通りすがりさん 2022-11-20 19:17:51 |
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……そうなんですかね。
別に、家を傷つけていないなら良いですよ。
(友人の言葉に嘘はないだろうし、きっと人間の質がわるかったに違いない。裏社会にはたまに、そういう人間もいるものだ。また、友人の姿が人間の姿に戻って弁解することに、別に、と素っ気なく返してしまって。彼は人外に興味があるのだし、気になって触っていたのだろうと分かってはいても、どうしても嫌な気分で。彼の方に視線を向けることが出来ず、友人に視線を向けたまま肉の支払いについて告げて)
お金はいつも通り振込でいいですか?
『あぁ、うん。振込でよろしく~
じゃ、とりあえず俺の役目はこれで終わりってことで。』
( 友人の素っ気ない態度に何やら感じとってはいるものの、特に気にはしていないのか、今首を突っ込むと余計に荒れてしまうのが分かっているからか一度肩を竦めてみる。
そして、次いで支払いについて返答すれば、両者の肩にポンポンと触れると、自分の役目は終わったと両手を上げた。
『また注文する時は連絡してね~』なんて話していれば、楓が咄嗟に携帯を取りだし、そろそろ帰るのであろう春彦の腕を掴んでなんとなく声をかける。)
あ、春彦、せっかくだし帰る前に連絡先交換しねぇ?
『え、あー……くもちゃんに許可取ってからね!』
(思わず腕を捕まれ聞こえた要望にえ、となってしまった。彼は友人の表情に気づいていないのか、別に自分は構わないが友人は……と視線を動かすとどこか悲しげで、思わずあわわ…となってしまい。ここで連絡先を交換したら厄介なことになりそうだと判断すると申し訳なさを抱えつつ掴んできた腕を振り払い、友人に許可を取ってくれと言い残して『じゃーねー!』と玄関を出た。もう手遅れなような気もするが、自分のせいで拗れませんようにと祈りつつ友人宅から仕事場へと戻って)
……随分、彼と仲良くなったんですね。
(友人が足早に自宅から出ていく姿を見て、少し安心した気がする。決して友人が悪いわけでも、彼が悪い訳でもないがモヤモヤとした気分の悪くなるものを胸の辺りに抱え、キッチンに戻りコップを片付けながら彼に話しかけて)
は?なんだよアレ。
__ん、あぁ…最初はいけ好かなかったけどな、案外話しやすい奴だった。
やっぱ人外ってかっけぇのな。
( 彼の許可が降りてから、と言い残し早々と帰ってしまった晴彦の背を見送れば、取り出した携帯を再度仕舞って眉をひそめる。
こういう時には鈍感なのか、はたまた気になっていないのか…コップを片付ける彼の隣へと近寄れば、仲良くなったと言われ不本意そうな顔をしつつも、まぁ仲良くなったのは事実で、お茶菓子をもう1つ口に放り込みながら返答する。
そして、付け加えるように言葉を続ければ、「夕飯は、俺が美味しいの作ってやるからな」なんて人の気も知らないで笑顔を向ける。)
__今日はもう大丈夫です。さっき食事をしてお腹いっぱいになったので、君は帰っていいですよ。
(彼から言われる友人への賞賛が、自分への非難に聞こえつい気分が暗くなっていく。彼に悪意がないのも分かっていて、自分で自分を追い込んでいるだけだと言うのにモヤモヤとした気持ちはどんどんドロドロとした嫉妬へと変わっていって。
確かに、友人の人外としての姿は誰の目から見てもかっこいいと思えるだろう。対して自分は一目見て気味が悪い。化け物として相応しい姿でかっこいいなんてものとは程遠くて。彼が人外に憧れるのはかっこいいから。本当にかっこいいものを見て、自分のような醜悪な姿を見られるのが嫌で彼に帰ってくれ、と心にも無いことを告げて。本当は彼の手料理が楽しみで、お腹も空いているはずなのに…彼と顔を合わせて傷つけたくないのだった)
……んだよそれ。
そんなにたくさん食ってないんだろ?美味しくなかったって言ってたし、それに…俺、明日からまた暫くバイトが続くからここに来なくなっちまう。
( なんだか、こうして見るといつもよりも暗い気がして、大丈夫かと肩に触れようとするが…“帰っていい”の言葉にその手を止め、眉間に皺を寄せた。当然突き放されるような事を言われると、自分ではその理由が分からずにただただ疑問に思う。
明日からはまたバイトが連日入っている、今日だって楽しみにして来たのに、と言わんばかりに語りかけるが、相手は引き続き暗い顔をしたまま此方を見ようともしない。
先程伸ばしかけた手をぎゅっと握りしめれば、深いため息と共に、低く、そして呟くように言葉を洩らす。)
__死んだ奴を食って満足かよ。
どうせテメェの前にいるのは、生きてる上に鬱陶しいチンピラだもんな。
君の料理を食べなくても生きてはいけます。これまでだってそうだったんですから。
__生きている人間は齧ると煩いので、死んでいる方が静かでいいですね。
(彼がここに来るまでは、いや自分が彼をここに来るまでは彼の食事なんぞなくとも生きていけていた。味気ない料理と空腹を満たすだけの食事が、また数日続くだけだから問題は無い。洗い終わったコップを水切りかごの中に入れ、タオルを取るとコップを拭き、低く呟かれた言葉に「そうですね、」と呟き返す。食事の時、低く、高く聞こえる悲鳴は心地よいものでは無いため、口の聞けない死体ならば静かで良いと肯定して)
なら、全部春彦から注文して2人で仲良くやってろ。
なんなら、俺が在庫にでもなってやろうか?
どうせ俺はテメェなんか恐くない、静かに食料になってやるよ。
鬱陶しい奴も消えて一石二鳥だろ?
( 此方の発言を肯定されれば、更に手に込められる力は強くなる。しかし、流石にいつも外でやっているように手を出す訳にはいかず、一度落ち着くように舌打ちを吐き捨てた。だが、言葉の棘が丸くなることはなく、ゆっくりと、しかしそれでいて嘲笑うかのように上記を述べれば、コップを片付ける相手の肩を組んで
こちらの方を振り向かせる。
最初の頃、相手の顔が見れなくなるからと食べられるのを拒否していたが、今となればどうってことないと言うように、自分が食材になれば一石二鳥だなんて言って退ける。
彼の言う通り、自分が居なくても相手は困るどころかこれまでの生活に戻るだけだ。少しは相手も自分のことを好いてくれているのかと思っていたが…必死で交わろうとしていたのは自分だけで、それがなんだか酷く悲しくて愚かに感じた。)
お断りです。君のことは食べたくないと言っているでしょう。それはずっと変わりません。
(1度決めたことは自分の中で覆ることは無い。最初に彼を食べないと決めたのだから、そして今も食べたくないと言う気持ちがあるのだから眉を寄せ、不快そうに断った。彼の腕で向き直されれば、コップは水切りかごの中に。嘲笑う言葉は彼自身を傷つけているようで、そんな顔をさせている自分自身が嫌になる。彼を殺したくない、食べたくない言い訳を最もらしく並べながら一貫して君は食べないのだと示して)
それに君は簡単に在庫になると言いましたが、死ぬ恐怖を味わったことがないから言えるんです。未来のある子どもに生贄なんてさせられません。
……はッ、今度は子ども扱いかよ。
好きなやつに興味も持ってもらえねぇのに、何が未来だ。
こっちからいくら好意を寄せたって、所詮は透明な空気のままなんだよ。そんなの、俺は20年も前から死んでるも同然だろ。
( 頑なに食べないと主張しつつ、自分のことを子どもだと言われれば、一度は我慢したものの、もう耐えきれずに相手の胸ぐらを掴んで荒く言葉を返した。
そりゃあ、相手からしたらまだまだ自分は子供かもしれないし、20年なんて相手からしたら数年前の感覚かもしれない。話している内容だって、彼からしてみればなんの事か分からないかもしれないが…どう足掻いても誰の役にも立てそうになくて、居ても居なくても相違がなくて、そんな奴に到底未来があるなんて思えないし、その事実を自分自身で認めるのは酷く胸が痛いし怖い。
全部、ただの八つ当たりでしかないのだが「……もういい」と突き放すように掴んでいた手を乱暴に離し、くるりと踵を返すと玄関へと向かい出す。)
…ッ、…。
(最もらしい言い訳で彼も限界がきたようで胸ぐらを捕まれ息が詰まる。僅かな息苦しさを感じていれば20年前から、と聞こえてなんの事だと不思議に思って。問いかけようにも狭まる気道からかすれるような呼吸しか出てこなくて、彼の顔をただ見ることしか出来なくて。本当はそんな泣きそうな顔をさせたい訳では無いのに自分が素直になれないせいで、彼を悲しませている事実を突きつけられて。腕が離れれば数歩後ずさり、シンク手をついてけほっ、と軽く咳き込んで。俯いていれば足音が少しずつ遠ざかる音が聞こえ、止めたくとも自分にその権利がないのは分かっていた。玄関が閉まる音は自分たちの関係が終わるような音で、同時に膝から力が抜けて扉伝いに座り込むとポッカリと空いた喪失感に満たされない空腹のようなものを感じて苦笑いして)
………、俺が、。
( 勢いのまま玄関の戸を閉めて外に出ると、ぽつりと、言葉を呟いた。_俺がこんな奴じゃなければ、きっと好いて貰えたんだろうか。しかし、そんなタラレバは直ぐに飲み込んでしまい、情けなく瞳に溜まる涙を拭えば、買ってきた荷物も全部置いてきてしまったなと考えつつ足早に相手の家から遠ざかる。
その後は自分も意地になり、どうでもいいことまでメッセージを送っていたのも止め、彼に言っていた通り、連日バイトをこなすだけの日々に戻った。ただ、最近はバイト以外彼の家へ行くことが増えていたため喧嘩などを避けていたのだが、その用事も無くなったことだし…どうにも虫の居所が収まらず、モヤモヤと疼く気持ちを鎮める為にも、より一層激しく喧嘩をするようになった。
日を追う事に怪我は酷くなり、腕にも脚にも顔にも、痣やガーゼが増えていた。いよいよバイト先からも“その顔では接客させられない”と放り出され、彼と出会った暗い路地で久しぶりの煙草をふかし、ぼんやりと空を見上げる。
彼の家と自分の生活圏は近い。きっと、近くに彼は居るのだろうが…今更どう顔を合わせれば良いのか分かったものではない。)
(暫くキッチンの床に座っていたもののいつの間にか時刻は夜を示し、ゆっくりと体を起こした。あんな喧嘩をしてしまったからか、次の日からほぼ毎日のようにきていたLINEも、家に来ることも無くなり義務的のように毎日を過ごしていた。お腹の空腹感と彼に会えない虚無感を満たすように食事を進めていたが、以前より量は多くなったもののいくら食べても満たされない気持ちに暗い気持ちを抱えていて。
彼が来なくなり何日かたったこの日も、とぼとぼと帰路を歩いていたがふと彼と初めて会った裏路地が目に入り顔を向ければ、会いたかった彼がいて)
__や、ざわ…くん。
…….、なんだよ、バイト帰りか?
…さっさと帰って肉でも食っとけ。
( もう一度深く煙草の煙を吸った時、通りから名を呼ばれた気がして視線を向ければ、脳裏に浮かんでいた相手の姿がそこにあって。一瞬驚きで目を見開いたが、直ぐにハッとして目線を逸らし、煙草を地面に落として靴でねじ踏めば火を消した。
心の中では申し訳なさでいっぱいなのに、未だムキになって強い口調で当たってしまう。これでは、前に彼が言っていたように子ども以外の他ならない。
気まづそうに首筋をさすれば、こんな傷だらけの顔を見られるのも嫌で俯いてしまい、当初はあんなに自信満々に馬鹿げたことをつらつら喋れていたのに、あの自信はどこにもない。)
…僕、その……君に、謝り、たくて……。
(彼はまだ怒っているのだろうか。それとも見放されてしまったのだろうか。俯き、さっさと帰ればいいと言う相手に首を横に振ると、あの日言い放ってしまった言葉を謝罪しようと戸惑いながら口に出して。もう遅いだろうかという不安を抱えながら、チラチラと彼の姿を確認して)
( 不安そうに放たれる言葉を一つ一つ聞いていれば、少し意外そうに再度顔を向ける。あんな怒り方をしてしまったし、てっきり、自分からの連絡や訪問が無くなって彼は清々しているものだと思っていたから…彼の方から先に謝りたいと言われるなんて驚きだった。
少し間を開けると、此方も流石に懲りたのか「…謝るのは、俺の方だ。」と棘が無くなったように静かに呟いた。
そして、未だ視線は合わせづらいが、相手の方へと数歩近づいていき言葉を続ける。)
…悪かった。本当に。
久守は…初めから俺のことが好きじゃなかっただろ。
だから、役にも立てないし、ずっと俺が付きまとっちまったし、もういいやって、ヤケになっちまってさ。
ちが、違います…僕が、意地を張ってたから悪いんです……。
(悪かったと謝られても悪いのは自分の方で、首を横に振ってただ自分が悪いのだと述べる。
始めは彼が好意を向けてくるのは本当に気味が悪くて、なぜ自分なんかをと思っていた。だが、彼は少しずつ自分に寄ってきて、いつの間にか自分の中で大きな存在になっていて、当たり前に近くにいてくれた。人外としての自分が揺らいでしまえば彼が近くにいてくれる理由が無くなってしまうと思うと怖くなって、嫌われてしまえば楽になると思い意地を張っていたと白状してしまえば段々涙が零れてきて、それを袖で拭い取って)
確かに最初は、君のことは好きじゃなかったです。怖がらないし好意を向けてくるし…。
でもいつの間にか君が近くにいるのは心地よくて、食事よりも君の手料理の方が美味しいと思うようになってしまって。
君が好きなのは人外としての僕だから、こんな僕じゃ君に嫌われると思ったから、いっその事離れてしまおうって……。
俺がお前を嫌うわけないだろ。
なんでそんな……
( 涙をポロポロと流しながら話す相手の言葉を聞けば、少し戸惑ったようにその瞳を見つめる。謝られる事も、泣かれてそれを励ますことも不慣れなため、どうしたら良いのか分からなかったのだ。しかし、心に秘めていた気持ちを彼が吐き出してくれたことで、大分彼の人柄が分かったような気がする。
__自分と同じように、意地っ張りで、見栄張りで、それでいて寂しがり屋。
自分が思っていたよりも、彼の中で自分の存在が大きかったことには嬉しさが込み上げる反面…“こんな僕じゃ…”と発言する発端があまり分かってはいなかった。自分自身、彼に幻滅する要素なんて思い当たらなかったからだ。
…だが1つ、思い返せば、あの友人が帰ろうとしたあたりから特に元気が無かったような気がする。)
………もしかして、春彦が関係してんのか?
だって春くんはどちらの姿もかっこいいじゃないですか。でも僕は人としては普通だし、人外としては醜いし…。
春くんの方がいいって、言うんじゃないかと……。
(友人の名前を出されると1つ頷いた。彼は人外が好きだから、格好よく、宗教画にでも描かれていそうな友人の方に惹かれるのではと思っていたのだ。自分は腕も目も複数ある化け物のような姿だから。
涙は止まることをしならいように流れ続けており、時折しゃくりあげながら自分から慣れてしまうことを恐れていることを伝えて)
…あぁ、確かに、春彦はかっこよかったな。
でも、俺が惚れてんのはお前なんだよ。だって、お前が1番…誰よりもかっけぇから。
人外なんてお前と春彦以外に知らねぇが。それでも1番だ。
俺が好きなのは“人外”じゃなくて“久守了”だからな。
…ちゃんと伝えてなくてすまねぇ。
( 相手の言葉を聞けば、思わず手を伸ばして相手の頬に触れる。止まらない涙をボロボロの手で拭えば、そのまま相手の頭を此方へと寄せて抱き締めた。
嫌がるだろうか、と内心少し心配はしたものの、彼の発言はまるで…いや、おそらく嫉妬心というもので。自分が春彦と仲良くしていたことで嫉妬心を抱いてくれたと思うと、申し訳ない気持ちとともに胸の鼓動も高まってしまう。
届かない想いを必死にアピールしていたつもりなのだから、それが届いていたとなると嬉しくないわけがない。
…とはいえ、確かに自分も、最初は“人外だから”と接していた節があった。だが、長らく共に過ごしているうちに、人外だろうが人間だろうが彼自身が好きになっていたのは事実で、ここはきちんと気持ちを伝えつつ、小さく笑った。)
大好きだぜ。ダーリン。
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