鍔 2022-09-23 23:31:31 |
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( 口籠る様をきょとんと眺めていたかと思えば、漸く切り出された困惑の声にああそれか、と軽く噴き出し。腕を組みながら漆喰の壁にもたれて差し向ける笑みは、付喪神の例に漏れず美男子のそれでありながら、宛らイタズラがばれた悪童。向こうから触れてくれるならやりやすい、おまけにこの主は大人しい質のようだから、あれこれ言い訳を凝らさずとも済む。相変わらず寝癖を軽く掻きまわす余裕ぶりで当然のように言ってのけると、紫色の目を細め、首を傾げて同意を求めて)
こっちがほんとの〝破敵剣〟だ、今のうちに覚えとけ。
__政府の目があるうちは、流石にまじめに仕事しなきゃ、ってことでな。昨日までの俺はアレだ…借りてきた何とやらだよ。卯ノ花、あんたの方だって、気安い関係の方がいいだろ?
(/是が非でも池に落とした過ぎてもうめちゃくちゃ笑いましたwwww是非是非お願いします~!伊万里様の本丸の雰囲気わかりみしかないですし、この上なくほっこりチームで最高ですね…もうもみくちゃにしてくださいませ!ちなみに買い物までの間、どの仕事をさせたいとかはありますか??それ次第で揉まれ方も考えておきますので!
あっあっそれもいいですね、恋が大好きな綾女ちゃんならきっとそのあたりつっつきそう。破敵剣は最初こそ一応猫被りすると思いますが、綾女ちゃんの性格で思わず素が出るもよし、ちゃっかり賢い綾女にズバッと見破られるも良し、あとはそのうち主の身内判定して破敵剣の方から巣を見せるようになるも良し…と大いに迷っております。
やっぱり乱舞Lv2にすると絶対楽しいですよね~!思いがけずお褒めいただきにこにこしています、今はガチガチな伊万里様がつつきまくる日も来るかな…いつか来ないかな…!!)
監査が滞りなく進むのでしたら、どのような貴方でも差し支えはありません。どうぞお健やかにお過ごしください。
( ああ、なるほど──何となく頭の中でぽんと手を打つ。物心つく前から刀剣男士に囲まれていた自分には分からないが、鶴丸国永や亀甲貞宗と初めて相見えた審神者は今の自分と同じような心境なのではないか。細められた美しい双眸を見据えながら、至極落ち着いた声音で肯定も否定にも寄らない答えを返して。
「道すがらで構いません」と移動を促し、一旦止めていた足を再び動かし始めてこちらの本題に入る。…彼の言う通り、昨日よりも肩の力が抜けたのは確かだ。失礼のないようにしなければ、と自らを戒め、むっと口端を結び )
……それで、ご相談なのですが。監査官殿、戦はお好きですか?監査官殿の育成方針のためにお答えください。
(/ 今回の伊万里の質問に対する答えにもよりますが、まずはお一人で函館3周ほどしていただく予定です。桜付けは大事ですね!その後は答え次第で出陣か内番かに振ろうかと思っていますので、何かご希望がございましたら何なりとお申し付けくださいませ。何も今すぐ池に落とすつもりはございませんのでご安心を~!
最後のは伊万里が若干妬く気がしますね~!それも良し!可愛げのある妬き方はあまりしなさそうですが。普段伊万里に振り回されがちですので、存分に意趣返ししてやってくださいませ。
特に用もないのに執務室でぐーたらされたりしたら、今の段階でも割と起こりそうな気が…します…!「監査しないんですか?」「それ監査なんですか?」「どういう監査なんですか?」「監査?」「監査?」と純粋につつきすぎそうです。寧ろ仲が深まってからの方が、これはのんびりしてるだけだなぁ…と放っておくんじゃないでしょうか。理解度ですね。)
( 返された答えに満足気に頷いて、主に促されるまま、朝特有の静けさに満ちた本丸内を広間の方へと進んでいく。
真横の主が、余計な緊張こそ霧散させつつ、心做しかきりっとした声で改めて問うてきたのは、これからの己の身の振り方。途端口許ににんまりと弧を描いて、「俺は『破敵剣』だぜ。戦が好きに決まってんだろ?」なんて大胆不敵な発言を。
元々護身用の剣として作られた己どもは、敵を打破することを何より好む性分である。戦に回されるのに否やなどある筈もない。とはいえ__それ以外に気になることがあるのも事実で、先程までのざっくばらんな雰囲気を少し潜め、真剣さを取り戻した横顔で此方からも頼み込む。この本丸の監査のために、己が政府のもとで培ってきた練度__刀剣としての強さは、一度初期化されてしまっている。強敵を斬り伏せるあの快感をまた味わうためにも、一刻も早く、まずは特になりたいものだ )
真面目な話よ、他の連中と隊を組んでもまともに動けるようじゃないと、監査もままならないんだよな。遠征だって、ある程度体力つけなきゃ行き来できない時代ってのがあるだろ?
だからとりあえず、ばかすか出陣させてくれ。敵の親玉をどんどん斬って、手っ取り早く強くなってみせるからよ。
(/畏まりました~!それでは早速提案でして、
桜付け周回3回目の後、全身血まみれで帰還する破敵剣→話を聞くと、本来出現しないはずの検非違使が登場したという→幸いバグ検非違使は雑魚だったので皆倒せた、浴びているのも実は殆ど敵の返り血→ただし軽傷は負っているため、手入れと薬研の診察後、大事をとって出陣の予定を内番に変更→しかし、本来出陣したかった破敵剣はことごとくサボりたがり、15時になると待ってましたとばかりに抜け出す
なんて流れはいかがでしょうか??雑魚相手とはいえ多対一を制した破敵剣の強さの手っ取り早い証明だったり、霊力の乱れについて最初に露見したケースにできたり、早速素の怠け癖があらわになったり、色んな過程で本丸の皆と大騒ぎできそうだったり……兎角あれこれ盛り込んでみよう!という試みなのですが、詰め込みすぎでしたら遠慮なく待ったの声をば…!
普段空回り気味ながらも基本落ち着いてる伊万里様がヤキモチ妬いてしまうの絶対可愛いじゃないですか即採用です…でもでも、振り回しているのは自由人な破敵剣も同じですので、伊万里様の方もまた、主の立場を存分に活かしてやり込めてやってくださいね。
そしてつつきまくり伊万里様、天然炸裂しててこれまた可愛い…!これ意地悪でもからかいでもなくて、純粋な質問責めなんだろうなあ…それがやがて問わずとも推し量れるようになるのもまた味わい深くて最高です。逆に破敵剣の方は、伊万里様のことを好きになればなるほど構いたがるようになりそうなイメージがあります。キーボードの上に乗ってくる猫のアレですね。慣れてくると執務室の扉をスターン!と開けて、「卯ノ花、寒ぃ!」なんて一言だけで説明は充分とばかりに、執務中の伊万里様を後ろからすっぽり包んでぬくぬくしたりしそうです。刀剣男士の本丸ボイス同様、審神者の執務室ボイスなんてのを彼ならたくさん引き出せそうで、今から冬本丸が楽しみになっております…!)
好都合です。こちらとしても、ある程度の練度に到達するまでは早めに経験を積ませるつもりでしたから。
( 口許に浮かぶ三日月を見上げると、なるほど、と短く相槌を打ち。出陣に対する気遣いは不要らしい。このような形の監査として派遣されたのだから当然か。監査官として、破敵剣として、述べられる意見を口を閉ざして聞こ終わり、間を置かずに肯定を返す。監査のことを別としても、ここまで意欲的な刀剣男士を燻らせておく気は毛頭ない。
とはいえ彼は政府から借り受けた大事な刀剣なのだから、意識して丁重には扱わなければ。まずは軽く函館を──わざわざ貴重な精鋭兵や銃兵を引っ張り出す必要はないだろうか、しかし疲労度を考えれば銃兵は一つくらい積ませても──、悶々と考えながら若干上の空に連絡事項を簡単に告げる。すぐに去らずに未だ彼の後ろに続き、何か言いたいことはありますか、と言わんばかりに横顔を見上げて )
……とはいえ、初めの内は慎重に。歯痒い思いをされるかと思いますが、どうかご容赦ください。
監査官殿の準備ができ次第で構いませんので、後ほど執務室にお越しください。その際は戦装束のご用意を。
(/ 勿論異存などございません…!!色々と詰め込みつつも違和感のない流れで、毎度のことながら展開作りがお上手で感服いたします!ちなみにロルとしてはどこから描写いたしましょうか。今回執務室に呼んでいる件については、まずは函館回ってね、ハイこれ刀装、程度のやり取りを想定しているため割愛でも何ら問題ありません◎
個人的に伊万里には、刀剣男士を恋愛対象として全く見ていないレベルのバカ真面目さを期待しているので、自分の中でわけもわからず妬いててほしいですね…!それこそ夜に一つの布団ででも寝ない限り意識はしないと思うので、そういう意味でも猿夢がとっても楽しみです笑
破敵剣さん猫じゃないですか~!!かわいい!!歌仙さんとか長谷部辺りにべりべり剥がされてそうですが、伊万里も伊万里で動きづらいけど温かいから満更でもなかったりするといいですね。暖かくなるにつれてひっつかれる頻度が減ってちょっぴり寂しくなったり。懐っこいお猫様感ありますね。)
( 懇切丁寧な物言いにもただ鷹揚に頷いて、「あいよ」となんとも軽い返事を。この主はその言動こそ慎み深いが、頭もお固いわけではない、そこが気楽で良いところと、二日目にして心得つつある。
「んじゃ俺、朝餉貰ってくるわー」と先ほどよりも小さな欠伸を再びまろび出させて、背を向けたまま手をひらひら、他の刀剣たちが食事や配膳を行っている朝陽差す広間の中へ。昨夜とはまるで様子の違う己に、場にいた一同皆困惑顔を見せたのは言うまでもない話。
その後、贅沢にも銃兵を借り受けて函館に出陣し、三度目のそれから帰還したのは日が真南まで昇った頃。七人乗りの転送ポッドから一人本丸に帰還したその姿は、けれども、血の満ちた大桶をひっくり返して頭から被ったような、おどろおどろしい深紅に染まって。
たまたま出迎えた乱が絹を裂くような悲鳴を上げ、顔を覗かせた今剣も「あ、あるじさま!あるじさまー!!」と転がるように駆けていき、すっ飛んできた陸奥守も「いったい何事じゃ?!」とぎょっとした顔をする。されど構わず、血を滴らせながら本丸のほうに歩いて行き、自身の凄惨さにはとりあわずに、にかっとした笑みを )
悪ぃ悪ぃ、何か知らんが検非違使が出ちまったみたいでさ。
(/良かったです、それではその方向で進めますね~!お言葉に甘えて、早速刀装受け渡し・函館出陣は割愛し、桜付けから帰ってくるシーンまで飛ばさせていただきました◎その後わちゃわちゃしてから内番の日常風景を飛ばし飛ばしで描写、からのお買い物を楽しめればと!
本丸の皆も主がそういうお方だと知ってるからこそ、恋煩いを怪異の仕業と取り違えるわけですね…今まで背後様と話してきてなんとなく、既にいた刀たちは伊万里様と家族のような距離感なのだろうなとほこほこしております。特に歌仙さんと長谷部の二人が、父親のような兄のような護衛のような立ち位置である事は、背後様の中でも同じイメージのようで良かったです◎責任感ある二人して、外部出身だからこそ遠慮なく主にちょっかいを出して回る破敵剣に青筋を立てつつ、主自身の気持ちも察して頭を抱えてたら面白いですね…!
さてさて、破敵剣と伊万里様の関係についてや、この先のストーリーについて、はたまた原作ゲームについてなど、楽しいお話をありがとうございました!相談も一通り片付いたかと思うので、この辺りで背後は一度お暇しようかと思います。もちろん、雑談も相談もいつでも大歓迎ですので、何かの折のお声がけはお気兼ねなくおいでください◎こちらからもまたお世話になりに参りますね…!!)
( 函館程度では些か不満げな彼のため、この後は随伴として何振りかつけて軽く鳥羽にでも。監査官殿は初陣同然なのでなるべくお守りするように───そんなことを言い付けながら、出陣を見送るべくポッドへと向かう最中、「あるじさま、あるじさまー!!」バタバタと駆けてきた今剣の高い声。腰にへばりつく小さな体を抱きとめ耳を傾けるが、どうにも要領を得ない。後ろに控えた男士に一先ず取り乱した今剣を任せ、その中から歌仙だけを連れて歩調を速めるにつれ、わーだのきゃーだのと聞こえてくる叫喚にキリキリと胃が痛む。大きな虫でもいてくれたら気が楽だったが、次第に視界に映るのは赤黒くぬらりと光る塊───監査官。くらりと目眩がする。その姿の凄惨にではなく、政府から貸与された監査官をたった二日でこの状態にしてしまったことに対して。「彼は僕たちで何とかしておくから、きみは執務室に、」と何やら気遣いの言葉をかけてくれる優しい初期刀を他所にふらふらと鮮血迸る彼へと近付き、既に漠然と必用資源の計算をしつつ芯のない声で呼び掛ける。ふと違和感を覚えたのはそのときで、その身を覆う赤に清らかさを感じない。目を細めてじっと見遣り、もしや、と当たりをつけると訝しげに問い掛けて )
───…いえいえ、いえ。手入れ。誰か、…いえ、私がお連れします。大丈夫ですから、……あれ?
……監査官殿、手入れ部屋まで歩けますか。
(/ 畏まりました~!手入れの後は暫し日常風景をお楽しみくださいませ。こちらも背後は失礼いたしますね。長らくのご相談と雑談のお付き合い、心より感謝申し上げます!また何かございましたらいつでもお声掛けくださいませ。)
おう!見てくれだけは派手だけど、この通り何ともないからな。
( 呆然とした様子で話しかけてきた声に、薬研の質問攻めを制して背後を振り返る。其処にいたのは蒼白な顔をした主、卯ノ花。しかし何事か気づく素振りを見せ、探るような問いをも寄こしてきたので、此方もあっけらかんと元気の良い返事を。
何ともないわけがないだろう、と意外にも心配そうに眉根を寄せる初期刀に、いやいやマジだって、と肩を竦めてから、ぶわり、噴き出させた神気によって、全身に浴びた邪を払う。途端、狩衣から滴り落ちる血はなくなり、肌を覆っていた真っ赤な痕も蒸発するかのように霧散。あとに残るは肌に走ったごく軽微な切り傷のみ、それが己の実際の負傷のほどで。
ぽかんとして立ち尽くす刀剣たちの事は構わず、身振りによって主についてくるよう示すと、履物を脱いで本丸の中へ。昨日教わったばかりの手入れ部屋の方角に向かいつつ、道すがら主に説明を。しかしそれは、この本丸の成績不振の原因を探るために来た厳しい監査官の筈でありながら、類例のない異常現象を明らかに面白がる口ぶりで )
函館なのによ、なぜか検非違使どもが出やがったんだよな。一対六はこりゃやべえと俺も一瞬焦ったけど、幸い向こうも、なんで自分らがこんな場所に?ってな間抜けヅラで困惑しててよ。その隙に銃兵が先制攻撃してくれて、あとは畳みかけるだけだった。ま、圧勝だな。
__今までにも、こういうことは?
( 血が霧散し本来の姿が露わになり、僅かばかりの傷が目に入って尚波立つ胸中は静まらない。主人の内心とは反対に、その見目の凄惨さが収まれば周囲の熱は徐々に引いていき、渦中の人がそそくさとその場を去れば殊更。彼らの主として解散を各自に告げることでわらわらとお開きとなっていった。何かと同伴したがる初期刀にを制し、手入れ部屋へと爪先を向けて。
事の顛末を楽しげに話す様はどこか稚い。またしても悪さをする己が霊力が酷く恨めしく、耳は傾けつつも、視線は何度も床へと落ちていく。気を紛らわせるように廊下の板目を目でなぞっていたが、発言の語尾に疑問符がついたことに気付くと数テンポ遅れて顔を上げ、努めて落ち着いた声音で答えを。そうしている間に着いた手入れ部屋の戸を開け、室内へと入るよう促して )
────以前にも、数度。片手で数えられる程度ですが。函館に現れたことはありません。……まさか函館には現れまいと、勝手な先入観を抱いていた私の落ち度です。
監査官殿、お入りください。
( どーも、と軽い声を返して、掃除の行き届いた明るい手入れ部屋の中へ。狩衣を解いて楽な肌襦袢姿になると、重傷者用の床には向かわず、隅に積み上げられていた座布団の山から二枚拝借。ぼすぼすと適当に投げれば、片方にどかりと腰を下ろし、慣れた様子で袖捲り。時の政府にいた頃だって、専属の医官に幾度となく世話になったのだ。
大人しく手入れの作業を見守りながらも、先ほどの何処か食い締めるような声音を思い出し、あくまで明るい言葉を紡ぐ。着任してからまだ半年、そんな新米審神者なら、学ばねばならぬ事柄もまだまだ大量に待ち受けていよう。ただでさえ常日頃激務に圧されているというのに、本来あり得ぬ不測の事態にも完璧に対処せよなんて、土台無茶な話。これから原因を突き止めるためにも、まずは落ち込みを和らげようと )
成程なあ、条件を満たしてねぇのにしゃしゃってくる検非違使なんざ厄介以外の何物でもねえわな。ましてや函館に出るなんて、誰も予測できねえよ。
だから主、別にあんたが気に病むことじゃない。
いいえ!お気遣い痛み入りますが、私には無用です。そもそもの原因は私の霊力の乱れなのですから、自らの不甲斐なさから目を背けるなど言語道断!
( 手入れ部屋の戸を閉め、恙無く行われる手入れの様子を足を揃えて眺める最中、掛けられた洒々落々とした慰めの言葉を噛み締めるために数秒の間を開け──噛み締めた上で否定を強く返し。可能性を知っていた以上、無知であることを言い訳にはできない。現状を正しく捉え、適切な判断を下すことこそが上に立つ者の務めではないのか。何よりも、何よりも許しがたいのは、出陣していたのが〝私の刀〟でなくてよかった、などとほんの一瞬でも考えてしまったこと。内臓が竦むような嫌悪感を覚えて強く瞼を下ろし、暫し自らを宥めるように強く袖を握って口を噤み。
ふ、と小さく息を吐く。何も言わず抜き身の本体へと静かに近付き、衣服の裾を整えて腰を下ろし、慣れた手付きで?を外せば真っ直ぐな刀身に室内の灯りが反射し、鈍い鋼の色に光の筋が入る様を目を伏せて眺め。少しの間の後、奉書紙を手に軽く汚れを拭い、ムラなく均等にと打粉を塗していくにつれ、次第に忙しない胸中が落ち着いていくのが自分で分かる。刀身に映る己と向き合ったまま、その丁寧な手付きに見合った声音でぽつりと零して )
皆、私を責めません。未熟であることは紛うことなき事実です。私だけは私を責めなければ、そこで歩みが止まってしまいます。
(/ も、文字化け……!描写内の?部分は「ハバキ」と置き換えてくだされば幸いです。訂正のみですのでお返事は不要です、大変失礼いたしました~! )
( 語気を強めての否定におや、と視線を向ける。目の前に座す主殿は、宛ら何かをこらえる様な、幾つかの感情が複雑に入り乱れる顔をしている。黙ってじっと見入るうちにその緊張はふと緩められ、己の本体である剣にに白い砥粉がはたかれていく。癒えていく己の肉体、しかし反対に、主の心は暗く沈んでいくようで。
やがて小さく落とされた声。違和感に目を細くした。今のはまるで、会話相手である己ではなく、卯ノ花彼女自身に語り掛けていた様に聞こえる。なにか、暗中に囚われているのだろうか。
首の後ろをぽりぽり掻いて「…言うことはわからないでもないけどなあ」と、暫くの間の後に漸く相槌を。それから、胡坐をかいた両膝を掌で「うっし!」と叩く。軽傷であることを踏まえても手入れは案外すんなり終わった。ならば、いよいよ他の連中と一緒に合戦場に向かおうと )
未熟であることそれ自体は責めるもんでもないだろ。未熟なまま成長しようとしなけりゃそれは困りもんだろうけどよ__ま、あんま自分を責め過ぎんなって話だ。
んじゃ主、俺また行ってくるわ。隊長誰か忘れたけど、第二部隊と合流でいいんだよな?
( 軽く拭い、刀身は油塗紙で薄く平に油を纏わせ、茎の部分は掌で優しく撫でるように、そうして塗布された丁子油で徐々に反射光がまろくなっていく。あとは元通り丁寧に拵を整えると満足げに眦を細めて眺めていたかと思えば、そのまま胸元へと引き寄せ、本体を包むようにそっと抱き締める。大丈夫、大丈夫、と小さく唇を動かし、抱き枕を抱えて眠る子供のように身を寄せて。
浅ましい償いは他ならぬ本人の声で中断される。まるで存在を忘れていたように身を跳ねさせ振り返ると、何やらやる気満々の様子に対してぶんぶんを首を横に振り、またしてもしっかと本体を抱きかかえる。今回の意味合いは彼に渡さないという意思表示のためだが。出陣前の様子からして不満の声が上がるだろうと当たりをつけ、決定事項だと言外に伝えるようにぴしゃりと言い放ち )
……いえ。いえいえいえ、駄目です。今日の出陣は中止!また妙なことが起こっても困りますから。
監査官殿は慣れるためにも内番に回っていただきます。指導は歌仙に任せるつもりですので、彼が来るまでお待ちください。
え、ちょちょちょ待てって!そりゃねぇだろ、いいじゃねぇか別に!
( この子は渡さないと言わんばかりに取り上げられた磨き立ての本体。それ即ち人質だと理解して、ぎょっと声を上げ胡座を崩す。
主の命に逆らわぬのが刀剣男士というものである、されどこれはあんまりじゃないか。漸く幾歳月ぶりに、函館のようなぬるま湯ではない本物の合戦場に出られると思っていたのだ。其の為ならと大人しく桜付けに甘んじたし、検非違使の奇襲だって単騎撃破した。だのに主は、有無を言わさぬ口調を用いてまで、内番に回れと仰せになる。己は褒美ではなく罰を賜る!
当然受け入れられる訳がない。片膝を立ててぎゃあぎゃあ騒ぎながら迫る。己の剣を取り返そうとあちこち手を伸ばすも、主の意志は固く、虚しく空を切るばかりだったその時。
手入れ部屋の戸をぱんと開け、現れたるは白衣の薬研。「なあたいしょ、監査官の様子は…」と何気なく下ろされた短刀の視線が、身を守る主君の少女と、それに迫る新入りの妙な男…剰え、主の胸元へと伸びる無骨な掌に、ぴたと留まって凍り付けば。
必然、「__歌仙っ、こんのすけえええっ!」と、本丸中に怒号を響き渡らせながら取り押さえられる騒ぎとなって )
あくまで私は慎重に、監査官殿の身を案じて、……な、何ですかその手は───ッだ、駄目です!それが監査官の仰るお言葉ですか!
( 予想通りの反応に内心で得意げに鼻を伸ばし、何やら喚く彼とは反対に淡々と理由を述べるが、相手が姿勢を崩せばこちらもぎょっと身を強張らせる。後退ろうと正座が崩れ、落として傷でも付いたらいけないと余計に剣を抱え込む中、次第に彼の抗議に腹が立ってくる。今回の采配は何ら間違ってはいないはず。だというのに破敵剣として駄々を捏ねる相手に、つい声を上げてその任を思い出すように叱責を───したはずが、立場を利用し審神者に迫る悪徳監査官を拒む台詞になるとは夢にも思うまい。
数分もしない内に、歌仙と長谷部を筆頭にして怒号を聞いた男士が集まり、第二波として野次馬がちらほらと。「大なり小なり無体を働かれたんだろう?」「言いづらいかもしれないが、本当のことを言ってごらん」「庇う必要なんかないんだよ」「僕にだけでも構わない」「辛いようなら部屋を変えようか」…怒りを抑え、心苦しげな表情で寄り添うように問うてくる初期刀に、ひいてはこの場にいる男士全員に聞こえるように一つ一つ述べる。特に無法者の身を地に伏せ取り押さえながら、未だ憤りに肩を振わせる長谷部の耳に届くように。この現状、手に渡らないよう胸に抱くべきは長谷部の本体かもしれない。
被害者兼弁護人として被疑者の擁護を続けながら、手入れ部屋の床にべしょりと潰れる憐れな悪徳監査官の姿を一瞥し、またしても目眩を覚えそうになる。…これも政府に報告されるのだろうか。「取り敢えず長谷部は退きなさい」と一言命じるが、「ですがこの男を野放しにしておくのは、」と渋るのは想定内。側に屈むとバツが悪そうに表情を覗き込み、どうか変なことは言わないように、と視線で促して )
…────だから、誤解です。何もされていません。いえ、庇ってなんか。監査官殿が襦袢姿なのは手入れ中だからであって、……ああ、もう。誤解が解けるまでは私も動きませんから。
監査官殿からも何か仰ってください。理性的なお言葉を。
( 解せぬ。あれから数分後、仮にも元怪我人、それも昨日赴任したばかりの監査官であるはずの己は、ぶすくれた顔のまま、めり込みそうなほどの圧をもって、床にがっちりと押さえつけられていた。おまけに周りを、遠征に出ている連中以外…つまりは十振以上にもなる大小さまざまな刀たちに、ずんと取り囲まれていた。
己を壁際から見下ろす加州は、「女の子に乱暴するなんてサイテー………」と塵を見る目を向けてくる。この本丸の刀たちの頭、初期刀の歌仙は、本気でいたわしそうに主の身を案じている。己がいったい何をした?己の方こそ被害者だろう。だのに、上からぎりぎりねじ伏せてくる厳めしい打刀ともなれば、怒りが高じて呼吸を激しく乱しながら、何やらどす黒く息まく態度だ。決めた、こいつは絶対にへし切呼びで固定してやる、なんて思ったその瞬間、己の頭を掴む手に更にぎちぎちと力が加わる。割と本気で痛い。
そうして暴れようもなくがっちがちに取り押さえられていると、そばに屈んだ主から、何ともありがたいお言葉が。恨みのこもった半目で見上げ、無理やり頭をふって長谷部の手の力を緩めさせ。「俺のどこがけだものだったって?」と、すぐさま噛みつくような開口一番。「戦に出してくれるって約束をこいつにポシャられたんだよ!だからそりゃおかしいって言い返してただけだろ!」と、主の優しい願いも空しく、ぎゃいぎゃいと反抗的な物言いを改める気配はなく。
己の後ろで薬研、安定の気配が真冬のように冷えていく一方、同田貫が何の感慨も交えずに、「なんだこいつ、監査官が来るっていうからどんなのかと思ったら…ただのクソガキじゃねえか」と呟きを。「こいつ、本当に政府の派遣か?」と疑ぐる和泉守。「主、良かったら今日の内番は私が彼を監督しようか」と落ち着いた声で石切丸。「手合わせならいいぜ!」と傲慢に要望を出せば、「俺がお相手致しますよ」と真上からにこやかな返事、しかし己の項はぴりぴりと殺意を受信。ひゅ、と喉を鳴らすと、今ばかりは手合わせは御免だと懇願する紫の目を、冷や汗を流しつつ審神者へと向けて )
( 漕ぎ出でた小さな助け舟がみるみる浸水しずぶずぶと沈んでいく。差し伸べられた手が払い退けられれば更に反感を買うのも当然の流れで、四方から聞こえる諍いの声に軽く額を押さえて困り果て、どうにかこの場を収める鶴の一声とやらを模索してみようか。
──そもそも、約束を破った自分が悪いのだろうか。こんなに喚き立てるほど戦に行きたがっているのなら、本丸に縛り付けておく方が酷い審神者なのでは。しかしまた検非違使が、例えば今度は霊力の乱れが原因で高練度帯の検非違使でも現れたら?いやいや、矢張り出陣の中止は間違った判断ではないはず。ではどうしてこんなに責め立てられるのだろう。頑として断るにつれ監査官殿の抗議の声は大きくなる一方で、その分皆の心象も悪くなって、彼が本丸に馴染めなくなる。空気が悪くなったのは全て自分が約束を破ったからなのでは。軽く出陣させてやればこんなことには、いやしかし、でも。
暫しの長い思案のあと、「あの、」と一言。男ばかりの狭い部屋でソプラノが良く通り、一斉に視線が集まり──そして一斉に「うわ」だの「げ、」だの、息を呑む音だのが室内にぽつぽつと広がり、先の喧騒が嘘のように静寂が空気をぴんと張らせる。その理由は浮かべていた表情にあり、窮する胸中がそのまま表れたような兎角余裕のない緊張の顔に、脂汗まで滲む始末。見る者によっては泣き出す一歩手前にも見えただろうか。
当の本人は途端静まった室内に疑問符を浮かべて軽く見回し、状況は掴めないながらもこれ幸いと口を開き。「まず監査官殿の上から退きなさい」「監査官殿を手合わせに配する気はありません」「同田貫は彼の気持ちが多少なりとも共感し得るでしょう」「石切丸…お願いしてもいいですか。なるべく無理強いはしないであげて」反応も待たずに次々と言葉を続け、最後に窘めるように長谷部の腕に手を重ね、何か言いたげに口を結ぶ彼に対し「あとで頼みたい仕事があるので、執務室に来てくれますか」と眉尻を下げてみせ。喜色を浮かべて首を垂れる彼の腕が緩んだのを確認すると、次に視線が移るのは件の監査官へ。目の前に剣をそっと置き、言葉に迷って暫し視線を彷徨わせ、目を伏せたまま精一杯の気遣いを )
……三時の予定は、少し早めましょう。いつでも構いませんから。
( 主の顔の変化を見て、己も同様に「…げっ」という反省の声を。先ほどまであんなに威勢良く吠えていたのが、花の様な少女を困らせて泣かせかけていると見るや、慌ててその矛を収めたようで。ぴたり押し黙ったまま、事の流れを注視する。
主は一同の似たような反応に困惑した様子を見せながらも、てきぱきと次々に主人らしい適切な指示を。皆大人しくそれに従い、おかげで漸く解放された己も、静かに体を起こしはするが、もう暴れたりはせず。返って気まずそうに横を向き、痛めた肩を控え目に揉みほぐす。
剣を置かれるとまずそれを見て、次に甚だ居た堪れなさそうな自業自得の表情を顔をちらりと主に。流石にこうなっては強情に我を通すつもりもない。とは言えど、これは早急に多少の挽回が必要と見て、俯き項を掻きながら「あー」だの「ンン……」だの煮え切らぬ声を幾つか。やがて決断、歌仙や石切丸の方を先生に睨まれる悪餓鬼の様に首を縮めて一瞥しながら、なんともしおらしい懇願を )
そいじゃ、軽装に着替えてくるから、この後すぐ頼むわ。あんたに都合してもらう用事だから、さっさと終わらせる方がいい。…………その後の内番は、あー、何でもするからよ。
……??わ、わかったら解散!一日に何度も集まりすぎです。
( 油を絞られたような皆の反応に未だ違和感を覚えながらも、数度手を叩いて本日二度目の解散の合図を。 手入れ部屋の戸を大きく開けてやり、そこから出て行く刀たちの窺うような視線が度々刺さる。…そんなに怖い顔をしていただろうか。
残ってくれた石切丸に何度も感謝を述べ、その人好きのする笑みに胸中の焦燥が剥がされていく。太刀以上の間合いの、あの安穏とした年長者たちがもう少し多ければ、今回の騒ぎも多少は角が立たなかっただろうか。主、と呼ぶ歌仙の声でふと我に返る。視線で示される先には何とも居心地の悪そうな監査官──というより、破敵剣。気まずげな喘ぎの後、続く言葉には一瞬表情を歪めるが、堪えて首肯を返す。言いたいことは色々とあるが、続きは買い出しの際としておこうか。短い言葉で会話を切り上げると、歌仙を連れてそそくさとその場を立ち去り、完全なるお開きとして )
ええ、問題ありません。ポッド前でお待ちしています。
( 私室に戻る道すがら、曲がり角の辺りで震えながら手入れ部屋を見ているこんのすけに蹴躓いた。わひゃっと変な鳴き声をあげた管狐をいぶかしんで目線の高さに摘まみ上げ、どうしたよと尋ねてみると、男士たちが仰々しい様子で駆けていき、乱暴な物音もしたので、怖くて近づけなかったとの話。あー、そいつはもう解決したぞ、と白々しく言ってやると、霊狐は明らかにホッとした顔を。床に下ろし放してやり、さにわさまさにわさま、とぴょんぴょこ探しに行くのを見送る。この本丸のこんのすけは気弱な性質の個体と思えた。それはそれで扱いやすいが、ああいうのに限って、審神者の危機と聞きつけるなり大きく動いて厄介になる。やっぱり油揚げ買っとかなきゃなあ、と頬をぽりぽり掻きながら私室へ。
二分もせずに着替えると、外にある転送装置の方へ。いくら何でも人目に触れるからという事で、二十代の若者らしい、そつのないミリタリーファッションに身を包んでいる。大きな襟にファーのついた迷彩柄のジャケットは、愛用の一着だ。遠くから主の方に手を上げて挨拶を。手前のパネルに掌を触れて退城記録をとると、さっそく中に乗り込んで )
悪ぃ、お待たせ。それじゃ行こうぜ。
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