預言者 2022-09-30 14:09:19 |
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>ハロウィンイベント
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>25の投稿時間は「2022-10-23 16:46:01」なので、出てきたお菓子は「死神のパイ」です。はてさて、何やら運命じみたものを感じますね。……ただの数字の羅列に大げさかもしれません。ともかく、机の上のかごには黄色のパイが山盛りです。色からしてハロウィンにちなんだカボチャのパイでしょうか。その割には、何やらスパイシーな香りが辺りを漂っているようですが……。
何だか覚えのあるその香りに惹かれて、少女はパイを一口食べました。さくりと軽快な食感と、途端に溢れるスパイスの旨み。これは――「カレーだわ!」そう、カレーのパイのようです。……大丈夫でしょうか。お菓子の括りで良いのでしょうか。そんな心配をよそに、少女はパイを食べ進めます。仕方ありません。ライスでは無いとはいえ、好物なのですから。やがてひと切れをぺろりと平らげ、満足そうに息を吐き出したところで、ひらりと白い花弁が視界を掠めました。天井を見ても、あるのはハロウィンの飾りだけ。はて、と首を傾げたところで、胸元で揺れる髪に現れた蕾が、一瞬にしてふわりと綻びました。
本来であれば、それは水面に浮かぶ花。驚きに瞳を丸めている今この瞬間にも、身体のあちこちで睡蓮が花開きます。あっけに取られているうちに突然片目が見えなくなったので、何事かと壁にかかった鏡へと駆け寄れば、ひと際大きな花が小さな顔の半分を覆っていました。流石に邪魔なので引き抜こうとしますが、何だかちょっと嫌な感じがして、ひとまず思い留まることにします。
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どうしたものかと思案していれば、禍々しい雰囲気の老爺が突然目の前に現れました。黒のローブに、思念による移動。新しいウツギの神様かとも思いましたが、彼には他の神々のような気配がありません。ただ、どことなく親近感を覚えます。言わば、そう、同業者のような……。だからでしょうか。老爺の放った一言には、物申さずにはいられませんでした。伸びてきたしわくちゃの手をひょいと躱し、フードの下から覗き込むように見つめます。「予定にない? ……そんな軽率な行いが許されると、本当に思っている?」そう静かに発せられた脈略のない問いかけは、それでも老爺を動揺させるには十分だったようです。禍々しい雰囲気も消え去り、伸ばしていた手を力なく下げて、すっかり消沈してしまいました。そんな老爺に仕方がないなとでも言いたげな表情をした少女は「話を聞くくらいならできるけれど」と、近くの椅子を勧めます。いくら美味しいと言っても得体の知れないパイをお出しする訳にはいかないので、指を一振りして淹れたての紅茶をそれぞれの前に。もっとも、その芳しい香りもスパイスの香りで台無しなのですが。
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少女は老爺の語る声に耳を傾けます。曰く、職務に忠実なだけなのに憎まれるのは悲しい。必要なことのはずなのに嫌われるのは苦しい。――ええ、ええ、そうでしょうとも。人間は基本的に、死を厭う生き物なのですから。時に共感し、時に自身の経験も交えつつ、少女は老爺と語らいました。互いに理解者にはなれないけれど、ただ一時、どうにもならない悩みを共有することはできるのです。そうしてポットが空になる頃には、幾分かすっきりした顔の二人がそこに居ました。
老爺はお礼の言葉と共に、ローブのポケットから何かを取り出します。促されて差し出した手の平に乗せられたのは押し花の栞で、色褪せた紙と対照的な数枚の白い花弁は、先ほどから視界をちらつくものとよく似ているようです。これは一体……そう問いかけようと顔を上げたところで、少女に咲いた花が一斉に散り、世界が白で埋め尽くされました。やがて視界が戻った頃には花も老爺も消え、神様の寝床もいつも通りです。ただその手の内の栞だけが、お茶の時間が夢ではなかった事を教えてくれるでしょう。
+食べたお菓子 / 「身体のあちこちに花が咲くパイ」:死神のパイ
+得た道具 / 睡蓮の押し花の栞
そんな訳でハロウィンイベント、楽しく遊ばせていただきました…!
始めは笑えるようなお話が書きたいなと思っていたのですが、思った以上に引き当てたお菓子及びハロウィンの怪物との親和性が高く、気付けば人外談義のような様相を呈しておりました。咲いた花は白い睡蓮。花言葉はいくつかありますが、「純粋・無垢・信仰」などの言葉に加えて「滅亡」と言うものがあるそうで、終わりの神様らしいなと思って選択した次第です。
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