ビギナーさん 2022-08-20 17:26:05 |
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そういうとこが狡いんだよ。もっと好きになりそうだ……
(此方に向けてくる純粋な眼差しは、まるで宝石のような輝きを放っているように思えて直視ができず、鼓動の高鳴りが収まる気配は無かった。暫くの間黙りこくり、そして「永夢」といつものような険しい眼差しで再度名前を呼んでおり)
はい?
(相手に受け入れてもらえたことですっかりいつもの調子を取り戻したらしく、不思議そうな表情で返事を返す。が、相手の表情を見れば若干不安そうな眼差しになり)
駄目だな。お前といるとどうしても、見栄を張ってしまう。
(先程の自分らしくない言動が恥ずかしく、虚栄心が表れたのか睨んでしまった。素直になれず、つい強がってしまう自分が無粋だと思った。遠慮がちに相手の肩に手を乗せて「すまねえ」と呟き、不器用な笑顔を浮かべていて)
…無理しないでくださいね。
(つられるように表情を崩すと首を横に振りながら相手の頭へと手を伸ばし、患者の子供に普段するように軽く頭を撫で)
気持ちいい。
(頭部にふんわりとした感触があった。子供のような扱いを受けるのはやや照れくさかったが、好きな人に頭を撫でられるのが心地よく感じられて、小声で「もっとやれ」と言って目を伏せて促し)
…なんだか、子供みたいです。
(促されるまま相手の頭を遠慮がちに撫でていたが、ふとそう呟くと表情を更に崩して笑う。視線を上げて曇りがちな空を見つめたところでぽつ、と雨粒がひとつ永夢の肌に落ちたのを皮切りに然程激しくはないが、服や肌を濡らすには十分な勢いの雨が降り始めた。「わっ、雨降ってきた…傘、持ってくればよかったなあ。」ともう既に雨に濡れ、ぺしゃんこになった髪の隙間から見える瞳は相変わらず笑っていて)
予報が見事に当たったって訳か。
(頬に水滴がピシャリと跳ねてきたのを感じた瞬間、無数の蜘蛛の糸のような雨脚が走っているのが見えた。「傘、持ってくれば良かった」と呟き、ずぶ濡れになるのもお構いなしな様子であった。前髪が濡れて普段のあどけない雰囲気が雨によってかき消された永夢が、妙に艶っぽく思えて戸惑いつつも、微笑み返していて)
このままだと風邪、引いちゃいますね。
(濡れるのも構わず鉛色の空を見上げてそう言い終わらないうちに、くしゅん、と小さなくしゃみを一つ。二人のいる公園内には幸か不幸か、雨宿りの出来そうな建造物はない。「コンビニでビニール傘でも買って帰りますか?それとも…どこかで雨宿りします?」応急処置で着ていたパーカーのフードを被りつつ、相手を見つめてそんな提案を)
だな、途中で傘を買って帰るか。
(雨がいよいよ本降りになってきて、水分を含んで垂れている前髪を掻き分けた。辺りを見渡すと雨を凌げる場所が見当たらなかったので、相手の提案には快く賛同した。しかし傘を買ってそれぞれが帰宅するとはいえ、体が冷えたまま永夢を帰宅させるのも申し訳ない。自宅にあるシャワー室を貸した方がいいだろうと考えて「その後俺んちに来るか?」と遠慮がちに尋ねて首を傾げ)
いいんですか?
(ふるふると頭を振って大きい雨粒を落としていたが、相手からの提案に目を見開いて首を傾げる。「じゃあ…早く傘買いに行きましょう!お医者さんが風邪引いてちゃあれですしね。」とどことなく楽しげに笑って相手の手を引き、近くに見えたコンビニの明かりを目指して走り出し)
……お、おい。
(フードを被った姿が様になっている永夢をじっと見つめた。相手に手を引かれたと思った途端つられて走り出し、薄暗い空からざあざあと降り頻る雨の中を駆け出した。その瞬間は尊いもので、まるで時間が止まっているかのように此方が錯覚する程で)
は~…
(コンビニの中に入るとぐっしょりと濡れたフードを脱ぎ、「うわ、びしょびしょだ…」と自分の服や髪に手をやってそう呟く。濡れ鼠のような姿でビニール傘を二本、素早く手に取るとついでにお菓子コーナーを回っていくつかのお菓子も追加し、レジまで持っていって代金を払う。レジ袋に入ったお菓子に一瞥をくれ、「これ好きなやつなんです。大我さんにも食べてほしくて」と言い訳がましく苦笑いを浮かべ)
俺の分まで、悪い。…ふーん、こういうの食うんだ。
(すっかり濡れてしまったので、替えのインナーを2人分カゴに入れ会計を済ませてから合流した。俺はというと、ビニール傘を買って貰っただけで嬉しかった。こんな時にあいつの言葉を借りると「心が躍るな」とでも表現できそうだ。レジ袋の口から覗かせているお菓子のパッケージを眺め、好物を知らなかったので新鮮な気持ちを覚えた。永夢を見ているとびしょ濡れになった子犬を連想して、一刻も早く暖めてあげたくなる。店から出て「此処から少しかかるぞ」と声を掛けた後、水溜りを避けながら歩き始めて)
はい!
(相手の言葉に元気よく返事を返し、買ったばかりのビニール傘を差して雨の中を二人で歩き出す。相手の家へ着く頃には、水溜りを避けているとはいえ跳ねた飛沫でスニーカーはしっとりと濡れていた。傘を閉じ、大まかな雨を払い落としてから「えっと…おじゃまします?」とおずおずとした様子を見せ)
ふ、すっかり濡れちまったな。どうぞ。
(永夢の頭をわしゃわしゃと撫でると、無数の水滴が地面に落ちていった。ドアロックを解除し、中に入るように促す。連日は泊まり込みの勤務が続いていたため、実に1週間ぶりの帰宅だった。キッチンやシンクは綺麗な状態を保っており、部屋の中は物が少なく整っていた。靴を脱ぎ捨てて家に上がりバスタオルや着替えを持って来て相手に渡し「先に風呂入ったらどうだ。シャンプーは浴室にあるから、好きに使っていい。で、替えの服は……俺の部屋着しかないが」と少し素っ気無さが抜けた話し方で言い)
あ、じゃあお言葉に甘えて。
(「何から何まですみません…」と苦笑いを浮かべながら渡されたものを受け取り、浴室へ入ると手早くシャワーを浴び、雨でじっとりと濡れた髪をさっと洗い流し、一通り温まると浴室の外に置いておいた相手の服に着替える。少しばかりサイズの違うそれを着ると相手のいる方へ「服、ありがとうございます!」と笑いながら近付き、レジ袋から覗くパーティーサイズのスナック菓子を取り出し)
ん…どういたしまして。
(浴室へ向かう間際控えめに返事をした。まさか家に誘えるとは思わなかったとぼんやりと考えながら、シャワーを浴びて冷え切った体を温める。タオルで湿った髪を拭きながらリビングに戻ると目の前には、だぼっとした服が似合っている永夢。普段の印象とはガラリと変わっているがそれも魅力的に思われて、計らずも「うわ、可愛い」と呟いてしまい、その言葉を誤魔化すように咳払いをして)
…?大我さんもこれ食べます?
(相手の言葉は聞こえなかったらしく、帰ってきた音だけでぼりぼりとスナック菓子を齧りながらあどけない表情で振り向く。封を切り、中身が三分の一ほど減ったスナック菓子の袋を相手の方に向けて差し出し、そう提案して首を傾げては笑って)
ああ、俺にくれ。
(相手の隣に座り、差し出された袋に手を入れてスナック菓子をつまみ上げたのちに口の中へ放り込む。味が気に入ったのか押し黙って次々と食べており、冷静な表情を保ちつつも目は輝いているように見えて)
…何だか人の家でこうするのって、子供の時以来です。
(相手とひたすら黙ってスナック菓子を食べている空気が気まずいのか、しばらくしてそう口を開く。背負っていた小さなリュックサックからかろうじて濡れていなかったゲーム機を思い出したように取り出し、挿さっていたカセットを見ると協力ゲームらしく「一緒にやります?」と提案して)
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