検索 2022-07-09 20:46:55 |
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……もちろんケーキのご用意もありますのでなんなりとお申し付けください
(相手と完璧な連携を取りながらコーヒーを入れ終わりお嬢様へと出す、相手と並んで立ち固唾を飲んでお嬢様がコーヒーを飲むのを見守っていた。コーヒーをいれる間に粗相はなかったはず、準備は完璧であとは相手のコーヒーさえあればこの尖った空気さえ取り払えるはずだ。お嬢様はカップに口をつけて目を開くと待望の一言がこぼされて思わず相手の方を見る、ほぼ同時に相手もこちらを見ていて思わず喜びを滲ませた笑顔を浮かべてしまった。すぐに執事らしい姿勢に戻ると相手がコーヒーの解説を始める、お嬢様はコーヒー好きなようで最初こそ熱心に話を聞いていたが相手の話は全く終わりが見えない。口調こそ執事のものだがいつもの暴走特急が走っているようだ、お嬢様が目を瞬かせたのをみれば慌てて相手の脇腹を軽く小突いて無理やり相手の解説を終わらせる。それをみたお嬢様はクスクスと笑い始めて『本当に二人で一人の執事なのね、貴方達』と楽しげに言われてしまう、だが最初の刺々しい雰囲気はなくなったのなら何よりでこちらも軽く笑みを浮かべて「恐縮です」と答えていた。彼女は笑みのまま花瓶へ手を伸ばすとそこにさされている薔薇へと手を伸ばす、しかし見かねた荒木が素早く近づいてくると『失礼しますお嬢様』と彼女へ声をかけた。自分の客の薔薇は自分が手に入れたいのだろう。荒木は彼女の頬へと手を添え身を寄せると『後で特別なカクテルをご用意しますのでどうぞそれは私に』と吐息がかかる距離まで近づき耳元で囁く、どうやら薔薇を横取りしようという魂胆らしく思わず荒木の方を睨んでしまった。彼女はそれにまた楽しげにくすくす笑うと緩慢な動作で薔薇を取り荒木をじっと見上げる、そして『貴方からの嫉妬って最高』と悪戯に笑えば花びらにひとつキスを落としてから、彼女はこちらへと薔薇を差し出してきた。驚き固まる荒木を他所に『コーヒーの分は二人へ送るわ』と彼女が楽しげに言えば今度は荒木が静かにこちらを睨んでいて)
っ、失礼致しました。…! お嬢様、ありがとうございます。他のコーヒー豆もご用意しておりますので何かありましたらまたお声掛けください。
(熱心に聞いてくれるお嬢様を前にますますテンションは上がり更に続けようとするがその前に脇腹を小突かれてしまう。話が遮られたことに一瞬むっとするもお嬢様が楽しげに笑うのを見れば今が執事であることを思い出して軽く頭を下げる。だがコーヒーの味や二人での流れるような入れ方を認めてくれたようで素っ気ない態度は無くなって何処か満足そうに花瓶の薔薇に手を伸ばしている。だがその間に荒木が割ってきて吐息がかかりそうなほど近付くと美味しい話を囁く。交渉材料をチラつかせる卑怯な手に奪い取られてしまうと焦りが募るが彼女は楽しげにくすくす笑ってから荒木を見上げ、見せつけるようにこちらに薔薇を差し出してきた。彼と同様に一瞬固まるものの相手をちらり見てから代表としてその場に跪いて薔薇を受け取る。荒木推しでも良いと思った物には薔薇を送るタイプなのか、それとも敢えて他者に薔薇を送って嫉妬を煽って更なるサービスを期待する心持ちなのかは分からないが当初狙っていたご主人様の層以外から薔薇が貰えた意味は大きい。同時に油断ならない人物だと認識を改めたのか焦ったようにこちらを睨む荒木に敢えて笑みを向けつつお嬢様にコーヒーのお代わりのアピールをしてから一礼してワゴンと共に一度裏へと戻る。ホールから見えないキッチンの近くまで二人でやってくれば「出だしは思ったより順調だね」と少し小さめな声で相手に現在の成果の話題を振って)
あぁ、助かったぜフィリップ。思ったよりも本来の執事喫茶を求めてるご主人様は多そうだ、このままいきゃ、っ
(荒木が横入りしてお嬢様を直接的に誘惑すればそちらに流れてしまうかと一瞬焦ったが薔薇はこちらへと差し出される。お嬢様が満足のいくコーヒーをいれたのは相棒なのだから相手が受け取るべきだろう、薔薇を受け取る瞬間にこちらも深く頭を下げた。顔を上げるもお嬢様の顔は相変わらず荒木の悔しげな顔を見ていて嫉妬を煽るための餌にされたようにも思うが一本は一本だ。二人でコーヒーをいれたのは軽いパフォーマンスのようにもなって自分達の存在をホール全体にアピール出来たことだろう、こちらを睨む荒木に相手と同じくすました笑みを浮かべながら一旦裏へと引っ込んだ。相手に小さな声で話しかけると頷き応える、新人だからという面も大きいが立て続けに薔薇を貰えるとは順調だ。こちらのスタンスもご主人様に浸透しただろうし荒木派と差別化すればさらに薔薇をいただけそうだ。そう思っていた矢先に上品なホールに似つかわしくない黄色い声が響いてきて言葉が途切れる、ちらりとホールを覗けばちょうど荒木の取り巻きがお嬢様の頬へキスをしているところで「あんなこともすんのかよ」と思わず呟いた。視線を戻せば裏手では先程まで紅茶が並んでいたのに今はカクテル等のアルコールの割合が大きくなっている、イベントはまだ序の口でここからどんどん羽目を外すご主人様が出てくるということだろう、相手に視線を戻せば「こっからが本番みてぇだな。変なことさせられそうになったら呼べよ。さっき助けられた分を返さねぇとな」と口角をあげて)
…なんというか未知の世界だね。…ああ、君も気を付けて。…そろそろ戻ろうか
(二人で裏に引っ込むと一旦執事の役を外して声を掛ける。相手の言う通り丁寧な接客で満足してくれるご主人様が想定よりも多く悪くない状況だ。二人でフォローし合うペアの執事というのも物珍しいようで注目度も高い。このまま行けば一位も夢では無いと思っていると黄色い声が聞こえて一緒にこっそり覗き込む。そこには堂々と頬にキスをする取り巻きの執事の姿があって今まで潜入した違法カジノや組織の取引現場とはまた違った意味での異様な光景に戸惑いの言葉を零す。自分がキスをしたいと思うのは相手だけで仕事とはいえ他の人にしようとは思わないが彼らはそれ以上にこの場で薔薇を貰うことに拘っているのだろう。裏で用意されるものもアルコールが混じっていよいよ本番という気配がすれば相手の言葉に頷く。酔った人間が思ってもみない大胆な行動に出るのは経験済だ。相手にも注意を払うように伝えると用意されたカクテルをトレイに乗せ改めて執事となってホールに戻る。荒木とその取り巻きは変わらずお嬢様と距離感が近く接しているのを横目に目的のお嬢様の元に向かい「こちら眠り姫のカクテルでございます」と言いながら目の前に置く。空になったグラスがある辺り既に飲酒しているようで『ずっとさっきから気になってたんだよね』とご機嫌に言われ、改めて自己紹介の後、先程のコーヒーの技術について積極的に問われると多少フェイクを混ぜながら会話を重ねて)
それは光栄です、フィリップにも伝えておきますよ
(執事がご主人様の肌に触れるのもなかなかだったがまさか頬とはいえキスまでするなんて、あそこまでいけばそれこそホストと変わらないだろう。相手の呟きに頷くが執事喫茶は本来あんな世界ではなくランチタイムまでのような淑やかで上品な空間のはずだ。このまま荒木派に場を支配されるわけにはいかない。相手に「あぁ」と声をかけてからホールへと戻っていった。周囲を見回せばちょうど先程相手が案内していた新規のお嬢様二人のカップが空になっていてテーブルの方へ向かう。ポットから紅茶を注いでいると『さっきのコーヒー凄かったですね!息ぴったり!』と興奮気味に言われ軽く頭を下げて礼を伝える、先程の熱心な視線の中には彼女らのものもあったらしい。自分達もコーヒーを頼もうかとお嬢様が盛り上がっている矢先また黄色い声が上がってそちらを見れば荒木がお嬢様の耳にキスをしているところだった。妙な空気にホールが侵食されるなか視界の端に相手が映る、どうやら他のご主人様と何やら話し込んでいるらしい。相手が他人と話しているだけなのにあの特別な格好を見ているとどうにも胸が苦しくなってしまう。相手に目を奪われそうになっていると『執事喫茶ってあぁいうこともやるんだ』とお嬢様が呟く、その呟きで意識を戻すとお嬢様へと目を向け「あれが彼らのやり方ですが、執事はご主人様に尽くし敬い快適で上質な時間を提供するものだと私は思っております。ですので、もしそちらの方がよろしければ私とフィリップを選んでいただければ誠心誠意心を尽くさせていただきます」と胸に手を当て言えばお嬢様方は目を合わせて笑みを浮かべる。そして一本の薔薇が手に取られると『じゃあお願いします!』とこちらへ差し出された。跪いてそれを受け取ると『こっちはフィリップさんに渡しますね』ともう一本の薔薇が確約されて「恐縮です」とまた礼を述べて)
ええ、私のコーヒーを飲んで下さる方が笑顔になってくれる事が何よりも嬉しくてやり甲斐を感じる一時です。
(熱心にこちらの話を聞くお嬢様に先程のコーヒーに関する知識から自宅での入れ方のコツ、最近飲んだコーヒーの感想などを話す。『本当にコーヒー入れるのが好きなんだ』と言われると普段幸せそうに自分の入れたコーヒーを飲む相手の顔が浮かんで無意識に柔らかい笑みが浮かんでありのままの気持ちを明かした。そうしているとまたホール内に黄色い声が上がってそちらを見ればお嬢様の耳に口付けを落としている。その異様な光景もそうだが手元には貰ったであろう薔薇が3輪程見えて一気に数を重ねる様に胸には焦りが募る。それを横目に見ていたお嬢様が『フィリップ、これ貰える?』とメニューの中でも高級帯のワインを指さす。追加のお酒の注文に内心驚きつつ二つ返事で応えて裏に向かうとワインを持って戻ってくる。付属している薔薇の花を花瓶に挿してからグラスをお嬢様の目の前に置きワインを注ぐ。お嬢様はワインに口を付けて満足そうに微笑むと生けてある薔薇を手に取って『フィリップ』と呼ばれる。薔薇を頂けることを察して跪き、差し出された薔薇に手を伸ばす。だが受け取ろうとした途端薔薇ごとお嬢様の手に包み込まれて思わず顔を上げて彼女の顔を見る。何かあっただろうかと思うも彼女はご機嫌そうな笑顔のまま変わらず握られた手も解かれる様子がない。思わず「…お嬢様?」と問えば『向こうの子もしてたし、これくらいセーフでしょ?』と返される。確かに荒木達の行為に比べれば手を触れ合わせるなどまだ健全な行為だ。それで差をつけられた薔薇が貰えるならば良いのかと迷いを見せながらお嬢様を見つめていて)
……え、…ありがとうございます
(新規のお嬢様の薔薇を貰いブロマイドを渡すと早速袋が開けられる、出てきたのは手を差し伸べる仕草をしている時のもので自分で見るには少々恥ずかしいものだ。だがお嬢様は少々残念そうにしていて『ツーショットあるんですよね?』と聞かれる。戸惑いながらも肯定の返事をすると『えーじゃあもっと薔薇買おっかな…』と呟きがこぼされた。お嬢様が楽しげにブロマイドについて話している間視界の端に相手が入ってそちらへ目を向ける。そこには膝をついて薔薇を受け取る相手がいて、それだけならば良かったのだがご主人様はその手をすぐ離さずに何処かうっとりと相手を見つめている。長い時間あの体勢でいるのだと認識した瞬間に一気に胸に感情が渦巻く、執事が持つべきでない激しい嫉妬の感情で体温さえあがった気がした。意識を完全に相手にもっていかれているとお嬢様から『早く行ってあげた方がいいんじゃないですか?』と声がかかってようやく目線が戻る。くすくす笑う彼女らから『めちゃくちゃ分かりやすい』と言われてしまい困ったように苦笑いすれば礼を言ってその場を離れた。お嬢様に話しかけられたこともあって多少は気持ちが落ち着く、軽く息を吐いてから相手の元へ向かう。未だ熱い視線を向けている彼女と相手が繋がる位置へ手を伸ばすとお嬢様の手を取った。同時に反対の手で相手の手を取るとお嬢様の視界から隠すように背中へと回してそのまま間に割り込むと相手を背後に隠してしまった。お嬢様の視界に入り込んでにこやかに笑うと「そんなにひとりの執事を見つめてちゃ他の執事が嫉妬しますよ。私もそのひとりです」とそれらしいことを言う。嫉妬した対象が違うのは脇に置いておいてそっと手を離すと「私達はお嬢様のお世話をするのが至上の喜び、どうぞその願いを叶えさせてください」と言うもその間も相手の手は背中で握ったままで)
…しょうた、左様。…お嬢様に楽しんでいただけているのであれば私達もご給仕し甲斐があります。先ほどお話させていただいたコーヒーもご用意しているのでまた何時でもお申し付けください
(伸ばした手は捕まえるように握られて離れる気配はない。こうやって触れること自体は確かに先ほど他の人にもしたことで禁止行為ではないのだが手を握られたままアルコールを含んだ熱っぽい目で見られるのはどうしていいか分からない。悪質ではないとはいえお嬢様の体温が自分の手に移り始めると流石に引っ込めようと軽く手を引くが逆に強く握られてしまった。どうするべきかと困っていれば誰かが近づいてくる気配を感じると共に繋がっていた手を取られてお嬢様よりも大きな手に包まれる。顔を向ければ相手の姿があってお嬢様との狭い間に割り込んできて思わぬ行為に反射的に普段通りの名前を呼び掛けて途中で何とか訂正する。相手はまるで存在を隠すように目の前に立って自分の代わりにお嬢様に話をしてくれるがその内容が彼女に嫉妬したと読み取れるものであれば一気に胸の鼓動が跳ねた。もっともらしいことを言いながらこちらから見える表情はにこやかな笑みではあるがその間も二人の僅かな間で手が握られていれば相手の感情が伝わってくるようだ。感謝の気持ちと申し訳なさを込めてぎゅっと手を握り返しながらお嬢様の様子を後ろから伺えば拍子抜けといった言葉が良く似合うように固まっていて更に相手が言葉を続ければ『すみません、調子に乗っちゃって』と手を引っ込めた。何とか分かって貰う事が出来れば相手の手をぎゅっと最後に握ってから離して相手の隣に立つ。今ので嫌な思いをしてしまわぬように言葉を続けつつあくまで執事喫茶の執事とお嬢様であることをアピールすると「お嬢様の気持ちありがとうございます」と薔薇を貰ったことを感謝してブロマイドを渡すと相手に目配せしてからテーブル離れ)
……っ、…ご希望であれば私達がコーヒーをいれますので
(相手をお嬢様から隠してしまいその間もずっと手を握っているのは気が付かないままお嬢様の手を離せばその手は引っ込められる、どうやら事を荒立てずに済みそうだ。安堵していると不意に背後で手を強く握りかえされてそこでようやく相手と手を繋ぎっぱなしであるのに気がついた。目の前のお嬢様からは見えないだろうが周囲の、特に先程の二人のお嬢様には見えていたのではないだろうかと思えば動揺して目が泳ぐ、その間に手は離れて相手が隣へ移動しフォローをいれるがその間も気が気ではなくなんとか一言付け加えるのが精一杯だった。相手が無事に薔薇を貰えたのを確認してチラリと見やればちょうど目が合ってまた心臓が跳ねる、軽く息を吐いて気持ちを整えたところでベルが鳴ってそちらへと目を向けた。今の騒動の間にホールのご主人様は明らかに増えていて目を瞬かせる、呼ばれたのも後から来たご主人様のようだ。彼女らのテーブルに荒木派の執事は近づいていない、というよりお互い牽制しているような雰囲気だ。テーブルへ近づくとオーダーだったようで「お帰りなさいませ、何にされますか?」と会話を交えながら話していれば『君達が清美さんイチオシの執事かぁ』と言われてまた目を瞬かせる。「清美様って…」と心当たりのある方をみれば彼女、ランチタイムにもいたお嬢様がこちらに手を振っていた。どうやら彼女は夏目さんを長い間懇意にしているらしく夏目を推している人達との繋がりも多いらしい。今日彼が欠席だからと来ないご主人様が多かったようなのだが自分達が荒木派と真正面から対立するのを見て夏目派のご主人様に声を掛けてくれたらしい。「心強い援軍ですね」と口角をあげれば『執事喫茶らしいことしてくれるなら応援しなきゃね』と薔薇を差し出され膝をつけば有難くその一輪をいただいて)
お嬢様方の期待に応えられるように務めさせていただきます。
(こっそりと繋いでいた手を握り返すと露骨に相手の目が泳ぐのが分かった。どうやら無自覚だったらしい。先程の宣言通り相手に助けて貰った所でまたホールにベルが鳴る。目を向ければ複数人のご主人様のようで今度は相手と共にテーブルに近付く。その中にはランチタイムの時のお嬢様が居て会話の内容から状況が掴めてくる。イベントが月に一回の開催であり店の目玉に近いものであればその成果は今後の執事喫茶全体に影響する可能性は高い。その為昼間の様子を見て夏目と同じく荒木派に対抗できる力があると思ってくれたのだろう。ランチタイムの行動が実を結んだことに心が弾むと相手が薔薇を受け取る横で自分も頭を下げ、礼と意気込みを口にする。オーダーを承っていればお嬢様達の対応は相手に任せて一旦裏に向かう、その道中荒木派のテーブルの横を通ると相変わらず距離感近く給仕を続けているようだが先程から付いているお嬢様は変わってないように見える。薔薇をくれる人に一点集中という作戦かもしれないがやはり執事喫茶のコンセプトから離れている。横を通る際にジロっと睨まれたが気にもせず裏に戻り注文を伝え、用意されたワゴンをテーブルに運ぶ。ワゴンの上にはコーヒーを淹れる為の一式と数種類のケーキが乗っていて好きな物を二つ選んでもらうスタイルだ。相手とお嬢様の元に戻ってくると「お好きなものを左にお申し付けください」と役割分担を決め、傍らでコーヒーを淹れる準備をして)
フィリップのいれるコーヒーは私も自信を持ってオススメさせていただいております。こちらのコーヒーに合わせるならミルフィーユかチーズケーキがオススメですがお嬢様のお好きなものを選ぶのが一番です
(心強い援軍を得たならばやることは変わらない、オーダーにコーヒーが含まれていればまた二人で一人の執事の出番だ。相手が裏へ行っている間に二人が今日だけの特別な出勤であくまでも執事らしく接客するスタンスであるのを説明すればお嬢様方からの反応はなかなか好感触なものだった。別のテーブルからは時折黄色い声が相変わらず上がるがそちらのテーブルとはまた一線を画す優雅な雰囲気をこちらは保っている。お嬢様方が努めて上品さを保ってくれているおかげだろう、こちらもやりやすい限りだ。相手がコーヒーのセットを持ってくれば役割分担が決められてコーヒーを相手に任せてこちらはお嬢様と会話しながらケーキを給仕していく。その間にもさりげなく道具を片付けたりコーヒーがいれ終わりそうなタイミングとカップを用意したりと二人で流れるように阿吽の呼吸でコーヒーセットの準備を進めていく。すると相手が最初についていた新規のお嬢様達のテーブルの二人がまたじっとこちらを見ていたようで『私やっぱりツーショット欲しいから薔薇渡す!』と宣言するのが聞こえた。それを聞きつけた接客中のお嬢様方も『ツーショットなんて珍しいものがあるの?』とこちらへ目を向ける。コーヒーを入れられたカップをお嬢様の元に置きながら「私達はひとりでは未熟の臨時執事ですので、本日は二人で一人の執事としてお仕えさせていただいております」と相手の言葉を借りて返事をすれば『確かにこれを見せられたらツーショットが欲しくなるわね』とお嬢様方は頷きあって、給仕が終わったタイミングで先程の注文分の薔薇全て、相手とこちらにそれぞれ二本ずつが一気に差し出されて)
お嬢様の為に特別なコーヒーをご用意致しました、是非お召し上がりください。 …良いのですか?
(相手の説明のおかげでテーブルには優雅で温かな空気が満ちていて早速役割分担で給仕を始める。相手がお嬢様の希望を聞いてケーキを皿に乗せていくがその間もコーヒーが淹れやすいように道具の位置を変えてくれたり用意してくれるおかげで集中が出来る。丁寧に抽出している間ツーショットの話題がお嬢様の間で広がり、相手が二人で一人の執事だと口にすれば口角が上がった。自分がカップに綺麗な色に仕上がったコーヒーを注ぎ、相手がお嬢様の前に運ぶと簡単に道具を纏めてからその横に並ぶ。すっかり普段は撮られないツーショットがブロマイドの当たりのような役割になっていることに照れ臭さを覚えるが二人のコンビを認めてくれてると思えば悪くない。柔らかな笑みと共にコーヒーを勧めるとお嬢様からはそれぞれ二本ずつ薔薇が差し出されて目を瞬かせる。思わず薔薇とお嬢様を交互に見るが『良いのよ、とても良い物を見せてくれた気持ちだから』と言われると相手の方をちらり顔を合わせてから「ありがとうございます、とても嬉しいです。」と言って薔薇を受け取った。お返しにブロマイドをそれぞれ渡せばツーショットが入っていて喜ぶお嬢様や自分と相手の物が一枚ずつあって満足するお嬢様も居てその様子を少し照れくさい気持ちもありながら見守っていた。その反応やブロマイドの内容がきっかけになったのか給仕が終われば直ぐに違うところからベルが鳴るようになり、オーダーされた物を運ぶと薔薇を送られる事が続いて)
(/お話の途中失礼します。執事を堪能しているところですがこちらはある程度やりたい事が出来ましたので探偵様の方もやり残しが無ければ営業終了近くに飛ばしそうかと思うのですがいかがでしょうか。勿論他にやりたい事があればそちらを行ってからで全然構いませんのでお好きに進めて貰えたらと思います…!)
ありがとうございます、お嬢様。お嬢様の想いが籠ったこの一輪、大切にさせていただきます
(一気に二人で四本の薔薇を差し出されれば互いに目を合わせて薔薇を受け取る、先程荒木が大量に薔薇を貰っていたが自分達もそれに匹敵するほどの量を貰えている。薔薇は随時回収されていくため総合数は分からないがおそらく薔薇の数は僅差のはずだ。相手に続いて礼を言って開封されていくブロマイドにはやはり気恥しい思いをしながら見守った後、またそれぞれ別のテーブルへと呼ばれて執事としてご主人様に仕えていく。最初の目論見通り夏目派と新規層を上手く取り込めていてホールで薔薇が飛び交う頻度は高くなっていったが二人できっちり数を稼いでいた。またベルが鳴って顔をあげれば一番奥のテーブルのご主人様が呼んでいてそちらへ対応へ向かう。その間も荒木は相変わらず固定客にベタベタと触っては薔薇を貰っていたが、次にターゲットに定めたのは先程相手の手を握ってきたお嬢様だった。空になった彼女のグラスにワインを注いだあとテーブルの上に置かれた手を握る、そして相手が近くに来たタイミングを見計らって『私は先程の無礼な執事と違ってこの手を決して離しません。お嬢様のお望みを叶えるのが我々執事の役目ですから』と言えばお嬢様はチラリと相手の方を見つつ『そうねぇ…やっぱり私の願いを叶えてくれるのが一番よね』と戸惑いながらも荒木を肯定する。荒木は勝ち誇ったように笑えば『なんなら先程彼に渡した薔薇を私に渡していただいてもいいんですよ?』と薔薇を奪おうとお嬢様を唆し始めて)
(/お世話になっております!荒木との直接対決的なものをやりたいなと思っておりましてもうひとくだりだけお付き合いいただければ幸いです。これが終わればこちらもやりたいことは全部ですので営業終了間近まで飛ばしてしまいましょう!よろしくお願いします/こちら蹴りで大丈夫です!)
……お話の途中に失礼いたします。これは私の意見ではありますが、お嬢様のお願いの全てを叶えることが執事の正しい在り方とは思いません。執事はご主人様にお仕えし、大切だからこそ時には厳しく接しながらこの家の主として誠心誠意支えるのが仕事であり、お嬢様への愛情だと思っております。
(確実に薔薇の本数が増えていくのを感じながらまた別のテーブルに分かれて仕事をこなす。先程声を上げてくれた新規のお嬢様方からも薔薇を頂き初めての紅茶が美味しかったと聞けば口元は緩む。二人の初めてが彩れたのなら何よりだ。有難いことにベルで呼ばれる頻度が多くなり忙しくしていがおおよその給仕の波が収まり、一旦裏に水分補給しに行こうかと考えたタイミングで先程手を掴んでいたお嬢様に荒木がついていることに気付く。勿論執事はどのご主人様にご給仕しても良いことになっている。気にかかるもののそのまま通り過ぎようとしたタイミングであからさまに無礼な執事だと指名されお嬢様の手を握るのを見れば足が止まる。お嬢様からもちらりと視線を向けられ、肯定を示すと好機とばかりに勝ち誇った顔をして新しい薔薇ばかりか先程頂いた薔薇まで奪おうとお嬢様を唆す。これまで睨み合いはあれどお互い不干渉でやってきたが流石にこの執事喫茶のコンセプトから外れた理屈をかざす荒木を見過ごせずに二人の横にやってくれば話に割り込む。そして姿勢を正してお嬢様の方を向けばこの短い間での執事の経験とこれまでからのことを思い出しながら執事の在り方を説く。全てを許し甘やかすことが真にその人を大切に思うことでは無い、相手が当初から口うるさく風呂上がりは髪を拭くことやちゃんとご飯を食べること、夜は基本的には寝ることを注意していたのは自分を嫌っていた訳ではなく大切に思ってのことであることを知っている。その事を語れば荒木は眉を寄せ『仰々しく語っているみたいですがこの程度のお願いを叶えられないなどやはりお嬢様への気持ちが足りないのでは?』と煽ってくる。その言葉に今まで蓄積した物が爆発し、普段止めてくれる相手も傍に居なければあくまで静かな笑みを保ちながら「私と左はこの姿勢でお嬢様方から沢山の薔薇を頂きました。それとも荒木様は普段のご給仕ではお嬢様を満足させられないような腕なのでしょうか?」と真っ向から喧嘩を売り、二人の間だけでなくホール内にピリついて)
……お嬢様、砂糖はお幾つお入れしますか?
(奥のテーブルへとつけば紅茶とケーキの注文を一気に四人分受けて一旦裏へ行き四人分の用意をワゴンに乗せてテーブルへと戻る。サーブを始めたところで荒木が先程相手の手を取っていたお嬢様のそばにいて、さらに近くにいる相手に話しかけているのが見えた。ここからでは遠くその会話の内容は聞こえてこない。さすがにサーブ中に離れるわけにはいかず相手の方を時折確認しながらお嬢様一人ずつにケーキを用意しお茶を注いだカップを配置しながら言葉を交わす時間が続いた。その間に荒木はお嬢様との会話に入ってきた相手を嘲笑するように薄く笑っていたが、相手の煽る言葉にまんまと乗せられると額に青筋が走る。なんとか表情を保ったまま『貴方達二人が執事の何たるかを語るのは勝手ですがそれでお嬢様の願いを潰すなんて言語道断でしょう。それにお言葉ですが私は貴方達以上に薔薇を貰っている。十分お嬢様に満足いただけている証です』と真っ向から相手を睨んで互いの間に火花を散らす。最初こそ荒木に言いくるめられそうになっていたお嬢様だったが相手の言葉にも『そうかもねぇ』なんて呑気に頷いている。その頬は既に赤く染まっていて傍らには二本目のワインボトルが置いてあるあたり相当飲んでいるのだろう、相変わらずワインは高級帯のものだ。荒木と相手が睨み合っているのを交互にみたお嬢様は『そうだわ』と両手をパンと合わせて近くを通っていた執事にグラスをさらに2つ持ってこさせる。そして自らボトルを持つと自分の分と2つ分のグラスにワインを注ぎテーブルの端に置いて『どちらの接し方も好きだけれど、貴方達のどちらが私を満足させられる執事かちゃんと決めましょう。私と一緒にワインを飲んで語らってくれるかしら?私を満足させられたら、そうね…薔薇20本を渡すわ』と条件が提示された。薔薇20本を購入するとなればそれなりの額だがお嬢様にとってはなんて事のないものらしい、さらに薔薇の本数が拮抗している今20本の数は重くこれを手に入れた方が本日のナンバーワンになる。荒木は相手をまた嘲笑ってからグラスに手をかけると『お嬢様が注いでくださったワインを飲まないとは、それこそ不敬ですね』とグラスを持ち上げ一口飲む。頬を赤くさせたままのお嬢様は『ほら貴方も』と急かすような視線を相手に向けて)
20本、…分かりました、誠心誠意お相手させていただきます。
(荒木の給仕の腕を煽れば青筋を立てて苛立ちを顕にする。辛うじて表情は保っているが真っ向からこちらを睨んできて、こちらからも鋭い視線を返す。二人の煽り合いを聞いていたお嬢様は両手を叩くと近くの執事に何かを注文する。運ばれてきたのは二つのワイングラスで、お嬢様自らワインを注ぐ。そしてワインを飲みながらどちらがお嬢様を満足させられるかの勝負を提案され目を瞬かせる。だがそれ以上に満足させられた方には薔薇が20本送られると聞けば今までとは桁違いの本数に思わず声に出てしまった。恐らく今の状況を見るにこの薔薇を頂けた物が一位となるだろう。目の前に置かれたワインはれっきとしたアルコールでこれを飲めば相手に怒られてしまうだろうが依頼の為にも引く訳にはいかない。先に荒木がグラスを持ち煽り言葉とともに一口飲むのを見れば小さく息を吐いてからこの件を受ける意志を示してからグラスを手に取る。そのまま「頂きます」と断ってから一口飲んでみれば口の中に飲み慣れないアルコールの味が広がった。二人が付き合ってくれることになればお嬢様は見るからにご機嫌になって『私、お酒に付き合ってくれる人が好きなの』とワイングラスを傾けている。お嬢様に「お酒が好きなんですか?」と話題を振って会話をするが荒木がワインを飲んでお嬢様が嬉しそうにするのを見ると対抗するように自分もワイングラスを傾け、あっという間に半分ほど無くなるとほんのりアルコールの回りを自覚して)
ッ!!___馬鹿野郎!飲むなって言ってただろ!早く水飲め!
(早く相手の様子を探りたい気持ちと目の前のお嬢様の給仕を疎かにしたくない気持ちとで葛藤しながらサーブを終えればお礼と共に薔薇が差し出される、それを有難く受け取ろうとしたところで相手の姿が視界に入り息を飲んだ。相手はあろうことかワイングラスに口を付けている、どういう経緯であの状況になったかは分からないがあのお嬢様と荒木が共にいるということは勝負事が起こっているのだろう。だがそんな理屈は抜きにして相手が本来口にすべきでないアルコールを飲まされていることに一気に頭に血が上ると薔薇を受け取る前に相手の方へと早足で駆け寄り、途中ご主人様用に用意された水の入ったコップを引っつかむと相手の元へと急ぐ。相手の元にようやくたどり着けばいの一番にグラスを取り上げて怒鳴りながら相手の手に水を押し付ける。執事が怒鳴り声をあげてホール全体が騒然とするがそれよりも相手が酒を飲んでしまった事の方が心配だった。グラスの中身は半分程になっていて戯れでは済まないレベルの量を相手は摂取したことだろう。お嬢様は『あら、お酒とお喋りを楽しんでいたのに』と頬を赤くしながら言う、アルコールで正常な判断が鈍っていたのかもしれないがこんな勝負を用意したことに少々怒りを覚えた。問題は荒木の方だ、『おや、やはりお嬢様が用意したワインが飲めないのですか?』とすました顔で言うが荒木は相手が未成年であるのを知っていたはずだ。荒木は相手が飲めないことを考慮してこの流れを作ったに違いない、怒りを顔に滲ませるとグラスを口につけ思いっきり傾け残っていたワインを一気に飲み干しグラスをテーブルへと置く。相手には絶対に酒を飲ませてはいけない、そんな状態で酒勝負を挑まれているのならば自分が受けるべきだろう。すぐにアルコールが頭に回る心地がするが今はアドレナリンの方が上回っていて視界も思考もはっきりとしている。お嬢様に目を向ければ「申し訳ございませんお嬢様、フィリップは酒を飲めない身でして…よければお酒のお供は私がいたします」と仕切り直す。酒と話ができればいいのかお嬢様は上機嫌なまま空になったグラスにまたワインを注ぐ、にこやかな笑みを向けた後に相手の背中に腕を添えながら「大丈夫か、フィリップ?」と相手の様子を伺って)
あっ!…なんで来たんだい。 っ、翔太郎! …これくらい平気です、左は少々心配性でして、お騒がせして申し訳ございません。お嬢様さえ良ければ左も交えた4人でお話宜しいでしょうか。
(荒木と争うような形でグラスを傾けていれば急に背後から怒鳴り声が聞こえてくる。相手にバレるのは時間の問題だったがあろう事か給仕しているお嬢様を突っ切ってやってきてグラスが奪われると思わず声を上げて手を伸ばしそれを奪い返そうとする。こうなるから黙っていたと言うのに。だがアルコールで妙に乾いた喉は水分を欲していて押し付けられた水を飲むとホールが騒然としていることを含め文句を口にする。心配しなくて良いからと伝える前に相手がグラスのワインを飲んでしまえば執事であることを忘れてその腕を掴んで名前を呼ぶ。相手がお酒に弱いことは十分に知っている。だからこそ最悪自分が潰れても相手が他の給仕を続ければ依頼は達成出来ると思ったのに相手も飲酒してしまったら意味が無い。この後のことを考えてもやはりこのまま相手に勝負の担当を譲る訳にはいかない。そんな抗議の視線も無視され相手はお嬢様に仕切り直しを持ち掛ける。お嬢様は変わらずご機嫌でまたグラスにワインを注ぐのを見れば背中に手を添え様子を伺ってくる相手に問題無いとその目を見ながら返し、姿勢を正すとお嬢様に先程の騒ぎを詫びる。相手の発言を心配性ということにすると改めて四人で酒と話を共にすることを申し出て「荒木様も左様も宜しいですか」とこの場を降りるつもりが無い頑固な意志覗かせて)
こんな状況でお前をほっとけるわけねぇだろ!……それで構いません。我々は二人で一人の執事です。お嬢様がお酒とお喋りをご所望ならば私達二人でお嬢様のお望みを叶えましょう。ご存知の通りフィリップはお嬢様が満足できるお話ができますし、私はフィリップよりもアルコールには耐性がありますので
(相手の元に駆け寄りグラスを奪うと相手は声をあげてそれを奪い返そうとする。だがこれだけは絶対に譲れない、相手は酒を飲んではいけない歳なのだ。ディナータイムになり酔ってしまう客が出るのは想定していたがまさか執事に、よりにもよってまだ成人していない相手に飲ませるなんて。抗議する声を無視してグラスを一気に煽ると腕を掴まれるが今はアルコールに負けている場合ではない、それよりも相手に勝負と称してアルコールを飲ませたこの状況が許せなかった。だがこの場で殴り合いをするのは流石に店に迷惑をかけてしまう、それならばこの勝負を真正面から受けて立つしかない。相手の様子を窺うがそれよりもこの場を離れないことを宣言する様に軽く呆れのため息をつく、だがワインを飲み続けなければならないこの状況で自分がどうなるか分からない以上相棒が隣にいる方が心強いのが本音だ。こちらも一言詫びをいれてから執事の口調へと戻ると相手がこの場に残れるように言うもワインは全て自分が担当するように誘導する。アルコール耐性に関しては相手が『飲んではいけない』なのだからそれよりも飲めるのというのは嘘ではないだろう。荒木も『私も構いませんよ?私はひとりでお嬢様を満足させることが出来ますから』と余裕の表情だ。周囲に3人の執事を侍らせてお嬢様は満足そうに『じゃあ続きを始めましょう』とグラスを差し出してくる、そのグラスにこちらと荒木のグラスが合わさり小気味よい音を立てるとまたグラスの中身を口にする。アルコールがまた体に巡るのを感じながら相手の方に顔を近づけると「お嬢様を満足させるお喋りは任せたぜ、フィリップ」と耳打ちしてまた一口ワインを飲み下して)
……、少しでも異常をきたしたら絶対に止めるし、代わるからね。 それではお嬢様、最近何処かお出かけされましたか?
(こうなった以上相手はテコを使おうとも意志を変えるつもりは無いだろう。ならばこちらは二人でお嬢様の相手をすることをすればそれぞれが同意が得られる。荒木は変わらず余裕そうな顔で煽り言葉を添えるのを忘れない態度に苛立つがその鼻を明かすためにもこの場は勝たなくてはならない。三人でグラスを合わせて相手がワインを口にする為に胸がざわめいて不安と焦りが募る。耳打ちしてきた相手の案が今の状況では最適解であるのは分かるが未だ納得はしてなくてこちらも顔を寄せると真剣な声で顔で釘を刺した。こうなれば出来るだけ最短かつあまりお酒を勧めない形でお嬢様に満足してもらわないとならない。自分だけグラスがないというのも不自然だろうと近くの執事にノンアルコールのドリンクとチェイサーの用意を頼んでからお嬢様に話題を振る。お嬢様はご機嫌なまま『最近は美術館にお人形の展覧会に言ったわ』と返事がされる。思わず先日のメモリの件を思い出して変な反応をしそうになったが堪えて該当する美術館の名前を上げると『そう、そこよ。よく知ってるわね』と褒められる。だが荒木もナンバーワン執事をしているだけあってすぐに『あの美術館は展示スペースが広く見応えがあって私も好きです。どんな人形をご覧になったのですか?』とスムーズに話を繋げている。オーダーしたドリンクとチェイサーがやってきて自分の手元と相手の前を初めとするそれぞれの元に置く。それにお嬢様は礼を言いながら『色々あったわよ、可愛い女の子とか?外の伝統的な人形を模した物とあと風.都.のなんだったかしら、あの店とコラボした人形もあって…』とその店の名前が出てこないのか悩んでいて、風.都のことなら相手が知ってるのではないかと視線向け)
分かってるって。___それでしたらウ,ィ.ン.ド.ス.ケ.ー,ル.ですね。確かあの店がデザインした服と風.都.出身のアーティストが手がけたブローチを着けた特別な一体だったとか
(相手に喋りの方を任せるよう耳打ちすると相手からは真剣な顔で釘を刺されてしまう、了承の返事をするものの相手にこれ以上酒を飲ませることは絶対にさせられない。意地でも最後まで自分がワインを飲まなければと強い決意が漲る。場は仕切り直されて相手から話題か振られるとお嬢様の口から出てきたのは先日の事件にも絡んでいた人形の展覧会で思わず反応しそうになるのをグッと抑えた。お嬢様が飲むスピードにそれとなく合わせてワインを口にしていると展覧会とコラボしていた店名を思い出せない様子で相手から目配せを受けた。愛用のブランドの事ならば知らないわけがない、相手の話を引き継ぐ形で答えると『そうそう、そうだったわ!この街のお店だったわよね』とお嬢様は嬉しそうな笑みを浮かべる。それにこちらも通常時と同じ笑みを浮かべながら「えぇ。ウ.ィ,ン,ド,ス,ケ,ー,ル,はこの街を代表する店です。それにブローチを作ったというアーティストもこの街の出身者でして、かつて彼女がデザインした食器を買ったことがあります。あの人形はいわば風.都.を愛する人間の気持ちが形になったもの、といったところですね」と解説をすれば『左さんは物知りなのねぇ』と好感触な返事が返ってきた。しかしそれに荒木も黙っていない、こちら二人で軽快に話を進めているのが気に食わないのかお嬢様の首元に手をそっと添えると不必要に近づいて『グラスが空になっていますね』と吐息を耳へかけながら囁く。それにお嬢様は顔を赤くして笑みを見せているがまだこっちとの会話の途中だ、邪魔されてはたまらない。きっと荒木は今の話題に一切ついて来られなかったのだろう、荒木に向いた注目を逸らすためお嬢様のグラスにこちらのグラスをまた合わせて高い音を響かせグラスに残っていたワインを一気に飲む、するとお嬢様の目は再びこちらへと向いて「私にもおかわりと…あと先程お話した風.都.出身のアーティストにご興味はありませんか?最近全国的にも注目度があがっていてお嬢様がお気に召す作品もあるはずです」と声をかける。しかし立て続けにワインを一気に煽ったせいか思考が揺らぎ始め耳の端は真っ赤に染まっている。小難しい話となれば上手く話せる自信もなくて今度はこちらから相手へと目配せを送ると話のバトンを渡して)
っ! 生活に根ざした作品をされている方で、丁度荒木様が今付けていらっしゃるラペルピンもその方の作品です。…、凄く精巧かつ温かみのある作品を作るのでお嬢様の雰囲気にもピッタリかと。
(この街のことで相手が知らないことはあまりない。より話題を広げられるであろう相手に目配せすれば思った通りスラスラと答えが告げられる。思い出せない物が分かった事と相手の説明に嬉しそうな笑みを浮かべるお嬢様を見ながらドリンクを口にする。ウ.ィ,ン,ド,ス,ケ,ー,ルの件は知っていたがブローチの件は初耳だ、そのアーティストが誰か分からなかったが食器というワードでピンと来た。和やかな会話を二人がしていると荒木は不自然にお嬢様に近付き、首元に触れて囁く。一旦は荒木に向いた関心を戻すためかグラスを合わせまたその中身を一気に煽る相手を見ればまた言葉にならない声を出て相手を凝視してしまう。明らかに相手のキャパではこの時間で摂取してはいけない量のアルコールだ。相手は話を続けるも既に耳の端が真っ赤になっていてアルコールが回っているのが見て取れる。焦りを覚えながらも目配せを受けると話を引き継いで丁度以前見かけた良い例を見つければ荒木の胸元に輝く華やかなラベルピンがそれであると説明する。本人も知らなかったのか荒木は自らの胸元を見て、お嬢様の視線もそちらに行って興味深く観察している。その間に相手からグラスを強引に取ってしまうと自分のドリンクと入れ替える。液体の色合いは似ている為、お嬢様達を話に集中させていれば直ぐには気付かれないはずだ。入れ替えたワインに口をつけずに酔っているであろう相手を支えるように軽く腰辺りに腕を添えて様子を見つつお嬢様が気に入りそうだと話を続ける。先週辺りに相手が言っていたのを思い出して「来月の初めあたりに開催される展示会にも切子作品の展示と販売をされるようなので興味があれば是非」と情報を補足すれば分かりやすくお嬢様の興味を引いたようで『是非行ってみたいわ。詳しいこと教えてくれる?』と聞かれその展示会の日時や場所、その他の手掛けている作品などで話が弾んで)
っ、……展示会は先程話題に出た人形の展示会が行われた所からすぐそこです。もし休憩を挟まれるならそこから少し南にいったフルーツパーラーが私のオススメですよ
(アルコールと同じくらいにアドレナリンが脳内を回っているおかげでいつもより意識はハッキリとしていて呂律も回っている、しかし先程一気に飲んだ分が回ってきたせいかボロが出てしまう前に相手へと話を振れば荒木がつけているネクタイピンこそがあのアーティストの作品だったようで小さく口角をあげる、さすがの知識と観察眼だ。だがその隙に手元のグラスがすり替えられてしまって思わず相手の方をみた。文句を言いたいところだったがその前に支えるように腰に手が回されてしまえば文句も引っ込んでしまって相手と目を合わせる、短い間だか『絶対に飲むな』と強く視線を送っておいた。その後も風.都.出身アーティストの話は続いて相手に話の主軸を任せながら時折自分の知識で補足を加えて二人とお嬢様で話を続ける、相手が渡してくれたドリンクを飲めばいくらかアルコールの回りも抑えられて相手が支えてくれてるおかげもありふらつかずに話を続けられた。アーティストの話に花を咲かせていたがその間荒木は全く話に入って来れないようでこちらを時折睨んでいた、いよいよ我慢が効かなくなったのか再びお嬢様の頬に手を添えて無理やり視線を奪うと『そろそろ新しいワインが必要ですか?こちらも、』と会話を遮って話しかけ、そのまま顔を近づけて頬へと口付けを落とそうとした。しかしその前にお嬢様が『ちょっと!今二人と話をしているでしょう?!』と声をあげて荒木の手を払う。その瞬間に周囲の時間が止まる、お嬢様は明確に荒木を拒絶して思わず目を瞬かせた。お嬢様自身も自分の言ったことに驚いたようで目を瞬かせたあとクスクスと楽しげに笑い始めると『これじゃあ答えは出たようなものね』と相手と自分とへ目を向ける。荒木は追いすがるようにまたお嬢様に触れようとするがその前に手首を捕まえると「お嬢様の望みと幸せを叶えるのが執事の役目です、お忘れですか?」とすました顔で笑みを浮かべ)
今の時期なら洋梨やミカンが旬でしょうか。…いえ、大したことはしてませんよ。お嬢様に楽しんで頂けることが執事にとって何よりも嬉しいことですから。
(相手を軽く支えたままアーティストの話題で会話を続ける。相手の補足も交えてお嬢様の興味を引ける会話を続けていれば先程から荒木が黙り込んでいることに気付く。目を向けるとこちらをジロっと睨んできて不服そうだ。業を煮やした荒木は頬に手を添えスキンシップとともに強引に話に割り込んで中断させようとするがその直後お嬢様の声と手を払った際の音が響いた。お嬢様自身も驚いたようだがご機嫌に笑ってこちらを向く。関心が向かないどころか拒絶されたことに焦って荒木がお嬢様にすがろうとするが相手が手首を掴んで止め、先程言っていたことと同じ言葉を返せば荒木の顔は絶句して羞恥や怒りなどで真っ赤になっていく。裏返りかけた声で『他のお嬢様にご給仕しなければならないので失礼します』と言って荒木は逃げるように去っていく。その荒木推しのお嬢様も今までのやり取りを見て端の方で少し冷めた目を向けているのだが、どちらにしろ負けを認めたということだろう。その背を見ていればお嬢様が『今まで執事は言うことを聞いて貰う人と思っていたけど、こんなに色々なことを知っていて楽しい会話が出来るなんて思わなかったわ。流石ね』とご機嫌に感想を告げる。謙遜しながら改めて執事の心持ちを伝えると『貴方達のような執事に仕えて貰って良かった』と嬉しい事を言ってくれた。そしてお嬢様が近くの執事を呼び寄せオーダーをし、少し待てば約束通り薔薇の大輪が運ばれてくる。『約束のお礼よ、これでツーショットが当たるかしら』なんて言いながら二人の目の前に差し出され、相手と目を合わせると「ありがとうございます!」と言いながら二人でそれを受け取って)
フィリップの言う通りです、お嬢様がそうやって笑っているなら何よりですよ。____ありがとうございます。きっとお嬢様の望むものがその中にありますよ
(荒木がさらにお嬢様に触れようとしたのを阻止すれば何やら言い訳めいたことを言いながらその場を去っていく、あれは敗走とみていいだろう。先程のお嬢様の声も相まってホール全体の注目がこちらに向いていて新人二人が荒木に勝ったという事実はこの場にいる全員に知れ渡った。勝ち誇った笑みを浮かべているとお嬢様から嬉しい感想が告げられて相手と共に返事をする、やがてお嬢様のもとに約束通り大量の薔薇がやってくると相手と目を合わせた。これも二人がそれぞれの得意分野で力を発揮し連携した結果だろう。まさに二人で一人で勝ち取った薔薇だ。相手と共に礼をいいながら薔薇を受け取るとブロマイドを同じ数だけ渡す、ツーショットが出るのは2分の1の確率だがこのお嬢様なら自分の欲しいものを引き寄せられそうだ。薔薇とブロマイドの交換が終わったところで執事長がホールへと出てきて高らかに手を叩き『ご主人様にお知らせいたします。本日のディナータイムも残り5分となりした。渡し忘れの薔薇は今のうちに執事へとお預け下さいますようお願い申し上げます。』と終了間近のアナウンスがなされた。目の前のお嬢様に礼を言ったあとその場を離れると他のテーブルから相手と自分とに声がかかる。先程のやり取りをみて誰に渡そうかと迷っていた薔薇が次々に二人へと渡されて最後の5分だというのに呼ぶ声が止まらなかった。そうして全ての薔薇がテーブルから無くなると再び執事長が出てきて『今をもちましてディナータイムを終了させていただきます。それでは今宵、ご主人様からいただいた薔薇を誠意を持ってお受け取りすることにいたしましょう』と号令がかかるとホールの前方に執事が集められてずらりと並ぶ形になり)
…すごい数だ。 …皆様ご存知の通り、今日だけのお手伝いでしたがこれだけの気持ちをご主人様から頂き本当に嬉しいです。ご無礼をおかけしたこともあったと思いますがご主人様と素敵な時間を過ごすことが出来、少しでもこのお屋敷で寛いで癒される時間をご提供出来たのなら本望でございます。ありがとうございました。
(お嬢様に感謝を伝えていれば執事長がやってきてディナータイムの終了が近いことを告げる。一礼してからお嬢様の元を去ると他のテーブルから立て続けに声がかかる。今日しか居ない執事に薔薇を送りブロマイドを貰うラストチャンスだということもあって多くのご主人様から薔薇を受け取った。そうして多くのテーブルを回って花瓶から薔薇が無くなったところで再び執事長の号令があって前方に執事達が並び、後方で席に座りながらご主人様がそれを見守る形となる。一人ずつ名前を呼ばれ一歩前に出て綺麗にまとめられた花束を受け取り、ご主人様に感謝を述べるという流れのようだ。そして呼ばれていく度にその花束の薔薇の本数は増えていく。写真を撮ってくれた彼や荒木の取り巻き達も名前を呼ばれ始め、いよいよ自分達と荒木の三人が残る。『次に薔薇を頂いたのは…荒木様』と発表があり大きな花束が運ばれてくる。荒木はそれを礼儀正しい礼とともに受け取っているがその顔には明らかな悔しさが浮かんでいて表情を繕いきれていない。煽ってきた時とは大違いの態度に溜飲が下がるのを感じながら執事長が一呼吸置くと『では今宵最もご主人様から薔薇を頂いた者を紹介させて頂きます。左様、フィリップ様こちらへ』と前に出るように促され相手と目を合わせてから中央に出てくる。運ばれてきたのは綺麗にラッピングされた大輪の薔薇の花束二つで今日集めたその量が可視化されて思わず目を瞬かせて呟きを零した。あの本数だけ自分達の給仕が良かったと思って貰った証拠だと思えば自然と口角が上がって無意識に姿勢を正す。一つでも立派な花束を相手と一緒にそれぞれ受け取るとご主人様達に笑みを浮かべながら改めてお礼を伝える。相手からの言葉も待つと執事長の方から『せっかくですのでご主人様から頂いた薔薇と一緒に記念写真を撮りましょうか』と提案がされてカメラが向けられると花束を持ったまま相手と並んで)
おぉ……。フィリップも言いましたが私達は今夜だけの執事です。この短い時間の間にこんなにもたくさんお嬢様の笑顔を作ることが出来て光栄に思います。至らぬ所もあったかと思いますが皆様が暖かく見守っていただいたおかげで良い時間を過ごすことができました。ありがとうございました
(相手と共に並んで薔薇の花束の授与が始まる、薔薇の数に従って順番に名前が呼ばれていくが自分達よりも先に荒木の名前が呼ばれ悔しさを滲ませて花束を受け取る荒木に小さく笑みを浮かべていた。そしていよいよ自分達が呼ばれると誇らしげな気持ちと共に相手と目を合わせてから前へとでる、それぞれに貰った薔薇が綺麗にラッピングされて手渡されたがなかなかの多さで思わず素で言葉を漏らしてしまった。荒木と自分達二人分での勝負だったはずだが蓋を開けてみれば三人とも薔薇の数はさほど変わらず、二人分となれば荒木に倍近い数薔薇をいただけたことになる。いつもなら探偵としてこの街に笑顔でいて欲しいと願っているが、今日は執事としてこの街の人を笑顔にすることが出来たらしい。それが花束として可視化されるとなんとも気恥ずかしいがそれ以上に嬉しくもあって一本ごとに想いの乗った薔薇を暫し見つめていた。相手が先にお礼の言葉を言い終えるとこちらも執事として最後のお礼を伝えて深々と頭を下げる、二人には派閥関係なくホール全体から拍手が送られてまた相手と共にひとつのことをやり遂げられたのだと実感がわいた。執事長に言われて撮影タイムとなり相手と共に並んで大切に花束を抱えながらレンズの方を見る、カメラを構えるのはもちろんブロマイドを撮ってくれた執事で満面の笑みでシャッターを切ってくれた。彼の依頼も無事達成することができた、これで少しはこの執事喫茶の在り方も変わるだろう。再び執事長から『それでは最後にご主人様のお見送りを』と号令がかかって執事が順にご主人様を引き連れ出口へと移動していく。ホールの方を見れば相手が最初に接客した二人が相手のことをじっと見つめていて「呼ばれてんぞ」と声をかける。彼女らは相手に任せるとして一旦相手から離れると自分は一直線に夏目を推すお嬢様、清美さんのところへと向かう。傍へとやってくればお嬢様は『よくやったわ左』と笑顔で迎えてくれて「お嬢様にあそこまでお膳立てしていただいた以上、勝つ以外選択肢はありませんからね」と気取って答えればお嬢様を出口までエスコートして)
ああ、行ってくる。 お嬢様達の世界が広がる初めの一歩を見守ることが出来て光栄でございます。紅茶もコーヒー同様奥が深い飲み物ですので是非他の紅茶も試してみてください
(見たこともないくらいの大輪の薔薇を抱えながらこれを捧げてくれたご主人様に礼を伝えると続いて相手も感謝を述べる。慣れない事も多かったが荒木のように過剰のサービスをせずとも真摯に執事としてご主人様に向き合うことで満足して貰う事が出来たと少しは証明出来ただろう。相手と共に揃って一礼をすれば拍手を送られて照れ臭くも笑みを零した。相手と並んで今日という日の記念写真を彼に撮って貰い『お二人ともとてもかっこよかったです』と満面の笑みで感想を受けるとこちらも笑みを返した。執事長の号令でご主人様をお見送りの時間となる。相手に促されて視線を向けると紅茶について勧めた二人組のお嬢様がこちらを見ていて頷くとそちらに向かう。『フィリップさんのお勧めしてくれた紅茶美味しかったです』『今日初めて執事喫茶に来ることが出来てラッキーでした』とそれぞれにお褒めの言葉を頂けると姿勢を正してからこちらからも礼を伝える。初めての執事喫茶と紅茶をそれぞれ楽しんでくれたのなら執事をやった甲斐があったというものだろう。その他の紅茶も勧めながら入り口までエスコートすると『またの御帰宅をお待ちしております』と言ってお嬢様達を見送った。他のお嬢様もお出掛けしていく中でホールに目をやろうとすればやけにご機嫌な執事長と目が合ってこちらに近づいてくる。思えば確かに夏目派の執事は休みではあったが人数で言えばこなせないほど人が少なかった訳ではない。執事長は荒木のやり方を黙認しているとのことだったがわざとそのような空気にしたうえで新たな対抗勢力を加えて争わせ、売上を伸ばすと共に執事喫茶の空気感を変えるためにわざわざ部外者である自分達に依頼したのではないかと思えてきた。素に戻した口調で「…何処まで想定していたんだい?」と聞けば『何のことでしょう』と弾んだ口調で返されてこういった人物の方が底が読めないと認識を新たにしていた。だがそれだけ役に立っていたならと始める前に伝えていた通りブロマイド一式と先ほどの記念写真のデータをリクエストすると『勿論お礼は弾ませて頂きます』と快諾がされる。その返事に一安心すれば相手の元に向かって「お疲れ様」と声を掛けて)
……侮れねぇな、あの人
(新規のお嬢様二人から相手に視線が注がれているのをみて相手に声をかけ一旦別れる、相変わらず見慣れない格好で誰かに好意的な目を向けられているのは気持ちが落ち着かないが相手が褒められている声が聞こえてくるとそれはそれで嬉しくてなんとも複雑な感情だ。相手より一足遅れて清美さんを出口まで送り「またのご帰宅をお待ちしております」と定番のセリフでお見送りする。その後数人のお嬢様をお見送りしたが中には荒木達に反対している方もいたようで『執事喫茶って貴方達みたいな執事がいるとこよねって改めて思ったわ』とお褒めの言葉もいただき「恐縮です、お嬢様」と礼を伝えながらまたお出かけを見送った。お嬢様が大方はけたところで相手の方をみれば執事長が相手へと近づいていく、執事長はこの件を黙認してっきり店の雰囲気の流れを変えたことに怒っているのかと思っていたがその顔はにこやかで目を瞬かせる。まるでこうなるのを望んでいたような態度に相手が探りをいれるが答えは返ってこず、引き攣った顔で小さく笑うしかなかった。だがどういう経緯にしろ執事長が満足いく結果を自分達が引き寄せられたのならこの店にとっても良い日になったはずだ。相手が何やら執事長とやり取りするのを横目に片付けを済ませると相手がやって来て声を掛けられる。こちらからも「お疲れ、フィリップ。なかなか長い戦いだったな」と労をねぎらった。ホールの片付けなどまだ済んでいないが執事長から『お二人は先にあがってください。後のことはやっておきますので』と声がかかる。片付けなどは勝手が分からないこともありここはお言葉に甘えて先に着替えさせて貰うことにした。ホールを出て最初に通された控え室へと引き上げてくると既に着替えが用意されている、執事でいるのもこれで終わりのようだ。ジャケットを脱ぎループタイを外してシャツの第一ボタンを外すと一気に呼吸がしやすくなる、その瞬間にプツリと緊張の糸が途切れて「…フィリップ」と覚束無い声で名前を呼ぶとふらりと力無く相手の方へと体が傾いて)
やっと執事の役も終わり、っ!やっぱり無理していただろう
(真意は読めないものの結果的には全て良い方向にまとまったならよしとするべきだろう。片づけをしていた相手に声を掛けると執事長から先に上がっても良いと言われ素直に甘える事とする。単にお手伝いのはずが執事喫茶全体の争いのようなものに巻き込まれて長丁場かつ緊張の抜けない時間だった。控室に戻ってくると着替えなどが一式用意されていて下ろしていた髪を雑に崩して横髪をクリップで簡単に纏めるとジャケットなどの服や装飾を外していく。無意識に姿勢も常に正していたのも崩すとどっと疲れがやってきたがふと左側にいた相手が覚束ない小さな声でこちらの名前を呼んだかと思えば力なく倒れてきて慌ててそれを受け止めて支える。触れる体温は普段より少し高く感じられて緊張が解けたのと同時に疲れとアルコールが一気に来たのだろう。勝負を仕掛けた時に無茶をするなと釘を刺したはずなのに、と小さく息を吐くが相手のおかげでこの結果を得られたのを事実だ。こちらに体重を預けさせるような形で相手を抱き直して楽な体制を取らせながら顔を覗き込むと「お疲れ様。今気分が悪いとかこれが欲しいとかあるかい?」と相手に様子を伺い、その背中を優しく撫でて)
最後まで立ってただろ……、…お前が欲しい
(単なる簡単なお手伝いの依頼だったはずが執事としての立ち居振る舞いを学ぶ所から売上競争に巻き込まれ意地でも最後まで執事として立ちながら相手と共に頂点を掴み取ったわけだが、相手と二人きりの空間になりこれで執事も終わりだと思った瞬間にアルコールを上回っていたアドレナリンも集中力も緊張感も途切れてしまってこの空間で一番頼れる相手の方へと体を預けた。耳の端は未だに真っ赤で体温は高い、相手に体重を預けながら背中に腕を回すと相手から文句が飛んでくるがそれを屁理屈で返していた。顔が覗き込まれて視線を混じえ欲しいものを問われる、いろいろと必要なものはあるはずなのだがすっかりアルコールが思考に侵食してしまってある意味で一番素直な答えを返すとそのまま顔を近づけ唇を奪った。強く唇を押し付けてから顔を離すと望んだものが得られて緩みきった笑みを見せる。だがふと相手がアルコールを飲んでいたことを思い出すと途端に表情を心配そうなものへと変えた。相手の頬に手を添えて瞳を覗き込みながら「お前、あんなにワイン飲んで大丈夫だったか?気分悪くなってねぇか?」と自分が問われるべき質問を相手へとしていて)
…ん、さっきまでの君とは大違いだ。あれくらい何ともないよ、君が心配で酔ってる暇も無かったし。
(促したままに体重を預けられ背中に腕が回される。屁理屈を言う相手を抱きしめながら様子を伺うと率直な答えが返ってきて顔が近付いてくる。そういうことでは無いのだがそれぞれ働いていた分相手が不足しているのはこちらも同じでされるがまま唇を重ねた。特別な温度を感じてから離れると相手は緩んだ笑みを見せる。先程までの執事としてスマートに動いていた姿とのギャップと自分だけが見れる特別感に優越感を覚えてこちらも軽く口元を緩めて感想を告げる。だがそんな顔が心配に変わり、頬に手を添えられると質問をされると目を瞬かせる。あの時ワインを飲んだことを心配しているのだと分かれば問題無いと返す、飲んだ直後はアルコールを感じていたがその後にワインを一気に煽る物だから気が気で無かったと少し眉を寄せながら告げる。今もほんのりとだけその影響を感じるだけであれば相手の赤くなった耳朶に軽く触れながら「僕の方が強いのかもしれないね」と言葉続けて)
だって、もうご主人様に使える執事じゃなくてお前の相棒でいいんだろ?…ん、……飲んだ量が全然違ぇんだからまだ分かんねぇだろ
(執事らしい服をきて格式高い雰囲気の中にいれば自然と背筋も伸びて言葉遣いもそれなりのものになっていた。しかしそんな気を使う必要もない空間になれば思考が回らないのも相まっていつもの探偵を通り越して一切着飾らない左.翔.太.郎にまで一気に針が振れてしまう。特別な柔らかさを感じた後に心配するように相手の瞳をみれば逆に心配されてしまって相手の眉の間が狭まる、だが相手が無事ならばとりあえずはいいだろうと反省のない笑みを浮かべていた。相手は呂律もしっかりしていて抱きつく体は自分のよりも体温が低く心地よい、異常はきたしていないようで安心していると耳朶に指先が触れて擽ったそうに笑みを漏らす。しかし直後酒の強さは自分が上だと言われると負けず嫌いが発動して即座に反論する。以前アルコール入りのチョコレートを食べた時は同じくらいには酔っていたはずだ。ようやく相手はあらゆるご主人様に仕える執事からいつもの相棒で恋人の存在に戻ってこのままくっついていたいのだが早上がりさせてもらったのにいつまでもここにいると不審がられてしまう。不満を隠さない顔で心底残念そうな笑みを浮かべると「いい加減いつもの服に着替えちまうか」と自分のせいで遅延しているにも関わらずため息をついて)
ああ、僕だけの相棒だ。…そうだね、早く帰ろう翔太郎。
(あれだけ色々な人に仕えてそれらしい言葉を紡いでいたが仕事が終わってこうして話していれば自分の元にちゃんと返ってきたようで安心する。執事をしていた時には我慢していた独占欲をチラつかせると熱持った相手の肌を撫でた。あれだけこちらは肝を冷やしたというのに相手からは反省の色は見えないが何事も無かったのならそれで良い。相手に触れ合いながら会話を続けていたがホールの片付けが終われば他の執事もここに来るだろう。今の酔いが回って全体的に緩い相手を他の人には見せたくない。相手の言葉に頷き、二人だけの家に帰ることを宣言すると腕を離して着替えを再開する。かちっとした燕尾服からいつもの服へ着替えると堅苦しい物から解き放たれたようで思わず伸びをした。先に着替えが済むと少々覚束無い仕草の相手を手伝ってネクタイを結び、襟を整えてやる。着替えが済んだ所で控え室にノックがされて返事をする。入ってきたのは執事長で『依頼料とご依頼された物、それと私からのお気持ちを少しだけ準備させていただきました』と高級感のある紙袋が渡される。少々気になる言い回しはあったが感謝の気持ちは伝わってきて素直に少し重みのあるそれを受け取った。『またいつでも御帰宅でも執事としてもお二人をお待ちしております』と笑う執事長に改めて礼を伝えると相手を軽く支えながら執事喫茶を後にして)
あぁ……今日はお前が誰かと話してるとこ散々見せつけられたんだから、早くお前を独り占めにしてぇ
(相手に崩れそうな体を支えられ肌を撫でられると安堵するようにゆっくりと息を吐き出す、今日一日仕事とはいえお嬢様に手を握られたり誰かのために椅子を引いたりエスコートしたり、そうやって他人に使って決して誰かに触れようとしなかった手が今自分に迷いなく伸ばされ触れられていることに言いようのない優越感を感じていた。相手から帰宅の同意を得られれば心のままの言葉が溢れ出して一度ぎゅっと相手を抱きしめてから体離し着替えを再開する。多少ふらつきながらも執事の服を脱いでいきいつもの探偵の格好へと戻っていく、しかしふらつく思考では着替えるのさえ一苦労でシャツのボタンをひとつ止めるのにも随分時間がかかってしまった。ようやく全てのボタンが止まった頃に相手はもう着替えが終わっていて「フィリップ、」と声をかけてネクタイを結んでもらう。相手だけが結ぶのを許された首輪とも称されるそれを結ばれて満足気に笑みを浮かべながら襟を正されるとジャケットを羽織りハットを頭に乗せてようやくいつもの姿へと戻った。着替えが終わったところで執事長が入ってきて慌てて顔を引き締めいつもの探偵の表情を浮かべる。相手には依頼料を含めた紙袋が渡される、その中身は随分と重そうだが執事長に内容を聞くのは野暮というものだろう。こちらからも今日一日世話になった礼を伝えて相手に支えられながら執事喫茶を後にした。そのまま帰路へつくが相手に触れられているのに介助されているような体勢はどうにも物足りなくて「こっちの方がいいだろ」と言いながら支えていた手を無理やり取って手を繋ぐ、ここら辺なら人通りは少なくルールの適用外だ。上機嫌に歩きながらチラリと紙袋の方をみやると「それ何入ってんだ?」と好奇心のままに聞いてみて)
それもそうだね。見てみようか、…さっきの薔薇の花束の一部と依頼料とブロマイドだね。それとこれはあの店で使われていたコーヒー豆で、こっちの箱は何だろうか。
(家に帰ることを促せばその裏に隠した意味も読み取ったようで同じく独占欲を含んだ言葉が告げられ帰り支度を急ぐ。普段ならば子供扱いするなと文句を言われてしまう手伝いも終始ご機嫌に受けいれていてアルコールの効果は抜群のようだ。だがそんな相手も執事長が入ってくれば普段の探偵の姿をするのだから素直に感心していた。紙袋を受け取りそれぞれ礼を伝えて執事喫茶を後にする。ふらつきそうな相手が心配で支えるように道を歩いていたがその手が剥がされて相手の手と繋げられる。一瞬驚いてしまうがこの辺りは人通りは少なく、左に並ぶ相手の横顔がやけに上機嫌に見えるとこちらも表情を緩め指を絡めるようにして繋ぎ直して軽く力を込めた。そうしていると相手に紙袋の中身を問われて自分も気になると手を繋いだまま中身を確認する。まず目に付いたのは先程送られた薔薇の花が数輪の手頃なサイズになった花束で、その横に依頼料の入っているであろう封筒と依頼していたブロマイドの束がある。ここまでは想定内だがその横にあるクラフト袋の印字を確認して先程提供していたコーヒー豆だと分かれば声を弾ませる。だがその隣のネイビーの細長い箱の中身は分からなくてずっしりと重みのあるそれを取り出してみる。だが特に印字がある訳でもなく高級そうな化粧箱とだけ分かると下を支えながら「開けてみてくれ」と相手に促して)
すげぇ……なんか今日一日の事を詰め込んだ中身だな
(フワフワと心地よい気分に揺れながら相手と共に夜の風.都.を歩く、いつかの夜にこんな風に夢か現実かを彷徨いながら相手と楽しい時間を過ごしたことがある気がして気分は更に良い。こちらが繋いだ手が指を絡めるように繋ぎ直されて恋人の繋ぎ方になるとますます気分はあがって鼻歌でも歌い出しそうな勢いだった。その上機嫌のままに紙袋の中身を聞いてみる、こんな時でも手を繋いだまま中身を確認する相手に喜びを感じながら身を乗り出して紙袋の中身を覗き込んだ。そこに入っていたのは依頼料に加えて薔薇の小さな花束とブロマイドとコーヒー豆と何かの化粧箱だ。ブロマイドはどうやら撮ってもらったもの全てが入っているようでなかなかの厚さの束になっている、きっとあの中には好評だったツーショットも入っていることだろう。相手が何やら執事長とやり取りをしていたがどうやらこれの交渉だったらしい。さらにコーヒー豆は二人で一人の実力を見せつけた代物だ、相手がコーヒーについて語っていたのも相まってお土産に入れてくれたのだろう。実際相手は声を弾ませていて自然と口角があがる、これはまた家でコーヒーを飲む時が楽しみだ。そして薔薇は言わずもがな、今日言葉を交わしたご主人様の想いが詰まった薔薇は瑞々しく輝いて二人を讃えているようだ。こうみればそのどれもに思い出があって改めて色々あった濃い一日だったのだと実感する、メイド喫茶のお手伝いもいろいろと大変だったがこちらは店の事情に巻き込まれさらに予想外の依頼となったが同時に最高の結果を相手と共に残すことが出来た。そして最後のひとつ、中身の分からない化粧箱を相手が取り出す。特に何が書いているわけでもなくて不思議そうに眺めていると相手に開けるように促され頷いてから中身が飛び出さないようにゆっくりと蓋を開けて)
これは…あのワインだ。なかなかの高級品のはずだけど執事長の笑みの理由はこれだった訳だね
(相手の酔い具合によってはタクシーで帰るのも考えていたがこうやって歩いて帰るのも悪くない。相手からも上機嫌なのが伝わってきて一緒に気になる紙袋の中身を確認する。仕事中執事長の気配はあまり感じられなかったが自分達の接客の様をちゃんと見ていたラインナップで口角が上がる。色々と大変だった一日だが相手の言う通りこうやって詰め込まれてみると思い出に残る物ばかりだ。となればこの中身が分からない箱もそうなのかと相手に声を箱を開けて貰う。その中にはあのお嬢様と一緒に飲んだワインと同じ物が入っていて目を瞬かせる。確かにこれも思い出の品ではあるが勝負の中で飲む事になったこれを入れるとはあの執事長の性格が伺える。ワインにあまり知識がなくとも見た目と店で提供された値段から高級品であることは伝わってきて執事長の気持ちとはこれだったのだろうか。素直な感想を述べながら必死に止めていた相手とあの時には抱く余裕の無かった好奇心が疼くと「貰ったものは消費しないと悪いと思わないかい?」と目に輝きを乗せながら交渉してみて)
あ……まぁ俺達が勝った要因ではあるな。…、お前まだ酒飲める歳じゃねぇだろ!絶対にダメだ!
(今日の思い出をぎゅっと濃縮したような内容にただただ口角はあがる、流石は相手に敬意を持って尽くす執事の頭を勤めている人だ。最後に残された大きな化粧箱をそっと開けて中身を覗き込むとある意味で思い出深いワインが出てきて思わず微妙な笑みを浮かべてしまった。確かに二人で力を合わせ勝利を決定づけたものではあったがこれのせいで今自分はフラフラになっており相手は不本意ながらもアルコールを飲まされてしまったのだから。だがこれがあの店の高級ワインなのは確かで味も当然良かった、手土産としては最高のものだろう。相手はこのチャンスを逃すまいとワインを飲むようにこちらへと誘いかけてくる、好奇心に輝くその目はいつも通りずっと見つめていたいものだがこればっかりはアルコールで思考がぼやけていても答えば変わらない。すかさずノーを叫んで化粧箱の蓋をしワインを隠してしまう、相手の正確な年齢は分からないが少なくとも今成人していないのは明らかだ。ワインであれば長期で保管しても問題ないのだから「これはお前が大人になった時のお祝いまでお預けだな」と少々揶揄いまじりに言って)
(/お世話になっております!少しご相談なのですが、この後帰宅してからアルコール混じりに今日の振り返りをするお話をこのまま続けるかここで区切って次のお話にいくか少々迷っておりまして…検索様のご希望はいかがでしょう?)
あっ! 今なら行けると思ったのに…。…分かったよ、そういう事にしておこう。
(箱の中身は予想外の物であったが今がチャンスとばかりに相手に好奇心を宿した目を向ける。今の相手はアルコールに酔っていてご機嫌だ。自分のお願いに弱い事と思考が回っていないことに賭けて飲みたいと意志を示したのだが頑固拒否の態度を貫いて箱に蓋をしてしまうと思わず声を上げる。酔っていてもこういうラインはちゃんと守る意志は強いらしい。こうやって毎度のこと取り上げられるからこそ余計気になるのだがこの様子では揺らぐ事は無さそうでむすっと子供っぼく拗ねて呟きを零す。普段は並び立つ相棒であるのにこういう時には子供扱いされてしまう、不満を顕にしていたが大人になったお祝いと聞けば少し揺さぶられる物があってひとまずは頷いておいた。また機会があれば狙えば良いだろう。そんな話をしていれば家の近くまでやってきて再び人通りのある道になる。だがこの手を今更離すのは惜しくて「風が当たると寒い…」と呟きながら風よけにするように相手に肩を寄せくっつくとその間に繋いだ手を隠してしまう。「早く帰ろう、翔太郎」と声をかけるとそのまま早足で歩き始めて)
(/こちらこそお世話になっております。今回の話が色々な人と関わるものだったので二人で過ごす時間が欲しいなと個人的には思っておりまして次が二人の日常の話や甘めな話ならば区切ってそちらに移っても良いですしその他の系統の話がご希望なら帰宅後の会話を楽しんでから次に移りたいなと思うのですが探偵様はいかがでしょうか?前者ならばアイススケートデートや出張の予定から早めに帰ってきた探偵君に検索の夜更かしがバレる話、後者なら赤い刑事君関連の話や喧嘩してギクシャクしてる時の話などが浮かびましたが探偵様のご希望をお聞かせください!)
ったく、油断も隙もねぇな……、…あぁ、早く家に帰ろうぜ
(いくら酒を飲もうとも相手が未成年のうちは飲酒を止める絶対的な自信がある、体に悪影響な上検索して好奇心が暴走すればきっと目も当てられない状況になるだろう。相手はそれこそ子供のように拗ねていてその表情には心揺さぶられるがやはり飲酒を許すことは出来ない。その代わりに大人になった時まで取っておく案を出せば相手はとりあえず納得したようで無事ワインはこのまま保管されることとなった。人通りのある道に出てそろそろ手を離さなければならないかと露骨に暗い顔をするが相手がこちらへとくっついて繋がる手を隠してしまう、これならば周囲に手を繋いでいるとバレることはない。直ぐに表情を明るくさせると二人の間でこっそりと繋がれた手をぎゅっと強く握った。冷たい風に吹かれながら家へとたどり着くと玄関の扉を開けて中へと入る、靴を脱いで寒さから逃げるように相手と手を繋いだままリビングへと駆け込んだ。そのまま後ろへ振り返ると直ぐさま相手を抱きしめる、まだ上着も脱いでいない状態のせいで「なんか、思ったよりあったかくねぇな…」ときちんと相手の体温を感じることができずに眉を下げた。上着を脱げばいいのに今はそれを判断する思考はもはやなくて、ふと良いことを思い出すと互いの頬をぴったりとくっつける。思った通り露出されたそこは最初こそ冷たかったものの相手の体温がじわじわと感じられて「へへ、フィリップあったけぇ…」と幼く笑みを浮かべていて)
(/沢山候補あげていただいてありがとうございます!こちらも二人の甘い時間が欲しいなと思っておりましたので、よければこのまま続けさせていただいてもよろしいでしょうか?その後は騒がしいお話ができればと思っておりましたので、夜更かしがバレる話か喧嘩してギクシャクしているお話ができれば良いなと思っております。ひとまずこのまま続けておきましたので二人きりの時間楽しめれば幸いです/こちら蹴りで大丈夫です!)
ただいま…っ、まあお互いにこれだけ厚着していればそうだろう。ああ、あったかいね…。
(相手と暖を取るフリをしてくっついて繋いだ手を隠すと分かり易く表情は明るいものになって強く握られる。伝わってくる普段よりも高い熱を感じながら早足で帰路を急いだ。家に辿り着くと玄関を開けて帰宅の言葉を口にしながら中に入る。手を引かれるままリビングに入り、ひとまず紙袋を床に置いた所で振り返った相手に直ぐさま抱きしめられる。一瞬驚くものの相手の酔った時の癖を思い出してこちらからも受け止めるように腕を回すが不満気な呟きが聞こえてくると思わずツッコミを零す。触れ合いたいのなら一旦腕を解いて上着を脱ぐべきなのだが相手は寧ろ頬をくっつけてくる。外気に触れていたそこは冷たかったが段々とお互いの体温を伝えあう。それに対して幸せそうに幼い笑みを浮かべる相手に心掴まれるとこちらからも軽く擦り寄りながら感想を呟く。だが先ほどの執事の面影など微塵もない子供っぽい姿を見れば少し悪戯心が湧いてきて背中に回した手を上着の中に忍ばせてシャツを軽く引っ張ると脇腹の素肌に自らの冷たい手を押し当てて暖を取ろうとして)
あ、そうだな。…ん……?びゃぁっ?!
(今日は相手と一日一緒にいたのに途中からずっと相手以外の所にいて、さらには相手も別の誰かの所にいて、なかなか同じ時を過ごすことが出来なかった。普段ならば依頼だからと割り切れてもアルコールが回ってより気持ちに素直になった頭では相手との時間が過ごせなかった不満の方が前に出てしまって二人きりになり直ぐさま相手を腕の中に捕まえた。なかなか体温が伝わってこずに不満を漏らしたが相手から冷静なツッコミが入りようやくその理由に思い当たる、せっかく相手を抱きしめているのにこれでは全く相手を感じることが出来ていない。頬だけは相手の体温を感じることができて相手が擦り寄ってくると心がフワフワと幸せな気持ちに包まれてますます笑みが深まる、このまま頬を離したくない気持ちもあるがもっと触れ合う為にはまず上着を脱がなければならないだろう。軽く上半身を離したところで相手の手が服の中へと入ってくる、いつもならばその思惑に気づくところだが相手の行動ならば止める理由もなくて目を瞬かせながら見守っていた。次の瞬間に脇腹へ冷たい手が当たって思わず変な声を出して体を跳ねさせてしまう、せっかく相手の体温を堪能していたというのに。してやられたことに対しニヤリとやる気と悪戯心を宿した笑みを浮かべ「やったな?」と子供のように言えば相手に回していた片腕に力を込めて相手を捕まえる。相手が逃げられない状況で堂々と前を開けて上着を引っ張りながら布の下に手を伸ばすと楽しげな笑みを浮かべながら背中へと手を滑り込ませ素肌に直接冷たい手を押し当てた。そのまま腕を交代させるともう片方の手も背中側へと侵入し素肌へと押し付けぎゅっと冷たい手で相手を抱きしめて)
ここなら暖が取れそうだ。 待っ、ひゃっ! っ…つめたい。
(返ってきて早々抱きしめあって体温を共有する。唯一触れている頬を擦り寄らせると相手は嬉しそうに笑ってこちらも暖かい気持ちを抱きながらくっつく。相手も漸く上着のせいで体温が伝わらないことに気付いたようだが離れていく前に手を忍ばせて温かい肌に冷たい手を押し付ける。その瞬間変な声を上げながら予想以上のリアクションを見せる相手にクスクスと笑う。何ともないようにコメントを述べているとこちらを見た相手がニヤリと笑ったかと思えば腕に力を込められて嫌な予感を覚える。だが逃げる前に楽しそうに手が背中に伸ばされて素肌に冷たい物が触れると裏返った声を出しながら体を跳ねさせた。だがそれだけでは留まらずもう片方の手も素肌に触れて抱き締められると冷たさに身が震えた。見事に仕返しされてしまって悔しげに文句を口にするが段々と自らの熱が相手に移ると触れる冷たさもマシになってくる。こちらも服の下に腕を回して緩く抱きしめていたが相手の服から執事喫茶の中で着いたであろう見知らぬ匂いを僅かに感じるとそれを早く除きたくなって「今日は疲れたし先にお風呂に入らないかい?」と提案して)
へへ、俺はあったかい。…そうだな、早くお前ともっとくっついて俺だけのにしたい
(冷たい不意打ちを食らった仕返しに相手を腕の中に捕まえて冷たい手を押し当てると相手の体が跳ねるのが分かる、自分のしたことで相手が反応するのが今日不足した分構ってくれているようで妙に嬉しくて上機嫌に強く抱きしめてしまう。文句混じりの言葉も受けるが悪戯心を滲ませながら自分は大丈夫だと子供っぽいことを口にする、しかし相手の不満気な顔をそのままにしておくわけには行かなくて慰めるように軽く口付けを送った。相手も服の下に潜り込ませた手を滑らせ背中側に回していて素肌同士が触れ合う心地に浸っていると風呂に入るよう促される。このまま相手の素肌の温かさと触り心地に浸っていたいところだがまだ上着も脱いでいないこの状況ではこれ以上相手に近づくことはできない。ここは一旦我慢してあとで存分に楽しむ方がいいだろう。相変わらず口からは脳を介さない言葉が出てきてしまう、依頼とはいえずっと誰かに相手を取られていた反動が出てしまっているのだろう。早く相手とくっつきたい衝動が襲いきていても立ってもいられなくなれば相手にまた軽く口付けを送って「先入ってくる」と声をかけると名残惜しくも腕を解く、だがその分手早く上着類を脱いだ後駆け足で風呂場へと直行して)
ん、行ってらっしゃい。
(相手はこちらの反応を見て楽しそうに笑ってやはり全体的に幼い。機嫌を取るようにされる口付けも愛おしくてさらに距離を詰めるようにぎゅっと相手を抱きしめた。だがそれだけでは足りなくて相手に風呂に入るように促すとまたもや素直な言葉が告げられて鼓動が跳ねた。自らもそうしたいと言う我儘が形となるのを感じながら相手の軽い口付けを受けると目を細めて微笑み、慌ただしく上着を脱いで風呂場に直行する相手を見送った。相手が風呂に入った入っている間、貰った物を片付ける。コーヒー豆とワインはひとまず食品を置いている棚に入れて、薔薇の花束は普段使わないグラスを花瓶代わりにさしてテーブルに飾ってみる。それだけでも部屋は華やかになって暫くは暮らしに彩りを添えてくれそうだ。続いてブロマイドの束を確認してみると撮影した全ての写真と二人で花束を持って写った写真が纏めてある。相手の写真を順番に見ていくとやはり特別な格好にあまり見慣れない格好で写っていてこの写真達を他のお嬢様も持って帰ったと思うと少しだけモヤモヤする。だが最後の一枚は自分達だけのもので自然体で映るその姿に自然と表情が緩むと何処か部屋に飾ろうかと悩みながら相手を待っていて)
あがったぜ、フィリップ。あ、薔薇飾ってくれたのかぁ、ありがとよ。それ俺達の写真だ。………これ配られたんだよな
(浴室に入ると直ぐさまシャワーを浴びて体を洗い始める、ただでさえアルコールが回って覚束無い頭は温かなお湯で体温があがったせいでさらに血の巡りを加速させて頭をぼんやりとさせて行く。暫くシャワーを浴びていることも忘れて突っ立ってしまったが意識が飛ぶ前に相手の元に帰らなければならない事を思い出すとその後はまた手早く体を洗って浴室を出た。いつもの寝間着を着てリビングに戻ってきたものの髪さえ満足に拭けずに頭はまだまだ濡れっぱなしだ。それに気が付かず相手の隣へやってくると相手が袋の中身を整理してくれたことに間延びした口調で礼を言いつつ手元を覗き込む。そこには報酬の一部であるブロマイドがあって二人で薔薇の花束を持って並ぶ構図に上機嫌な顔を浮かべる。しかしその後ろにある写真は全て薔薇のお返しに配られたブロマイド、相手が見慣れない格好で普段見ることができないポーズを取っているのにそれを知るのは自分だけではない。二人で何気なく会話している姿だってツーショットとしてご主人様の間で好評になってしまって自然な笑みさえ誰かに奪われてしまった気分だ。相手は自分のものなのにと思考は加速して相手の首周りに腕を巻き付かせてぎゅっと抱きつく、子供が大切なぬいぐるみを離さないように強く抱きしめると「…あとで俺しか知らないフィリップの顔絶対に見る」と小さくボソリと呟いて)
おかえり、ってびしょびしょじゃないか。…まあ、そうだね。…是非そうしてくれ、
(ブロマイドの中身を確認していると隣にやってきた相手から声が掛かってそちらを向く。紙袋の中身を整理する時間があるほど少し長めに風呂に入っていたようだがぽたぽたとまだ水滴を垂らすのを見れば相手が持ってきたタオルを取って代わりに髪を拭いてやる。その間相手の視線は手元のブロマイドに向く。今日の記念にと執事長にリクエストした物で最後に撮った写真を見た相手の顔に上機嫌な笑みが浮かんだ。だがその後ろの沢山撮ったお互いの写真に移るとその顔は不満げなものになっていき、先程自分が思ったことと同じことが呟かれて曖昧に肯定する。流石に全て揃えた物は数からしても居ないだろうがそれぞれをお嬢様達が持っていることには変わりない。すると首元に自分のモノだと主張するように腕が巻きついて強く抱きしめられながら思わぬ宣言が聞こえてくると何とも子供っぽくも健気な姿に笑みが零れた。相手の前ならばありのままの姿も他の人の前では浮かばない表情も全部見せられる。弾む声と共にわしゃわしゃとまだ濡れた髪を撫でると「僕もお風呂に入ってくるから頑張って起きていてくれ」とお願いして軽く口付けて風呂場に向かう。手早く服を脱ぎ、シャワーで温まりながら髪と体を洗う。特にセットして貰っていた髪はワックスなどが残らないように丁寧に洗い流してスッキリするとお湯を止めて拭きながら浴室を出る。相手の色の寝巻きに着替えて出てくれば「ただいま」と言いながら相手の姿探して)
ん、…へへ、……フィリップともっといたいからちゃんと起きてる。だから早く帰ってこいよ
(ブロマイドを覗き込んでいると相手の手が再びこちらへ伸びてきてきょとんと見つめているとバスタオルで髪を拭かれる、頭を優しく撫でられるような形に幼い笑みを漏らし幸せな心地に浸っていたがブロマイドを通して相手が誰かに取られてしまったことに不満を覚えていた。相手は自分のものだと主張するように腕の中に閉じ込めるとさらりとその行為も後に続いた言葉も肯定されてしまってまた気分は上向く。さらに頭を撫でられると緩みきった笑みを浮かべて相手が出てくるのを待つように言われて笑みのまま頷く。やっと相手と二人きりになって相手を独り占めできるようになったというのに寝てしまうなんて勿体ない、ここからは誰かに相手を取られてしまった分相手を自分の物にしたい。そんな想いさえ口に出しつつ相手を見送った。浮ついた手つきで何となく髪を拭いて最後に残った水気を拭き取るとブロマイドを順に捲っていく、独り占めに出来なかったのは残念だが執事をしている間相手の方を見る隙間はあまりなくこうやって形に残してくれたのはある意味では有難かった。そうしていると浴室から出てくる音が聞こえていつもの寝間着に着替えた相手がリビングにやってくると早々に駆け寄り「おかえり、待ってたぜ」とまた腕の中へと閉じ込める。風呂上がりの体はホカホカと温かくて思わず擦り寄ると先程まで嗅ぎなれないワックスが香っていた髪はすっかりいつもの香りに戻っていて髪に鼻先を埋めてそこの空気を吸い込むと「お揃いのシャンプーの匂いだ」と弾んだ声で言えば心のままに髪と近くにあった耳朶へと口付けを落として)
ふふ、温かいね。…ん、この匂いが一番好きだ。…湯冷めしてしまう前にベットに行こうか
(相手の嬉しい言葉で見送られ相手が寝てしまわない内に髪と体を洗って風呂場を後にする。リビングに出てくれば早速相手が駆け寄ってきてまた腕の中に閉じ込められる。寝巻きはもこもことしているが上着を着ていた時よりも体温を伝えやすくて心地よい温度が体を包む。擦り寄られる擽ったさも相まって穏やかな笑い声を零すとこちらからもぎゅっと相手を抱きしめる。そのまま髪に鼻先を埋められて匂いを嗅がれている気配がすれば少々照れ臭い気持ちになるがお揃いと言われると温かな物で満たされる。この家で暮らすようになってすっかりこのシャンプーの匂いやボディーソープも馴染みの物になって纏う香りの重要な一部となっている。それは相手に関しても同じで髪と耳朶にキスが落とされる感触とその度に感じる香りに柔らかく微笑んで思ったままの言葉を口にする。外から受けた影響もなくなっていつもの自分だけの恋人になった相手をもっと堪能したくなればそれらしい理由を告げくっついたままベットの方に移動する。二人でベットに上がると相手を抱きしめ直してから「前にメイド喫茶の手伝いをした時の君の気持ちが良く分かったよ、君が他の人にちやほやされてるのは何というか…面白くない」とヤキモチを前面に出した感想を述べて)
俺も。俺達だけの匂いだ。……だろ?そりゃお前が褒められるのは嬉しいけど、誰かと楽しそうに話してるのみると、…奪いたくなる
(湯上りの相手を抱きしめると向こうからも腕が回って抱きしめられてそれだけでふわふわとした頭では十分に幸せだ。ようやくお揃いに戻った匂いを思いっきり嗅ぐと相手の口元には微笑みが浮かんでそんな何気ない反応でさえ今は自分だけのものだ。ここからはもう離れる気はおきなくてベットに行こうと誘われると無邪気な笑みと共に頷き体を離さないまま移動する、二人でベットに上がれば相手から直ぐに腕が回されてこちらも相手を抱きしめると体を引き寄せ接触面積を増やした。ようやく相手をこの腕の中に取り戻すと相手から今日の感想が告げられる、前回のメイド喫茶では相手が誰かに仕えているのを見ているだけだったが今回は執事として同じ立場になったわけで、こちらが抱いた感情と似たような言葉を言われるとヤキモチを焼くその姿に胸は擽られる。だがこちらも執事として全く同じ立場だったのだ、ホールでご主人様に仕えている間は薔薇獲得レースも相まってナリを潜めていたが二人きりになって今日のことを振り返ってみるとずっと相手を取られていたのだという気分にますます拍車がかかって嫉妬を通り越した言葉を口にしていた。一度それらしいことをしたのは棚にあげて「そもそもお前に触れていいのは俺だけなのに」と駄々を捏ねるように言うと自分の大切なものだと示すようにまた頬へと口付けて)
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