貢ぎ部屋 〆

貢ぎ部屋 〆

飼い主(仮)  2022-08-31 22:16:54 
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\猫の奴隷になりたい!!!/


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  • No.18 by 本橋 伊織  2022-09-06 20:27:36 


痛っ…!……抱えていくのは無理だな。
(暴れる力はないと思っていたのに、力なく横たわった子猫の体を包めば手に鋭い痛みが走り、すぐに引っ込めた。自分の身を守ろうとしたのか、もう見えずらいだろう目を力いっぱい見開いてこちらを睨みつける姿は健気に見えた。手のひらには、爪で引っかかれた傷が数本。ピリピリとした痛みが走る手にハンカチを被せて呟くと、携帯を取りだし"近くの動物病院"と検索する。どんどんと遅くなる時間、早くしなければ閉まってしまう焦りを覚えつつ、画面を見ていれば運のいいことに近くの動物病院は開いていてそこまでのルートを頭の中に入れる。抱えるのが無理ならば、と崩れやすい段ボールを腕に抱えて足早に動物病院までの道を辿った。)


  • No.19 by 子猫  2022-09-07 01:55:30 



…フーッ…フーッ…。
(泥にまみれてところどころが瘡蓋のようになった毛並みから温度を持った何かが離れていく。子猫は覚束ない五感が映し出す世界の中で、安堵のために弛緩した手足からずるりと崩れていった。態勢の維持を犠牲に得た安楽さはひどく煤けた雨の臭いがする。伏して尚、彼は唐突に自身の視界に映りこんできた第三者を許さなかった。言うことの利かない口を無理やりに開けて牙を向ける。威嚇として成り立つかも怪しいそれは、もはや公園の土埃を巻き上げる小さな風にも掻き消されそうな弱々しいものだった。子猫はわなわなと衰弱した体躯を震わせながら、数日前に訪れた痛みの原因について思い出していた。寂れた公園への小さな来訪者。子猫より大きく、今眼前にいるモノよりも小さいそれらは、加減の知らない粗暴な手つきで子猫を弄んだ。石の投擲でできた無数の痣が、宙に投げ出された際の傷跡が彼をひどく痛めつけた。彼には、今目の前でこちらに手を伸ばすモノが記憶に残るそれらよりも、ひどく恐ろしく見えた。揺れる視界に映る黒い影はそのまま、子猫の入った段ボールごと持ち上げたようで、ゆっくりと安定した地盤から離されていく、その抗えない恐怖に彼は今度こそ、その身を丸く縮こまらせることしかできなかった。暫く揺り籠というには些か居心地の悪い揺れが続き、薄弱とした色彩の中で、何度目かの目に悪そうな光りを見止めたときだった。不意にそれらがぴたりと止まる。ここからでは表情の伺い知れないそれは、緑色が光る看板の建物に入ろうとしているようだった。)


  • No.20 by 本橋 伊織  2022-09-07 21:11:52 



すみません、子猫を拾って…診てもらえませんか?
(段ボールの中でか細く息をするのは死ぬ間際だからか、小さい身体を震わせるのは寒さか恐怖からか。子猫の抱いている感情など知らず、可哀想だという気持ちが頭の中を占めていた。段ボールの揺れは居心地が悪いだろうに、縮こまる姿に申し訳ない、という気持ちが募っていった。また、段ボールを持ちながら歩いていれば耳に入るのは動物を捨てに行くところでは無いか?と囁く声。そんな事をしに行くのではないのだと、疑惑を晴らしに行きたいが変に言い訳して逆に不審がられるのが嫌な気持ち3割、早く子猫を病院に連れて行きたい気持ちが7割で、聞こえないふりをして去っていく。ただし、その顔は情けなく眉と目尻を下げてどんよりとした雰囲気を背負っていた。暫く歩いて見えてきたのは、動物病院の緑の看板。まだ閉まっていないようで暖かな待合室に入ると、片付けを始めようとしていた受付の女性に声をかけた。事情を話せば直ぐに診察室へと案内され、中央に置かれた台の上にそっと段ボールを下ろして中を覗いて)


  • No.21 by 子猫  2022-09-08 00:01:48 



…ミ゛ギャッ…!
(嗅ぎ慣れない臭いと珍妙な衣を纏った見知らぬ者たちに子猫は一層その身の緊張を固くする。彼が身を蹲らせた段ボールを運ぶ青年が受付に立つ女性に連れられて、いかにも人工的な雰囲気を醸す白い部屋に通されていくのを見て、子猫はぶるりと背筋を凍らせた。無機質な機械と一緒に机に居並んだ書類の束。部屋の中央に置かれた診察台に雲でも撫でるかのような手つきで降ろされた段ボールの中で、その僅かな衝撃に揺れる体毛が警戒から逆立つ。ふと、自身に向けられる視線がどうにも気になって、子猫はおそるおそる顔を上げてみることにした。そうして気が付いた。青年の顔に浮かぶ表情が形容しがたい歪みを湛えていることに。子猫はその変化に脳裏に過る記憶との確かな相違を感じたのだ。なんだろう。子猫はそれを見たことのない顔だと思ったが、不思議と嫌悪感は湧かなかった。変な顔をしている。ただそう思った。彼が青年の表情に無意識的に首を傾げている背後で、何やら男の声がする。「こんばんは。捨て猫ね…最近多いからねえ…どれどれ…。」という声はおそらく先程まで自身を見ていた青年にかけられたものなのだろう。子猫はピントの合わない視界が段々とひらけていっていることに、背中越しに耳に入った声の主に今持ち上げられ欠けているのだということを理解した。一般的な子猫とは似ても似つかないがらがらとした声音で上がった悲鳴。再び抵抗を始める子猫の様子などお構いなしに、当の彼は妙にこ慣れた手さばきで診察を続ける。「…うん。見たところ大きな外傷はないですね…ただちょっと……変な傷が何か所かあるんですけどね…これは…。」医者は神妙な面持ちで言い淀む。)


  • No.22 by 本橋 伊織  2022-09-08 08:21:50 



あの、大丈夫ですか……?
(診察室に通されては白衣を着た獣医に迎えられる。見つけた経緯を簡単に説明すれば、ふむ、と少し考えて子猫の体を診察し始めた。濁った声を上げて驚く子猫は獣医の手の中で抵抗し始め、思わずオロオロと心配になってしまった。口にした言葉は抵抗する子猫と、暴れる子猫を持つ獣医、双方に対しての問いであり、ドキドキと心臓が強く鼓動する。そんな心配も他所に獣医は神妙な様子で子猫を診察しては、何かを言い淀む。大きな怪我は無いと言っていたが、あんなボロボロの様子では衰弱していたことは確実であろうし、心配しながら獣医の診断を聞いていて。)



  • No.23 by 子猫  2022-09-09 07:30:56 



…ミ゛ッ…!
(青年は暴れる猫の様が気がかりだったのか、不安げに獣医と子猫に視線を遣ったが、彼はそれに対して「まぁ…慣れてますから」と苦笑いを零しただけだった。獣医の腕の中でなすが儘に、身体のあちこちを無遠慮に触られる心地は不愉快そのものだったが、子猫はそれ以上何かする気力もなく、ぐったりと頭を垂れていた。ところが、さすもの彼も二度ほど下から体温計やら細い棒やらを突っ込まれた時は垂れていた頭を持ち上げて小さな悲鳴を発した。そうして、一通り診察を終えた獣医から小さな頷きと共に「成程ね」という独り言が白い部屋に響いた。すると、作業が一段落した気持ちが獣医の拘束を緩ませたのか、子猫は彼の手をすり抜けると、半ば意識の危うさを感じさせる足取りで青年の方へ歩を進めた。子猫はもはや段ボールに入る気力さえも奪われてしまった様子で、そのまま彼に寄り添うように身体を預ける。「ちょっと体温が下がっていて分からなかったけれど、どうやら脱水になってるようですね。下痢っぽいから何か変なものでも食べちゃったかな。この時期はまだ消化器官がしっかりしてないですから。」獣医は棚から2つ、サーモン風味とプリントされた離乳食の缶詰を取り出すと、続けて「帰ったらまず水分補給させてあげてください。それからこれ、ついこの間離乳食離れした子のものなんですが、まだ空けていないので塗り薬と一緒に渡しておきます。」と言って、それらを袋に詰める。「うーん…あとはですね。その子身体の傷を先ほど診させて頂いたと思うんですが、ちょっと不自然な傷がところどころ入ってまして…もしかしたら誰かから怖いことされちゃったかな…と」獣医はやるせなさを含んだ瞳を子猫に向けた。)


  • No.24 by 本橋 伊織  2022-09-09 22:06:04 



そう、なんですね……だから、あんなにも怯えていたのか…。
(獣医の診察が終わるとよろよろとした足取りでこちらに近寄ってくる子猫。ぴっとりと寄り添う様が母猫の温もりを感じようとする姿に似ていて、子猫の不安や心細さを感じ取れば余計に胸を打たれるようだった。また、獣医からの話を聞けば、家に帰ってから行うことを記憶する。帰宅したらまずは水分補給、あとは食事。袋に詰められた缶詰を見て、食べてくれれば良いと一抹の不安を感じては、最後に風呂に入れて汚れを取って上げなければと計画を立てる。また、やるせなさを含んだ瞳と口から発せられた言葉に、目をみ開けば自分も同じ気持ちを抱えた。あの公園には子どもも出入りをするため、時に残酷なことを簡単にすることを考えれば安易に予想が着いた。どれ程悲しく、悔しかっただろうか。子猫の体に降りかかった不幸を考えては、スーツ越しでは温もりなんぞ感じないだろうから少しでも感じ取れるよう指先で優しく汚れた頭を撫でた。「あと、他に注意することはありますか?猫を飼うのは初めてで、何も分からない状態なんです…」拾った以上、その命を養うのは自分の責任だと感じて獣医にどうすれば良いかを尋ねる。少しでも子猫が安心出来る暮らしを、と。幾分か貯金には余裕があるためお金を心配することは無いが、知識がなければ実践することは難しい。子猫の頭と体を優しく撫で続けながら獣医の話を聞いて)

  • No.25 by 子猫  2022-09-11 20:29:15 



……。
(がさがさとした子猫の頭部を柔らかな温もりが撫でる感触。その心地に彼は身じろいだが、それは不快感を覚えてのことではなく、寧ろ今までに感じたことのないものへの受け入れがたさからだったかもしれない。その頭上で紡がれる言葉は、子猫にとって時折記憶の奥まった場所に眠る母の子守歌にも似た居心地を与え、彼が再び微睡み始めるのにそう時間はかからなかった。「そうですねえ…」初老の男性は青年の質問に数秒考える素振りを見せたが、まま息を継ぎながら、こう穏やかに話し出した。「他の動物と同じように、人間の食べ物は強請られても与えないこと。あとは…ああ、そうだ。さっき言った傷はもう殆ど塞がってるけど、念のために低刺激のシャンプーこっちで出しますから、それで洗ってください。どうしても暴れる場合は、洗濯ネットに入れて洗った方がいいですよ。ちょっとかわいそうに思うかもしれませんけど、お互い傷つかないので。それから、シャンプー液は直接つけずにぬるま湯を張った洗面器に溶かして使ってください。多分何回もお湯変えることになっちゃうけど、それは最初の一回だけなので大丈夫でしょう。」獣医は話している途中、気だるげに自身の顎に残った髭を触っていたが、その実言葉の端々には不思議と接した者に丁寧な印象を抱かせる節があった。少なからず、時折二人の話に耳を傾けながら微睡みの中に身体を預けていた子猫にはそういう心証を与えた。)


  • No.26 by 本橋 伊織  2022-09-13 07:01:15 



なるほど…。色々と注意することがあるんですね、気をつけます。
(獣医の言ったことを頭の中でまとめ、間違えないようにする。しかし、お風呂はシャンプー液はぬるま湯に溶かして使うものだとは知らなかった。暴れる時には洗濯ネットに入れることも。家に帰ったら気をつけます、と言えば撫で続けている子猫へ視線を動かし微睡んでいる様子に目をぱちぱちと瞬かせた。人に嫌なことをされたのに、自分の手の下では安心してくれていることに胸が暖かくなったようで目頭が熱くなったようだった。健気な姿に心を打たれると獣医に「あの、後でお返しに来ますのでタオルと箱を貰えますか?あのままじゃ連れて帰るのは難しそうで…」と相談する。目線は子猫を連れてきた時の箱に動くが、家に連れて帰るにしてもあんなボロボロの状態では難しそうだった。子猫にとっては自分の匂いが着いたものの方が安心出来るかもしれないが、ふかふかの新しいタオルの方が居心地がいいのでは、と考えていた。)

  • No.27 by 子猫  2022-09-14 22:09:07 



(青年の生真面目な受け答えに獣医は「シャンプーも傷が完全に治れば直接つけても大丈夫だし、まああんまり固くならないでください。何かわからないことがあれば、私に連絡をください。相談にのりますから。今日もう終わりの時間なので。」と口を動かしながら、スチールが無機質な両袖机、その袖箱から無地の付箋を一枚剥がして手に取った。男は眠そうな瞳を更に細めて、白衣の胸ポケットから取り出したボールペンをそれに滑らせていく。そうして書き殴りの電話番号を青年へと差し出した。その間、子猫の意識は夢と現の狭間をふらふらと歩いていたが、その心は先程よりもずっと穏やかなように思えた。彼にとっては、少なくともここは公園よりかはずっと暖かい場所だったのだ。遠慮がちに尋ねる青年の言葉に男は「ああ」と思い出したかのように小さく声を上げる。四隅の引っ込んだところに寝かせてあったのか、医者はそこから小型のキャリーを持ち上げて、その中に些か雑な手つきでタオルを突っ込んだ。「このキャリーをお貸ししますよ。タオルいれときますから。タオルの方は返さなくてもいいので、子猫はなるたけ30度ぐらいで暖かくしてあげてくださいね。」)

  • No.28 by 本橋 伊織  2022-09-15 21:29:34 



はい、分かりました。色々とありがとうございます。
(差し出された付箋を受け取ると懐から名刺ケースを取りだして中を開き、貼り直してから懐にしまい直す。また、タオルが敷かれたキャリーを受け取れば便宜を図ってくれる獣医へ感謝の気持ちを述べて軽く頭を下げた。やはり困った時に専門の人に頼れるのは有難いことだ。獣医の言う通り閉院ギリギリに駆け込んでしまったので、遅くまで仕事をしてもらったことへの申し訳なさを抱え、微睡む子猫を起こさぬようそっと抱き上げるとキャリーの中のタオルの布団へと降ろすとペコペコと頭を下げて出ていった。受付でも直ぐに名前を呼ばれ、安くは無い診察料と薬代に若干目眩を覚えるも必要経費だと割り切ればもらった諸々の品を持って病院から出て、暗くなった家路を歩いた)

  • No.29 by 子猫  2022-09-17 22:39:19 



……。
(丁寧な青年の態度に獣医は気にしないでほしいと言わんばかりに、かぶりを振って「お大事に」と一言だけ伝える。青年が子猫の柔らかい肢体を慎重な手つきで籠の中に仕舞い込んだあとすぐに、見計らったようなタイミングでゆっくりと待合室へと繋がるドアが開かれ、それから幾ばくかの時が過ぎ去り、青年は病院の白い床から固いコンクリートへと変わった道を歩いているようだった。子猫は少々慣れない揺れに身体を支配されつつも、やはりというか、どこか安堵したような気持ちで、これまた慣れない臭いのするタオルに顔を埋めた。)
…ミ…ミ…。
(暫く同じような揺れに五体を沈めていたが、程なくしてそれは一際大きな振動を伴って落ち着いた。心地よさを与えていたものが停滞したことにより、子猫は朧げな意識を現に持ち上げて耳をそばだてた。ふと、周囲に漂う臭いがいつの間にか変わっていることに気が付き、彼は不安から声を発した。相変わらず上手く開かない口であったが、くぐもったそれはキャリーの中で響いた。)


  • No.30 by 本橋 伊織  2022-09-19 10:23:37 



えっと、まずは水か…いい感じのお皿あったかな。
(自宅に着くと小さくただいま、と呟いて靴を脱ぐ。真っ直ぐリビングに向かうとキャリーを床に置いて、キッチンに皿を探しに行った。小さすぎなく、深すぎない皿なんてあっただろうか…。一人暮らしなため、皿の種類なんてそう多くはなく醤油を入れている皿でも良いだろうか、なんて考え取り出したものに水を入れた。洗い物もしなくては…夕飯に食べられるものもあったかな。冷蔵庫の中身を思い出しつつ、水を入れた皿を持って子猫の待つキャリーケースの近くへと行った。蓋を開ければミィミィと不安げに鳴く声が聞こえて、脅かさないようそっと持ち上げると皿の近くに降ろし「水、飲めるか?」と声をかける。直接飲めなければスポイトかタオルに染み込ませて飲ませるしか無いかな、と不安も抱えていた。)

  • No.31 by 子猫  2022-09-22 16:45:09 



(まだ洗濯されて間もない洗剤の香りがするタオルを踏みつけながら両脇に開けられた小さな穴、その片側から子猫は外の様子を窺った。冷たい床の向こう、天井にぶら下げられた灯りが照らす室内に人影が見える。それはごく自然な足音をもってこちら側へ近づいてくる。暖かい室内、幾分かはっきりとした思考の中で子猫はぶるりと尻尾を震わせた。子猫が身体を預けるキャリーに影が差す。上から伸びてきた巨大な手はキャリーの蓋に手をかけて、子猫が身を寄せるそれをちょっとだけ開放的にさせた。同時に、子猫にはそれが少し怖かった。それからおそらく男のものであろう声とともに、目の前に小さな醤油皿が差し出された。平たく凡庸ななりををしているそれは、子猫にとって生まれて初めてみるものに他ならなかった。子猫の顔ほどもあろうかという真っ白なそれは、子猫が今喉から手が出るほどに欲しいものを浮かべて――あるいは、持ち上げているように見えた。子猫が純粋な好奇心をもって、おそるおそるそれに手を伸ばしてみると、すんなりと触れた足先の体毛からそれは肉球を濡らした。湿った肉球に舌を這わせれば、何日かぶりに澄んだ水の味がした。子猫はそれから結局、皿の中の水を全部飲み切ってしまうと、もっと欲しいとせっつくように鳴き始めるのであった。)


  • No.32 by 本橋 伊織  2022-09-23 19:34:32 



そっか、そっか。もっと飲みたいのか。
(醤油皿の水に広がった水を舐めた時は大丈夫かとドキドキしたものだが、皿に一滴も残すまいと勢いよく飲み進める姿には安心感を覚えた。まぁ、あれだけ元気に暴れることが出来ていたのだから問題は無いのだろうが。直ぐに飲みきってしまった子猫は、もっと欲しいと声を上げて催促する。その声が最初に聞いていたガラガラ声より、澄んだ子猫の高い声に変化していて余計に安心したものだった。こちらを見上げる子猫の頭を軽くひとなでし「少し待ってろ」と声をかけると、皿を持ってキッチンに戻った。あれだけ勢いが良ければもう少し大きく深い皿でも良いだろうと、少し高さのある広めの…それこそお浸しなどを作って入れておく小物皿に水を入れると子猫のそばにいき、皿を置き直す。また水を飲む姿を見れば気が抜けたように腰を床に下ろして、天井を仰ぎ見て安心のため息を零した)

  • No.33 by 子猫  2022-09-25 15:11:31 



……。
(大きな手の平が小さな頭の毛の先に触れる感覚で、子猫ははたと我に返った。多少の水分が子猫の体内に回ったからだろうか、子猫は先ほどまで見せていたせっつくような態度を完全にしまってしまうと、キャリーの奥に姿を隠した。やはり慣れないタオルの感触にやきもきしながら、平皿を持ってどこかへ消えていった青年の足音が再びこちらに戻ってきたことに、子猫らしい柔らかい毛を逆立てて怯えた。今度は幾ばくか大きくなった皿の中で水はゆらゆらと揺れた。それから青年はマンションの床に腰を落ち着けると、天井を仰ぐように顔を上に向けた。子猫の位置からは男の表情を正確に読み取ることは難しかったが、そこから吐き出された息が安堵の色を示していることは、いまだ人間の心の機微に疎い子猫にも伝わった。子猫は今の内とでも言わんばかりにキャリーから冷たい床に足を踏み出すと、青年の横を通って、ふらふらとマンション内を探検する。泥が付着した足がカーペットや床に触れれば、当然それらに汚れの跡を残していったが、子猫はそんなことを気にする素振りは少しも見せなかった。)


  • No.34 by 本橋 伊織  2022-09-27 19:14:15 



…あ、こらっ。あー…まずは風呂だな、やっぱり。
(ボーッと天井を見上げて何分経っただろうか。長い時間そうしていたようにも思えるし、たった数秒だったかもしれないが、カツ、と爪が床を蹴る音で顔を前に向ける。視界に入ったのは泥で色付けられた子猫の小さい足跡で、自分が歩いた場所を示すように点々と残されていた。床なら良いがカーペットはまずいとあっと思わず声に出して足跡を辿り、周りを見回す子猫の体を上から抱き上げる。その泥だらけの体は手の感覚だけでザラザラとし、足跡を見ると濃く泥が着いていて、このまま食事をさせるのは衛生的には良くないと判断するとお風呂に入れようと考えた。床やカーペットのは後で落とせばいいと、貰ったシャンプーを取り出し片手に子猫、片手にシャンプーを持って浴室に向かった)

  • No.35 by 子猫  2022-10-02 23:57:29 



フシャー…!
(痩せぎすの足を持ち上げて冷たい床にいくつかの足跡をつけた子猫は、突然自分の身体を襲った浮遊感に驚いて声を出した。先ほどまでどことも知らない宙に視線を投げていた男はいつの間にか子猫の背後に回り込んでいたようだった。子猫がマンションの一室をふらついていたとき、暫くコンクリートの上を歩いていなかったせいで伸びきった爪が時折、床の上でかちかちと音を鳴らしていた。おそらく男はその音で我に返ったのだろうと思った。男は鞄から見慣れないボトルを手に、そのままどこかに足を向けて歩き出した。好き勝手にされるのは癪だったし、地に足が付いていない感覚はあまり気分のいいものではなかったが、これ以上暴れても自分の思うようにはならないことがわかっていた子猫は大人しく身体を預けることにして、所在投げな足をもぞもぞと動かした。子猫は反対側で揺れるプラスチック製のボトルにプリントされたいかにも人工的な色合いの猫のイラストを一瞥して、小さく鼻を鳴らした。)


  • No.36 by 本橋 伊織  2022-10-06 21:03:22 



はいはい、怒るな怒るな。…温度はこれくらいで良いかな。
(抱き上げた当初は威嚇され、軽く宥めるくらいに留めた。自分のことを信用していないことも、いきなり抱き上げられてびっくりしたことや不安なことをなんとなく自覚していたので、威嚇されても仕方ないとは思っていたのだ。浴室がある部屋まで歩き、脱衣所で靴下を脱ぐと洗濯機に放り込み猫を抱えたまま浴室へと入って扉を閉める。ネクタイは…シャツの胸ポケットに先端を押し込んだ。扉は間違っても子猫が出てしまわないよう隙間なんぞ開けはしない。シャンプーを床に置くと洗面器にお湯と水を同時に出し、温度を確かめる。ぬるま湯ぐらいになったのが分かればしゃがみ、そっと子猫を降ろしてみた。きっと暴れるだろうと覚悟を胸に決めていた。)

  • No.37 by 本橋 伊織  2022-10-16 20:34:04 



(/上げます!)

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