、まな板の上に千切りされた野菜が山を作っており。残りは誰かが食べるだろうとラップに包んで冷蔵庫に戻し、再度彼へと視線を向けて。「 設定だよ設定、作る間何もナシじゃつまんないじゃん 」何気なく取っ掛かりになりそうな会話を仕掛ける。つまらないどころか、何もなくたって2人きりで居られるだけで楽しくて仕方ないんだけど、という本音は秘密にしたまま。「 この中から3択ね、... どれがいい? 」こういう軽い会話くらいなら料理の邪魔にはならないだろう。仮にも自ら恋愛の話をすることなんてそうそうないが、目の前に居るのが好きな相手となると話は変わってくるものだ。新婚、カップル、片思い。顔の横に3本立てた指を添え、飽くまで動作を見守りながらもゆったりと首を傾げて。 )




  • No.22 by mg  2022-12-11 22:02:34 






( 今日に限って激しく鳴り続ける心臓の訳を考えたら、どうしたって行き着く先は“彼”になるのだけど。…おかしいんだよ、だって。彼を好きだと気付いて、その感情を自身に受け入れた“その日”から今まで、今日ほど煩く心臓が鳴ることはなかったんだ。何故って、思い返したら。どうやら俺は、“その日”から彼と二人きりになる機会を無意識に避けていたらしい。記憶を遡っても…彼と誰かを挟んでの会話が多く。ふと廊下ですれ違った一瞬、ステージ裏に降り立った時、たまたま傍にいた彼とアイコンタクトで笑いあった瞬間…そんなわずかな一瞬でしか、彼と二人きりの空間を作って来なかった。しかも故意に二人きりになった訳ではなく、どれも偶然。…今日、今この瞬間が必然だとしたら_。とくとくと、いつもより早めな鼓動が心地良いなんてさ。俺はやっぱり彼のことが大好きだと、改めて気づいてしまうから。もう…ヒョンのせいで感情が追いつかないよ。この世界ではない別の世界で彼とまた出逢う運命が存在するなら、友達にもそれ以上にも発展しないで、ただの他人として生きるだろうと考えていたのに。今はそれ以上を願ってしまう程、ハニヒョンしか考えられない。期待薄で示してみたが、ついに野菜とピーラーを手に取った彼を横目に見て満足気にふっと頬を緩める。手伝ってくれてる間は、余計なこと言わないだろ。…なんて、思い込んでいたのはやっぱり阿呆だ。「 …何だって? 」すっかり切り終えた食材はそのまま、熱したフライパンに油を敷いて、豚肉のパックを開けようとしていた時だった。聞き間違いだと信じたくて、一度止めた手をすぐに再開させる。…まぁヒョンがそれを許すはずないよね。「 …。何言ってんの俺ら男同士じゃん。」 ふと横目に見た、野菜を手に視線を下に落とす彼の表情。俺にとっては最早死活問題なのに、のうのうと話す声の柔らかさと表情の緩さ。何度見ても綺麗に生え揃った睫毛、バランスの良いパーツに骨格。手は細いのに骨張ってて、儚くて消えてしまいそうな綺麗さに、どこか芯の男っぽさが滲んでて…。素直な脳内は易々と想像を膨らます。ヒョンと、恋人同士、…。そんな脳内を悟られてはいけないと、態度は少し不機嫌を装い、視線が合ってしまう前に逸らした。火を通した豚肉と具材を一緒に炒めて、頭上スレスレの換気扇のスイッチをようやくオン。設定たって、そんなの…俺の気も知らないでさ。ただのお遊びだと巫山戯るのはさすが彼らしい。だけどそれは絶対に現実になり得ないことに思えて。…実際、その通りだから。「 ヒョンはつまんないかもしれないけど俺は忙しいんだよっ。絶対に選ばなきゃダメ? 」フライパンを振って具材を混ぜ合わせたところで、菜箸で具材をつついて呆れた様子を装い彼を見遣る。もっとこう…他にいい設定あったでしょ、何でよりによって。しかもヒョンが滅多にしない恋愛の話なんか。まるで拒否権はありませんとでも言うように3本立つ指と、ムカつくほど可愛らしい仕草。「 ん~…。ハニヒョンとは絶対同棲できないから、片思いがいい。」もうヤケになって淡々と、少しツンと棘のある答え方をすれば、後は勝手にしてくれとでも言わんばかりにフライパンを持ち直す。ヒョンのせいで舞い上がったり落ち込んだり、早朝から忙しいったらありゃしない。)




  • No.23 by  jh  2022-12-12 18:16:35 






( 大人になってくると何事も段々と期待なんてしなくなってくるもので。何かがあった訳じゃなくても、色んな状況や人に触れると自然とそうなっていく。悲観的なんてとんでもない、寧ろ前向きだよ。だって期待なんてしなくたって生きていけるし、美味しいご飯を食べて楽しく過ごせる。時間が過ぎるのなんてあっという間で、ただ気にせず笑っていれば大概の事は通り過ぎていくんだから。それでいいし、それがいい。…なのにお前ときたら。自分が彼への気持ちを自覚し始めたキッカケなんて思い出せないくらい自然なものだったが。以前はともかく、はっきりと確信を持ってからというもの二人きりになる場面なんてほんの一瞬、数える程度しかなかった。その理由だってなんとなく察しはついている。ただその一瞬でさえ、俺を見るその目が、その表情が。どんなに空笑いしてみたところで、胸に焼けついて消えないんだって。だから、またとないこんな絶好の機会を逃す訳ないでしょ。フライパンに油を引く彼を横目にシンクの前に立ち、洗い物は溜めない方が良いだろうと。すっかり役目を終えたピーラーとまな板に洗剤を付けたスポンジで軽く擦り、のんびりした動作で洗い流せば水切りラックへ。「 うん、ダメ。3択なんだから簡単だろぉ 」不機嫌そうな面持ちの彼に敢えて気の抜ける様な軽い声を掛ける。すると返ってきたのは予想通りというか、不本意というか。…片思い。何となく其れを選ぶんだろうとは思ってたけど。なんだか棘のある口調で言い放つ姿はこの子の綺麗な見た目に妙に合っている気がして、冷美男とでも言うんだっけ。絶対に同棲できないなんて、幾ら平然を装っても好きな相手から出た言葉だと思うと思わず苦笑いが溢れてしまう。実際その通りだなぁ…なんて筋肉質な腕でフライパンを振る彫刻の様な横顔を眺めながら。「 …ん、じゃあ俺の片思いね。」こくこく、納得した様子で数回浅く頷けばぽつりと。その瞬間、炊飯器からご飯が炊けた事を知らせる軽快な音が。本当ならもっと蒸らした方がいいんだろうけど、生憎先程より空腹感を感じていて。棚から食器を取り出しては其れに早めにご飯を2人分盛って、すぐ炒められる様にキッチン台へ。「 はぁ~…ぺごぱ~。」不機嫌な態度なんてお構いなしで。不意に彼の背後に回り自分より少し高い肩へそっと顎を乗せ間延びした甘い声で呟く。…ねぇ、俺の可愛いみんぎゅ。お前は俺に好かれてるって自覚がちょっと足りないみたいだ。だからこれくらい良いでしょ?それこそ、彼が選んだ通り片思いなら意識させないと始まらないんだし。衣服越しからでも分かる逞しい腹筋に腕を回し、体をぴったりとくっけて後ろからぎゅ…っと抱きしめる。「 …2人きりで朝からご飯作って、何でもない話して。好きな人と過ごす時間がこんなに幸せなのに、胸のとこが苦しいんだよ。…もういい大人なのにね。」刻一刻と時間は過ぎて、白んだ朝日はキッチンにまで差し込んでいる。誰も居ないリビングはしん、と静まり返っていて、本当の2人きり。トクン、トクン。徐々に早まって跳ねる鼓動も、彼の背中にぴったりと密着しているせいでこの胸板から伝ってしまったら。どう言い訳しようかな。「 お前のせいだよ、みんぎゅや。」意識させようって目論見だったのに。本音がぽつぽつと溢れてくるから厄介だ、らしくもない。「 ……どうしてくれるの…? 」フライパンの中身を眺めていた目線を間近にある彼の横顔に移動させ、また甘い声で囁く。柔らかい朝日が目元を照らし、淡い白に染まった長い睫毛を目尻と共に下げながら。 )




  • No.24 by mg  2022-12-12 19:37:03 





( 何事も躊躇わず周りを顧みずに突き進むタイプだけど、恋愛となっては違う。そもそも数少ない青春の間の恋愛経験なんて片手に収まってしまう程しかなく、どれだけ過去を遡っても彼のような人に恋慕を抱いたことは一度もなかった。ましてや俺と彼が生きるこの世界で、簡単に恋愛なんて出来たものか。少し普段と違う行動を取ればすぐに指摘され、後にはありもしない話をでっち上げられて。俺が、あろうことかメンバーに“そういう感情”を抱いてしまったことは全て他でもない俺自身の責任だ。彼にも、他のメンバー達にも、事務所自体にも、そしてカラット達にも。どう転んだって悪影響は目に見えてる。だからこの感情は知られてはいけない、と。そう隠し通して来たのに。…ヒョンは、ハニヒョンはさ。高嶺の花だよ。同等の立場に居るはずなのに、手を掴む前にどこかへ行ってしまいそうで、すぐ触れられる距離に居るのに、触れることは叶わない。ヒョン。でももしヒョンが、俺に対して…俺と同じ感情を抱いているとするなら。俺はヒョンに、この想いを伝えるべきだと思う?_ ひたすら目の前の料理を仕上げることに全意識を集中させようとした。変な汗が背中を伝ったのは嫌な予感が的中したから。今は溜まる予定だった洗い物を片付けてくれるヒョンの優しさも、ご飯も二人分盛って用意してくれた手際の良さも、何もかも頭の中から抜け落ちていくようで。「 …っ。」ふわりと彼の髪が首を擽り、甘い声はいとも容易く耳に流れていく。といだ卵をご飯と一緒に混ぜ合わせて炒める光景はきっと食欲をそそるはずなのに。…やぁ。なんで。俺だって、こんなにも幸せなのに。それ以上に苦しくて仕方ないんだよ。「 …なんで、…っ、ハニヒョンは俺を好きじゃないのになんでそんな事言えるんだよ…!」まるで俺を、好きみたいに。口は嘘をつけても、背中越しに感じる温もりと微かに感じとった鼓動まで嘘をつけるなんて絶対に有り得ない。腹に巻き付く細い腕を、思わず片手で掴んだ。そうして無理やり引き剥がそうと入れた力は感情と比例して、朝最初に彼を押した時よりもずっと強く。俺からしたら全部ぜんぶヒョンのせいだ……っ。カラン、と菜箸が床に落ちる音がした。だけどそんなのも目に留めないで、切ない声を出す彼の顔を見てやりたくて。顔を見るまでは、大好きな人の…彼の肩を、思いっきり押すつもりで居たのだから。俺はもう…最低だ。「 ぅっ、ヒョン…、ミアンっ、ミアネヨ…、」だけど、彼の顔は想像と違って声そのものだった。どこか悲しそうで、辛そうで。そう見えたのは一瞬だったかな。でも。所構わず彼を引き寄せるように腕を伸ばすとギュッと力強く抱きしめてしまった。どうしてかな、ヒョンの言うことを冗談に取れなかったのは。もし、俺と同じ感情だとしたら。と思ったけど。わずかに期待してもそうであってと願わないのは、その期待が外れていた瞬間 彼に嫌われてしまうのが何よりも怖いから、だろうね。溢れてしまった感情は止めることができない。情けない、これがただの“設定”だということも次いでに抜け落ちてしまって。)




  • No.25 by  jh  2022-12-13 01:52:52 






( 嗚呼、やっぱり離してやらない。世間からしたら、メンバー達やカラット達からしたら。…彼からしたら。俺は罪深い人間なんだろう。今までそれなりに積んできた経験を省みても、まだ幼かった自分の甘酸っぱい思い出の最中でさえ、色恋沙汰なんて大した興味もなかった癖に。彼を見る目が色を含んだのだって、諦めようと思えば容易くて。だって大人なんだから、周囲の状況や積み上げてきた道筋を蔑ろにしてまで自分の気持ちを押し通すなんて。そんなこと、態々しないでしょ。労力だって掛かるし擦り減るものも沢山ある。けど、俺は自分が思ってるより大人じゃなかったみたいだ。酷く子供染みてて、どうしようもない。…ねぇ、お前は皆のキムミンギュだよ。燃える様に熱くて、それでいて目を逸らしてしまいそうな程眩しい。このまま抱きしめていたら火傷じゃ済まされないんじゃないかってくらい。なのにその燃え上がる熱を、真っ直ぐな光を渇望してる。ヒョンとして、メンバーとして。矢面に立たせる訳にはいかないし、弟達に何かあれば俺達が盾にならなきゃ…いけないのに、今お前を内側からじわじわと毒してしまってるのは他でもない自分自身で。出会って初めて彼を視界に入れてしまったのも、悪戯に触れた事も。全部ぜーんぶ、俺の罪。だから、全部俺のせいにしてくれない?頭に浮かぶ事柄、一つも諦める理由にはならないんだ。──…カラン、何かが床に落ちた音がやけに遠くに感じた。好きじゃないのに、なんて。あり得ないこと言うなよ。その瞬間頭の中でパズルの最後のピースがパチ、と嵌ってしまった。先程力加減をしてくれていた事が顕著に分かるほど手首を強く掴まれては今日初めて表情を歪めて。睫毛を伏せたまま眉間に皺を寄せ、ゆっくりと見上げる。視線を合わせたと思えば、目紛しく変わる視界。抱きしめられたと分かったのは、お前の身体が熱くて堪らないから。彼は何を謝っているんだろう、謝るのは俺の方なのに。「 んーん、…お前はいい子だよ。ずっといい子だった。」包み込むように抱きしめ返せば、少しボサついた髪に指を通して撫でてやる。さっき撫でた時よりも丁寧に慈しんで。背後から抱きしめていた時はそんな風に感じなかったのに、自身の体を力強く抱きしめる鍛えられた腕が、苦しくて熱くて。こんな状況にも関わらず、つい数分前までとは比べ物にならないくらい激しくドクドク、と心臓が脈打つものだからコントロール出来ない。「 …そんないい子に秘密を教えてあげよっか。 」正直こんな含みを持たせている余裕もないんだけど。折角だからゆっくり伝えよう。いつも通り緩くて甘い声に加えて一言一言はっきりと。「 ──…俺ね、ミンギュが好き。」大きな身体を撫でていた頭ごとぎゅう…っとより一層強く抱きしめる。彼は今どんな顔をしてるんだろう。抱きしめた手を緩めて確認することも出来るのに、見たら何かが終わってしまう気がして。睫毛が影を落として瞼を閉じると彼の呼吸に耳を澄ませた。「 冗談でもなんでもない、…お前に惚れちゃったんだよ。好きで好きで、一緒にいると体から火が出ちゃいそう、」こんな熱烈な告白、後にも先にもこの子だけ。自分が思っているより体は緊張している様で、また更に心拍数が上がった心臓は暴れ回って最早手がつけられそうにない。お前だけだよ、俺をこんな有り様にするのは。そんな訳ないのに、もう彼しか要らないなんて思ってしまうから。恋っていうのは恐ろしい。“みんぎゅや…お前が欲しいくてたまらない、ヒョンにちょうだい”すぐ側にある耳元に唇を近付け、切なげに掠れた声でそんな事を囁く。だってもう我慢ならないんだもん。好きな子の身体が腕の中にあって、こんなの。もう離してやれる訳がない。 )




  • No.26 by mg  2022-12-14 00:33:09 






( 衝動的に回してしまった腕は彼に剥がされることなくそのままだった。ふとした瞬間の彼は自身より細くて可憐に見えるのに、勢い余って力強く引き寄せても、何なりと俺を受け止めてくれる強さは女の子と違う。自分の方が背丈もあって体格も大きいはずなのに、それをも凌駕するヒョンの包容力は…昔から変わってないね。他でもないヒョンの手がそっと髪を通した瞬間、どうしようもなく涙が溢れそうになるのは…どうしてかな。まるで母親が我が子に掛けるような優しい声音に、彼にとって自分がどんな存在か分かってしまうその手の優しい動きに。ギュッと唇を噛んで、目の前の肩に顔を埋めた。…、俺はいい子なんかじゃないよ、ヒョンが思うようにね。決意をしたからには最後まで気持ちが露呈しないように隠し通さなければいけない。それなのに俺は、“俺はヒョンのことを好きなのに”とでも取れるような台詞を吐いて。この気持ちが風化することを祈って抑えつけていた、そんな日々についに終止符を打つことになる。ただの、俺のバカのせいで。ヒョンはどうして今も俺の傍に居てくれるの。嫌な顔一つせずに。…今まで俺は、周りが迷惑被らないように自分の気持ちを隠してきたつもりだった。もちろん、それもあるだろうけど。それが全てじゃないと知ったのは、ヒョンの内の気持ちを初めて聞いた瞬間だった。ああ、俺はハニヒョンの心と向かい合って、何より自分が傷付くのが怖かったんだと知った。大好きなヒョンに突き放されるのが、何より怖かったんだと。…。触れ合った体が熱い、これは単に汗っかきな俺の問題じゃないと分かる、重なった全身に伝わるような二人分の強い鼓動。理想もクソもない、ヒョンから紡がれる一言一句が恐ろしくて堪らないこの瞬間を、温もりを共有することで冷静を保とうとするのに。“好き”なんて。俺が一番欲しくて一番怖かった言葉を彼がいつも通りの甘い声音で紡ぐから。「 …、っ分かってる冗談でしょ、」これは全て嘘で、返事をしたら全てが終わってしまうと怖くなるのに。あまりにも熱すぎる体に、重なる激しい鼓動が冗談じゃないって教えてくれてる。既に強く強く抱きしめているというのに、しがみつくように更に強く抱きしめて、情けなく顔を埋めたまま「 うぅ、…っ 」漏らした唸り声はまるで犬が尻尾を下げているかのように。上昇する心拍数が、高まる熱が、もう、もう…何もかも、苦しくてさ。ああもうこのまま爆発してしまえばいいのに。「 …っ何言ってんの意味分かんないよっ。好きってヒョンが言うことじゃない、俺が言うことなのにっ なんで…、ハニヒョンが言うんだよっ…、」頭が追い付かない、当たり前だ。天使に告白されてるんだから…俺はとんだ罰当たりだ。目の前が霞んで、歪んでく。情けないくらいに。溢れそうな何かを唇を噛んで我慢するのは男だからとか、何より大好きな彼にこんな情けない姿を見せたくないだとか、そんなちっぽけな理由で。もう忘れ去られた朝ご飯、空腹なんてどうでもいい。腕の中の君が耳に直接流し込む切なげな声にぴくりと肩を揺らす。…ズルいよ。ヒョンのせいで、今までどれだけ振り回されたと思ってるの。聞き慣れた甘い声に、耳に被る吐息。それで簡単に落ちてしまうこともヒョンはとっくに知ってるんでしょ。「 めちゃくちゃだよ、あぁ、ひょんのせいで…っ。俺が欲しいの…? いいよ、全部あげるよ。」君が望むなら、“僕の全てを君にあげるよ。” 今にも泣きそうな顔で口を結びながら、不意に緩めた腕。そぉっと彼の肩に触れながら距離を離した。未だ視線は下のままだったが、少しずつ上目に見つめた目の前の表情。…限界な心臓は破裂寸前。ばくばくと煩くて、だけど隠す必要もなくなった頬の熱も心臓の音も。控えめに片方の手を伸ばすと、人差し指で彼の左胸をツン、と軽く突いた。「 …あげるから、ヒョンの心を俺でいっぱいにして。」どこか照れくさそうに視線を下へ外すと、肩に触れてたもう片方の手もするりと彼から離して。)

  • No.27 by  jh  2022-12-14 04:52:10 






( 肩へ顔を埋められた瞬間シャンプーと彼自身が混ざった香りがふわり、と。鼻を掠めた香りが心地よい。少しはだけていた首元に彼の顔が来るものだから擽ったくて、睫毛を伏せたまま微かに吐息が洩れる。其処から聞こえてきた切ない唸り声がどうしようもなく胸を締め付けて、そして愛おしい。しがみつくように一層強く抱きしめられると息が詰まる程苦しいのに、すっかり縮こまった身体を包んだ腕も同じ様に頭ごと力強く抱き寄せてしまうんだから、お互い大概冷静じゃないらしい。…、ああ、長い間お前を悩ませていたんだね。彼の苦悩も恐怖も、全て理解なんて出来る筈ないのに重なった熱から全部が流れ込んでくるみたいで。お前は辛いことなんて考えないで。たくさん食べていっぱい笑って、悪戯したらいつもみたいに呆れて。そうすれば残りのことは全部ヒョンが代わりに考えてあげるのに。そんな出来もしないことを考えるだけで目頭に熱が集まってツン、と鼻に僅かな痛みが広がる。…欲深いヒョンでミアネ。どんなに恨まれてもいいから、お前だけには許してほしいと思うのは、いくらなんでもわがまま過ぎるかな。「 …あにぃ、俺が言うことだよ。嘘でも冗談でもないって大切なお前に誓わなきゃ。…それはヒョンの役目。」慰めるように優しく髪を撫でた手と絆すように紡いだ甘い声、側から見ればそんな風に解釈されるのかもしれないけれど。精神的にも物理的にも腕の中の彼をもう離したくなくてどうしようもないなんて、なんて強欲なんだろう。こうも密着しているとぴくりと肩が動いたのが顕著に分かる。…、彼の打てば響くような所が昔から好きだった。反応があれば楽しいし、悪戯もちょっかいも手札はたくさんあるから。けど今はそれが少し毒みたいだ。言い出したのは自分だけど、…全部あげる、なんて。欲しくて堪らないよ、当たり前だろ。じわりと胸が熱くなると同時にゾクリ、と胸の奥底から湧き上がる何か。なんてちぐはぐなんだろう。息が詰まる程巻きついた腕から解放されてしまうとまるで割れ物でも扱う様にそっと体が離れ、いじらしく口を結んで潤んだ瞳とゆっくり視線が絡み。普段は無邪気な大型犬を思わせる彼が、今は耳が垂れ下がった子犬のように見えて。上目で此方を見つめてくる微かに濡れた鋭くもいたいけな双眸に再び胸の奥底から何かが湧き上がり。おまけにその胸を指で突いてそんな言葉を掛けてくるものだから、ほら、もう。「 ん~…どうしようかなぁ~、」俺の心はとっくにお前でいっぱいだよ、…─そんな本心とは裏腹に言葉を飲み込み、胸に指を当てる大きな手を下から掬い上げる。あんな熱烈な告白もしてしまって、今更駆け引きも何もないんだろうけど。そのまま掬い上げた其れを口元へ持っていき、手の甲にちゅ、と軽く口付けて手離す。今度は彼の肩を両手で掴み、少し手荒にキッチンとは向かいの壁に筋肉質な背中をとんっ、と押し付けて。丁度窓から差し込む日差しから死角になってやや薄暗い其処で、彼を壁と自らの身体で挟み「 全部くれるんでしょ…?…、みんぎゅのこれも、俺にくれたら考えてあげる。」片方の手を肩から離せば顎に手を添え、形の良い下唇をゆっくりと親指で撫でてみる。もう俺の恋人になったんだから、目の前にいる人間がどんなに欲深いのか知っておかないとね。「 …欲しいなぁ…、ね?ちょーだい…。」壁際に追い詰めたのは他でもない自分にも関わらず強請るかの如く囁き掛けた声はまるで砂糖漬けのように。目尻に睫毛を落として甘ったるい笑みを浮かべながらも、長い前髪が目元に影を作り。 )




  • No.28 by mg  2022-12-15 02:18:25 






( 温もりが離れても目の前に立つヒョンが此方を離すことなく見つめていたから、思わずじっくりと視線を絡めた…先で、長い睫毛を携える下の瞳が微かに潤んでいるのに気づいてしまえば、激しい胸の鼓動は未だ収まらないまま。_他とは違う感情を相手に抱いたのは何方が先か。見当も付かないけれど、どちらにせよきっと。お互いにすれ違って、辛い思いをしてきた事実は変わらないでしょう。ヒョンが俺と同じ感情を、俺に抱いてくれてから経過した時間がほんの僅かだとしても。ヒョンの気持ちに気付いてあげられなくてごめんね。俺はヒョンの心と真っ向に向き合うのを避けてきてしまったのに、突き放すどころかそれ以上に包み込んでくれるから。胸いっぱいに広がるのは今度不安なんかじゃなくて、あたたかくてやさしい感情。自分のすべてをハニヒョンに捧げてもいいと思える程 俺はいとも容易く浅く惚れていた訳ではないようだ。今更一人のヒョンとして見ることは二度と叶わないくらい、ハニヒョンを欲してるのは俺も同じだって。だから意を決して俺なりに応えたというのに。ヒョンったらまた…。動じずにこの手を掬い上げる様子を見つめていたのに、段々と近付いてく先の唇が肌に触れた瞬間目を丸くする。今更やっぱり好きじゃありませんなんて言わないだろうが、彼らしく駆け引きをする言葉に今は不思議と恐怖心はない。ただ少し不安げに眉を下げると、刹那肩に触れた手と少々無理矢理な動作に「 ぅおっ、むぉや…っ 」と焦ったような声を漏らす。音もなく部屋に差し込む光のように、気付いたら俺は彼に侵食されてしまっていたみたいだ。決して威圧感のある声とは程遠い、むしろ微睡みのようなあたたかい声なのにひとつも抵抗できないまま。…でも抵抗したいなんて思えなくて、寧ろヒョンの言うことなら聞いていたい、とまで思うんだからさ。まるで飼い主に従順な犬のように。彼の紡ぐ言葉、その甘すぎる声の一つ一つに胸が高鳴って、一々ばかみたいに固まってしまうから何かを返す前に触れてきた指先は、俺の感情もタイミングも全て見抜いているんじゃないかって思えてくる。肩を丸くして大きい身を竦め、耐えられず胸の辺りの衣服をくしゅと掴むのは本日2回目だ。爽やかな朝の光が届かない死角で、真っ直ぐで美しいヒョンの目を控えめに、だけど熱く見つめ返す。撫でられた唇が熱い。全身が燃えるように上昇する体温は耳まで真っ赤にして。「 う~…、うぇ、うぇ~ あげるって言ったじゃんヒョンの意地悪…っ もうヒョンのものでしょ、俺って。…ちがうの? 」どれだけ言い訳したって諦めてくれないんでしょう…?じんわりと、新たに侵食していく甘すぎる声音に。ゴクリと息を呑むと、今度は痛くしないよう優しく彼の手首を掴んだ。同時に引き寄せるように腰に片手を回すと、掴んだ手首を自身の首へと回させる。必然的に詰められた距離で、射抜くように見つめる瞳は自分の影に覆われてわずかな潤みできらきらと輝いて見えた。…あぁ、ほんとうに、現実で合ってるよね? 夢心地のような頭は信用ならないけど、こんなにも綺麗な瞳を、睫毛の数を数えられるくらい鮮明な君を…目と鼻の先で見つめられるのはまさか夢じゃありえないよな。手首から離した手、その指先で彼の顔にかかる横の髪を耳にかけてやりながら。「 …俺だけじゃダメだよ。ヒョンも、俺に全部くれなきゃ。… 」少し顔を傾けると、彼との距離がゼロになる。肌を擽る彼の髪がくすぐったい…思わず腰に回す手に力が入って、伏せた睫毛が微かに揺れる。もっと余裕をもって格好よく居たいのに…ヒョンの前じゃ何もかも伝わってしまうのが恥ずかしくて堪らないし、それに。「 …、大好き、ずっと大好きだったんだよ はにひょん。」 優しい瞳の茶色が分かるくらいに少しずつ離れると、彼の頬の膨らみを親指で撫でる。これ以上は…なにか危ない気がして、ふっと浮かべてしまった苦笑いもやっぱり格好つかないな。)


  • No.29 by  jh  2022-12-16 02:30:01 






( だから、そんな反応されたら…。抵抗するどころか自身と壁の間に大人しく収まり、掛けた言葉が唐突過ぎたのか戸惑った様子で表情が固まったかと思えば、先程のように広い肩を丸めて衣服の胸元を掴む姿を目にする。すると加虐心のような庇護欲のような感情が綯い交ぜに湧き上がり、胸をぎゅう…っと締め付けるものだからその仕草は何度見ても敵わない。そんな欲を表情で悟られないよう静かに口元をきゅっと結ぶも、控えめに此方を見つめる熱い視線に呆気なく再度口元を緩めてしまう。…罪悪感はあれども諦めるつもりなんて端から無かったけど、それでもやっぱり折れたりしなくて良かった。この瞬間を想像した事が無い訳ではないけど、こんなに甘いご褒美が待ってるなんて誰が予想出来ただろう。勇気を出して心を開いてくれてありがとう、みんぎゅや。じわり、内側から穏やかな愛おしさが溢れる。二人ならそれだけでも充分なのに、もっと彼の表情を独り占めしたい。もっともっとお前の甘い蜜をちょうだい…なんて本当に強欲の罪で罰を受けそうだけど、お前が俺の手の中まで堕ちてきてくれたから、それも悪くないかな。さっきとは打って変わって優しく掴まれた手首をされるがままに首に回し、距離が縮まると目の前に視界を占領する耳まで真っ赤に染まった肌。今まで散々思い知ったのに、じくじくと疼く左胸が彼を好きだってまだ訴えてくるから。…お前はもう俺のものだけど、こうすればもっと自覚するだろ。脳裏に浮かんだそんな屁理屈も目元に掛かった髪を耳にかけた温かい手、一瞬の事なのに心地よくて口に出さないまま溶けて消えて。「 一度に全部あげたらつまんないでしょ?…奪ってみな、」余裕が滲んだ面持ちでそうは言ったものの。接近する端正な顔に心拍数が上がり、静かに重なった影を薄く瞼を開けたまま受け入れると。腰に回った腕に力が入るのを感じたと同時に首に回した腕にも力が籠り、じわじわと白い肌が熱を持ち始め。単純に想っていた時間が長かったからなのか、…それともお前の火傷しそうなほど蠱惑的な表情に、その熱い唇に、魅力されてるから…?触れるだけの其れはどうにも離れ難く。そんな胸の内とは裏腹にゆっくりと体温が離れてしまい、名残惜しそうに垂らした切ない目尻のまま。「 …うん、お前の気持ちなんてとっくにお見通しだよ。」再び鋭くも熱の籠った双眸と視線を合わせれば、彼の口から紡がれた真っ直ぐな言葉が温かく胸に染み込んでくる様で。頬を撫でる親指を受け止めふにゃん、と顔を綻ばせて柔らかく笑みながら。─…自分でも気が付いてなかったけど、朝からお前に悪戯を仕掛けたり思いを告げてみたり。どんな収録よりも頭をフル回転させたせいで何処かで気が張ってたみたいだ。彼の肩に頭を預けて寄りかかり、より一層密着する様に隙間なく身を寄せ気の抜けたため息を一つ。大きくて熱い身体が体温の低い自身の身体に流れ込んでくるみたいで、いっそのこと混ざり合ってしまいたいなんて。「 ん~…みんぎゅのからだ、熱くてきもちいね…? 」首に回していた片方の手を解きまだほんのり赤い耳朶をふにふにと好き勝手に触れながら、二人だけなのに甘やかな声色でこっそりと。気が抜けた途端にきゅる…と数分前よりは控えめだがまた腹の虫が鳴るのも本日2回目な為一切動じず“へへ”と笑うも、まだ離れたくないなぁ…と何か言いたげに彼の目を見つめて。「 ねぇ、流石にお腹空いちゃった。もうちょっとだけ、…─ 」お腹が空いたなら早く朝食にすればいい、けど今欲しいのは。…再び鼻先が掠るほど顔を寄せては瞼は閉じないまま顔を傾けて薄く睫毛を伏せる。重ねた唇を堪能する様に長く呼吸を止めてから数秒。甘ったるい吐息を溢しつつ角度を変えてまた唇を奪えば腹を満たすかのように優しく食んだのは柔らかな下唇。ぎし、…フローリングが軋む程逞しい身体を壁に押し付け、これでもかってくらい熱情的に抱きしめながら足の指先で彼の足首をすり…と撫でるなんてこと、本能的にやっているんだから良くないな、これ以上は。渋々合わせていた影から少し離れてみると、最後まで味わいたくてほんのり赤くなった自らの唇を舐めて「 んふふ、…美味しい、」同じようにほんのり赤らんだ彼の唇の縁を指でなぞり。俺のものなんでしょ、なんて言うかの如く溢した笑みは悪怯れもなく。 )




  • No.30 by mg  2022-12-17 00:26:08 





( ヒョンは俺の気持ちにいつから気付いてたんだろう。この手できみの柔い頬を包めば、触れなきゃ知らなかった君の体温に心が解けていく。とくん、とくん、と一定のリズムで刻まれる鼓動が君をどれだけ愛しているか教えてくれる。君と通じ合うことを望んでいたようで望んでいなかった、突如現実となった願いは簡単に受け入れられなくて、少しずつ少しずつ、君から与えられる愛を受け止めるのに頭はなかなか追いつかない。…ふわりと大好きな香り、途端に力が抜けたような君を慌てて抱きしめた。まだ少しぎこちないながらも、逞しい腕で君の体を支えるように抱き留めては、片手は優しく梳くように君の髪を数回撫でる。覗き込もうと肩の方を見遣るけど君の顔は見えない。“ ケンチャナヨ? ” 心配で小さく呟いた言葉も、君の緩い言葉ですっかり気が抜けてしまうんだ。つい んふ、と気持ち悪い笑みが零れてしまったのはあまりにも愛おしくて。自分よりも低く感じる体温が心地よくて、ずっとこのままで居たいと目を閉じる。元々体温は高い方だけど、それ以上に燃え上がらせたのは紛れもなくヒョンだ。それを知ってか知らでか可愛らしい発言と好き勝手弄ぶ指、擽ったそうに肩を上げると堪らずもう少し力を入れて抱きしめてしまう。~~、だいすきだ。大好きな人が腕の中で大人しく、甘い声音をぽつぽつと披露するこの時間がなんて幸せなんだろう…。もう少し触れ合っていたい、きみが俺を好きだって確証を、胸に余るほどたくさんほしいんだ。…だけどふと小さくお腹が鳴ったのが聞こえると、「 ん、クレヨ。作っちゃわないと、 … 」頭の中は君でいっぱいなのに先に可哀想な空腹を満たしてやりたくて、素直に腕を緩めた、矢先。離そうと少し浮かせた手はまた髪の柔らかさを知る。キョトンとした表情のまま どうしたのかと問う前に、揺れた君の髪と麗しい表情が目に焼き付いて離れない。…壁に当たる背はぴりりと甘く痺れ、密着した体は高まる熱を逃してはくれない。…~っ、だから、だめだって...。今まで知らなかったんだよ。心から求めてた人と触れ合うのがこんなにも幸せだってこと。胸に広がる多幸感と、同時にぞくっと背筋を走った感覚。_いつの間にか解放された温もりに、茫然と立ち尽くす。目の前で薄らと目を細めてとろんとした瞳を晒す君の笑顔はだいぶ見慣れたものなのに。君の言葉も、仕草も、全部、ぜんぶに俺が含まれているから。次に君の指が唇をなぞったとき、「 …ヒョン、 」熱の篭った目で射抜くように見つめて、その指が離れてしまう前に掴んだ腕はもう二度と離してやらない、とでも言うように。片手で覆い隠すように抱きしめた君の体を、掴んだ腕と一緒に今度はくるりと壁に押し付けて。ああどうしてくれるのヒョン。真っ直ぐで晴れやかなリビングとは違う、光が差し込まないキッチンの一角で。こうして大好きな人と通じ合えばこれから表立って一緒の道を歩んでいくはずなのに。ねぇ、俺らはさ、普通の道を歩めないみたい。こんなにも幸せなことも、これからきっと起こる更に幸せなことも、全部何もかもずっと、二人だけの秘密なんだよ。君は周りに幸せを伝えられて、俺じゃない誰かともっと幸せな家庭だって築けるはずなのに…。_ちゅ、と唇を寄せた瞼、薄らと開いた目の色を焼き付けてから、鼻がぶつからないように重ねた唇は先程よりも深く。自身の唇でそっと優しく挟み、角度を変えては何度も味わう。熱を持ち柔くなった唇を触れ合わせるだけでどうしようもなくしあわせで、きもちよくて、...きみの温もりを知る度に、次から次に想いが溢れて止まないんだよ。最後にちゅっと優しく吸って離した唇、鼻先を触れ合わせると、知らず知らずのうちに力の入っていた手を緩めて君の瞳を覗くように上目に見つめた。ありがとう、俺を好きになってくれて。目の前がまるで水の中にでもいるように歪んで、君の綺麗な顔をじっくり見ることができない。「 ……、ぅ、ヒョン~…、ごはん食べなきゃ、」ふへ、と気の抜けたあほな笑みに目を細めると、目頭から睫毛を伝って雫が落ちて。)



  • No.31 by  jh  2022-12-18 09:23:21 






( どれだけ彼を好きか一通り伝え終わって、一先ず終わりの筈が。自分を呼んだ低く含みのある声に視線だけ上げると射抜くような熱い瞳の瞳孔が開いているのまで鮮明に分かり、次にされることを予測してしまい元々煩かった心拍数が嫌でも上がる。俺がその目に弱いのを、知っててやられる方がよっぽど楽なのに。唇をなぞっていたはずが掴まれた腕はじりじりと焼ける様で。好きだとか惚れた腫れたではこの気持ちは治るわけもないのにまた膨れ上がってしまうから困るんだ。瞬く間に景色が逆転したと思えば。こんな、覆い隠すように抱きしめられてしまって。なのに両手で抱きしめ返すことも許されずに掴まれた手首がじんじんと熱く疼くから、広い背中に回したもう片方の手が求める様にくしゃ、と衣服を掴む。瞼に感じた熱くて少し湿った接吻にぴくん…っと肩を揺らし、深く重なった唇の温度を感じでしまえば先程まで浮かべていたゆとりのある笑みなんて跡形もない。職業柄人の美貌や魅力に態々焦点を当てて見たりしないし、メンバーにだって同じだから彼も大目に見てやってたけど。…お前は自分の魅力を理解している質の男でしょ?なら少しは手加減してくれたっていいんじゃないの。でないと本当にこの熱で溶けてちゃうよ。大きな影に隠れているのを良いことに悩ましげに眉を垂らして、角度を変える度に震える睫毛は何度も切なく揺れる。…ああ、ダメ。そんなことしたら。ヒョンが可愛がってあげるから大人しくしてないとダメでしょ、やっぱりお前は悪い子だ。今頃皆はいつもみたいに眠っているのに、俺たちだけこんな。いつも使っているキッチンのはずが、明るい朝日に溌剌と照らされたリビングと切り離されて影を落とした其処は全くの別世界のようで。「 ……んぅ、…~…。 」不覚にも洩れ出てしまった甘く鼻から抜ける切ない声が空気に消えて、次第に肌が紅潮していく。天にも昇るような幸福感が心を満たして、どうするんだよ。彼だってこうなる前は普通の幸せを願っていただろうし、自分だって漠然と疑わずにいた。だからどんな手でも使って逃げられないようにこの手の中に堕としてしまおうって、それでもどうしても叶わないならば。普通の道を歩んでいく大きな背中を見送る夢だって、見た夜が何度かあったんだよ。なのにさ、お前はそんなものまで壊しちゃうの?…リップ音と共に離れていった唇はやっぱり名残惜しくて、触れ合う鼻先に自らもゆったりすり合わせて「 ─…ばか…、」熱っぽい吐息と一緒に絞り出したのは泣き出しそうなほど掠れた甘ったるい声。てっきり熱の籠った視線を向けられているのかと思いきや、此方を覗き込んでくる子犬の様な切れ長の双眸は予想に反するもので。すっかり蕩けてしまったブラウンの双眸で見つめ返すもののじわじわと涙の膜を溜めて光る瞳はどうしたって美しく、今度はぱちぱちと睫毛を上下させながら瞬きを繰り返し。気の抜けた笑みが視界を占領しては何処か呆れたような困ったような、何より愛おしさを滲ませた柔らかい微笑みを浮かべて。睫毛を伝う雫がなんだか勿体ない気がして、次に溢れてきた涙が頬を伝って落ちてしまう前に人差し指で救ってぺろ、と赤い舌で舐めてみる。…しょっぱい。お前が今までしてきた思いを煮詰めたみたい。「 そうだね、ご飯食べよっか。」首に回した腕は建前だけで紡いだ言葉とは真逆にぎゅう…っ、と離さないとでも言うかの如く抱き寄せ形の良い頭に手を置き赤子でもあやすようにぽん、ぽん、と撫でてやれば。腕を緩めて再び涙に濡れた愛おしい彼を見つめ直し、触れ合っている内に体温が上がりぽかぽかした手の平で濡れた頬を包み込み。「 …これからはもう、我慢したりしないでけんちゃな。だから今日は1日中一緒に居て、おやすみのキスまでしようね…? 」相変わらずの緩い笑みでまるで付け込むように囁き“ ヒョンとの約束だよ ”なんて勝手に約束を取り付けてしまえば、不意に─ちゅっ、と鼻先に触れるだけの口付けを落として。そのまま吸い寄せられこつん、と額同士を合わせて濡れた睫毛に甘い視線を注ぎ込み。これはね、契約のぽっぽ。だって恋人になった時点でお前に拒否権はないんだから。 )




  • No.32 by mg  2022-12-18 23:14:04 



( 彼越しに見たリビングの陽だまりに、ふと“ あの頃 ” を思い出す。騒がしい部屋、狭いシステムベッドから引き摺り起こされて、逃げ出したリビングの床に無造作に倒れ込んだ体。全身を包む陽だまりと、惚けた頭に響く四方八方から聞こえてくる話声、笑い声、物音?煩いったらありゃしないのにその陽だまりの空間を俺は心地良いと思った_。あの頃と同じ陽、今も昔も変わらない陽だまりのように、俺にとってのヒョンであり今は恋人でもある君と過ごす日々がこれから素晴らしく温かくなるといいな。…それに、ほら。やさしく頭を撫でてくれていた手が、自身の頬を包み、綺麗なその手を涙が濡らしていくのに。まっすぐに見つめた瞳は想いをありありと見せてくれる。ドキドキと胸が鳴る、まるで初恋のように可愛らしい鼓動が胸いっぱいに響いた。君のやさしい囁きは影のような暗い空間には似合わない。天使の君にはきっと陽だまりのほうが似合うから。「 ん、ありがとう…ひょん、...。はぁ~...、もう、ひょんがイヤだって言っても離すつもりないよ俺...っ。」ぐず、と泣きべそをかく子供みたいに唇を尖らすのに、やっぱり変わらずの気の抜ける笑みが心をそっと解してくれるんだ。可愛らしい戯れに、つい目元が綻ぶ。鼻先がくすぐったい。「 へへっ.....約束する、 」頬を包む細い手の上へそっと自身の手のひらを重ねる。擦り寄るように目を細めて、涙の跡はそのままなのに無邪気に八重歯を見せて笑うんだからもうちぐはぐだ。少しだけ晴れた視界に彼が映る。触れ合う額から伝う熱と、視界に入る自身の髪と混じった彼の髪の色。此方をじっと見つめる甘い視線を辿って、その奥の瞳に映る自分。ねぇはにひょん。約束する、これからはヒョンと一緒に生きるから、全部二人だけのものだ。ずっとずっと…なんて、気が早いかな。ねぇ、その美しい瞳の奥に俺を沈めて。奥深くに俺を溺れさせてほしい。_ 名残惜しいけど、一段落つくと途端に空腹が蘇って苦しくなる。切なそうに重ねた手と体を離すと、体の横で名残惜しさが残ったまま、片手だけは軽く繋がる。「 あ~っそうだまだ終わってなかったじゃん~!...お腹減ったよ~。 」フライパンの中を覗いては炒めている途中で最悪の結果になった食材に。落ちた菜箸を拾ってぽつぽつと呟きながらシンクへ。分かりやすく目に見えない尻尾を下げつつ、「 ヒョン、ゴメンだけどテーブル拭いてくれる?今すぐ持ってくから座ってていいよ。」渋々手を離すとちらりと彼を見遣ってから目元を腕で拭う。焦げてしまった部分を捨てて、新たに作り直さんと手を洗えばまた料理がスタート。ものの数分で仕上がったキムチポックンパを二つの皿に盛り付け、ふぅ、と満足気に額を拭ったところでどこからか微かに聞こえた物音。...ああ、そろそろ何人かは起きてくる時間かな。慌ただしく動きながらも確認した時計。すっかり部屋に広がった光は完全な朝を告げていて。)

  • No.33 by  jh  2022-12-19 18:43:16 






( 泣きべそをかく彼はなんだか幼い。影を落とす少し暗い視界でも分かる、先程よりぷっくり膨れた涙袋と赤い目元。自分より背丈もある屈強な男を守ってやりたいなんて思うのは間違いなく最初で最後だ。煩いくらい激しく鳴り響いていた鼓動も緩やかな脈拍を刻んでいたのに。一筋に光る涙の跡を拵えたまま尖った犬歯を覗かせて笑うものだから。人懐っこく目を細める姿にいとも簡単に胸が締め付けられてしまって敵わない。今まではそんな顔、1番見せたらいけない相手は俺だったのにね。今は涙もその笑顔だってこうして独り占めしている。天使は神との仲介や人々を導く役割を与えられていると何処かで聞いたことがあるけれど、俺がお前の手を引いて導いているのは紛れもなく禁断への道筋だ。それでもこの先に待っているであろう幸せに浮き足だってしまいそうなんて、口が裂けても言えないけど。今日した秘め事も、これからの秘密だって二人で歩んでいくなら悪くないでしょ?…約束の合意に柔らかく口角を上げては、濡れた頬を包んだ手に重なった掌が離れ自らもゆっくりと手を下ろして。─…お前が嫌だって言っても離してやらないなんて最初からこっちの台詞なんだよ、ミンギュヤ。遠のいていく体温が少し寂しくて、片手だけで繋がった熱を名残惜しそうに握り直していると空気を塗り替える様に降ってきた言葉。「 あ~…けんちゃなけんちゃな、食べれる所はあるよ 」悲惨な状態になったフライパンの中身を覗き込む。誰が原因かは一目瞭然にも関わらず相変わらず能天気に返すものの、内心は料理の途中でほっぽり出した認識はありつつも甘んじていた自覚はあり、今更になって現実を取り戻しては存在しないはずの耳や尻尾をしゅんと垂らしながら菜箸を拾う彼を眺めながら大人気なく年下の彼に手出しをした事に対して自嘲気味に苦笑いを溢して。繋いでいた手が離れるとよしよし、と気休めに少し高い頭を撫でた後「 あるげっすむにだぁ~ 」気の抜けた返事と共にシンクの縁に干していた布巾を濡らして絞り、足早にリビングへ。言われた通りテーブルを拭いていると何人かのメンバーは起床したらしい、微かに聞こえる物音は二人きりの時間の終わりを告げるもので。誰が起きてくるかな、なんて微笑みを浮かべながらキッチンへ戻り引き出しからスプーンを2つ取りテーブルに向かい合わせに並べるも、少し思案して席に着いた頃には隣り合わせに並んだスプーン。すると不意に薄鈍い足音が近付いてくるのを察知し、其方へ視線を移動させて。普段は丸く開かれた目が薄く細められている事から、リビングに来た目的は朝方の自分と同じで大旨目が覚めて水でも飲みにやってきたのだろう。「 お~スングァナぁ、」如何にも眠たそうな彼に声を掛けては案の定怪訝そうな表情を向けられるものだから笑ってしまう。朝っぱらからテーブルに待機して変に思われるだろうか。でもやましい事は…少ししかしてないから大丈夫。爽やかな陽だまりに包まれて上機嫌に頬杖を付いて。 )




  • No.34 by mg  2022-12-19 22:35:03 




( 昨日とは180度変わってしまった彼との関係性。目に映る景色は普段と何一つ変わらないからこそ、昨日までの自分がどのような立ち振る舞いをしていたかが全く思い出せない。遠くから聞こえた物音、やがてドアが閉まるような音が聞こえれば意味もなく背筋を伸ばして息を整える。意識せず普段通りを装えば装うほどぎこちなくなるような気がして、最早今の振る舞いが正しいのか正しくないのかすら判断がつかない。今はこの関係を二人だけの秘密として気を張っているけれど、ずっとずっと俺が想ってた彼の想い人が、まさかの俺で、それでいて通じ合えたという事実が…思えば思うほど嬉しくて堪らず、今すぐ叫びながらリビングを5周くらいし、そのまま宿舎を裸足で飛び出していけるくらいには感情が昂っているのだから、それを実行せずに口元を少しニヤケさせる程度に収められているのを褒めてほしい。小さな箱から初めての大きな舞台で紙吹雪を浴びて、息を呑む程の感動を味わったあの時よりも下手したら幸せだ。あに、絶対そうだろ。昨日までは彼との接触すら避けていたのに、今は不意なスキンシップに危惧することもない。ただ髪に触れられるだけで多幸感は膨らんで。あ~おっとっけぇ…俺のむのむ幸せだ...。思わず目で追う、布巾を取って手と一緒に濡らす動作も、ぺたぺたと向かったテーブルを言う通りに拭いてくれる様子も。ため息が出るくらい幸せで、ヒョンが可愛くて可愛くて仕方がない。一生続いていいよ、ハニヒョンとの時間。そう願うのに、俺ビジョンでゆっくりと映り流れていた時間は、ふと現れたメンバーの顔に急遽現実に引き戻される訳だけど。たんぽぽの綿毛みたいな髪を歩く度に揺らして、半分ほどしか目の開いてないその子が隣に来ては近くのコップを取ってとの声に。...“これ?” 違う “これは?” 違うって “これ、” 違うってばいつも俺が使ってん…ハァーチンチャもういい、とか謎に怒られるから...俺の方が本当にだよ!としょうもないやり取りに突っかかりそうになるが。キレ症と疑うこの子は平気でタメ口を使ってくるからいい気はしない。歳は同じだからってお前と俺とじゃ学年は違うだろ。言いかけた言葉を我慢して呑み込めばため息混じりに。二つの皿を乗せたトレイに新たにインスタントのスープを二つと飲み物を追加するとキッチンを後に。癒しを乞うようにテーブルへ向かうと、陽だまりに包まれた彼はやっぱり似合うと確信する。どうしてこうも見慣れたものなのに、恋ってものは何度君を新鮮にしたら気が済むんだろう。一瞬どこに座ろうか悩んで、とりあえず彼の前へと置いた皿。「 ヒョンっ待たせてごめんね。焦げは取ったけど、もし不味かったら食べないで。美味しく作ったつもりだけど、」 彼を上から見下ろしている間に、指定されている席に気づくと堪え性なく頬は緩み。残りの皿と自分の分まで置き終えると、椅子を引いて腰を屈ませる...昨日までは許されなかった特等席へと座る前に、さりげなく彼の後頭部の寝癖をさらりと指先で辿り。光に透き通るような肌も、何度もブリーチを重ねたのに天使の輪を作る髪の毛も。全部愛おしくて堪らないよ、どうしようか。「 ... ん、どうぞ召し上がってください。 」自分が食べる前に彼の反応を見たくて、今度隣で頬杖をついて眺める姿勢に入ると幸せそうに目を細めて。)

  • No.35 by  jh  2022-12-20 03:49:30 






( 影に覆われた一角で抱き合ったのが嘘みたいに温かい日差しを浴びながら大人しく待っていると、キッチンの方から微かに聞こえてくる簡素な話し声。此処からは綿毛みたいな寝癖と華奢な背中しかよく見えないけど、何故か妙に楽しそうに見えて…。あれ?おかしいな、こんな事昨日まで…あにゃ、つい数時間前まで思わなかったはずなのに。確かに二人共自分の可愛い弟達なことに変わりはないんだけど、理屈じゃ説明出来ない嫉妬の様な何かを胸の片隅に早速発見してしまった。はぁ、おっとっけ。悩ましげな言葉を頭に反芻させ頬杖を付いた方のパジャマの裾で口元を隠して。彼に対する認識は思いが通じ合う前とは明らかに異なって、“ ミンギュは俺の ”なんて子供染みた独占欲が顔を出し始めたのだ。恋愛感情はおろかこんな感情はどうやって取り扱っていいのかさっぱり分からない。そりゃそれなりにこの職業をやってきたんだ、可愛らしく伝える事だって出来るには出来るけど、それにしたってあんなに些細な会話だけで。これってかなり女々しくないか、…やぁ、先が思いやられるな。─色々な思考が飛び交うものの飽くまで涼しい表情は崩さずそんな光景を眺めていると、トレイを両手に持った愛しい彼がやってきて。ぱたぱたと足音を立てて料理を持ってくる姿は飼い主の元にフリスビーを咥えて戻ってくる犬のようで、この庇護欲と加虐心と安心感が綯い交ぜになった様な好意は、世界中どこを探してもお前にしか感じられない感情なんじゃないかな。本当に不思議だ。思わず好きだなぁ…なんて想いがつい溢れてしまいそうになるから油断ならない。頬杖を付いていた腕をしまって膝の上に置き、ついさっきまで触れていたのに待ち焦がれた様に綻んだ顔で見上げて迎えては目の前に置かれた皿の中身に視線を落とし「 わぁ~…!凄く美味しそうなんだけど?スープも用意してくれて…ヨクシ~、うりみんぎゅ 」お世話抜きで一度焦がしてしまったと思えない仕上がりに、空腹も相まって見開いた双眸を輝かせて。輝いた瞳のまま再び視線を上げると何処に座るか迷う素ぶりを見せる彼に小さく笑いを溢す。可愛いなぁもう、ヒョンの隣に座りな。なんて言葉が脳裏に浮かぶが、あからさまに甘やかす様な言葉を紡げばキッチンで水を飲んでいるあの子に冷ややかな目で見られるのは目に見えているから。今は敢えて横目で捉えるだけに留める。思惑通り隣の席に腰を下ろした…と満足気に口角を上げる前に後頭部の髪にさりげなく触れた彼の指は特別な関係を密かに示している様で。たった一瞬で幸せが胸に広がる。こんなに幸せでいいのかな。不意に頬杖を付いて幸せそうな笑みを浮かべながら自分を眺めている彼と視線が合い、自分と同じ気持ちなのが容易に分かってしまって少し照れ臭い。同じ様に緩んだ口元で笑いかけると「 ネ、いただきます 」漸くスプーンを手に取って皿に盛られたポックンパを一口掬って。はむ、と効果音がしそうなほど口いっぱいに頬張ればキムチの味が口の中に広がって、野菜の食感が空腹に染み渡り頬を膨らませてもぐもぐ咀嚼し。「 ん~~…っ、マシンネ~。ほっぺが落ちちゃいそう 」半月型の目を更に細めて心底幸せそうに膨らんだ頬を緩めて呟きつつも食欲にかまけて早々ともう一口。「 ねぇ、美味しいから食べてみて? 」首を傾けながら隣の彼を瞳に映して食事を促しては自然と逞しい二の腕に触れる。キッチンの方から綿毛の様な髪を揺らして帰ってきたその子から先程よりもっと怪訝そうな眼差しでふと何を食べているのか聞かれるものの、見れば分かるから恐らく聞きたいのはそういう事じゃないんだろう。2人仲良く並んで座っている事とか、色々ツッコミ所はあるんだろうけど。“ キムチポックンパ、お前も食べる? ” 機嫌よく問いかけるも返ってきた返事は勿論NO。クレ?と軽く返し、また自室に戻っていく背中を見送ればリビングに再度二人きりの空気が流れるものだから。なんとなく、ただなんとなく気になっていた事をスープを少し啜った後に「 …さっき、何話してたの…?スングァナと。」と囁く様に聞いてみて。単調な遣り取りだったのは何となく分かっているけど、ほんのちょっと気になっただけ。睫毛を僅かに下向きに伏せて半透明のスープに視線を落としたかと思えば彼の横顔にちらっと視線を向けて、微かに唇を尖らせながら。 )




  • No.36 by mg  2022-12-20 14:01:41 




( 本当に心臓がいくつあっても足りないな。ただ大好きな彼の為に美味しい料理を作ることを努めただけ。特別なことなんて何も無いのに、目をまんまるくしてキラキラと輝かせる様は一角での行為を忘れさせるくらいあどけなく愛おしい。~~可愛い、大好きだ本当に。彼の一挙一動に胸が高鳴るんだ、不意打ちなんて幾つもされたらそのうち卒倒してしまうかもしれない。可愛らしく柔い笑みを携えた彼を微笑ましく見つめながら、此方を見つめていた目が皿へと落とされ、スプーンを手に取る様子までじっくりと目で辿り。…大丈夫かな。口に合うかな?スプーンが彼の口へと運ばれると、顔を覗き込んで 「 どう? 」尋ねるのだけど。すぐに答えてくれた感想と、それをありありと表した表情にほんの少しの不安は何処へやら。頬を膨らませて幸せそうにもう一口頬張る様子だって可愛くて堪らず、口元の緩みは抑えられないまま。はぁ。もうずっと眺めていたい。キッチンに居る綿毛さんを記憶から飛ばしたまま、にやにやと幸せに浸っていたのだけど。ふと腕に触れた彼の手に促されるとぴくりと背筋を伸ばし、一瞬瞳の色を見つめてから視線を皿へ落とした。まぁ食欲には抗えない。用意してくれていたスプーンを手に早速一口運ぶと、ほんの少し目を閉じて味わう。んー...ん、美味しい。我ながら良いものを作ったかもしれない。その間聞こえた足音にもぐもぐと咀嚼しながら軽く視線を綿毛さんへと向けた。明らか怪訝そうな視線を向けられるも、その場で分かりやすく疑問を尋ねられるよりいいだろう。素っ頓狂な表情を浮かべてやる。隣の横顔と綿毛さんとを交互に見遣りつつ、もう一口大きめに頬張った所で内心早く二人きりになりたいから帰ってくれ...!と乞う。思いが通じたのか、最後までやや怪訝そうな綿毛さんがあっさりと退散する背中を見送ると心の中でガッツポーズ。遠のいていく足音はまた二人の空間が訪れたことを示唆していて、満悦に手に取ったコップへと口を付ければ…ふと掛けられた言葉に目を丸くする。「 ぉ? 何って、 」数秒前まではご機嫌だった彼の声とは若干違うトーンに まさか、と意外な心当たり。目を見たいのに視線が合わないのは睫毛の長さが伺えるからで。コップを置き、それでも控えめに顔を覗き込んでみれば少しだけ向けられた視線と分かりやすい表情に心当たりは確信に変わった。「 えぇい、なんて事ないよ。ただスングァニが俺のいたとこのコップ取って、って言うからさ。渡したら違うのだってキレるのアイツ。はぁ~っ。」何となくパボなやり取りを晒すのは気が引けるが、彼を見つめる眉を下げた表情はやや不安げだ。「 …変なことじゃないよ、」恐る恐る付け加えた言葉は彼がどうして話の内容を聞いてきたかが分かったから。あいつのことなんか眼中にない。当たり前だろ?そう言いたげに食事する手を止めてまでじっと見つめて。)


  • No.37 by  jh  2022-12-20 20:20:20 






( バタン、扉が閉まる音と同時に心に掛かっていた靄がすぅっと晴れて差し込む朝日のように再び光を取り戻すものだから。やっぱりヤキモチだったんだな、なんて何処か俯瞰的で。ただの日常会話だっていうのは何となく予想出来たし、こんなふうに一々聞いていたらキリがないんだけど、それでも目を丸くしてコップを置いた後真摯に答えてくれた彼が愛おしくて仕方がない。こんなふうにどうしようもない独占欲を抱いているにも関わらず、それでもお前は真っ直ぐに向き合ってくれるんだね。不意に不安気に眉を下げて自分を見つめる切れ長な目と視線がかち合う。だってさ、お前は今昇っている太陽みたいに人懐っこくて皆から愛される子だから。その射抜くような真っ直ぐな視線を独り占めしたいと思うのは不思議なことじゃないでしょ。俺だけ、なのかな。スープカップをテーブルに置き二人きりの空間が再来したことで少しの沈黙が出来れば、それをすぐに破る様にして何処か安心した様に頬を綻ばせて。「 そっか、…よかったぁ 」思ったより間延びした声が漏れ出てしまっては今になって大人気なく問いかけた内容が気恥ずかしく感じる。脳と表情筋が直結してるのかってくらいすぐに顔に出てしまう子だから、その言葉が真実だっていうのは考えるまでもなく分かりきってることだ。結果的に少し意地悪な質問をしてしまったかもしれないけど。そんなお前が大好きだよ。彼の口から紡がれる思っていたより大分無益なやり取りに笑顔を取り戻しせばくすくすと笑い声を溢し、捨てられた子犬の様な両目で恐る恐るといった様子で付け加えられた言葉に少し首を横に振る。変なことを聞いたから不安にさせちゃったかな、ダメなヒョンだなぁ。「 あにゃ、疑ってた訳じゃないんだけど…ちょっとヤキモチ妬いちゃったみたい。ミアネ 」悪怯れる素ぶりこそないがいつものように緩んだ口元ではなく控えめにきゅ、と口角を上げて謝罪をぽつりと。それから徐に手を伸ばしたのはテーブルの下に隠れた筋肉質な太もも。「 …、恥ずかしいから、これも2人だけの秘密だよ…? 」彼がこんな事言いふらすはずもないのは分かっているものの、やはりあんな些細な事で妬いたなんて誰にも知られたくないもので。知っていていいのは目の前に居る恋人だけ。誰もいない静まり返ったリビングでこそこそと隣の耳元で囁きながらも照れ臭そうにはにかむと、太ももに乗せた手の平をすりすりと這わせてゆったり撫でて。束の間乗せていた手を退け再びスプーンを持ち直し「 やぁ~、こんなに美味しいのに冷めちゃったら勿体ないね。食べよっか。」と先程の唇を尖らせていた態度は何処へやら。へら、といつものように緩んだ笑みを浮かべつつもまだ完全に満たされていない空腹に任せて再度一口頬張り、食事を再開して。 )




  • No.38 by mg  2022-12-20 23:13:03 





( 一瞬訪れた静寂は俺ら以外のもう一人がこの場から去ったのを確実にするためで、やっと肩の荷が下りて数分前よりも張っていた気は抜けるものの。今は隣の彼に全意識を集中させ、言葉だけじゃなく表情まで使って想いを伝えるのに必死だ。疑われるような変な行動は一つもしていないのにも関わらず、彼の気持ちがよく理解出来るからこそ真摯に彼と向き合って。とくとくと早めの鼓動を感じながら思い出す。俺自身、他のやつと居るハニヒョンを見る度に何度も不安に駆られて嫉妬心を抱いたもの。誰のものでもないヒョンを俺のものだって勝手な独占欲すら抱いてさ。俺が一番、ハニヒョンと俺としか知らない話をたくさんしたいし、二人だから面白いツボの合う話だとか、二人だけしか知らない景色をたくさん記憶に残したい。恋人という関係になった今だってその感情が無くなった訳ではなくて。彼が自分のものになったからこそ嫉妬心は敏感になりうると思う。不安に揺れる瞳を覗く綺麗な目が、些細な蟠りを解くようにふっと細められれば一気に胸に広がるあたたかい安堵。彼の気の抜けた声が何事もなく前に進めたことを暗示し、一瞬の時だったが張り詰めていた空気が和やかになる。心地いい笑い声を耳に苦笑いを浮かべて へなへな、とでもいうように背もたれに預ける体。「 …謝ることじゃないよ。ひょん、ヤキモチ焼いてくれたんだ。 」少し気を張ってしまったけど、当たり前の感情に謝る必要なんてないよ。むしろ気が休まって落ち着いて知ったのは “ハニヒョンが嫉妬してくれた” なんてちょっと気持ち悪いと思われてしまうかも、そんな喜ばしい感情だったから。何はともあれ彼の笑顔を見られて良かった。俺の不安を汲み取ってくれたのか、わざわざ謝ってくれるヒョンは優しいに越したことはない。満足気に改めて食事を再開しようとしたが、視界の端で動いた手を視線で追うと自身の太ももに乗せられるから。何度か瞬きを繰り返して、きっと後に続けられる言葉を待つ。_...ああ、本当にこのヒョンは。口を寄せるのが分かると、自然と彼の方へと顔を寄せて。こそばゆい吐息と囁かな愛しい声に肩を上げては。「 …ん~、たよなじぃ、こんな可愛いこと言う訳ないじゃん。」どうしようもなく愛おしくてたまらない、とくしゃくしゃに笑う。なんたって、絡んだ視線の先で照れくさそうにはにかむ彼は…世界でいっちばん可愛いと思う。眉も目尻も下げて、どこかあどけなく目を細めるんだ。…俺はこの感情をどうしたらいい? 太ももを這うその手だって、…ああもう本当に。くすぐったくて心地よくて…モンガ、変な気持ちになるから! 思わずその手の上に自分の手を重ねようとしたらタイミング悪く退かされてしまった。うう。悲しい。彼が逸早くスプーンを手に取り食事を再開する様子をしゅん、と上目に見つめて。「 ヒョン~っ。」耐えられず愛おしさが爆発した俺は、腕を彼の肩に回すと邪魔にならない程度に軽く抱き寄せて。首元にぐりぐりと顔まで押し付けて胸いっぱいに満たす彼の匂い。大好きで、大好きでたまらない。ずっとくっついていたいけど、流石に食事の邪魔までしてはいけないとすぐに腕を解いて離れれば両手で顔を拭うついでに髪までかきあげて。「 …ああだめだ俺、ヒョンのこと好きすぎてどうにかなりそう。」困ったように笑うと、自分もスプーンを手に取って食事を再開し。)

  • No.39 by  jh  2022-12-21 05:33:20 






( 温かい太陽光に包まれて懸命に懸念を取り除こうと寄り添ってくれる、お前は本当に優しくて温かいね。俺が勝手に妬いただけなのに。緊張が解けた様に背もたれに預けた逞しい体はちゃんと向き合ってくれた事を示してくれているようで。鼻にかかった声で紡ぐ甘い言葉と共に凛々しい目鼻立ちを崩してくしゃっと笑う彼に、ときめかない子がいるなら寧ろ連れてきて欲しいよ。笑うと現れる目尻の皺とか、自分とは真逆に釣り上がったまま細められる両目。形のいい唇から覗いた犬歯だって全部可愛くて。一口、また一口と口に運んでいる内に空腹は大分満たされたはずなのに、食べちゃいたいくらいには彼に骨抜きな訳で。…ほら、今はまだ誰が来るか分からないリビングだから、なんて心の中で言い訳をしつつ表情から悟られないように咀嚼するので精一杯。多分今手を重ねられたらもっともっと触れたくて我慢出来なくなってただろうし、…しゅん、と存在しない犬耳を下げて此方に可愛らしい視線を向ける彼を横目で捉え胸を痛めながらもすぐに手を引っ込めた自分を取り敢えず褒めてやる。そんな葛藤を知ってか知らずか鍛えられた腕で肩を抱き寄せられ、更には首元に顔を押し付けてくるものだから、思わずぴくりと肩を揺らし。あー…チンチャ。どうしてこうも容赦なく胸を突き刺してくるのかな、お前は。せめて食べ終わるまで抑えようとしていた愛しさが再び溢れ返ってしまい「 あぁ~…みんぎゅや、食べ辛いって 」なんてくすりと笑みを溢すも歯切れ悪く返したのは明らかに心拍数が上がっているから。応えるように首元にある髪に頬擦りをして腕が解けると同時に離すと、顔を拭って髪を掻き上げるよく目にする動作。そんな動きにも胸が高鳴ってしまうのはきっと自分と同じ気持ちを彼が吐露したせい。“ んふふ ”意味深な笑い声を溢しては最後の一口を飲み込みあっという間に綺麗に完食。「 美味しかった~、ごちそうさまでした 」満足気にスープカップと皿を重ね、ふと隣の彼に視線を向け掻き上げ損ねて垂れている横の髪を掻き上げながら撫でて。…あんで、こうして触れると愛おしいのは抑え切れないみたい。やや奥二重気味の目は下から見ると二重がよく分かるから尚の事可愛い。睫毛を垂らして笑みを浮かべつつ覗き込んでじっくり見つめては「 …どうにかなってくれないの…?俺もみんぎゅが好きで堪らなくて、どうにかなりそうなのに…。」と少し追い詰めるような甘ったるい声色で。逃すつもりはないとでも言うかの如く視線離さず絡め続け、徐に伸ばした手は彼の顎へ。まるで本物の犬でも可愛がるように人差し指で顎の下をすりすりと撫でながら自らの唇を舐め赤い舌を覗かせて。「 …この後ヒョンの部屋、おいで。」柔らかくも低めの声で誘いの言葉を近距離で囁けばゆったり目を細めて笑いかけ。…途端にぱっと手を離し寄せていた身体も潔く離せば余韻など残さず緩んだ笑顔でえへへ、なんて子供染みた笑い声を残してテーブルから立ち上がる。食べ終わった食器をキッチンまでそそくさと運んでは彼の方をチラリとも見ないまま通り過ぎてはリビングの扉を閉めて。───…ぼふっ、自室に戻ると今朝起きたままにしていたベッドへ倒れ込む。数時間まであれだけしていた悪戯も関係性が変わった今、少しの悪戯も幾つもの意味を含んでいるからか左胸はまだ小気味良い心音を刻んでいて。…ちょっと強引すぎたかな。それに洗い物、した方が後で楽だったんだけど。今日はそんなのどうでもいいんだもん。だって早く完全に2人きりの空間でいっぱい話して触れたいと思うのは好きなら当然でしょ?そんな思考を巡らせてはもぞもぞと意味もなくベッドを整え。 )




  • No.40 by mg  2022-12-21 20:30:33 



( 柔くて耳に心地いいその笑い声が大好きだよ。彼は少しだけ鬱陶しいような素振りを見せるけど、俺がくっついても嫌がらないことをもう知ってしまったから、断然胸に残るのは満足感。用意した料理を最後まで平らげてくれた皿を見ると、返事の代わりに口角をほんの少し上げる。ちゃんと食べてくれた。嬉しいなぁ。食器の重なる音を耳に、自分も早く食べてしまおうと味なんか関係なくなった食事を急いだ。昔よりもだいぶ長めにカットされた髪は煩わしくもすぐ垂れ落ちてきてしまう。彼の綺麗な髪の毛の一本一本は大切なのに、俺の髪の毛には一々構ってられないよ、と無視をしていたのだけど。視界に肌色が入ると、触られるのかなと意を決しつつスプーンをまた口へ。まるで子供が親にされるように大人しく、手のひらの温もりと優しい動きを感じて。その後の言葉を期待しながら覗き込む目と視線を合わせると、またもや心臓に悪いときめき。綺麗に生え揃った睫毛が上下する様に見とれたまま、何か言わんとするも咀嚼したままでは答えられない。…ヒョンも俺を大好きで居てくれてる。その事実に堪らず想いは高ぶるから愛ってキリのない無限拡張だ。どうにかなったところで困るのはハニヒョンだからね。これ以上俺をおかしくしないでとすら願うように、じっくりと絡まる視線に後退り身を引いた。…本当はそれ以上をも望む自分がいることは…ヒョンに言わないでおこう。耳まで溶かすような甘ったるいその声音は、間違いなく俺しか知らない色。彼の目だけを見つめていたから、顎に触れた指先に気づかずぴくりと肩を揺らしては。すぅと肌を撫でていく感触が焦れったくて目を細めた先、彼の心地いい低音が鼓膜を震わせる。…なんたって、俺の反応を分かってやってるんだこのヒョンは。唇の隙間から覗く舌がその形を辿る様を見遣ればなぜか背筋がぞくっと痺れる。頷く以外考えられず「 …っ、ネ、ネー…。」ごくりと嚥下した後首を数回縦に振った。…昔から 来る者拒まず去るもの追わず そんな人だった。猫のように淡々と、気分屋で。人に執着しない姿は関係の変わった俺を前にしても尚変わらないみたい。先程感じたはずの色気は何処へやら。最初から扉から閉まる最後まで目で追っても一度も視線は絡まないまま、リビングに残される。…パタン。本当にこのヒョンに狂わされたらどうなるんだろう。悪くないな、と思うのは既に相当狂ってる証拠かもしれない。暫く茫然としていたが彼の香りが消えた後急いで残りを平らげ、皿を持って立ち上がり、シンクに洗い物を…置いておくことはできず、今すぐ彼の元へ飛んでいきたい気持ちを抑えて調理器具やら皿やらを手際よく洗ってしまう。水切りラックに置き、手についた水を払い。リビングに出てきてテーブルの横を通り過ぎようとした所で居た堪れず布巾で一通り拭いて…。数分後にようやくリビングを飛び出した。_彼の部屋に向かうまでの間、洗面所に寄って顔を洗うなり歯を磨くなり、調理の際に跳ねたのか油臭い衣服を変えるべく自室に寄り、此方をものともせず布団に潜るジフニヒョンを生存確認した後…慌ただしく辿り着いたドアの前。部屋着であることに変わりないがせっかく服も変えて心機一転だというのに、呼吸を整える間も惜しく。ノックの後少しだけドアを開ければ顔を覗かせるが、隙間から彼の存在を確認すると…待てる訳なんかなくて。嬉々として中に入るとパタンッとドアを閉めた。「 ~!待たせてごめん! 」まるで大きい犬が飼い主の元へ駆け寄るように。彼をも巻き込んで飛びつかん勢いでベッドに寝そべればぼふんっと世界が揺れる。彼の香りで満たされた空間、何もせずとも胸がいっぱいでとくとくと鼓動は早まる。彼の横で待ち望んだ視線を合わせると、へにゃ、と自然と溢れてしまう締りのない笑み。「 来たよヒョン。会いたかったよ~… 」彼の顔にかかる髪を指先でやさしく避けてやる。そうすると鮮明に伺える瞳に、自然と惹き込まれていくんだ。)

  • No.41 by  jh  2022-12-22 04:41:06 






( ぱたぱた、と足を揺らしシーツを蹴り上げる。早く来ないかなぁ、と普段使っている枕を抱きしめたところで服の裾が視界に入り自分がパジャマ姿だったことを思い出し。部屋にまで呼び出しておいて流石にこれで迎い入れるのは如何なものか。徐にベッドから起き上がってパジャマを脱ぎ、クローゼットを開くといつも宿舎で着るようなスウェットが掛かったハンガーを除けてオーバーサイズのパーカーと部屋着のボトムスを取り出して。パーカーに早々と着替え少し跳ねた寝癖を隠すようにしてフードを緩く被り、脱ぎ着したせいで少し乱れた前髪を直して鏡を確認しながらさっきよりはマシだろうと。…あにゃ、ただあの子と部屋で喋ってまったりするだけなんだけど?それなのに着替えて鏡まで確認するなんて随分と浮かれてるみたいで、まるで付き合いたての恋人が部屋に来るからそわそわしてるみたいじゃないか。まぁ事実には変わりないんだけど、一人でこんなことを考えている時点でなんだか居た堪れなくて…再びベッドにぼふ、と身を沈める。壁に掛かった時計が無機質な音を刻む中待てど暮らせど中々開かない扉に、彼の性格上後片付けをしているのは容易に予測が付き、早くこの部屋で二人きりになりたかったとはいえ一人でさせてしまったことに申し訳なさを感じて。どうしようかな、と暫しの間思案している内に耳に届いたのは軽快なノック音。それだけで心臓が跳ねるんだから今日の俺は絶対におかしい。“ ネ~ ”と返事を返すと同時にドアが開き、待ち侘びていたとばかりに直様顔を上げ愛おしい彼の笑顔が視界に入ればぱあっと表情が明るくなり。どうせお前のことだから洗い物もやってくれたんでしょ、なのに待たせたことを謝るなんてどれだけ律儀で優しいの、とか。服、態々着替えてきたのが可愛くて仕方ないとか、色々思うことはあるんだけど。そんなふうに声を掛けている暇もなく大型犬のように無邪気に駆け寄ってきた姿を目で追っていたものの突如視界が揺れ「 ぉあっ、」と間抜けな声が洩れる。迷うことなく隣に寝そべった彼が浮かべる締まりのない笑みが、他でもない自分だけに向けられているという事実が幸せで嬉しくて、釣られるようにふにゃんと締まりのない笑みを溢して。「 さっき会ったばっかりじゃん、…俺も会いたくてそわそわしてたけど…へへ 」本音をぽろっと溢しながらも、さっきの振動でまた顔にかかった髪に手の体の大きさの割に短い大好きな指が触れると照れ臭そうに笑った口元をパーカーの余った袖で隠し。そのまま絡み合う視線に幸せそうに目尻を垂らすものの、はたと口を開き「 ねぇ、後片付けしてくれたんでしょ?こまうぉ。ちゃんとお湯で洗った?手冷えてない…? 」余った袖から細く骨張った両手を出し彼のもちもちした手に重ねて握り、少し眉を下げて。にぎにぎと優しく揉みつつもまつ毛を下に伏せて手の甲に視線を注ぎ、何やら考え込む仕草を。暫くしてふと何かを思いついたように断りも入れず勝手に袖を捲って彼の腕を曝し、其処へ顔を寄せると自動的に手元が緩いフードで一瞬隠れる。その瞬間手首に短く口付けを落としちゅ、と。口付けた手首の少し下に、何を思ったのか上目で切れ長の目を見つめながら徐に舌を出して舐め上げたかと思えばそのまま──ぢゅ…っと強めに吸い付き。唇を離して手首の骨の丁度下辺りに紅い跡が付いたことを確認しては、満足気上がる口角。「 …~ん、…いい子のみんぎゅにご褒美。腕捲ったらキスマーク見えちゃうから、洗い物とか家事の時はヒョンに任せて。」“ 有効期限は消えるまでだからね? ”そう続けるご機嫌な表情は相変わらず悪怯れる様子なんて一切なく、それどころか膝を曲げたり伸ばしたりぷらぷらと交互に宙を舞う足。ご褒美と言うにはちょっと強制的だけど。こうして悪戯っぽく笑ってその黒い瞳を見つめるのは何回目かな。…こんなことするの、お前にだけだよみんぎゅや。だって皆に見つからないよう隠していれば二人だけの秘密になるから。 )




  • No.42 by mg  2022-12-22 22:12:50 



( 複数部屋が並ぶフロア、一人部屋の彼の元へ足を運ぶなんて昨日までは考えられなかったこと。もちろん訪れたことがない訳ではないが、今こうして一つのベッドに二人で寝転んでいるのを昨日の俺が知ったら失神しているかもしれない。なによりいちばん愛おしい君が、同じ意を込めた瞳だけを此方に覗かせる。胸がきゅんと締め付けられるような甘い言葉を紡いだ口元はパーカーの袖に隠れてしまって。ほんの少し触れただけなのに、とろんと溶けるような甘ったるい笑顔…ずるいよ。…っはぁ~~。可愛い…っ!“ だいすき ” なんて幼稚な想いが風船みたいに膨らんでいって、彼と視線を合わせる俺の目はきっとハートになってる。横幅ですら少し窮屈なベッドは、普段から斜めに寝るしかない俺にとってはもちろん縦幅が足りないのだけど、そんなことも今は気にならないくらいに彼しか見えない。単語の一つが発された瞬間 耳を澄ませてすぐ聞き入れる姿勢になると、……ふふっと漏れ出たのは微笑ましい笑み。俺が来るまでの間、気にしてくれてたのかな。後片付けなんていわば俺が好きでやってるだけなのに。心配してくれている彼の優しさが沁みると次に広がるのは愛おしい想い。「 んーん、したいからしたんだよ。けんちゃなよ~。いつものことでしょ? 」袖から自身の手へと重なった手、冷えていた訳でもないのに、彼の気持ちが沁みるようであたたかい。柔く揉んでくれる様子と視線を下へと落とす彼の目とを交互に見る表情はいかにも“幸せです”といった締りのない顔のまま。…だったのだけど。ふと何か考え込む様子にきょとんと眉を下げ、声を掛けようか迷った挙句 「 …ハニヒョン? 」 現実へ連れ戻すように名前を呼んだ。すると何を思ったのか手が離された途端に袖を捲られ、意図が読めずさらにきょとん。晒された腕に顔が寄せられたのは分かった、彼が新しく着替えたパーカーのフード越しに。然しあまりにも予想外で、慌てて伸ばした片手は彼のフードへと。顔が分かるように少し上げれば、次いでに何をしようとしてるかまで分かってしまって。「 ぁ…っ、い、」肌の上を生暖かい感触が這い、ぞくっと手首から全身に伝うように粟立つ。刹那走った甘い痛みに、思わず眉間に皺を寄せては…。「 は、ぁ?えっ、うぇー…、 」まだ少し熱を持った手首の下辺り。頭の中を疑問符が埋めつくしていきながら恐る恐る見れば…予想通りの赤黒さ。「 !?ご褒美だってぇ…?あに嬉しいけど…突然付けることないじゃん~!チンチャヨ?本当にやってくれるの?あ~俺腕も捲れないんじゃ…うう、バレたら責任とってくれるの?」初めての、愛してやまない彼からの所有痕。それはもう…ご褒美以上のものだけど。なんたってバレるかどうかのギリギリな所に付けるのは…やっぱり“ユンジョンハン”でしかない。…一体どうしたら。腕捲りの癖はかなりついてるし、このヒョンは家事をしたがらない。ということは…バレる可能性、大!それを目的に付けただなんて、言わないよね?あにじ、俺に全部任せてしまった責任を感じてのことかなって予想はついてるけど。相変わらず悪怯れる様子は微塵もないのに恨めしくないのはどうしてだろう。それ以上に好きが勝ってるからだな。と瞬時に解決したところで、じっ…と彼を見つめると。伸ばした片手で彼を抱き寄せて、より体温を感じられる距離に。好き勝手動く足を封じてやる、とでもいうように自身の足を絡ませるとすり、と肌を撫でて触れ合わせ、透き通るような茶の瞳から目を離せないまま静かに早まる鼓動を聞く。「 …ハニヒョン、 」なんだかんだ耳まで真っ赤にして。潤んだ瞳は変に火照ったせいだろうか。そっと指先から手のひらを彼の頬に這わせると、痕を付けてくれた赤い唇を親指でなぞっていく。「 ご褒美のほかにさ、俺がヒョンのものだって証くれない?… 」ヒョンからくれないなら、俺からあげようか。ねぇいい?なんて。思ったよりも頬の熱さを手のひらに感じると小さく口角を上げて。)

  • No.43 by  jh  2022-12-24 02:52:23 






( 発した言葉に対して注意深く聞き入れてくれるその姿勢が好きだ。鼻にかかった普段より少しだけ高くなった声が鼓膜を擽ぐるのは凄く気分がいい。狼狽が滲み出てるその表情だって大好きなの、お前は自覚もないんだろうな。緩み切った頬をそのままに目尻を下げコロコロと変わる面持ちを見守る露骨に甘い視線は“ おれのみんぎゅや、かわいい ”と言っているようなもので。黒い瞳の奥にハートが浮かんでいるんじゃないかって自惚れてしまうくらいには人懐っこい彼からの愛情をひしひしと感じ、応えるように幾度となく交わってきた視線を飽きもせず甘ったるく交わらせ。これってかなり…バカップルっぽいんじゃない?頭の片隅に浮かぶそんな俯瞰的な思考すら相手が彼となると幸せに変換されてしまう。突然残った手首下の印に戸惑った様子で投げかけられる問い掛けに“ たんよなじぃ~ ”なんて呑気な返事を。仕事や公共の場はまだしも、あの子達にバレたっていくらでも弁解の手札はあるんだから。と思い巡らせているとなにやら形の良い鋭い双眸にじっ…と目つめられそれだけでとくん、と心臓が高鳴り出す。長い腕に抱き寄せられたかと思えばゆらゆらと遊ばせていた足まで封じられてしまい、絡め取るように脚を擦り合わせられてはいよいよすっぽりと彼の中に収まってしまう。すり…と肌を撫でられる度ぴく、と膝を揺らして縺れた足から逃れようと腰をもぞもぞと動かすもののやはり長い両脚からは逃れられず、それどころか射抜くような熱い瞳にも捕まったまま。少し舌っ足らずの低い声が自分を呼ぶと徐々に頬に熱が集まるのを感じ、堪らずシーツに皺を寄せながらも首やら背中やらに腕を回して抱き締め返す。逞しい身体とは裏腹に子犬みたいに潤んだ目とか、行動の割に真っ赤に染まった耳も、俺を夢中にさせるには充分過ぎるんだ。しかもあんなに想い続けていた子とベッドの上で向き合っているなんて。最早脳内は彼でいっぱいに満たされて、正常な判断も付きそうにない。心地良さそうに目を細めて頬に這う手へ擦り寄っては、熱い手の平から伝わる体温が自分のものとあまり大差がないことに気付いてしまうと小さな羞恥心が湧くも、その親指が唇をなぞると鳴り響く鼓動で思考が淡く上塗りされていく。「 ん~…?んふふ、…欲しいの? 」普段からの緩い口調は最早目の前の彼への煮詰めたような愛情を隠すつもりもなく甘々とした声で。証、と言われると自然に目が行くのは口角が上がった唇。「 …いいよ。じゃあ…俺がいいって言うまで目、瞑ってて 」含みたっぷりに囁くと首に回した手を耳朶へと添えてふにふにと捏ねて遊びながら。顔を傾けながらゆっくりと距離を縮めて顔を寄せ、唇が触れる寸前でぴたりと動きを止めちゅ…と軽い音を立てて口付けたのは唇ではなくすぐそばの口の端。絡んでいる長い足を自らの足で挟んで摺り合わせつつも、小気味良いリップ音を響かせながら頬、顳?、接吻を落としていくと身を乗り出し耳裏へ控えめに突き出した唇を押し付けて。れろ、と舌を這わせた後先程より強く肌に吸い付き、皮膚が薄い其処へ念入りに繰り返し舌と唇を使って吸い上げ。…ちゅむっ、仕上げに落としたキスを最後に漸く埋めていた顔を離すと思惑通り耳裏にくっきりと残った赤黒い印。濃く刻み付けた其れは真っ赤になった耳よりも際立って主張していて、暫くは消えそうにない程。「 …~はぁ、綺麗に付いた。お望み通り、お前はヒョンのものって証。 」耳元で悪戯に笑い“ イロケ~、ミンギュからは見えないけどね ”なんて意地悪くも甘さを込めた囁きを。証なんだから好きな場所でいいんでしょ?とでも言うように。臆面もなく首を傾げて笑みは崩さないまま「 ねぇ、ヒョンには…?せっかくお前のものになったんだから好きにしていいんだよ。 」悪戯っぽく向けていた視線は柔らかく包むような眼差しに。そりゃ何にせよ自分が有利なのに越したことはないんだけど。世界中の何よりも誰よりも大好きなお前とは公平でいてあげる。 )




  • No.44 by mg  2022-12-25 00:17:32 






( / こんばんは ! お世話になっております。
突然背後から失礼いたします。
メリークリスマスです (*^^*)
いつも大変素敵な文章と最高なjhをありがとうございます… 背後様の描くjhがあまりにも想像以上のjhで毎度頭を抱えております。新参者様とは思えないのですが…!? 最高すぎて感涙です。
今回こうして素敵な文を描く方にお付き合い頂けて心から幸せを感じております(;;)
本当にありがとうございます。
当方大変文章力に欠けており毎度添削し放題の駄文しか起こせずお恥ずかしい限りで申し訳ないのですが、、(TT)
どうか切実にこれからもお付き合いいただけたら…と願っております…!!

本日背後からお声掛けさせていただいたのは今日中にお返事が出来そうになく、明日以降になってしまいそうなのでお先にご連絡だけさせていただきました * 申し訳ありません ;;
_/w/o/r/l/d holiday ver上がりましたね フフ 笑
どうか素敵なクリスマスをお過ごしください~!!
用件のみですが失礼いたします! )




  • No.45 by  jh  2022-12-25 08:57:29 






( / おはようございます!いつもお世話になっています。Merry Christmas ~~ ( ^^ )+.゚
わあ、そんな…お褒めに預かり光栄です!しがない新参者ですがそう言って頂けて嬉しい限りです~!此方こそいつもとっても素敵な文章と最高としか言いようがないmgをありがとうございます。主様のmgが言葉ではとても言い表せないほど魅力的で愛らしくて、毎回驚喜が止まりません…!特に主様の描かれる心情の文章が大好きでして…やはり天才なんですね…。
駄文だなんてとんでもない、主様の文章は本当に魅力的ですよ!こんなに素晴らしい文章を描かれる方のお相手をさせて頂いて常々深い幸せを感じています。
当方もつい長考してしまいお待たせしてしまう日があったり、何より拙い文章力ですがお眼鏡に叶うようにこれからも精進しますね…!いつもいつも本当にありがとうございます。
勿論ですとも!折角こんなに素敵な方と出会えて今凄く楽しくて幸せなので、主様と一緒にこのご縁を大切にしたい所存です。これからも何卒宜しくお願いします (o^^o)

お返事の件、承知致しました◎態々ご連絡くださってありがとうございます!焦らずゆっくりで大丈夫なのでご自身のペースでなさってくださいませ…!
いやぁ~、上がってましたね~!毎年あまりクリスマスの実感がないのですが、_w/o/r/l/d holiday verのおかげでクリスマス気分が味わえました!シャン♪シャン♪
温かいお言葉恐れ入ります* 主様も素敵でハッピーなクリスマスを過ごせますように!
此方は蹴って頂いて構いませんので、どうかご負担にならない程度に…! )




  • No.46 by mg  2022-12-26 21:57:13 



( 別に疚しいことはしてないんだけどなぁ、クロッチ。やけに衣擦れの音が生々しく聞こえて、早まる鼓動とともに加速する緊張。俺の指が彼の肌に触れる度にぴくりと揺れる睫毛だとか、如何にもしあわせそうに細められた目が何度か繰り返す瞬きだとか…そんなきみの些細な瞬間に見惚れて、ちっとも目を離せやしない。指先で感じる唇の柔らかさよりも、余裕の色を浮かべる彼の目に釘付け。ふっと微笑みを浮かべる度に俺は初心みたいに一々反応してしまうからやっぱり心臓は三つくらいあってもいいんじゃない?俺の余裕を簡単にかっさらっていく、本当に罪なヒョン。綺麗で美しい、昔から天使と称されていたほどの美貌を持つ初めの頃は同性と思えなかったきみの、案外男らしい手が首から耳朶を辿る。すでに俺に向けた甘すぎる声音が耳を溶かすのに、大好きな彼に触れられるだけで危うい俺は自分から頼んだくせして堪え性なく爆発してしまいそうだ。従順に頷くのはきっと早く 証 が欲しいからで、彼を映すことをやめた目は瞼によって暗闇のなかへ。彼の些細な瞬間を今度は耳で感じることになり、自然と澄ませた耳は過敏に情報を拾ってくる。…ほら、やけに衣擦れの音が脳内に響いて、ごくんと息を呑めば瞼越しにきみの影を感じる。まるで心の中全て見透かされてるかのように絶妙なタイミングで降ってきた口付けに、軽く眉を下げては内に入れたつま先でシーツをなぞり。鼓動は早さを増し、不意にギッ、と鳴ったスプリング音、鼻先に彼のパーカーを感じた瞬間 皮膚の薄い耳裏へ押し当てられた唇、熱い舌の感覚に思わず震えた吐息が零れて。先程よりも強い刺激に全身ぴりぴりと甘い痺れが広がり、逃れるように腰を動かすも摺り合わせた足に絡めとられてしまっていては逃れられず。堪らず鼻に抜けるような声が一瞬漏れれば慌てて口をおさえ、ぴりりと走る心地いい痛みに耐えれば。また顔に朝日がかかって寄せた眉、薄らと開けた瞼は天使の君をとらえる。「 …~っ、ひょん~…、」ぎゅっと両腕で彼を包み込む。ちょっと照れくさくて、大好きな人からの証はどうしようもなく嬉しくて。 ぽつぽつと呟いた声、「 そうだよ、見えないよこんなとこに付けちゃ~。俺どうやって確認したらいいの? 」耳の後ろの熱に指先で触れては彼の可愛い笑みに反して不満げに唇を尖らせるのだけど、実際は不満よりも満足感の方が勝ってる俺は背に回した腕をもう少しだけ強く。こんな全身を包むような温かい幸せを感じたことがあったかな。ふひ、と溢れてしまった不器用な笑み、目と鼻の先の彼を見つめながら。「 ん、俺にも残させてヒョン。 」ただでさえ儚いきみの綺麗な肌に痕を付けるなんてなんだか罰が当たりそうだけど。茶の瞳に引き寄せられるように、ちゅっ、と鼻先に子供みたいな口付け。そのまま体重をかけて彼を自分の下へと敷けば、被りかけのフードを避けて少し乱れた彼の髪を撫でる。愛おしそうに見つめた先、薄らと目を細めては唇を寄せた……、ばたんッ。…ぺた、ぺた、ぺた…。静寂の中に生まれた微かな音にぴたりと動きを止めた。彼と目を合わせて、“やばい”と信号を送る。廊下から聞こえた足音は案外近く、この部屋が目的ならあと数秒で…。 “ 俺鍵閉めたっけ? ” そんな間抜けなことを尋ねる余裕もなく、とにかく彼から離れなければという頭でいっぱいだった俺がとった行動は…大慌てでベッド下へと転げ落ちるという、我ながらパボすぎると思う。「 …! 痛~っ、」ひぃ、と涙目で見上げるドア…同時に開いた。「 ……?? わ…。なにしてんの?みんぎゅや。あ~、はにひょん、昼ごはん出前とるけど何かいる? 」 気の抜けた声が部屋に響く。早すぎる昼飯の有無を聞きに来たのはどこか眠たげな寝癖をつけた十時十分の目の彼だ。)







( / 大変お待たせいたしました~!!;; 入りづらかったら教えてくださいね◎
お返事蹴り可とのことでしたが、とても勿体ないお言葉を沢山いただいてしまいスルーするのも気が引けて…なにより嬉しすぎて出てきちゃいました。笑
まさかそんなに褒めていただけるとは…身に余る思いです(TT)
こちらもそっくりそのままお返しできるほど本っっ当に本当に背後様の文章とjhが大好きすぎるんです…。これからもゆる~くこのご縁が続くこと心から祈っております…!!(-人-)
素敵なクリスマスは過ごせましたか?.*・゚
年内も余すところわずかですね~…。
今年最後、素敵なご縁に恵まれたこととっても嬉しく思います*
背後共々これからもよろしくお願いいたします!
どうぞ良いお年をお迎えください(*^^*)
こちらには返信不要です!!◎◎ )



  • No.47 by  jh  2022-12-27 07:26:54 






( 鼻に抜ける愛おしい声がたった一瞬鼓膜を掠めただけで昂る何かを自覚してしまうほどこの子に惚れ込んでいるらしい。ふと巻きついてきた腕に力が籠ってはそんな場違いな邪念を振り払う。勿論取って食おうなんて発想は端からないんだけど、俺も男だってことなんだろうな。だって考えてもみてよ、そもそも好きな子とこんな風に触れ合ってそれなりの悪戯で留めているんだから手放しに褒めてほしいくらいなんだから。不満げに唇を尖らせていたのにすぐに解けて浮かんだ笑みは不器用で、その表情が可愛くて仕方ない。そんなふわふわした思考が断ち切られたのは優しいのに熱を孕んだ鋭い瞳と視線が絡んでしまったから。鼻先に降ってきた小鳥のような口付けに籠った笑い声を溢してはベッドが静かに軋む音を何処か冷静に聞くのだけれど。大きな影に覆われてその顔に見下ろされると、どうしたって早いリズムを刻む心臓は言うことを聞いてくれない。いつだったかお前の姿形に対してかっこいいとは思わないなんて収録中に言ったことがあったけど、これは流石に撤回しなきゃいけないんじゃない?その双眸から、その唇から目が離せないまま髪を撫でる手の平に擦り寄るように頭を傾けて、そっと微笑んだのが合意の合図。お前のものだって証、一体どこに付けてくれるの?正直どこに付けられても身近な子達になら言い逃れ出来るくらいに手札を用意してるつもりだよ。寄せられた唇に今度こそ瞼を閉じて重なる寸前──…後ほんの僅かの距離。ぱち、と伏せていた睫毛を開くと“ まずい ”自分と同じ意図を持った目と視線が合う。ドアが開いた音だけには留まらず裸足でフローリングを歩く足音が此方に向かってくると察知した頃には時既に遅し。俺が離れた方がいいか、でもこの部屋の主は他でもない自分だ。なら突き飛ばした方が結果的にいいのか。あにゃ、でも…。今関係が発覚してしまうのはいけないという焦燥感が脳内を支配していつもならいくらでも浮かんでくる策略がことごとく却下されていく。とにかくこの大きな身体を隠せる物を…と部屋を咄嗟に見渡すと不意に組み敷かれていた重みから解放されては次の瞬間目で追う暇もなくドスンッ、と鈍い地響きが。思わず起き上がり目を丸くして呆然と言葉を失っていると間髪入れずにドアが開き視線は自然と開いた扉の方へ。「 ……お~…ホシヤ、ヒョンはさっきご飯食べたからやめとくよ。 」別に何も疾しいことなんてしてないんだけど、説明しようのないこの状況に苦笑いを浮かべながら“ こまうぉ~ ”なんて少し怪しいだろうか。彼のことだから誰かに告げ口しない限り心配はないと願うことしか出来ず。特に怪訝そうな目を向けられることもなく素直に返事を返すその子に少し胸を撫で下ろすものの再びばたん、…ぺた、ぺた、と。今度は嫌な予感がして脱げたフードと乱れた襟元を意味もなく正してはベッドから転げ落ちた彼を心配する暇もない。程なくして寝癖が付いた頭の背後から覗いた密度の濃い長い睫毛を携えた双眸と視線がかち合ってしまう。「 ムォヤ~…何してんの…? 」低い声に問い掛けられたところでどの手札を選べばいいのやら、返したのは乾いた空笑い。少し迷惑そうに眉を寄せ室内を覗き込んでくるのは個性的なチームを総括する彼。恐らく原因の分からない地響きを不審に思ってやってきたのだろう。そう言えば2人で酒を酌み交わしていたいつかの夜、正にベッドの下に転げ落ちた彼のことで“ 避けられている気がする ”なんてうっかり溢してしまった事があったっけ。勿論顔を合わせる頻度が少ない理由も意図も分かっていたし、後は俺がどうするかに掛かっていたのも理解していたけど拗ねてしまいたくなる日も稀にあって、タイミング悪くあいつと居合わせたのがその日だったってだけの話なんだけど。どっちにしろ見られた以上は後で誤解だったって言っておかないと。「 ジョンハナ、 」ベッドの上で不自然に笑みを貼り付ける俺と不自然にベッドの下で寝転がる彼を交互に見た後名前を呼ばれたのはこの部屋の主が自分だから。出来る限り頭を働かせつつもベッドから足を下ろして座れば体勢を崩した彼の頭を上からぽん、と優しく撫でて「 …あにぃ、遊んでたら盛り上がっちゃったんだよ。チャムチャムチャムゲームしてて…ね? 」結局絞り出したのは苦し紛れ過ぎる言い訳だったものの、これ以上詰めさせないとばかりに堂々と言い切ると頭に手を置いたまま覗き込んで。大の大人がただの手遊びで転げ落ちるほど騒いでいたら普通なら心配するが、今は言い訳の内容などに構っていられない。質より圧、クッチ?これ以上人が集まっても困るとばかりにいつもの緩い笑みを浮かべながら同意を求めて。 )




  • No.48 by mg  2022-12-27 11:48:32 





( そうだ、何も考えてなかった…。夢心地の今朝から大好きな彼と通じ合えてしまった喜びに俺は浮かれてばかりで、昨日までは慎重に注意を払っていた“最悪の事態”なんて頭からすっぽり抜けてしまっていた。キョトンとあほ面を見せる訪客を なんでもない… とでもいうように軽く首を振って見せ、背中から聞こえた案外落ち着いた返答に安堵する間もなく心臓はばくばくと激しく鳴り続ける。一連の会話が終わり、後は何事もなくこの部屋を去ってくれればセーフ。ホシヒョンのことだ、今は違和感に気づかなくても後から気づくかもしれないが。兎にも角にもこの瞬間が早く過ぎ去ってくれればいい…!チェバル…!!と祈るのも束の間、新たに聞こえた足音に再度降りかかる絶望…。顔を出したのはよりによっての彼だ。13人もいる宿舎で常日頃何処かしらで起きる喧嘩やいざこざを早々に鎮めるべく現場によく現れる彼のこと。火種は小さい内に消しておいた方がいいからな…今は余計なお世話だけれど…。いやに時計の秒針を刻む音が静寂の部屋に響く。原因を知るまで戻るつもりは無いんだろうスンチョリヒョンから発された、俺には出来ない呼び方でハニヒョンを呼ぶ声。相当場違いだとは思うけど俺は昨日までのことを思い出していた。ハニヒョンと同ラインのヒョン達が親しく絡む様子を見るのが苦だったこと。きっとそれ以上の関係になれた今も彼らに存在してる絆は深いもので、俺も同じく。この国では同ラインかそうでないかで友達の関係に成り上がれるかが決まってしまうから。…俺とハニヒョンとの時間を邪魔しないで、なんて。相当場違いな不満を脳内に広げながら地味に痛い腕を擦り、手首を隠すように袖を引っ張った。そんな思考をも現実へと引き戻す彼の手がそっと自身の頭に触れて、さりげなく確認したかった表情を見るべく軽く振り返った…途端に合う目。今は見つめ合う余裕もない。「 えぇい、ひょんったら突き飛ばすんだもん せっかくいいところだったのにぃ~。 」ドア付近の来客に何度か視線を送りながら咄嗟に彼のせいにして逃れる。…後で怒られるかもしれない。肩を竦めて大きい図体の割にやはりどこか自信なさげだが、苦し紛れの言い訳でも問題はないと察したのか案外あっさりと退散していった姿。…パタン。ドアの閉まる音を最後に二人きりの空間に戻ると彼らがしっかり離れたことを耳で確認して。後ろの彼の方を無言で見遣り、アイコンタクトを交わす。何とか無事に窮地を脱したとなれば襲ってくるのは疲労感。「 は~~っ、よかった~っ。まさか二人も来るなんて思ってもなかったよ... 」起こしかけていた体をへなへなと床に落とし腕を広げる。片手で前髪をかき上げつつ、エーンと泣きべそでもかくように顔をしわくちゃにして泣いた素振りを見せてはベッド上からの視線と絡み、困ったように苦笑い。外の日を多く受ける彼は相変わらず綺麗で、隅に追いやった愛しい気持ちを徐々に取り戻していきながら。「 はにひょんありがとう、助かったよ本当に。」俺じゃ聞き入れてすらもらえないかもしれない。取り繕ってくれた彼には感謝しないと。ぽつぽつと呟くけど、咄嗟に床へと転げ落ちるという痛い判断をした挙句 それが目をつけられ、結果彼に責任を押し付けるという最悪の二段構えに苦笑いは消せないまま。彼の様子を伺うように体を小さくして腕を擦りつつ… 「 みあねよ、...? 」ごくんと息を呑むとたどたどしく言葉を紡ぎながら緊張を走らせて。)




  • No.49 by  jh  2022-12-28 15:37:48 






( 確かに自分が突き飛ばしたという事でベッドから転げ落ちるという大胆な行動も説明がつく。どこか自信なさげに肩を竦める姿から本意ではないのは明白なんだけど、何分致し方ない。加えてただでさえ不審極まりないこの状況で、彼の発言を否定することは出来ずちらりと訪客を盗み見ながら“ やぁ~お前がズルするからじゃんか~ ”なんて咄嗟に話を合わせるものの、見方に寄ってはぎこちない笑みが張り付いたままで。どうやら子供騙しのような言い訳が通用した…とは思えないが、特にこれ以上詮索する必要はないと結論付いたらしい。思っていたよりあっさり部屋を後にする二つの背中を遮る見慣れたドアが閉まると緊張が一気に解けてがくん、と項垂れる頭。そのまま顔を傾けて彼を見遣ると視線を交わして、長い腕を広げて床に体を預けて泣きべそでもかく素振りを見せる可愛らしい仕草を眺め、取り戻した平穏を噛み締めてほっと一息。徐にベッドから立ち上がって今正に開いていたドアの方へ足を運んではカチャ…と鍵を閉めて今度こそ二人きりの密室にしてしまう。…二人も来るなんて。力なく呟かれた言葉にそりゃそうだよ、お前がベッドから落ちた時凄い音がしたんだから、そう返そうとして初めて色々と出来事が立て続いたせいですっかり抜け落ちていた憂慮が脳裏に過って。いくら丈夫で健康的な体を持っているからって、この子は俺の大切な恋人な訳で。落ちた拍子に何処か怪我なんてしていたら…そんな思考とは裏腹に感謝の言葉まで口にするものだから。ああ、この子はチンチャ。踵を返して再びベッドへ腰を下ろすと苦笑いを浮かべる彼は日に照らされて少し眩しそうで、何処かあどけない。寧ろもっと寄りかかってくれていいんだけど、なんて勝手な歯痒さを抱くのはきっとどうしようもなく惚れてしまっているから。「 何でお前が感謝するんだよ。これは俺たち二人の秘密なんだから、二人で解決するのは当然でしょ 」少し不満げに唇を尖らせるものの、掻き上げた髪も困ったような笑みもなんだか崩してやりたくなって今度はぐしゃぐしゃと髪をかき乱しながら撫で回す。「 …それより怪我してない? 」特別痛がっている素振りが見られないことから大きな怪我をしている心配はないと見積もるも腕を摩る仕草は痛々しく。眉を下げて顔を覗き込んでは、自ら乱した髪を整えながら頭を撫でる手はまるで愛犬を慈しむように。更に縮こまった大きな身体は恐らく先程の発言を懸念しているのだろう。俺が怒ると思ったのかな?お前と時間を共有出来るならそんなことどうだっていいのに。顔色を伺うように紡がれた言葉に思わず笑みが溢れそうになるが、同時に芽生えてしまう加虐心。頭を撫でていた手をぱっと離し、笑みの代わりに薄らと目を細めたのは態と冷ややかな視線を向けるためで。もし思考が具現化するなら彼に垂れ下がった耳と尻尾が見えるように、自分にもにょきっと悪魔の耳と尻尾が生えてしまうかもしれない。途端につんとした態度で床に下ろしていた足をベッドの上に放り出して体勢を変えると、下で息を呑んだ彼と向き合う形で打つ伏せに寝転がり「 ん~…あんで。だって結局俺のせいになっちゃったもん…─ほらミンギュヤ、そこに正座して。 」頬杖を付きながらつぶらな瞳を見つめ、床の上で反省を示せと言わんばかりにもう片方の食指をすぐそばの足元に向けて。そんなにいじらしく振る舞われたらもっと意地悪したくなっちゃうんだよ。上がりそうになる口角をできるだけ結ぶように努めてながら。 )




  • No.50 by mg  2022-12-28 21:16:37 





( カチャ...。まるで俺たち2人の秘密みたい。これから起きること見ること全部二人だけのものにしてしまおうと。誰にも知られないようにと閉めた鍵。彼の手によって部外者は立ち入ることができなくなったこの部屋で、秒針の音が相変わらず響いてる。自分よりも色の白い手が伸びてくると、先程までは髪に沿うように撫でていたから油断していた乱雑さに薄く目を細めては。その先で少々不満げな彼に 「 んん...。まじゃよ。」ごもっとも。だけど二人で解決するのが当たり前だなんて言わないよ。俺自身ひょんに助けられてばかりで、感謝を取り下げることもなくて。これからも続くだろう試練の日々を二人で協力していけばきっと…大丈夫だから。ね、こまうぉよ。戻った平穏の居心地の良さを彼の行動で実感する。此方を覗き込む表情だとか、心配してくれる声だとか。どれも変わらずやさしくて大好きな色。ほんの少しだよ、少しだけ、そりゃぁベッド下に落ちたんだ。全身が痛いけど怪我をするほどじゃない。「 お... うん。心配しないでひょん~、大丈夫っ。俺何回もベッドから落ちてるから... 」嬉々とした感情を表に出す余裕だってあるよ、ほら。君がいつものように髪を撫でてくれる感覚に自然と頬が綻ぶ。...まあ、どうしても引き攣ってしまうのには別の理由があるのだけど。_ ごめんなさい。申し訳ないという気持ちは本心で、謝罪も勿論嘘じゃない。でも...正直撫でてくれるやさしい手の動きから簡単に許してくれると期待していた。あっさり離される手と、向けられた冷ややかな視線。...うん?モンガ思ってたのと違うけど...? のそのそと体を起こしつつ、彼の様子を見届ける視線は不安げだ。“ あんで ” ベッドに横になった彼から発された言葉にぎくり。何度か瞬きをしてその場に茫然と固まった。「 うう、ごめん。ハニヒョン...、」ヨクシ…怒ってる? 眉を下げて顔を覗き込もうとするけど、伸ばされた指の通りしおしおと正座に座り直して。居心地わるそうに視線を逸らしては口元に持っていった爪を噛みそうになって…やめる、のだけど。「 ひょん~...。」くぅんと犬が鳴くように頼りない声音で彼を呼ぶ。どうしたら機嫌直してくれる?今の俺は彼のことで頭がいっぱいでまともに考えられそうにない。もし俺にできることがあるなら何でもするんだけどなぁ。相変わらず口を結んだままのやさしい笑顔のない彼。しゅんと頭を垂れては、「 ...ハニヒョン、」とまた名前を呼んで。「 聞いてほしいんだけど...。俺さ、クプ...ぁ、スンチョリヒョンに、ハニヒョンを取られちゃうんじゃないかってずっと怖かったんだよ。あのヒョン、めちゃくちゃハニヒョンと距離近いでしょ? 」許してほしいとは言わないから、ただ胸の内を伝えてみようと思った。「 それに、スンチョリヒョンとハニヒョンが親しいのは事実じゃん。スンチョリヒョンはボディタッチもするし、じょんはなーって名前も呼べるし...、えぇい、真剣に言ってるんだよ。」控えめに上目で見つめる。「 俺には叶わないものを最初から持ってるのが羨ましくて。俺にとってハニヒョンはこれからもヒョンで、俺は弟のままじゃん~…。」普通の恋人同士のように人前で君の名前を呼ぶこともできない。「 ...、そるちき、今も嫉妬しちゃうよ。……はぁ~っ。だめだ。、、ひょん、さっき二人で解決するのが当然って言ったでしょ。ハニヒョンの一番になれたって実感が湧いて嬉しかったんだよ、」なんの脈絡もなくひたすら紡ぐ彼への愛に、ふと恥ずかしくなればほんのり耳まで赤くして視線を逸らしてしまう。反省の意がとれないよな、と意味もなく姿勢を正したりして落ち着かないのも。やっぱきみのせいだって言ったら今度は本当に怒らせてしまうかな。)


  • No.51 by  jh  2022-12-29 02:12:05 






( 全く可愛いにもほどがある。嬉々として大丈夫だと伝えてくるところも、自分の言葉ひとつで不安げな視線を向けてくるところも、どれも口元をだらしなく緩めるには充分過ぎる攻撃なんだ。よく言うことを聞いて膝を折り曲げながら座り直したかと思えば、丸めた手を口元に持っていったもののその短い爪を噛むことなく下ろしてしまうから。きゅん…っ、と胸から変な音が鳴った気さえするから恋っていうのは恐ろしい。いじらしくて愛おしくて、締め付けられる胸から目を背けるように頬杖を付いた手で口元を覆い緩んだ頬を隠す。そもそも怒るようなことは何もないんだから、謝ったりする必要もない。謝罪の言葉にだって今すぐ抱きしめて無条件に許してあげたいくらいにはお前を溺愛してるんだけど、ね?こういう時の彼は妙な引力があるから、もう天性のものだと思う。勿論加虐心を煽る才能。ほらまた、そうやって犬の鳴き声のように俺を呼ぶから…はぁ、ミチゲッソ。口元を隠したままぷい、とそっぽを向いて綻んだ唇が彼の目に触れるのをなんとか回避した、はずなのに。また弱々しく呼ばれた名前に素直に視線を向けたのが間違いだったんだ。ぽつぽつと紡ぐ言葉が甘く心臓を突き刺してさっきとは比にならないほどじくじくと胸が締め付けられる。やっぱり彼をそこに座らせたのは正解だった、ベッドの上だったら今頃組み敷いてしまっていたから。今口を開いたら拗らせた愛情に任せて強い言葉を溢してしまいそうで、飽くまで口を挟まず黙って聞いていると。単に俺にとって都合のいい幻聴なんじゃないって疑うくらいの言葉が少し舌ったらずの大好きな声に乗って鼓膜に届いてくる。脳内に何本かある理性の糸が一本プツン、と切れた気がするけどケンチャナ、まだ何本もあるじゃん。ほんのり赤に染まった耳を眺めながらゆっくりと貰った言葉を噛み砕いて胸に落とし込む。騒がしい胸の内とは真逆に一周回って無表情だった口を開き「 ─……ミンギュヤ、 」とぼそり。不意に首の後ろに手を添え直近まで引き寄せて「 本当に反省してるの…?ほら、手は膝の上。 」まるで命令のように囁けば結んでいた口元を少し綻ばせて。言いたいことは山程ある、けどもう我慢ならない。徐に噛み付くように目の前の唇を奪えばちゅ、ちゅむ、と音を立てて好き勝手に貪り。下唇を食んだり軽く吸ったりと決して思い遣りがある口付けではなく、恋人を床に正座させたままなんて相当趣味が悪いかもしれないな、なんて顔の角度を変える合間に“ んふ… ”小さく笑ってしまう。なのに重なる唇がきもちよくて、でもなんだかおかしくて。怒っているという設定が早くも何処かにいってしまうが理性はしっかり保っている。早々切り上げるように最後に形の良い唇をぺろ、と舐めて顔を離せばこつりと額同士を合わせ「 …俺はね、世界で1番お前が好きだよ。みんぎゅ 」先程の態度とは一変して紡いだのは甘ったるい声色。「 でもスンチョラと仲良しなのは明日からも変わらない。大事なチングだし…、…だからね、そのまま嫉妬してて? 」そんな台詞を吐くにも関わらず目の前の彼が愛おしくて緩やかな笑みが浮かんでしまうんだから、我ながら大人気ないと思う。こんな事でさえ全部この関係のスパイスになるって言ったらお前は呆れるのかな。「 ねぇ、…お前の彼氏が優しく不安を取り除いてあげるような男だと思ったら大間違いだよ。 」だってその嫉妬も嬉しい気持ちもヒョンにくれるんでしょ?全部ってそういうことだもん。悪戯に笑い額を離して目尻を垂らしながらじっと見つめる。「 …そもそもミンギュは弟である前に俺の恋人じゃん。なら二人の時はヒョンじゃなくて…なんて呼べばいいんだっけ? 」半ば問い詰めるような口調だが彼に向ける声と表情はどうしても柔らかいものになってしまって。首の後ろに添えていた手を耳裏に移動させては、正面からは確認出来ないもののさっき付けた赤黒い証を指で撫でながら「 ね、チャギヤ…。 」なんて特別な感情が籠ったそれは歯が浮くほどに甘ったるく。 )




  • No.52 by mg  2022-12-30 11:40:46 





( 今まで抑えては溜め込んできた想いが次から次へ溢れていく。相変わらず微笑みのない表情は不安で、そんなことはないだろうが愛想を尽かされて一日も経たないうちに別れを切り出されたらどうしようなんて心配さえ募ってくる。それほど想い続けた彼を手放すなんてもう出来ないんだ。逸らしていた視線を慌てて目の前へと向けたのはぼそりと彼が俺の名前を呼んだから。するりと伸びてきた手が首に触れると不安げに眉を下げつつ、至近距離の圧に負けて 「 ネー… 」チェソンハムニダ...。しゅんと肩を竦めて膝の上に両手のひらを置いた。刹那彼の髪が肌に触れて、ぞく、と背筋が甘く痺れていく。律儀に膝の上に置いていた手を徐々に丸くし拳を握り、どうして口付けされているのか理解できないまま応えて。上唇を食み、味わうようにじっくり吸い上げる間もなく角度を変えてはどこか余裕のない触れ合いに胸がぎゅぅと締め付けられる。目を細めた先でほんの少し笑った意味だって知る由もない。大好きな人と唇を重ねるのがこんなにもきもちいいなんて、そんな思考に塗り替えられては控えめながら求めるように片手で彼の腕辺りの衣服をギュッと掴んだ。二人の間に光が邪魔するけど、それは可愛らしく触れた額によってまた封じられる。軽く息を整えながら浮かべる恍惚の表情、あぁオットッケ。俺こんな幸せでいいの? 胸にとくとくと響いてく彼の甘い声音に滅法弱い。いつの間にか不機嫌モードが消え去った嬉しさよりも、きっとこの世で一番嬉しい言葉を聞けた嬉しさが圧倒的に勝って。ひょん…っ!嬉々として声に出そうになるが抑えられたのはその後に続けられた言葉のせい。...まぁ当たり前ったら当たり前だ。恋人だからって友人関係まで影響を及ぼさせるのは束縛と同じでしょ。とは思うもののどこか不満げに唇を尖らせて。「 じゃあ...俺が嫉妬でおかしくなったらどうするんだよ~。」はあ~本当にこのひょんは。たしかに俺は“全部あげる”と言ったけど、まさか嫉妬までかっさらうなんて本当に悪いひょんだよ。悪戯に笑う表情にどきっと胸が鳴って、悟られないようにと平然を装うのも手遅れかな。目尻を垂らす眠たげな笑みが大好きだった、今も勿論変わらないけど。視界に入るもの、耳に入るもの。全部穏やかでやさしい天使そのものなのに。あーぁ、きみは悪魔の皮をかぶった天使じゃんか。天国に連れてってくれると思ったら誘導されてるのは地獄への道だ。そう道を示したのは紛れもなく俺だけど、二人きりの空間に“ヒョン”を捨てたら後戻りはもうできないね。指が触れた擽ったさ、ぴりっと走る痺れに目を細めては。追い打ちをかけるように恋人を呼ぶ甘ったるい声音が真っ直ぐ胸に沁みて、抑えていた思いが爆発する。嬉しいような悲しいような、どっちとも取れない感情が込み上げて涙袋をぷっくり膨らませて。「 ......。ん、ジョンハナ。」鼓動がばくばくと激しさを増す。君への想いが重なる度こうして秘密も重なっていくんだ、それを守る覚悟はある?良くはないのにそれでもいっかと諦めがつくのは君がずっと傍に居てくれると信じてるから。膝の上の手も聞きつけを破って伸ばす。そっと壊してしまわないように触れる手を柔い頬へと添わせて。「 世界でいちばん?それなら俺は宇宙でいちばんだけど、」ひひ、とあどけなく笑うのも緊張が解けた証。許しなんて貰ってないけど、いいよね?「 愛してるってこれからも言わせてよ、じょんはな。」頬の膨らみを撫でて彼の愛おしい瞳を見つめたあと、頬から手を離しては首に回し、そのまま飛びつくようにベッドへとなだれ込んで。埋めた首にちゅっ、と強めの口付けを。天使のふりしたきみ、君のいない天国よりも君のいる地獄を選ぼうか。)




  • No.53 by  jh  2022-12-31 09:38:43 






( そんなの決まってるよ。嫉妬でおかしくなったお前をたっぷり可愛がってあげる。そうしてその嫉妬は余すことなく隅々まで俺が貰うから…ほら、万事解決じゃない?緩やかに上がる口角とぷっくりと膨らむ涙袋が視界を占領すると、次にその口から発せられる音はもう決まっているようなもので無意識の内に耳を澄ませてしまう。鼻に掛かった低い声が優しく自分の名前を呼ぶから、なんだか照れ臭くて擽ったくて。呼ばれた名前は脳内に甘く反芻するけど、同時にずっしりと重く胸を縛り付けるみたいだ。それが堪らなく嬉しいなんて昔の自分からすればやっぱりどうかしてるけど。…アンデ、この子が好きだ。お前に呼ばれたそれは思っていたよりしっくりきて、予測では似合わないと意地悪を言うつもりが思わずはにかんでしまった。遂に“ ヒョン ”まで手放してしまったらただの恋人同士なのに。それでも皆の前ではこれから先もお前のヒョンで、交わした口付けも触れ合った熱だって秘密だから。宇宙でいちばんだって言うならこの秘密が苦痛だけじゃなくてちゃんと甘い蜜になるように、ちゃんと調整してお前の口に運んであげる。「 やぁ…、生意気。 」言葉とは裏腹に嬉しそうに緩んだ口角を隠し切れずにいると律儀に膝の上に置いていた手が頬を包むけど、最初から咎めようなんて思ってない。切れ長で犬科のようなつぶらな瞳を愛おしそうに見つめ返しながら二回目に呼ばれたそれは愛の言葉とはあべこべに少し舌っ足らずだし、あんまりあどけなく笑うから、まるで。…えぎじゃな。「 んへ …うん、これからいっぱい聞かせて? 」緩い笑みでそう返した途端なだれ込んできた大きな身体を受け止めてベッドの上で縺れ合えば、そのまま腰を抱いたついでに長い両足へ脚を巻きつけホールドする。少し強引に落とされた首筋への口付けにぴく、と肩を竦めつつも小さく漏れた声と共に心地良さそうに目を細めて。例えば愛してる、とか。浮かんでくる言葉なら沢山あるんだけど自然と声に乗ったのは。「 モンガ…赤ちゃんみたいだね、おまえ。」ふくふくと悪戯に笑いながら首に埋められた頭を撫でる手付きは子供にするように優しく。ふと彼の丸っこい耳に口元を寄せて「 …おれのかわいいみんぐ、 」綿菓子のように甘く囁き子供をあやすように撫でる手は止めないにも関わらず密着した胸からはとく、とく、とリズム良く跳ねる脈拍が筒抜け。脳内は彼でいっぱいな上に最早 好き と 可愛い で詰め尽くされてしまって、恋をするとこんなにもIQが下がるものなの?だってもう黙っておくには愛おしさが破裂しそうで、薄く開いた唇から想いが溢れ出すのをただ彼の耳元で垂れ流すことしか出来そうにない。「 ─…好き、好き。みんぎゅや…すき、だいすきだよ。 」とびきり甘い囁きを鼓膜へ注ぎ込むようにとめどない愛を。心に留めていたものをそのまま口にしてしまえば最後、駆け引きでも何でもない本音が胸から溢れて喉元にどっと押し寄せる。「 はあ、オットケ~…俺お前が可愛くて仕方ないや。んん~… 」出来ればある程度は理性的にコミュニケーションがしたい。自分の心に収集が付かなくなる発言も避けたくて言葉を喉の奥に押し込むように悩ましげに唸ってみるものの、不本意ながらあまり余裕がなくなってきた。今にも本心が唇の隙間から漏れ出してしまいそうになり腰に回した腕に力を込めて強く抱きしめ、先程跡をつけた方の耳に鼻先を埋めて気を紛らわせるようにすりすりと。 )




  • No.54 by mg  2023-01-01 17:16:12 




( 部屋の外から微かに聞こえる生活音。どこも同じ時が流れているはずなのに別世界のようにゆったりと時が流れる静寂の空間に、ずっと呼びたかった貴方の名前を響かせる。年功序列に反した自分が正に言われるべき台詞に ふふ、と溢れるのは満足気な微笑み。こんなにも唇に馴染むのならもっと早く言えたらよかったのになぁ。ジョンハナ、なんて嫉妬の元凶だった名前を。今度は俺の声で焼き付けてね。彼の花咲く笑顔にきゅ~~っと胸が締め付けられて、居ても立ってもいられない俺は体を使って愛を伝えてみた。鼓膜を震わせるきっと俺しか知らない甘ったるくとろける声だって何度も聞いたはずなのに、彼への“すき”を何度も新鮮にして。絡んだ脚の感覚だって肌が直接触れるわけじゃないのに心地よくて次から次へ多幸感に包まれていく。“しあわせ”を直に実感して緩みっぱなしの頬が永遠に戻らなかったらどうしよう、なんてパボな危惧をするのに。彼の匂いで胸いっぱいにする傍ら、耳元で拾った声にほんの少し眉間に皺を。「 ...赤ちゃん?なんで? 」少々不服そうに埋めた顔を上げると上目で控えめに彼の表情を覗こう...としたが、大好きな手が髪に触れる感覚に首元へとすぐさまカムバック。肌に唇を付けてふふ、と笑う。彼の甘すぎる声が脳内まで溶かしていくようだ。彼のものになれた、その実感が全身を巡る甘い痺れへと姿を変えていく。「 ...んふ、くすぐったいって 」今度は不安なんてない。自分と同じ鼓動が本心だと教えてくれるから。ああ、あぁ...もうアンデ~!彼も俺も、同じくらいの愛を持ち合わせてるはずなのに。君はとめどなく俺に愛を伝えてくれるから、受け止めきれずに器から溢れてしまうんだよ。「 はぁ~~っ、はじまぁ~。俺だってだいすきなのに... 」ただでさえだいすきな君にそんなにも好きを連発されちゃぁ本当に本当におかしくなっちゃうじゃんか。困ったように口元に苦笑いを浮かべて。「 どうにかなればいいじゃん、俺が言ってたみたいに…俺はじょんはなのせいでどうにかなる寸前だよっ。」さらに密着した体に高めの体温をおすそわけ。彼の些細な動作でさえ愛おしくて、回した手でするすると服を撫でる。吃る彼の声を気にかけて耳を澄ませたせいで擦り寄る感触はひどく擽ったい。「 ...。ね、ジョンハナ~...、キスしたい。ぁ、あに、顔戻してくれないとできないじゃん~...。」片手の指先で彼の柔い髪を遊ぶようにいじって。ふつふつと湧く衝動を抑えるように控えめに彼へと尋ねる。緩やかに尻尾を振るのに、耳は垂らしたまま。自信なさげに呟くのは相変わらずで。)







(/ こんばんは。お世話になっております(*^^*)
度々背後から失礼いたします。
あけましておめでとうございます~.*・゚

昨年は出逢って間もないにも関わらず50スレ達成と沢山お付き合いいただき本当にありがとうございました...!( ; ; )
ついこの前も最高すぎるあまり何度か卒倒しかけましたが、本年も素敵な文を拝めると思うととても幸せです...
背後様の展開の仕方が非常に大好きで。お返事が来る度毎回歓喜の小躍りしております( ; ; )
いつもいつも本当にありがとうございます。

またtv露出がいくつかありましたがご覧になられましたか?.*・
公式からもとんでもないjhmg上がっておりましたね。

これからも緩くお付き合いいただけたらと思います...!
今年もどうぞよろしくお願いいたします* )


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