名前は未だ無い、 2022-10-02 19:29:40 |
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(気が付けば微睡んで舟を漕いでいる、その瞬間が一番幸せかもしれない。使い古した布団とは何年の付き合いか、今晩もまた静かで穏やかすぎる夜を共にするのだ。手元の分厚い本は開きっぱなしの儘に、もう我が眼球には鮮明に映らないぼやけ霞んだ文字列を指でそっと撫ぜる。一体今何処を旅していて、どいつがどんな言葉を放ったのかすら、思い出せない。其れでも満足感だけが胸を満たして安眠へと導く其の紙の独特な香りが愛おしくて堪らなかった。そっと瞼落とし誘われる儘乗ってやるのも悪くなかろう。覚醒めればきっと一寸ばかりの後悔を感じることになるだろうことは予期しつつも夜最大の魔には逆らえず__意識がそこで途切れた。)
(突っ伏すテーブルには己の乱れ絡まった不整の髪が広がり、先程懸命に広い集め握りしめていた錠剤が散らばる。過剰摂取もいいところだ、一度に服用するとは思えぬ夥しい量の粒たちを再度寄せる気力もない儘、辛うじてカーテンの隙間から覗く月明かりを乱反射させた硝子コップは中の液体を留める機能を果たし切れず横に倒されて転がった。──先迄冷やされていた液体は冷たく皮膚に侵食する。此の儘、目の覚めること無く消えることが出来たなら。随分と身勝手で無駄な妄想である。)
......未だ、居なくはなれないのかな、
(久しく自分の声も聞いていなかったように思える。もう何晩、こうしているだろうか。少なくとも目の前に転がる錠剤二、三は無ければ地獄のように重たく長く、明けない夜が蝕むに違いないのだから、早く服用して"夜を迎え"ないと。力の入らない、震える手を伸ばして乱雑に精神安定剤を掴むと、また鮮明に眼に飛び込む、手首に刻まれた生の表明、或いは、死に際への願望。あと幾つ、夜を越えたら楽になれるのか、考える気も失せた。垂れた冷茶を舐めるようにして握り込んだ錠剤を無理矢理喉へと流し込む、───やっとだ、どっと襲う安堵と到底人には逆らえぬ睡魔が、自然と笑みを作らせた。朝日が迎えに来たって気付かないぐらいの、深い深い闇へ足を踏み入れて其の儘二度と戻れないように。心底願うように、世界へさよならを告げてしまいたい。)
...おやすみ、もう、このまま、......ず...っと、。
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ボカロ曲、「小夜子」を少しだけイメージ。最初しか書けてない
夜の描写を綺麗に書き分けたい。どんな人にだって等しく夜は訪れる。其れが、最初に表現した方は幸に感じているけれど、後者は負の印象を持っている。なんだか沢山読んで沢山書いた人の文章ならば伝えたいことを伝えるのが容易いのだろうなと羨望の念を感じずにはいられない。
やっぱり夜が好きだな。こういうセンチメンタル的感情に、抵抗なく浸かれるから。
無性にくどい描写をしたくなる。あんまり好まれなさそうだからこうやって一人でこそこそ満たしてるわけだけど。勿論、人の小説ロル見るのはもっと好き。本当に相性って大事で、読んでいて楽しいかどうかを兎に角重視してしまう。
以前書きかけてたやつメモに残してあったんだけど、十分まとまっててなぜ載せなかったのか分からず首傾げたのでもうそのまま載せます。供養ってやつです。大切だった貴方へ。捧げるつもりで、でもきっとそれは自己満足に過ぎないから。
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(それなりに冴えない一日だったなんて一人反省会も程々に、既に日もとっぷり暮れ紺の包み込む外へと駆ける。ふと一点、見上げれば電灯と見紛う光を見せる月が高く昇っていた。......嗚呼、久し振りに顔を見た古き友人にでも出くわした錯覚に見舞われる様だ。思えば無意識的に避けてすら居たのかも知れない、自身と同じく帰路に着く周囲の人々からの目は不思議と気にならなかったから、自然と苦笑が浮かぶ。序でに声に出して誰も聞かぬ間にこの想いは封印しようと思い至ったのは、誰に見せるでもない道化心からか。)
拝啓、元気にしてますか。今何処に居るかなんて、訊けもしないし訊く権利もない。要は自己満。きっと君はそんな僕を何処かで見ていて、笑い飛ばすのでしょう。それでも構わない、寧ろ、たった月を見ただけで君を思い出してしまう未練タラタラな僕のこと、君にしか笑い飛ばせないのだから存分にそうしてやって下さい。
......嘘を吐いた。やっぱり気になってしまうんだよ、月が君を連れ去ってしまったの。馬鹿にされないように、彷徨わないように、君が何処で見ていても、或いは見ていなくても、恥じない人生を歩みたい。
いつか、逢えたら運命だね。どうか、お元気で。
あの日の君へ、一歩踏み出せずにいる今日の僕より。
(流石に寒すぎたか、なんて今度は声に出して笑わずにはいられなかった。)
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