鍔 2022-09-23 23:31:31 |
通報 |
( 鋼に満ちたこの身は嘗て、至尊に、陰陽師に仕え。三度目となる此度の生では、時の政府の刀となった。即ち護衛対象は、潮海に浮かぶ我が八島。然りとてそれに異存はない。人であろうとなかろうと、己の使命は主の護衛。敵を撃ち破るための刃を、また振るわせて貰えるのなら。他の男士と隊を組み、時渡りの逆賊を見つけ出しては殲滅し。斯様に、政府直属の付喪神として、戦に明け暮れ三百年。
ある日、戦場で声を聞く。
__破敵剣、と呼ぶ声を。
同じ名前を持ってはいても、叫ばれたのは別の己だ。無惨にも地に倒れ伏し、折れそうなほどの深手を負った、別の部隊の破敵剣。その傍に、近侍歌仙の必死の制止を振り切ってまで、若い審神者が走り寄る。声の主は彼女であろう。しかし剣はそれを留めた。主、俺はここまでだ。ごぼりと大きく喀血し、哀然と微笑んで。
__ちゃんと使命を、果たせただろうか、と。
審神者にそう伝えた瞬間、己と瓜二つの顔の男士は、ごうと炎に包まれた。赤く明く赫い炎。引導を渡す無慈悲な炎。刀身が黒く焼け落ちる。審神者の泣き咽ぶ声がする。近侍が必死に押しとどめ、己はそれを、血の滴る刃を下げたまま、呆けたように眺めていて。
それから更に幾年月が過ぎた後。時の政府より、己ひとりに命が下った。
__花登の娘を監査せよ、と。
審神者の霊気が控えめに触れた途端、抜き身の全身を大きく震わせ、桜がぶわりと舞い上がり。
見知らぬ本丸、燭の焚かれた飴色の部屋。その中をひらひらと降る薄色の雨が止むころには、狩衣にきちんと身を包んだ己の姿をついに御前へ顕現し。少女の向ける梔子の瞳を真っ直ぐに見つめ返せば、居住まいを正し、鋼色の頭を垂れて口上を。
生憎と、剣を抜かりなく届けたか確かめる目的で、まだ政府の監視が切れていない。だから今のところは、新たな主にも恭しい忠実な男士を演じようか )
破敵剣。時の政府より監査の命を受けて参りました。これより暫しの間、畏くも御身の御側でお仕えいたします。
(/大っ変長らくお待たせしましたすみません、初回ロルです!冒頭に引っ付いている文章はOPムービー的な前座として軽く見ていただければ幸いです。募集板に500字くらいとしましたが、最短だとこのくらいになります。通りすがり様の好みに合わせたいので、描写に関するご要望はたんとお聞かせくださいませ◎改めて、ここまでとってもご丁寧に打ち合わせしてくださったのにいよいよの段で遅くなりましたこと、重ね重ねお詫びいたします…!よろしくお願いします!)
トピック検索 |