検索 2022-07-09 20:46:55 |
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今だけの名前だし変に凝ったのよりかはシンプルな方がいいな。……おぅ、じゃなくて……行こっか、フィーちゃん
(今から付け焼き刃的に使う相手の呼び名、先に出したものの方がそれっぽくはあるが相手が反応出来なければ違和感の元になる。こちらも咄嗟に名前を呼ぶ時に誤魔化しようがあるものの方がありがたい。分かりやすいのが一番かと思いつつ、脳みそに刷り込むように何度かその呼称を脳内で繰り返していた。相手がチケットを差し出してくる、その声はいつもよりも高く今しがた心も女性に切り替えたのだと察した。反射的にいつもの返事をしてしまうがこれでは粗暴すぎる。すぐに口を噤んだあと、自然に出せる範囲で一番高い声をつかって返事をしつつチケットを受け取りゲートをくぐった。遊園地内に設けられた広場が今回のイベント会場で同じロリィタ服の女性が一様に同じ方向へと歩いていく。やがて広場へたどり着くと柵に囲われた中に色とりどりで煌びやかな服を着たロリィタ服の女性が数多く集まっていた。柵の中にはデパートの写真撮影会場に負けないくらいピンクやハートをキュートやらポップやらに押し出したモニュメントが数多く置かれている。今回のイベントはこのバレンタインモニュメントをPRするためのもので、まずはロリィタ服の女性にそのモニュメントと撮影をしてもらい写真を拡散して客を呼び込む算段のようだ。撮影はプロのカメラマンが行うらしく自分の晴れ姿を撮ってもらうには最高のシチュエーションだろう。イベント会場の入口には係員が立っていてロリィタ服の女性のみを通しているようだ。いよいよ潜入の時、多少緊張はしたものの二人の顔を見るなり係員は『どうぞ』と笑顔で中に招き入れてくれる。どうやら第一関門は突破したようだ。大丈夫だと思ってはいたものの実際に女性だと認識されたことに安堵の息を吐いていて)
_ どうやら問題無く入れたみたいだ。 …それにしてもこうして集まると僕達の服も普通に見えてくるね。 ひとまず周りを偵察しつつも撮影会に参加してみるかい?
(高い声で呼び慣れない名前を呼ばれるとやはり不思議な感じだ。せっかくの準備が台無しになってしまわぬ様改めて意識を固めつつもイベント会場へと向かう。会場内はロリィタ服を着た女性が多く集まっていて服を買った時に訪れたあの店の雰囲気をそのまま持ち出して大きく豪華にしたようなファンシーなモニュメントや飾りが置かれている。バレンタインフェアの時にも感じた非日常感に内心を躍らせながらも入口へと向かう。女性限定イベントを謳っているだけあり、係員が中に入る人物をチェックしているようだ。涼しい顔をしながら内心ハラハラとはしたが無事に中へと通される。とりあえずそのまま会場内に入り端の方に移動してから声量を落とした声で相手に話しかける。これで犯人を捕まえる為の舞台には立つことが出来た。周りを見ればロリィタ服の女性ばかりで来る道や液では目立っていたこの格好もこの会場内ではそれ程珍しいものでは無い。独特の雰囲気に興味惹かれながらも落ち着いた顔でこれからの行動方針を提案する。今までの被害状況のこのイベントの管理体制を見る限り犯人は完全な部外者ではなく、同じイベント参加者か運営側のスタッフだろう。となればこの会場内に襲撃する動機や犯人の手がかりなどがあるかもしれない。そうでなくてもたた突っ立って周りを見ているだけでは怪しまれてしまいそうだ。自然な参加者を演じるためにも周りを観察しつつも撮影に参加することを提案してみて)
なんつーか、不思議の国に迷い込んじまったみたいだな……あぁ、犯人の目星付けなきゃなんねーし、これまでの傾向で言うと注目度が高い女の子が狙われてんだろ?なら、俺た……私達がその座をいただくのが一番早い
(最初はどうなる事かと思った潜入も驚くほどスムーズに会場へと入ることができた、改めて相手の化粧の腕には驚かされる。周囲に男の声を聞かれないよう声量を絞りつつ辺りを見渡す。浮世離れしたモニュメントの数々に浮世離れした格好をした人々、そのどれもが日常にはない輝きを放っていて独特の雰囲気を作り出している。自分達も負けず劣らずの格好をしてはいるが、こうにも一堂に会するともはや異世界にでも来た気分だった。このキラキラと煌めく異世界を犯人は壊そうとしているのだから見過ごせない。その為にこの会場を偵察するのは賛成で相手の提案に同意して頷く。だがただ撮影会に参加して偵察するだけでは誰かが襲われてしまうかもしれない、優秀な探偵ならば事件が起こる前に防ぐべきだろう。その方法は相手のプロファイリングからも明らかだ。互いに心掴まれる程には可愛い、あるいは綺麗なこの容姿を活かさない手はない。思わず出かけた男言葉を飲み込んだ後自信に溢れた妖艶な笑みを浮かべこの会場の一番になることを宣言する。こちらとしてはいつものキメ顔をしているだけだが化粧の力で笑みの雰囲気さえ変わっていた。まずは手近な所から「とりあえずあれ行くか」とチョコレートパフェを模したソファに座れるオブジェを指さして)
…なるほど、確かにその手があったね。 二人でその場の話題も犯人の注目もかっさらってしまおう。ああ、声を掛けるのは任せてくれ。
(犯人に気づかれないように潜み、手掛かりになりそうな物を探って襲おうとしたところを止めようと考えていたが確かにこれでは後手に回ってしまう。これまでの傾向を考えれば敢えて目立つことで犯人の狙いをコチラに向けるというのはナイスアイデアだ。変な小細工も要らないシンプル且つ周りにとっても安全な策だ。得意げに告げる顔はいつものキメ顔の面影はありつつも妖しくも自信たっぷりの大人の余裕を感じられる表情だ。服装やメイクも相まっていつもの何割も魅力的に見えるこの外見があれば注目を集めるのもすぐだろう。口元を緩めて好意的な反応を示してその案に乗ることに決める。手始めとして指さしたのはチョコレートパフェを模したソファーだった。勿論異論は無い。比較的まだ声の誤魔化しようのある自分が声がけに名乗り出ると早速オブジェクトに近付いて撮影してくれるカメラマンを探す。丁度他の撮影が終わったカメラマンがいれば咳ばらいして声を整えた後「すみません。次、ぼ…私達を撮って貰えませんか?」と高めに作った声と優雅な仕草でお願いする。良い反応と共に承諾が得られると相手に目配せしながらもオブジェクトの方に移動する。巨大なチョコレートパフェのグラスの中に入っているように見える写真が撮れる場所で中身のアイスやブラウニーなどを模したソファーの上に座ってトッピングのパネルやクッションと共に撮ることが出来る。その撮影例通り高めの場所に配置されたソファーに腰掛けて緩く足をぶらぶらさせながらも相手が隣に来るのを待って)
だろ?よし、作戦開始だ。頼んだぜ
(相棒の反応は上々だ。外見はほぼ完璧に近いのだから後はこの場を堂々と闊歩する度胸と自分が完璧だと自負する自信と、つまりは所謂オーラみたいなのを放てばこの場を掌握できるはずだ。犯人だってこちらを狙ってくるに違いない。相手にカメラマンへの声かけを任せると直ぐに一人捕まえたらしく軽く頷いてオブジェの方へと移動する。移動する間もいつもより背筋を伸ばして歩いて表情も凛々しいものに保ち、なるべく優雅に見えるよう流れるような仕草でソファへと座った。どうせ下手に喋れないのだから凛々しくミステリアスな顔のままこの場を過ごした方が良いだろう。とはいえ頭の中はパニックだ。撮影といってもハードボイルド的なカッコ良さを出すのは得意だがこういう服に合うクールさや優雅さは未知の分野だ。服を買った店で貰ったカタログの写真を必死に思い出しながら、足を組んでチョコブラウニーを模したクッションに肘を乗せると口を薄く開いて笑みを浮かべる。どうやら周囲の反応は上々のようだ、撮影を待つロリィタ服の女性がこちらを見つつ何やらヒソヒソと話している。そのうちシャッターが切られるがカメラマンも乗ってきたのか追加でもう一枚撮影を頼まれて『パフェを食べるような仕草でお願いします』とポーズ指定が入ると近場にあったさくらんぼのパネルを手に取り小さく口を開けた格好で止まり)
____…反応は悪くないみたいだね。 このまま注目を集め続けよう。
(ソファーに二人が並べば撮影は開始されるがそもそも写真を撮る時のポーズや仕草の知識はなく女性らしいと言う事になれば尚更だ。お嬢様らしいと言われたことを思い出せば足先を揃えるような上品な座り方をしながらもカメラを見つめ、ハート型のチョコレートを模したクッションを抱えながら軽く小首を傾げる。初めて見る顔にも関わずクオリティが高くテイストの違う二人のツーショットというのが目を引くのかこちらに視線を向ける人々が徐々に増えていく。一枚目のシャッターが切られ、それでお終いだと思ったのだがカメラマンも被写体として気に入ってくれたようでもう1枚とお願いされる。イマイチぱっと浮かばないポーズ指定に隣の相棒を見ればさくらんぼのパネルを食べるような動作で止まっている。ポーズの意味を理解すると共に注目されている理由が二人で一緒に写ってることではないかと仮説を立てると相手との距離を詰め、同じパネルのさくらんぼを一緒に食べるような構図を取る。すると何処からか『かわいい』などと黄色い声があがる。そのポーズのまま2枚目のシャッターが切られ、カメラマンからも「とっても素敵な写真が撮れました!」と熱の篭った感想が告げられる。写真は現像して退場時に渡してくれるらしい。気付けば撮影の様子を遠巻きに見ているロリィタ服の女性やカメラマンも見受けられて順調な作戦の進行にこっそり相手に耳打ちしながらもひとまずチョコレートパフェのモニュメントを後にして)
____……あぁ、このまま犯人炙り出すぞ
(自信を持って堂々と、と自分に暗示を掛けつつ臨む撮影、人々からの注目を肌でヒシヒシと感じれば半分賞賛を貰うのが楽しいと思うものの、もう半分ではどこか冷静な自分がいて女装をしてポーズを決めているのが何とも恥ずかしいと思う部分もある。拮抗する心境をなんとか表に出さないようにしていたが、ポーズ指定でこちらが齧り付く仕草をしていたさくらんぼのパネルに相手が近づき同じポーズをした時には流石に動揺しそうになった。シャッターが切られるが二人して同じものを食べる仕草なんて艶かしい妖しさを感じる写真を後からまともに見返せる自信はない。根性で最後まで澄ました顔を保ったものの、撮影会となるとこういう不意打ちもあるのかと内心では焦っていた。相手の耳打ちに短く返事を返しながらオブジェを後にする。周囲のロリィタ服の女性も関係者も反応は上々だ、このままの調子で行けば間違いなくイベントの中心になることが出来る。その為に次の撮影をと周囲を見渡すと、少し行った所にあるひとつのオブジェが目に止まった。背後に置かれたパネルにはトランプのモチーフがふんだんに使われ周囲を彩るプロップはお茶やケーキ、カトラリーが意志を持ったように飛び跳ねており、その真ん中に可愛らしい木製のチェアが置かれていた。どうやら不思議の国のティーパーティーを模した場所らしくエレガントとファンタジーが共存した撮影場所だ。「あれはフィーちゃん向きじゃない?」なんてからかいも含めて指さして)
初めてイベントに参加したけど素敵な写真を撮ることも出来て楽しい時間だね。 …アレかい? …、一人だと照れ臭さが勝ってしまうよ。 翔ちゃんと一緒がいいな。
(これまでの犯行時の様子や注目された人物を特に狙う点から犯人はロリィタ服のイベントあるいはそれを楽しむイベント参加者に妬みや恨みといったマイナス感情を持っていると予想が出来る。となれば注目を集めると共に無邪気に楽しんでいる所を見せた方が犯人の気を引くことが出来るだろう。自然な範囲で周りにも聞こえるように多少声を張りながらもイベントを楽しんでいることをアピールするように軽い笑みで相手に話しかける。実際この非日常感を楽しんでいるのは事実であるからさほど演技の必要はない。そんな中で相手が指さしたのは不思議の国のアリスをモチーフにしたエリアだ。パネルやプロップでファンタジー感溢れる世界を表現している。当の相手はからかい半分の様子ではあったが、興味惹かれるままその場所へと向かいその表現方法を観察していると付いてきたカメラマンがいつの間にかその様子を撮影していた。どうやらパネルを観察する様子が不思議な世界に迷い込んだお嬢さんの構図に見えているようだ。注目を集める為に特に止めることなくスカートを軽く摘んでふわりと持ち上げる仕草をしてみたり木製のチェアに座って物憂げな表情をしてみたりと撮影されること自体を楽しんでもいたがこちらを向く視線の中に異様なものが混じっている事に気付く。ロリィタ服の人や関係者も含め賞賛や憧憬のような感情が向けられる中、少し離れた所にいる真っ黒な服装をした女性、確かゴスロリと呼ばれるジャンルを着た彼女から睨むような鋭い視線を感じる。だがもっぱら人の心情には疎い自覚があり勝手に決めつけるよりこういう事の判断に強い相棒の方に確認してもらった方がよいだろう。一人の撮影は照れ臭いと理由をつければすぐ側にあるティーパーティーを模した可愛らしいパラソルのついた円状のテーブルに相手を手招きして一緒に撮りたいと甘えたようにお願いをする。来てくれた相手にポーズの相談をするフリをしながらも鋭い視線を向ける彼女のことをこっそり情報共有して)
うん、そう思う。………………___いい感じに刺激されたみたいだな。このまま顔を出すのを待つか
(周囲は少しずつザワついてきて自分達二人中心の空気になりつつある。無邪気に笑うクラシカルロリィタ服のお嬢様と口数が少ないミリタリーロリィタ服のお姉さん、まるで違うテーマの二人が撮影を楽しむ姿はさぞかし煌めいて見える事だろう。実際は声が低いのを隠すために喋らないようにしているだけなのだが。だがそんな二人のギャップが周囲にはうけているらしく、徐々にギャラリーは増えているようだった。そんな中で相手の雰囲気にピッタリのオブジェを勧めたわけだが、いつも通り好奇心を宿した目でその場に近づきプロップを観察する姿はまさに不思議の国に迷い込んだ主人公のようで、絵本の1ページのようなその光景に思わず見蕩れてしまう。この光景に惚れ込んでしまったのは自分だけではないようで隣からシャッター音が聞こえると思わずそちらを向いた。思わず写真を撮ってしまうのは分かるが無断でカメラを構える様に「勝手に撮ってんじゃねぇ」と口に出してしまいそうになる。だが裏を返せばプロのカメラマンが写真に収めたくなるほどあの中にいる相手は絵になるという事だ。ここはグッと堪えつつそのまま自然と撮影の流れになった相手を眺めていた。何度かシャッターが切られたあと、甘えるように一緒に撮影を強請られると「もちろん」と小さく笑みを浮かべながら円状のテーブルへと移動した。当然その間相手に見蕩れて綻びそうになった顔を引き締めるのに必死だったわけだが。テーブルにつけば相手から二人に鋭い視線を向ける女性について耳打ちされ、撮影用のポーズを決めながら視界の端にその女性を入れる。もはや取り巻きができ始めている空気の中で恨みつらみが籠った視線は痛いほど突き刺さってきた。同じく耳打ちしつつこのまま続けるよう言うが、目を離したその一瞬に彼女の姿は消えてしまう。何処へ言ったのかと目を左右に振った矢先、背後から突然大きな音が聞こえた。それは不思議の国を彩っていたパネルが粉々に砕ける音で、両腕にナイフを装着し黒いフードを目深に被ったような化け物が二人の背後にあるパネルを突き破ってきていたのだ。突然の音と衝撃に椅子から転げ落ちてしまう、周囲の空気は一気に恐怖によって支配されそこら中から悲鳴があがっていて)
ああ、一応彼女では無い可能性も考慮して…ッ! どうやら狙いは当たりだったようだ。…、 翔太郎、行けそうかい?
(相手に情報共有すれば自然な様子で相手が彼女を確認する。相棒の目を持ってしても怪しいと目をつけるには十分なようだ。引き続き警戒しつつ続ける相手の判断に頷き念の為彼女が犯人ではない可能性も示唆しておく。こういう潜入捜査に置いて先入観は危険だ。幸いこうしてこっそり耳打ちしているのも内緒話をしているように見えているようで怪しまれることなく寧ろこの構図の写真を撮ろうとシャッターが切られている。良い調子だろう。体勢を戻し、お茶会中の写真撮影を続けようとした所で目星をつけていた彼女がいつの間にか居なくなっている。その姿を探そうとした所で後ろから大きな音が鳴り、椅子から飛び降りる。その音の元へ視線を向けると砕け散ったパネルとド.ー.パ.ン.トの姿があった。異常に気づいた会場内から悲鳴があがる。怪物が両腕のナイフを振り翳すと先程まで居たパラソルのついたテーブルは綺麗に一刀両断される。あの攻撃を受けたらひとたまりも無いだろう。「皆さん、逃げてください!!」と周りのイベント参加者や関係者に大声を張り上げて会場の外へと避難を促しながらも出方を伺う。『アタシより可愛い子なんか要らないっ!』とヒステリックな声と共に繰り出される攻撃を何とか躱しながらも何とか投げ出された相手のカバンからドライバーを取り出し相棒の元へ投げれば変身出来そうかと尋ねて)
上手いこと釣られてくれたな。よし、いくぜ!…ん?
(椅子から落ちつつ受身をとって体勢を立て直すと相手が周囲の人を逃がすよう誘導している間こちらはド.ー.パ.ン.ト.の正面に立って注意を引く。両腕のナイフが振り下ろされるのを既のところで避けながら犯人と対峙していると、粗方の避難は終わって相棒からドライバーが投げ渡された。それを掴み取ると腰に装着してメモリを取り出そうとした。しかし左脇に手をやっても何も感触がない、ありえない違和感にその場所を見てみればいつの間にかメモリを隠していたボレロが無くなっている。かのボレロはというと犯人の右手ナイフに破れかけながら引っかかっていた。どうやら攻撃を避けた際にボレロに切っ先があたって簡単に取り外しできる構造のそれは向こうの手に渡ってしまったらしい。驚愕の顔を犯人へと向けるが驚いているのは向こうも同じようだった。こちらに向かって呼ばれた男の名前に女性のそれとは全く違う低い声、『男…?』とようやくその事実を口にした途端、ド.ー.パ.ン.トの体が激しく震え出す。性別さえ違う人間が自分よりも可愛いという事実を受け入れられないらしく激しく息を吐きながら『ありえないありえないありえない』と壊れたラジオのように言葉を繰り返している。最後に雄叫びを上げると同時にナイフに突き刺さっていたボレロはズタズタに引き裂かれて地面に落ちた、もはや布切れのようになってしまったあの中に自分のメモリがあるに違いない。だが犯人のターゲットはこちらのようで力任せにナイフが次々振り下ろされる。ダブルの力がない状態では後退することしか出来ず、ただ逃げ回るしか出来なくて)
っ、! 翔太郎、危険だとは思うがそのままその場所からド.ー.パ.ン.トを引き離してくれ。 その間に僕がメモリを回収する
(ある程度避難が完了すれば会場内には2人と犯人だけとなる。腰へドライバーが現れいつもの様にメモリを手にするが相棒の方から焦ったような思考が伝わってくる。いつもならばジャケットの裏に入れて持ち運ばれているが今日はロリィタ服を着るためにボレロに入れていると今朝聞いていたばかりだ。そのボレロはド.ー.パ.ン.ト.のナイフに引っかかっていてそれが意味する状況に顔を歪める。一方で犯人は相棒が男ということに気付いたらしく、壊れたように言葉を繰り返したかと思えば激昂したようにナイフを振り翳す。興奮状態になったド.ー.パ.ン.トはひたすら相手に攻撃を仕掛けていて、何とか躱してはいるが生身ではそう長く体力は持たないだろう。幸い犯人の狙いは今は相棒一人だけだ。非常に危険なのは分かっているがそのまま注意を引き付けてボレロの落ちた布から注意をそらし、その隙にメモリを回収・変身の案を思考越しに伝える。犯人の視界に入らないよう背後に回りなるべく早く回収出来るよう恐る恐るボレロの場所に近づき)
『ッ、あぁ頼む!』____足元がお留守だぜお嬢さんッ!
(ド.ー.パ.ン.トはこちらを切り刻むことに執着している、この服だけでなく体ごと刻む気満々だ。避けるだけならなんとかなるものの慣れない靴で動き回ればいつもより体力消費は激しい。既に息は上がり始めているがあのボレロの中からメモリを取り出すには相棒の作戦が一番良いだろう。犯人を請け負う事を思考越しに伝え、避けるふりをして少しずつ相手と犯人の距離を離していく。だが『アナタ達よりアタシの方が可愛いのに!!』と叫んだところでもう一人がいることを思いだしたようだ。犯人は素早く振り返ったところで相手がこっそりとしかも無防備な状態でボレロに近づこうとしているのを見れば奇声を発しながら相手へと狙いを変えた。だがこちらから注意が逸れたなら好都合、手に持っていたステッキの先端部分を持つと駆け出す為に浮いていた犯人の足を取っ手部分で思いっきりすくい上げてやる。当然犯人はその場にすっ転んで「今だフィリップ!」と声を挙げて)
任せてくれッ! 、…僕達のメモリ、返して貰ったよ。今度こそ彼女に罪を数えて貰おうか、翔ちゃん。
(慣れない服装ということもあり相手の体力は削られる一方だ。状況を打開するためにも一刻と早くメモリを回収しなければ。伝えた作戦通りに相手が犯人を誘導してくれるのに合わせて背後からその場所に近づいていく。あと少しといった所で犯人がもう1人の不在、つまり自分の行方を探して振り返る。既に攻撃が当たりそうな間合いに入っていて咄嗟に身構えるが、注目が外れた相手がステッキを使い足元を掬う。転んだことによって出来た隙でボレロを拾い、犯人の横を抜けて相棒の隣へと戻ってくる。 体勢を建て直した犯人に澄ました顔で向くと取り返したメモリを見せ付けて形勢逆転だと告げる。メインメモリである紫のメモリを相手に渡して自らのメインメモリを構える。得意げな顔で隣の相棒に目線をやり、この姿ならではの愛称で呼ぶとドライバーにメモリを装填して)
さすがは俺の相棒だぜ。…、お前な……だが色んな想いを込めて選んだ服を傷つけるような奴は許せねぇ。いくぜ、フィーちゃん
(手を離れてしまったメモリは相棒によって再び手元へと戻ってきて、メインメモリを差し出されるとニヒルに笑いながらそれを受け取る。メモリが揃った以上あとは変身して片を付けるだけだ、それだと言うのに相手はこんな時に潜入中の名前で呼んできて思わず突っ込んでしまった。だが女装とはいえロリィタ服の良さを知った身としては、彼女に罪を数えると共にこの服を着る楽しさをまた思い出して欲しい。その為にはこの服を着る人間として対峙するのが良いだろう。結局は相手に乗っかるように今日限定の呼び名を使えばメモリを起動させ転送されてきた相手のメモリと共に紫のメモリを差し込むとドライバーを起動させて変身を果たした。さらに外見が変化して犯人は困惑しているが既にメモリの力に飲まれているのか正気は保っていない、『私の方がカワイイ私の方がカワイイ』と繰り返すだけで戦術も何もあったものではなかった。ただがむしゃらに振り下ろされるだけの両腕のナイフを時に躱し、時に弾いて、隙ができたボディに左拳と右足を打ち込めば犯人の体は簡単によろめく。ここは一気に畳み掛けた方が良いだろう、「このまま押し切るぞ!」と声を掛け一気にメモリブレイクに持ち込もうとし)
了解した、一気に決めてしまう! ____…これで一件落着という奴だね。
(相手からツッコミを受けてしまうが少しの間でもロリィタ服を身につけた身として彼女と対峙するべきだと論理的ではない思考が巡る。乗っかるような相手と呼び方に顔を見合せて笑ってしまいながらもメモリと共に意識を転送して変身を果たす。硬い装甲に身を包めばあとは一方的なものだった。何か厄介な戦術や特殊能力があるわけではなく両腕のナイフを闇雲に振り回す姿は駄々をこねる子供のようでもあった。身軽となった身でその攻撃を躱し弾いて攻撃を打ち込む。相手の声に合わせてマ.キ.シ.マ.ム.ド
.ラ.イ.ブを発動させメモリの力を最大限に増幅させた力で飛び上がりキックを打ち込めば恐ろしいド.ー.パ.ン.トの姿は真っ黒で怪しげかつ可愛らしいドレスを着た人間の姿に戻り、直後メモリが砕け散った。彼女の着ている服の端々は解れていたり一部のボタンだけが新しい物であったりと長い間大切に着ているのが分かる物だ。ロリィタ服への愛が何かしらの原因で拗れてしまったのが今回の動機だろうか。変身を解き、元の体で立ち上がった所でイベント関係者が警察を呼んでくれたようで会場の入口から見慣れた刑事の顔が見えた。別人に見えるメイクをしたとはいえこの格好で鉢合わせて事情を聞かれるのは色々と気まずい。相手の手を引いて死角になるような大きなパネルの裏に隠れるように逃げ込むと安堵の息を付きつつも事件解決を労って)
……危ねぇ、ジンさんに見つかったら終わりだ。あとは彼女が心から楽しくあの服を着れりゃいいんだがな。じゃないとこいつが泣いちまうぜ
(メ.モ.リ.ブ.レ.イ.ク.を果たして化け物が元の姿に戻れば中に隠れていたのは可愛らしいゴスロリ服の女の子だ。節々から愛が伝わるその服に彼女が純粋にこのイベントを楽しめていたらと思いを馳せてしまう。そうしているうちに向こうから喧騒が聞こえてきて、それが警察の一団だと気がつけば思わず声が出そうだった。当然先頭をきるのはジンさん、次いでマッキーだ。辛うじて見た目は誤魔化せるにしても声でバレる可能性は十二分にありえる。そうなればもういろいろと終わりだ、永遠にマッキーに弄られ続けるに違いない。一瞬体が固まってしまった間に相手が動き出す方が早くパネルの裏へと引っ込むと同じく安堵の息を吐いた。後のことは警察に任せる事にしよう。これで晴れて事件は解決、依頼人にもいい返事が出来そうだ。ただ犯人の彼女も元はロリィタ服を愛していたはず、全ての罪を償ったあとにもう一度その心を取り戻して欲しいものだ。残念ながら犠牲になってしまったボレロだったものに目を落としながら「もったいねぇなぁ」と名残惜しげに呟いて)
時期を見てこっそり抜け出そうか。 …きっと大丈夫だよ、メモリの効果が抜けて落ち着けばもう一度素直な気持ちで自分の可愛い服に向き合えるはずさ。 ボレロとして使うのは難しいけど布として持って帰ればなにかに使えるかもしれないね。
(いくらこの格好に慣れてきたとはいえ知り合いに見られてしまうのは出来れば避けたいことだ。慌てて相棒を連れ出してパネルに隠れて初動捜査が終わるのを待ちながらも今後の動きを確認する。そんな中相手が話す言葉にぽつりと根拠はないが大丈夫だと呟きを返す。メモリを常習すればその分その人の欲やマイナスの感情・思い込みを加速させて正常な思考が出来なくなってしまう。その影響で暴れたり人に危害を与えるケースが多く、ほかの事がおざなりになってしまうが彼女は会場の情報をチェックして可愛らしいゴスロリ服に身を包んでいた。多少屈折してはしまったがこういった服が好きという思い自体は消えてないはずだ。メモリの影響下から離れて冷静になればまた素直に服を着てイベントを楽しむことだって出来るだろう。一方でド.ー. パ.ン.トの攻撃を受けたボレロはズタズタに裂かれていて衣類としてはほぼ意味を成していない。高い店なだけあって良質な布を使った服ほ末路を勿体無いと嘆く相手に服としては難しいが他の道があるはずだとアドバイスを送っておく。女装の時の髪飾りや小物を作ったりと使いみちも色々あるだろう。捨てる事無く持ち帰ることに決めると丁度初動捜査が終わったらしく遠くから賑わいが戻ってくるのがわかる。どうやらゆっくり進行ではあるがイベントを再開するようだ。「まだ撮影を続けるかい?」とからかう様に問いかけてみて)
…そうだな。彼女は今もロリィタ服を愛してる、その気持ちがあればきっと大丈夫だ。ならこっちは成果を称えて大事に置いとくか。____もう黙って澄ました顔すんのは勘弁だから遠慮しとく。あ、でも写真だけ貰って帰らねぇと
(相手の呟きに意外そうに目を瞬かせる。出会った当初は人の気持ちに興味がないとまで言ってのけたのに、今は確信をもって大丈夫だという言葉が何よりも心強い。思わず顔を綻ばせながら頷く。彼女のロリィタ服への愛は着ていた服が十分に証明している、いつかまた彼女が笑ってロリィタ服を着る日が来ることだろう。そうなればこのボレロにも価値があると言うものだ。相手の提案に今度は苦労を労う笑顔を浮かべながらボレロを見つめる。彼女が変わった証でもあり自分と苦労を共にしたものだ、何かの形に変えて傍に置いておくのも悪くなさそうだ。事務所に帰ったら何か考えてみることにしよう。そうこうしている間にイベントが再開したようだ、幸い被害はオブジェひとつが壊されただけで危険は取り除かれたという判断だろう。だがもうあそこに潜入する気力はない、女性のフリをし続けるだけでもなかなかの労力だ。とはいえ努力の成果とも言える写真を貰わない手はない。なにせ相手のこの姿を収めた写真だ、絶対に手元に取っておきたい。警察の面々がいないことを確認したあとイベント会場の入口へと戻る。関係者は二人を覚えていたようで直ぐに写真を渡された。その後このキャンペーンの宣伝に写真を使わせてくれと強くお願いされたが、こちらからも強くお断りしておいた。この写真が風.都.に広まればジンさんも情報屋も写真の二人の正体に気づいてしまう事だろう。有難く写真だけを受け取るとその出来をみようと写真の束を軽く広げてみせて)
それは残念だ、平常心を保とうとする姿はなかなかにハードボイルドだったのに。___ …やはりプロのカメラマンなだけあって本当にこんな空間があるような写りだね。僕達も綺麗に撮られていてこの写真だけなら風.都.一.の美少女だ。
(人は過ちを犯してもやり直すことが出来る。それはあの夜を過ごした二人が一番分かっていることであり、彼女だって愛の向ける方向性しか間違えなければ何時か笑ってこのようなイベントを楽しめる日が来ることだろう。危険もなくなるとイベントが再開されて会場内にロリィタ服を着た参加者や関係者が戻ってくる。取り戻した賑わいは守りたかった平和の証でその様子を見て自然と笑みが浮かぶ。その中で相手に続けるかと誘いをかけてみたが断られてしまった。顔色を変えずに済ました顔をする姿は服装はともあれ一番ハードボイルドっぽかったと思うのだが。とはいえ自分もイベントもこの服装も十分に楽しんだ。からかう様な言葉を向けながらも会場の出入口へと向かう。注目を集めていたからか近づいたら直ぐに写真を渡してくれた。キャンペーンの宣伝も強く求められたが対面のわずかな時間ならともかく、静止画の配布となれば骨格などから人物が分かってしまう可能性だってある。相手のこの姿は身内だけが知っていればいいとの思いも募って丁重にお断りしておいた。写真を受け取り、出入口から少し離れたところで広げた写真を覗き込む。流石プロのカメラマンと謳っているだけあり、余計な背景の映り込みもなくオブジェクトと人物を際立たせるような写り方で二人が元々こういう世界にいると思わせるような写真の数々だ。当然写っている自分達も目を奪われるような綺麗な姿をしていて忖度無しに美少女といえるだろう。多少大袈裟な言い回しで写真の評価をしながら順番に見ていく。二人でさくらんぼのパネルを食べる姿は妖艶にも見えるし、中には隠し撮りされた移動中の姿や耳打ちして内緒話をしてるような構図の物もある。そのどれもが女装した2人の魅力を十分に引き出していて「良い思い出ができたね」と満足げに呟いて)
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