運び屋 2022-10-14 08:43:14 ID:f537a6574 |
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おいふさげんな、ただでさえ生きることに必死だってのにテメェらの馬鹿な実験で地上人を殺して……ッ!………っはぁ……悪りぃ、アンタに怒っても仕方ねぇわな…なんなら無関係だろうし。…お詫びにこの旅中で出来る事ならどんなお依頼でも無料で受けますよ。
(緩やかなBGMが砂嵐に塗れた様に唐突に大きな口を開いた拍子にマスクが外れてしまう、横に座る彼女に食って掛かろうと、した所で留まり、外れたマスクを付け直し、一呼吸。事故にしても、悪意としても、人類が滅亡し掛けていると言うのにくだらない実験に時間と金を掛け、最終的に人を喰うなんぞ。だがそんな腫れた感情をここで吐いてどうする。偶に一人の地下人が悪いことをしたからと言って全ての地下人を恨み、会った瞬間血眼になって殺そうとする大馬鹿野郎がいるが、そっちも同等にくだらないのだ。そう理解したから、ため息を入って抑えれる。ものの、やはり、感情的になってしまう。流石に失礼をした、と悪気を払うために下記の提案を挙げると、時計に視線を落とし。脳内で距離計算を行うと)
…嗚呼、もうすぐで入りますよ。連絡諸々大丈夫で?一時間くらいなら誤差以内ですけど。
…キミの怒りももっともだ…全くもってその通りだとアタシも思うよ、本当にロクデナシのクソッタレだらけだ。……まあ、それはそれとして、キミの今の言葉はしっかり記録させてもらった。さーて、どんな無理難題を吹っかけてやろうかねえ
(感情を爆発させ、こちらに掴みかからんばかりの迫力で迫る相手にも一切動じる事なく姿勢を崩さず座席に深く腰掛けたまま手元のタブレット端末から顔を上げ神妙な表情で目を合わせる。静かに、それでいて言葉には怒りを滲ませつつ相手の負の感情を受け止めた上で、そう吐き捨てるように毒づく。研究者とて一枚岩ではない、色々な人間がいるのだ、その中には下手な暴漢などよりも倫理観が欠如した者もいる。その研究によってもたらされる惨劇はもはや語るにも及ばないだろう。それからようやく相手の興奮状態が収まったのを見るや、先程までの神妙な表情が一変、ニヤッと口角を上げるといつの間に録音していたのか『どんな依頼でも無料で』の部分をタブレット端末で再生しては、まるで悪戯っ子のような笑みを浮かべながらそう宣う姿は紛う事なきクソッタレであった。彼の言葉にいよいよ例の地点が迫っていることを知る、ここから先は自らが持参した機器の殆どは役に立たない。突入前にもう一度だけ予めシミュレートしておいた予測との照らし合わせを行ったところ、現状予定から大きく外れることなく推移しておりこの旅は順調と言えた
「問題ない。予測よりも順調だ、これがここまで走れるとは思っていなかったよ」
予め用意していたデータには不測の事態も考えていくつも下駄を履かせていたというのもあるが、それにしても懸念材料の一つであったこの移動手段についての認識は改められて、感心した様子で頷き)
……やっぱいい性格してるよアンタ。だけど何でも屋に二言はないですとも。依頼されたらきっちりと、最後まで。あ、勿論出来る範囲で。
(彼女のスッキリするまでに良い笑顔と自身の録音された声にもはや怒りは消えて、頬を引き攣らせた崩れた笑みを浮かべて横目にし。一度持ち上がった肩が緩まって落ちると、上記にある言葉をして、拒否も否定も抵抗もなく素直に了承をする。まぁ、それ程までに今回の報酬が大金すぎるというものだし、死ぬ可能性がある依頼なんてしないだろうと高を括っているだけなのだが。して彼女の続く言葉にそりゃ良かった、と適当に流しつつも続けて)
ただ、いつボスンってなっても分からないんでね。その場合はもうトラック捨てて歩くしかない。勿論そうならない様にメンテナンス、なった場合のやつとか持ってるけど…まぁ適当に覚悟しといてくれ。あ、今入ったな、多分。アラームが止まってら。
(出発する前の不安要素を口にする。まぁ流石に彼女がその可能性を見てなかったわけじゃないだろうが、見てるだけで覚悟をしてないかもしれない。警告、とまでは言わないがここで言って、いざ止まった時のショックを出来るだけ軽減するためでもある。正直、旅の中でショックで立ち止まる奴ほど面倒なものはない。慰めるのに時間がかかり、歩き出せるのにも時間がかかり、だの取り敢えず面倒なのだ。して走り続けていると車内上に張り付いた緑色のナンバーが乱れた瞬間黒く染まり、電子機器が使い物にならない磁場に入ったと示す。少し怖かったトラックは健気に走り続けていることから大丈夫だったらしい。__十数時間後。タイヤ跡のみが残る砂肌は静かに、暗く、冷えてくる。唯一の明かりは車内灯とライトのみ。多くの者が眠る時間帯。ふと横目で隣にいる彼女を見て、状態を確認してみて)
潔いな、アタシはキミのように自分の発言に責任の持てる人間は好きだよ。……さて、それじゃあ、早速だが一つ頼まれてくれ。実はなこのエリア内で一箇所だけ立ち寄りたい場所があるんだ、大体の場所はわかっているからキミはアタシの指示通りに進んでくれ、方角は…ここから南西の方向だが、方位磁石無しでわかるか?
(見苦しい言い訳や言い逃れをしようとせず、あくまでも一度口にしたことは守ると律儀な相手に、満足げに口端を持ち上げるとその潔さや良しと単純な好き嫌いで言えば相手のような人間は好きだと珍しく好意的な感情をストレートに示す。それから、早速その権利を行使させてもらおうと今の特殊なエリア内での一時的な寄り道を希望すれば一応方角を伝えて、とはいえこの強烈な磁場の影響下では電子機器はもちろん方位磁石の類もマトモに機能はしないためこの説明で理解できるかは地上に長く暮らす相手の方向感覚次第なところはあって
「ま、その時はその時だろう。とりあえず、そうだな…もしそんな事になった時にはキミに代わりの乗り物になってもらおう。うん、そうだ、それがいい」その時はその時と物分かりのいい態度を見せた…と思えば当然それだけであるはずがなく、色々頼める立場であることを利用して、まあまあ鬼畜な発言をして)
そりゃどうも…今の所嬉しく何もないですけどね。…南西ね。お安い御用ですとも。んっと今まで進んでた方角が確か南南東だから~~~~…大体この角度。何キロかによっちゃめっちゃずれるがまぁ多分合ってるだろ。…にしても唐突だな、どこに行くつもりで?
(まるで彼女の好意的な言葉には胸に響かず、逆に締め付けるくらいに不安を感じるくらいには。して早速挙げられた依頼に余裕とばかりに、ハンドルを回してアクセルに足を押しつける。まず方位磁石なんて大層な安物なんて風化してるものばかりで使ったこともない。方向感覚くらい完璧じゃなきゃ彼女のシェルターにすら辿りつけるわけないのだから。しかしまぁ、これを依頼にしなかったのは何故なんだろうと、当然ながらな疑問が浮かぶ。先ほど言ったものだがこれ位なら報酬額内に十分収まるものなのだが。だからそう聞いたのも自然な事であろう。)
…つまり博士さんをおんぶして歩けと…それならまだトラックを改造してソリにした方がマシそうだな。建造学とか持ってたりします?
(ある程度予想はしたもののまぁそうなるか、と顔に貼り付ける。いや一番良いのはこの小さな博士さんを__いや金が取れねぇからしないが。絶対に。そもそもそんな趣味もない。するならまだ良い体をしたゲフンゲフン。下品な話は置いといて。一度方位を確認するべく、暗くなった砂原の真ん中でブレーキを踏み、砂がタイヤに纏われながらも鉄塊を止まらせ、電源を切ったトラックから降りる。胸に仕舞っていたタバコを唇で食み、凸凹と錆び付いたライターの切々な灯火で灯し、吐いた煙と共に見上げると黒空に彩られた満星。先程まで目先まで闇だった砂漠を淡く照らしてくれるほどの輝き。もし、崩壊されてなければ多くの若者が携帯で見上げて全世界へと拡める位には綺麗な景色だろう。しかし光で溢れた都会は消え、空に移ってしまった光は日常。片手を挙げ、合わせた食指先と中指先との小さな差である星を探す。数秒後に見つけた北斗七星から左に滑ると北に止まり続け、照らす北極星。トラックの直線上と北方位を確認して大丈夫そうと頷けば)
ちゃんと南西に進んでるっぽいんで、ここらで寝るとしますかね。あと夜食。な~に食べたいです~?
(再びタバコを咥えて、トラック後ろに積んでた荷物を解こうと歩むついでに助席に座る彼女に言い伝え)
…キミはこの土地の磁場が何処から出ていて何に由来するものかを知っているかい?……その答えがこれから向かう先にある、どうせ知ったところで何かが出来るわけじゃない、が…まあ、心構えの問題だな
(相手の疑問ももっともで、行き先を問われるとフッと表情を緩め、これから向かう先にあるものがこの一帯の特殊な磁場の発生源だと、割ととんでもないことをなんてことない口調で語る。その上で、それそのものをどうにかすることは出来ないし別に自分自身何かを成そうとしてその場所を目指す訳ではないと付け加え、その時点で目的意識は一切なく単なる気まぐれによる寄り道であることを示しており、こういう状況でもなければ正式な依頼として頼むような事でもなかったことが窺えて
「随分な言われようだねえ……まあ、大体のものの設計は問題なく出来る、とだけ言っておこう…ただし組み立ては一切関与しないよ。アタシは技師ではないんでね」
トラックの改造の方がよほど手がかかりそうなものだが、と皮肉混じりに答えつつ、最悪の場合彼の必要とする技術は全て自分が提供出来るとだけ言っておき、一つ息を吐いて不敵に笑う。トラックの窓側に片肘ついて外の景色チラリと見てはメガネを外し、眉間の辺りを指で揉んで「…あー、別に最低限栄養さえとれればそれでいいよ。そも、そんなに選り好み出来るほど食材も豊富じゃないだろう」元々食に対して全く頓着しないというのもあるが、それ以前にこの世界で手に入る食材に味を期待していないのもあって興味なさげに食事については相手に全て一任して)
………アンタ、絶対ゴミ箱ん中カロリーメ○トとコーヒー缶とサプリ箱とビタミン剤と10秒チ○ージしか入ってねぇだろ。えなに、地下人ってこう、凄い技術で水からご飯作れるやつとか持ってねぇの?
(彼女の明らかな興味なさげにふと手が止まってしまって、荷物横から首を傾けてまるで見てきたかの様にあり得ないと風に。いや、別に彼女の親でも何でもない、ただの依頼者なのだからそんな心配など必要ないのだが。碌な娯楽のない地上で生きてきた彼にとってその食生活は勿体無さ過ぎる。お人好し(?)のお馴染みとなる唐突な使命感に駆られ、自身の為だけに持ってきたはずの燻製肉に徐に掴み、料理を始める。まず燻製によって固くなった肉を揉んで柔らかく解したところで塩胡椒を塗し、焚火に吊るした鍋底で焼入れ、切り乾燥野菜を水に浸して戻してる途中に水を鍋に注いで、塩、コンソメブロック、香り付けの乾燥パセリと調味料をふんだんに使い、戻った野菜と一緒にすれば__)
はい、あっという間に出来上がった、何でも屋製“ボ“トフ!ささっ、あったかい内にどーぞどーぞ。
(ものの数十分で出来上がった“ポ“トフを器によそい、近くに座っているであろう彼女に湯気が揺れる器を差し出せば)
まあ、似たようなものだな…別にいいだろう、作る手間もそうだが、食べるも手間なんだ。……全く、キミは存外お節介な人間だな
(普段の食について、相手のイメージは当たらずとも遠からずといったところで、とはいえ別にそれで他の誰に迷惑をかけているわけでもない。調理をするのが面倒というのもそうだが、それ以上に出来上がった料理を食べるということすらも億劫なのだと、究極にものぐさな発言をするが、そんなこちらの事情などお構い無しに、色々な食材を組み合わせそれなりに手間をかけて調理をし、提供してくれた相手に対し、余計な事を…と言わんばかりにため息一つこぼしては、ポトフの入った器受け取り
「…まあ、それなりなんじゃないかね…。思えば温かい食事ってのも随分と久しぶりな気がするよ」
表情一つ動かさず、一定のペースでポトフを食べ進めていくと口を開き感想をポツリとこぼして)
食べるのも手間ってアンタ。そりゃ一人食べてりゃ飽きるし、楽しくもなくなる。温かいものを食べることはそれこそ原始時代から行われてた営みの一つだし。根本的で簡単に幸福を覚えやすいもんだ。…背骨が痛いとか、腰が痛いとか、思考が鈍ってたりしてません?
(まるで表情を変えないようにする彼女ながらも口にするのを見届けると、そりゃよかった、と一言返し自分の分を器に注ぎ、湯気を息で拭き取りながら、舌で潰したじゃがいもを飲み込む。上記で言ったことは完全に自身の経験談ではあるものの人間である以上、体質的な違いなどそこまでないと踏んで尋ねる。彼女が言う、食うのが手間、と言うのは食事に対し、楽しみを感じていない。仕事ばかりで簡単に胃を乾いたもので満たそうとする図は易々と想像でき。)
不摂生で能率を落とすようなヘマはしない、それこそ余計なお世話ってものだよ。…まあ、でも…久しぶりに人間らしい営みを思い出させてくれたことには感謝しておこうかね
(食を楽しむという思考には永らく触れては来なかったが、かといって食事の内容次第で体調が変化することをわかっていないという訳ではなく、適当に栄養だけ摂ればとは言いつつも、相手の危惧するような不摂生による体調不良や栄養失調のような状況に陥るような轍は踏みはしないと断言し、そう言い切れる程度には相応に自己管理には自信があるようで。お節介だと言い捨てたものの、それでも久しぶりといってもいいぐらいマトモな食事を用意してくれたことには思うところも多少なりともあって、久しく忘れていた感覚を思い出させてくれたことに対して少しだけ捻くれたような、可愛げは相変わらず皆無と言ってもいい物言いではあるものの、感謝を伝えて)
最初からそう言ってくりゃ良いんですよ、素直じゃねぇな、アンタ。おかわりもあるんで遠慮なく食べてくださいな。……さて、これ食べたら寝るとしますか。車内の椅子にレバーを使って背凭れを倒せばある程度快適に寝れるんで。毛布とかも多分奥にあった筈なんで。
(色々と言葉を並べたもののやっと出てきた感謝の言葉に口元を肘裏で覆い隠して、肩を揺らし。揺れる声帯が落ち着けば、未だに湯気が揺れるポトフを掻き込み、その場を離れてトラックに乗せていた大きな袋を取り出すと、トラックの隣で細棒を組み立て始めつつ彼女に車内での説明を口にする。流石に風も防がないまま寝袋に包まり、寝るのは身が持たない。とはいえ、二人で狭い車内に寝転がるのも不健全だろう。まぁ、そもそも手を出す気なんてないのだが。こんな子供みたいな…ゴホン。そんなわけで無いよりマシ程度なものの小型テントを買い、今この場で作っており)
…っすー…穴がちょいちょいあるのはご愛嬌ってか…まぁ、布で…よし。
(穴が数点、寝転がるには少し狭い、砂地な為留め具が心もとない、など、所々不安要素があるテントであるもののこの仕事が終わるまでの辛抱なのだから、と後髪を掻いて寝袋を突っ込ませて寝る準備を)
ほっとけ、多少性根が捻くれてるぐらいがちょうどいいんだよ、特にこんなご時世ではね
(素直で優しく聖者のような人間が生き永らえるほどこの世界は優しくはない、それが分かっているからこそ地下という比較的安全圏に暮らしているとはいえ一人でも今日まで生きることが出来たのであって、素直でないのは性分だと少し不貞腐れたような表情で顔を横に向け、皿を空にすると立ち上がる。こちらが何か言うよりも先にこちらに車内で休むように言い、その上で自らは外にテントを張り始めた相手の様子を小さな岩の上に座り、足をブラブラさせながら観察し
「…女子には少しでも快適な寝床を、自分は二の次か…殊勝なことだねえ。キミのようなお人好しがよくもまあ地上でこれまで生きてこれたものだ」なんとなく相手の行動原理や考え方の一端は掴めてきたような気がしていて、仕事と割り切った風に見えてその実、彼は偏にお人好しなのだ。今回のもこちらには極力外の過酷な環境下に晒さないようにという配慮が透けて見え、一人一人自分がその日生きるのに必死であろう地上人とは思えないぐらいの甘さの持ち主だと皮肉混じりながらも、感心していて)
…まぁ、確かに、車内の方が快適。ただ、人間様だけ快適な寝床とは言い切れませんからね。あ、これ寝る前にどうぞ。
(何やら突然に自分を褒め……褒め…?いや褒めてる。そんな言葉を聞いて半笑いに肩を揺らして、出来上がったテントを撫で揺らしてはある程度の強度を確認しつつ、再びトラックの後ろに戻れば彼女に錆び付いて使用できるかさえ怪しい噴射式の殺虫剤のようなスプレーを差し出す。勿論不衛生であるために綺麗にしてはいるもののこんな限界を超えたような世界でそんな虫除けなど良いものもなく。虫も虫で、寒い場所を嫌うが為に人が寝る場所に虫有りなんて諺が出来るくらい必然的にトラックに少なくない数の蜘蛛などが巣作っている。自身は虫など非常食としてとうに慣れているものの虫などの侵入が難しい地下で生き続けた彼女が虫に慣れているのかは知らないのだが。スプレーを渡せば用は無いと、そのままテントへと入っていこうとし)
…ああ、なるほど、ふむ…興味深い
(釈然としない表情浮かべながら受け取ったスプレー片手にトラックへと戻れば、日中トラックの走行中には気にならなかったが、車中を蠢く気配があちこちにあることに気付いて、別れ際相手の言っていた言葉の意味とスプレーを渡してきた意図を理解して。地下での生活では虫を見る機会は殆どなく、こんな風に近くで虫の類を見るのは随分と久しぶりだなと虫そのものに抵抗はない様子で興味深そうに観察を始めて
「こいつはアタシが地上に居た頃には見た事がないな…新種か…この構造は参考になりそうだ」そんな風にして昆虫の観察を始め、荷物の中から引っ張り出したメモ帳に事細かに特徴などを書き出したり夢中になっているうちに空が白み始め、結局一睡もせずに朝を迎え、日が昇り始めるのと同時ぐらいにトラックから外に出て小さくグッと伸びをして)
………一応確認しますけど、寝ました?
(寝る前に聞こえた、悲痛とも嫌悪とも聞こえない言葉に内心少しの困惑を覚えつつも、慣れた冷えた砂場を寝袋を通して感じながら瞳を閉じていく。肺が膨らめば寝袋も膨らむ。凍え死ぬことはないだろうが、寒いことには変わらず思わず身を小さくしてしまう。しかし慣れというものは不思議なもので、どんな環境でも寝れるようになってしまった体はどんどんと静まって_昨夜の残りを温め直しながら、出てきた彼女を見上げるとそれはまぁ大層な不健康の隈が目下に浮かんでおり。彼女に食べやすいように具を少なめにしたポトフを彼女に差し出しながら尋ねれば)
ご心配どうも。まあ、アタシは少し寝なかった程度で身体に支障は出ない、これぐらいは日常茶飯事だよ
(一晩寝ずに明かしたことを確かめるような問いに対し、否定も肯定もハッキリとは口にしないが相手の見立ては間違ってはいないということを示すように言葉を返し、睡眠を削ることそのものは自分にとってはこれが初めてという訳ではなく、むしろ地下生活では日常的にそうであったと語り、問題にならないというその言葉通り目の下の隈を除けば特段具合が悪そうな様子はなく軽口を叩いたりと至って健康そのものといった風に、差し出されたポトフを受け取ると一定のペースで食べ進めていき)
残念ながらここは“非日常“の地上なんでね。何が起きるかもわからねぇんだから、出来るだけ休んで、食べて、いつでも全力疾走できる状態でお願いしますよ?これくらいは守ってくれねぇと。
(そんな口ぶりに激しく咎めることはなくとも、溜息を発しながら取り出した濡れタオルで顔を拭き取っていく。彼女の言う日常茶飯事があるように、地上に日常茶飯事がある。砂嵐が起きるかもしれない。今にも鼓膜を破るほどの叫び声とともに賊が走ってくるかもしれない。洪水が起きるほどの大雨が降り始めるかもしれない。実際にこれらはいつ起こってもおかしくない程にこの星は崩壊しているのだから、と保身と心配を混ぜた注意を。準備を終えれば、『せめて目を閉じて休んでくださいよ、車に乗り続けるにも体力必要なんですから』と挟んでレバーを引き、また砂面に車跡を残していき)
わかっているさ、キミはまるでアタシの母親か何かのようだな。……とにかく、アタシの身体のことは気にしなくて良い、そのことでキミに迷惑はかけるようなことにはならない
(自身の不摂生に対して軽く咎めるような相手の口ぶりをそんな風に揶揄しては軽く肩を竦める。仕事上、こちらの身に何かあればそもそも報酬も何も無くなってしまうということを危惧してのものなのだろうが、用心深く面倒見がいいのはそもそもの相手の性分のように思えて。実際、大げさでもなんでもなく地上では常に何が起こっても不思議ではない環境ではあるのだろう、しかしそれについては自身としても既に折り込み済みのことでありいつでも不測の事態に対応する準備はあると、どことなく神妙な表情で何やら言葉に含みを持たせて答えると、助手席のシートに深く腰掛けてそのまま目を閉じるが、寝息などは立てず)
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