匿名さん 2022-09-03 19:19:45 |
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【 ラギー・ブッチ 】
小遣いが出るんなら喜んで立候補するッスけど。妙な下心持ってる奴らが寄ってくるよりずっとマシでしょ。
(向けられる妙な視線に気付くと居心地悪そうに耳をへたりと寝かせ、こちらは反対に目を逸らす。何を考えているんだろうか。そういえば彼女はやたらと寮長に対して前のめりだとか。もしや進んでこき使われたいとでも思っているのだろうか。顎で使われたことのないお嬢様だからなのか、それとも別の理由があるのか。できれば前者であることを願いつつ、彼女に続いて教室を出る。
そんな風に思っていたからか、彼女の口から出た仕えられる側の発言が出ると、自分が考えすぎだと突きつけられたようでどうにも悔しかった。結局は貴族様なのだ。気分を切り替えて肘から先を持ち上げ挙手し、犬歯を見せて笑みを浮かべる。かの寮長はギブアンドテイクとはいえ基本は無賃でこき使うだけであり、報酬が出るのならそれに越したことはない。ついでに触発されて王子様も給料を出してくれればいいのだが。都合のいい想像に、シシシ、と笑い声を上げて。)
【 ドロシー・エルリッチャー 】
あ…、双子だったの?ごめんなさい、知らなくて。道理で雰囲気が違いすぎると思った…。
(品のある笑いに含むところを感じ取ると困ったように肩を竦めるが、相手の次の発言を聞けば驚きに目を見開いて。失礼な間違いに胸に手を当てて慌てて詫びを入れ、眉を下げつつも未だ彼の姿へと視線を遣り観察を続けて。基本的に他者に対してあまり興味のない自分には双子は少々面倒な存在だ。大事なときに呼び間違えでもしないようにしっかりと覚えておく必要がある。下がった分の距離を詰め、随分と高い位置にあるかんばせを覗き込むためにそっと体を寄せ、自分の頭を軽く撫でて帽子を取るよう頼み。帽子の影が差しているとはいえ、この時点でも全く見分けがつかない。というか、フロイドの顔をはっきりと覚えていないのだから比較のしようがない。面倒な存在に内心で唸りつつ、それをおくびにも出さずに微笑んで。)
綺麗なお名前。帽子、取ってくださる?お顔をよく見せて。
【 ヘレナ・アンティパス 】
本当?それじゃあ今度気が向いたら頼むかも。
( 小遣いが出るなら自分がと早速名乗りを受けると、見知った彼に使いを頼めるのなら悪くないかもしれないと思案する。使用人としてずっとそばに置いておくわけではないし、ただの使い走りとして使う分には悪くない。それに、彼の仕事ぶりがわかればレオナの考えを少しは読むことができるかもしれないし。そんな思案からそのうち頼むかもしれないと返答しては、彼はどのくらいの給料がほしいのだろうと考える。販売されているパンの料金に手数料を加えて、せいぜい1日500マドルもあれば満足だろうか。そんなつまらない計算をすると、まあ考えるのはまた今度でいいかという結論に帰着する。
使い走りとしてでもレオナと関わっている彼からして、あの寮長はどのような人だろう。好きな女のタイプとか、何が望みなのかとか、そんなことを知っていたりはしないかと思うと尋ねてみて )
ねえ、ラギーから見てキングスカラー先輩ってどんな人?どんな女が好きなのかとか聞いたことはない?
──────
【 ジェイド・リーチ 】
いいえ、構いませんよ。よくあることですから。
( こうして兄弟を間違えられることはしばしばあるし、別にそれほど腹立たしいことでもない。不機嫌なフロイドが間違えられたのなら話は変わってくるが、少なくとも自分にとってはそれほど許しがたいことではない。そもそも、見た目が似ている以上間違えるのも無理のないことだろう。彼女の謝罪に微笑んで許容の言葉を返しながらも、距離を詰めてくる彼女に微かに目を細める。
アズールに愛をせがんでおいて、自分とも距離を詰めるつもりだろうか。アズールが警戒するのも無理もない、たしかに得体のしれない女だと思ってしまう。もう少し彼女に都合のいいように振る舞って泳がせてみたら、彼女はどう動くだろうか。そんな考えから素直に帽子を脱いで彼女を見遣り )
どうです?…フロイドと同じ顔に見えますか?
【 ラギー・ブッチ 】
……女子の好みなんて話すと本気で思ってるんスか。そんな世間話しないッスよ。
(色良い返事に「よっしゃ」と顧客獲得の声を上げ、機嫌の良さが足並みに現れ弾むように廊下を往く。無論報酬のことだけでなく、彼女に頼られること、彼女に余計な男が寄り付く機会を一つ潰せたことを喜ばしく思う気持ちも大きく、自然と鼻歌が零れ始めるが、次に向けられた質問でぴたりと止み。
まずは呆れた様子でじとりと見詰め否定を。知り合ったばかりの自国の王子兼先輩にそんなこと聞けるかよ、と内心で言葉を付け加えた後、答えやすそうなもう一つの質問について考える。どんな人、というのは、どういった意図の質問なのだろうか。結局は彼女の考えを汲めるわけもなく自分なりの答えを出すしかないのだが。普段部屋や植物園で見せる怠惰でだらしない姿や、部活で見せる部長らしい姿。ここ数週間の寮長の印象を振り返りながら、どこか辿々しい口調で答えを述べ、加えて質問を返して。)
どんな人かぁ。気に食わないところも多いッスけど、まあリーダーには向いてるんじゃねーかな。部活でも何だかんだ面倒見はいい……気がするし。ヘレナくんにはどう見えるんスか?
【 ドロシー・エルリッチャー 】
……、いいえ。この距離なら、よく見えるから。
(よくあることだからこそ嫌気が差しているかと思ったが、どうやら兄弟とは違いそれなりに温厚らしい。胡散臭くはあるが相対的に好感を覚える。帽子が取られる動作をじっと見詰め、顔立ちの全体的な雰囲気が捉えやすくなると何を言うでもなく視線を絡めて、ゆっくりとした瞬きを数回繰り返した後、何か言いたげに瞳を揺らして僅かに切なげに眦を細める。ほんの小さな動きで首を横に振り、口角を上げて笑みを見せ。我ながらロマンチックで素晴らしい間の取り方だとは思うが、その実相手の顔を覚えようと必死だ。慣れるまでは程良い緊張感と共に過ごすことになる予感がする。そんな嘘だらけの態度の中、彼の瞳に映る自分の姿が薄らと目に入れば僅かに息を呑み、きゅんと胸が高鳴れば頬がほんのりと桜色に染まり始めるのが分かる。慌ててとん、とん、と数歩下がって適切な距離へと戻り、はしたなく近付いてしまったことへの言い訳を気恥ずかしげな笑みと共に告げ、浮き足立ったように自らの髪を撫でて。)
よかった。……最低でも一ヶ月は一緒に働くんだもの、見分けはつくようにならないとね。まじまじ見てしまってごめんなさい。
【 ヘレナ・アンティパス 】
そうなの?それじゃあ…お小遣いをあげるから聞いてきて、って言ったら聞いてきてくれる?
( 好きな女の話はしないという言葉に残念がるように肩をすくめる。前にも結局彼の好みの女の話ははぐらかされてしまったし、まあ小間使いのような後輩にそうそう恋愛の話をする機会なんてないか。そう思って諦めかけるものの、すぐに思い当たったのは彼の買収。お小遣いを与えれば自分のために使い走りをしてくれるのだから、情報収集も頼めるかもしれない。そう思うと早速彼に提案してみる。
彼から見た寮長の印象というのに興味深そうに相槌を打っては、やはり中身まで腐りきったたちではないようだと思案する。少なくとも、彼が言っていたような"落ちぶれた第二王子"ではないだろう。そう思いながらも、自分からの印象を問われると今まで彼と交わした会話を思い返しながらかすかな笑みとともに答えて )
あの人は…どこか諦観してるみたいに見えるけど、第二王子ごときに燻ぶらせておくのはもったいない人だと思う。もしも彼に王座への野心があるんなら、私にとって完璧な理想の男性かも。
──────
【 ジェイド・リーチ 】
いえ、僕は構いません。…ただ、無分別に男と距離を詰める女性をアズールがどう思うか。彼の愛が欲しいなら相応の振る舞いが必要かもしれませんね。
( 自分の目を見つめる彼女は、何を考えているのだろう。この女はアズールに取り入りたくて契約に来たのかと思っていたが、それ以上に厄介な存在である可能性さえ見えてきた。アズールに愛とやらを求めておきながら、自分にもそんなふうに距離を詰める。男を誑かすことに快楽を覚えている類の女だろうかと思案を巡らせつつ、彼女の瞳を見つめる。その奥にあるだろう思考を少しでも見透かしてやりたいという思いで視線を絡ませていたものの、その身体が離れると深く見透かせなかったそれに未練じみたものを感じる。もう少し長く見つめていれば、彼女の奥を探ってやれるような気がしたのに。しかしまじまじと自分を見つめてしまったことを謝る彼女にようやく冷静さを取り戻すと、すぐに愛想良く微笑んでみせる。そのままかける言葉に僅かな皮肉を忍ばせては、彼女の行動が無意識なのか故意なのかをやんわりと探ろうとし )
【 ラギー・ブッチ 】
それでオレに好みのタイプ聞けって?3年の先輩とかに頼んだ方が確率高いッスよ。
(お小遣いという単語に一瞬反応しかけるが、すぐに考えを改めて表情を顰める。つまりは理想の男を落とすために相手の好みに寄せたい、ということか。彼女の目から見たレオナの印象を聞き終えると、何やら面倒な企てに巻き込まれかけていることを理解し、改めて確認を。聞く気はないし、聞ける気もしない。予想することくらいはできるが。あの傍若無人な王子様のことを思い浮かべ、暫し目を閉じて考えてみる。
そういえば、次期王妃たる義理の姉からの長電話に律儀に付き合う姿を見かけたことがある。喜んでというよりは無理矢理という感じだったが、夕焼けの草原らしいタイプの女性をを好む姿は何となく想像できない。ごほん、と一つ咳払いをしてみせると、聞き出せない代わりに勝手で安易な予測を立て、どう思う、と言わんばかりにちらりと視線を向け。)
そうだなぁ、…流石のレオナさんも女の人には頭上がらないみたいだし、大人しくて可愛げある子とかじゃないッスか。夕焼けの草原じゃ見ないタイプの。
【 ドロシー・エルリッチャー 】
……、確かに似合ってはいるけど、…寮服、邪魔ね。できれば寮服を脱いだ貴方とお話がしたいな。
(ご尤もな助言の裏に含みがあるような気がしてならない。カマトトぶってぽんと手を打ち納得してみせるのも、アズールなんかどうでもいいと身を翻してみせるのも正解ではないだろう。かと言って胸の内を吐露したとして、彼から寮長へと情報が動くだけだ。ただのパイプと会話をして一体何になるというのか。なんだか急に面倒になってきた。
つかつかと再び歩み寄れば先程と同じようにじっと彼を見上げ、視線を逸らさないまま掬い取るように片手を取る。互いに手袋に包まれ体温すらも感じない掌を合わせ、そのままするりと彼の手套を脱がせてしまうと軽く目を細め、たった今外した手袋を押し付けるように握らせて。囁くように、それでも聞き漏らさないようはっきりと述べる言葉は、無論服を脱げと言っているわけでも、将又ベッドに誘っているわけでもない。立場を抜きにした興味があるのなら受け入れる、と言外に含ませ、言い終えるや否や体を翻し一人で歩みを進めて。強制力も何もないただの意思表示に過ぎないが、妙な嘘を重ねるよりマシだろう。誘われたと勘違いする愚かな男である可能性も一応考慮し、念のためマジカルペンに触れつつ靴音を小さく響かせて。)
【 ヘレナ・アンティパス 】
三年生の先輩…そうね、それも考えてみる。
( 多少小間使いとして近くにいるといえど、結局彼は使い勝手のいい一年生に過ぎないのだろう。だとしたら、彼の言うとおりもっと寮長と親しい誰かに頼む方がいいかもしれない。そのためにも上手く自分のために動いてくれそうな人を探さなくてはいけなさそうだと思案を巡らせる。部活や寮の先輩を何人か頭に浮かべて考えを巡らせているうち、彼から予想のような言葉が出てくるとそちらに視線を向ける。夕焼けの草原では見ないような大人しくて可愛げのある女の子。そのイメージを頭の中で浮かべるものの、自分とはあいにく異なりそうだ。そう思って苦い表情を浮かべては、夕焼けの草原の男は我の強い女にうんざりしているのだろうかと思って彼にも問い掛けてみて )
大人しくて可愛げのある…私とは少し違いそう。ラギーもそういう人の方が好き?
──────
【 ジェイド・リーチ 】
なるほど。…ドロシーさんが僕に興味を持ってくださるんならぜひ。僕としても、あなたとお話してみたかったものですから。
( 自分の言葉をどう受け取るかと思いながら、じっと観察するような視線を彼女に投げかける。すると、返されたのは真っ直ぐな返答でなく"寮服を脱いだ自分と話したい"なんて言葉。アズールの下につく副寮長としてでなく、自分の素を見たいということだろうか。なかなか頭の切れる返答をする女だと思って楽しげに笑みを深めては、彼女から返された手袋を再度自分の手に嵌め直しながら言葉を返す。
自分はアズールに対して誠実でも忠実でもあるつもりはないし、ただ彼が面白いから共に過ごしているだけだ。アズールに付き従うよりも自分が一人で彼女を探る方が面白いのであれば、そちらに傾くのも悪くはない。この女が何を考えているのか、自分が直接覗き込むことができるのならそれもきっと楽しいだろう。そんな考えから彼女の言葉を受け入れる素振りを見せては、再度その隣を歩き始め )
(/ おはようございます。昨日はお返事できず申し訳ありませんでした。寒暖差の影響なのか少々体調を崩してしまったらしく、もう少し時間をいただければと思います。なるべく早く返しますのでお待ちいただけると幸いです…!主様もどうか体調不良にはお気をつけくださいませ。下げ報告のみ失礼いたしました。)
(/おはようございます!
具合の悪い中わざわざご報告ありがとうございます…!最近気温の上下激しいですもんね…。ご返信の方はゆっくりお待ちしておりますので、どうぞしっかり養生なさってください~!)
(/ お心遣い痛み入ります…!元々季節の変わり目に体調を崩しやすいきらいがありまして、ご迷惑お掛けてしてしまい本当に申し訳ありません;
一日開いて下がったのでいい機会と思いご提案させていただきたいのですが、以降下げ進行にすることは可能でしょうか…?勿論上げの方が分かりやすいと思いますし、お嫌でしたらご遠慮なく仰ってくださればと思います◎)
(/いえいえ、仕方のないことですし謝らないでください…!かなり激しめな季節変化してますししんどいですよね;_; ゆっくり休んで元気になっていただければと思います!
下げ進行の方全然大丈夫ですよ~!特にこだわりもありませんので、そのほうがご都合がよろしいなら今後はそういう形でお返しさせていただきます◎)
【 ラギー・ブッチ 】
オレは───、あー、どうだろ。実際に目の前にしたら落ち着かないかもしれないッス。いや、可愛いとは思うッスけど…。
(自分で言っておいて何だが、そう問われると一瞬表情が強張り、徐々に渋みを増していく。小動物みたいにふわふわで大人しくて守ってあげたくなるような──と、そこまで考えて肌が粟立つ感覚を覚え慌てて想像を打ち止め、落ち着かない様子でかぶりを振って。自分で自分を宥めるように片腕で脚を摩り、横目で隣の彼女を盗み見る。そういう意味では相手のように男相手でも退かないような芯の通ったタイプの方がずっと接しやすい。祖母のことをぼんやりと思い出しながら、お国柄とやらを改めて実感する。かの寮長も同じような感覚なのだろうか。他人の異性の好みなど知るところではないが、彼女とは関係なしに世間話として話題を振ってみるのも悪くはないかもしれない、と一考し。)
……なんか、腹に一物抱えてそうで。素でそういう女の子って実在すんのかな…。
【 ドロシー・エルリッチャー 】
私ね、何かをもらってからじゃないと何も差し出したくないの。一方的に搾取されるなんてお断り。与えられた分は返すようにしてるけどね。
(聞こえた色良い返事に少しだけ気分が高揚する。興味や関心なんて愛情の足元にも及ばないが、それでも無関心よりは幾らかマシだ。寮内にある水槽に映る自分を眺めながら、足取りを僅かに弾ませ、少しの無言の間の後独り言のように口を開いて。先程より些か緩んだ口調で述べ終えると、名残惜しくも水槽から目を離して隣へと視線を向け、上機嫌のままに微笑んでみせ。折角彼が好奇心を向けてくれたのだからこちらも相応に彼の求めるものを晒すべきだろう。少し払い過ぎな気もするが、先行投資ということで色を付けてあげよう。何を、とは敢えて明言せずに更なる対価の支払いを要求し、小さく笑い声を零して。)
貴方から今もらった分だとこれくらいかな。もっと聞きたければもっと頂戴ね。
(/ 重ね重ねありがとうございます!取り敢えずお返ししますが、少しの間頻度が落ちるかもしれませんので、頭の片隅に留めておいてくだされば幸いです*
ご快諾ありがとうございます~!下げ忘れについては仕方ないと思いますので、あまりお気になさらずにお相手くださいね。/蹴推奨 )
【 ヘレナ・アンティパス 】
入学式のときみたいにしおらしくなるの?…面白くない。
( 落ち着かないかもしれないという言葉に続いて彼の口から"可愛いとは思う"なんて言葉が出てくると、少々不満げに彼を見遣る。自分みたいな美人を見ることがないから落ち着かないと入学式で話していたのは、自分だけにという意味ではないのか。もちろん実際彼は自分のことが好きだと言っていたわけでもないし、付き合うはずなんてありもしないのだが、他の女の前で自分との初対面のときと同じようにしおらしくなる彼を想像すると面白くない。
それを他意もなく述べては、腹に一物抱えていそうだなんて指摘に尤もだと思案する。というか、なにか考えがあって大人しい女を演じているならまだ可愛げがある。むしろ、素でそれならば相当頭が悪そうだ。自分ならそんな女とは仲良くしたくない。そう考えてそんな意見を率直に口にしては、もし彼の言う女が実在した場合を想定して尋ねてみて )
私は頭の回らない女に何の魅力があるのかちっとも分からないけど。棘も思惑もない女の子がいたら好きになる?
──────
【 ジェイド・リーチ 】
もっと、と言われましても…一体何がお望みなんです?それが分からないことには僕も差し出せませんよ。
( 何かをもらってからじゃないと何も差し出したくないだなんて、まるで取引をしているようだ。アズールもこんな口ぶりに惑わされたのだろうかと、先程まで扉に阻まれていた二人のやり取りを想像しながら考える。しかし彼女は一体何を欲しているのだろうか。自分が一番知りたいのはまさにそれだ。自分が今彼女に払ったものというのも心当たりがないし、彼女が何をもって自分に応えてくれるのかもわからない。
しかし、頭の切れる彼女のことだ。もしかしたらそれも計算のうちだろうか。こんな不完全な取引の提案も、自分に求める"なにか"を手に入れるための作戦なのかもしれない。そんな予想からますます興味深い女だと感じてしまうものの、そんな思案は晒さずにどこかとぼけたふりをして、これでは彼女との取引ができないとばかりに眉を下げて尋ねてみせては、彼女が自分の望む答えを出すかどうかを確かめようと試み )
【 ラギー・ブッチ 】
いや、ヘレナくんが初めてなもんで分からないッスけど、……あーもう、難しいことばっかり聞いてくるなぁ。
(何やら不満げに投げ掛けられる視線を目敏く拾うと居心地の悪さに口籠り、どうして臍を曲げてしまったのかも分からずに言葉に詰まる。何が不満なのか、どう答えるべきだったのか、全てに疑問符を浮かべて女心とやらの難しさを再認識する中、次の質問へと移ればどこかほっとしたような表情を浮かべるのも束の間、すぐに答えに戸惑い視線が天井を仰ぎ。棘のない異性なんて相対したことがない。目を瞑り瞼の裏に件の女子の姿を描き、どうにも上手くいかない想像を膨らませ、輪郭の暈けた少女のとのやり取りを頭の中で続けながら、幾度か唸り声を挟みながら辿々しく答えを述べて。今度は機嫌を損ねない返事ができただろうか。反応を窺うように恐る恐るといった様子で視線を向け。)
んー…まぁ、守ってやりたくなるとか、そういうのはあるかもしれないッスね。頼られるのは悪い気しないし…。
【 ドロシー・エルリッチャー 】
大丈夫、その時が来れば自然と差し出してしまうものだから。誰だってそう。そういうものなの。
(愁眉が作る表情を目に留めると肩を竦めて笑い。相手が持っている情報を整理すれば自ずと答えは見つかると思うが、発想が至らないのは片想いが故に寮長との契約に臨んだと思っているからだろうか。見た目にそぐわずピュアなのかもしれない。少し微笑ましく思い、彼の進行方向へと回り込むと足を止め、優しく両手を取ると子供に寝物語でも聞かせるような穏やかな声音で曖昧な答えを述べ、見上げたままに柔らかく眦を下げて。きっと彼の望む答えとは違うのだろうが、これで興味が尽きるようであればそれで構わない。どうか少しでも気を引けるように、敢えて外連味たっぷりに付け加え、糸のように目を細めて。)
だから、その時まで一緒にいましょうね。
【 ヘレナ・アンティパス 】
( 自分が初めてという言葉を聞くと、眼差しに滲んだ不満げな色が少し和らぐ。彼が自分以外にあんな態度を見せたことがないと思うと、自分が特別である証明を得たような気がして少し気分が晴れる。しかしもしも彼が他の女にも自分と初めて会ったときのような反応を見せるとしたら、自分は少し顔が良いだけのお嬢様に過ぎなくなってしまう。彼には、自分が特別であることを測るための物差しとしてずっと自分だけを見ていてほしい。
そんな欲が自分の胸のうちに燻るのを随分我儘だと自覚するものの、かと言って抑える気もない。拗ねたような口ぶりで話を切り上げては、照れと恥じらいを滲ませた眼差しで彼を見遣る。本音から出る言葉を好意を含めたような演技と共に告げては、表情を和らげて )
もうこの話はやめにしましょ、ラギーが他の女を好きになるのなんて考えるともやもやしちゃうし。
…でも、入学式の時みたいになるのは私が初めてって聞けたのは嬉しかった。これからも他の女にあんな態度見せないでくれたらもっと嬉しい、かも。
──────
【 ジェイド・リーチ 】
なるほど、……いつその答えが分かるのか、非常に楽しみです。
( 時が来れば誰しも自然と差し出してしまうもの。その言葉を頭の中に巡らせながら、まるで謎掛けをしているようだと思ってしまう。彼女がアズールに求めた"愛"とやらが彼女にとってどのような利益であるのかも分からないし、自分にそんな態度を取るのもどんな欲望のためなのか分からない。この得体のしれない女がまさか率直な愛情を欲しているとは思えず、その奥にある打算が何なのかをあれこれ思考してしまう。
自分よりも華奢な手に取られた自分の手を見下ろし、それから和らげられた彼女の表情を見遣る。まるで心を開こうとしている愛らしい小動物のような見た目の裏に、何を隠しているのだろうか。考えれば考えるほど唆られる好奇心が愉快でならず、探るように彼女に向けた目を楽しげに細め )
【 ラギー・ブッチ 】
は───、ッうわ!?あ、な、急に……っああもう、…
(こちらを突き刺し続ける視線が少し和らいだような気がして、無意識に強張っていた肩の力を抜き、いつも通りに背中が曲線を描いて。しかし安心したのも束の間、すぐに隣から聞こえた拗ねたような声に一瞬警戒するも、その発言の突飛さを聞けば全てが吹き飛び呆然と立ち尽くし、あまりの驚きに手が緩めば廊下にタッパーが転がって。その音でやっと我に返ると今度は彼女の言葉を咀嚼してしまい、じわりと顔が熱を持つ瞬間を自覚し、慌てて顔を伏せタッパーを拾い集める。再び腕の中に積む過程にもぶつくさと意味を成さない単語を幾つか漏らし、その度頭の中もぐるぐると渦を巻く。まるで嫉妬だ。自分に想いを寄せているかのような発言に聞こえるのは自惚れではないだろう。彼女が自分に好意を抱いている可能性が生まれたことに思いの外舞い上がる自分が酷く情けない気がする。いつの間にか二人の間に無言の間ができていることに気が付けば慌てて考えを回し、捻り出した一言をぽろりと零すと、居た堪れなさに耐えかね答えも聞かずに食堂へと歩を早めて。)
…………ぜ、善処シマス。
【 ドロシー・エルリッチャー 】
ええ、今日はそれで十分。…妙な話に付き合ってくれてありがとう。
(はぐらかしても継続する好奇心に満足げに頷き、指でそっと彼の手を撫でてから解放し、そのまま彼を見たままほんの数歩下がる。背後に見える鏡へと一瞥を向け、これでお開きだということを言葉無しに相手にも伝えると改めて向き直り、つい数分前と同じように緩りと両腕を開いてみせて。口角の上がって唇を一度閉じた後、色付くそこからくすくすと笑い声が零れる。悪戯っぽく付け加えるのは彼の寮長の話で、しかし最終的にどのような行動に出たのかは言わずに打ち切る。さて、どういう態度に出るだろうか。行動原理は彼のスタンスを探ることと、加えて言えばらしくもないちょっとした好奇心か。細めた双眸でじっと彼を見据え、観察していることを隠さず相手の動向を窺い。)
お別れに抱き締めてくれる?───これ、アズールさんにも言ったの。少し面食らってたかな。
【 ヘレナ・アンティパス 】
善処、ね。ふふ…まあ、それでもいいけど。
( 自分の言葉に露骨に動揺し、持っていたタッパーを落としてしまう彼に満足げに目を細める。赤く染まった顔や緊張した挙動が目論見通りに自分を意識していると示しているような気がして、正直とても気分がいい。一つ気に入らないとしたらタッパーを拾いきった彼の答えが善処なんて曖昧なものであることくらいだが、それもまあ及第点だろう。あの寮長もここまでとは言わずとも、自分になびく素振りの一つくらい見せてくれればいいのに。そんな風に考えを巡らせつつ、早まる彼の足取りに置いていかれないように自分も歩調を上げて隣を歩く。そのうちに生徒たちがざわめく食堂に辿り着くと何を食べようかと思案しながらメニューの表示を眺め、彼に視線を向けて )
ラギーは何にする?私は魚のフライとサラダにでもしようかと思うんだけど。
──────
【 ジェイド・リーチ 】
ふふ、アズールにもそんなことをおっしゃったんですか?さぞかし面白かったでしょうね。アズールがどうしたのか気になるところですが…僕は喜んでお受けしますよ。
( VIPルー厶からこの場所までの見送りは多くの生徒にしたことがあるが、これほどまでに退屈のない見送りは初めてだ。しばらく彼女がここで勤めることになるのなら、これから彼女と関わることも増えるだろう。これからの生活が面白くなりそうだと、久々の高揚感が胸に募る。彼女の視線にどこか観察するような色が滲んでいるのを見て取ると、普段はそうして人を観察する側である分奇妙な気分になってしまう。彼女はそうして目を細めて、自分からどんな情報を導き出すのだろう。
その思考も望みも暴いてしまいたいという欲を噛み締めているうち、抱き締めてほしいなんて提案をかけられるとわずかにを丸くする。彼女の言葉通りにアズールが面食らうのは想像がつくが、それで結局彼は彼女を抱き締めたのだろうか。何にしろ、陸の女を抱き締めた経験もないし、彼女の求めに応じれば少しは何か分かることもあるかもしれない。そんな好奇心からその言葉に頷くことを選んで歩み寄り、そっと腕を広げると軽くその身体を抱き締めて )
【 ラギー・ブッチ 】
そりゃもう腹に入る分なんでも!こちとら昼飯がいっちばん幸せな時間なんスから。
(彼女よりも数秒先に大食堂へと辿り着くと、まずは空いている席を探してきょろきょろと周囲を見回して。肉、魚、野菜…色々なものが混ざった匂いに空腹が刺激される。隣へと立つ彼女に投げ掛けられた問いに間を置かず即座に答え、気まずさも羞恥も食欲の前に負けたのだと分かると、自分という存在が単純なのだと改めて自覚する。それも致し方ない、NRCに入学して何が一番良かったかと問われれば間違いなく昼食だ。朝昼と毎日がビュッフェだなんて流石は名門お坊ちゃん高校だ。空きっ腹が疼いてはいるが、列に並ぶよりも先に自分にはやるべきことがある。注文制度で無いため、日によっては折角の料理が廃棄に回されることも多々。昼休み終了時に余った料理は勿論、食材でも何でも余り物は全て詰めてもらおう。視線は彼女ではなくバイキングの方へと縫い付けられたまま、矢継ぎ早に言い切ると保存容器を抱えて慣れた様子で厨房へと走り去って。)
ちょっと厨房行ってくるんで先にどっか座ってて。ゴーストさーん!
【 ドロシー・エルリッチャー 】
……、寮長さんには振られちゃった。勿体ない人よね。
(歩み寄った彼の腕に包まれると僅かに眉を上げ、つくづく好奇心が旺盛なのだと再確認して。当然ながら愛のない抱擁に感じるものなど有りはせず、寮服に皺を刻んでしまわないようそっと背中へと腕を回して寄り添い、異性らしい身体の厚さを確かめる。身長差のせいで肩に顎を乗せることすら叶わず、まるで親と子供のような位置関係に少々不満を抱き、必要であれば少し身長を盛ろうか、と検討を。僅かに聞こえる平常通りの心拍音に耳を傾けながら、彼の疑問に答えを呈して困ったように笑ってみせ、笑い声が水音に紛れて消えると腕を緩めて。要望通りに抱き締めてくれた彼が何を考えているかは知ったところではないが、ただ美人に触れたかっただけではないだろうと踏んで曖昧に問い掛け、小首を傾げて。)
おしまい。もういいの、ありがとう。何か得るものはあった?
【 ヘレナ・アンティパス 】
…貧乏臭いやつ。
( 先程までの動揺はどこへやら、食堂に着くや否や食欲を隠すこともなく見せる彼に目を細める。厨房に行ってくると自分を放り出した彼の背中を不満げに見送ってから率直に呟いては、一人で料理を取って席につく。自分の知る貴族の男は女を放って行くことなんてしないし、そもそも残飯をあさりに行くこともしない。それなのに彼ときたら。自分が獣人だったら、きっと今頃入学式の晩に部屋に押し掛けたときの寮長のように床を尾で打っていただろう。しかし彼が寮長とそれなりに近い距離にいて、自分にとって利益を持ちうる存在である以上、あまり無碍にもできない。あの寮長も一体どうしてこのハイエナをそばで働かせるのだろうか。そんなことに思案を巡らせながら、時折水を口にしつつ彼が戻るのを待ち )
──────
【 ジェイド・リーチ 】
そうですね…強いて言うなら陸の抱擁がどんなものかが分かったこと、でしょうか。
( 寮長には振られたという言葉で、アズールが彼女の提案を断るさまを想像する。きっとなんの利益にもならないからとか言って彼女のことを抱き締めなかったのだろう。それとともに彼女がどんな反応を示したのかも気になってしまって、敢えて断るのも面白かったかもしれないなと思案する。しかし、これによって陸の女を抱き締める感触というのも知ることができたし、ある程度の好奇心は満たされた。彼女をからかってどんな反応をするのか確かめるのはまた今度でも構わないだろう。どうせこれからひと月は嫌でも共に過ごすことになるだろうし、アズールから彼女の監視役を頼まれることだって想定できる。
そんなふうに思案を巡らせ、彼女の腕の力が緩むのに合わせて自分も彼女の身体をそっと離す。得るものはあったかと小首をかしげる彼女に答えては、彼女にも同じ質問を返し )
それで、ドロシーさんの方は何か得られましたか?
【 ラギー・ブッチ 】
(この数週間で食堂のゴーストたちも随分と自分に慣れてくれたらしく、諸手を挙げて歓迎とは行かずとも受け入れてくれている。次の授業が魔法薬学ということもあり、昼休みが終わる寸前まで食堂に留まることは難しいため、放課後に引き取りにくることを約束して容器を預ける。これで今晩の食費は浮くだろう。深夜に寮長に夜食を強請られたとしても、貰った食材で適当に作ることもできる。たくさん余りますように、と内心で祈り、バイキングの列に並び大勢いる生徒の一人に紛れて。
両手と両腕、合わせて4皿。色々な料理を満遍なく皿に乗せ、器用に運びながら辺りを見回す。矢張り唯一の女子生徒となると見つけやすい。彼女の元へと危なげなく近付くとゆっくりと卓上に皿を下ろし、隣へと座ると聞かれてもいないのに弾んだ声音で首尾を説明して。)
お待たせしました~。へへっ、今日も余りもの貰えるみたいッス。廃棄なんて罰当たりッスからねぇ。
【 ドロシー・エルリッチャー 】
ふふ、色気のない台詞。
(陸の抱擁なる聞き馴染みのない表現に一瞬小首を傾げるも、言わんとすることが伝わるとつい笑ってしまう。つまりは抱擁の経験こそが一番の収穫だったと。幼子のような発言が何処か見た目と剥離していて、矢張り微笑ましげな気分に浸りながらきゅっと双眸を細める。手本を見せるとばかりに再びぴたりと密着し、今度は身を寄せるというより身体を押し付けるように──といっても、作りのいい寮服のおかげで何の感触も伝わっていないと思うが。分かりやすく媚びるような甘ったるい声音で、浅ましくならない程度の言葉を選んで視線を絡め。)
得るものはあったけど、きっと貴方の望むような答えじゃないと思う。貴方の温かさとか、安心感とか、…くだらない?
【 ヘレナ・アンティパス 】
おかえり。上手く行ったんならよかったわね。
( 手いっぱいの皿を持って戻ってきた彼に視線を向けては、上機嫌そうな様子を目にしてそう告げる。食料への関心に負けたようでなんだか少し気に食わないが、それを率直に口にすることはせず、彼が席についたのを確認してから食器を手にする。
染み付いたテーブルマナーに則って食事を口に運び始めながらも、次の授業に思案を巡らせる。たしか次は魔法薬学だったが、だとすれば誰かしらと組む必要がある。昼休みの流れで他の生徒たちがバディになるのを考えると、一番手っ取り早いのは隣の彼か。そう思うと彼にそんな案を持ちかけて )
ね、この後の魔法薬学でバディ組んでくれない?ラギーとなら過ごし慣れてるから協力しやすいかと思って。
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【 ジェイド・リーチ 】
温かさや安心感、ですか。…それでドロシーさんが満足してくださったのなら何よりです。
( 色気がないということは、彼女はそれを自分に求めているのだろうか。アズールに愛を求めたのと同じように、自分にもそれらしい素振りを求めていると思うと尚更この女が不思議に思える。彼女は他の何らかの目的への布石というわけではなく、ただ率直に愛を求めているのだろうか。それも不特定多数の男に。
そんな仮定をしてみるものの、あまりに共感のできないその案に確信を持つことができず困惑が頭をよぎる。その矢先に寄せられた身体と媚びるような言葉に目を細めては、アズールにもこうするつもりだったのだろうかと思案する。暖かさや安心感を得られたと話すのがもし自分だけにだったなら、多少の心の動きはあったかもしれない。しかし、誰彼構わずそうして求めるのだとしたらまるで娼婦のようだ。彼は彼女のこうした態度に何を思って、どうするのが最善だと思ったのだろう。後で話を聞くのを密かに楽しみに思いながらも、曖昧な答えを返して )
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