( fairy tale )〆 

 ( fairy tale )〆 

匿名さん  2022-08-21 15:03:38 
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 お相手様決定済み。

 

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  • No.81 by リヴィオ  2023-03-19 22:44:44 




……は、所詮はガキだな。
(よもやこの少年が進んで己を頼るわけがないという前提から導かれた推測は僅かに的を外れ、目前には如何にも心許なげに幼い青緑の瞳が揺れていて。……歳の割に大人びていて無機質な彼の、こうも弱々しい姿を見ると今日はどうにも調子が狂う。一先ずはそう大事なくて良かったと言うべきか、と表面上は半ば呆れたように安堵混じりの息を吐くと、少々粗暴な仕草で先刻までの椅子に再び腰を下ろして。続け徐に机上へと手を伸ばしては、中央のキャンドルはそのままに、散乱する魔術書を丁重に脇へ、最後に今朝方彼へ渡した画材の残りとして転がっていた細長い木炭を手に取り。元より寝起きの頭の回転はそう宜しい方ではなく、あまり本調子でない分より一層の不機嫌さを湛える金の瞳で"座れ"とのみ低く真向かいの席を促して。相手がそれに応じたか否かに関わらず、机上を大きなキャンバスと見立てるや否や、迷いのない手付きで黒の文具を滑らせ始めるだろうか。時折古代の文字列や異質な図形類を挟みつつ、恐ろしく精緻かつ滑らかに机面へ構築されていくのは精神干渉系の魔法陣。本来この手の魔術は相当に高度な部類に当たるといえど、さして抵抗力もない相手に安眠を与える程度であれば、この少々婉曲な魔法陣などより直接記憶を読み解き支配するような魔術の方がいっそ効率的ではある。しかし、そうずかずかと人の繊細な領分へ無遠慮に踏み入る趣味はなく、朝方のように一時的に意識を支配するのも根本的な解決には縁遠い。よって少々迂遠な手法となる最後の一角を引き終えた手を止めては、決して多くを語らぬ眼差しで相手をじっと見据えて)
……お前が心安らぐ場所は、物は、人間は。心の安寧は何処にある。抽象的に胸の内で思うだけでも良い、陣に触れて唱えてみろ。


 

  • No.82 by ミシェル  2023-03-23 14:09:06 




(柔らかな栗色の髪を赤いリボンで二つに結った七、八歳程の少女が、膨れっ面で此方を指差している。最初に見たのはそんな情景だった。窓の外は今にも雨の降り出しそうな重い曇天で、古ぼけた孤児院はいつにも増して薄暗い。少女は小さな足を踏み鳴らし、一層の激しさで叫ぶ。〝ミシェルばっかりずるい!〟。黙ったままでいると、彼女は先程と全く同じ声音で全く同じ言葉を繰り返す。〝ミシェルばっかりずるい!〟。そうして何度も何度もオルゴールのように少女の声が反復再生される中、突如背景に黒が映り込み、燃え広がる炎の如くじわじわと少女と自分以外の全てを呑み込んでゆく。やがて真っ暗な闇の中に二人だけがぽっかりと浮かび上がる状況になっても、少女は叫び続けていた。しかし一切変化しない声とは裏腹に彼女の形貌は徐々に移ろい、髪と肌は艶を失い、体は痛ましい程に痩せ、瞳からは光が消え失せる。更に服は擦り切れて汚れ、各所に打撲の痕が覗き、両足には足枷。気付けば目の前の少女の他にも見知った孤児達が同様の風体で周囲に現れていて、無数の怨嗟の目が此方に向けられている。彼らは此方を指差し、口々に責め立てた。〝ミシェルばっかりずるい!〟〝ミシェルばっかりずるい!〟〝ミシェルばっかりずるい!〟――心の安寧の在処を問われた時、最初に脳裏に浮かびながらも人生の大半を過ごした孤児院を遂に挙げなかったのは、そんな夢を見た直後だったせいだろうか。主人の応答に返す言葉もなく促されるまま向かいの席に腰を下ろした後、命令無視と取られぬよう答が明確になるより先に魔法陣に触れた指先は案の定何の変化も齎すことはなく。無駄を厭う彼のこと、唐突に思われる問いにも何らかの意図があることは理解しつつも、己の心中から適当な答を探し当てるのは依然濃い霧の中を進むようで。途方に暮れそうになりながらもこのダイニングに留まりたい一心で思索を巡らせていれば、ふと頭の中に見慣れた景色が瞬き。齢十四にして受けた仕打ちと悪夢によって暗晦の色を塗り重ねられてしまった在りし日の思い出は意識の外へ、軽く伏せた瞳の中にキャンドルの灯火を二つ揺らめかせたなら、その効果が精神的作用によるものか身体的作用によるものか区別することなく呟いて)
……朝の森……。



  • No.83 by リヴィオ  2023-03-28 22:46:03 




(対面にある白魚のような手が机上の黒に触れてから、何事も起こらぬまま暫しの沈黙が落ちる。己の魔術に失敗など到底起こり得ぬ事象である以上、起動の条件が未だ満たされていないとしか考えられず。仮にこのまま発動しなければ、まるで迷い子のような顔をする少年への術をそう多く持たない自分はかなり窮する事態となってしまうが、果たして机上の陣はようやく淡い金の光を放ち始めて。みるみる内に格段と光量を増すそれは、瞬く間に触れた指先から彼の体内へと仄かな熱を伴って侵入し、生じた意識の間隙にするりと巧妙に入り込む事だろう。わざわざ陣を介したが故に此方から感知こそ出来ないものの、彼が真に静やかな朝の新緑を願ったのであれば想像通りの、否、それを遥か超えて元の記憶すら補完した完全な情景が相手の目前へと再現されている筈で。――森林の鮮やかな木々はその枝を空へと高く伸ばし、分かれた先で若々しい青葉が降りた朝露に美しく煌めく。心地よく頬を撫でる淡い緑のそよ風に乗り、可憐な小鳥が長閑な歌を囀りながらそっと肩口へ止まるような、もはや些細な不可解や疑問の念を抱くことすら躊躇われるほど、主を理想の安楽へと誘う"夢"。悪夢を見たのであればより快い夢で上塗りすれば、というのは如何にも安直な発想ではあるが、魔術を用いた医療行為として時折用いられる手法でもある。意識がなくとも姿勢自体は陣に触れた着座時のまま、瞼に覆われた瞳が再びその色を見せるまで、当人の体感はともかくとして現実世界では約五分程度といった所か。金属製の土台に保持の術式が刻まれたキャンドルはほぼ永続的にその背丈を変えることはないが、直に開かれるだろうその眼の先には夕刻同様に暖かな白の飲料に満ちた木製のマグカップと、仏頂面で頬杖を着く己の姿がある筈で。口を開けばすぐさま厄介者を無下に追い立てんとする一方、苦く思案するように瞳を泳がせて外向けの硬い口調を僅かなり崩すのは、未だ起床時特有の緩慢な思考を引き摺るが故だろうか)
……少しは安らいだか? 暖かなものでも飲んだら、とっとと寝室に戻るんだな。……、まぁ、お前が恥知らずにもどうしてもと俺に頼むなら、もう少し付き合ってやってもいいけど……。


 

  • No.84 by ミシェル  2023-04-02 03:08:48 




……いえ。飲み終えたらすぐに、眠ります。
(閉じていたことさえ知らず瞼を開いた先、波一つ立たぬミルクの水面に冴え冴えとした新緑の残像が浮かぶ。生まれたての真っ新な陽射し、声を潜めて囁き合うかのような風の騒めき、広大な森を探し歩いた玲瓏たる朝露、自身を脅かす者の居ない解放感――つい先刻まで浸り切っていて、そして今は縹渺とした記憶としてしか存在しないそれらは、すぐ傍から響いた低い声によって光が散乱するかの如く消え失せ。微睡むように薄く開いていた瞼を更に持ち上げれば、視界には常と違わぬ主人の不機嫌そうな顔。開口一番に掛けられた問いから先程まで現実と見紛うほど鮮明に映っていたものは彼が見せた幻なのだと悟っては、それを実行した意図を汲み取り適切な回答を導いて。幸い胸の辺りに付き纏っていた正体不明の不安感は幾らか薄らぎ、鳴り方の大きくなっていた鼓動も規則性を取り戻しつつある。もう不吉な夢の残滓によって睡眠を妨げられることはないだろうという予測は使命感が先行する楽観だとしても、精神的な症状に対し自身の思い込み以上に強い薬はなく。温かさを全身で感じ取るように木製のマグカップを両手で包んで持つと、表面を一吹きした後に印ばかり口をつける。魔術で見せられた幻より今この瞬間の方が余程現実感が無いのは、一日の間に長く眠り過ぎたせいか、熱に浮かされていたせいか、密やかな夜のせいか、それとも自身に降り注ぐ幸運を上手く受け止められぬせいか。ふっと湧き上がった疑念は空想癖のない自身には珍しい類のもので、加えてそれを口に出してしまったのは起き抜けと眠る前の微睡みの狭間に在るが故。本当に相手が夢の中の存在であるとするなら彼に答を求めるのは不適当ながら、様々な記憶と幻とが入り乱れ混濁した頭ではそこまで思考が回らずに)
――リヴィオ様。ここは……、夢の中ですか? どこからどこまでが、夢ですか……?



  • No.85 by リヴィオ  2023-04-07 22:27:04 




っとに、可愛げのないガキ……。
(己の声音が呼び水となり、凪いだ湖面のように透き通る双眸が静かな夜へ鮮やかに燈る。そこに先刻のような波紋は見当たらず、一先ずの落ち着きを得たらしい事を密かに確かめて。一方、彼が紡ぐ言の葉もまた常通り甘えのないそれへと変じれば、詰まらなげに悪態を吐き、ふんと気怠げな瞳を窓辺へと逸らし。――大樹の合間へ設けられた窓を一枚の絵画のように彩るそれは、満点の星空へ鋭く輝く弓形の月。欠けこそあるものの変わらず美しい森の夜空は相手との初対面を何処と無く彷彿とさせるもので、少々複雑な心境に眉根を寄せた折。彼らしくもなく朧気な疑問符を伴い、深夜の冷えた空気を揺らす声にゆるりと視線を戻すと、何処か望洋と魂の抜けたような眼差しでマグカップを両手に包む少年の姿。窓辺から注ぐしなやかな月明かりが、闇夜を弾くと共に寄る辺を持たぬ天涯孤独な彼の印象を一層浮き彫りにするようで。初対面時から続く異質な振る舞いからその人格形成の過程に思う所は多々あれど、常人の理解や常識を遠く離れた自分の元での生活など、到底身を置くべき場所でもなければ一時の仮初にしか過ぎないのは確かか。呆気なく散った先の夢幻と同様、奇怪な魔法陣すら嘘のように消失した元の平凡な机上へ視線を落としては、ただ淡々と感情を排した事実のみを連ねていき。しかし、最後に顰めた眉を僅かに緩めて視線を重ねたそれは、今までさして音を伴って来なかった暖かな響きを芯に持つようで)
まぁ、俺のような魔術師との生活なんて瞬きの間に生まれた夢想のようなものだ。前に言ったように、次の受け入れ先もそう間もなく見付かる。お前はただ、先と同じように少し目を瞑っていればいい。……その悪夢は、もうじき終わるよ。


 

  • No.86 by ミシェル  2023-04-12 21:49:59 




(不確かに揺らぐ世界と不気味な程に揺らがぬキャンドルの灯の中、求め縋った答を片言隻語も聞き漏らさんとするかのように僅かに瞳孔の開いた双眸を主人へと向ける。その唇が無情に並べる句に頷くことも首を振ることもせぬまま、ただ先を待つようにじっと耳を傾けては意図を図りかねて陰影の濃い横顔を見つめるばかりで居た折。ふと光源の暖かな色合いを宿した金眼が此方を向くと、注意を奪われてそうと目を見開く。それから確かな声音で告げられた言葉は、予言めいたまじないのようで。夢を見る間に与えられている幸福など到底信じられるはずもなかったが、夢現の夜に抱かれたこの空間では気休めさえ真に迫って響き、御伽話の美しい結末を語り聞かされたような安寧への誘いが細波となって押し寄せ。睫毛の先が微かに震えたのを端緒に、目許は柔らかに細められ、口許は薄く綻び、顔の上に静かに安堵の笑みが形作られる。しかしその波間から睡魔が姿を現したなら、一瞬の意識の明滅の後、常であれば殆ど音も無く置くマグカップをコッ、と安定を失った体ごと机に預け。寝惚け眼を緩く一度瞬かせ、ちびちびと口をつけていたせいで未だ半分も減っていないミルクが溢れていないことを確認すれば、今になって漸く微睡みの泉から抜け出した様子で顔を上げて。もはや微笑の跡形も無い面貌に仄かな混乱の気配を漂わせると、何を言うべきか迷った末にぽつりと当初の目的を呟き)
……戻ります。



  • No.87 by リヴィオ  2023-04-17 22:22:13 




――……あ、あぁ。……、俺ももう本格的に眠る。飲み終えたら、早く部屋に帰れ。
(元より、信頼のおける孤児院なり養子元なり、真っ当な愛情と教育を施す引き取り手を確保する算段はある。健全な環境に身を置きさえすれば、時の経過と共に悪夢も薄らぎ、人として自然な幸福を謳歌するようにもなるだろう。たとえ今宵のように暗夜に惑う日があろうとも、かける言葉すら碌に持たぬ己より余程巧みに彼を導く者が傍にいる筈で。そんな心算を胸に紡いだ言葉を発端としてか、少しの間を置いてそっと曲げられたこの上なく柔い眼前の唇の角度に息を飲み。まるで動く道理のない夜の絵画が密かに蠢いたのを目の当たりにしたような驚愕を得て、傾いた肩から黒衣のローブがずるりとその半分を落としかける。相手が意識の水面から完全に浮上した素振りを見せてもなお衝撃からは立ち直れず、辛うじて頭部を鈍く縦へと振らせると、信じ難い光景を諸共に打ち消すようにしっしと隻手をすげなく払い。続け、黒衣を正すと同時にふとその裏から取り出したものは、飾り気の一つもない簡素な暗色の指輪で。装飾品というよりも明らかに実用性重視といった様相であり、土台を成す純度の高い漆黒のオニキスがささやかに月光を浴びて煌めく程度か。それを机上へ差し出し用途を述べるも、何やら見てはいけないものを見てしまったような面映ゆさを引き摺れば、言葉の刃へ平生の如き毒を塗るのをしくじり、ツンと澄ます事で平静を装って)
……ついでだ、これを持っていけ。ここにいる間は常に、左の中指へ通しているように。魔除けや邪気払いが主な性能だが、ある程度精神防御も構築される、から……、……。そう夢見も悪くならないだろ。


 

  • No.88 by ミシェル  2023-04-23 00:13:03 




(陣の消えた机面から摘み上げた暗色の指輪は、どうやら今し方説明された目的それのみのために作られているらしい。特別な意匠も加工も見受けられない魔除けが如何なる鉱物から成立しているかなどは皆目見当もつかないが、それが摩訶不思議な魔術ではなく主人の懐から出現したことの方が自身にとっては意味を持つ事柄で。彼の携帯品をそのまま譲り受けた可能性を思えば尾を引いていた眠気も一息に吹き飛び、さして重量のない装身具が重さを増したようにさえ感じられる。しかしその場で左の中指に通してみると元からそこにあったかのようにぴたりと収まり、疑問は疑問のまま闇の中へと消え行くこととなって。険のない口調を催眠の顕れと取っては、初めて身に付ける足枷以外の装身具をもう一度ちらりと確認してから、可及的速やかにマグカップの中身を空にすべく少し温くなったミルクに口を付ける。最中、意識の間隙を突くようにあの悪夢の最初の情景が目に浮かぶと徐々に嚥下の音を鳴らすペースが落ち始めるも、それは最早自身を動揺させるものではなく。少女はツィツィーという名で自身と同年齢であったこと、彼女はあの時〝ミシェル〟の名が天使に由来することを知って腹を立てていたこと、数日口をきいてもらえない事態になったものの暫く経つと彼女は何事も無かったかのようにけろりとしていたこと。やがて優しい甘味を全て飲み干す頃には余計な無意識に汚染されていない実在の記憶を取り戻し、胃袋へと移し替えた人肌程の温かさが相好からも精神の揺らぎを取り払っていて。空の器を机上に置くやすぐに立ち上がり、未だ真意の掴めない相手に対して態度を決めかねた末、下手なことを口にするべきではないとの防衛本能が働けばいつかのツィツィーの如く何事も無かったかのように無味乾燥な礼を述べる。それから指輪をした左手を大事そうに右手で握り込むと、就寝の挨拶を残して扉へと足を向けて)
今日は、ありがとうございました。……おやすみなさい。



  • No.89 by リヴィオ  2023-04-26 08:26:31 




……はいはい、おやすみ。――はぁ。……人形染みた気味の悪いガキと思えば、たまに……、……厄介な。
(こくこくと小さな喉仏の忙しない動きを視界の端に捉えつつ、何か気の利いた言葉をかける事もなければ、その内実へ深く踏み入る事もしない。さりとて先程投げ掛けた台詞ほど退席を急かす事はなく、平生の仏頂面を貫いては明後日の方向を向いて再度頬杖を付き。一概に居心地が良いとも悪いとも評しづらい静かな時の中、ただ儚げな月明かりだけが自分達の奇妙な縁を穏やかに包み込むだろうか。やがて相手が席を立ったなら、依然としてそちらへ一瞥をくれる事もなく、机上の本を形ばかり手に取り深夜の挨拶を律儀に返す程度。不服げな皮肉や嫌味の一つも飛び出す事なく淡白に済ませたのは、先の信じ難い光景に未だ本調子を取り戻せていない為でもあり。それが証拠に相手の気配が完全に室内からも廊下からも消え失せると、机上へ半ば脱力するように顔を伏せ、溜息混じりの苦悩が口から漏れて。まったく、魔術以外の事柄にここまで脳のリソースを割かされるなど、不測の事態にも程がある。一方で彼の不調が他者の害意に起因する物でないと早々に判明したとはいえ、何か魔除け程度は渡しておくべきだろうと、日中の内に昔の愛用品を引っ張り出しておいて幸いだった――などと並行して思考してしまう辺り、相当に侵食されている。夜空へ浮かぶ爪先のような細い月を睥睨する眼差しを一度閉じると、億劫げな仕草で席を立ち。机上の書籍類を丁寧に片付けてから、同居人にあてがった本来の部屋……各地を放浪中の恩師や、人の理を外れた者を含む稀な客人の来訪を想定した客室へと靴先を向けて。相手の居場所を間違っても此処へ定めない為に本格的な寝台までは用意していないが、その代替として恐らく使用していることだろう広めのソファーを目指すだろうか)


(/背後より失礼いたします。この度は深夜イベントの遂行ありがとうございました……!過去話とまではいくことが出来ず大変申し訳なかったですが、深夜の少しばかり日常とは異なる不思議な雰囲気で友好を育む事が叶いとても楽しかったです。ミシェル様の正に大天使が如き微笑やら悪夢に苛まれる可哀そ可愛い様やら、いつもながら眼福でした……ありがとうございました!
この後は特に貴方様の方で何も無ければ場面転換を挟もうかと思いますが、展開は如何いたしましょうか?一応提供としてはミシェル様の健康面を危惧し、今回のイベント以降栄養指導を行うべく食事を共にするようになるかと思われますので、数日後の完治した頃合の朝方、同じ卓で朝食を取る二人で〆くらいが良いのかなとぼんやり構想しております。ただ別段拘りがある訳でもないため、何か他に考えられている案等がありましたらなんなりと仰っていただけますと幸いです!)



 

  • No.90 by ミシェル  2023-04-27 22:58:15 




(静かに双眸を開くと、筆を手に取って羊皮紙の上に色を乗せてゆく。今はまだ瞼の裏にしかない風景を緻密に写し取れば、温かみのある四角形の中には魔法陣の見せた夢幻の森が着々と描き出されて。発熱した日から主人の自室で過ごすようになって暫く、なるべく安静にしていようと日の昇っているうちは机で羊皮紙に向かい、日が落ちるとベッドに潜る生活を送ったおかげで絵は早くも完成目前。悪夢に魘された夜の翌朝すぐに譲り受けた〝廃棄物〟を部屋へと運び込み、忘れてしまう前に記憶を書き留めんとして筆記用具を広げたこの行為を、始終照らし続けた太陽はどう見るだろうか。ふと面を上げ、その眩しさに目を眇めると、白い鳥の群れが窓の外を横切ってゆくのが視界に入る。ほぼ毎朝定刻に舞い戻る紙鳥達を合図に朝食の時間を知れば、すぐさま描画を切り上げて筆記用具と左手の指輪の触れ合う音だけを微かに響かせながら一式を片付け。熱は平均をやや下回る元の体温まで落ち着き、主人から安静を言い渡された日数も既に経過したはず。隅に寄せた画材と机上に移した魔石、そして自身の存在以外は最初に訪れた時と変わらぬ魔術師の居室を退室時にちらりと振り返れば、今度こそは寝台を返還しようと密かな決心を抱きつつダイニングへと続く廊下を進んで)


(/深夜イベント、ありがとうございました……!ミシェルに対して、巧みに話を聞き出したり魔術で頭の中を覗いてしまったりではなく、幸せな夢で上塗りというのが不器用ながら優しいリヴィオ様らしくてとても解釈一致でした……。また、常日頃もしかしたら此方ばかり楽しませていただいているのではないかと杞憂しておりましたので、主様の温かなお言葉に安堵いたしました。私もとても楽しかったです!
場面転換につきまして、ご提案くださった展開で異論ありません。ミシェルはあとは眠るのみでしたので一足先に数日後の朝へと飛ばしておりますが、主様の考えておられた状況設定にそぐわないようでしたら此方のロルはある程度無視または否定していただいて構いませんので……!二人が共に朝食を取る光景、そしてロルにありましたリヴィオ様のお師匠様のお話や、人外の客人のお話も楽しみにしております。最後に、ミシェルがロル中で気にしていた点を返答のロルで補足くださりありがとうございました。毎度毎度本当にお心遣い痛み入ります……。)



  • No.91 by リヴィオ  2023-05-01 22:39:15 




……お早う。……ふん。さすが、数日も怠惰に暮らせば快調そうだな。
(不本意な同居生活が幕を開けてから、すっかり日課となった紙鳥達の来訪。その持ち込まれる紙面の内容には依然として例の魔道具に関する進捗等はなかったが、既に幾件か同居人の引き取り先候補の情報が記されていて。贔屓の情報屋による仕事に疑念はないとはいえ、引き取り元の信頼性だけでなく当人との相性も含めた入念な精査には少なくとももう数週間は見込まれるだろう。その間に再び体調を崩されるような事があっても面倒であるし、当人にとっても最低限の生活能力程度備えておいて損もあるまい。そんな経緯を経て、ダイニングへ現れた待ち人を前に小気味よい音と共に閉ざした専門書には栄養学に纏わる表題が踊っており。魔術関連であればともかく、自身の体調管理の為に昔仕入れた程度の知識では質も量も少々不足かと先刻さらりと一冊頭に入れた次第。完全な専門ではないながら数日の診療を請け負った身として、対面する面差しに不調の色が消え失せたのを確認しては、尊大に椅子へ座した足を組んだまま皮肉気な口振りで迎え入れて。もはや用のない本を放った先の机上からは、その一角を定位置として鎮座していた例の万能食を内包する瓶が跡形もなく消失しており)


(/いつもながら拙い話運びで恐縮しておりましたが、貴方様にも楽しんでいただけたようで良かったです!本当に由来通り天地が崩れ落ちる可能性の方が遥かに高そうな杞憂に関しましても、どうかそのまま未来永劫葬り去っていただければ……!物理的にロルを回す時間が少なくなってしまい、返信ペースに全くミシェル様と背後様への愛が反映出来ておらず誠に申し訳ない限りではございますが、いつもいつも大変楽しませていただいております故……!!
また、今後の展開に関して承知いたしました。私も色々と不思議な物語にぜひともミシェル様を巻き込ませていただければ大変嬉しく思います。こちらこそ、いつも背後様のご配慮とミシェル様の魅力に溢れたロルをいただきまして本当に日々感謝しております……。それでは、もうかれこれ11月頃から始まったイベントにも終わりが見えて参りましたが、〆までのもう少しの間お付き合いをよろしくお願いいたします!/蹴り可)


 

  • No.92 by ミシェル  2023-05-05 15:01:41 




おはようございます。……はい、体調の方はもう元通り、に……。
(沓摺を踏み越えた先で自身を出迎えるのは、朝日にも劣らぬ眩い金眼。病床に臥してからというもの、このダイニングで目にする機会の増えた主人の姿にもいよいよ新奇さが薄れていれば、厭味にも聞こえる挨拶さえ怯みも過剰反応もせず当然のものとして受け入れ。しかし机上へと放り出された本が彼の自室に並ぶそれらとは毛色が異なることを題目から看取すると、応答の形で回復度合を報告する声はリズムを失って失速し。物珍しさについ机の傍に突っ立ったまま目を伏せる動きだけで書籍を見下ろすけれど、主人の唯一の食糧である角砂糖似の栄養食にもこの手の知識は必須かと思い直しては保存瓶の置き位置へと視線を滑らせ。その場所から先日まであったはずの万能食が忽然と姿を消していれば、それを理解するだけの間何もない空間に目を留めた後、周辺を見回す。けれども目当ての物の行方は杳として知れず、手軽さと引き換えに味が今一つであるとの話を回顧しては、改良でも始めるのだろうかと魔術にも栄養学にも暁達せぬ身で想像一辺倒の予測を立てて。そうであるなら自身の朝食などは二の次だが、何はともあれまずは確認と、部屋の各所を彷徨わせた瞳の先を元の位置まで引き戻し)
……朝食の支度をしても、よろしいですか?



  • No.93 by リヴィオ  2023-05-07 22:43:45 




……あぁ、その件だが。お前の自己管理は大概だと身に染みて実感させられたからな。今日からは、監督のため俺の分も三食、お前と同じ物を用意するように。
(室内の変化を捉え、移り変わる常の悠然とした眼差しがやがて自身の元へ戻るのを受け、再びひねた物言いしかしない口唇を開く。単に自身との共同生活の事だけに重きを置くのであれば棚へ仕舞われた例の栄養食を施せば済むにも関わらず、それを退けたのはこの自尊心に欠けた少年の将来への憂慮を下地にしているからだ。しかし、例の如くそんな危惧を公にすることは無く、聡明な相手にとっては恐らく不自然に違いない無駄に手間のかかる迂遠な方法をコツコツと指裏で先の書籍の表面を叩きつつ提示し。元々余計な贅言を好まない彼の事、軽々に主の意向へ異議を唱えはしないだろうが、過剰な脅し文句をついでに付言する悪癖も含めすっかり平生通りといった所か。この席から壁の仕切りのないキッチンまでの見通しは良く、実際の調理面については明るくないとはいえ何か危うげな様子があれば注意喚起も容易であるし、食材の偏りがあれば早々に指摘も可能だろう。朝食が済むまでは暫しこの席に身を落ち着かせる腹の下、間を置いて意地悪げに口端を僅かに歪めると、少しの意趣返しとばかりに過去の台詞を反唱してみせて)
無論、味だけでなく栄養配分についても指南してやるから、早々に俺の勘気に触れて魔物の坩堝にでも放逐されたくなければ、精々必死にまともな炊事を身に付けるんだな。……言っただろ、〝覚えておけ〟って。


 

  • No.94 by ミシェル  2023-05-10 21:04:03 




――……はい。
(何かのついでのような言振りで告げられた指示は、元より必要以上に開くことのない薄唇を完全に閉口させてしまうに十分な内容で。自己管理を徹底させたいのであれば一言そう下命すれば良いだけのこと。自身を奴隷として扱うことを好まぬのだとしても、これまで万能食によって精到に栄養管理を続けてきた主人が態々全くの門外漢と食事を共にする理由はといえば、そんな無理難題を吹っ掛けるまでに怒り心頭に発しているという意思表示に他ならず。付言された語にそれを確信しては、彼の調理時壁越しに聞いた苛立たしげな轟音が耳に蘇り、さっと血の気が引いてゆく。されど許される返答はただ一つ、蛇に睨まれた蛙のように立ち竦みながら常より幾分か細った声音で用命を受ければ、書冊を引き寄せて恐々と中を開き。未知の知識に好奇心を抱く余裕もなく、白面を一層青白くしながら即時役立ちそうな記載だけを目で拾うと、時間に追い立てられるように次々頁を繰って。概念的な基礎知識の項を終え、実用的な各食材の栄養素の項に移ったならキッチンからレシピ本を持ち出して並べ置き、些か眉根を寄せつつ二冊と睨み合う。悪戦苦闘する最中、ふと陽を浴びた向日葵のように頭を擡げては、効率を極めた立方体からは知りようもなかった相手の食嗜好を問うて)
……、何か、味の好みや、好みでないものは……。



  • No.95 by リヴィオ  2023-05-15 22:50:47 




……俺の好みを気にしてどうする。確かに栄養面だけでなく味についても最低限の監督はするが、個人的な俺の趣向に合わせろという意図はない。
(当然、歳の離れた子供を追い詰めて悦に入るような趣味に覚えもなければ、言通り彼の身を本気で危険に晒そうという気など毛程もない。しかし、仮にも一時の主人たる己の身にも多々責がある事とはいえ、あれ程扱いに苦心させられた相手が困ったように頁を捲る様はそう悪くない光景で、僅かに口端を性悪に持ち上げてはその場で腕を組み十分に待機を。そういえば、誰かと共に食卓を囲むなどと一体何年振りだろう。幼い頃から魔道への極端な傾倒を見せた自分と家族団欒という絵面は必然的に縁遠く、高貴な家柄の責務を負う長男でない事も手伝って干渉も薄ければ、他者とのまともな食事は随分と久方振りの代物となり。それに寂寥感を抱くような可愛げのある気質ではないとはいえ、今回の顛末は少々異質な体験であるには違いなく、何とも言えぬ不思議な感慨が僅かばかり胸に芽吹く中。一種の鈍器が如く厚い書物と初心者向けのレシピ本を交互に矯めつ眇めつする面貌がふと顔を持ち上げる気配に応じる姿勢を取れば、形の良い唇から発されたものは想定した栄養学等に纏わる学術的問いではなく。元より食事などという行為に栄養補給以外の要素を見出していない身でもあり、余計な機嫌伺いは不要だと眉を顰めた解を無愛想に放り。そんな顰め面のままつらつらと冗長に語り始めたものは、彼との共同生活においてこれまで密かに溜め込みに溜め込んだ末吹き上がる鬱積の一端。必要に迫られた止むを得ない処置という立派な隠れ蓑を得て、何処と無く活き活きとした調子で眼前の少年へ日頃抱いていた過保護寄りの憂虞を堂々晒し)
そもそも、最初からド素人のガキが作る物にさして期待はしていない。が、以降は食事を始めとして徹底的に自己管理を叩き込んでやるから、覚悟だけはしておくんだな。差し当たって、今朝は……そうだな。常々思っていたが、お前の薄っぺらさひ弱さは兎角目に余る。偏食にはならない程度に暫くは肉やら山羊乳の加工食やら精のつく物を重点的にだな……。


 

  • No.96 by ミシェル  2023-05-21 07:49:12 




……すぐに支度を。
(顔付きこそ不愉快げながら、恐らくは恩情で告げられた答を更なる課題と取れば、未だ嘗てない程に手掛かりの不足した指示内容にますます眉を困らせるばかり。最早何を作ろうと一から十まで駄目出しされるのではとの疑心が芽ぐむ折、そんな浅薄な考えを裏切って続けられたのは手解きの宣言とそれに違わぬ助言で。自身の筋立てと相反する展開に迷妄は消え去り、しかし代替となる理屈も見付けられなければ当惑をひた隠すように神妙な面持ちで頷きを一つ。それから条件に合致する料理を探すべくレシピ本を前に数頁、後ろに十数頁捲っては、山羊乳のシチューの品書きに手を止めて。ざっと材料の欄を通覧したところ助言にも準じており、目立った偏りも認められないそれを本日の朝食と定めるまでにさして時間は掛からず。主人に遂行の意を短く伝えるなりレシピ本をそのままの状態で放置すると、急いで貯蔵庫へと向かう。そこからきっかり二人前の材料を抱えて戻れば、選択する段階を終えたためか、あるいは余計な思考を排除するために神経を集中させているのか、一切の迷いなく調理に取り掛かり。初心者らしく教本を脇に置きつつ、分量、手順の全てを完璧になぞったなら、普段の簡単な食事に比べれば幾分か時間は要すれど、未だ朝食と呼べるうちには見開きの絵柄と遜色ない品が食卓に二つ並び。最後に小麦パンを隣に一つずつ添えると、そそくさと主人の対面の椅子に座り、じっと息を殺すようにして彼が口を付けるのを待って)



  • No.97 by リヴィオ  2023-05-23 23:01:33 




お前、ここに来る前に料理の覚えでもあったのか? ……まぁ、及第点だ。良くも悪くも無難な代物だが、塩気はもう少し足して良い。ここを移って調味料の類いが気安く手に入らなくなるようなら、少量の塩と安価な香草辺りで代用を――。
(まずはお手並みを拝見、という程大仰なものではないにしろ。初対面時に手先の器用さを口にしていただけあって、調理にさして逡巡や危うげな様子も無く、滞りなく眼前へと出来立ての食事が差し出されて。ほこほこと暖かな湯気が立ち、ミルク色に浮かぶ具材が鮮やかにつやめくそれに、ふんと外観だけは妥協の吐息を零しつつ洗練された所作で木のスプーンを差し込み口元へと運ぶ。胃の腑へ染み入るような素材本来の物を活かした温もりは淡白ながら優しい味付けで、初心者にしては上出来以上の質であるのは勿論のこと、参照したレシピについても恐らくは万人受けする品だろう事が容易く推察され。しかし、伊達に上流階級にて肥えた舌はそうそう衰える物ではないらしく、主に市井の庶民向けらしき料理本の教示する内容に少し以上の素朴さを覚え。当時の卓上を彩る品々と彼用の食材を仕入れる際に覗いた市場の状況とを鑑みて、食器を下ろしては畑違いではありつつも出来うる限りの助言に淡々と努め。彼が裕福な養子元か善良な孤児院にでも身を収めるならばより適した教育を受けられるだろうに、つい余計な講釈を長たらしく垂れてしまうのは、少しでもこの霞が如き存在感の少年に自身で身を立てる力を付けさせようという屈折した老婆心故か。そうしてひとしきりの教授を終えると、二口目に取り掛かる前に相手の皿を一瞥し、偏屈な態度を保ったまま彼にも食事を勧めるだろう)
……お前もそろそろ手を付けたらどうだ。それとも、朝食の保温程度に俺の魔術を使わせるつもりか?


 

  • No.98 by ミシェル  2023-05-27 21:53:25 




……手伝い程度なら。
(比較的手先が器用で覚えが早く、そして他の子供達よりも扱い易かったためだろう。食材を切ったり火を見ていたりと局所的ではあれ養母達に食事の支度を任されていた記憶を振り返っては、顔ばせを僅かに強張らせたまま硬い音吐で一部肯定し。というのも自身の手のみで調理した品を他者に供するのはこれが初めてのことで、更にその相手が謎に包まれた魔術師の主人ともなれば緊張もひとしお。彼が味に言及するまで膝上で固く結ばれていた両拳は、まずまずの評価を受けることで雪解けと共に開く花弁のように緩んで。気掛かりが氷解してはその後の指南もするすると頭に入り、肩の力こそ抜けつつも正した姿勢で真摯に耳を傾け。要点を漏らさず心に留め置けば、突き付けるような喫食の促し方に〝はい〟と答えるべきか〝いいえ〟と答えるか迷った末、右手をカトラリーに、左手を器の縁に伸ばすことで返事に代え、つい今し方別の引き取り先を仄めかされたにも関わらず対面のその人の好みを舌で覚えるように少量を口に運ぶ。そうしてペースを乱さずに黙々と食べ進めるうち、端に移動させた教本の書影から主人の自室の本棚を、本棚から今朝の決心を思い出すと、三分の一程に減ったシチューの中にスプーンの先を沈め、奴隷の身分で要望を口にする僭越さと頼み事の不慣れさ故にぎこちなく言葉を選んで)
……あの。お借りしていた部屋と一時中断していた作業ですが、もう体調も万全なので、以前のように戻していただけると……有り難いです。



  • No.99 by リヴィオ  2023-06-01 23:27:36 




……何だ、そんな事か。俺としてもいつまでもお前に自室を占領される訳にはいかない。今日中には荷物をお前の部屋に戻しておいてやるから、以降は元の客室で過ごすんだな。……任せていた仕事についても、今日から再開とする。
(放っておけば岩のようにいつまでも口を閉ざす寡黙な相手が能動的に口を開くのは珍しい。これまでの経緯から少々身構えるように怪訝するも、やけに遠慮がちな唇から音を成したのは実に他愛のない用件で。元よりその予定であったのも手伝い、僅かばかり片眉を持ち上げては食事の手を淀みなく再開させつつ今後についての命を下し。以降は特段の用もないとばかり、ただ手早く目前の朝食を片付け研究に戻る事にのみ専心して。所詮は誤謬だらけの刹那的な主従関係。最低限の治療こそ施してやったものの、確たる親愛の情が結ばれた訳でもなければ、利害関係すらさして一致している訳でもない無益で無意味な間柄に朗らかな歓談が生じる道理はなく。無音を是とする隙も愛想もない食事作法とは別に、外から漏れ聞こえる鳥の囀りや風にそよぐ葉の擦れ合う自然音こそが主題のような淡白な食事を済ませると、後は空の食器類を残し席を立つばかりとなり。しかしながら、そういった理性的な判断と彼へ傾けた情の温度は中々折り合う事なく、何事かを言いたげに微かに口を開くのと、眉を顰め机上へ視線を逃しての閉口を数度。やがて至上の難題にでも突き当たったかのような難渋な顔を明後日まで逸らし、空手となった腕を手持ち無沙汰に組めば、例の夜以来ずっと胸に抱えていた憂慮をぶっきらぼうに漏らし)
……この数日、少しは安らげたか?


 

  • No.100 by ミシェル  2023-06-06 20:51:08 




(自身にとってもそうであるように、毎食の調理を命じた彼にとっても食事は栄養素を摂取する以上の意味を持たぬ行為のようで。棘も強圧もなく思いの外すんなりと許された願いに対応する命を受け、暫くの愁いが晴れて憑き物が落ちたような顔で頷いた後は微かに食器類の接触する音が鳴るのみ。団欒など望むべくもない現状と互いの性質だけに余計共に食卓を囲む意図が掴めず当惑するも、拒絶すら感じさせる流麗な所作に乱れを生じさせるのも憚られ、己を満足させるためだけの答を相手に求めることはせずに一口分掬った乳白色ごと嚥下して。そうしているうち自身より余程上品に食事を進めていた主人の器が先に空になったなら、直ちに部屋の取り替えが行われるものと思いきや、彼の腰はやけに重く。不審げに視線を上げれば苦悩する面差しがそこにあり、やがてそれは斥力でも働いたかのように此方から背けられ。難儀して漸く固く結ばれた口唇から零れ出したのは、素っ気ない語勢に反して配意の色濃い問い。そのちぐはぐさと向けられ慣れぬ注意の矛先とに、この場だけ声の伝播が極端に遅くなったかのように何の反応も取れずにいては、主人に不便をかけていながら呑気に安らいだなどと答えて良いものかという思いと、自身の安静の為の数日を徒労に終わらせてはいけないという思いを天秤にかけ、心の内など顧みないまま打算的に肯定の返答を導き出し。しかしこれまで最適と信じて疑わなかったその定石が今回に限ってはひどく不実に感じられれば、目線は後ろめたさを伴って己が手元へと落ち。中指に艶めく漆黒の指輪に目が行くと、先の解を裏付けるような仄かに無意識の透ける事実に今更心付いたような口振りで)
……はい。……悪い夢も、あれから見ていません。



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