通りすがりさん 2022-07-18 12:10:27 |
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末大:
期限は定めておらんが、汚したり破くような真似はするでないぞ。
(この階に置いて在るものは閲覧も持ち出しも禁止されていないものばかりであるので、他の書庫や図書館のような注意事項を述べただけで特に然したる反応もなく。好々爺然とした豊かで白い眉を軽く上げ、ゆるりと肩を竦め)
報告書は書く者のクセが強過ぎるのがどうにもというところじゃの。
……大老。
(こちらは静かに相槌を打つのみに留める心算であったが、続くこの部屋の主の言葉に少し眉を潜めてたしなめるように一言告げてから、改めてここの主について補足をするものの僅かばかりどう言ったものか困ったように小さく零すような語調で)
書物や記録のことならば大老が大体知っているから、何か気になることがあったらここに来るといい。……他人に報告記録を読まれるのは、いまだ少々気恥ずかしいものであるな。
(/背後です…!
すみません、ここ数日忙しくて返信が遅くなっていて…まだ忙しくて返信が遅くなりそうなので数日待っていただけると幸いです…本当に申し訳ないです!)
(/こちらも背後のみ失礼いたします。返信、承知いたしました。レスの方は気になさらず、そちらの落ち着いた頃で大丈夫ですのでどうか無理なさらないで下さいね)
はい、決して汚しません…少しクセが強いですね。絵を描いている人もいますし
(注意事項に頷きながら少し笑みを浮かべると、書物を大事そうに抱えながらある一頁を相手に見せるとそのページには妖の姿が描かれた絵を見せて。相手の報告記録も見たいため少し探すと見つけた為その頁を開いて読んでみると中々クセのある相手らしい報告書で思わず少し笑ってしまって)
…普段の右近衛さんらしい報告書ですね
(/やっと落ち着きました!時々返信遅いかもしれませんがこれからもよろしくお願いします。)
あまりに癖の強いものはこちらで代わりに報告している。……貴公の「らしい」がどのような解釈なのか、訊きたい所ではあるな。
(視界の端に自分が書いた報告欄が見えると微かに眉間に皺を寄せて何とも言い難い表情になり、やや潜めた声音で呟き。それも数秒間のこと、他にも気になるところはありそうだがとしながらも表情を改めて末大の方へ向き直って目礼し)
大老、あまり他の者を揶揄うのも程々に。他のことについては、また。
(/返信は余裕のある時に、ゆっくりでも構いませんのでお気になさらずに。こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします)
……どこか読めないところがあるけど、真面目な部分がわかる、と言う意味です。右近衛さんの報告書が今の所分かりやすいと感じる報告書だったので
(相手の言葉に決して悪い意味ではないとも言うわけではないが、読めない部分もあるけど真面目さが分かる相手らしいと称しながら末大さんの方を見てお辞儀をして)
それは……ふふ、貴公は律儀というか、貴公の方が余程真面目のように私は思う。むしろ、正直であると言うべきか。
(些か難しげな顔から緩い瞬きと僅かな間を置いた後に鼻から下、口許や顎に掌を添えて小さな笑みに似た吐息を零して。見た目だけは好々爺の風体でひらひらと手を振って見送る末大から背を向け、書庫兼記録室を出ると再び施設内の案内に戻ってあらかたの説明を終えると振り返り)
あちらは予科士官のための施設となる。今は調練の時間の筈だが……さて、これで一通り話したと思ったが、今までのところで何か説明の分かりにくい所はあっただろうか。
そうでしょうか、ありがとうございます。
(相手の言葉に素直にお礼を言うと、そのまま施設の案内に耳を傾け、説明が終わり特に質問はなかったため首を振って)
いえ、特に質問はないです。ありがとうございます
そうか。ならば、本日はこれで以上だ。私は少々用向きがある故にな。
(答えに一つ頷きを返して口許や顎にあてていた手を下ろして、中から窓越しに外を見遣るとまだ陽も高い時刻で空模様も快く、戻った平坦な表情で淡々と変わりない声色で告げ)
緊急の招集には勿論応じて貰わねばならぬが、外出にも制限はない。自室の整理もあるだろう、好きに過ごすといい。
わかりました、いってらっしゃい
(お辞儀をしてから相手を見送ってから自室の整理を始めて。先ほど借りた資料は机に置き直してから本棚に作者の名前順に並べながらその作業を楽しむように本を直し終えるとベッドに少し寝転んでから目を瞑って)
……少し疲れた、緊急がなければ休憩するか
(昼を過ぎた時間帯、少し早い女学校帰りなのか他愛のないお喋りしながら歩く女生徒、流行りのカフェーや洋食屋を羨ましそうに眺める子供達やその手を引いて急かす洋髪の母親、煙草をふかして路面電車を待つ紳士達など華やかな帝都の街並みを鮮やかな緋色の羽織を打掛のように羽織った鳶色の蓬髪の男が一人、一見は何気なく、しかし油断なく目を配って歩いていて)
さぁて、と。
……買いに行くか
(昼過ぎまで一眠りをすると、時間も丁度良いと思い特に呼び出しもないが大きめの鞄に制服を入れて出掛ける。緑色の袴を着て、目的は特に決まっていないが良い甘味でもあればな…と言った気持ちで歩いていると見覚えのある鳶色の蓬髪の男性が見えて少し首を傾げて)
あれは……
(大通りから少々離れた長屋が集まっている場所、袖と足下の裾を捲って括った居姿でその長屋に住む人々とやれあそこの家が潰れて新しい屋敷が建つだの一度辻待ち自動車に乗ってみたいだのと他愛のない話に華を咲かせている最中に感じた視線にそちらを見返し、す、と切れ長の目を細めた後、にぃ、と奥の犬歯を剥き出しにした笑みを浮かべて声を掛けると、その横を長屋の子供達がはしゃぎながら通り過ぎていき)
おぅ、どうしたんでぇ、そこのニィちゃん。そんなぼーっとしていちゃあ、危ねェぜ?
……あ、いえ…書店を探してたんです
(相手だと確信はあるものの、なんとなくあまり深くツッコむのはやめておこう、そう思って首を振ると少し微笑みながらなんでもない、と言いながらも相手がなぜこんなことをしているのか、これが用なのだろうかと思いながら自分の用事を相手に言ってから聞かないでおこと思ったけれど我慢できずに用事を聞いてみて)
…貴方は?
オレぁ、ただのしがねぇ渡世人さ。
(問い掛けに言葉自体がどうとでも取れる意味だったので着崩した着衣の袂に雑に腕を入れて答えながら、相手の用事に瞳に悪戯な色が浮かび周囲へ向けて声を張り上げると長屋のあちこちから声を聞き付けた現金な子供達が集まって来てあっという間に周りにまとわり付いて来て)
書店、なぁ……おうおう、ガキども!このニィちゃんを書店に連れて行ってやったら、ニィちゃんが菓子を買ってやるってよ!
いえ、書店の場所は知ってるので大丈夫ですよ…お菓子なら…クッキーなら
(まとわりついてくる子供に断り、自分が作ったものだがと思ってしゃがみ、カバンの中から出して渡そうとすると子供は自分の容姿は矢張り外国人っぽっく見えるのか揶揄ってからどこかに去っていき。数回瞬きをしてから慣れたようにため息を吐くと、何かしらの理由があるから変装をしているのだろうと思ったので渡世人と言った相手を見て)
貴方はここで何を?
ほぉ、そりゃあ……ニィちゃん器用なもんだ。よかったな。ほらほら、前見てろ。
(空いている片方の手で顎をさすりつつはしゃいで去って行く子供達を軽くたしなめるように見送ってから、長屋が集まっている周囲を顎で示してから片目を閉じてけろりと何かを装う響きもなくごく自然な伝法な口調で肩を竦め)
まァ、さっきとはちょいと休憩していたが、ここで日銭を稼いでんのさ。先立つモンがねぇと何にもなんねェだろ、ニィちゃんは日雇い探してるってワケじゃねェだろうに。
…うちの家はまだ裕福な方なので、こう言うのはさせてもらって
こんな容姿ですがずっとこの国で育って居ますから日雇いの仕事ではありません
…では、失礼します
(相手の言葉に応えながら、これ以上絡むのは迷惑かもしれないし、取り敢えず書店に行ってみるかと思って相手に一礼をしてから書店の方へ行って。書店で数冊本を買っていると先程の会話を聞いて金は持ってると思ったのか、将又弱そうに見えたのか少し背の高い男達に書店から出ると囲まれて。こう言う時に外人のフリをしても逆上されると思って少し睨み)
……今日は厄介ごとは御免なので退いてもらえますか?
応、そんじゃあな。……、おっと、あのニィちゃんは忘れ物しちまったみてェだな、すまねぇが若ェの何人かで、ちょいと呼びに行ってってくれねェか?
(別段引き留めることもなくあっさりと背を向けながらも視界の端にこの辺りの者ではない男達の姿を確認すると、少し経った後にさも今思い出したかのように声を上げて長屋のそれなりに衆目を引くであろう若い衆に声を掛けて行かせて。自分はあとは特に気にもせずに長屋の老人に頼まれて、快く荷運びを手伝っていき)
忘れ物?…そうですか、ありがとうございます
(睨んだものの、忘れ物をしているということで少し警戒を解き、睨んだことを追加で謝りながら少し足早に相手がいた場所に向かい、少し辺りを見回してから、そういえば何を忘れたのだろうか…と首を傾げて)
おっ、すまねェな。ニィちゃん、さっきここに忘れもんしていったろ。
(暫くしてからぞろぞろと戻って来た若衆に労いの言葉をかけた後、声だけは投げ掛けながらもそちらを見ずに相変わらず荷運びを手伝っているところで。その通行の邪魔にならない所には少しばかり汚れの名残はあるが昨日、相手がひったくりにあったという小物類が入った麻袋が置かれていて)
安心しな、中身は見てねぇよ。
え、ありがとうございます…!
(少し首を傾げながら、邪魔にならない場所に置かれた麻袋を見て嬉しそうなこれまで見せたことがない笑顔を見せながら中を開けて。入れていた小物は全て入っていて、その中でも一つ、何処か安心したように懐中時計を取り出すとそれを身につけてから荷運びを手伝っている相手の邪魔をしないように配慮しながら頭を下げて)
諦めていたので、とても嬉しいです…ありがとうございます
まァ、手許に戻ることがねぇってのも珍しくはねェからな……ああ?何でぃ、ジィさん、オレぁ孫じゃねぇっつってんだろ。
(荷物を確認したらしい相手の方を見ることもわざわざ身体を向けることもなく話半分な相槌の合間にもひたすら頼まれた通りの荷運びをしていきながら、更にその間にも長屋の住人達から次々と掛けられる声に鷹揚に言葉を返していって)
別に大したことじゃねぇから気にすんな。あー、次はどの荷物だって?
……何かお礼をしたいのですが、だめでしょうか…お手伝いとか
(こちらを見ず忙しそうに動く相手に自分に出来ることはないかと尋ねて。何もせずにいられる性分では無い上に忙しなく言葉を返している相手の手伝いだけでも出来ればと思いながらも相手が要らないお世話だともいう可能性はあるのであくまで相手が必要だと思ったならと思い提案して)
そんじゃ次に会ったか声掛けた時にでも、手伝ってくれりゃあいいさ。ここ以外にも、色々と何やらかんやらとやってっからよ。
(手や身体は休みなく動きながらも言葉は聞いていて、何のこともなげにそう返して手に持った荷物を長屋の老人に指示されるままに少し高い棚に置いて片付けていき。もうその荷もほとんど数はなく、長屋から顔を出して来た子供達を適度にあしらっていき)
わかりました
(わかった、と言いながらも相手の様子を眺めていたが、そのまま寮に戻って買った本や服などをしまいながら相手がなぜあんなことをしているのだろうかと少し思いながら整理整頓をして)
ここでそのまま居座る迂闊者だったのならば、それはそれで楽であったが……予定通りに明日決行だ。御苦労だった。引き続き、諜報に専念するように。
(すっかり陽も暮れて夜闇が深い時刻になった頃に長屋町から離れ、髪の毛を整え装いも軍服姿に何処かの人気のない通りの更にその内のとある一室に足を踏み入れるとそこには一切の人の気配もなく、物も片付けられた後といった風情に小さく呟いて。暗闇に紛れるようにして微かに滲む気配の方へ言葉遣い自体は昼間の伝法なものではなく、すっかり冷ややかになった平坦な声音で指示を投げると軍靴の音も立てずに踵を翻してその場を去って再び夜の中へ姿を薄めていって)
……袋は買い直そうかな
(翌日、自分の持ち物がまた返ってきたはいいものの、入れるための袋は少し汚れもある為、今度買い直そうと思いながら部屋を出て、朝の鍛錬のために素振りをして)
(翌朝、当然のように寝坊することもなく髪から足指まで隙なく整えた出で立ちで時折擦れ違う者達に軽く挨拶を述べつつ歩いていて。その途中で素振りをしている様子を見掛けると、邪魔にならないよう頃合を見計らってから声を掛け)
大江、朝から精が出るようで何よりだ。
おはようございます、日々の鍛錬が必要かと思うので
(剣を収めると、一礼してから今日は何か任務があるのだろうか、と相手の服装を見ながら少し乱れた自分の髪を撫でて整えると尋ねて)
本日は、任務あるのでしょうか
日々のたゆまぬ研鑽は大切な事だ。無理のなき程度に励むといい。
(こちらも浅く礼を返して変わらぬ声音で告げると、そのまま続けてあえて直接的な意味では返さずかつ早急さは求めずに場所だけ告げてからこの場を後にし)
暇を持て余すようになるのならば何よりであるが、そうはいかぬは常だ。身形を整えてから、小会議室へ。
把握致しました
(頷くと、少し早足で部屋に戻ると軍服に着替えてもう一度髪を弄って。用意が出来たと思うと刀を帯刀すると思い出すように小会議室へ向かうと、扉をノックしてから入って)
失礼します
既に聞いている者も居るが、改めて説明する。港東区の晴海町、空き倉庫にて今夜、不審な動きをしている集団があるという情報を得た。主導らしき者は異国風の者のようだが現在、各国領事館から確認したところ該当の者は居ない。
(広過ぎないが狭過ぎることもない小会議室、室内には他にも数名の者達が既に中におり入って来た相手の方を一瞥してから軽く頷いたのみで敢えて一人に向けて言葉は発さずに。机の上に広げられた地図と地図上の書き込みや駒の位置などを示し、変わりない声音で淡々と説明をしていくと一旦言葉を切って質問や意見があるかどうかを待ち)
各員の配置はこのようになっている。突入班は通常装備にて対応、各自で任意の装備は構わないが事前に申請を行うこと。後詰めは都度、指示に従うように。
…此処か……
(自分の配置を見ると、空き倉庫の近くで。異国風の首謀者という言葉に少し眉を顰めながら地図の書き込みなどを見て。不審な動きと異国となると密輸なども多そうだと思いながら指示をしている相手の方に目を向けて)
言うまでもないと思うが、主導者らしき者については各領事館から照会の回答を得た時点で「そういうもの」として思え。
(他の者達からのこまごまとした質問事項に都度答えていきながらもその表情に変化はなく、今宵の突入予定時刻を改めて伝え。そこからはまだ時間的にも間が空いているため、説明を聞いた者達はめいめいに退室の挨拶を述べてから小会議室から出ていくのを見送って)
任務開始予定時刻の一時間前に、改めてこの小会議室に集合。それまで各自、準備を整えておくこと。以上だ。
…失礼しました
(退室の挨拶をしながら出て行く各々に続いて退室して。剣の手入れをしながら昨日借りた報告書などを眺めて。人間が首謀したものもあるものの怪異などの事件もあり、柔軟に何方でも対応が大事なのだと心得ながら任務の作戦をもう一度眺めて時間を潰して)
……周辺の人払いは完了、他は……そうか。分かった。
(小会議室への招集時刻よりも早い時間帯に既に入り、他の雑務をこなしつつ何処からか微かに滲む気配の方へ声を投げ掛けるとすぐさまその気配も消え失せて。後から早めに来た者達を出迎えながら、朝のうちにはなかった質問や意見が掛けられるのを答えていき)
……失礼します
(小会議室に、集合するようにと言われた時間の5分前に現れて。もうすでに数名居て5分前ではだめだったのかもと思いながら質問や意見をしている人々の話を聞きながらもう一度作戦の確認をして)
遂行に変更点は無い。改めての確認となるが、各員、質問や意見はあるか。
(招集時刻になるときっちり他の者達も全員揃ったようで、雑務の手を止め周りを見回しながら改めて任務についての説明と現在の状況を伝え。そこから既に聞いている者達も居るが、再度静かな声音で各々の意見や質問、提案を聞く形をとり)
……ありません
(改めて任務の説明を聞くと首を振り、意見や質問を聞きながら特に無いため首を振って。自身の配属場所や一緒に行く相手は把握して居たため少し緊張感を持ちながらも話を聞いて)
(他の者達からもとくに何か話が出ることはなく、小会議室から現場である港東区の空き倉庫街に向かい、すでに陽も暮れて一般人の姿はなく各員が配置につく中でさきんじて向かわせていた斥候班からの報告にいささか険しく眉を立て。後方には変わらず待機を命じつつも、臨戦態勢に移行させてから突入班へ向け)
周囲の人払いはしてあるが、周辺を巻き込むようなことはするな。では総員、戦闘態勢――ならびに、抜刀!
(抜刀の合図に続き、倉庫に突入するとそこには人影はなく警戒心は緩めずにゆっくりと木箱などに近いて不審なものはないか確認をして。火薬の匂いも特にせず他の空き倉庫にいるのだろうかと思いながら木箱の後ろをチェックし全てを確認する中で一つだけ気になった木箱を見つけて)
……すみません、右近衛さんを呼んでもらえますか
……隠し通路だな。下の水路の出入りは押さえてあるが……。
(他の者を数名連れて向かっていくと、目の前にある木箱を見遣った後に何事かある一人に尋ねてからまた視線を戻し。不自然に動かされた形跡のある木箱をそっと退かすとそこには観音開き式の扉があり、やや視線を伏せがちにしてからまた他の者を呼び付けながら扉の継ぎ目を指先で撫で)
大江。ここは見付けた者として、貴公の意見を聞いておこう。――かといって、然れば、と変わる訳でもあるまいが。
開けて見るのがいいとは思いますが何か危ないものかもしれませんので慎重に開けて確認をするのが良いかと思います
(目の前の扉を見ながらつぶやいて。中身がなにか危ない爆発物だった場合など様々考えたため十分慎重にすべきだと言いながらも恐らく相手が別のことを考えいても同じことを考えていても最善策を行使するのだろうな、と思いながら意見をしながら木箱の方も一応確認をして)
無難な判断ではあるな。下に空洞があるようなら、近くに穴を開けてもいいが……皆、少しばかり離れているように。――いけるな?
(少々周りには下がっているように伝えてから扉継ぎ目部分から手を離して、赤毛の青年を呼び付けるとその者が扉の前でしゃがみ込み。青年の身体を核としてそれなりに頑丈そうな目の前の扉が燃え溶けたのも束の間に思い切り弾けて、扉ごとその下から奥を焼いて倉庫内にも熱波が広がっていく中で一切の感慨が籠もらない声音と表情に、冷ややかな眼差しを乗せて)
捕縛と言われておらぬと配慮を考える手間が省ける。各員、作戦は続行中……むしろここから、だ。うたた寝させる気はないぞ。
…あれが……
(初めて目の前で見た異能に少しだけ目を輝かせながらも、作戦を続行すること、手段は問わないと言う相手の声を聞き改めて刀を確認すると扉の向こうに行ける準備を済ませて)
(赤毛の青年を下がらせつつ目の前で煌々と燃え上がって溶けていく隠し扉を逸らさぬまま見つめ、やがて火の勢いが弱まって扉ごと下の空間がひらけたと同時に飛び出して来たものに対して抜き払っていた刀を振るうと幼子程度の大きさで顔面が能面のようなヒトの形をしたイナゴのような形のモノが足下に転がって。それがばたついて再び動き出す前に胴元を刀で突き刺してトドメを刺し、眼下のひらけた空間の先を見ると十匹程度の同じモノが見えて、淡々と指示を飛ばしてから先んじて下に降り)
焼き残し故、刃は通るがそれなりに頑丈だ。心して掛かれ。
(幼子程の大きさに顔面が能面のようなヒトの形をしたイナゴのような形のものを見て驚きながら相手に続いて下に降りて。自身の方に飛んできた先程の異形のものを力を込めて切ると確かに硬く、頭と胴体を切り落とすと動きも止まり、十匹から少しずつ減らしていって。頭の中でまだ全部は読んでいないがこんな形の異形の報告はあったかと考えながらもう一匹切っていると独り言のように呟いて)
……硬いけどなんとかなるか
一匹たりとも外へ出さぬよう。
(炎の名残がまだ存在する中でイナゴに似た異形の焼け焦げた残骸やまだ動いているそれらをすり抜ける傍ら、脚の節を払うことで動きを止めさせながら下に降りた空間の奥中、そこには地面に黒い馬面に片腕と片翼、短いサソリのような尾をした何かが居て。地面から這いずっているようで出てこれないような奇妙な状態を見据えながら、正眼に刀を構え)
……これはまた、言葉に困る恰好で出ているものであるな。
…十匹目
(他のものより先に進んでいたからか逃すことはなく、残りのイナゴの異形を全て仕留めて。相手に続いて奥にいる奇妙なものを見て驚いたようにそれを見つめて。しかし、相手が構えている様子を見て同じように構え直すと観察するようにその異形を見つめ直して)
(足下には既に焼け焦げた何かと成り果てたものが幾つか、それに被さるようにして何かが描かれた跡が見えながら、目の前のものが黒い片翼をはためかせると辺りに黒煙とともに先程のイナゴの焼き残りが覆い被さってくるのを斬り払って。半分ほど出た馬面の口からなにがしかの言語が発せられているが聞く気は一切なく、振るわれるサソリの尾に似ているがやや短いそれを刀で受け止め)
させぬよ。異教はそちらだ。
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