匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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? あぁ、あれは人体に最低限必要な栄養素と回復系の魔法薬を混じえ錬成した物を魔術で加工したもので……いや、お前。確かに手軽ではあるが、よりによって寝込んでいる時に好き好んで食うような味じゃ……。
(お世辞にもスマートとは言えまい体裁の保ち様はともかく、鋭い問いの矢の猛追を受けて少しの沈黙を形作った唇は、やけにぼんやりと空を掴むような言葉を紡ぐ。加えて、不自然な瞬きを繰り返し、とろりと溶けた眼差しはまるで睡魔の精に眠りのミルクでも差されたかのようで。明確な回答には当たらないその意図について図りかねるまま、仮初の怒気も一瞬失念しては僅かに片眉を上げた素直な戸惑いを面貌に滲ませつつ、例の一風変わった栄養食の説明を滔々と紡ぎかけて。しかし、突拍子もないように伺えた応答と先の質疑とを無理に紐付けてしまえば唇の動きを止め、よもやそれを食事として要求するつもりかという早合点から渋面を作り。既に骨の髄から魂に至るまで魔術へ心酔していた十代前半の頃、人体の生命維持において不可欠たる栄養摂取すらも煩わしいと生成した品に改良を重ねた末があの角砂糖程の小さな四角形だ。一応名のある家の出自だけあって豊かな教養と肥えた舌自体の持ち合わせはあるものの、心血の全てを魔術の修練へと注ぐ変わり者に細やかな味覚への配慮など当時から皆無。普段平然と食す一方で雑味や苦味の多いあれを病人へ与える気にはなれず、手中の物を机上へと片付けると、相手の視界を覆うように伸ばした手の平で青緑の瞳を閉じさせて。自然な睡魔の訪れを僅かながら快癒の兆しと捉えそっと下がる眉尻と、先刻よりかは心做しか柔らかくなった声音で静かに眠りへと誘おうとして)
……お前には、後でもう少しマシな食事を用意してやるから。そんな些事に思考を割いてないで、眠気があるなら失せない内にとっとと寝ておけ。……おやすみ。
(/いえいえ、眠気でふわふわしているミシェル様も大変可愛らしく、いつもの事ながら癒されておりましたし、特に返答や展開に問題等も感じませんでしたのでどうかご心配なく……! ただあの栄養食は大分味が微妙な品だったもので、ミシェル様がどうしてもと粘られない限りはそうそう与えないかとも思われたため、上記のような返答となってしまい申し訳ありません……。話の流れ的に一応睡眠誘導を行ってはおりますが、それでも食べてみたいという意志をミシェル様が示すようであれば、提供は渋々ながら与えるかとは思いますので、どちらでもご自由にロールをしていただけますと幸いです。
また別件となってしまいますが、実は完全に謝罪をし損ねていた事がございまして……。ミシェル様が病で倒れられた際に、よしキリがいいな! と何の躊躇いもなく魔術で大分キツめの確定ロルをやらかしてしまっておりますが、もしご不快な思いや希望されていた展開の阻害をしてしまっていたら大変申し訳ありませんでした……! 適度な確定は可としてもやりすぎではと少し間を置いてから猛省しましたので、以降は重々気を付けたく思っております……!)
……っ、頂こうとしたわけでは……。
(ただの角砂糖ではないだろうと思っていたが、あの立方体は予想以上に人間味を欠いた代物らしい。熱と眠気とで注意散漫になった頭では淀みのない口調で紡がれる説明を完全に解するには至らなかったものの、辛うじていくつかの単語を捉えれば大まかな言意を汲み取り。単純に考えればそれのみで食生活を完結できる栄養食に、夢物語でも聞くかのように瞳の奥に好奇の光を宿らせる。しかし、渋面を作った主人の口から味についての言及が為されると、見た目からの想像とはかけ離れた実情に僅かばかりの落胆を滲ませて。――と、同時に問いの意図を誤解されているのだと気が付けば、きょとんと何もかもが抜け落ちたかのような素朴な表情が顔に浮かぶ。主人の主食とも言える瓶詰めの固形物を強請る気など毛頭無かったが、自身が要求するより先に否定された可能性に心惹かれるのも事実で、弁明の言葉は一瞬だけ息を詰まらせた後に転がり出て。じき、徐に手が伸びて視界が塞がれると、唐突に訪れた暗闇と仄かに感じる体温に急速に意識が遠のく。深海の底に沈んでゆくような感覚の中、聞こえた優しい声音に尻窄みの就寝の挨拶を返せば、ふっと糸が切れたように規則正しい寝息を立て始めて)
――おや、すみ、なさい……。
(/ご気分を害されていないのなら良かったです。ご丁寧なご返答ありがとうございます……! また、展開につきましてもご配慮痛み入ります。栄養食に関しましては単に背後の目論見でしたので、ミシェルは大人しく寝かしつけさせていただきました! 身体面だけでなく心理面までお気遣いくださるリヴィオ様にはただただ頭が下がるばかりです……。この先は以前お話させていただいた通り、ホットミルク展開への移行でよろしいでしょうか?
いえいえ、とんでもないです! 此方がだらだらと引き延ばしがちな性分ですので、毎度丁度良いところで場面転換してくださって非常に助かっております。件の場面につきましても感謝こそすれ不快になど思っておりませんので、これからも思うままに綴っていただけますと幸いです……!
最後に、ついでのような形になってしまって恐縮ですが、新年のご挨拶を失礼いたします。
昨年は大変お世話になりました。お相手に選んでいただけて、素敵なご縁に恵まれて本当に幸せです。至らないところばかりではございますが、精進して参りますので本年も何卒よろしくお願いいたします……!)
はぁ……心配かけさせやがって……。
(静謐な室内に、相手の小さな寝息だけが空気を穏やかに揺らす。慣れぬ人の温もりは魔石が発する涼やかな頭部周りの冷気により一層際立つようで、そっと手を離すと同時に両肩へ重く伸し掛る疲労感を覚えて思わず吐息を零し。……彼が倒れた際にはそれこそ心臓が止まるような酷い焦燥感を味わい、寝姿を見守っていた際もさして生きた心地がしなかったというもの。先刻短いながらも会話を交わし、着実に回復へ向かっていることを実感してはようやく心身の力が芯から抜ける思いで。病状から鑑みて突如容態が急変する可能性も低ければ、下手に安眠の妨げとなってもいけないだろうと机上へ向かい退室の支度を始め。その際に折り良くふわりと視界に紛れ込んできた水精霊へ、彼の起床の他何かあれば自身を呼ぶよう軽い伝令を命じてから、いよいよ背後の扉へ踵を返そうとしたほんの少しの間際。ふと眼下にある行儀の良い寝姿へ僅かな痛みを覚えたかのように眉を寄せると、徐にその頭部へ手を伸ばして。指通りの良い白髪の合間に指先を滑らせ、起床の呼び水とならぬ程度に緩く極めてささやかにその頭を撫でる。少々妙な所に関心を寄せたり、未だ奴隷根性が心身に根付いてしまっている節はあれど、それでも時折ごく僅かに垣間見せる感情の一片は相手が未だ若く純朴な少年である事を自身に強く意識させ。やはり、そんな彼がこの辺鄙な地で偏屈な魔術師との生活などと到底そぐわない。目的の魔道具の逸失に気を取られる余り、相手の引き取り手探しが少々劣後してしまったことは否めず、胸を苛む自責の念に基づく決意のみを静かにその場へ置いて。身に纏う黒のローブをひらめかせ、微かな靴音が鳴った後の室内は、ただ物言わぬ蒼き小さな輝きのみが何処と無く心配そうに中空を漂うのみだろうか)
……すぐ、もっと良い引き取り先を探してやるからな。
(/いえいえ、恐縮です……! こちらこそ想定以上に厄介な性格となってしまった提供に、辛抱強くお付き合いいただけているミシェル様と背後様にはとても足を向けては寝られない思いです……。そうですね、この後はホットミルク展開でお願い出来ればと思います。そういえばこちらが何も考えず時間帯を当初朝設定にて開始してしまっておりますが、何でしたら諸々合間に挟まるだろう看病描写を省略して深夜まで飛ばしていただいても、普通にしばらく睡眠を取って夕方等に起床でもどちらでも構いませんので、お好きなようにお願いいたします。
ほ、本当にいつも寛大なお言葉をありがとうございます……! 杞憂だったようで安心いたしました。とはいえ、こちらも別段ゆっくりロールを回す事に抵抗等がある訳では全くないので、以降はもう少し配慮をするつもりではございますが、もし何かご要望等があればいつでもお気軽に仰ってくださいね……!
こちらこそ昨年は大変お世話になりまして、とても楽しい時間をいただき誠にありがとうございました! こうしてミシェル様や背後様と年を越すことが叶いました事、本当に嬉しく思っております。本年もどうか共にこの少し不思議な物語を長く紡いでいただけますと幸いです。まだまだ未熟な点の多い背後と提供ではありますが、今年も何卒よろしくお願いいたします!)
(毎朝の起床と同様に、意識の浮上と共に目を開けば思考する間もなく流れ作業で身体を起こす。普段ならそのまま寝床から抜け出て与えられた仕事に取り掛かるところ、今回ばかりは眠りの深さに反してするりと蘇った記憶がそれを制しては寝台の上に留まって。己が病身であることを思い出したのと、熱病の諸症状が引いていることに気が付いたのとでは、どちらの方が早かっただろう。完全に消失したとは言えないながら、気怠さも息苦しさも鈍痛も眠りに就く前と比べて遥かに和らいでいるように感じられれば、自らの額へと手のひらを添わせ。魔石から放たれる冷気に晒され続けた皮膚は最初こそひんやりと冷感を感じさせるも、徐々に本来の熱を取り戻し、やがて宛てがった手のひらと同等の温もりを保つ。しかしながら、やはり自身では判断が下せずに軽く首を捻ると、急速に興味を失ったかのように掛布団の上へと両手を放り出し。自身が眠り落ちている間に空はすっかり色を変えてしまったようで、窓の外には熟れすぎた果実にも似た夕茜。ベッドの脇にも空をそっくり写し取った日脚が落ち、反射光がランプの光のように暖かく室内を照らしている。熱の如何については測れずとも、症状が快方に向かっているのは確実だ。仮眠程度に休息を取るつもりが相当の時間が経過したようだが、夜を迎えるより先に回復したのは不幸中の幸い。主人に寝台を返還しようとベッドから抜け出しつつ、改めて窓の外を見遣ると、不意に仄蒼い光が柔らかな光線の中から姿を現し。この部屋の中で唯一の動的な光は陽光の中と魔石の傍を順に潜り抜け、それから閉じ込められていた場所を逃げ出すように扉の外へと抜け出てゆく。すぐさま自身も水精霊を追うように扉へと近付くが、一度足を止めると踵を返して先程まで潜り込んでいたベッドを綺麗に整え、今度こそ廊下へ出ると謝辞と病状の経過を伝えるべく主人を探し歩いて)
(/辛抱だなんて! 長くなりすぎるため割愛しますが、リヴィオ様のどのような面も萌要素でしかなく、いつも密かに悶えております……。こちらこそ口数も少なく扱いに難儀するミシェルの思いを汲んでくださいまして、リヴィオ様と主様には感謝してもしきれません……。ロルの方ですが、お言葉に甘えて夕方に起床とさせていただきました。悪夢に魘される展開につきましては、再度床に就いた後に描写させていただこうかと思っております!
お気遣いありがとうございます……! おかげさまで楽しくやりとりを続けさせていただいておりますが、もし万が一何かあればお伝えさせていただきますね。主様もご指摘やご要望があれば些細な事でも仰ってくださいますと幸いです……!/蹴り可)
(ページを捲る度に鼻腔をくすぐる、古めかしい紙とインクの匂い。窓越しに運ばれる茜色の柔らかな斜陽に、机上に据えられた幾冊かの古文書と己の横顔が照らされて、長く伸びる陰影を象る。変色し虫食いすら見受けられるような経年劣化の進んだ紙質には少々難儀すれど、書物自体に染み付いた書き手の残留思念への干渉と、高度な復元魔術を行使する事で辛うじて判読を可能として。そうして著者、或いは起源と魔法理論を同じくする書物を同時に併読する事で解析効率を偏執的に向上させている最中。不意に視界の正中へ入り込む蒼の灯りに高速で走らせていた多重の演算式を一斉に打ち切るや否や、椅子を後ろに引く性急な音と共に席を立ち。いつもの地下室よりも自室への移動がより容易なダイニングにて解析作業を行っていた為、そのまま最短距離を結ぶ廊下への扉に手を掛けて。そこで当人の姿を自室ではなくノブを回したすぐ先の廊下にて認めてしまえば、面食らったように一度瞳を揺らし。反射的に憂慮の色濃い叱責が口を突いて出るも、幾らか顔色が回復したようにも伺える面貌に中途で言葉を止め。されど何かと情感の希薄な相手の言行から瞬時に不調を看破する事は依然難しく、あまり軽々に精神感応系の魔術を行使するというのも少々躊躇われて。表情を神妙なそれに塗り替えては、一先ず少し身を屈めて眼前の双眸と確り視線を交じわせようと試みると、真剣な声音で静かに状態を伺い)
お前、寝てろと言って……! ――……、体調は。熱は下がったのか?
(/非常に絡みやすい場面転換をありがとうございます! 加えて、なんとも勿体ないお言葉までいただきまして、恐縮ながらも大変嬉しく思います……。重ね重ね、いつも充足した時間を過ごさせていただきありがとうございます。
また、今後の展開等、諸々につきましても承知いたしました! もし以降も何かご相談や疑問等生じましたらまたいつでもお声がけください。それでは、場面転換後も何卒よろしくお願いいたします!/蹴り可)
はい、かなり楽になりました。……熱、も、恐らくは。
(主人の自室を後にしてすぐ。ノブに手を掛けようとした廊下脇の扉がひとりでに開いたかと思えば、その奥から夕陽にも劣らぬ鮮やかな赤髪が現れる。想定外の鉢合わせと尋ね人が存外近くに居た事実への驚きも然る事ながら、幽霊でも見たかのように自身より一層の動揺を滲ませる相手に目を丸くして。弁明するより先に叱責の言を止めた主人の顔は普段と相違なく気難しげではあれど、眼差しには厳しさも冷たさも見て取れない。ふと動く気配がして彼が身を屈める速度に合わせて顎を引くと、殆ど同じ高さになった視線と真正面からぶつかり。そのまま少しの嘘も誤魔化しも許さぬような両眼で見据えられ、静かな問いが微かに空気を震わせれば、こくりと頷きつつ簡潔に病状の経過についての所感を述べて。併せて尋ねられた体温の異常の有無に関しても同様に頷けば良いものの、心の内奥まで見通すような視線を向けられているせいか、それとも変に融通の利かぬ性根のせいか、青緑の瞳を一度横へと逃がしては不自然に文節を区切る言行で自己判断への自信の無さを素直に表し。それから一拍置いて主人を探し歩いていた目的を思い出せば、話題の針路変更を示すだけの間の後、謝礼と謝罪と共に頭を下げ。顔を覆うように垂れる白髪が斜陽に照らされて紅を帯びているのが見えて、顔を上げると茜雲の如く見えない位置まで流れてゆく。平常時ならばそれきり閉口してしまうところ、例外的に付言された言葉たちは、失態を挽回して懲罰を逃れようとしているようにも、回復の度合を主張して主人を安堵させたがっているようにも響くだろうか)
リヴィオ様のおかげです。ありがとうございます。……それから、お手を煩わせて申し訳ありません。――朝終えられなかった今日の分の薬の調合は、すぐに取り掛かります。ベッドも出来る限り元通りに戻してきましたが、何か問題があれば直しますので。
……本当に、相当だな。何がそうお前を駆り立てるんだか……。
(返答のみで真偽を看破する自信があった訳では無いが、見据えた瞳孔の動きや素振りから解熱までとは言わずとも多少なり体調が改善されたのは恐らく事実ではあるのだろう。その事に安堵を覚えると同時に僅かに和らいだ瞳が、続く相も変わらず慇懃な対応と頑ななまでの勤労意欲に嘆息と共に呆れの滲む色を宿し。彼が単に己の命を遵守する人形という訳でもない以上、その内に根付く奴隷根性から一時の安静の命すら安々と飲み下せないのはある種想定通りとしても。日没の陽光が紫へと変じる僅かな間、逢魔が時という万物の境界を曖昧にし、人心を惑わせる不安定な時間帯も相まってだろうか。窓辺から差し込む夕陽に透き通るような無彩色の髪が薄紅に染まる様は嫌に儚げで、つい余計な感傷染みた情を喚起する。複雑な憂色を帯び、無意識に音として零れてしまったような様相で独りごちる自身の逸らした面貌は逆光により仔細を隠し。相手の目が慣れる頃には、つい深く踏み入りかけた思考を意識的に打ち止め、屈んでいた背を伸ばす事で適切な距離を保とうとするだろうか。回復の程度がどうあれ、少なくとも今日は休息を取るべきという以前の判断に揺らぎはなく、些か大仰な言葉選びと共に腕を組むと、冷然とした眼差しで相手の背後にある扉を有無を言わさぬ圧をもって顎で示し)
余計な謝辞は不要だ。それより俺は、数日は寝ていろと言ったはずだが。……今なら叛意でなく、病の所為という事にしておいてやる。下した命令に変更はない、大人しく俺の部屋に戻れ。
(身体のみをその場に残し、意識は仕事場へと向かう中、それを制止する声が耳に届けば大きく一度瞬く。光の加減で主人の顔は影に黒く塗り潰され、唯一はっきりと窺えるのは冷淡さを湛える眼光だけ。ぐっと明度の落ちた陽光の所為か足元から伸びる彼の影すら物恐ろしげに映れば、自ずと背筋が伸び。仄暗い室内と平行に交わった視線はオークション会場での出会いの一幕を彷彿とさせ、有無を言わさぬ迫力で告げられた命に当時と同じく無言のまま頷きを返す。しかしその慎重な首肯は、諦念と失意故に唯唯諾諾と従っていた数週間前とは微かなれど確実に一線を画して。胸の内に一欠片混じった感情は、敢えて名称を賦するなら〝恐れ〟と呼ぶべきだろうか。仕えるうちに芽生えた忠誠心か、生活空間を共にした親愛の情か、人間らしい扱いを受けられる居心地の良い場所への執着か。生じた経緯こそ定かではないが、彼に失望され見放されることへの憂惧が朝露の一滴程差され、善し悪しはともかくとして言行に影響を与えたことは確かで。とはいえ主人の命に叛くわけにもいかず、加えて〝叛意〟の言葉を持ち出されたのなら尚更。指示通り素直に来た道を引き返そうと右足を下げかけた――瞬間、小動物の唸り声のような音が静まり返った廊下で鳴り。どうやらその音が自身の胃の辺りから発せられているらしいということに気付き、その事実を受け入れるまでに数秒を要しては、暫し下げかけた足はおろか瞬きすら彫像の如く止めてしまって)
…………、腹は素直だな。まぁ、そういえば食事の約束もあったか……。
(意図的な言葉選びが功を奏したか、従順な首肯と元の部屋へ引き返すような気配に自身も憂慮を伴い追随しようとした折。大樹の内を流れる水音すら拾えるような二人だけの静閑な空間に、控えめながら何処となく悲しげな音が目前から響いて。常の取り繕った堅物げな口調や表情作りを一瞬忘れ、石像の如くピシリと固まった相手より先に我に返れば努めて淡々と沈黙を破る事に。思い返してみれば朝から栄養も碌に取らぬまま今に至るのだから、流石にそろそろ病身の内臓も窮状を訴えるというものだろう。年齢にそぐわぬ大人びた普段の応対に相反し、まるで不意打ちのような間の抜けた可愛らしさに思わず生じかけた雑念については断固として名も色合いも、その形状すら仔細の認識を拒んでは自らの身をキッチンへ続く扉へと反転させ。愛想という概念の欠片も見当たらない鋭い面貌だけを相手へと向けると、事務的に夕食の希望を尋ねて。一応自身は末席ながらかつては貴族に列していた身であり、調理に関する能などむしろ有しているだけで料理人を雇用する余裕もないのかと周囲から嘲弄されるような異質な世界の出自だ。家を出てからも調理器具を手にした覚えなど数える程しかないが、以前に相手へ渡した初心者用のレシピ本の範囲であれば少なくとも食べられる程度の物は作れるだろうという算段で。しかしながら例え相手が何かしら高等な代物を要求したとして、如何なる手段を講じてでも用意しようという最早過保護とも言える心持ちについては当然のように伏せたまま、いつも通り威圧的に言葉を装飾し)
先に寝室で待っていろ、持って行ってやる。……品の要望は。
……フレンチトースト、を。
(静寂の満ちる廊下に在って、音の発生源を特定することはそう難しいことではないだろう。ましてそれが近傍で鳴ったのなら追及の必要すら無いのか、案の定易々と看破されては今し方メデューサの呪いから解き放たれたかのように漸くぺたんと下げた足の踵をついて。予測のしようもなく、故に当然対応の準備などあるはずもない出来事に未完遂の仕事も奴隷としての振る舞いも頭から抜け落ちてしまうと、キッチンの方向へと身を翻した主人に問われるまま放心状態で要望を零す。レシピ本を目次から数頁捲ったところに載るそれは本日の朝食であり、また昼も夜も食卓に据えるはずだった品で、咄嗟に浮かんだものがそれだけだったのだとしても、帳尻を合わせるかのように無意識に予定通りを選び取った背景には何かしらの感情が透けるだろうか。食事の用意の為に奥へと消える主人の姿を見送ったのなら、未だ自身の腹の音が揺曳しているようにさえ思われる廊下を後にし、少し前に閉じたばかりの扉から主不在の部屋へと先んじて入室する。そのまま暫しドア前で棒立ちして中を見渡すも、いつまでもそこに居るわけにもいかず、窓辺に寄ると何処か遠くへと思いを馳せるように一番星の輝きだす空を眺め。しかしドアの開く音が聞こえたのなら、そちらを振り返ると同時に我に返り、全くの元通りとまでは行かずとも茫然自失の状態からは脱しているはずで)
お前……だから、もう少しまともな欲心をだな――はぁ。まぁ、良い。……治ったら覚えてろよ。
(何時にも増して、感情どころか魂すらすっかり抜け落ちた無色の面貌。それが己の問い掛けにより動き方を思い出したようにそろりと身じろいだかと思えば、小さな唇から発されたのは朝方見かけた品と同一の名称で。特段目立った食の嗜好はないと耳にした記憶もあれば、あからさまに不自然なチョイスにぐっと眉間に皺を寄せ、半ば呆れ混じりの吐息が漏れる。とはいえ、普段あれ程頑なに突き放した態度を取っておきながら、こんな時ばかりはもう少し気を許して悠々と寛げというのも大概相反した望みか。苦々しく眉の形を変えつつ数多の文句を胃の腑に戻すと、相手の食事事情については今後徹底的な矯正を施すとして、今はやたら物言いたげなじとりとした眼差しを最後に扉の奥へと消えるだろう。数十分後、簡単な軽食にしては少々冗長な時間と、およそ調理の音ではない憤懣混じりの派手な魔術の発動音を幾多経て。さすが少しの疲労感を滲ませた仏頂面と要望の品を引っ下げ、ようやく自室の扉をノックもなく潜った次第で。湯気の立つ暖かなミルクと共にトレイ上で僅かに揺れるそれは、見た目こそレシピ本を彩る絵柄と歪なまでに同一の小綺麗なもの。ただし、"適量"などという甚だ曖昧な調味料の記載や火加減の調整諸々に懊悩し、最早一から再構築した方が早いとばかりに内在物質を分子ごと総入れ替えした結果、栄養や味は一般的なそれよりも上等でありながら実質はフレンチトーストもどきの合成食糧と化して。堰を切ったように堪えきれぬ文句を一方的に垂れ流しながらも、窓辺に佇む相手へ手中の物を差し出す際には、盛大に尾を引く悪感情を僅かに収める気配を見せるだろうか)
~ったく、何だあの入門書を謳っておきながら何かと曖昧な語句の数々は! あれなら放恣放埓無秩序な妖精語の魔本の方が余程……、何だ、寝ていないのか。まぁ何はともあれ物は出来たぞ。……そこの机か、あるいはまだベッドの方が食べ良いか?
(壁を隔てた向こう側では何が行われているのか、到底調理とは結び付かぬ音の連続に遥か遠くの星まで逃避していた意識も大樹の根元へと連れ戻され。食事の用意が進行している可能性は経験則に基づき碌に検討もされぬまま除外され、思い出されるのは去り際に寄越された視線と不穏な一言。奴隷とはいえ一応は病人相手に飲み込んだ鬱憤を破壊行動に代えて晴らす主人の様が目に浮かぶと、背中に冷たいものを感じ、ますます宵の明星から目を逸らせずにいて。しかし、扉が開かれると同時に耳に飛び込む苛立たしげな声によりその原因が自身にないことを知れば、幾許かの安堵を滲ませながら振り返る。トレイに載せられたフレンチトーストは漏れ聞こえていた音からは想像もつかぬ程纏まりが良く、提示された二つのうち机の方を選んで着席すると、目前にしたそれの造形がよく窺え。入室時の文句に反してレシピ本の絵柄に手を突っ込んで取り出したかのような完璧に手本通りの出来栄えに、そこに書かれた調理手順より手の込んだ魔術が実際に使用されたなどとは露知らず、一体どんな魔術を、と純朴な尊敬の念を抱いた後。心中だけで食前の祈りの言葉を唱えてはカトラリーに手を伸ばし、芸術品のようにすら見える黄金色のパンに丁重にナイフを差し入れ。そうして一口大に切り分けた甘い香りを口に運んだところで、思わず瞠目すると傍らの主人へと顔を向ける。ここ数日ですっかり食べ慣れてしまった品と同等の材料、同様の手順で作られたとは思えぬ上質な味わいに、狐につままれたような面様でぽつりと感想を零して)
――おいしい、です。
――と、当然だ。……誰が手掛けたと思ってる。
(コト、と相手が席に着いた目線の先の机上へ、仄かな湯気をくゆらせた簡易な食事が木のトレイごと静かに置かれて。常であればもう少し書物やら研究用の魔石等が雑多に転がるそこも、同居人が病に倒れてからは整然と片付けられたままだ。一応は寝台ではなく平生通りの姿勢で食事を望む辺り、思っていた以上に復調は早いのかもしれない。しかし、一方で空元気という懸念も完全に消し去る事は出来ず、そういった憂虞を密かに孕む眼差しにて食器を手にする相手を暫し見守り。そうして甘やかな黄金色が一つ目前の口に含まれた途端、未だ幼さの残る顔に喫驚を走らせ、思わずといった様相で此方へ向いた唇から零れた音に妙な情感が沸き上がり。貴族時代に養われた味覚と卓抜する魔術の技量に不足など万に一つもある訳が無いのだから、あくまでもこの程度の評価は想定の範囲内の筈。けれども、他人に出来合い以外の品を用意したのが初の試みであったからか、普段は気にもしない味や外観へ過度に精力を傾けた事が露呈したように思えたからか。ほんのりと胸中に灯った温もりはまるで内なる柔い部分を擽られるようで、何とも言えぬ複雑な心地に動揺の走る舌が僅かに縺れて。言わば照れ隠しのような心境を背後に如何にも高慢な台詞を放った後、目線を顔ごと逸らすと同時に脇の寝台へと腰を下ろし。これみよがしに尊大な仕草で足を組みつつ相手が食べ終えるのを待つ間、形ばかり怒らせた眉はそのままに、ぽつぽつと今後について再び言葉を紡ぎ始め)
まぁ、食欲があるようなら確かに体調についてはある程度回復したようだが……念の為、やはり少なくとも今日明日程度はここで休むように。……無聊を慰める物が必要なら、朝方お前に押し付けた"不要品"でも持ってきてやる。
(不意を突かれたといった風情で転び出た台詞に、気付けば一切の懐疑を感じさせぬ真摯な面持で小さく頷いていて。それ程までに供された品は味蕾を刺激すると共に関心を惹き、主人が寝台へと腰を下ろす間にも二切れ目を切り分けるべく握り直したナイフとフォークを皿の上へと向ける。埃一つ見当たらない机をパン屑で汚さぬよう留意しつつ、普段より慎重に切り分けては口へと運び、また切り分けては口へと運びを黙々と繰り返す最中。傲然と足を組んで見せた割に温情のこもった言葉に顔を上げては、身体の不調故に朧げにしか蓄積されていない今朝方の記憶を手繰り寄せる。〝ぶりょう〟の意味はよく分からないながら、すぐに〝不要品〟が空中から出現した画材のことを指しているのだと察すれば、此処でそれを使用する許可が下りたのだということにまで理解が及び。しかし折悪しく、窓の外の太陽は完全にその姿を隠してしまおうかというところ。本日分の仕事を完遂できていない後ろめたさもあり、ランプの灯を浪費してまで取り組むべき事柄ではないように思われればそっとかぶりを振って。それから先程までフレンチトーストが存在し、今は少量のパン屑が残るのみとなった皿へと視線を落とすと、何処となく嬉し気に瞳を揺らしながら辞退の句を紡ぎ)
……いえ。あの画材は、回復してから使わせていただきます。
……そうか、まぁ大人しくベッドで安静に出来るならその方が良い。――ふん、腹の方は満足か。
(慎ましやかに丁重に、けれど順調に進められていた食事の手は、先の返答に暫し遅れ停止して。薄らと喜色を湛える瞳と、無事底を晒す白皿へ密かに胸を撫で下ろしつつ了承と共に腰を寝台から浮かせ。陽が落ちかけ、長く濃く伸びる影に同化するような黒衣の裾を揺らし傍らの机へと歩み寄れば、温度のない鋭い金の双眸で眼下の相手を捉えて。実際何を思考しているのかと言えば、ただただその身を案じる変わらぬそれではあるのだが、あまり善意を公に晒せない性分と対人経験の乏しさが遠回しな物言いに拍車をかけ。軽々に目前の額に触れ熱を確かめる事すら叶わぬ手は机上へ、暖かみのない薄い唇は嫌味な文句を舌に乗せて冷然とした音を発してしまう。しかし、致命的なまでに自尊心の欠如する危なげな彼を捨ておく事はやはり出来かね、一応はまともに食事程度は取れるようになった相手への過干渉を危惧しつつ、最も難解な魔術書を紐解くようにキツく眉根を寄せて。病の魔の手を易々と及ばせてしまった責と深い悔悟も手伝い、後にぼそりと躊躇いがちに付け足されたそれは、当初相手との間に設けた筈の見えない線引きを僅かながら踏み越えようとするもので)
その阿呆ほど矮小な欲心を満たしたなら、さっさと飲み物の方も片付けて布団に戻るんだな。……まだ他に要求があれば、精々俺の気が変わらない今の内にでも言っておけ。
(傍に影が落ちて、上方に金色の両眼を認める。突然の接近と射竦めるような視線に何か粗相を仕出かしたかと薄らとした緊張感を覚えつつ、己の無力を受容した者の従順さで一途に視線を返していれば、紡がれるのは此方の腹加減を問うもので。元より然程大きくない上、奴隷商の元で最低限の生活を送るうち更にもう一回り小さくなった胃袋を満たすには供された品は量も質も申し分なく、控えめながらも確かに首肯する。自身とは異なるベクトルで胸裏の透けぬ主人がその瞳に何を映し、何を思うか。それらは依然謎に包まれているものの、如何なる苦痛も屈辱も受けることなく今日まで生かされている事実が、必要以上に勘繰ることを止め真率に指示に従わせて。此処へ来てから尋ねられる機会の増えた意思確認にはやはり碌に思案する様子もなく首を横に振り、両手をマグカップに伸ばしては人肌程に冷めたミルクに口をつける。こくこくと小さく喉を鳴らし、数度の息継ぎを経て中身を全て嚥下し終えれば、徐に立ち上がって主人の方へと向き直り。気後れや戸惑いを隠すかのごとく淡々と発した声で彼の意向に従う意思を示したなら、食器を片付け次第ベッドに潜る心算で)
……では、またベッドをお借りします。
お前は本ッ当によぉ……、はぁ。――良い。俺がやるから、病人は大人しく寝てろ。
(此方の心を知ってか知らずか、小柄な頭の振られた方向は左右、果てに淡々と抑揚に乏しい返答を紡ぎだす無表情のかんばせをいくら見詰めようと、その秘された内情が透けることは無く。著しく短気な気性から思わず立腹の音が自身の喉を突き、半ば苛立ちまじりの不器用極まる憂慮をどうにも上手く処理し切れぬ内。ややあって肩を落とすと共に慣れぬ仕事の気苦労を長息として吐き出すと、少々きまり悪げに前髪をくしゃりと片手で掻き上げて。病身の子供ともなればもう少し要求がありそうなものだが、丁度腹を満たしたばかりであるが故に本当に欲心がないのか、はたまた偏屈にして難物な主人への遠慮か。日頃の無愛想な振る舞いの自業自得振りと己の子守りに対する不適性をひしひしと実感しつつ、一先ずは一種の諦念と共に食器を片付けようとする相手の手を静止し。有無を言わさず持ち去ったトレイごと扉へ靴先を向けた折、ふと視界に入った枕元の魔氷石に関する説明書きを口頭で放った後に、己への連絡方法を少々恨めしげな半眼で伝え。本来ならば地下室に籠り研究に没頭する所ではあるが、それでは相手が入室出来ず困ることもあるやも、などという性懲りも無い懸念が果たして役に立つかはさておき。少なくとも相手の自己卑下精神に基づく気丈な言動だけは阻止せねば、と廊下へ続く扉のノブに手を掛けて。そのまま相手から特に引き止めの声等がかからないようであれば、ダイニングで先刻の解析の続きに移行するだろうか)
……あぁ、その魔石は不要になれば適当に辺りへ捨て置けばいい。何かあればダイニングに来るか、そこらの精霊に言伝でもするんだな。
(もどかしげに主人の喉奥で支えた何かは、言葉には変じずにやがて深い溜息として吐き出され。気に障る点があるのなら望む振る舞いを一言下命すれば良いものを、ここまで不快感を露わにしていながら此方の矯正を試みもしない不可解に、何となしに大息の行方を目で追うもそこに希求する答が浮かび上がるはずもなく。仕方無しにトレイへと向かわせかけて行き場を失った両手を体の前で緩く結ぶと、黒のローブの揺れた後を視線で辿り、不服げな面持ちながら病状を顧慮した言い置きに「はい」と承知の音のみを返してその背を見送る。当然のように放たれた後者の手段に引っ掛かりを覚えたのは完全に扉が閉じ切ってからのことで、魔術無しに精霊と意思疎通が図れるのかと宙に浮かぶ発光体を探すも辺りは仄暗いばかり。他の手段が存在する以上詳解を求めて態々ダイニングに足を向けるのも憚られ、言い付け通りにベッドに潜ると代わりに枕元で微かな冷気を放ち続ける魔石を手に取り眺める。宵闇の中でぼんやりと光を纏うそれは一層神秘的で、つい青緑色の瞳に近付けて見入った刹那。突如魔石から発せられる冷気が肌を刺すような鋭いものに変化し、手のひらに伝わる冷感も凍てつく程に強く感じられれば反射的に手を離して取り落とし。ぼすっ、というくぐもった音と共に掛布団へと埋まった魔石は恐々と手を伸ばす頃には放つ冷気も触れた表面も元の心地良い温度に戻っており、極端に周囲の冷えた窪みからそれをそっと拾い上げると枕元の少し離した位置に置き据える。寝台に寝そべって肩口まで掛布団を被り、固く瞼を閉じては、跳ねた心臓が常の拍動を取り戻すのを待ちながら今度こそ眠りに就いて)
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――……! …………、ゆめ……。
(嫌な心音で目を覚ます。大きく見開いた眼前には暗闇と静寂。先程まで広がっていた光景は何処へやら消え失せ、しかし口から飛び出しそうな程大きく脈打つ心臓と薄い膜を張るようにじんわりと汗ばんだ体が確かにそれを見たのだと物語っていて。目を覚ましたその時の状態のまま浅く短い呼吸を繰り返すと、惑乱した頭も漸く落ち着いてきたところで弱々しい呻き声を漏らしつつ上体を起こす。感覚を確かめるように右の手指を曲げ伸ばすこと数度、恐ろしい体験の正体を確信すれば、安堵の溜息と同時に夢の中では出なかった声が自然と零れ落ちていて。そのまま暫し眠りたくない心緒と眠らなければならない使命感の狭間で揺れ、人工光が無いおかげかやたらと綺麗に見える星空を眺めていた折。ひらりと蒼の光が扉を抜け出てゆくのを捉えては、急いで布団の中から這い出て床に足をつける。夕刻の出来事を参照するならば水精霊が向かう先は主人の居所。どの程度夜が更けているのか確認する暇もなく、万一にも主人の休息を妨げるようなことがあってはならないと、優雅に飛び回る小さな光を極力物音を立てぬように追い掛けて)
ウンディーネ、待って……。
(/背後より失礼いたします。まずは、ミシェルの食事シーンにお付き合いくださりありがとうございました!リヴィオ様の大胆な調理法にはあまりの力技に笑みが溢れると共に、魔術師としての流石の技量に興奮しきりでした……!また、これでもかと言うほど慈しみに満ちた心温まるロルを拝読しまして、本当にミシェルは果報者だなと痛感した次第です……。
そしてロルの方、頃合いかと思いまして勝手に場面転換させていただきましたが、主様の方で考えておられたシチュエーション等ございましたら此方はスルーしていただいて大丈夫です。ここからは余談ですが、此方のロルに以前のロルと比較しての送り仮名や漢字表記等のブレが散見されるかと思います。単に基準が定まっていないが故の事象ですが、特段気にならないようでしたら目を瞑っていただけますと幸いです……。何となく気持ちが悪いということであれば以後統一するよう努めますので、お気軽にお申し付けください……!)
(……静かな夜だ。街からは遥か遠い森の奥深く、眠る草木が風に擦れる寝息の音と、その隙間から儚げに揺れる月明かり。深夜のキンと冴えた空気の中、ふと自然の香りに混じる水の気配が濃くなって。夜闇に密かに息づくような小さなキャンドルの灯りが、薄らと開かれた金の双眸を柔らかに照らし出し。ぼんやりと今一つ焦点の結ばぬ瞳を数度瞬かせて、ダイニングの机に腕を付きむくりと身を起こす。机上に山積し開かれたままの魔術書を見るに、どうやら諸々の鬱憤を解析作業にぶつける内いつの間にか眠っていたらしい。それ自体は特に珍しいことでもないが、同居人に付けていた見張りが此方へ舞い戻る微かな魔力の動きに視線は自然に扉へと寄せられて。日中の彼の様子や精霊の移動速度からして、よもやそう緊急性の高い事案でもないだろうという呑気な寝惚け眼は、しかし次の瞬間大きく見開かれる事となり。キャンドルの仄かな灯りと月光が照らす室内へ一条の蒼の軌跡が淡く描かれたかと思えば、少し間を置いての白髪の少年の追随に霞がかった頭が喫驚と共に晴れて。……こんな深夜に己を訪ねるとは一体何事が、と寝起き故に半ば取り繕いも忘れ、即座に椅子から立ち上がり混乱を極めるも、暫し後に自身の居所を思い起こしてはより妥当の行く結論を結ぼうと)
……ど、どうした。熱でも上がったか? それとも、何か病状が悪化して……あぁ、喉でも乾いたのか。
(/こちらこそ、ミシェル様に美味しいフレンチトースト(?)を提供する事が出来、大変眼福でした……!調理中一心に星を見詰める様やら食事に感動されるお姿やら、いつもながら可哀そ可愛くて最高でした……。ミシェル様に僅かながら情のようなものが芽生えているという描写も今後の展開に想像が膨らむようで大変滾りまして、この度は素敵な物語を誠にありがとうございました。
場面転換についても返答しやすく大変助かりました、ありがとうございます!表記揺れに関してですが、当方も全く拘りなく前後の文章によって漢字を開いたり変えたりとその場その場で適当に決めている節が多々あるため、お気になさらずとも大丈夫です。逆にこちらの相当気分屋な表記揺れやらロルの書き方に何か思う所があればご指摘いただけますと助かります……!(土下座))
……あ……。
(夜を舞う光点を追い掛け、辿り着いた先はダイニング。歩調を緩めて暖色の明かりのかすかに洩れるそこを覗き込めば、忍ぶ暇もなくやや重たげな瞳と視線が交わり。朝靄のような気怠げな空気を纏っていた主人の面様が見る間に驚愕の表情へと移り変わるのと、見つかったばつの悪さから自身の声が頼りなげに揺れたのはほぼ同時で。入口付近に立ち尽くしたまま取り乱した様子で立ち上がった相手を見上げ、懸命に言葉を探すも口は薄い半開きの状態から動くことはなく。しかし主人から当然の問い掛けがあれば黙りこくっているわけにもいかず、一度唇を引き結んでは前方の床へと目を落とし。何でもないと首を振ることも相手の推測に便乗することも可能な状況の中、包み隠さず真実を口に出したのは彼の声を耳にした際に小さく灯った安堵感のせいか、物言わずただ夜闇を照らすキャンドルの火がいやに神聖に映ったせいか。自らの指先を軽く握ると、怖い夢を見て眠れなくなっていた、という内容が内容であるだけに少々言い淀みつつ、告解でもするかのように静かな声音で経緯を語り。ぼんやりと幽霊のように浮かび上がる僅かに憔悴の色の残る面貌と心細げに揺れる瞳も、それを言外に示すだろうか)
少し夢見が悪くて……、目が冴えていたところに、水精霊が部屋を出て行くのが見えたので……。
(/当方が気に掛かっていた点はどれも問題なかったようで安心いたしました……!これまでに、もしくはこの先、展開や描写、提供の動かし方等について何か気になる点がございましたら、ご指摘の程よろしくお願いいたします。
主様のロルに関しましても、此方から気になる箇所は一切ございません。時にハードボイルドに、時に詩的に紡がれる文章にはいつも勉強させていただいております!それでももし何か主様の方でご不安に思われている事柄がございましたら、ご共有いただければ不肖ながらお答え致しますので……!特に無ければ此方は蹴っていただいて大丈夫です。引き続きよろしくお願いいたします……!)
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