検索 2022-07-09 20:46:55 |
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…………なんで勝手に出ていった。お前は!敵から狙われててあぶねぇからここから出るなって言ってただろ!!
(帰り道の道中はほとんど記憶がなかった。事件が解決し憂うこともなくなった今、脳内を支配しているのはただ早く相棒をあの事務所に連れて帰らなければというただそれだけで、無言のままバイクを飛ばした。ようやく事務所に到着しハットを脱いで金具にかければ、また相手の手首を無言で掴む。断りのないまま強く引っ張ると地下ガレージへと相手を引っ張り込んだ。相棒の方を振り返らず、ただ地下へ続く道一点を見つめながら薄暗くホワイトボードが並んだ空間へとたどり着いた。そのまま向こう側へ移動すると、再度相棒の腕を強く引っ張りソファの方へと放り投げた。この事務所の深いところ、他人は知らぬ秘密の地下ガレージ。そこに相棒を戻したところでようやく口を開いた。そこからは次々に感情が溢れて、自身のコントロールが効かなくなっていく。ここに戻せた安心感と勝手に出ていった怒り、それを思うまま相手にぶつけていて)
…勝手に約束を破ったのは申し訳ないと思ってる。だが、きみは他の情報収集をしていてわざわざ連絡して店に行ってもらうよりも検索に手詰まっていたぼくが行った方が早いと判断した。それに人の多い所を選んで移動をしたし、万が一のためにス.タッグフォンと発信機も持っていた。結果的にもぼくの行動で事件が早期解決したのは事実だ
(事務所についた途端手首を掴まれ引っ張るような形で地下へ降りていく。何も言わずに手首を掴む手は力が強く痛いくらいだ。更に降りて検索を掛けていた所に帰ってくれば力のまま放り出され勢いのままソファーに倒れそうになるのを意地で耐えて相棒の方に向き直った。そして漸く口を開いたと思えば叩きつけるような勢いで言葉をぶつけられる。ここまで感情的な相棒は初めてで気圧されてしまうが今回の件については此方も黙って従う事が出来ない部分がある。外出禁止という約束を一方的に破ったという点だけを見れば責められるのは仕方なく素直に謝罪の意を示す。だが未だあの時の行動が間違っていたとは現時点でも思っておらずそれに至った経緯を説明する。相棒の懸念材料だって白昼堂々襲うには組織にもリスクの観点から可能性は低いだろうし万が一の時の装備も十分にしたつもりだ。それでもなお外に出ては行けないと主張しそうな相棒の態度にこれまでの不満も重なれば喋る口は止まらずに捲し立てるように自分の理論を並べて説明しながらも今回の事件の結果を持ち出してきて)
でも攫われただろ!今回はあのド.ー.パ.ン.ト.の屋敷に連れていかれたから助かっただけで、もしあのまま組織のところに連れて行かれてたらどうする!事件が早く解決したって、お前がやられたら元も子もねぇ!お前には身を護る手段がねぇんだぞ!
(相棒と目線がかち合う。向こうも今回の行動について譲る気がないらしい。歯をギリと食いしばった。相棒に説教できるほど自分はまだ完全ではないかもしれない。だがあの夜、おやっさんを失ったあの日の自分と相手の行動が重なって、自分を見ているようで苛立っている部分もある。だがそれ以上に、相棒の危機感の薄さに腹がたった。自分がどういう状態に置かれているのか再三言い聞かせているはずなのに、よりにもよって事件の渦中に飛び込むなんて。事件を早く解決するよりも大事なことがあるのに、これで良かったと言い張る相手に怒りは頂点になって、思わず胸ぐらをつかんでしまった。顔を突き合わせ感情をむき出しにする。今や自分は何より相棒が大切だと自覚してしまった、それなのに当の相棒は自分を危険に晒して正当性を主張してくる。湧き上がる怒りは収まらず怒りのまま相手をにらみ続けていて)
アレは被害者の場所を特定する為の作戦だ。組織にしたって彼らが求めているのはぼくの頭の知識だ、易々と危害は与えられないだろうしきみが助けてくれるだろう? …うるさいよ。 それにきみだってガラスに生身で突っ込んでこんな怪我をしている。ハードボイルドか何か知らないが毎回無茶をして怪我してきたり自分の身を顧みないきみには言われたくないね
(今回拐われたのは自分の意思であり不始末ではない。かち合った目線はそのままに表面上は冷静に見える口調はそのままで反論を返す。組織だったらという懸念は今気付いたが自分の意見は崩す気がない。それが無知故の楽観や傲慢さであることや無意識下の相棒への絶対的信頼と甘えであることには気付けていなかった。自分の発言の何かが気に障ったのか胸倉を掴まれお互いの顔が近付いた。それでも怯まずに睨んできた相棒を睨み返していたが『自分には身を守る手段がない』と言われると先程まで饒舌だった口が一度止まる。それはケーキ屋でド.ー.パ.ン.ト.と対峙した時に何度も思ったことだ。相棒みたいに喧嘩が出来るわけでもこの身体で変身できる訳でもない。だから相棒を呼ぶまでの時間稼ぎしか出来なかった。何も出来なかった。それは今回の事件全般に言えることだった。検索だってキーワードが足りずに情報を絞ることが出来なかった。あの時動かなければきっと相棒が探してくれるキーワードをこのガレージで待つことしか出来なかっただろう。それでは相棒の役に立つことが出来ない、相手と対等な相棒にはなれないかもしれない。今回だって勝手に動いて迷惑をかけてしまって、その結果が胸倉を掴む相棒の手だ。そんな無力感を肯定された気がして、そしてそれが正論だからこそ子供みたいな言い返し方しか出来なかった。だが自分の身を危険に晒すという意味では相棒だって似たような物だ。胸倉を掴む手に触れるとこれが証拠だと見せつける。ここに来てからの短い間でもカッコつけなのか背伸びなのか知らないが平気で無茶をして全身傷だらけになろうが笑みを浮かべる相棒の姿もあった。その度に胸がちくっとするし、何度か苦言を呈しても辞める兆しはない。自分なら大丈夫と思ってるのは相棒のほうだ。その事を取り上げれば突き放すように言葉を放つが自分が今怒ってるのか悲しいのかムカついてるのかも分からなくてうっすら瞳に水の膜が張り始め)
っ!!いい加減にしろフィリップ!!組織に拐われて生かされるなんてお前の予測だろ!それに今は俺の話じゃなくてお前の話をしてんだよっ!……は、こうやってお前は簡単に倒されるんだ。お前が拐われたらそこで永遠にお別れだったかもしんねぇんだぞ。それも分かんねぇのかよ。どうしてもお前が無茶するってなら……俺はここにお前を閉じ込める。
(手の甲に残るまだふさがっていない傷口に触れられた痛み、突き放す言葉、それらがトリガーになって頭の中でなにかが切れる音がする。あまりに楽観的な考えだ、こちらを信頼してくれるのは分かるがすべての時相手を救える保証なんてどこにもない。この事務所で相棒のメッセージを見つけた時、電話口で相手の音声が途切れた時、あの時に感じたもうダメかもしれないという絶望をもう経験したくはない。必死にあがいて必ず相棒を取り戻すと宣言することだってできるだろう。だがそれでは救えない命もある、おやっさんのように。こちらも無茶しているなんて、今はどうでもいい話だ。自分のことはどうだっていい、今大事なのは相棒の身を守ることだ。相手自身がその体を守ろうとするように思わせることが必要だ。自分のことは棚にあげたまま、怒りと相手を失いたくない思いと守らなければという思いが体全体を蝕んでいく。気がつけば相棒の足に自分の足をひっかけ体勢を崩させるとその体をソファに叩きつけ馬乗になって相手を見下ろしていた。相手が力で適うはずがないのを知りながら、しばらく黙ってその顔を見下ろす。そしてゆっくりと低い声で、ともすれば脅すような声で、監禁を示唆する。その目には影が落ちて視界には相棒の姿しか収めていなくて)
それは聞き捨てならない。きみもぼくも同じことだろう!ッ、何するんだ。…おわかれ?…は、それはぼくにここで黙って検索するだけの道具になれってことかい?
(散々こちらのことを責め立てるのに自分の話になると関係ないと言い切る相手に苛立ちが募る。年齢も経験も何もかも違うというのは理屈では分かってはいるが普段の相棒の無茶を棚に上げて今回限りのことを責められるのは許容出来ずに声を荒らげた。お互い一歩も譲らずに拮抗していたが足を引っ掛けられると簡単に体勢を崩してしまいそのままソファーに押し付けられ今日の傷が痛む。突然の暴力に近い行動に思わず睨みつけ抗議の声と共にバタバタと身体を捩ったり手で身体を押したりと暴れてみるが馬乗りになった相棒を動かすことが出来ない。そこでようやくちゃんとした意味で相棒の顔が目に入る。自分は相棒にこんな顔をさせたかったのだろうか。その表情に目を奪われて抵抗が止まっている所に更に『お別れ』と言う言葉が頭を殴った。自分が予測した更に遠く考えなかった可能性。相棒と二度と会えなかったかもしれないと考えただけで存在の根幹が揺らぐような途方もない恐怖感に襲われて青ざめていく。無意識に止めてしまった息を弱々しく呟くことで吐き出した。お別れは嫌だ。だけど相棒のいつも明るい声が低く脅迫じみた言い方で出された言葉は許容し難い。力の差は歴然ではあるのに見上げた相手を小さく嘲笑すればわざと相棒の嫌いそうな言葉を使って問いかけ)
(/お世話になっております。すみません不覚にも流行り病にかかってしまいしばらくお返事するのが難しい状況になってしまいました……ストーリー的にめちゃくちゃ盛り上がっているときに本当にごめんなさい……回復次第お返事させていただきますので、数日お待ちいただければ幸いです。)
(/お世話になっております。状況について把握しました。お辛く忙しい中ご連絡して頂きありがとうございます。こちらのことやストーリーのことは本当に気にしなくてもいいので、お身体の方に気をつけてゆっくりと回復と療養に専念してください。元気になってからまた楽しくやり取りさせて貰ったらと思います…!
探偵様のご回復をお祈り申し上げます。)
っ……んなこと、したくねぇに決まってんだろ……!今日だけで何回、お前ともう会えなくなるかもしれねぇって思ったか。俺はお前を守らなきゃいけねぇんだよ。お前の隣にいるために……
(相棒が自分の下で暴れるのを冷ややかな目で見ていた。自分の言う通り脅威を跳ね除ける力がないじゃないかと。青ざめた顔をしたときも、やっぱり自分の言うことが正しいんだと、そう確信していた。だが相棒の嘲笑をみてようやく目が覚める。いつものこちらをからかう口調ではなく心からの軽蔑、突き放されたような感覚に息を飲んだ。この体で抑え込んでいるはずなのに遠のいていく相棒の心、その感覚に全身から血の気が引いていくのが分かる。この薄暗い地下に閉じ込めるなんてそれこそ相棒を狙う組織とやっていることは変わらない。ようやく相棒の顔をきちんと視界に捉える。薄っすらと涙が浮かんだ双眼は背徳的に美しかったが、相棒にこんな顔をさせたかったわけじゃない。動揺で瞳が揺れた。そうしてようやく吐き出した自分の弱い心。いつだって諦めるつもりはない、手を抜くつもりもない。だがそれでも救えないかもしれないと、今日この手からこぼれ落ちてしまうかもしれないと、何度思ったことか。ダサくて弱気な考えが何度頭を支配したことか。その弱気に蝕まれた結果がこれだ。さっきまで相棒を見下ろしていた顔は酷く醜かっただろう。胸ぐらを掴んでいた手を離し、縋るように相手の両手首に自分の手を添える。最初おやっさんの形見を守るためから始まった関係は、今やどうしようもない執着になっていて、狂気に近い衝動を抑えつつ、だが縋るように相手を見つめ)
(/いつもお心遣いいただき本当にありがとうございます。体調に波があるので体力あるときに少しずつお返事書いていきます。こんなに盛り上がってるところでお預けはこちらとしても歯痒く……なにより早く検索様とやり取りしたいので、自身の体調に合わせてお返事させていただきますね。)
……、いつもはきみが危険な目にあってでも解決しようとするから、今回はぼくが役に立ちたいと思った。でも、最悪な可能性に気が回らず、きみにこんなにも、心配をかけてしまった…。ぼくもきみの隣に、ずっとそばに居ると言ったのに。…ごめんな、さい。
(相棒の声が責め立てるものから弱く縋るようなものになった。胸倉を掴んでいた手が手首に添えられ痛かったのが温もりに変わる。約束を破って裏切った自分が憎くてキツイ言い方をしていた訳じゃない。本当に自分のことが心配で大切だからこその言葉だと分かれば勘違いへの申し訳なさと嬉しさに息が詰まりそうだった。その頃には怒りも苛立ちも消え失せて漸く相棒と初めて目が合った。そこでやっと今日の行動の理由をぽつりぽつりと語る。捜査も戦闘も相棒ばかりが身体を張っていて、自分は安全圏からでしかサポート出来てないという歯痒さ。だから先に自分が次のターゲットの情報を得た時にチャンスだと思ったのは事実だ。だが、その安易な行動がお別れになる可能性を秘めていることにも気付かず、相棒をここまで心配させて困らせて悲しませるとは気付かなかった。その事に気付いた今、もしも相棒の立場だったらを考えればどれほど残酷なことをしたのか身に染みてわかる。もしも、相棒が居なくなってしまったらなんて考えたくもない。鼻の先がツーンと痛む。それでもこの想いは伝えなくては言葉を紡いでいく。手首に添える相棒の手にこちらからも縋るように手を滑らせ五本の指を絡ませる。ちゃんと帰ってきたのだと確かめるように握りしめながら紡ぐ言葉に嗚咽が混じる。目の奥が熱くなって溜まった涙をぽつぽつと流しながらも相棒を見つめたまま子どものように謝って)
(/お返事が来てビックリしました。やり取りがしたいと言って貰えて凄く嬉しいです。本当に無理なさらぬようだけ気を付けて頂いて、ゆっくりとお返事の方お待ちしております。一日でも早く探偵様の体調が良くなることを心からお祈りしております。/蹴り可能です)
フィリップ……いつも、おやっさんと同じことするには少しくらい無茶して体張るのは当然だと思ってた。でも……それでお前には今回の俺みてぇに心配させちまってたんだな。それに、お前は検索さえできりゃそれで満足なんだと思ってた……おかしな話だよな、俺達は二人で一人の探偵なんだからそんなわけねぇのに。俺もお前をちゃんと分かろうとしてなかった。悪かった、許してくれ。
(初めて見る相棒の泣き顔、溢れ落ちる涙に胸が詰まり、ただ相手の名前を呼ぶ。相棒が知識を使い自分は足を使う、それが当然のことで相棒は足での活動には興味がないといつの間に思い込んでいたのだろう。それを負い目に感じていることがあるなんて考えたこともなかった。互いの手が重なり指が絡まる。自分より柔らかな手の触感、そこの温もりを共有して、心底安心する。すぐそばに相棒がいるのだと分かる。そして棚にあげっぱなしになっていた自分のことを引っ張り戻して口を開いた。自分は未熟だ。相棒の言い方によれば半熟か。おやっさんのようにやるには何もかもが足りない、だから無謀なことはせずとも無茶なことは多少するものだと思っていた。隣に相棒がいるというのに、その存在をまるで無視していたに等しい。一人ですべてをうまくやろうとした結果がこれだ。隣にいるといったのに、その隣を見ていなかった。そんな独りよがりな考えのせいで、相棒を一人ぼっちにさせてしまった。未だ涙が溢れるその瞳を見つめる。今度こそきちんと見つめなければ。その瞳に映るものを、そしてその奥にある気持ちを。絡まった手を固く握り返す。そして決して目を逸らさず、まっすぐ相手を見据えたまま謝罪を口にして)
翔太郎…。ぼくも最初はそれで構わなかった。だけど、一緒に過ごす内にきみのことが気になって、きみの仕事内容や行動を知ってからは守られてるだけの自分が歯がゆかった。…、ぼく達は随分根本的なとこですれ違っていたみたいだ。 翔太郎、今回のことはお互い様ということにしてまた…いや、今度こそぼくと二人で一人の相棒になってくれるかい?
(繋がれた手が強く握り返される。その手から相棒の体温も想いも流れ込んでくるようで心に突っかかっていた硬いものが溶けていくようだった。初めは相手の言う通り検索さえ出来れば良かった。普段の検索はもちろん、相棒の持ってくる事件はさながら問題用紙のようなもので調べて解いていくのは楽しく待ち望んでいた時さえあった。だがここで過ごすうちに依頼人の苦悩を自分のように悲しむ相棒の姿や無茶をしてボロボロになって帰ってくる姿、街の人に頼られて嬉しそうな姿など相棒越しに外を見て、直接そこに関わる事が出来なかった事への無力感と守られているだけの事への反抗が芽生えたのだ。相棒の真っ直ぐな眼を見つめる。涙も落ち着いてきてそこに映るのは大切な相棒なんだと改めて実感した。初めて知った相棒の本音。結局のところお互いを大切に思いすぎる故に勘違いをしていたことに気付けばここまで張り詰めていた物が急に馬鹿らしく思えて自然と笑ってしまった。そばに居たのにかなりの危険を犯して遠回りしていたようだ。大切な相棒の名前を再び呼ぶ。もう一度改めて相棒の隣に立ちたいと今回はどちらも悪かったということにすることを提案しながらもこちらも目を逸らさず強い意志で言葉告げて)
そうだったのか……あぁ、俺達は互いを嫌い合ってたわけじゃない。むしろ大切に思ってた、それが分かって良かったよ。…もちろん、俺とお前は二人で一人だぜ、相棒。これからは事件の時もそうじゃない時も、二人で一緒に出かけようぜ。
(相棒の本音が体に流れ込んでくる。相棒の気持ちの変化、そして思い、それらはどれも決して聞き逃してはいけない言葉達で、静かにその声に耳を傾けていた。相手は自分を通して世界が広がっていた、そしてこちらのことを大切な存在だと思うようになってくれていた。そんな嬉しい変化を、変わらないようにと押し留めておく必要がどこにあるのだろう。そしてきっと自分だって相棒を通して見る世界は変わっていっている。何より「大切な存在」について、これほど考え感情を動かすことなんてなかったのだがら。これから一緒にこの街を巡れば、想像だにしない世界になっていくのだろうと思う。そしてそれは、きっと今よりもより良い風景だ。相棒の泣き顔が笑顔に変わった。やっと見たかった顔に巡り合い胸がじんわりと暖かくなるのを感じて、こちらも顔が綻ぶ。そして強い意志の籠もる問いかけにはこちらも力強く頷いて答えた。今度こそ互いに遠慮なんてしない、支え合い、共に走る唯一無二の存在、そんな相棒になれる。そしてこちらからひとつ提案を持ちかけた。相棒を狙う敵がいるのは事実、だが二人でなら、この相棒とならそいつらにも向かっていける。だからこそ、いつも二人でいようと、どんな瞬間も隣にいることを持ちかけて)
二人で一人、何度も口にしているけど良い響きだね。っ!それはぼくも一緒に外に出ても良いってことかい? ならば行きたい所は沢山ある。今日見掛けたクレープといった食べ物が売っている店、この前調べた時に出てきた祭りという行事、それにきみの話に出てくる情報屋の人達……、ぼくもきみと一緒にきみの好きなこの街を出かけてみたい。
(自分の問いかけに頷かれると身体がぽかぽかするような幸せが満ちていくようだった。これまでも何回も繰り返しお互いが言ってきた言葉。だけどこうして本音を言い合った今正に本当の意味でなれたのかもしれない。相棒を大切に思うのならば、相棒の一部である自分も大切にしなくては成り立たないのだ。相手が唯一無二の相棒であることの幸せを噛み締めていると持ち掛けられた提案に目を見開いた。どんな時でも一緒に出掛ける即ち自分も外で出られるということ。その意味を理解すればぱぁっと分かりやすく表情を輝かせた。外に出られるのならば行きたいところは山のようにある。今日見掛けた場所もいままで検索の中で出てきた場所も相棒の話にでてきた場所や人も全部興味がある。あの帰り道、一度だけと言われて閉ざしてしまった分まで自分の行きたい所を一気に捲し立てた。まだまだ上げればキリがないが相棒の顔が目に入れば一度口を止める。行きたいところもやりたいことも沢山ある。そのどれもが相棒と共に向かうなら楽しい所になるだろう。何より相棒が無茶してまで守りたいこの街を知って、好きになって、住人になりたいという思いを強く抱けば相棒の提案に楽しげに頷いては自らの意思を伝えて)
だな。きっと俺たちにしか使えない言葉だ、二人で一人ってのは。な、おい………ったく。いくらでも案内してやるぜ?なんてったって、風.都.は俺の庭だからな。ちょうど今度夏祭りもあるし、そこで情報屋の奴らにも会えるだろ。……いろんなとこ行こうな、フィリップ。
(二人は文字通り一心同体になる、世界でただ一例物理的な意味で。だが今やきちんと本来の意味で、一心同体となった気がする。二人で一人、自分達にしか冠せないその名前を噛みしめるように口にする。その大切な相棒と見つめ合って手を取り合って話すのが、ただ幸せだった。こちらの提案に花が開くその瞬間のように顔を輝かせるのにはこちらも嬉しくなったが、怒涛の要求には一瞬たじろいでしまう。予想できたことではあったのだが、やはり元は知的好奇心の塊、もとい暴走特急。一度走り出したら止まらない。だがそれも最後の一言を聞けば嬉しさが勝って思わず笑ってしまった。自分はこの街が好きだ。自分が育ってきたこの街が、そこに住む人々が大好きだ。そして今一番大切な人がそれを知りたいと望んでいる。その思いに相手への愛おしさが胸から溢れ出た。もっとこの街も、人々も、そして自分のことも知って欲しい。そして願わくば好きになって欲しい。繋がる手が温かい、いい加減冷静にもなって少し恥ずかしいと思う面もあるが、それよりも胸に溢れた思いのほうが上回った。体勢を変えて顔同士を近づける。絡まった手は強く握ったまま、その柔らかな頬にひとつ短い口づけを落として)
流石、頼りになるね。じゃあ今度はその夏休みという物に行こう。情報屋の人達にも会ってみたいし、この街の行事という物にも参加してみたい。…ああ、一緒に色んな所に行って思い出を作ろう、翔太郎。…、怪我は手当しなくても大丈夫かい?
(相棒がこの街を大好きなのは普段の言動から伝わってくる。今日だって見て回った外では世間話に出てきた店が並んでいたし、見張りだって過去の相棒の仕事のおかげで信用して貰えたとも言える。それだけ相棒にとって大切で自分達の守るべき存在。そんな街の中を相棒に案内して貰えるのならきっと何処だって楽しいに違いない。その中でも夏休みという単語に反応を示す。祭りについては既に検索済だ。だが、実際に行ったことは勿論なくその雰囲気や参加する人々を見てみたい気持ちが半分、この街の行事ごとに参加してみたいという気持ちが半分で興味惹かれると積極的に参加を希望して。体勢が変わり顔が近付く。やっぱり相棒も笑っている時の顔の方が好きだ。頬に落とされるキスの意味は分からずとも決して嫌ではなく、これから2人で歩むだろう未来の約束に無邪気な笑みで返して。お互いのことを改めて理解出来て幸せという名の充実感に満たされていたが繋いでいた手を解こうとした時、その怪我が目に映る。ガラスを突き破った時のものだろうと容易に推測付けば自分のせいだと眉尻下げて、傷に触れないようにしながら問いかけ)
あぁ、風.都.最大の夏祭りだ。ぜってぇお前を満足させてやるぜ。ん?あ、あぁそういや怪我したまんまだったな。これくらいどうってことねぇよ。ちょっと消毒しときゃ治る。
(風.都.タ.ワ.ーを中心に行われる夏祭りはこの街と夏とを存分に満喫できる行事だ。ちゃんと参加するのはかなり久しぶりだが、それでもこの街の行事ならバッチリエスコートできるだろう。来る日を楽しみに思っていると手の怪我を指摘され、すっかり処置するのを忘れていたのを思い出す。割れたガラスが掠っただけなので傷口は綺麗だが赤い筋はまだまだ痛々しい。しばらく手は包帯生活だろう。それよりもそんな日常の会話を交わして、ようやく自分がまだ相手に乗っかったままなことに気がついた。相手をソファに押し倒した挙げ句手を繋いで最後には口づけまで、自分で思い返して一気に羞恥心が襲いきた。涼しい顔で怪我のことを口にしている場合ではない。顔に焦りを出さないようにしつつ相手の上からどいてソファの横へと立った。そもそも頬に口づけた時、相棒は無反応だった。おそらくその意味が分からなかったのだろう。その意味を聞かれても親しい人にする親愛の証、だとかで誤魔化せば良いのだろうが、自分のものだと宣言しているものにするそれは意味が多少、いやだいぶ異なる。心のままに行動した結果純粋無垢な相手に手を出してしまったことに羞恥に加えて自分のズルさを感じて思わず相棒から目をそらした。激昂のあとだったとはいえ、もっと自分をコントロールしなければ。よりハードボイルドであるためにも、そして二人の関係のためにも。救急箱はたしか上だ。「事務所に戻るか」と声をかけると階段をあがろうと歩き出し)
風.都.最大…想像が出来ないね。後から事務所のカレンダーに予定を書き記しておこう。…? 甘いよ、翔太郎。単なる傷と思って適切な対処をしなければ治るのが遅くなるどころか化膿したり最悪の場合全身の疾患に繋がることだってある。 ぼくが手当するから大人しく座って手を出したまえ
(最大と言われてもどれくらいの規模なのか想像が出来ない。だが相棒の反応を見る限りはそれなりに大きく盛り上がる行事なのだろうと期待を膨らませて呟く。少し未来の予定が出来ると事務所に飾ってあるカレンダーを思い出した。いつもは相棒の依頼人との打ち合わせや予定などが簡素に書かれていて、外に出ることの無かった自分には無用の物だった。だが相棒と外に出る機会が増えるならそこに書き込むことだって増えるかもしれない。そう思えば何処か機嫌良さそうにこれからやることを呟いて。そんな会話をしていた訳だが急に何を思ったのか相棒が自分の上から退いた。これでようやく解放されて動ける様になった訳だがその相棒の表情は何かを考え込むようなこれまた焦りが少し見えるような顔で何がきっかけなのかは分からない。不思議そうにするも時折分からない行動をするのが相棒だ。気にせず自分もソファーから立ち上がり、相手に続いて階段を上がっていく。やがて事務所に戻ってくればどうやら傷への認識が甘い相棒に手当の大切さを語る。何かと無茶をする相棒への手当の方法はここに来てからかなり早い段階で検索済みだ。情報を参照に最悪な事態まで語りながらも救急箱を取り出してくれば大人しくソファーに座って患部を差し出すように促し)
当日は楽しみにしとけよ。おい変に脅かすなよ。別に変な痛みも感じねぇのに……それじゃお願いしますよ、フィリップ先生
(上機嫌に夏祭りのことを話す相棒をみて小さく笑みを浮かべる。こういうところは年相応子供っぽい、記憶が抜け落ちて拍車がかかっているのだろうが、二人の予定を喜んでくれているのは素直に嬉しいことだ。事務所にそれらしく掛かっているカレンダー、今までプライベートではろくにつかっていなかったが、これからは二人の予定で埋まることだろう。事件の事や、事件以外の事、しかし全て二人の事だ。そうやって子供の顔を見せていたのに、それが突然保護者面に変わるのだから困る。まったく誰に似たのか、さらに余計な情報がセットで大量にやってくるのだから聞いているこちらとしては耳が痛いばかりだ。まだ傷口は乾ききっていない、これは消毒液が染みそうだと思わず苦い顔をする。だが処置をしないのもマズイのは理解しているところ、大人しく指定されたソファに座るとテーブルの上に両手を差し出して)
ああ、それまでに完璧に準備をしなくては。そういった油断が最悪なことにつながりかねない。…だから、これからはどんな怪我でも隠さずぼくに報告して欲しい。 今日のは一段と染みそうだね
(祭りについては検索済ではあるが、自分が参加するとなればまた違った視点で情報を探すことになる。相棒の案内する夏祭りを最高に楽しめるよう服装や行事の特徴などを頭に入れ、当日を迎えようと計画を立てる。その日を楽しむためにも怪我の手当は必須だ。相変わらずの甘い考えに釘を刺しながらも日頃思っていたことを口に出す。先程のように我慢すれば治ると思う節があり、今までは何とかなってきたが万が一だってある。仕事上怪我をするなとは言えない。必ず傷ついてしまうことはあるだろう。だが弱い所を見せたくないからとその傷を隠してしまうのは話が違う。そしたら手当のしようも無い。だからこそ相棒の身に怪我をした時は素直にに教えて欲しいと真面目な表情でお願いをして。先生と呼ばれ頼られるのは悪くない気分だ。ひとまず清潔なガーゼで表面上の汚れや乾きかけた血を優しく拭う。この状態ならそこそこ消毒液が染みそうだと呟くが、だからといって気遣うことはなく容赦なく両方の傷口に消毒液で浸したガーゼを当てていき)
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