鍔 2022-09-23 23:31:31 |
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お買い物、ですか。勿論お供いたします!お任せください。
( 遠慮のないあんた呼びに、向けられる二本の食指。その振る舞いを不敬と称する気は毛頭ないが、謹厚な振る舞いを知っている分困惑を禁じ得ない。戸惑いつつも当然首を縦に振り、どちらが刀かと言わんばかりの返答に胸を張ってみせる。
言うだけ言ってふらりと何処かへ向かう相手を見ると、ああ自分も執務に戻らなくては──と、本来の目的を忘れてぼんやりと踵を返しかけるが、彼の質問にはっと意識を引き上げられる。慌てて後へと続き、「ご相談の前にひとつ」と前置きしてから、あの、その、と幾つか言い淀み。歩調を遅らせ少し後方から彼の姿を眺め、折り目正しい昨日の姿と頭の中で重ね合わせる。…いっそ別人だったなら納得できるのに。有り得ない夢想すら浮かべつつ、遠慮がちに問い掛けて )
昨日とは、随分、……雰囲気が変わられたように感じるのですが……
(/ わーいお許しいただけました~!池に落としていいんですね!?() 伊万里本丸の何となくのイメージですが、伊万里が主らしさを求めて迷走していることは皆さん理解している気がするので、そのことで壁ができないよう全員若干お節介気質というか、個人差はあれど積極的な子が多いといいなぁとぼんやり考えています。執務室に篭りきりな伊万里の様子をちょこちょこ見に来たりだとか。つまり何が言いたいかと言うと、先レスの通り破敵剣さんが皆に揉まれてほしいだけです…池に落とします……。
恋煩いを怪異と勘違いするのも納得の頻度ですね笑 綾女ちゃんのお話を聞いていて思いましたが、その内万事屋通りで綾女ちゃんと破敵剣さんの交流なんかもちらっとあるといいなあと…。最近監査官さんの話ばっかりしてるよ~とかバラしたいですね!!破敵剣さん、その際は猫被るんでしょうか。
いえいえ、ゴリラ故にふわっとした助言しかできず申し訳ないです。私は根が小学生男子なので可愛い子は意地悪したくなってしまうため、新規の子はなるべくつつきすぎまでは解放するようにしていますね…!つつきすぎで鬱陶しそうにする子可愛くて好きです。なので破敵剣さんのつつきすぎ最っ高ですね!!! )
( 口籠る様をきょとんと眺めていたかと思えば、漸く切り出された困惑の声にああそれか、と軽く噴き出し。腕を組みながら漆喰の壁にもたれて差し向ける笑みは、付喪神の例に漏れず美男子のそれでありながら、宛らイタズラがばれた悪童。向こうから触れてくれるならやりやすい、おまけにこの主は大人しい質のようだから、あれこれ言い訳を凝らさずとも済む。相変わらず寝癖を軽く掻きまわす余裕ぶりで当然のように言ってのけると、紫色の目を細め、首を傾げて同意を求めて)
こっちがほんとの〝破敵剣〟だ、今のうちに覚えとけ。
__政府の目があるうちは、流石にまじめに仕事しなきゃ、ってことでな。昨日までの俺はアレだ…借りてきた何とやらだよ。卯ノ花、あんたの方だって、気安い関係の方がいいだろ?
(/是が非でも池に落とした過ぎてもうめちゃくちゃ笑いましたwwww是非是非お願いします~!伊万里様の本丸の雰囲気わかりみしかないですし、この上なくほっこりチームで最高ですね…もうもみくちゃにしてくださいませ!ちなみに買い物までの間、どの仕事をさせたいとかはありますか??それ次第で揉まれ方も考えておきますので!
あっあっそれもいいですね、恋が大好きな綾女ちゃんならきっとそのあたりつっつきそう。破敵剣は最初こそ一応猫被りすると思いますが、綾女ちゃんの性格で思わず素が出るもよし、ちゃっかり賢い綾女にズバッと見破られるも良し、あとはそのうち主の身内判定して破敵剣の方から巣を見せるようになるも良し…と大いに迷っております。
やっぱり乱舞Lv2にすると絶対楽しいですよね~!思いがけずお褒めいただきにこにこしています、今はガチガチな伊万里様がつつきまくる日も来るかな…いつか来ないかな…!!)
監査が滞りなく進むのでしたら、どのような貴方でも差し支えはありません。どうぞお健やかにお過ごしください。
( ああ、なるほど──何となく頭の中でぽんと手を打つ。物心つく前から刀剣男士に囲まれていた自分には分からないが、鶴丸国永や亀甲貞宗と初めて相見えた審神者は今の自分と同じような心境なのではないか。細められた美しい双眸を見据えながら、至極落ち着いた声音で肯定も否定にも寄らない答えを返して。
「道すがらで構いません」と移動を促し、一旦止めていた足を再び動かし始めてこちらの本題に入る。…彼の言う通り、昨日よりも肩の力が抜けたのは確かだ。失礼のないようにしなければ、と自らを戒め、むっと口端を結び )
……それで、ご相談なのですが。監査官殿、戦はお好きですか?監査官殿の育成方針のためにお答えください。
(/ 今回の伊万里の質問に対する答えにもよりますが、まずはお一人で函館3周ほどしていただく予定です。桜付けは大事ですね!その後は答え次第で出陣か内番かに振ろうかと思っていますので、何かご希望がございましたら何なりとお申し付けくださいませ。何も今すぐ池に落とすつもりはございませんのでご安心を~!
最後のは伊万里が若干妬く気がしますね~!それも良し!可愛げのある妬き方はあまりしなさそうですが。普段伊万里に振り回されがちですので、存分に意趣返ししてやってくださいませ。
特に用もないのに執務室でぐーたらされたりしたら、今の段階でも割と起こりそうな気が…します…!「監査しないんですか?」「それ監査なんですか?」「どういう監査なんですか?」「監査?」「監査?」と純粋につつきすぎそうです。寧ろ仲が深まってからの方が、これはのんびりしてるだけだなぁ…と放っておくんじゃないでしょうか。理解度ですね。)
( 返された答えに満足気に頷いて、主に促されるまま、朝特有の静けさに満ちた本丸内を広間の方へと進んでいく。
真横の主が、余計な緊張こそ霧散させつつ、心做しかきりっとした声で改めて問うてきたのは、これからの己の身の振り方。途端口許ににんまりと弧を描いて、「俺は『破敵剣』だぜ。戦が好きに決まってんだろ?」なんて大胆不敵な発言を。
元々護身用の剣として作られた己どもは、敵を打破することを何より好む性分である。戦に回されるのに否やなどある筈もない。とはいえ__それ以外に気になることがあるのも事実で、先程までのざっくばらんな雰囲気を少し潜め、真剣さを取り戻した横顔で此方からも頼み込む。この本丸の監査のために、己が政府のもとで培ってきた練度__刀剣としての強さは、一度初期化されてしまっている。強敵を斬り伏せるあの快感をまた味わうためにも、一刻も早く、まずは特になりたいものだ )
真面目な話よ、他の連中と隊を組んでもまともに動けるようじゃないと、監査もままならないんだよな。遠征だって、ある程度体力つけなきゃ行き来できない時代ってのがあるだろ?
だからとりあえず、ばかすか出陣させてくれ。敵の親玉をどんどん斬って、手っ取り早く強くなってみせるからよ。
(/畏まりました~!それでは早速提案でして、
桜付け周回3回目の後、全身血まみれで帰還する破敵剣→話を聞くと、本来出現しないはずの検非違使が登場したという→幸いバグ検非違使は雑魚だったので皆倒せた、浴びているのも実は殆ど敵の返り血→ただし軽傷は負っているため、手入れと薬研の診察後、大事をとって出陣の予定を内番に変更→しかし、本来出陣したかった破敵剣はことごとくサボりたがり、15時になると待ってましたとばかりに抜け出す
なんて流れはいかがでしょうか??雑魚相手とはいえ多対一を制した破敵剣の強さの手っ取り早い証明だったり、霊力の乱れについて最初に露見したケースにできたり、早速素の怠け癖があらわになったり、色んな過程で本丸の皆と大騒ぎできそうだったり……兎角あれこれ盛り込んでみよう!という試みなのですが、詰め込みすぎでしたら遠慮なく待ったの声をば…!
普段空回り気味ながらも基本落ち着いてる伊万里様がヤキモチ妬いてしまうの絶対可愛いじゃないですか即採用です…でもでも、振り回しているのは自由人な破敵剣も同じですので、伊万里様の方もまた、主の立場を存分に活かしてやり込めてやってくださいね。
そしてつつきまくり伊万里様、天然炸裂しててこれまた可愛い…!これ意地悪でもからかいでもなくて、純粋な質問責めなんだろうなあ…それがやがて問わずとも推し量れるようになるのもまた味わい深くて最高です。逆に破敵剣の方は、伊万里様のことを好きになればなるほど構いたがるようになりそうなイメージがあります。キーボードの上に乗ってくる猫のアレですね。慣れてくると執務室の扉をスターン!と開けて、「卯ノ花、寒ぃ!」なんて一言だけで説明は充分とばかりに、執務中の伊万里様を後ろからすっぽり包んでぬくぬくしたりしそうです。刀剣男士の本丸ボイス同様、審神者の執務室ボイスなんてのを彼ならたくさん引き出せそうで、今から冬本丸が楽しみになっております…!)
好都合です。こちらとしても、ある程度の練度に到達するまでは早めに経験を積ませるつもりでしたから。
( 口許に浮かぶ三日月を見上げると、なるほど、と短く相槌を打ち。出陣に対する気遣いは不要らしい。このような形の監査として派遣されたのだから当然か。監査官として、破敵剣として、述べられる意見を口を閉ざして聞こ終わり、間を置かずに肯定を返す。監査のことを別としても、ここまで意欲的な刀剣男士を燻らせておく気は毛頭ない。
とはいえ彼は政府から借り受けた大事な刀剣なのだから、意識して丁重には扱わなければ。まずは軽く函館を──わざわざ貴重な精鋭兵や銃兵を引っ張り出す必要はないだろうか、しかし疲労度を考えれば銃兵は一つくらい積ませても──、悶々と考えながら若干上の空に連絡事項を簡単に告げる。すぐに去らずに未だ彼の後ろに続き、何か言いたいことはありますか、と言わんばかりに横顔を見上げて )
……とはいえ、初めの内は慎重に。歯痒い思いをされるかと思いますが、どうかご容赦ください。
監査官殿の準備ができ次第で構いませんので、後ほど執務室にお越しください。その際は戦装束のご用意を。
(/ 勿論異存などございません…!!色々と詰め込みつつも違和感のない流れで、毎度のことながら展開作りがお上手で感服いたします!ちなみにロルとしてはどこから描写いたしましょうか。今回執務室に呼んでいる件については、まずは函館回ってね、ハイこれ刀装、程度のやり取りを想定しているため割愛でも何ら問題ありません◎
個人的に伊万里には、刀剣男士を恋愛対象として全く見ていないレベルのバカ真面目さを期待しているので、自分の中でわけもわからず妬いててほしいですね…!それこそ夜に一つの布団ででも寝ない限り意識はしないと思うので、そういう意味でも猿夢がとっても楽しみです笑
破敵剣さん猫じゃないですか~!!かわいい!!歌仙さんとか長谷部辺りにべりべり剥がされてそうですが、伊万里も伊万里で動きづらいけど温かいから満更でもなかったりするといいですね。暖かくなるにつれてひっつかれる頻度が減ってちょっぴり寂しくなったり。懐っこいお猫様感ありますね。)
( 懇切丁寧な物言いにもただ鷹揚に頷いて、「あいよ」となんとも軽い返事を。この主はその言動こそ慎み深いが、頭もお固いわけではない、そこが気楽で良いところと、二日目にして心得つつある。
「んじゃ俺、朝餉貰ってくるわー」と先ほどよりも小さな欠伸を再びまろび出させて、背を向けたまま手をひらひら、他の刀剣たちが食事や配膳を行っている朝陽差す広間の中へ。昨夜とはまるで様子の違う己に、場にいた一同皆困惑顔を見せたのは言うまでもない話。
その後、贅沢にも銃兵を借り受けて函館に出陣し、三度目のそれから帰還したのは日が真南まで昇った頃。七人乗りの転送ポッドから一人本丸に帰還したその姿は、けれども、血の満ちた大桶をひっくり返して頭から被ったような、おどろおどろしい深紅に染まって。
たまたま出迎えた乱が絹を裂くような悲鳴を上げ、顔を覗かせた今剣も「あ、あるじさま!あるじさまー!!」と転がるように駆けていき、すっ飛んできた陸奥守も「いったい何事じゃ?!」とぎょっとした顔をする。されど構わず、血を滴らせながら本丸のほうに歩いて行き、自身の凄惨さにはとりあわずに、にかっとした笑みを )
悪ぃ悪ぃ、何か知らんが検非違使が出ちまったみたいでさ。
(/良かったです、それではその方向で進めますね~!お言葉に甘えて、早速刀装受け渡し・函館出陣は割愛し、桜付けから帰ってくるシーンまで飛ばさせていただきました◎その後わちゃわちゃしてから内番の日常風景を飛ばし飛ばしで描写、からのお買い物を楽しめればと!
本丸の皆も主がそういうお方だと知ってるからこそ、恋煩いを怪異の仕業と取り違えるわけですね…今まで背後様と話してきてなんとなく、既にいた刀たちは伊万里様と家族のような距離感なのだろうなとほこほこしております。特に歌仙さんと長谷部の二人が、父親のような兄のような護衛のような立ち位置である事は、背後様の中でも同じイメージのようで良かったです◎責任感ある二人して、外部出身だからこそ遠慮なく主にちょっかいを出して回る破敵剣に青筋を立てつつ、主自身の気持ちも察して頭を抱えてたら面白いですね…!
さてさて、破敵剣と伊万里様の関係についてや、この先のストーリーについて、はたまた原作ゲームについてなど、楽しいお話をありがとうございました!相談も一通り片付いたかと思うので、この辺りで背後は一度お暇しようかと思います。もちろん、雑談も相談もいつでも大歓迎ですので、何かの折のお声がけはお気兼ねなくおいでください◎こちらからもまたお世話になりに参りますね…!!)
( 函館程度では些か不満げな彼のため、この後は随伴として何振りかつけて軽く鳥羽にでも。監査官殿は初陣同然なのでなるべくお守りするように───そんなことを言い付けながら、出陣を見送るべくポッドへと向かう最中、「あるじさま、あるじさまー!!」バタバタと駆けてきた今剣の高い声。腰にへばりつく小さな体を抱きとめ耳を傾けるが、どうにも要領を得ない。後ろに控えた男士に一先ず取り乱した今剣を任せ、その中から歌仙だけを連れて歩調を速めるにつれ、わーだのきゃーだのと聞こえてくる叫喚にキリキリと胃が痛む。大きな虫でもいてくれたら気が楽だったが、次第に視界に映るのは赤黒くぬらりと光る塊───監査官。くらりと目眩がする。その姿の凄惨にではなく、政府から貸与された監査官をたった二日でこの状態にしてしまったことに対して。「彼は僕たちで何とかしておくから、きみは執務室に、」と何やら気遣いの言葉をかけてくれる優しい初期刀を他所にふらふらと鮮血迸る彼へと近付き、既に漠然と必用資源の計算をしつつ芯のない声で呼び掛ける。ふと違和感を覚えたのはそのときで、その身を覆う赤に清らかさを感じない。目を細めてじっと見遣り、もしや、と当たりをつけると訝しげに問い掛けて )
───…いえいえ、いえ。手入れ。誰か、…いえ、私がお連れします。大丈夫ですから、……あれ?
……監査官殿、手入れ部屋まで歩けますか。
(/ 畏まりました~!手入れの後は暫し日常風景をお楽しみくださいませ。こちらも背後は失礼いたしますね。長らくのご相談と雑談のお付き合い、心より感謝申し上げます!また何かございましたらいつでもお声掛けくださいませ。)
おう!見てくれだけは派手だけど、この通り何ともないからな。
( 呆然とした様子で話しかけてきた声に、薬研の質問攻めを制して背後を振り返る。其処にいたのは蒼白な顔をした主、卯ノ花。しかし何事か気づく素振りを見せ、探るような問いをも寄こしてきたので、此方もあっけらかんと元気の良い返事を。
何ともないわけがないだろう、と意外にも心配そうに眉根を寄せる初期刀に、いやいやマジだって、と肩を竦めてから、ぶわり、噴き出させた神気によって、全身に浴びた邪を払う。途端、狩衣から滴り落ちる血はなくなり、肌を覆っていた真っ赤な痕も蒸発するかのように霧散。あとに残るは肌に走ったごく軽微な切り傷のみ、それが己の実際の負傷のほどで。
ぽかんとして立ち尽くす刀剣たちの事は構わず、身振りによって主についてくるよう示すと、履物を脱いで本丸の中へ。昨日教わったばかりの手入れ部屋の方角に向かいつつ、道すがら主に説明を。しかしそれは、この本丸の成績不振の原因を探るために来た厳しい監査官の筈でありながら、類例のない異常現象を明らかに面白がる口ぶりで )
函館なのによ、なぜか検非違使どもが出やがったんだよな。一対六はこりゃやべえと俺も一瞬焦ったけど、幸い向こうも、なんで自分らがこんな場所に?ってな間抜けヅラで困惑しててよ。その隙に銃兵が先制攻撃してくれて、あとは畳みかけるだけだった。ま、圧勝だな。
__今までにも、こういうことは?
( 血が霧散し本来の姿が露わになり、僅かばかりの傷が目に入って尚波立つ胸中は静まらない。主人の内心とは反対に、その見目の凄惨さが収まれば周囲の熱は徐々に引いていき、渦中の人がそそくさとその場を去れば殊更。彼らの主として解散を各自に告げることでわらわらとお開きとなっていった。何かと同伴したがる初期刀にを制し、手入れ部屋へと爪先を向けて。
事の顛末を楽しげに話す様はどこか稚い。またしても悪さをする己が霊力が酷く恨めしく、耳は傾けつつも、視線は何度も床へと落ちていく。気を紛らわせるように廊下の板目を目でなぞっていたが、発言の語尾に疑問符がついたことに気付くと数テンポ遅れて顔を上げ、努めて落ち着いた声音で答えを。そうしている間に着いた手入れ部屋の戸を開け、室内へと入るよう促して )
────以前にも、数度。片手で数えられる程度ですが。函館に現れたことはありません。……まさか函館には現れまいと、勝手な先入観を抱いていた私の落ち度です。
監査官殿、お入りください。
( どーも、と軽い声を返して、掃除の行き届いた明るい手入れ部屋の中へ。狩衣を解いて楽な肌襦袢姿になると、重傷者用の床には向かわず、隅に積み上げられていた座布団の山から二枚拝借。ぼすぼすと適当に投げれば、片方にどかりと腰を下ろし、慣れた様子で袖捲り。時の政府にいた頃だって、専属の医官に幾度となく世話になったのだ。
大人しく手入れの作業を見守りながらも、先ほどの何処か食い締めるような声音を思い出し、あくまで明るい言葉を紡ぐ。着任してからまだ半年、そんな新米審神者なら、学ばねばならぬ事柄もまだまだ大量に待ち受けていよう。ただでさえ常日頃激務に圧されているというのに、本来あり得ぬ不測の事態にも完璧に対処せよなんて、土台無茶な話。これから原因を突き止めるためにも、まずは落ち込みを和らげようと )
成程なあ、条件を満たしてねぇのにしゃしゃってくる検非違使なんざ厄介以外の何物でもねえわな。ましてや函館に出るなんて、誰も予測できねえよ。
だから主、別にあんたが気に病むことじゃない。
いいえ!お気遣い痛み入りますが、私には無用です。そもそもの原因は私の霊力の乱れなのですから、自らの不甲斐なさから目を背けるなど言語道断!
( 手入れ部屋の戸を閉め、恙無く行われる手入れの様子を足を揃えて眺める最中、掛けられた洒々落々とした慰めの言葉を噛み締めるために数秒の間を開け──噛み締めた上で否定を強く返し。可能性を知っていた以上、無知であることを言い訳にはできない。現状を正しく捉え、適切な判断を下すことこそが上に立つ者の務めではないのか。何よりも、何よりも許しがたいのは、出陣していたのが〝私の刀〟でなくてよかった、などとほんの一瞬でも考えてしまったこと。内臓が竦むような嫌悪感を覚えて強く瞼を下ろし、暫し自らを宥めるように強く袖を握って口を噤み。
ふ、と小さく息を吐く。何も言わず抜き身の本体へと静かに近付き、衣服の裾を整えて腰を下ろし、慣れた手付きで?を外せば真っ直ぐな刀身に室内の灯りが反射し、鈍い鋼の色に光の筋が入る様を目を伏せて眺め。少しの間の後、奉書紙を手に軽く汚れを拭い、ムラなく均等にと打粉を塗していくにつれ、次第に忙しない胸中が落ち着いていくのが自分で分かる。刀身に映る己と向き合ったまま、その丁寧な手付きに見合った声音でぽつりと零して )
皆、私を責めません。未熟であることは紛うことなき事実です。私だけは私を責めなければ、そこで歩みが止まってしまいます。
(/ も、文字化け……!描写内の?部分は「ハバキ」と置き換えてくだされば幸いです。訂正のみですのでお返事は不要です、大変失礼いたしました~! )
( 語気を強めての否定におや、と視線を向ける。目の前に座す主殿は、宛ら何かをこらえる様な、幾つかの感情が複雑に入り乱れる顔をしている。黙ってじっと見入るうちにその緊張はふと緩められ、己の本体である剣にに白い砥粉がはたかれていく。癒えていく己の肉体、しかし反対に、主の心は暗く沈んでいくようで。
やがて小さく落とされた声。違和感に目を細くした。今のはまるで、会話相手である己ではなく、卯ノ花彼女自身に語り掛けていた様に聞こえる。なにか、暗中に囚われているのだろうか。
首の後ろをぽりぽり掻いて「…言うことはわからないでもないけどなあ」と、暫くの間の後に漸く相槌を。それから、胡坐をかいた両膝を掌で「うっし!」と叩く。軽傷であることを踏まえても手入れは案外すんなり終わった。ならば、いよいよ他の連中と一緒に合戦場に向かおうと )
未熟であることそれ自体は責めるもんでもないだろ。未熟なまま成長しようとしなけりゃそれは困りもんだろうけどよ__ま、あんま自分を責め過ぎんなって話だ。
んじゃ主、俺また行ってくるわ。隊長誰か忘れたけど、第二部隊と合流でいいんだよな?
( 軽く拭い、刀身は油塗紙で薄く平に油を纏わせ、茎の部分は掌で優しく撫でるように、そうして塗布された丁子油で徐々に反射光がまろくなっていく。あとは元通り丁寧に拵を整えると満足げに眦を細めて眺めていたかと思えば、そのまま胸元へと引き寄せ、本体を包むようにそっと抱き締める。大丈夫、大丈夫、と小さく唇を動かし、抱き枕を抱えて眠る子供のように身を寄せて。
浅ましい償いは他ならぬ本人の声で中断される。まるで存在を忘れていたように身を跳ねさせ振り返ると、何やらやる気満々の様子に対してぶんぶんを首を横に振り、またしてもしっかと本体を抱きかかえる。今回の意味合いは彼に渡さないという意思表示のためだが。出陣前の様子からして不満の声が上がるだろうと当たりをつけ、決定事項だと言外に伝えるようにぴしゃりと言い放ち )
……いえ。いえいえいえ、駄目です。今日の出陣は中止!また妙なことが起こっても困りますから。
監査官殿は慣れるためにも内番に回っていただきます。指導は歌仙に任せるつもりですので、彼が来るまでお待ちください。
え、ちょちょちょ待てって!そりゃねぇだろ、いいじゃねぇか別に!
( この子は渡さないと言わんばかりに取り上げられた磨き立ての本体。それ即ち人質だと理解して、ぎょっと声を上げ胡座を崩す。
主の命に逆らわぬのが刀剣男士というものである、されどこれはあんまりじゃないか。漸く幾歳月ぶりに、函館のようなぬるま湯ではない本物の合戦場に出られると思っていたのだ。其の為ならと大人しく桜付けに甘んじたし、検非違使の奇襲だって単騎撃破した。だのに主は、有無を言わさぬ口調を用いてまで、内番に回れと仰せになる。己は褒美ではなく罰を賜る!
当然受け入れられる訳がない。片膝を立ててぎゃあぎゃあ騒ぎながら迫る。己の剣を取り返そうとあちこち手を伸ばすも、主の意志は固く、虚しく空を切るばかりだったその時。
手入れ部屋の戸をぱんと開け、現れたるは白衣の薬研。「なあたいしょ、監査官の様子は…」と何気なく下ろされた短刀の視線が、身を守る主君の少女と、それに迫る新入りの妙な男…剰え、主の胸元へと伸びる無骨な掌に、ぴたと留まって凍り付けば。
必然、「__歌仙っ、こんのすけえええっ!」と、本丸中に怒号を響き渡らせながら取り押さえられる騒ぎとなって )
あくまで私は慎重に、監査官殿の身を案じて、……な、何ですかその手は───ッだ、駄目です!それが監査官の仰るお言葉ですか!
( 予想通りの反応に内心で得意げに鼻を伸ばし、何やら喚く彼とは反対に淡々と理由を述べるが、相手が姿勢を崩せばこちらもぎょっと身を強張らせる。後退ろうと正座が崩れ、落として傷でも付いたらいけないと余計に剣を抱え込む中、次第に彼の抗議に腹が立ってくる。今回の采配は何ら間違ってはいないはず。だというのに破敵剣として駄々を捏ねる相手に、つい声を上げてその任を思い出すように叱責を───したはずが、立場を利用し審神者に迫る悪徳監査官を拒む台詞になるとは夢にも思うまい。
数分もしない内に、歌仙と長谷部を筆頭にして怒号を聞いた男士が集まり、第二波として野次馬がちらほらと。「大なり小なり無体を働かれたんだろう?」「言いづらいかもしれないが、本当のことを言ってごらん」「庇う必要なんかないんだよ」「僕にだけでも構わない」「辛いようなら部屋を変えようか」…怒りを抑え、心苦しげな表情で寄り添うように問うてくる初期刀に、ひいてはこの場にいる男士全員に聞こえるように一つ一つ述べる。特に無法者の身を地に伏せ取り押さえながら、未だ憤りに肩を振わせる長谷部の耳に届くように。この現状、手に渡らないよう胸に抱くべきは長谷部の本体かもしれない。
被害者兼弁護人として被疑者の擁護を続けながら、手入れ部屋の床にべしょりと潰れる憐れな悪徳監査官の姿を一瞥し、またしても目眩を覚えそうになる。…これも政府に報告されるのだろうか。「取り敢えず長谷部は退きなさい」と一言命じるが、「ですがこの男を野放しにしておくのは、」と渋るのは想定内。側に屈むとバツが悪そうに表情を覗き込み、どうか変なことは言わないように、と視線で促して )
…────だから、誤解です。何もされていません。いえ、庇ってなんか。監査官殿が襦袢姿なのは手入れ中だからであって、……ああ、もう。誤解が解けるまでは私も動きませんから。
監査官殿からも何か仰ってください。理性的なお言葉を。
( 解せぬ。あれから数分後、仮にも元怪我人、それも昨日赴任したばかりの監査官であるはずの己は、ぶすくれた顔のまま、めり込みそうなほどの圧をもって、床にがっちりと押さえつけられていた。おまけに周りを、遠征に出ている連中以外…つまりは十振以上にもなる大小さまざまな刀たちに、ずんと取り囲まれていた。
己を壁際から見下ろす加州は、「女の子に乱暴するなんてサイテー………」と塵を見る目を向けてくる。この本丸の刀たちの頭、初期刀の歌仙は、本気でいたわしそうに主の身を案じている。己がいったい何をした?己の方こそ被害者だろう。だのに、上からぎりぎりねじ伏せてくる厳めしい打刀ともなれば、怒りが高じて呼吸を激しく乱しながら、何やらどす黒く息まく態度だ。決めた、こいつは絶対にへし切呼びで固定してやる、なんて思ったその瞬間、己の頭を掴む手に更にぎちぎちと力が加わる。割と本気で痛い。
そうして暴れようもなくがっちがちに取り押さえられていると、そばに屈んだ主から、何ともありがたいお言葉が。恨みのこもった半目で見上げ、無理やり頭をふって長谷部の手の力を緩めさせ。「俺のどこがけだものだったって?」と、すぐさま噛みつくような開口一番。「戦に出してくれるって約束をこいつにポシャられたんだよ!だからそりゃおかしいって言い返してただけだろ!」と、主の優しい願いも空しく、ぎゃいぎゃいと反抗的な物言いを改める気配はなく。
己の後ろで薬研、安定の気配が真冬のように冷えていく一方、同田貫が何の感慨も交えずに、「なんだこいつ、監査官が来るっていうからどんなのかと思ったら…ただのクソガキじゃねえか」と呟きを。「こいつ、本当に政府の派遣か?」と疑ぐる和泉守。「主、良かったら今日の内番は私が彼を監督しようか」と落ち着いた声で石切丸。「手合わせならいいぜ!」と傲慢に要望を出せば、「俺がお相手致しますよ」と真上からにこやかな返事、しかし己の項はぴりぴりと殺意を受信。ひゅ、と喉を鳴らすと、今ばかりは手合わせは御免だと懇願する紫の目を、冷や汗を流しつつ審神者へと向けて )
( 漕ぎ出でた小さな助け舟がみるみる浸水しずぶずぶと沈んでいく。差し伸べられた手が払い退けられれば更に反感を買うのも当然の流れで、四方から聞こえる諍いの声に軽く額を押さえて困り果て、どうにかこの場を収める鶴の一声とやらを模索してみようか。
──そもそも、約束を破った自分が悪いのだろうか。こんなに喚き立てるほど戦に行きたがっているのなら、本丸に縛り付けておく方が酷い審神者なのでは。しかしまた検非違使が、例えば今度は霊力の乱れが原因で高練度帯の検非違使でも現れたら?いやいや、矢張り出陣の中止は間違った判断ではないはず。ではどうしてこんなに責め立てられるのだろう。頑として断るにつれ監査官殿の抗議の声は大きくなる一方で、その分皆の心象も悪くなって、彼が本丸に馴染めなくなる。空気が悪くなったのは全て自分が約束を破ったからなのでは。軽く出陣させてやればこんなことには、いやしかし、でも。
暫しの長い思案のあと、「あの、」と一言。男ばかりの狭い部屋でソプラノが良く通り、一斉に視線が集まり──そして一斉に「うわ」だの「げ、」だの、息を呑む音だのが室内にぽつぽつと広がり、先の喧騒が嘘のように静寂が空気をぴんと張らせる。その理由は浮かべていた表情にあり、窮する胸中がそのまま表れたような兎角余裕のない緊張の顔に、脂汗まで滲む始末。見る者によっては泣き出す一歩手前にも見えただろうか。
当の本人は途端静まった室内に疑問符を浮かべて軽く見回し、状況は掴めないながらもこれ幸いと口を開き。「まず監査官殿の上から退きなさい」「監査官殿を手合わせに配する気はありません」「同田貫は彼の気持ちが多少なりとも共感し得るでしょう」「石切丸…お願いしてもいいですか。なるべく無理強いはしないであげて」反応も待たずに次々と言葉を続け、最後に窘めるように長谷部の腕に手を重ね、何か言いたげに口を結ぶ彼に対し「あとで頼みたい仕事があるので、執務室に来てくれますか」と眉尻を下げてみせ。喜色を浮かべて首を垂れる彼の腕が緩んだのを確認すると、次に視線が移るのは件の監査官へ。目の前に剣をそっと置き、言葉に迷って暫し視線を彷徨わせ、目を伏せたまま精一杯の気遣いを )
……三時の予定は、少し早めましょう。いつでも構いませんから。
( 主の顔の変化を見て、己も同様に「…げっ」という反省の声を。先ほどまであんなに威勢良く吠えていたのが、花の様な少女を困らせて泣かせかけていると見るや、慌ててその矛を収めたようで。ぴたり押し黙ったまま、事の流れを注視する。
主は一同の似たような反応に困惑した様子を見せながらも、てきぱきと次々に主人らしい適切な指示を。皆大人しくそれに従い、おかげで漸く解放された己も、静かに体を起こしはするが、もう暴れたりはせず。返って気まずそうに横を向き、痛めた肩を控え目に揉みほぐす。
剣を置かれるとまずそれを見て、次に甚だ居た堪れなさそうな自業自得の表情を顔をちらりと主に。流石にこうなっては強情に我を通すつもりもない。とは言えど、これは早急に多少の挽回が必要と見て、俯き項を掻きながら「あー」だの「ンン……」だの煮え切らぬ声を幾つか。やがて決断、歌仙や石切丸の方を先生に睨まれる悪餓鬼の様に首を縮めて一瞥しながら、なんともしおらしい懇願を )
そいじゃ、軽装に着替えてくるから、この後すぐ頼むわ。あんたに都合してもらう用事だから、さっさと終わらせる方がいい。…………その後の内番は、あー、何でもするからよ。
……??わ、わかったら解散!一日に何度も集まりすぎです。
( 油を絞られたような皆の反応に未だ違和感を覚えながらも、数度手を叩いて本日二度目の解散の合図を。 手入れ部屋の戸を大きく開けてやり、そこから出て行く刀たちの窺うような視線が度々刺さる。…そんなに怖い顔をしていただろうか。
残ってくれた石切丸に何度も感謝を述べ、その人好きのする笑みに胸中の焦燥が剥がされていく。太刀以上の間合いの、あの安穏とした年長者たちがもう少し多ければ、今回の騒ぎも多少は角が立たなかっただろうか。主、と呼ぶ歌仙の声でふと我に返る。視線で示される先には何とも居心地の悪そうな監査官──というより、破敵剣。気まずげな喘ぎの後、続く言葉には一瞬表情を歪めるが、堪えて首肯を返す。言いたいことは色々とあるが、続きは買い出しの際としておこうか。短い言葉で会話を切り上げると、歌仙を連れてそそくさとその場を立ち去り、完全なるお開きとして )
ええ、問題ありません。ポッド前でお待ちしています。
( 私室に戻る道すがら、曲がり角の辺りで震えながら手入れ部屋を見ているこんのすけに蹴躓いた。わひゃっと変な鳴き声をあげた管狐をいぶかしんで目線の高さに摘まみ上げ、どうしたよと尋ねてみると、男士たちが仰々しい様子で駆けていき、乱暴な物音もしたので、怖くて近づけなかったとの話。あー、そいつはもう解決したぞ、と白々しく言ってやると、霊狐は明らかにホッとした顔を。床に下ろし放してやり、さにわさまさにわさま、とぴょんぴょこ探しに行くのを見送る。この本丸のこんのすけは気弱な性質の個体と思えた。それはそれで扱いやすいが、ああいうのに限って、審神者の危機と聞きつけるなり大きく動いて厄介になる。やっぱり油揚げ買っとかなきゃなあ、と頬をぽりぽり掻きながら私室へ。
二分もせずに着替えると、外にある転送装置の方へ。いくら何でも人目に触れるからという事で、二十代の若者らしい、そつのないミリタリーファッションに身を包んでいる。大きな襟にファーのついた迷彩柄のジャケットは、愛用の一着だ。遠くから主の方に手を上げて挨拶を。手前のパネルに掌を触れて退城記録をとると、さっそく中に乗り込んで )
悪ぃ、お待たせ。それじゃ行こうぜ。
( 軽く身形を整え、一足先にポッドの前で彼を待つ。血塗れの彼を見たのがもう何時間も前のことのように思えた。心ここにあらずといった様子で、空を眺める雲を目で追いかける内、視界の端で手を振る暖かそうな姿に軽く会釈を返して。普段よりももたつく手付きで行き先を万事屋通りへと設定し、ふっと周囲の景色が歪み移動が始まると、監査官殿、と小さく小さく呼び掛ける。思っていた以上に声量が出ず、直後に咳払いを。何から言えばいいか分からず黙りこくってしまいそうで一先ず見切り発車で口を開き、言葉を続けるにつれて自らの頼みが身勝手であることを嫌でも自覚すると睫毛を伏せ、瞳に影を差したまま嘆かわしげに俯いて )
ご意向に沿えず、申し訳ありませんでした。どうか、あまり、……皆のことを厭わないでいただけると幸いです。好きになれ、とは言いませんので。
( 低く波打つ電子音に紛れ込む、聞き漏らしそうな程か細い声。一度瞬きしてから僅かにのみ横を向くと、喉を震わせた主の口から、切れ切れに言葉が紡がれた。その意味するところをややあってから理解すると、紫紺の目が思わず揺れて、他方に其れを落とす。
主に対しああだこうだと言い立てたときの毒気など、あの泣き出しそうな顔を見た瞬間、疾うに何処かへ消え失せている。だから罪悪感を抱くのは、本来己でなければならぬ筈。だがこの奇妙な気立ての主は、またも自分の非を詫びる。それも心の奥底から、こちらに許されたがる様子で。それでこんなに胸がざわつくのなら、いっそ己の非を詰ってくれた方がまだましだったのだと気付く。されどこの苦しい事態は、己の幼稚さが招いたものだと、心のどこかで自覚してもいる。自業自得な苦しさに、ぐるぐる思考が行き詰まる。
とはいっても、気まずい沈黙が装置の中に充満するのもこれ以上は耐え難い。あー………と煮え切らぬ声を出すと、重心を外側の片足に移し、頭をがしがし掻き回してながら言葉探しを。言い終わることには転送完了の音が鳴り、青白い光の壁が薄らいで万事屋通りの風景が広がって。)
……………別に俺は、あんたの本丸を監査しに来ただけだからよ。あいつらについても、あんたについても、好くも厭うもねえ。できることをするだけだよ。
……味気ないものですね。
( 互いに口を閉ざした重苦しい沈黙の中、そろりと、上目に表情を窺う。何ともバツの悪そうな表情は、その胸中の複雑さを有り有りと表していて、幼稚さと良識とが入り混じる破敵剣とやらの人格を何となく理解できた。ああ、と口には出さずに心で呟く。彼も例に漏れずとても良い子だ。しおらしく謝るのは本当にお灸を据えたいときに限った方がいいかもしれない。心寂しい返答をもらう頃には表情に穏やかさが戻り、侘しさを感じない声音で独り言のように零して。
丁度景色が切り替わる。先導するようにぴょこぴょこと軽い足取りで数歩進んで振り返り、当たり障りない質問を一つ。もう気落ちしていないことを伝えるためにも顔を上げて柔らかな笑みを見せ )
ところで、監査官殿は何をお求めに?
( 振り返った主はもう、困っても、落ち込んでも、申し訳なさそうにしてもいない。それはあからさま過ぎるほどほっとしたひと息を誘ったが、当然自分で気づかぬまま、己もまた軽い足取りで装置の外へ。
昼下がりの万事屋通りは丁度客のかきいれ時。目の前の広小路は、老若男女様々の審神者やそのお伴、若しくは本丸からのお使いや気晴らしに来たと見える刀剣男士たちで賑やかにごった返す。
主と付かず離れずの距離でその群れの流れに混じると、先ずは右方に大きな看板を掲げている老舗の文具屋へ。襟を片手で軽く広げて数少ない私物を示しながら、掲げた食指を左右に揺らし、必要なものの数え上げを )
雑貨諸々、ってとこだな。政府の施設を出る時に持ち出し許可を出されたのが軽装くらいのもんでよ、報告用の文鶴なんかは現地調達しないとなんねぇ。
他にも筆だとか硯だとか、記録用の古紙だとか……あと、手拭いや綿入れなんかも買い込んでおかねぇと。
( 彼の表情の遷移を見れば心を擽られるような心地を覚え、妙な表情の緩みを堪えるために内頬を噛む。このまま本丸に馴染めないのではないかとも思っていたが、きっと問題ないだろう。歩調を遅めて先導を彼に譲り、真昼の万事屋通りを賑わす一員と溶け込んでいき。
──それにしても、普段万事屋通りに赴く際と何ら変わらない。彼を連れて出歩こうものなら、きっとじろじろと四方八方から視線が刺さり居た堪れない思いをすることを覚悟していたのだが、近代刀かと見紛う服装もあってか随分と紛れ込んでいる。もしや刀剣男士とさえ気付かない者さえ多いかもしれない。だからこそはぐれないようにしなければ、と保護者気取りで息巻き、さして気にする様子のない彼とは反対にぴったりと後ろについたまま通い慣れた文具屋へ。経費とはいえ随分と物入りな監査官の内情にふむと顎を引き、在庫を思い出しながら立言を述べ、付け加えた文言に苦笑を添えて )
その程度の消耗品であれば幾つか備品がありますから、お声掛けいただければ差し上げますよ。……初期刀がああなもので、品質も多少良い物ばかりです。
( 凛と伝えられた親切に、一瞬の静けさを開けてから、間の抜けた微かな驚き顔を振り向く。
政府の刀として、これまでも幾つかの本丸に短期間身を置いた事がある。其処の主たちは大抵、破敵剣という刀剣の特性、霊力に深刻な問題がある審神者にのみ遣わされるとの秘密を知っていて、最初から大なり小なり距離を置くものだった。冷遇というほどではなくとも、警戒されたり怯えられたりしては頼むものも頼みにくい。必然、必要な一切を自前で手配する。
そういうものと慣れ切っていた己には、此度の主の声掛けは聊か予想外だった。花登家の娘の監査はこれまでと違い、書類上こそ貸与だが実質は配給である。一方的な監査と報告では貢献が足りぬ、現地に馴染んで本丸運営を補佐する事を見込まれる。つまり期限未定の滞在。ますます己で物資を整えねばと、珍しく気合を入れていたのだったが。
先ほどの様な騒動があった直後での申し出というのもあって、ありのまま面食らった様子を見せ、「…おう、そうかよ」と不器用な返事ひとつ。それから取り繕うような笑みを浮かべてまた歩きだす、「あの歌仙、湯呑の銘柄ひとつとっても拘り抜きそうだもんな」と続けたのは戸惑いを誤魔化すためか。
そのまま文具屋に入っていき、じゃあこれはあるか、これは、これは、と開き直って確認を。次いで他の雑貨店にも幾つか立ち寄り、買った品々を手提げの大きな紙袋に放り込んでいく、想っていたよりずっと少なくて済む。あと必要なのは少々の〝差し入れ〟だが、そのまえにと、横の主に問うて )
だいたい揃ってきたが…あんたの方でも買っておきたいもんはあるか。荷物持ちくらいしてやれっから、重いのは今買っときな。
( こちらを振り向いたその表情は予想外のもので、鏡のように見詰め合う呆けた時間が流れ。相手の驚きが自分の発言のどこに対してのものなのか、良い意味なのか悪い意味なのか、無言の間に不安が膨らみ、前言撤回のために口を開きかけた矢先に先を越される。安堵にほうと息を吐き、「我が家が身に付ける教養の全ては、歌仙兼定と上手く付き合うためのものですから」と冗句を一つ。…言ってすぐに、あながち冗談でもないのでは、と思い至ると小さな唸り声を上げ。
それからは安穏とした買い物の時間。在庫の確認がてら短い言葉を交わすだけの付き添いではあるが、元より何でもない時間を楽しめる気質ということもあり、中々にいい息抜きになった。向けられた問いをお開きの合図と捉えると首を横に振り否定を返す最中、誤魔化しの利かない何とも正直な声を上げて。通りを行き交う人々に紛れる馴染みの巫女服。監査の話が入って以降忙しなくしていたせいもあり、暫く会っていないように思える。挨拶くらい──いやしかし、これから帰るだけであれば彼を待たせるというのも気が引けた。演練でも会うことはあるし、何も今日でなくとも。間が開くこと数秒、視線を戻すと雑な誤魔化しで場を収めようと。)
いえ、お気遣いなく。今日は付き添いだけですので、荷物が嵩むようであれば寧ろ私が荷物持ちになる予定で───あっ。
……あ、いえ。何でもありません。帰りますか?
( 相手の戯言と、自ら口にしておきながら何とも言えない声を出す、多少の苦労が偲ばれる様子に、「そりゃ大変だな」と笑いを零す。確かに歌仙兼定は、雅というものに人一倍敏感な男士で、その本性は結構苛烈だ。畳の縁を何気なく踏んだばかりに小一時間ほど説教される羽目になるのは、幾つかの本丸で繰り返してきた苦い過ちである。しかしこの主に仕えるあの歌仙は、一般的な個体とは少々毛色が異なる気もしている。少なくとも主の事は、雅云々より余程大切に扱っていそうだが、どうだろうか。まだこの本丸の奴の事は深くは知らぬ、その考えは口にせずぶらぶらと買い出しを続ける。
出発時の居心地の悪さに反して存外穏やかに過ぎた時間も、ほどほど終わりに近づいてきた頃。主の妙な声にん?と視線の先を見た。取り繕う様な質問に構わず人混みの中を観察すると、長谷部を従えた巫女服の少女が目につく。当然知らぬ顔だが、主とは年の頃が近そうだ。
紙袋を掲げ、その軽さ故道草には困らぬことを示しながら、「あれ、あんたの知り合いか何かか。どうせなら声かけてっても…」と言いかけた時。「あーっ!」と霧を払うような明るい声がして、巫女服の少女がなんと向こうから近付、否、瓜坊のように突進してきた。「卯ノ花、ひっさしぶりじゃない!忙しいのは知ってたけど、ずっと会えなくて寂しかったんだよー!あれ、横の人だあれ、彼氏?ねえねえ彼氏なの?どこの演練所で知り合ったの?」と屈託なく跳ねる少女の後ろからは、眉間に思いっきり皺を寄せた長谷部が、盛大なため息をつきつつ追いついてくるところで )
(/度々失礼します~!丁度良い折ですので、次回より一時的に綾女ちゃんを提供いたします、と連絡を!鏡の話意外に触れてほしい話などありましたらご教示くださいませ**)
いえ、彼女とはいつでも会えますので────。
( 目敏く視線の先を追ったらしい彼に、やや食い気味で遠慮を口にするも、その途中で甲高い少女の声に掻き消される。う、と漏らした声がどこまで聞こえたことか。瞬く間に距離が詰められ、会話とは言い難い一方的な囀りは既に懐かしさを感じ、少し話していくのもいいかもしれないと傾きかけた矢先の〝彼氏〟発言には間を置かず「少し移動しましょう」と言い放つ。ぽつんと取り残される彼氏殿には「お気になさらずお買い物を続けてくださって構いませんので」と一言残し、友人の華奢な肩を押し一旦邪魔にならない路傍へと。
さて、と向き直る。何から答えるべきか、何から聞くべきか。先の様子で主従共々相変わらずの様子なのは見て分かるが、お喋り好きな彼女のためにも問い掛けて。)
……ええと。まずは、お久し振りです。お二人ともお変わりありませんか?
(/ いつもお世話になっております!満を持しての綾女ちゃんのご提供ありがとうございます~!どんな審神者さんかなぁと常々想像を膨らませていたのですが、なんともラブコメの波動を感じる娘様で堪りません…!綾女ちゃん本丸の長谷部は割と手厳しめなのでしょうか、よいへしさにです……!!
鏡の件以外には、簡単に惚気なり軽い愚痴なりへしさに談義をしてくださると伊万里がにこにこします() 軽い立ち話ですのである程度お話が聞け次第、長谷部に急かされるなり破敵剣さんが帰ってくるなりして進められたらと思うのですがいかがでしょうか。
それからかなりどうでもいい話なのですが、読み返していたら触れてはいけない話題感が出てしまっていたためお答えさせていただきますね。新極が無事最推しだったことをご報告いたします!一昨日から戦々恐々としております~~~!!! )
えっへへ、元気にしてたよー!長谷部もね!もう腹立つくらいぜーんぜん変わってないよ!
(丁寧な物腰の友だちに促されるまま、とてとて素直に道の端へ。程良いところで歩みを止めると、くるり振り向いてにっこり笑い、その手を取ってぴょんぴょんと跳ね、お下げの茶髪の先を楽しそうに揺らす。久々に会えた嬉しさではち切れんばかりなのだ。それから漸くかかとを落ち着けると、朱色の袴を両手でつまみ、両肩ごと交互にるんるん前後。そうして幼い女児よろしく無邪気に裾をぱたぱたしながら、腹を立てるという言葉に反し、ご機嫌な声で雑談を。
くるくる変わる表情や桃色に染まった頬は、同い年ながら相手よりずっと幼く見える要因、されどありのまま着飾らぬ可憐さによって、道行く人々の目を惹きつける。それでも自分にとっての男性はへし切長谷部ただひとりと半年前から決まっていて、桜の唇から零れ出るのもやはり彼の事ばかり。審神者業に打ち込みながらも、どうしたら可愛くなれるかずっと模索する日々だ。その努力の程は、くるんと上向いた睫毛や、透き通るような白い肌、艶やかな光の輪を描く髪、そこに差し込んだ菖蒲の髪飾りに如実に表れているだろう )
この前演練所で卯ノ花にも話したけど、あたし長谷部と映画館デートしたいってずーっとずーっと思っててね、この間やっと誘ってみたの!ほら、ここの通りの突き当りにある文芸坐ってとこ。
なのに長谷部、何観たいって言ったと思う?元政治家の審神者のドキュメンタリーだよ!?タイトルは忘れちゃったけど、ナントカ議定書を立ち上げたちっちゃい禿げのおじさんの話!
映画デートのチョイスじゃないじゃん!って文句言ったんだけど、俺が観たかったのはこれですって全然譲ってくれなくってさあ……もうほーんとつくづくお堅いよね?そこも大好きなんだけど!
(/お褒めいただき恐縮です~!伊万里様に比べるとかなり稚い女の子ですが、天然の無邪気可愛さで全てをぶっ飛ばしていきそうなパワーある子だといいなあと造形いたしました…!堅物長谷部のイメージは背後様の案からそのまま借り受けさせていただいたものですね!奔放な主に振り回されることで常識人側に立つことが多いのだろうと推察しますが、すこーしずつ綾女ちゃんに崩されていく様を背後様とにまにま眺めたいなあと思っています…
雑談の材料をありがとうございます、そのように致します~!男士たちに促されて進むのにも賛成です。因みに現在進行中のシーンの裏では、何だかんだ抜け目のない破敵剣が、伊万里様の好きな甘味を知らないか長谷部に尋ねる一幕があるのではないか、という妄想をしています。綾女ちゃんは伊万里様の前絵からの友人らしい、そして彼女の近侍は男士の中でもとりわけ有能だから…という推理ですね!要は何か甘いものを買うことで昼の騒ぎの償いをしたいという下心なのですが、伊万里ちゃんのお好きな甘味、何かございますでしょうか??
あっあっそれは超絶朗報!おめでとうございます~!!新極の一報を受けた時すぐ背後様の事が思い浮かんだのですが、もし推しじゃなかったらどうしようがっくりしてるかも…!と思って引っ込めていたんです、ほんとに良かった~!!となると十八日がある種命日なわけですね、嬉しいけど怖いしドキドキするあのオタクならではの心境、お察しいたします………でも私まで嬉しくって今にこにこしています、本当に本当におめでとうございます!!!)
ええ────そうですか。うんうん……
( 一度蛇口を捻れば止まらない愚痴兼惚気。彼女の花唇から溢れ出るハートがすこんすこんと己が頭にぶつかる。溌剌と鮮やかな色を湛える菖蒲に惹かれ、路傍の人の通り過ぎていく視線が集まっていることも承知の上。このやりとりも毎回のものだが、毎回同じことを思う。──ああ、いいなあ、と。無論羨望というわけではなく、通行人の皆々と同じような感想だろう。生真面目で堅苦しい気性のため、兎角大らかな者の多い花登の中では少々浮く己ではあるが、この時ばかりは受け継がれる血というものを実感する。うーん、かわいい。お菓子をあげたくなる。
普段であれば胸を温めるのみで終わるところだが、自らの状況のせいか、何となく仄暗い影が心に差す。明るく素直で頑張り屋で愛嬌があって、何より本丸運営に問題がない。いいな、ともう一度。きっと彼女も見えないところで苦労はしているだろうに。鳩尾の辺りがじくじくと疼くような感覚がして、それでも姿勢を崩さずに足裏を地面に縫い付ける。気を紛らわせるために口を開くと、かわいい恋慕に振り回される友人を揶揄うように目を細めて )
綾女さんの本丸の長谷部は幸せ者ですね。聞いているこちらがもどかしくなってしまいそうですが、…振り向いてくれる気配は?褒めてくれるようになりました?
(/ 無事伊万里にこにこです~!!ついでに以前言っていた、綾女ちゃんのらぶらぶ愚痴を聞いて本丸で爆弾発言する伊万里についてですが、「長谷部の女性の好みってご存知だったりしますか?」「刀剣男士から見て主との恋愛は抵抗があるものですか?」「長谷部が意識してくれるような言動って…」「主から急に迫られたら困るものでしょうか?」「振り向いてもらえないのって辛いですね…」みたいなことを夢日記の辺りから時折零そうかなと考えています。ストレスと寝不足で癒しのことばかり考えてしまうんでしょうね。
わーなんて律儀な監査官さん!伊万里はかなり甘党なので甘いものは何でも好きですね。ただ個包装が何個も入っているようなものを貰ってしまうと、いつの間にか全て短刀にあげたりしてしまうので、確実に食べさせたいのであれば甘味処に寄ったりするのが一番かと思います。とはいえ知り合って間もないですし、無難に箱菓子を選んで失敗する破敵剣さんも見たかったり…します……!!徐々に最適解を探っていってほしいですね!
ありがとうございます…!!まぁ色々と思うところはあるのですが、とにかくこれでやっと推しの育成ができるのが嬉しいですね~!丁度特命と切り替わるため、折角なので鳩は使わず一日ずつお手紙を待つ予定なので、正式な命日は来週土曜です!カンスト済みの推しが本丸に何振りもひしめいてはいるのですが、それでも一振り目くんが不在なのは寂しいものですね。し、しんどい…… )
( 絶賛片想い中の刀との関係を問われ、「それがね!」と喜色に顔を輝かせながら同期の薄い掌をとって。きゅっと両手で包み込み、恥ずかしそうにはにかむ様、されどやっぱり嬉しそうに繋いだ手をぶんぶんと振るう仕草は、話したくて仕方なかった内緒話を打ち明けるから。
「一回だけ、一回だけあったの!直接聞いたわけじゃないんだけどね、ある日この髪型にしてみたら、朝の報告に来た長谷部が一瞬だけ固まって。その時はすぐ流されたからなんにも聞けなかったんだけど、あとで部屋に呼んだ桑名がね、あたしを見るなり〝ほんとだぁ〟って言いだして。何が?って聞いたら、〝今日の主はやけに可憐だが、いずこに出かける予定があったか〟って、周りに確認してたって…可憐だって!あの長谷部が、あたしを可憐だって思ってくれたの!!」
包み込んでいた手を放し、にへらと綻ぶ両頬に小さな手を当て。ひとしきり小柄な身を捩らせて照れ倒すその乙女な奇行を、向こうにいる当の打刀本人に不審そうに見られているとは夢にも思わない。たとえ気づいても気にしない桃色メンタルの持ち主だけれど。と、またパッと表情を明るくして、これまた矢継ぎ早に秘密の共有をはじめてみせる。
卯ノ花は元々可愛い顔立ちなのに、真面目過ぎる性格のせいか、お洒落やメイクを楽しんでいない。自分で興味を持つようになったら、きっともっと、道行く誰もが振り返るくらい素敵な女の子になるはずだと、期待たっぷりにきらきら輝く目を向けて )
あっ、でもね!あの長谷部にかわいいって思わせたのはちゃんと秘訣があるんだよ。
____鏡の自分に向かって、毎朝毎晩、〝あたしは可愛い〟〝あたしはすっごく可愛い〟って、何回も言ってあげたの。ただの自己暗示だけど、でもそれでファンデのノリがほんとに良くなったり、いつもより上手くアイライン引けたりするんだからすごいでしょ。
卯ノ花もね、あのかっこいい彼氏さんをもーっとときめかせたいてみたいな…ってなったら、これいっぺん本気で試してみて!別に減るもんじゃないし!
(/読みながら笑いでプルプルしてしまいました、それ破敵剣の勘違い絶対不可避じゃないですか~!!ふだん本丸で問われるだけでもびっくりなのに、よもや日記にも書かれてたら…夢日記時点で伊万里様を意識しだした頃でしょうし、もう青天の霹靂でしょうね!可愛い友だちのことを思う伊万里様と、当本丸の長谷部にとって謂れのないライバル意識で苦しみ悶える破敵剣のアンジャッシュ、絶対絶対面白いです…。
伊万里様らしいエピソードにとてもほっこりしましたので、今回はお高い個包装の和菓子のセットでも買わせますね!すこーしずつ伊万里様本人に詫び菓子が行くよう画策するうちに、好きな子相手にポイントを稼ぎたい気持ちへとすり替わっていったら愛しいです。
修行のお手紙、リアルタイム?でじっくり待つのも味わい深いですものね!私は夜に修行に出すことが多いので、月のある晩にはそれを見上げて、「あの刀もどこかで見てるかな…」なんて気分に浸ったりしてます。次の土曜日私まで待ちきれない…今からそわそわしてしまう…カンストが何振りもいるのも尊敬です、大包平超レアなのに…!最初の一振りはやっぱり特別ですもんね。でもそれだけ愛されてるのは大包平も刀剣男士冥利に尽きるだろうな…素敵なお話をありがとうございます!**)
( よくぞ聞いてくれたと言わんばかりの反応と、背後に桜が吹雪きそうな勢い。金糸雀のようによく通る少女の声を一番間近で聞き、またもうんうんと相槌を打って胸を温める中、くりっとした眼を一等輝かせて続けた言葉にはたと動きを止める。
自己暗示──恐らくはプラシーボでしかない。ひと月前の自分であれば、綾女さんは単純でかわいいなあ、と流すところだが、未だ収まらない胃痛が己を引き止めた。別に減るものじゃない。それで自信がつくのであれば、乱れて定まらない霊力が安定するのであれば。いつの間にか伏せていた睫毛を上げ、僅かに口角を上げると観念したような口ぶりで了承を述べる。またもきゃいきゃいと華やぐ声が上がる前に片手を上げて言動を制し、先程からの妙な勘違いについて言及を。
恋で狭まる視界に映るのがただ一人だとしても、特定の相手もいない、剰え全くの未知である刀剣男士をいたずらに褒めるのは、一途な片恋の最中には向かないだろう。特にあの長谷部は可愛らしくやきもちを焼くような個体にも見えない。離れて動向をを窺う長谷部の怪訝そうな表情を盗み見て、ああやっぱり、と自らの考えが後押しされ )
綾女さんがそこまで言うのなら試してみます。ただ、一つ訂正させてくださいね。
あの方は政府から遣わされた監査官の刀剣男士で、恋人ではありません。ですから、あまり〝格好いい〟だなんて言っていると、きっと長谷部が妬いてしまいますよ。
(/ ついでに長谷部の夢まで見てるかもしれませんね!明晰夢の中で理想の推しカプ摂取する伊万里、限界感マシマシです。これも完全に余談ですが、いずれ伊万里の日記もテキストとして共有できたらいいなあ、と考えて、メモ帳にぽつぽつと書いていたりします。勿論4月からの全ては無理なので一部抜粋という形になりますが……!
い、愛しい……!!いずれ伊万里の方も、好きな人からもらった物だから、と大事に自分だけで食べるようになるといいですね。お互いいじらしいです。
おセンチで素敵な楽しみ方ですね~!以前言った通り、どれだけ解釈違いの極だとしても一振り目をカンストさせるまでは引退もしないつもりなので、もし来週の土曜にぐったりしていても生温く見守ってくださると幸いです。欲を言えばぐったりしていないといいですね。
と、色々と好き勝手語ってしまいましたが、あまり雑談していても楽しくてキリがないので上記は蹴ってくださって差し支えありません◎今回もお付き合いいただきありがとうございました。今後についてのご相談ですが、帰り次第破敵剣さんのわくわく内番体験ということでよろしいでしょうか?話の流れ的に石切丸にお願いするような流れでしたが、以前話していた通り歌仙さんにご指導いただくのとどちらがお好みでしょうか。
ここからは漠然としたご提案なので何となく聞いてくだされば十分なのですが、折角怪異の話までに2週間あることですし、あまり2日目に時間を割くのもどうかな~と思ったので、内番初体験の描写は一先ず割愛して、描写するのは3日目以降にしてもいいのではと思いました。2日目については伊万里が鏡に話しかける描写を入れたいので、寝る前に少し破敵剣さんとお話したいと漠然と考えています。3日目からは伊万里は暫し引っ込む予定ですので、CCのタイミングとしても2日目の内番描写は割愛した方が綺麗かと思った次第ですが、何か2日目の内にやっておきたいことがございましたら何なりとどうぞ!こちらとしても早く他男士と破敵剣さんの絡みが見たいため、このまま2日目続行でも何ら問題はありませんので◎ )
( 内心期待は薄かった、未だ短い付き合いながらこの子の性格はよく知っている。抵抗なき承諾の声はつまりかなりの予想外、ぱあっと顔中に笑顔を広げ、黄色い声をあげかけて。それすら読んでいた大人びた友だちにすっと静かに制されると、慌てて両手で口を抑え。
説明にこくこく頷き、そしてまた性懲りもなく「そんな簡単に妬いてくれるかなあ?」と相好を崩したりして。__ああ楽しい!不満があるわけじゃないけれど、本丸は常に男所帯だ。やっぱりこういう恋の話は、同じ年ごろの女の子としかできない類の楽しみだ。
摘まんだ裾をまたパタパタさせ、「妬いてくれるくらいあたしのこと意識してくれたらいいんだけどね!」と当の長谷部の目も憚らず破顔していると、今説明されたばかりの監査官殿が、間を見計らって自分達の傍に。「主殿、ご歓談中失礼します。この後、少々立ち寄りたい店がありまして…」、穏やかに卯ノ花に話しかけるのを、煌めくどんぐり眼で見入ってしまう。
うんうん、見たことない男士だけど、やっぱり国宝級に顔が良い。何の監査か知らないけど、卯ノ花を丁重に扱ってくれてるみたいだし、ファッションの系統に反して執事めいてるギャップも良い。恋人じゃないと言ってたけど、これだけ真面目そうなイケメンなら、まるで卯ノ花とお揃いだし、もしかしてもしかしたり?と口を三日月にしていたところで、後ろから怖―い長谷部の声が。いつまで油を売る気ですかとちくちくされるのを、ヤキモチ?ねえねえヤキモチ?とつつきまくってやり返し、友だちの方を振り向くと、長谷部の手を引いて遠ざかりながらぶんぶんと手を振って )
じゃあ、そろそろあたしたち行くね卯ノ花!また演練所で会おうねー!
(/!?一部抜粋の本物の本丸日記!?なんですかそれすっごくすっごく読みたいです、お外に出ししてもいいなって気になられた暁にはぜひ拝み倒させてください~!!
破敵剣の精神年齢が思ったより幼くなって頭を抱えていたのですが、真面目すぎて男士との恋愛を考えていなかった伊万里様とは、ちょうどつり合いが取れて良いかもしれませんね。少しずついい男に成長させるつもりですが、若くて初々しいふたりも存分に眺めたいところです!
もちろんもちろん、待望の瞬間でしょうから、その日はしっかり推しと過ごしてあげてくださいね!数日間愛で倒していらしても私はにこにこ見守ってますので◎
楽しくてたくさんお返ししてしまいましたが、ご配慮ありがとうございますー!わくわく内番体験に向かうので間違いないです!石切丸はなんとなく性格的に言いそうだなって出してしまっただけですので、提案してくださった当初の予定通り歌仙さんの監督でお願いします。ややこしくしちゃってすみません;;
内番風景の端折り方もとっても素敵なアイデアです、そうしていきたいと思います!私の方では、これを絶対やりたい!というのは今のところありません。鏡プラシーボの伏線も回収しましたし、和菓子と油揚げの購入については省略して、二日目(今日)の夜まで飛ばし、破敵剣がこんのすけを買収するシーンに出くわすところにするのはどうでしょうか?それをきっかけに少し話してから就寝時間、伊万里様は鏡の話を早速試してみて、明日いよいよ三日目から内番風景開始…だと自然な流れかと思います。今日に限っては破敵剣も真面目に取り組む殊勝さを見せるけど、明日からはまだだらけて…って感じだと、歌仙さんとうるさく言い合う風景にもできるかと~!)
( 未だ上手に飛べない小鳥のように裾をはためかせる姿を微笑ましげに眺める中、主殿、だなんて聞き慣れない呼び名に思わずぎょっと肩を跳ねさせてそちらを見遣る。その態度に苦々しげに眉を寄せそうになるが、恐らく友人から見れば不自然な反応だろうと思い至り、慌ててごほごほと咳払いをして「分かりました」と短く返事を。何か追及された際の誤魔化し方を考えるよりも先に、なんとも粘っこい戒めが飛んできたことで内心ほっと胸を撫で下ろす。
別れ際まで元気な彼女とは反対に、こちらは同じように声を上げるほどの気力がなく、笑みを湛えて小さく手を振り挨拶と代える。リードを引っ張る子犬のように手を引く姿が遠ざかり、声が届かない位置まで離れたのを確認すると、猫被りに対して何か言いたげな表情を浮かべて振り返り )
……お待たせしてしまって申し訳ありません。
(/ 日記については、用意しておいた方が破敵剣さんが伊万里の日記に目を通す際の解像度が上がるかな~と以前から思っていたので、夢日記の付近になったら是非公開できればと考えています…!それまでに書き溜めておきますので、のんびりお待ちください*
今後の展開ですが、こちらとしても異存はございません◎和菓子と油揚げについては綾女ちゃんと話している間に購入していたことにして、このまま帰って夜まで飛ばしてしまってもいいかもしれませんね。歌仙さんでガミガミ監督できるのが楽しみです~!! )
……べーつに。
あの長谷部使える奴だな、おかげで店を探し回らずに済んだわ。
( 面白主従は雑踏の奥に姿を消した。監査官としての体はすぐに解き、本来のかなり砕けた表情に。しゃんとしていた姿勢も、重心を傾ければ柄の悪さを滲ませる。
と、昨夜も今朝もあんなにきりりとしていた主が、こころもちジト目になっている様ないない様な、そんな様子であるのに気づいて。されど気にせぬ肝の太さ、それぞ己の良い所。含みのある声も単に肩を竦めて一蹴すると、増えた手提げ袋を掲げる事で買い出しの状況を伝え、まだ残っている最後の買い物に付き合って貰おうと。いくつかの品物は、主の同伴がなければ購入できない条件だ。
万事屋通りに滞在したのは彼此一時間程となろうか。本丸に帰り着いたのはおやつどき、短刀たちが庭で饅頭にぱくついている。しかし己はそれに倣えず、出迎えに来た歌仙に捕まり、馬当番をする羽目に。あの獣臭いにおいのする場所は好きでは無い、というか嫌いだが、今日だけは仕方がないと渋々真面目に取り掛かる。
あっという間に日が落ちて、夕餉も入浴も終えた男士たちが皆めいめいに寛ぐ、本丸に来て二日目の夜。厨で皿洗いを済ませると、したためる文があるからと言い訳をつけて退散。探し出したこんのすけを私室傍の納屋に連れ込めば、大きく分厚く柔らかい、最高級の油揚げを堪能させてやっていた )
(/わわ、首を長くして楽しみにしています…!有難い誘導にそのまま乗りまして、時間を大きく進めさせていただきました。背後様ならではの歌仙さんも楽しみにしています~!!それでは背後は再びお暇しますので、何かあればいつでもお呼びください◎)
( 変わり身のグラデーションをしかと見届け、そうですか、と。慣れとは早いもので、たったの半日で〝監査官〟の姿の方に違和感を覚えるようになりつつある。まあ、互いにその方が過ごしやすいのであれば問題もない。どうにも腑に落ちない気持ちも抱えながら、残りの用事を済ませるために彼の後へと続いた。
買い出しを済ませて本丸へと帰り、後回しにしていた執務に取り掛かるため机へと向かえば、あっという間に辺りは火灯し頃。少しばかり早起きだったせいか、はたまた本日の忙しなさのせいか、平生よりも早く睡魔が纏わりつく。早いところ寝支度を終えて布団に潜り、小さな手帳に向かって一日を省みるが、途中でぴたりと手を止めたのは、どうにも引っ掛かる一振りの剣。子供のように駄々を捏ねていた監査官殿は、果たしていざこざもなく内番に励めたのだろうか、と。新顔に対して気を回すのも主人の大事な務めのひとつ。さして迷う時間もなく布団から這い出る。浴衣の上から羽織を被り、椿油に濡れる髪を緩く一つに括って、母屋に繋がる渡り廊下をのそのそと進んでいく。
今朝にも訪れた彼の私室の前に立ち、監査官殿、と小さく一度。返事はない。既に休まれているのだろうか。再び呼んでも変わらず、もう床に就いたと判断して踵を返した矢先、耳が妙な音を拾い上げる。はぐはぐ、と、獣が何かを食むような音。極力静かに音の元へと近付き、納屋の戸をそっと引いて開ければ、目に入るのは鋼色の髪。触れていいものか若干の迷いを声に滲ませ、おずおずと尋ねて )
────あ、の。監査官殿、そちらで何を……?
( 背後からの声にびくり飛び跳ねる両の肩。しゃがんだまま肩越しに振り向き、そこに居るのが主とわかると、「…なんだよ、ビビらせんなよな!」と脱力した様に項垂れて。歌仙や長谷部だったら長い夜になるとこだった、と心の声を憚らず口にし、胡座をかいて両手を後ろに突く、寛いだ姿勢へと。
それで顕になったのは、部屋の奥側で幸せそうに油揚げを頬張っている小さな小さな管狐。はぐはぐ、むぐむぐ、もっきゅもっきゅと頬を膨らませながら目を細くしている、ご機嫌狐のお出ましだ。軈て可憐な主が訪ねてきたのに気づくと、悪さがバレた稚児のように目を真ん丸にして固まってしまう。霊狐のて、夕餉後の間食に罪の意識はあるものなのか。そろり、と食べかけの油揚げを咥えたまま後ずさるも、この空っぽの納屋の中では別に後ろに逃げ場もない。
手を出してまろい頭を撫でると、「ずっと食べたかったんだよなァ?」と寄り添う声をかけながら耳の辺りを掻いてやろう。目論見通り罪悪感が和らいだこんのすけは、それでも恥ずかしそうに己の陰へ引っ込んで主からの視線を遮り、今度はこそこそ夜食の続きを。
黄色い背中の撫でつけながら主の方を振り仰ぐ。最早堂々たる態度で、何もおかしいことはしていないという顔をしてみせる。己の素の人柄が小動物を慈しむそれに到底見えやしないことなど、塵ほども分かっていないし。傍に置かれた紙袋が万事屋通りの店を示す判をおされているのも、それで計画性がひしひしと伝わるのも、強引に誤魔化す算段だ )
俺、実は狐が好きでさぁ。おまけにこんな小さいとなりゃあ、可愛がってやりたくもなるだろ。
( まずい、と後悔したのは既に声を掛けたあと。刀剣男士とて今は人の身、そうそう無遠慮に戸を開け暴いていいものではない。大袈裟に飛び跳ねる相手の反応に合わせてこちらも身が強張り、次ぐに相応しい言葉を必死で考えるも、返ってきたのは脱力の様子。姿勢を崩した陰から見えるのは、ふわふわと揺れる黄の毛並み。「…………こんのすけ?」名前を呼んで覗き込む。真っ黒の瞳を円らにして固まる様を美しい手が掬い上げるように撫でると、強張った小さな体が弛緩していくのが目に見え、呼応するようにこちらも表情を僅かに和らげて。
今はあまり近付いてやらない方がいいだろう。ほんの少し羨ましそうに狐と戯れる様を眺め、彼のかんばせがこちらを向くと一度視線はその表情へと。述べられた理由には口を結んで幾度か目を瞬かせたあと、「そうなんですね」と、疑うことなく素直な納得を示し、そろりそろりと距離を詰める。僅かに身を竦めた気弱な霊狐に、怒ってなんかいませんから、と声を掛けてすぐ側に身を屈め、毛並みの柔らかさを掌で確かめるように撫でる。秋の深まる夜に丁度いい温かさだ。油揚げを夢中で頬張る姿に視線を落としながら、先の言葉を大真面目にまるきり信じ込み、少し申し訳なさそうに眉尻を下げて )
では、こうして特定の本丸に配属されてしまったのは少し残念ですね。政府にいる方が多くのこんのすけと触れ合えるでしょうから。
あー、別にそうでもねえよ。あんときゃあちこちの戦場に駆り出されて、落ち着く暇もなかったし。
今の方がよっぽどゆっくりできらぁな。
( ここに来てもまだ素直に信じてくれる主に、本丸ではその危険がないと言えど、悪意ある人間に騙されなきゃいいんだがなァ、と胸の内で独り言ちる。
疑うのは身を守る術。仮令相手に害意がなくとも、丸々言に従ったばかりに厄介に陥る事もあろう。切欠こそは口から出まかせ、それで、護衛剣として自然に主の身を案じずにはいられず。でも外面だけは、特に感慨も浮かべぬままそつなく雑談を続けてみせて。
その間、油揚げをもらった上、主にまで優しく撫でられて、こんのすけは嬉しそうだ。己が撫でたときと違って気持ちよさそうに目を閉じている。最後の残りを飲み込めば、短い脚で立ち上がって主に近き、腹を見せて寝転びさえした。まるきり犬そっくりな媚態を見下ろして笑い、それから主の顔をちらと見て、また横を向いて、朝以来の小さな欠伸を。
朝の三戦に検非違使事件、買い物と内番で、少しは疲れが溜まったようだ。餌付けも無事に果たせたし、寝床に引き上げる前に明日の確認を済ませようと )
ふぁア…、明日からもさ、俺には歌仙がつくんだよな。
主の方から、手合わせに回してやれって言っといてくれると助かるぜ。ついでに言やぁ、相手は同田貫の兄貴にしてくれ。お互いWinWinな関係になるからよ。
…では、どうぞ暫くお寛ぎください。監査官殿にとって過ごしやすい本丸であるといいのですが。
( 政府所属の刀剣男士の話を聞ける機会はそう多くない。想起するのは畏まった監査官としての破敵剣の姿。政府では常にあの振る舞いを続けていたのだろうか。どれだけの年月を政府でも過ごしたのかは分からないが、きっと肩が凝る思いをしたことだろう。思う存分狐を撫でて過ごせばいい。今朝彼も言っていた通り、ここでは政府の目もないのだから。運営が芳しくない本丸にしか赴くことのできない彼をほんの少し哀れみながら、呟くような平坦な声音を落とし。
ごねごねと床をのたくる威厳のない管狐を撫でること数分、時間の流れがあまりに伸びやかで、心地良い眠気が優しく手招きする。ここに寝具があれば寝てしまいそう。猫のように背中を丸め、立てた膝に顎を乗せてうとうとと体を揺らす中、側で聞こえた彼の声に薄目を開ける。今朝と同様に遅れて要件を思い出し、ふるふると頭を振って眠気を晴らして気付を。曲がった背筋を伸ばして居直り、立て続けに三つ問う。芳しくない返事は想定内で、後にいくほど歯切れが悪く声が窄まり )
あ……そうでした、その話をしに来たんです。
午後の内番は如何でしたか?歌仙とは上手く付き合えましたか?皆に何か、……失礼なことを言われたりとかは……
( 自嘲の蓋で感情を制した声に違和感を覚えるには、主の為人をまだ知らぬ。その手落ち故、単に社交辞令かと聞き流すだけの対応をとった。
後は昼間の騒ぎが嘘のように数分程穏やかな時間。威厳の欠片も窺えぬ霊狐をかわいがってやる小さな主の手、じきに眠そうに遅まりゆく。それをぼんやり眺めるのは、本丸の中でこの納屋だけが時の流れを外れたかのよう。
萎縮しきった問いかけを向けられた事で漸く頭を緩くもたげ、不安そうな顔を見返し、憂いを払うべく片手をひらり。長期間の監査というのは形骸だ、主は怯えなくていいのだ。この本丸を失うまいと必死なのは主以上に政府の方。花登の娘はそれだけ替え難い人材と聞く。今すぐは無理でな話も、いずれ期待に足る矜恃を身につけてくれると理想であるが、今宵はそう伝えるのも控えておくべきと見る。
ならせめてもの安心にと、正直に答えながら両手を絡めてぐうと伸びをし、やおら立ち上がり戸の方へ。出ていく前に振り返り、こんのすけの傍に置いたままの万事印の荷物を指さす。ちゃっかりと、中に残っている油揚げの包み紙も処理して貰おうなんて横着な魂胆は、当然御首にも出さずに )
いーや、なーんにも。今日はやるだけ真面目にやったし、それなら歌仙も目くじら立てる事もなかった、って感じだな。
明日からはどうなるかわかんねぇけど、まだなるようになるだろ。…そうだ、そこの紙袋ン中。今日の詫びと礼が入ってっからよ、遠慮せず好きに食べてくれよな。
(/遅くなりすみません;;とうとう大包平極が実装されましたね!!いよいよの対面は土曜日との事ですが、まずはおめでとうございます…!!!修行先からのお手紙も楽しみですね!)
詫び、……礼?ですか。お受け取りしますが、どうかお気遣いなく。
( 心安く空を切る隻手に、胸に支えた憂慮が容易く溶かされるのを感じ、同時にその隔てのない態度に甘えていることを自覚する。きっと彼が初日のままの振る舞いであれば、言葉の一つで背筋を丸めず、改めて気を引き締めていただろうに──相手の態度によって反省を欠いて良いものか。より一層励まなくては。
改めて決意表明をする前に、床に置かれた紙袋を示され視線を落とすと、礼という点が腑に落ちず一瞬語尾が上がる。買い出しに付き合ったことだろうか。訊こうかとも思ったが、疲れている相手をわざわざ引き止めることもないだろう。表情に表れる疑問を拭わないまま紙袋を手に提げ、改めて彼の方へと向き直ると、今宵の良い夢路を祈って一礼し )
本日はお疲れ様でした。夜は冷えますから、暖かくしてお休みくださいね。
(/ お疲れ様です!お返事についてですが、数日程度であれば全く問題ございませんので、無理なくお相手くださいませ。
改めてお祝いありがとうございます~!非常に筆舌に尽くし難い気持ちです…溜めてきた云千個の金平糖を早く漏斗で口の中に流し込みたいです……;;一緒に土曜日をそわそわ待ちましょう。
一応ご確認のために申し上げますが、相談通り次のこちらのレスで軽く鏡の描写を入れて二日目を締める予定ですので、破敵剣さんもおやすみ~とお部屋に戻ってくださると幸いです。翌日からは暫し歌仙さんとの交流をお楽しみください! )
あいよー、そっちもお疲れさん。
( 眠りの淵に先刻一度は近づけど、最後は斯様に温良恭倹を忘れない。真面目な気立ては主としてまさに申し分なし。なればこそ、この本丸の著しい成績不振は不思議なものだと首を傾げるも、それを今宵考え込むには既に思考が聊か鈍い。明日以降の猶予ならとくと与っているのだから後回しにしてしまおうか。くぁと呼応の欠伸を漏らし、背中で就寝の挨拶を返した。
私室で二度目の深い眠りを堪能し、監査に入る事早くも三日目。本丸内の廊下には秋のこがねの朝陽が差し込む。変わらず崩れたあの態度で大広間にのっそり現れ、湯気の立つ朝餉をぺろり平らげ、皿を洗って内番の場所へ。今朝も今朝とて、あの目敏い初期刀がそばにつくのだと知ってはいるが、それでもありもしないやる気を絞り出すなど叶わぬ話。気の抜けた立ち姿で待機を )
(/ありがとうございます~!お言葉に甘えさせてもらいました、週末はまた頻度高めで返せる予定です◎なんて言ってるうちにとうとう極包平帰還が明日に迫りましたね…!今頃お手紙を何度も何度も読み返しているころでしょうか、こんぺいとうを流し込まれる大包平の図はにこにこしちゃいます。
リマインド感謝申し上げます。心機一転、破敵剣と伊万里様本丸の刀剣たちの日常風景を一緒に楽しんでくだされば幸いです**)
( 背中を見送り一息つく。力が抜け、肩が下がると共に、体を包むような眠気を感じて小さく欠伸を。預けられた紙袋を提げ、満腹の管狐を外に出して納屋を閉め、温かな布団の待つ寝室へ続く廊下を急ぐ。
夜更けの本丸は少し怖い。翌年には二十歳を数える身で何を言っているのか、と自分でも思うが、誰に吐露するでもない恐怖を抱くくらいは許そうか。しかし、幼き日に過ごした父の本丸では恐れを抱いた覚えはない。まさか年を経て怖がりになったというのだろうか。──こんなことばかりを考えているから心に鬼を作る。何か楽しいことでも、と思い浮かべるのは、久方ぶりに顔を合わせた友人のこと。小鳥か蝶々のようなあの仕草を思い返す中、ふと例の〝おまじない〟とやらが頭を過る。つい忘れていた。試すと言った以上、嘘にするわけにもいかない。
私室で主の帰りを待つ寝具の横を通り過ぎ、明かりを点けて脱衣所へと入る。壁に張られた鏡に映る梔子色を確と見つめ、頬を数度叩いて気を引き締めてから、躊躇いがちに一言「あなたは立派な主です」と。当然ながら返事はない。込み上げる気恥ずかしさに気付かない振りをして、「霊力の扱いも上手で」「主らしい毅然とした態度を崩さず」「政府からの期待を裏切らない」「くよくよと思い悩むこともなく」「常に前だけを見据えて」「…」褒める度、反対の言葉が自分に突き刺さる。これは目標の再確認だ。己への叱咤激励だ。現状に甘んじてはいけない。強く唇を噛んで暫し虚像を睨め付け、就寝前に不適な気持ちを滾らせたまま脱衣所を後にする。そんな状態であっさりと眠りにつけたか否か、お察しといったところ。)
( 早朝の柔らかな日差しを受ける執務室。本来近侍である自分がなぜ部屋を追い出されたかというと、今日も今日とてあの監査官の教育係を命ぜられたからだ。我が主は監査初日の態度を未だ根に持っているらしく、「とにかく仲良くしなさい」なんて、まるで三つか四つの幼子に向けるような言葉を預ける始末。己が畑弄りや馬の世話を好まないことも彼女は把握しているだろうに。早いところ一通り教えて執務室に戻りたいところだが、さて。
戸を引いてすぐ、相も変わらず姿勢の悪い立ち姿が目に入る。既に気に入らないが、昨日と同じくある程度真面目に業務に取り組むのであれば、こちらとしても無礼げな態度を取るわけにもいかない。翡翠の目を弓なりに曲げ、愛想のいい笑みを浮かべて挨拶を )
やあ、おはよう。
殊勝だね。もしや部屋で眠りこけているのではとも思ったが、僕の杞憂だったようだ。
(/ 今週もお疲れ様でした!お休みとはいえお疲れのことと思いますので、お暇なときにでものんびりとお付き合いくださいませ。当方は予想通り本日はそわそわしっぱなしです~!あと一時間半ほどが待ち遠しいです、そわそわ…。今日一日浮き足立っていると思いますが、どうかご容赦ください笑。)
…どーも。冬眠にゃまだ早いんでね。
( 穏やかな挨拶に振り向くとただ角ばった肩を竦めた。
近侍殿は今日も朝から雅な佇まいである。藤色の髪は生まれついてのうねりはあれど見苦しさがなく、普段は垂れている前髪をすっきりと頭頂に束ねた御姿。真っ白い内番着で立ち働けばさぞ爽やかに映えるだろう。そのまま己の分まで働いてくれればいい、とは勿論口が裂けても言えずに。
対面する己は黒の肌着に枯草色の下穿き、これを見れば寒さなど平気なたちとばれるだろうに、いけしゃあしゃあと熊の真似事に興じる素振りを。
嫌な仕事は気が進まずとも早く終わらせるに限る、と、実は図らずも歌仙と同じ考えの上。ついでに他の連中も巻き込み己に目が行かぬようにすれば尚よい。
こきこきと首を鳴らして不逞な準備体操をしつつ、億劫そうに指示を仰いで )
んで、今日の俺は何すんだい。
(/卯ノ花背後様もお疲れさまで御座いました~!お気遣い痛み入ります、爆睡に爆睡を重ねて元気フル充電しております◎アプデ終了後に即お見送りしたのですね、となると大包平帰還まであと一時間を切ったところ…!本丸内でそわそわ行ったり来たりする背後様が目に浮かびます。それはもう!念願の推しの修業期間ですから!数振りいるとしても最初の一度は今日のたった一度きりの体験ですから!心行くまで待ち望んでお迎えして、愛で倒してあげてくださいませ~!!)
昨日も言った通り、まずは一通りの当番に慣れてもらうよ。何か優先したいものがあれば先に言うといい。
( 気怠げな態度はどうにも気に食わないが、このくらいで突っ掛かってはキリがない。ごほん、と一つ咳払いをしてから、当番の名を全て記した懐紙を差し出す。昨日も少し触れてはもらったが、昼過ぎから日没まででは時間も足りない。今日から腰を据えて教えなければ。
さて、主から任命したのは〝仲良く〟すること。ここは率先してこみゅにけえしょんとやらを取ってやろうか、と口を開くと、「僕としては厨番辺りが一番教えやすいんだけれど、きみは料理は好きかな。ああいや、見かけで判断するのも良くないと思ってね。政府にいた頃に嗜んでいたという可能性もあるし、何せまだきみのことを何も知らないから……」などと間隙を埋めるべくぺらぺらと一人で語り始める最中、ふと思い出したかのように漫ろ言とは違った声音で補足を言い添えて。)
……ああ、手合せに関しては説明不要…ということで、今回は選択肢にない。手合せがしたければ、一通り終わった後で主に希望することだね。
(/ 無事お迎えいたしました~!!ばんざーい!!!地雷を踏み抜くこともなく帰ってきてくれてひと安心です!ようやく推しを連れ回してレベリングできる喜びでいっぱいです~!大阪城持ってこーい!というわけで、二週間ほど大変お騒がせいたしました。ログインする度に他の大包平が修行おねだりしてきてさにわ幸せです~!!)
( 目も口も「ガーン……」と大きく開いてしまう、非常にわかり易い反応を。
「ひと通り終わった後で」と予め釘を刺されてしまえば、打つ手もなくなるではないか。のべつまくなしに続くだろう他の内番も終わらせてからでは、気晴らしに混ぜることも今日中には叶うまい。己にとっては、厨番だの馬番だの掃除番だのは、結局どれも煩わしさでは変わりない、灰色一色に塗り潰された仕事。そのどれもにこの手厳しい教育係がついてまわるのも憂鬱である。
詰んだ。終わった。やる気は死んだ。
と、魂の抜けたような力のなさを隠しもせずにうな垂れる己の周りに、朝から元気いっぱいの短刀たちがぴょこぴょこ近づく。「歌仙、今日の内番なーに!」「監査官殿が入るから、入れ替えがあるとお聞きしました」ときゃいきゃい賑やかに取り巻いて、湿気た己とは素晴らしく好対照。
その童たちの明るい声にかき消えそうな細い声で、「好きな配置にしろ…」と伝え )
(/ほんとにほんとにおめでとうございます~!!!先輩審神者様の本丸史の貴重な瞬間に立ち会わせて貰ったことで、私もにこにこしっぱなしです◎愛情込めて育ててきた大包平たちが我も我もと押し寄せるのは耳福眼福たまらんってなりますよね…!お手紙に綴られた文が可愛らしいだとか、三通目や放置ボイスに殺されただとか、悲鳴をあげる大包平推しの声もTwitterでたくさんお見かけしました。人によっては戦々恐々の極実装ですが、卯ノ花背後様にとって安心なかっこよさのまま帰ってきて良かったです…!)
( 万人に伝わるであろう落胆は主も予想に難くなかったようで、「抗議は受け付けます」との伝言を預かってはいるが、……まあ、正直に伝える必要もないだろう。意気阻喪とした様子を他所に、和気洋々と集まってくる短刀のために腰を屈める。きみは買い出しだろう、そういえば主が呼んでいたよ、と短く連絡事項を交わす中、潮垂れた監査官の姿をちらと横目で窺ってから「あくまで簡単に当番の内容を覚えるだけだから、配置換えはないよ」と訂正を。正式に内番に参加するわけではないのだから、全ての業務を早く呑み込んでくれさえすれば互いに早く終わるのだ。尤も、あの様子では何日かかるか分からないが。はぁ、と溜息を一つ吐き、背を伸ばして振り返る。「……きみは暫く出陣が多くなるそうだから、まずは馬の世話辺りが妥当かな」言い終えるや否や、「破敵剣さん!」と、少年の高い声が上がる。
ぴょこん、と跳ねた桃色の髪が視界の端でちょこまか動き、秋田が大きな瞳を爛々と輝かせて距離を詰める。「僕も今日は馬当番なんです!一緒に行きましょう!」初日から興味津々だった分、近付ける機会と知って抑えが効かなくなったのだろう。直後、あー!と羨ましげに上がる声。「ずるーい!」「僕もあとで厩舎に遊びに行ってもいいでしょうか」「馬じゃなくて畑からにしない?」と本人を置いて賑やかな取り合いが始まる。初日と違い、彼らの言動を窘める理由もない。短刀に囲まれる姿を一歩下がって俯瞰し、微笑ましく思いながらも口許を苦笑に歪めて )
(/ わ~んありがとうございます;;特も極も甲乙つけがたいそれぞれの良さがあって、ああやはり最推しだなあと数日しみじみと実感しています。主様もどこかの沼にずぶずぶ嵌って更に狂えるようお祈りしています!ひとまず興奮も落ち着いてきましたので、破敵剣さん推しに戻りますね~!展開のご相談等がなければ背後会話はスルーしてくださって構いません◎長らくの乱文失礼いたしました! )
(/お返事が遅くなり大変申し訳ありません。大変心苦しいのですが、私情により今後御相手が難しく、解消の旨をお伝えさせていただければと思います。
卯ノ花背後様には一切の罪なく、ただただ破敵剣背後の不徳の至りによるものです。
先々の展開まで楽しく相談してくださったのにこのような事になってしまい本当に申し訳ないです。
一方的な決定となり心苦しいのですが、無言失踪はどうしても避けたいため連絡させていただきました。
tkrbを始めたばかりの自分とも楽しく話して下さり、大変救われておりました、沢山の楽しいお話をありがとうございました。
卯ノ花背後様と大包平を初めとした刀剣たちの本丸生活の安泰を心よりお祈りしています。 )
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