匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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様? ――! っあ、……そうか、お前は俺の……いや、俺が奴隷なんて買うはず……。ち、ちょっと待て。
(希少な魔道具や魔法薬を狙うコソ泥か、はたまた近隣の小妖精共の性懲りもない悪戯か。特段異質な気配こそ感じないものの、鬱蒼と緑生い茂る山奥の自室へ凡庸な子供がおいそれと現れる道理はなく。またこの界隈において非力で幼げな見た目が中身に準じるとも限らない。何れにせよ、自身の領域へ無断で足を踏み入れた以上それなりの灸を据えてやろうと、心身の不調に基づく不快感をも諸共に杖を握る手へ力を込め。――と、温度のない声音に紡がれた己への不自然な敬称にぴくりと眉を顰めては、一抹の光すらも届かぬ昏い深海の底が二つ、此方へ向けられていて。妙に引っかかりを覚えるそれに動きを止めたのも束の間、忽ち昨夜の記憶の蓋が盛大に開かれれば雪崩込むような信じ難い記憶の数々に当惑を極め。爪先から寒気に似た何かが脳天まで駆け上がると同時に、ザァア、と全身の血の気が引く音がリアルに鼓膜へと届くようで。強気の姿勢から一転して狼狽を顕に突き付けた杖をだらりと地へ移し、愕然と見開かれた瞳が呆けたような間の後にハッと改めて相手を正面に捉えるや、必死の形相の下その細い両肩を容赦なく掴み。自分達が退出した後の商品の行方などよもや相手が知るべくもないが、色濃い焦燥により多弁となる口は理性よりも先に詰問を始めて)
お前、……お前お前お前ッ! ――千里の魔鏡は! 数百年前、とある著名の魔術師が手ずから創造したという森羅万象どころか使い手によっては過去や未来まで見通す古代魔道具! 魔物の巣食う遺跡から発掘され、昨夜のオークションで競売にかけられた筈の一品は何処に……!
(対峙した主人の剥き出しの敵意が影を潜めれば、密やかにほっと息を吐く。起き抜けでぼんやりとしていた頭も徐々にはっきりとし始め、張り詰める空気によって狭まっていた視界も本来の景色を取り戻せば、事態の把握の為に辺りに目を遣り。太陽の位置から時刻は午前、早朝とも昼前とも呼べぬ時間。ベッドの上には無造作に退けられた形跡のある毛布と、その下から端だけを覗かせている髪の結び紐。服は昨夜から変わっておらず、髪も整えていない主人。寝惚けて混乱していたという結論に辿り着くのが必然の条件を前に、これからの生活の為、主人の寝起きが悪い可能性を冷静に脳内へと書き留め。狼狽え震える口から零される呟きによって、導き出した解への裏付けと奴隷である自身を買った事が何らかの手違いであったという情報を得れば、何故だか妙に腑に落ちた心地で。鬼気迫る形相で肩を掴まれる瞬間にはひくりと眉を上げて反応を示すものの、その後は無抵抗に肩から力を抜き。オークション会場、武装集団と遭遇した森、杖に跨って飛んだ空と、僅かに目を伏せて此処に着くまでの各場面を順に振り返ってはみるものの、どの映像にも相手の言うような魔鏡は見当たらず。他の出品物など気にも留めていなかったため会場内に響く口上にすら耳を傾けておらず、その品物が誰にいくらで落札されたのかはおろか、自身より先に舞台へ上げられたのかさえ判然としない。伏せていた目線の先を主人へと戻せば、少しの誤魔化しも濁しも無く、自身の知り得る範囲の返答のみを返し)
……僕の記憶している限りでは、他の品物を持ち帰られている様子はありませんでしたが。
~ックソ! "草の根分けても探し出せ!"
(はたして縋った先の理性的な返答はもはや聞くべくも無いまでに予想の範囲内に留まるもので。望む言葉を紡がなかった相手への、と言うよりは昨夜から続く己の愚行への舌打ちと共に掴んでいた両肩を解放すると、弾かれたように向かった先の書き物机にて真新しい羊皮紙を一枚引き出しから取り出して。それを性急な所作で宙へ放ると同時、鋭さを孕む命令文と共に杖をかざせば、途端白地の紙はパタパタと幾重にも折りたたまれ数十もの極小の鳥へと変じ。窓ガラスをすり抜け空へと飛翔する彼らを見送る事もなく、そのまま徐に両の手を机上へつくと、半ば項垂れるように深く深く長大な溜息を吐いて。――魔法で持ち主を特定した所で、譲渡の見込みはそう高くはないだろう。この際金貨であれ労力であれ幾らでも対価は払う心積りだが、ただでさえ希少にして恐ろしく高等な古代魔道具、その真価が分かる人間であれば手放す公算は一層低くなる。一体全体その溢れんばかりの神秘を湛えた謳い文句の真相は如何ばかりか、もしも全てが真実とするならその構造は、命令式は、垂涎物たる古代魔法の叡智がこの手から露と消えるのか。時を経るほど沸々と胃の腑から込み上げる自己嘲罵に今にもくずおれそうになりつつも、依然物言わぬ他の家具類と同族が如く佇んでいるだろう部屋の片隅、先刻さんざ脅かされたばかりだというのに既に事の次第どころか此方の心根まで透かすかのような嫌に聡明げな面差しへと垂れる前髪の隙間から虚ろな視線を送り。地の底から響く低音に先のような明確な険こそ失われているものの、もはや失態を取り繕う気力すらない色濃い倦怠に沈む静やかな調子で一先ずの不可解を問うて)
……で、寝惚けたのは悪かったが……お前はお前でどうしてそんな心臓に悪い所で寝てるんだ。身体を洗ったような形跡もないし、場所が分からなかったか?
(/明日で一週間となりますので、念の為ご連絡とアラートを入れさせていただきます。背後としては貴方様のロルもミシェル様も大好きなのですが、もしこちらの技量や配慮に欠ける態度の悪い返信にご不快な思いをさせてしまっていたら申し訳ありません……! 一応この後は森の住居へ来たばかりのミシェル様へシャワー室へのご案内と、軽く衣食住のお世話などをさせていただけたらという思惑ではございましたが、提供のツンが強すぎるなど性格・展開自体へのテコ入れ相談も可能ですので、ご希望の場合は遠慮なく仰ってくださいね。ただ、このまま金曜日頃までご連絡がないようであれば再募集とさせていただきますので、その点のみご了承くださいませ……! それでは失礼いたします)
(あまりに必死な様子につい〝自分が探しに出ようか〟などという思考が過り、そしてそれを奴隷の立場から差し出がましくも口に出そうと唇を開きかけたその矢先、掴まれていた両肩が急に解放されたかと思えば次の瞬間には書き物机に向かう主人が見え。一枚の紙から変化した鳥達が大樹の根元から大空へと羽ばたいてゆくのを見送っては、なるほど確かに彼にとって奴隷は不要らしいと先の呟きの実感を得て。捲し立てるように発せられ続けていた声が溜息に変わったせいか、先程までの騒動が嘘のように重苦しく静まり返った部屋の中、項垂れた赤髪に太陽の光が当たるのをただ眺める。また奴隷商人の元へ売り飛ばされるのだろうか、それともこのまま忘れ去られて朽ち果ててゆくのだろうか。打ち捨てられた人形のように殆ど音もなく呼吸だけを繰り返しながら、命令が他へと下った事によりいよいよ無用の長物となった自身の行く末を案じていれば、ふと生気を失った双眸がこちらに向けられ、僅かに逸れていた視線と意識の照準をそこに合わせ。問われて初めて昨夜より視点が低いことに気が付けば軽く身なりを整えながら立ち上がり、その一瞬に今しがたの発言の意図に考えを巡らせると共に昨夜のやりとりを一言一句違わず思い出せば、まず最初に謝罪、次に昨夜の言葉は命令であったのかという確認の意味も込めた返答を返して)
驚かせてしまったことは、申し訳ございません。……好きに使えというのは、命令に聞こえなかったので。
(/お返事が遅れてしまい、またお気を遣わせてしまって申し訳ございません……! 少々生活に変化がありまして、思うようにロルが書けない日が続いておりました。明日こそはと思い続けて連絡を怠り、ご不安な思いをおかけしてしまったこと、本当に申し訳ございません。以前にも申し上げた通り、主様のロルの豊富な語彙と文章力には感服するばかりですし、ご配慮もこれ以上ない程いただいております。リヴィオ様に関しましてもPFを拝見した時から変わらず大変好ましく思っておりますので、主様にもリヴィオ様にも一切の落ち度はございません。私も双方大好きです……! 展開につきましても急ぎ足過ぎることも停滞することもなく、いつも楽しく交流させていただいております。が、任せきりになってしまっていることだけ気掛かりです。もっと積極的に動いた方が良ければお伝えください。数々の温かなお言葉と今後の展開の共有、アラートも含めまして、ご連絡ありがとうございました!)
……、奴隷根性……。
(相も変わらず子供らしさに欠ける丁重な謝罪の後に告げられた内容の、そのあまりもの自己意思と人格の希薄さに思わず絶句する。未だ手足も満足に伸び切っていない幼げな身といえど、家畜に準ずる奴隷に堕ちればここまでになるか。眉間に皺を刻みぼそりと低く落とした呟きはさておき、この分では水浴どころか貯蔵の食料にすら満足に手を付けていまい。……全く、それこそ今すぐにでも奴隷商人へ連絡を取れば手っ取り早い金策となり得る上に厄介払いも可能と正に両得ではあるが、それをしないのは昨夜相手が垣間見せた人間らしい情緒やら不憫さやら諸々が脳裏を巡り、生来より難儀な良心が強く袖を引くためで。幸いな事に胆力もあれば思慮深く従順と、他人との共同生活という根本的な煩わしさに目を瞑れば従僕としては好条件だ。その内良い心根の主人か養子主が見付かればそちらへ、と無言の脳内会議に終止符を打つと、再度の溜め息を皮切りに机上から手を離し。じとりとした少々湿り気のある眼差しと共に気怠げな声音を投げては、扉のノブを握り飾り気のない質素な廊下へと足を向け)
……分かった、なら改めて命令だ。"ついてこい"。
(/いえいえ、とんでもございません! いつもながら大変素敵なお返事と、心より嬉しいお言葉をいただきまして本当にありがとうございます。元よりレスは一週間以内というお話は聞いておりましたし、背後様に全く非はございませんので、どうか謝らないでくださいませ……! 本来はもう数日後にアラートをするつもりが、展開的にあまりミシェル様へ優しく出来ていない事が前々から気掛かりすぎて早々に連絡を入れてしまうという……大変失礼いたしました。以降は通常通り、一週間が経過するまでは特にお声がけはいたしませんので、レスの方は例え遅くとも早くとも、お好きな時に行っていただければ幸いです。ミシェル様の積極性につきましても、こちらとしては本当に全くどちらでも構いません。積極的に展開を転がしていただいても構いませんし、初期という事もありこのまま提供の意志に沿っていただく形でも、ミシェル様がなされることなら何でも大歓迎ですので、ご自由にロールをしていただけますと嬉しいです! また、室内については時折便利な魔道具などが使われていたり、書物や魔石など魔法研究のための物で雑然としていたりしますが、それ以外は必要以上の物が置かれていない基本質素な内装です。提供の自宅といえど、必要があれば適宜ご都合の良いように適当に描写してやってください。それでは、長文失礼いたしました。特に何もなければ此方はお蹴りいただいて大丈夫です。以降も何卒よろしくお願いいたします!)
(怒っているのか、呆れているのか、それとも無関心か。眉間に皺を刻んだ表情からは主人の感情も考えも読み取れず、身じろぎひとつしないまま次を待つばかりで。やがてオークション会場で最初に告げられたものと同じ命が下されれば、その時と同様にこくりと頷くも、警戒心を表すかのようにその唇は自然と引き結ばれており。想像力を働かせればこれから起こり得る様々を予測する事は容易いが、大人を、それも魔術師を前にそんなものが何の役にも立たぬ事を悟るのは更に容易で。否が応にも最悪の場面を映像化しようとする頭を電源を落とすように無理やり思考停止状態へと切り替え、ドアの前に立つ主人の元へと一歩を踏み出す。行手を阻む様に前方に落ちる陽光から何気なく紙鳥達の飛び立った窓の向こうをもう一度見遣れば、廊下へと出て行く足音に続いて寝室を後にし。昨夜数秒間だけ覗いた廊下は、単純に明るさの違いによるものか、それとも自身の心理状態によるものか、昨夜とは表情を変えて見え。これからどこへ向かうのか、自分をどうするつもりなのか。何一つ尋ねることが出来ぬ状況も昨日とまるっきり変わらず、待ち受ける何かを受容する覚悟だけを密かに抱え、前を行く主人の背を追うように歩いて)
……ここがシャワー室だ。用が済んだら向かいのダイニングへ来い、そこで……。
(あくまでも従順な首肯を示す相手の頬の硬さにまるで気が付かなかった訳でもないが、これまで魔法の鍛錬や研究に没頭し人付き合いを蔑ろにしてきた己に子供の緊張を解す術など知る由もなく。とりあえず汗を流し腹でも膨れればもう少し互いに話も出来るだろうと、背後へ続く控え目な随行の音に耳を傾けつつ退室し。そのまま直に自室より幾つか隣の目的地へと至れば、身を後方へ反転し中へ案内しようとした折。ひらり、と不意に仄かな蒼の光が視界を掠めて。――水精霊。魔力量の多い自分が長期間滞在した影響により、異常な成長と水分を蓄えた大樹に幾らか住み着くようになった彼らが、こうして姿を見せること自体はそう物珍しい事でもない、が。超自然的な存在たるそれが妙に背後の少年へ纏わりついているように見えるのは、よもや単に自我に乏しい者同士共感を得たという訳ではあるまい。そういえば昨夜のオークションの口上において魔力量に関する言及があったような気もするものの、何はともあれ時間短縮には都合良しと、ちらと相手へ一瞥をくれてから不穏な警告を放った後、使役魔法の行使と共にその背を押して扉の開閉を。無論繊細な配慮など到底望めぬ精霊相手では少しばかり手荒な洗浄が始まることだろうが、五分程度を経過する頃には足の爪先からその頭頂、更には纏う衣服類に至るまで綺麗さっぱり汚れという汚れはこそげ落ち乾燥すらも済ませているはずで。その間に自分はと言えば、依然二日酔いの症状による鈍痛の止まぬ頭部を抑えて踵を返し、全てが終わる頃には向かいのダイニングにて至極簡易な食事と共に相手を待っているだろう)
……ウンディーネか。丁度いい、"少し手伝ってくれ"。……言っておくが、昨夜済ませておかなかったお前が悪いからな。
(間取りを把握するよう、通り過ぎざまに左右の扉へと目を遣りながら揺れる赤毛を追い掛ける最中、主人がとある部屋の前で足を止めれば、自身も行進隊の如くぴたりと両足を揃えて立ち止まり。恐れを完全に捨て去るには余りに短い道程、口内から水分が奪われてゆくような感覚を覚えるも、身を翻し示されたのは物々しい仕置部屋でも不気味な実験施設でもなく、ごく一般的な居住空間の一画で。主人の意図を測りかねて物言わぬままその場に佇んでいれば、何処からか現れた蒼の光が戯れつくように傍で舞い踊り、翻弄される間に背を押されてはあっという間に浴室へと閉じ込められ。意味ありげな言置に振り返った頃には扉は既に閉ざされており、混乱しきりの頭のまま一度目を瞬かせる。瞬間、冷たい何かが肌に触れたかと思えば頭上からバケツを――否、浴槽をひっくり返したかのような重量の水が降り注ぎ。明らかに蛇口を捻って発生したものでないそれは〝ウンディーネ〟が操っているらしく、濡れた髪の先の水滴も落ちきらぬうち仄かな蒼が一層強く発光すると、またも大量の水が点々と周囲に現れ。大蛇のような細長の形をしたそれらは絡みつくようにうねりながら自身を取り囲み、勢いを保ったまま融合して、やがて浴室の中に渦潮を作り出し。空気を求め喘ぎながら激流に呑まれること数回、何の前触れも無く唐突に水中から解放されると、不思議と心身共に洗礼を受けたような清々しさが残り。更に、どういう仕組みか余計な水分が細かな粒となって自然と引いて行けば、一連の出来事が夢であったのかと思う程頭髪も衣服も元通りに乾燥していて。気ままに浮遊する蒼い光は以降何も起こすことはなく、暫く呆然と立ち尽くすも直ぐに主人の命を思い出して浴室の扉を開き。命を下され窓の外へ飛び立った紙鳥達と同等か、それとも同居人のようなものか。少々扱いに悩んだ末に〝ウンディーネ〟に軽く会釈をすると早々とダイニングへと足を向け。逸る胸のせいか小走りに木枠を潜れば、報告も忘れ通常より僅かに見開いた瞳に好奇の色を湛えて)
リヴィオ様。あれは――?
お前……へぇ、本当に視えてるのか。……まぁ都市部でも多少聞いた事くらいはあるだろ、水精霊だよ。本来は湖や泉なんかに生息してるんだが、俺とこの大樹にあてられて幾らか居着いてるんだ。外の羽虫共と違って基本的に害はないから安心しろ。
(少しだけ歩調の早い足音が扉越しに響き、こざっぱりと肌や髪の色艶を良くした少年の物珍しい興奮ぶりを少々手広な机に片肘を付いたままの姿勢で出迎える。既に諸々の体調不良は自作の魔法薬で治癒済み、黒紐にて一つに結ばれた赤毛も含めれば、未だ重苦しい霧の晴れぬ瞳を除いては常の様相を凡そ取り戻したと言えるだろう。しかし、先の浴室前での振る舞いと言い、平均的な魔力量ではおよそ不可視である所の精霊を確り視認しているような口振りを受けては、ゆるりと緩慢に相手へ差し向けた金の瞳の中に一瞬含みのない素直な驚きを広げて。起伏に乏しく素っ気ない物言いの割に律儀な説明を述べた後、ついと話題転換に視線を逸らした先は真向かいの空席に用意した簡易な食事――白くふくよかな小麦パンが一つと、ソーセージやベーコンといった加工肉をただ加熱しただけの代物。その脇にでんと無造作に鎮座する果実のジュース瓶と、未開封の一粒チョコレートが幾らか積まれているのがせめてもの子供向けの気遣いだろうか。一方で己の食事はといえば机上端にひっそりと瓶詰めにされて佇む、角砂糖のような自作の栄養食品。一応最低限の栄養素を手軽に摂取可能な万能食といえど、時間帯効果を極めた代償に味覚という概念を完全に放棄したそれを平然と他者へ与える気には流石なれず。相手の食事内容に少々上等な物が多いのは、極々稀な来客向けの品以外の貯蔵が他になかったという次第であり。……ギ、と木椅子に腰かける角度を深くし、唐突に放った命令調の言の葉に相変わらず表面上は暖かな温情の色など見当たらない。けれど、何処となく相手との距離を測りかねるような歯切れの悪さが滲むのは、単に自分が子供どころか人間との対話自体に不慣れであるが故であり、隠れた下地にあるものは健やかな共同生活を営む前準備に他ならず)
ほら、とっとと席について食え。最初は俺が用意してやったけど……料理の心得なんてないし、これからは自分の物は自分で作るように。……で、えーと……お前、好物は。
……水精霊。あれが……初めて見ました。
(テーブルに着く主人と差し向かい、透かしたガラス玉のような混じり気のない瞳を瞬き一つさせぬまま端的ながらも不足のない説明に耳を傾ける。確かに精霊を取り上げた本は孤児院にも置かれていた為全くの未知の存在ではないが、本の中の精霊は伝承的な信仰の対象として記述されており、首だけを回して浴室の方を振り返ればその姿を目にした事実に感嘆の声を漏らし。唯一『害はない』の言葉には多少の引っ掛かりを覚えるものの、同時に先の〝洗浄〟に主人の害意が無かったと確認出来たことにより、昨夜から連続する非日常的な出来事の数々と今まで培ってきた環境適応能力も手伝って、魔術師の入浴はあれが通例なのだという自己完結とともに飲み下してしまい。木の軋む音に浴室へと馳せていた意識を体の正面へと向け直すと、高揚していた気分も幾らか落ち着いた所で促されるままダイニングテーブルへと歩み寄る。扉の外まで微かに漂っていた香ばしい匂いの正体と、そしてそれがどうやら自分の為に用意されたものらしいと察すれば、言い付けられた通りに静かに椅子を引いて着席し。食事の用意も食事を摂った形跡も無い、一人分の食卓にぼんやりとした疑問を抱くも、態々言及する事柄ではなく様子を窺うような上目遣いでちらりと真正面の相手を見上げるだけに留め。立ち上ってくる匂いに鼻腔を擽られて初めて自身が空腹であったことを自覚すると、早速パンを口に運び、次にベーコンに手をつけ、またパンを齧り、合間にジュースで喉を潤し――と、分かりやすい表情の変化こそないものの一心不乱に食べ進め。その最中に思いがけない問いが寄越されれば咀嚼の速度を落とし、考えに耽る。しかし商品価値以上の関心を向けられることにも自分を顧みることにも不慣れ故適切な回答に行き当たらず、それを忍びないと思ったわけでもないが、仄かに当惑の色を滲ませながらも施しに対する素直な感想を続けて)
好物という程のものは、特に。……でも、ベーコンも、パンも、ジュースも、美味しいです。
っごほ、……お前、そんな殊勝な事言ってると損だぞ。……まぁいい、その内目立った嗜好が出来れば言え。多少は考慮してやらなくもない。
(己の説明に一応腹落ちしたらしい相手の潜在する魔力量の多寡については少々気にかかる所ではあれど、例え本当に平均値から外れたとてさした程度でもあるまい、と安易に思考を結んだ所で。それまでの印象からさぞ慎ましく淡々と食事へ手を付けるかと思いきや、明らかに性急な手振りで成長期も真っ只中の胃へとせっせと食物を運ぶ様に面食らうと暫し静止して。元々他者へ食事を提供する喜びはおろか、共に食卓を囲う和やかさすら録に覚えのない身とはいえ、何やら満更でもないような情感に間が悪くするりと入り込まれたのが悪かったか。此方がまごつきつつ投げた問へ返る純朴な解に、ふ、と思わず柔く綻びかけた口元を咄嗟に咳払いで抑え。他者を必要以上に寄せ付けぬよう染みついた偽悪的な仮面を慌てて付け直すと、やたら威圧的に足を組み低く放った尊大さの割に内容自体はそうでもないのはさておき。食いながらでも聞け、という軽い前振りの後、ようやく本題を切り出して。「少し手違いもあったが……とりあえず差し当たって、お前にはここで暮らしてもらう。そう条件の悪くない引き受け先を探してやるから、それまで適当に……、……いや……」元より自身と相性の良い大樹を少量削り、魔法で実際よりも空間を大幅に拡張させた異空間染みた住処。相手の部屋を新たに生成する事など造作もないが、そう長い居住でもなければ一時的に客間の方で過ごしてもらう事になるまでは良いとして。朝から瞠目させられた情景が中途で脳裏を過ぎっては、録な命を下さず客室の隅で比喩なく昼夜埃を被られていても困る、と急遽話の方向転換を。少々思案するように眉根を寄せ逸らしていた視線をややあって対面へと戻すと、値踏みするように細められた鋭い金眼はまるで一層の冷淡さを湛えるようで)
魔道具や書籍の管理も煩雑としてきたしな……一先ずその辺りの仕事をやる。……他、何か出来る事や、得手不得手は。
(返答に対する反応を受けて尚先刻の問いの意図が読めず、例によってこくりと実直に頷きながらも微かな戸惑いの色を顔の上に残したままで。しかし頷いたは良いものの、生まれてこの方快も不快も幸も不幸もまともに感じた経験の無い身の上。目立った嗜好などこの先も縁の無いものだろうと思案するまでもなく決めつけてしまえば、持て余したその言い付けを一応の記憶として片隅に据え置き。その後黙々と手と口を動かして順調に皿を空にしてゆくと、最後に残しておいたチョコレートに手を伸ばそうかという所で改まった前置きが為され、不審げに視線を上げて。話に耳を貸す間、手元で包みを開きながらも瞳は真っ直ぐにテーブルの向かい側を捉え、包みを完全に開き終えてからもそこから中の一粒を取り上げることはなく。すぐにでも追い出されるのではという危惧はダイニングに足を踏み入れて以降、これからを思わせる主人の言動によって薄れてはいたものの、明確にここに置くことを宣言されると相応の驚きと安堵感が押し寄せ。そんな内心をひた隠しにしたまま相槌代わりに首を縦に振り続けていた折、ふと向けられた金眼の鋭さに息を呑む。自身の価値を問うような眼差しに緩みかけていた感情の紐を固く結び直すと、呼応するように表情からも柔軟さが失われ、緊張したというよりは全ての情動に蓋をしたというべき無機質な顔が現れ。凡そ長所を述べているとは思えない注意書きのような口振りで主観を交えない事実のみを並べ、最後に部屋の中をぐるりと一周見回すと、際限なく浮かぶ短所の中からここでの生活に最も関係しそうな一つを挙げて)
……手先は器用な方です。文字の読み書きもそれなりには。それから――物の価値は、よく分かりません。
……へぇ。お前でなくとも、常人に此処の物の真価が分かるとは思えないが……どちらにせよ好都合だな。慣れれば、簡単な薬品の調合や地下室の方も任せてみるか……。
(生気のない蝋人形さながらに、けれど合間に幾許か息づくような感情の灯りが立ち消えて、もはや見慣れつつある能面のような顔が再び対面に浮かぶ。此方にも此方のペルソナがあるように、ひょっとするとそれが奴隷たる彼なりの処世術なのかもしれない。ならば、やはり互いにそれを外す必要などあるまいと相手の変容には敢えて触れずに、事務的に並べられた言の葉を口元へ軽く指を添え吟味する。当初は魔法で安易には済ませづらい細やかな清掃程度を考えていたが、居並ぶコレクションや研究用の素材に比して増えていく管理の煩雑さに手を焼いているのも事実。恐ろしく精密で緻密な命令式と構造を内に抱える魔道具類は勿論のこと、少し視線を巡らせれば壁沿いの棚を半ば混沌と埋め尽くす、繊細な研究用の水晶に大小様々な魔石、七面倒な調合や保管法を必須とする薬品類、極小の粉塵でもあれば頁を硬く閉ざず神経質気質な書物など、僅かなりともこれらの手入れを任せられるなら重畳といった所。この様子であればそういった高価な品を扱う内に妙な悪心を抱く憂いもなかろうと、手先も器用となれば比較的扱い易い代物や地下室の清掃等も考慮に入れるべく一人首肯して。さて、と話に仮の決着が付いた所で、先程から直接的な問い掛けはなくとも分不相応な対応に依然疑問が募るらしい相手へ、既に幾らか傾けてしまった厄介な情を間違っても透かされぬよう、生来より鋭利な瞳をふいと素っ気なく逸らしつつ締め括りを。この後は、己も浴室で汗を流してから他の詳細な間取りや仕事内容の教授を行おうという心算の下、机上に片手を着くと席を立つような素振りを見せ)
……奴隷とはいえ、誤ってここまで引っ張って来た以上、最低限の生活くらいはさせてやる。無論、必要以上に親しくするつもりは毛頭ないが……まぁ、何か不便があれば言うように。
(/いつも大変お世話になっております! いや、ミシェル様は本当に不憫可愛いですね……頭の回転も早くとても聡明なお子様で、段々と提供はミシェル様の爪の垢を飲むべきでは……? という思考が掠めつつ大変楽しませていただきました。ありがとうございました! そろそろ話の区切りが良いように思いましたので、特にやりたい事などがないようでしたら近い内に場面転換を行おうかと思いますが、如何でしょうか? とりあえず数週間後くらいの展開案を三つ程雑に並べておきますので、良ければお手隙の際にご勘案くださいませ。もしもまだこの場面を続けたい、あるいは何か他にご希望の展開案や提案等があれば、お気軽にお申し出いただけますと幸いです!
(1)与えた仕事にも多少慣れて来た様子のミシェル様に、いよいよ今度は地下室を案内する事に。地上よりも遥かに膨大な魔道具や書籍等のコレクションを紹介した後、ふとそれらの中から与えたそれは、手にした相手の魔力量や魔法適正を測る魔道具で……。
ミシェル様の魔力量が露呈するイベントとなります。このレベルの魔力量であると幾らでも悪用の危険があるため軽々に他者へ渡す訳にもいかず、そもそも基本的な魔力制御を覚えないままというのも相当に危険な状態であるため、共同生活の延長&より深く魔術について教鞭を振るうようになるのではと思います。
(2)慣れぬ環境による気疲れか、或いは森に棲う羽虫共……時に可憐な姿を現しては悪戯に人を惑わすという小さな妖精達の悪戯か。ミシェル様はある日突然倒れ、発熱のうえ床に臥してしまう。治癒魔法を施そうにも内なる膨大な魔力の暴走により、中和されるか反発を招き効果は乏しく。手間と時間を掛け力技的に魔法で治癒させられなくもないが、この程度であれば薬草と自己治癒に任せた方が副作用の心配もなく返って効率が良いだろうと、渋々提供が手ずから看病を行うことに。
これを機会にお互いにぐっと距離が近付けられれば……といった親密イベントになります。或いは病魔ではなく、単に悪夢を見たミシェル様を偶然ダイニングキッチン辺りで発見した提供が、ホットミルクを作ったり、相手の安眠を助けようとする……といった内容でも良いかもしれませんね。
(3)魔鏡の持ち主を探す為、ついでにミシェル様用の衣服や家具等の買い出しのため共に街へと繰り出すことに。通常のショッピングの他、馴染みの情報屋や少し不思議なお店へ立ち寄る内、ようやく持ち主の居所を掴み……。
魔道具探しの進行&親密イベントになります。魔道具の持ち主や具体的な流れについては大分ふわふわしておりますが、無難にいくなら裕福な宮廷魔術師か富豪辺りで、譲渡の見返りに金銭、或いはダンジョン攻略等を求められる感じでしょうか。お金であればさすがにもう用意がない為、恐らく洞窟で魔石探しなど錬金術染みた高等魔法を用いての金策を行うことになりますし、ダンジョンであれば小間使い的にミシェル様を連れていく事になるのかなと思います。
本文よりもかなり冗長な長文乱筆を失礼いたしました。なお、上記に挙げたものはあくまでも思い付きの素案であり、変更や他の展開をする事には全く抵抗はありませんので、本当にお気軽にご意見を申し上げていただければ嬉しく思います……!)
(取り立てて珍しくもない美点と、軽く生い立ちをたどれば自明の欠点。抑揚のない平坦な声で並べた内容は声を発していないも同然のものだったが、主人はどうやらそれらを好意的に解釈し、役立てる道を見出したらしい。独り言のかたちで零された思考の露からそのことを窺い知れば、価値なしと断じられなかったことで作り物のように固まっていた顔にも再びいくらか血が通い始め。しかし、一先ずの結論に達したらしい主人が句読点のような点頭を打つまでにも、静かな迫力を持つ瞳を他方に向けて話を終えた後にも無表情を崩さなかったのは、初めて触れる理由の無いあたたかさにどのような表情をするべきか分からなかったからで。未知の大地の途方もなく深い森に身一つで放り出される場面など考えるだけで背筋が寒くなるけれど、其方の方がまだ想像に容易い。孤児院の養母達でさえ一定の見返りが約束されていた。主人は何のために昨夜出会ったばかりの奴隷の子供に衣食住を提供しようというのだろうか。はかない十四年余りの人生で身に付けた知恵によって閉ざし続けていた口を、猜疑心でごく僅かに濁りながらも透徹した疑問が開かせる。先程開いたばかりのチョコレートの包みを簡単に結び直してポケットに押し込めば、命令は無くとも彼が何処かへ移動するのなら当然後に続くつもりで殆ど無意識のうちに席を立ち。奴隷は一般的に所有物であり、必要ならば使い、不要なら棄てれば良い。手違いで落札したとはいえ、どちらにも依らず未だ『ついてこい』以外に目立った命を与えない主人に、昨夜のうちに足枷を外された足元を一瞥しては前後の文脈を全て削ぎ落とした一文だけをぶつけて)
……リヴィオ様は、僕を奴隷としてお使いにならないのですか?
(/こちらこそ、いつも大変お世話になっております! 身に余るお言葉まで頂いて……感謝の念に堪えません。此方もリヴィオ様の細やかな気遣いが毎度毎度心に沁みて、最近の癒しの一つとなっております。今後ともよろしくお願いいたします……! 展開に関しまして、どの案も非常に魅力的で、可能であれば是非三案ともロルのやりとりをさせていただきたい所存です。つきましては順番の希望のみ挙げさせていただきますが、あくまで希望ですので、展開の取捨選択にしても順序にしても、最終的な決定は主様に一任いたします……!
(1)→(2)→(3) の場合
(1)で魔術関連の知識と興味を中途半端に身に付けてしまったために、(2)で人を惑わす種類の超自然的存在と関わり合いを持ってしまって病床に臥す。(3)ではリヴィオ様に教わった知識を活かして、以前より役に立つようになったところをお見せできればと思っております。
(2)→(1)→(3) の場合
(2)で環境の変化による体の不調を来すが、自分に無頓着なため倒れるまで気付かない、もしくは今度こそ追い出されると危惧して頑なに休まない。回復後、失態を取り返そうと(1)では上記の場合より仕事や学習に身が入るものと思います。(3)では上記と同様にそれまで身に付けた知識でお役に立てればと!
簡単にはなりますが、ミシェル側の動きとしては以上のように考えております。(2)は悪夢にうなされた後にホットミルクを飲みながらぽつぽつと言葉を交わすという穏やかな展開も心惹かれるものがありますので、ここは軽めに留めておきたい、またはこの辺でミシェルの背景の一端くらいは語らせておきたいとご判断された場合はそちらもご一考ください! ミシェルの育った孤児院では、孤児は引き取り先があれば奴隷として奉公に出され、ある程度の年齢まで引き取り先が見つからなかった者は奴隷商に売られていた(隠匿されていたが何らかの形でミシェルは知っていた)という設定を考えております。自分だけが引き取り先で不自由なく暮らしていることへの罪悪感から夢見が悪くなることもあるのかな、といった次第です。此方が勝手に考えているだけの設定であり変更可能ですので、ちょっと重い……接しづらい……と感じられた場合は仰ってください。まとまりのない文章になってしまって恐縮ですが、何かご不明な点や気になる点がございましたら遠慮なくご指摘くだされば幸いです! 他、何かご提案したい事柄が出てきた際には都度お伝えさせていただきますね。長文失礼いたしました……!)
……別に、人の死骸で森を悪戯に穢す訳にはいかないだけだ。あくまでも俺の信念や主義の話であって、決してお前の為じゃない。くれぐれも妙な勘違いをするなよ。
(ガタリ、と鳴らした椅子の音に呼応するように、対面にて全く同様の物が追って室内に響く。此処でゆっくり食事を続けていればいいものを、と余程身に染み付いているらしい従属意識に改めて待機を言い付けるべく開きかけた口は、正面からの端的な問い掛けに縫い止められ。交錯する瞳には積もりに積もった疑問の雲が深く覆っているのが伺え、芽吹き掛けの情に一層足を引かれるのを感じては思わず苦虫を噛み潰したように顔を歪め。どうやら子供らしく訪れた僥倖を諸手で受容するには、今は無き強固な拘束具が未だ心を阻むらしい。しかしながら、そんな彼の心を解きほぐす適切な言葉に見当も付かなければ、長期に渡り暖かな交歓を積み重ねるような予定もない。嘆息と共に一瞬伏せられた吊り目が明確な不快の形を象ってそう広くもない机上へ軽く上体を乗り出すや否や、目前の薄い胸板へ鋭利な切っ先が如く人差し指を突き刺して。外向けの堅苦しくも高圧的な口調を努めて維持しつつ、随分と過剰な否定文を連ねた後、元の鋭い造形と地へ響くような声音を持って凄みだけは伴った恫喝という力技によりその奴隷根性を僅かなり拭おうと。子供相手にお世辞にも適切とは言い難い、善意をひた隠す余り拙さを極めたような対話術はともかく。もしもそれで相手が素直に口を閉ざすようならば、ふんとふてぶてしくも少しの安堵と共に鼻を鳴らした後に指先を収め、暫しの待機を言い付けて部屋を出て行くだろうか)
かと言って、変に衰弱したガキにうろつかれるのも甚だ目障りだ。そう長期でもないにしろ、此処にいる間は自らの身分も忘れ、精々健やかに過ごして俺の手を無用に煩わせないようにするんだな。
(ひえ……いつもいつもご寛容なお言葉を誠にありがとうございます……! こちらこそ奴隷として達観していながらも時折子供らしい面の覗くような大変可愛らしいミシェル様にお会い出来るのが毎度楽しみで楽しみで、どうか今後ともよろしくお願いいたします! また、展開案につきましてもお気に召していただけたようで安心いたしました。その上非常に魅力的なご提案までいただきまして、本当にありがとうございます……! どちらの順序にも心惹かれましたが、今回はお言葉に甘えて(2)→(1)→(3)で進行させていただければと思います。気疲れや疲労が色濃いということであれば、提供は魔法での強引な治療より純粋な休養を勧めますので、魔力の暴走や反発等までは起こらず、ミシェル様の魔力量の本格的な発覚諸々は後の(1)の流れでという風に持って行けるかなと。当方も悪夢後のホットミルク展開でミシェル様と過去話等の語らいを持つというイベントはとても惹かれるものがございますので、もちろん話の流れにもよるかとは思うのですが、いっそ(2)の看病中、ほぼ体調面については治りかけ位の辺りで、その展開をどうにか組み込めないかと愚考いたしましたが、如何でしょうか? ミシェル様の過去設定に関しましては不憫可愛くてもう最高です……(萌死)以外の言葉はございませんので、率直なご意見の方お聞かせ願えればと思います。元々雑食ですし、魅力溢れるミシェル様相手であれば本当に何でも美味しくいただけますので、どうか伸び伸びとロールを回してやってくださいませ……!)
(予想外の怒気と共に胸元へと人差し指が突き立てられれば、今まで一文字に引き結んでいた唇をぽかんと薄く開いて呆気に取られ。起き抜けに喉元へ杖を突き付けられた朝方を彷彿とさせるも、先刻と違うのは主人の意識が明瞭であることと、それが自らの発言によって引き起こされたのだということ。一体何が逆鱗に触れたのかも判然としないまま、唸るような低い声で凄まれればその内容を吟味する暇もなく神妙な面持ちで頷き。元より反抗する意思もなければ反抗できる立場でもないが、頷いた後にその恫喝にも似た口述をなぞれば、自身に恩恵こそあれ一つの損害も苦もない内容に更に混乱は深まるばかりで。しかしながらこれ以上の問答は主人を刺激しかねないとの防衛本能が働くと、不可解には一度蓋をして〝身分も忘れ〟〝健やかに過ごして〟〝手を無用に煩わせない〟と愚直に反芻し。それに則した具体的な身の振り方は追々考えるとして、今はこの場を収めることが先決。とはいえ、相手の心情を汲み取る技量も宥める言葉も持たない自身に残された選択肢は黙して成り行きに身を任せることのみで、絵本を読み聞かせられる幼子が物語の行く末を固唾を呑んで見守るように、主人の顔を微かな表情の変化すらも見逃さぬよう注視して)
(/展開の流れ、ミシェルの背景設定ともにご検討・ご承諾くださりありがとうございます……! 苦手要素等が含まれていないようで安心いたしました。いつも温かく受け止めてくださるおかげで、些末なことでも臆せずご提案させていただいております! また悪夢後のホットミルク展開を(2)の後半に差し込むという進行についても大賛成です。むしろそんなに欲張ってしまって良いんですか……?というくらいの気持ちですので、折を見てそちらに移行させていただきますね……! 少し話は変わりますが、展開は(2)からとして、場面転換後の初回はどちらから始めましょうか? ミシェルが体調を崩すということで此方から始めた方がスムーズに進むのなら此方から、状況設定等を主様に整えていただけるのならご厚意に甘えたく存じますが、現時点で何かイメージされているものがあればお聞かせ願えますと幸いです……!)
……すぐに戻る。此処で大人しく待っていろ。
(此方が分かりやすく正解の筋道を立てれば、その道に沿う聡さと従順さを首肯にて示す相手からようやく威圧的な視線と靴先を扉へと向け。さすが悪戯に子供を萎縮させるような趣味などなく快いものでもないが、此方が無償で差し出すものに妙な期待と好感を返されるよりはマシ、という人嫌いを相当に拗らせた偏屈振り。元より仮初の怒気とはいえど、少なくとも退室するまでは貼り付けた表側の情感をそのままに、振り返る事無く居丈高に命を放ち扉の方へ──と、ノブを回し、開いた隙間から入れ違うようにひらめいたものは先程の水精霊。自由気ままというよりかは無軌道かつ無感動に宙を回遊する彼らとの再びの邂逅自体は偶然で片付けられるとして、その行き先が先刻と変わらず背後の少年へ一直線である事には幾許か以上の違和が生じ。その場は素知らぬ顔で部屋の境目を越えるも、今し方閉ざしたばかりの密やかな扉の裏でふと思考を掠めた下らない夢想が足を地に縫い止めて。まるで霞のような儚さでありながら、希少な双眸は本来不可視の存在たる精霊を捉え、また意思なき彼らも無意識下で少年に惹かれる……などと、奇異な縁により偶然拾ったに過ぎない凡庸な筈の奴隷の子供に対し、思わず夢見がちな運命論者の如き印象を抱いてしまった己を小さく嘲笑った後、今度こそ迷いのない足取りで廊下を進んでゆき)
っは、……御伽噺じゃあるまいに。
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クソ、また空振りか……。
(一体もう幾度目だろうか、青空より舞い戻った紙鳥達が元の羊皮紙を形成し直した先の、汚れ一つ無い白地の面に辟易と息を吐くのは。まぁ、当日己が参加したものは元より所謂闇寄りのオークション。競売品の高額さとその違法性故に顧客管理は厳重、その上あの魔鏡に手を出せる程の懐の厚さならまず間違いなく盗難と追跡防止の意も含めお抱え魔術師の一人や二人雇用している事だろう。あるいは魔術の心得のある者自体か否かはともかくとして、その痕跡の尽くが紐づく糸の端から潰さに抹消され、行方はおろか人物像すら曖昧模糊として一切浮かび上がらぬ始末。仮に体良く見付けたとて譲渡の見込みも薄い以上、切り替えて他の研究や魔道具の収集に移るべきと頭では分かっているのだが。こうして逸した機を惜しんでは半ば片手間ながらも追跡を放ち、馴染みの情報屋にまで一報を送ってしまったのは一重に魔道への執念深さゆえ。再び魔力を帯び自室の窓辺から放たれた子鳥の群れを見送った後、例の簡素な朝食を取るついでに同居人の様子を伺うべく黒のローブを翻し。今の時間帯であれば恐らく、魔法薬の原料となる朝露や薬草の採取を終え薬の調合にでも移ったか、あるいはダイニングキッチンで彼自身の朝食作り辺りに勤しんでいる事だろうと大まかに目星を付けて)
(/ホットミルク展開の差し込みについて、快くご了承いただきましてありがとうございます……! また、すみません完全に此方から場面転換後のロルを回すつもりだったもので、以前よりちまちまと作成していたものを一先ず分かりやすさ重視で投下してしまっておりますが、何か加えてほしい要素やご要望があれば直ちに修正いたしますのでどうかお気軽に仰っていただければと……! 場面転換前の〆のロルに関しましては都合上ほぼソロルと化してしまっておりますので、何でしたら此方は返していただかずとも構いません。差し当たり想定していた流れとしては、何らかの作業中のミシェル様と多少日常会話を交わした後、不調により倒れたミシェル様を看護させていただく……といったものを簡単ながら考えております。勿論こちらもただの素案になりますので、貴方様の方で何かご要望等がありましたら、何なりとお聞かせいただけますと幸いです!)
(踏み出しかけた一歩を、此方に背を向けた主人の一声が制す。その背からは分かりやす過ぎる程の怒気が放たれていたが、命令文が『ついてくるな』ではなく『待っていろ』だったせいだろうか、先程のような激しさは感じられず。力が掛かって緊張した爪先の筋肉を、振動すら発生させないようゆっくりと弛緩させてゆく。重心が踵側に戻る頃にはもう部屋の中に主人の姿はなく、入れ替わるように姿を現したのは例の水精霊〝ウンディーネ〟で。怒気の割に静かに閉じられた扉にまさかまた何かが始まるのかとやや身構えるも、精霊にその気は無いらしく、ダイニングには窓の外から聞こえる自然音が満ちるばかり。数秒間の睨み合いにてそれを確認すれば、回遊する精霊を目で追うのもそこそこに、命令通りに主人の戻りを待とうと再度椅子に腰を下ろして。子供が何をするでもなくただ手足を揃えて行儀良く座っている様はある種異様な光景とも言えるが、それを異様だと認識する者はこの場にはいない。故に特段疑問も抱かず規則的な呼吸のみを繰り返していたところ、不意に脳内に主人の声が蘇れば一定のペースを守っていた呼吸がひっそりと一瞬止まり。逡巡するように机の上で視線を左右に揺らした後、椅子から立ち上がる。身分も忘れ、健やかに過ごして、手を無用に煩わせない。先程の言い付けを呪文のように心の中で唱えると、思い出したようにポケットに入れていたチョコレートを口に入れ、食器を片付けるべく流し台へと皿を運び始めて)
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(起床は普段通り夜明け前の時刻だった。日が昇る時刻だって一日でそう変わるものではない。しかし月光をふんだんに浴び、小瓶の中で神秘的な光を湛える朝露の採集量が普段より少ないのは誰の目にも明らかで。ランプに翳した小瓶を暫く眺め、これでは主人に命じられた量に達しているかすら定かではないと忍び寄る焦燥感に耳を澄ませる。現実から逃れるようにちらりと視線を横へ滑らせれば、そちらにはきっちり規定量採集された薬草があるものの、それも採集を終えたのは主人の紙鳥達が戻ってくる頃。能率が落ちていることは言うまでもないが、作業自体は昨日とまるっきり同じだったためにこの現象は不可解以外の何物でもなく。首を捻る間もなく朝食の時刻になれば、元よりさして働いていなかった思考を強制的に遮断してダイニングに移る。主人は角砂糖のような食品で食事を済ませるため、この数週間自分の食事のみを作ってはいるが依然好物という好物はなく、新しく覚えたレシピを数日続けて作るという偏った食生活を送っている。今日も例に漏れず前日と同じフレンチトーストを作ったはずが、気付けばフライパンの中の卵液漬けのパンは所々黒く焦げてしまっていて。数秒静止するものの目立った感情の動きはなく、淡々と皿に移せばダイニングテーブルにそれを並べる。果実のジュースをコップに注いで隣に置いたところで扉が開くと、鈍く反応しては一拍遅れた挨拶を)
……おはようございます、リヴィオ様。
(/いえいえ、余計な心配でしたね……! 場面転換ありがとうございます。修正なんてとんでもないです、いつも返答しやすいロルを回していただいて本当にホスピタリティの塊だなと思っております……。大まかな流れについても把握いたしましたので、そちらを念頭に置きながらロルを書かせていただきますね! ある程度自由に設定を追加してしまっていますが、ちょっと違うかも……という点がございましたら書き直しますので仰ってくださいませ!)
……お早う。……何だ、珍しいな。
(廊下へ仄かに漂うバターの香りに確信を持ち、ダイニングへ繋がる扉を開けば卓上の準備を整える同居人の姿。常よりも少々重たげに雪のような白い頭を持ち上げ、遅れて紡がれた挨拶には平生通り此方も淡々と応じ。元より他者の些細な変化に勘付ける程の対人経験はなく、多少の反応の鈍さなど安易に誤差と判じては相手より先に木椅子へと手を掛けた際。対面の皿へ収まる甘やかな黄金色のトーストに時折蝕む黒ずみを見て取ると、僅かに片眉を持ち上げぽつりと独りごちて。手先が器用という言に偽りなく、覚えの良さも手伝って当初より小器用に作業をこなしていた印象があるだけに、ごく瑣末ながらもこうした単純なミスに触れるのは少々意外なもので。とはいえ、それを言うのであれば早々にレシピ本と共に街から確保した食材のあからさまに偏った増減の方が圧倒的に気掛かりではあるが、厳重な監視を敷くでもなく必要以上の会話もない薄紙のような関係性であまり細々と相手の健康面を気に掛けるのも不自然というもの。良い引き取り先でも見つかれば解決する話だろうと、一先ずはより差し迫る喫緊の問題に関して水を向けるべく徐に口を開く事にして。そう、自然にはこの上なく溢れているものの、他に子供が喜ぶような娯楽の一切に欠けている我が家に、何か一つ二つは暇を潰せる品を買い与えてやるべきではないかという懸念点。ここ一週間程度水面下にて懊悩しながらも上手く切り出せずにした議題を、不機嫌そうに寄せられた眉に一切の緩みも見せぬどころか座した足を尊大げに組みさえすると、ともすれば嫌味や折檻の開始とも取られかねぬ語調のもと迂遠な方向から攻め始めて)
まぁ、それはどうでもいいんだが。……どうだ、そろそろ此処の生活にも慣れたか?
(/と、とんでもございません……! こちらこそいつも気遣いに溢れるお言葉や、繊細で胸を打つ心情描写に容易く浮かぶ情景と非常に巧みなロルをいただくばかりで伏した頭が上がりません……。設定に関しましても、未だに世界観含め大分ふわふわしてしまっておりますので、どうぞ以降もご自由に都合良く描写していただければ幸いです! それでは、場面転換以降もどうぞよろしくお願いいたします。もし何か展開や設定等、ご相談がありましたらお気軽にお呼び出しくださいませ。なお、こちら背後会話は何事もなければお蹴りいただいて大丈夫です)
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