恋情の葬り方。 〆

普段はこんなに聞き分けが良くて優等生なのになァ、どうして恋愛が絡むとあんなに変わっちまうのか。＿＿…此処、左？（　すんなりと聞き入れる彼の様子が恋愛上では通じないことに深い溜息を溢して、車に乗り込み慣れた手付きで発車しては校門手前で方角尋ね　）

別にこのことだって、先生に寄ってくる人がいないなら言い触らしたいよ？俺は先生の特別待遇を受けてるって。でもそんなこと言ったら、自分も送ってほしいって人たちが先生に群がるかも知れないし。そんなのは耐えられないから。──うん、左。（今回のことは聞き分けが言い訳ではなくその後、相手に自分以外の人間が近付く可能性があるからで。本当なら自慢して回りたいくらいだが、相手の迷惑になるのがわかっているからそんなことはせず。運転する相手の横顔を眺め）

そりゃァ困るな、可愛い生徒達からお願いされたら俺も断れねェしな。＿＿…なァ、黒崎。そんなに見られてると運転しづらいんだけど。（　群がる生徒に困惑する自身の姿を想像してしまい苦笑浮かべ、左折した後に隣から痛いほど伝わる視線感じて堪らず片手で遮って　）

だから言わない。先生の車に乗れるのは俺だけでいいから。あ、ごめん。でも見るなって言うのは無理かなぁ。（この特別待遇が自分以外にもされると思うと非常に面白くなくて。反射的に謝るも見るのをやめる気はないようで。）

あのなァ、今回は俺が話を長引かせた所為で遅くなっちまったから送ってるだけで今後はちゃんと残らず帰れよ。＿＿…へェ、これでもまだ見てられる？（　特別待遇もこの一回きりだと念を押し、視線遮っていた掌を退かせば軽い悪戯のつもりで彼の右手をやんわりと握ってみて　）

えー…だって帰るより先生と話してるほうが楽しいし…。──先生から何て珍しい。先生、こんなことされても嬉しいだけなんだけど。（誰もいない家に帰るより好きな相手と話していられるほうがずっと楽しく。右手を握られると一瞬だけ手に視線を移すも、直ぐに嬉しそうに笑いながらまた相手の顔に視線を移し）

それでも駄目なもんは駄目、俺のこと心配させてェの？＿＿…此処なら別に誰からも見られる心配はねェし、まァ黒崎にはあんま効果無いみてェだけど。（　気持ちは分かるが教師の立場において良いよとも言えず、歓喜溢れる表情浮かべる彼を横目で見遣れば此方もつられて口許緩めつつさり気無く指先絡めて恋人繋ぎを　）

心配…させたい訳じゃないけど先生が俺のこと考えてくれるのは嬉しいかな。──本当に珍しいね。真面目な先生がこんなことするの。応えられないっていう割には余計に好きにさせるなんて…先生はずるいね。（心配をさせたい訳ではないものの、心配してくれている間は自分のことを思ってくれていると考えればそれも嬉しく。応えられないと言いながらもこんなことをされては好きが募るだけで。絡められた指先に少し力を込めて）

わざわざ頑張って心配させようとしなくても考えてる、…それだけで十分だろ。＿＿ずるい、か。間違ってはねェな。黒崎が嫌なら離すけどどうする？（　本来なら伝えるべきではないだろうが二人きりの空間だとどうしても制御が出来ず、答えなんて聞かなくても分かっている上で意地の悪い質問飛ばせば態と手の力緩めて　）

先生が俺のこと思ってくれてるならそれで満足…だったんだけどなぁ。俺が先生相手に嫌なんて言わないって知ってる癖に。（憧れている時は少しでも自分のことを考えてくれている程度でも幸せだったのに相手への好きが増す度、だんだんと欲張りになり。力を緩める相手とは逆に握る力を更に強め）

欲張りは嫌われンぞ。…俺が意地悪なのも知ってンだろ、ちゃァんと言葉にして伝えてくんねェなら離す。（　他人事のようにけらり笑って見せ、ここまで来たら繋いでて欲しいの一言が欲しくなり態と手を引くような仕草を　）

俺が欲張りになったのは先生のせいだし。先生は本当にずるいねよね。…１つ確認だけど運転の邪魔にはならない？（相手のせいで欲張りになったのだと告げ。繋いでいてほしいのは決まりきっているが運転の妨げにはならないかと問い掛け）

ええ、俺のせい？なんかしたっけ？…ンは、なんないよ。いつも片手は煙草で塞がってるから大して変わんない。（　恍けるように緩り首傾げ、普段なら煙草片手に運転していることが殆どなためあまり状況は変わらず　）

先生のせいというか先生を好きになったせいというか…。ん、じゃあ繋いでて。本当はずっと繋いでたいけど。（今の現状のような相手の思わせ振りな態度が全く関係ないとは言わないが、相手を好きになったのは自分で。ずっとなんて無理だということはわかっていて。きっと相手が繋いでてくれるのは家に着くまでの僅かな間で、着いたら直ぐに離されるだろうなと思い）

俺を好きになったところでなァんも良いことなんてないのに。＿＿…了解、たった数分しか繋いでやれねェけどその数分がいつ終わるか不安がるよりも堪能した方が俺は有意義だと思うよ。（　教師を好いてしまった彼をとても気の毒だと力無く言葉発して、相手からの要望を合図に強く掌握り返せばそのまま己の膝の上へと持ってきて　）

別に後悔はしてないし。諦めるつもりもないし。──あーあ。先生って本当、学校では一切触れさせてもくれない癖に外ではこんなことやっちゃうんだもんなぁ。（相手が全く応えてくれないことに寂しさはあるも後悔はないし諦める気もないと宣言して。わざとらしく大きな声をだし、手は勿論絡ませたままでシートの背凭れに体を預け）

俺より良いヤツなんて探せば幾らでもいるし、まァその内俺のことも忘れられるよ。…学校じゃ俺らのこと知ってるヤツらばっかだし怖ェの、お前は怖いもの知らずって感じだけど。（　こうして突き放してさえいればいつかは思い出となるだろうがそれすらも何処か寂しく感じてしまい、自分よりも小さく温かい掌を堪能しながら控えめに呟いて　）

そんなのいないよ。いたら先生なんて難易度の高い人、好きにならないって。俺だって皆に先生が好きだって言うのは怖いよ。バレるのが怖いんじゃない、否定されるのが怖い。（先生である相手と生徒で結ばれるなんてとても低い確率で。怖いのは自分が相手を好きだという気持ちごと否定されること。人を好きになっただけなのにそれが教師だというだけで人は否定する生き物で）

はは、それは言えてる。なァ、そんなに必死になって追い掛けるほど俺のどこに惹かれてンの？言わねェ方がいいよ、絶対やめとけって否定されッから。…アレ、これ左右どっち？（　同調するように幾度か頷いた後ふと湧いた疑問真っ直ぐぶつけてみて、心苦しくなり顔顰めるも分かれ道に遭遇したことで普段の様子へ戻り　）

どこって…どこだろう。今は全部好きだけど…気付いたら好きになってたし。分かってるよ、だから言ってないよ。え？ああ、左。（相手に対しての憧れが恋情になったのはもう随分前のことで。追い掛けている内にだんだん好きになって相手に伝えるのを我慢出来なくなって相手を知る度に好きは増えていき。もし自分の好きな相手が相手以外の先生だった場合、それを伝えていたら相手も自分を否定したのかと考えると自分で考えておきながら落ち込み。相手の声に顔を上げて左を指差し）