ビギナーさん 2022-08-20 17:26:05 |
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そうかよ。俺こそ簡単には負けねえから。
(ゲームを本気で遊び、次こそは勝つと意地を張っている相手は実に可愛げがあり、そして見ていて飽きない奴という印象を受ける。永夢に話しかけて取り留めのない話を、と思っていたが当の本人は病院から出て行ってしまう。耳が痛くなりそうな彼女の指摘には「うるせぇ」と一言返し、苛立ちを募らせた態度を取ってしまう。言い分は勿論理解できるが付き合えるものなら、とっくにアプローチしているはずだ。未だ踏み込めずにいるのは、宝生永夢の嗜好に起因するからであり)
大体、相手が男でもいけんのか分かんねぇだろ。
(ニコはそんな態度に不満げな表情で首を傾げながら「?よく分かんないけど、いけるんじゃないの?不安なら直接聞いたらいいじゃん。」といつの間に取り出したか、ゲーム機で遊びながら言葉を返す。遊んでいるのはどうやら恋愛ゲームらしく、流れ作業のように好感度アップの選択肢を選んでいきながら大我を横目でちらりと見て)
だと良いけどな。
(そう呟いて青白い光を放つ液晶画面を眺める。恋愛もゲームのように単純であれば尚更良いのだが。現実世界は無数の分岐点が存在し自身の行動によってルートが決定されると思うと、運命とやらも不確定で脆いものだ。しかし想っているだけの現状はどうもむず痒く。白衣の両ポケットに手を突っ込み「……仕事終わったら、飯にでも誘ってみる」と一言残し、患者のデータを提出しにCRへ向かうことにして)
(ニコは「はーい」とゲーム画面から視線を外さないままそう答え、大我を見送る。CRでは宝生永夢を初めとするドクターたちが各々好きなことをしており、その中で携帯を見ていたが、いち早くやって来た相手に気付いたらしい宝生永夢がそちらに駆け寄ってきて笑顔で首を傾げ)
あっ、大我さん!どうかしたんですか?
ちょうど良かった、渡す物がある。
(眩しい笑顔を向けられて無意識に目を見開く。その「良かった」とは探す手間が省けたことではなく、元気な顔が見れて嬉しいことに対する嬉しさを表した言葉であり。〈数十分前には会っているが〉ゲーム病に罹患した経歴を持つ患者のデータが入ったUSBメモリを、先日借りていたノートパソコンに添えて相手に渡し。それから、珍しく「永夢」と名を呼んで言葉足らずな調子で食事に誘い)
後で飯食いに行かねーか?
え、良いんですか?勿論です!
(渡されたノートパソコンとUSBメモリを受け取り、少しの間患者の名前をコピーしていたがぱたんと閉じると掛けられた言葉に嬉しそうな反応を見せる。永夢は「大我さんから誘ってくれるの、珍しいですね?」と不思議そうな表情を浮かべながら他のドクターたちに先に上がることを知らせ、相手の後に着いて)
行くぞ。
(ブレイブであれば気を遣って洒落た店に案内するだろうが、そうはいかず。病院の近くにあるファミレスへ向かうことにして歩を進める。相手の言葉に同意し「まぁ……たまにはいーだろ」と背後を振り向かずに呟いて
そうですね。
(雛鳥のように相手の後を着いて行きながら笑い、ファミレスに入って案内された座席へと腰を下ろす。早速メニュー表に手を伸ばしながら相手の顔を見つめ、「これからも誘ってくれると嬉しいです!僕、もっと大我さんと仲良くなりたいですし!」と屈託のない笑みでそう一言)
迷惑じゃねーなら、こういうのも悪くねえな。
(無邪気な笑顔を浮かべる永夢を前に、相変わらず素直に話せてはいないが珍しく顔が綻んでおり。メニュー表を眺めつつ「お前とは、ゲーム以外にも色々話したいしな」と呟いて)
?僕もです!ニコちゃんのこととか。
(相手の含みを持たせた言い方に少し首を傾げるものの、すぐに何度も頷くと遠慮してかメニュー表からいくつか注文を済ませる。ポケットから取り出したゲーム機にはニコに僅差で勝っていたレースゲームのカセットが挿さっており、ひっそりと練習をしているようで)
ニコ?アイツの人となりは知ってるんじゃねえか。
てめぇの話も聞かせろ。
(その言葉は、もっと永夢について知りたいという本音を明かしていて。料理を待つ間手持ち無沙汰になったので、独り考え事をする。目線がゲーム画面に向いている隙を狙って、相手の端正な顔立ちを頬杖をついて眺めた。素直で、そして何事にも一途に突き進む小児科医は、此方にとっては暗夜の中で煌めく流星のような存在だ。「お前のそういう所が」と口を開くが「患者に好かれるんだろうな」と結局本音を伝えられずにいる。そうだ、永夢は誰に対しても優しく接してくれる。だが、その笑顔は俺だけに向けて欲しいという本心と、会って話せる今の関係でも充分満足だという気持ちが交錯していて)
僕のことですか?
(その言葉にゲーム画面から顔を上げ、檀黎斗に『水晶』と評された透き通る瞳を相手に向けながらまた不思議そうに首を傾げてはゲームを一旦中断する。続けられた言葉に「そうですかね?…僕、小児科だと先生じゃなくてゲームの名人って呼ばれてるらしいんです。でも、大我さんも患者さんに好かれてるじゃないですか。」と笑っては運ばれてきた料理のプレートに目を輝かせ)
まあ、確かに先生にしては頼りねぇ所はあるがな。
(走った拍子に躓き転ぶ姿を思い浮かべてニヤリと笑い、相手の言葉に「好かれている?俺が?」と語尾を伸ばして疑問を呈した。テーブルへ運ばれてきたオムライスをスプーンで掬って口を付ける。衛生省からの認可を得て、本格的にゲーム病患者の診察を受け入れてからは当事者と接する機会も増えた。そのため社交辞令には努めてはいるが、患者からの評判は気に留めてもいなかった。続けて「アイツらは俺をどう思ってるんだろうな」とCRの医師の話題を出し)
はい!皆さんよくニコニコしながら話してくれますよ。
(口の端にハンバーグのソースを付けたまま大きく頷き、明るい表情のまま相手の言葉にそう答える。もぐもぐとリスのように口を動かしながら新たな問いかけには「うーん…飛彩さんは相変わらずですけど、貴利矢さんは何だか柔らかくなった…ような気がします。…あっ!もちろん、僕も大我さんのことちゃんと好きですからね!」と最後に付け加えるように身を乗り出し)
(それを聞いて患者の運命が、そして世界が懸かった過酷なゲームを思い起こす。言われてみれば、数々の共闘=チーム医療を経て、お坊ちゃんや監察医との関係性がいい意味で変わったことを実感する。そしてこいつとの関係も。これまでの俺は周囲に憎まれ口を叩いていたので、内心嫌われているかもしれないと思っていたが、相手の「好き」という言葉に安堵する。ティッシュで口に付いているソースを拭き取り「はしゃぎ過ぎだ」と一言残し。その無愛想な態度には、密かな喜びが垣間見えており)
……そうかよ。嫌われてねぇようだな、俺は。
当たり前ですよ!
(口を拭われるとはっと気付いたような表情の後恥ずかしそうに頭を掻き、頬を赤くするものの再度大きく頷きながらそう言ってみせる。細かく切ったハンバーグの最後の一切れを飲み込むと「そういえば…どうしてご飯に誘ってくれたんですか?」と再度疑問を投げて)
ああ。独りで味気ない飯、よりはお前と食うのも悪くないと思ってな。
勤務先も別々だし、次いつ予定が合うかも分からねーだろ。
(相手の仕草からは子供のようなあどけなさが感じられて、頬が緩みそうになるのを堪えた。相手の質問に対しては、やはり『会いたかったから』と直接的には伝えず歯切れの悪い返事で返す。机上で細長い指を組み、灰色の瞳を据えて「それと俺から1つ、相談だ」と言い出して)
相談?なんですか?
(投げかけた質問の回答へは「確かに…」と小さく呟いて納得したらしい。次いで相手からのどこか切羽詰まっているような言葉にきょとんとしたような表情で首を傾げ、乗り出したままだった身を引っ込めてはじっと相手の瞳を見返して)
誰にも言うなよ。……前から密かに気になっている奴がいる。
(目の前には、好きになってしまった人。好意を伝えるにはどうにも憚られて、間接的に探りを入れるしかない。ばつが悪そうに咳払いをして「要は片想いだ」とだけ呟く。視線を下に向けて空になった料理の皿をぼんやりと眺める。恋愛相談を持ちかけた側が投げやりになってどうする、と内心思いながら)
えっ?大我さんが片想い、ですか?
(発された言葉に驚いたように目を見開き、周りに配慮した抑え気味の声ではあったが思わずそう聞き返してしまうが、見返した相手の顔は俯いていて表情がよく分からなかった。だが自分なりに考えてみて、「う~ん…まずはその相手の気持ちを確認してみる、とか。僕もよく分からないんですけど…」と苦笑交じりにそう答えて)
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