相乗りで何処までも 【 〆 】

あぁ、いつもより熱くて良い匂いがする……、…そうか？___ここも甘い
(緩い笑みと共に酔っているなんて言われれば、この心地良い高揚感と共に一緒に溺れてしまいたいと願ってしまう。本来ならばこの行為を止めて水でも飲ませなければならないのにもうこれを止める気にはなれなくて、ゆっくり這い上がってくる欲望を満たしたいとそちらの方へと思考が動く。極めつけに相手から熱い吐息と甘い声が漏れれば、甘さを求める体はもっとその声を聞きたいと熱をあげていく。もはやこの熱がアルコールのせいなのか激しく鼓動する心臓のせいなのか分からない。自分が与える刺激から逃れようとする相手の後頭部に手を添えてさらに動きを制限すると、今度は耳裏へと舌をゆっくり這わせる。やはりそこは甘くて相手を取り込んでいるような感覚に耳元で熱い息を吐いた。そのまま耳朶を口内に取り込んでしまうと、傷がつかない程度にそこを噛んで離してを繰り返す。まるでそこを食すように耳の端を何度も噛みついていて)

ッ、ぅ…、っん、…ぁ、…しょう、たろ…
（お互いの身体は十分に熱を帯びていて触れる傍から溶けてしまいそうだ。そんな中で敏感な肌を舌がなぞれぱ擽ったさとはまた違う快楽を拾い上げてしまう。そこから逃れようとする動きすら後頭部に添えた手で遮られてしまうと相手から注がれる熱をただ受け止めて敏感に反応するだけしか出来ない。滅多に人に触れさせることの無い耳裏をなぞる舌の動きに小さく身を震わせる。僅かに響く水音も熱い息も欲の乗った声色も鼓膜に響いては更にアルコールを追加したように脳を揺らす。耳朶が相手の口内に取り込まれやわやわと噛まれる刺激に途切れ途切れの喘ぎを口から零す。浮ついた頭はこのまま食べられてしまいたいと過ぎた思考を始める。片方の手は縋り付くように背中に回したまま、もう片方を探るように動かして相手の手を捉えると緩く指同士を絡めて握り甘く恋人の名を呼んで）

フィリップ……なぁ…お前の体、もっと味見してもいいよな？
(耳を噛む度にやはり舌は甘さを捉えている、アルコールでぐらついた思考は願望と事実が入れ替わってしまっているようだ。噛んでも舐めても相手の体は甘い、さらに相手の声は上擦って高くなればそれも甘く鼓膜を揺らす。こちらへ縋り付くように背中に回される手はもっとと強請られているように錯覚してしまって、口は耳の縁を噛む動きから今度はもっと内側へ移動し、耳全体を味わうように舌を動かしていた。相手の手がゆっくりと動きこちらの手を見つけると指が絡まり繋がる。恋人の繋ぎ方をして拙い声で名前を呼ばれると、より相手と繋がりたいと、甘さを堪能したいと、腹の底が蠢いた気がした。頭を押さえていた手を離すとゆっくり這わせながら下へと移動させる。今はこの布で隠れている相手の体、その全てを味わいつくしたい。そしてきっとチョコレートで熱くなっている相手の体はさぞかし甘いだろう。顔を上げ相手を見下ろすと身体を覆う服の下に手を滑り込ませてその柔肌を撫で、熱にやられた目を向けながら問いかけて)

…っん、ぁ…、しょうたろう…、ああ。 きみに食べられてしまうなら本望だ。
（耳の縁をなぞるような動きは内側へと移動してより脳に近い所で水音が弾ける。ぞくりと背筋を走っていた興奮は劣情として形を作り始めて、鼓膜を揺らす音に小さく身体を跳ねさせると共に熱い息を零した。やがて相手の顔が耳から離れていき、代わりに服の下への侵入を許す。相手の手も十分暖かいはずだが、熱持った身体には冷たく感じて身を僅かに捩らせる。十分と高まった身体は直接素肌を撫でられ、もっともっと相手のことが欲しくなってしまう。見下ろす相手の目からも熱と揺らぐ欲を感じられると名前を呼び返し、繋いでいる手をぎゅっと握りしめる。問いかけの答えなんてとっくに決まっている。夢心地の中、熱に浮いた瞳を軽く細めて望みを伝える。このまま相手に触れて感じてこの甘さに蕩けてしまいたい。緩慢な動きで相手のことを引き寄せるとこちらからも味見をするように唇に短く口付けをしてぺろりと舌で舐める。相手の言う通り不思議とその場所が甘く感じられると小さく笑みを零しながら「翔太郎」と手招くように甘く名前を呼んで軽く後頭部を撫でて）

……、…なら遠慮なく……愛してるぜ、フィリップ……
(こちらが相手に触れる度に跳ねて、嬌り、強く握られるその反応が愛おしくて堪らない。熱と色が乗ったこちらを呼ぶ声は甘くて鼓膜さえ溶かしてしまいそうで、その声が聞こえる度に夢心地だった。繋がる手がより強められる、高揚感と浮遊感が同時に支配しぼやける脳内で唯一相手だけが強く輪郭を持って存在している。こちらからも指が絡まる手を強く握り返した、すっかりアルコールと甘さに酔ったこの空間で決して相手を逃さないように。相手に引き寄せられるまま頭を近づければそのまま口付けられ、生暖かで甘い舌がこちらをなぞると背筋がゾクリと震える。頭を撫でられれば『味見』が許容され全てを受け入れられた気がして多幸感で胸が溢れる。口には自然と笑みが浮かんでいた。相手に招かれるままこちらからもその甘い唇に短く口付けを落とすと心に溢れるままの好意と愛しい恋人の名前を口にして、布に隠された身体を顕にした。)


(/ここらへんで暗転かと思いましたので区切らせていただきました。バレンタインという特別な日にプレゼント交換という初めてのイベントで、検索くんが探偵を思って想いがたくさん詰まったプレゼントをしてくれて背後共々とても嬉しかったです！その後の特別甘いやり取りもいつもより甘えたで妖艶な検索くんにドキドキしながらお返事させていただきました。今回もありがとうございます。
この後の展開をご相談させていただきたいのですが、前回はシリアスな事件でしたので今回は緩くギャグっぽい事件はいかがでしょうか？前にお話しておりましたメモリをスラれる話かどちらかが女装して遊園地を捜査するなんてのはいかがでしょう？)

（/暗転描写ありがとうございました。送ってからこちらからお声がけすれば良かったと気付きました、ひとまずこっちだけで返信させて頂きます。ハードボイルドらしくない女性ばかりの空間で探偵君を連れ回せたのも楽しかったです。プレゼントの中身も検索の事を思ってくれるチョイスで初めてのバレンタインをとても楽しく幸せに過ごせたと思います。毎回ぐっとくる返信が来るので背後共々ドキドキさせられてばかりです、ありがとうございます。
ギャグっぽい事件有りですね、個人的には後者が気になります、女装した探偵くんが見たかったり…！ 遊園地の女性限定イベントかカップル限定イベントの潜入で片方もしくは両方女装したり、状況によっては普段と違う服装で意識がよそに行ってその間にスられる的な流れもできそうかなとも思いました。）

(/いえいえ投稿のタイミングとかもありますのでお気になさらず……！検索様に刺さる返信が出来ていれば幸いです。こちらも検索くんに振り回されるのも、それに応じる探偵の反応も含めて楽しませていただいておりますので！
本編で検索くんは女装してましたけど探偵はヤバめな変装しかしてませんでしたからね…是非二人揃って女装する方向にしましょう。ロリータ系の服を着た女性ばかりが狙われる事件が発生していて、遊園地でロリータ服の女性限定で参加できるバレンタインイベントが行われるので次はそこが襲われるだろうとあたりをつけて潜入する、とかはいかがでしょうか？その間にメモリをスられるところもいれていければと思います！)

風.都.、女性限定、ロリータ服……。 今までの被害の条件に当てはまる近辺のイベントが1つ引っかかった。 どうやら風.都.の遊園地で女性限定のバレンタインイベントが行われるらしい。 主催は今回の被害者が愛用していたロリータ服を手掛けているブランド店だ。
（お互いの甘さに溺れながら過ごした一夜。朝起きた二人を待ち受けていたのは二日酔いの頭痛と気分の悪さで疲れた顔で出勤して所長に怒られたのは記憶に新しい。そんな所長からの風当たりが厳しくなった矢先舞い込んできたのはビターな事件だ。おおまかに纏めると近日ロリータ服を身にまとって外に出た女性ばかりが狙われる事件が発生しているらしい。ピンク色の可愛らしい衣装を着た依頼人も先日ロリータ服を着た女性限定のお茶会に参加した帰り道、見知らぬ怪物のようなものに襲われ腕に怪我と服をボロボロにされたらしい。そんな依頼を聞けば引き受けるのがこの事務所だ。被害の概要と依頼人の友達への被害も事情を聞いて引き受ける旨を伝えてから一旦彼女を帰す。それからいつも通り情報を集めていたが分かったのはロリータ服を着た女性が集まるそれも女性限定のイベントでしか犯人は姿を現さない点だ。ひとまず次の犯人の狙いを絞ろうとガレージで地.球.の.本.棚から検索を行う。キーワードからヒットしたのはここからそう遠くない遊園地でのバレンタインイベントだ。被害者や状況の共通点をまとめたホワイトボードに新たにそのイベントの詳細を書き込むと「次に狙われるのはこの場所である可能性が高いだろうね」と相棒に意見を仰いで）


（/そう言って頂けると助かります。つい色々と暴走させがちですがこれからもおつき合いして頂ければ嬉しいです。
良いアイデアだと思います…！検索が依頼の為とか言いながらも探偵君にメイクを施したり慣れないロリータ服にあーだこーだ言うようなやり取りが出来たら楽しそうです。簡単に上記で導入を回しておくのでいつものように上手い具合に乗って頂けたらと思います。）

あぁ、犯人の動向からみて次に狙われるのはこのイベントに間違いねぇ。犯人は女性自身だけじゃなく彼女が大切にしてる服も痛めつける卑劣な野郎だ。絶対に捕まえてなる。女性限定イベントなら俺たちは入れねぇし、なんとか警備員か清掃員の振りして潜入しねぇと…
(二日酔いで頭が痛いのに所長からのスリッパが飛んできてさらに頭がガンガンと傷んでいたが、風.都.の風が運んできた依頼人の女性を前にすると一気にその頭も冴える。地.球.の.本.棚.に入る相棒の傍らでホワイトボードに纏められた情報を眺めながら検索結果を聞いているとたどり着いたのは遊園地でのイベントだった。有名ロリータ服ブランドが関わる大規模なイベントだ、これまで小さな集まりにも狙いを付けていた犯人であればきっとこのイベントも見逃しはしないだろう。依頼人も含めこれまで被害にあった女性達は自分の服を愛している人達だ、それを嘲笑うかのように服まで切り裂く犯人を風.都.の探偵として黙ってはおけない。狙いは決まったものの問題はそれが女性限定イベントという点だ。こういう時に会場内に入るにはイベント関係者に紛れるのが定石だ。遊園地側と交渉するべきだろうがジンさんからの依頼でない分一介の探偵で運営側と交渉するのは難航してしまいそうだ。やはりここは黙って潜入するべきかと頭を捻っていて)

(/そうですね！ぜひぜひお互いの服やらメイクやらをやいやい言いながら決めるとこからじっくりやりましょう。そして導入ありがとうございます。いつも通りやりたい展開どんどん入れて楽しんでいきましょう。/こちら蹴り可です！)

問題はそこだね。 被害の状況を見るにアキちゃんにお願いするのも気が引けるし…。 …そうだ、君が女性の格好をして参加者として潜入するというのはどうだい？
（次に狙われるであろうイベントは掴めたが問題はそこを見張る為の手段だろう。被害者達の中には被害届を警察に届け出ている者もいるが、残念ながらそれだけで次の現場になるかもしれないイベントを警備してくれる程警察のフットワークは軽くない。そちらの線に頼れない以上自分達で何とかしなくてはいけない。もう一つ身近な女性に頼る策もあるが、直接犯人に襲われる可能性もある以上気は進まない。ペンに蓋をして考えているとふと相手が以前変装が得意だのと語っていたのを思い出す。他の人にお願い出来ないのなら自分達がその空間に適切な格好や人物になれはいい。くるりと相手の方に向き直すと良いアイデアだと言わんとばかりに笑顔を浮かべ、相手自身がロリータ服を着て参加者になればいいと案をだしてみて）

犯人はド.,ー.,パ.ン.ト.の可能性が高いし、さすがにアキコを行かせるのはな………は？ンなもんやるわけねぇだろ！このハードボイルドな俺にあんなフリフリの服似合わねぇしな。それに、それを言うならお前の方が適任だろ。顔も中性的だし
(この事務所で女性といえば所長様だがさすがに実害が出ている以上そんなところへ放り込むわけにはいかない。頭を悩ませていると相手の顔がこちらへと向く、その顔には笑顔が浮かんでいて良いアイディアが浮かんだと顔に書いているようだ。だがその内容を聞けば数秒固まってしまった。女性の格好、すなわち女装だって必要であればするがあの会場に潜入するということは即ちロリータ服を着なければならない。あの類の服を否定するわけではないがハードボイルドの対極にあるような服を着るのにはさすがに抵抗がある。いつも通りの理論を持ち出し人差し指を振って反論するがイベントまでに時間がない中で会場にスムーズに潜入するのには一番いい方法かもしれない。それに参加する女性の傍にいれば彼女らを守れる上ターゲットが自分に向けば被害も抑えられるだろう。心の中で最適解だと分かっていながらもせめてもの抵抗として相手が女装すべきだと指さししながら言って)

そうやってやりもせずに決めつけるのは君の悪い癖だ。 僕では実際に犯人が現れて暴れでもした時、その動きを抑えるのは難しいよ。君のその意地で風.都.の女性達が被害にあっても良いのかい？
（笑顔で自分の思い着いた案を告げればその顔はフリーズでもしたかのように固まった。数秒していつものハードボイルド論と共に否定の言葉が返ってくるが現実的な話、他に有効的な手立てはない。骨格などの性差から彼女達のように可愛らしくなるのは難しいかもしれないがそれらしい格好と髪型になれば紛れ込む程度なら可能なはずだ。その態度を指摘しながらも今度はこちらにその話題が回ってくる。以前も似たような理由で囮役を行った気がするが女装は趣味では無いし筋肉量の差はあれと背丈はほぼ同じなのだから条件でいえば同等だ。それに今回の場合、直接犯人の襲撃を受ける可能性が高いのだから平均か少し下の自分より身体的能力に優れている相手の方が適任である。しっかりとした合理的な理由を説明しながらも最後は相手の1番根っこであるこの街を守る為という大義を持ち出して煽るように問いかけて）

グっ…………あ゛ーーーー分かった！風.都.のためなら女装でも何でもしてやるよ！彼女にもっかい連絡だ。あの子が服買ってるとこ教えて貰って、俺達も買いにいくぞ！言っとくけど俺達二人分だからな！
(相棒のいう理屈はもっともだ。自分に女装が似合うのか、本当に女性に見えるのかは置いておくとして、スムーズに会場に潜入しかつ犯人を直接捉えられる作戦はこれしかない。相手を送り込むにしても所長と同じで怪我をさせる訳にはいかなかった。さらに追い討ちのように風.都.の女性を守るためにという言葉が投げかけられれば息を詰まらせる。当然アキコにも相手にも被害にあって欲しくは無いが最も守るべきはこの街に暮らす人々に違いない。長く息を吐いたあと、ヤケクソ気味に叫び声を上げると同時に決意を固めた。こうなれば犯人が一番に狙うような完璧なロリータ女子になるしかない。決意が固まればやることは決まっている、何よりもまず女装の準備だ。依頼人の彼女に電話して今回のスポンサーになっているという店を紹介してもらい、そこで服を選ぶのが一番だろう。ス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.を取り出して早速依頼人へと連絡しようとするがその前に釘を刺すように二人共女装することを強調しておいた。この街のためとはいえ一人きりで女装するなんて耐えられない。ついで「アキコに事情説明しといてくれ」と所長への報告を頼めば依頼人へと電話をかけ始めて)

ふふ、それでこそ風都を守る探偵だ。 え、僕もするのかい？ 別に構わないけど…。 分かった、伝えてくるよ
（今回のケースにおける女装の目的を告げれば言葉を詰まらせた。ハードボイルド論とこの街の人々の平和、天秤にかけるなら必ず後者を選ぶのが相棒だ。予想通りやけくそ気味に声を張り上げてこの案に乗る事を宣言されるとつい笑みが零れる。こういう時の決断力や精神性は文句なしにカッコ良く男らしいと思うのだが今言葉にすれば嫌味に聞こえてしまうだろう。心の中でおもっておくことにしよう。方向性が決まれば潜入するための準備だ。服の調達をしようとする相手だったが二人分という言葉に目を丸くする。今の話の流れ的には相手だけが女装すればいい話だった。キョトンとしながらもあの独特の服装に興味を抱かない訳では無く、仕事のためそれも相手と一緒ならば悪けないと判断する。巻き込まれたような形であるが仕方ない。所長への報告を任せられるとひとまず先に事務所にあがり、経緯とこれからやることを伝えておいた。二人で女装して現場に忍び込むと話せば所長の口元が面白がるようににやける。服を経費で落としてもらう許可をもらうがその条件として『報告の一環で女装した時の姿は写真で撮ってくること！』と言われてしまった。その他化粧道具は所長の方で準備してくれる話をしながら相手が上がってくるのを待ち）

俺一人じゃできねぇっての……___依頼人から店の場所教えて貰って店に連絡も入れといた。……よし、服買いに行くぞフィリップ
(相手は二人で女装することに驚いていたようだが発案したからには責任を持って貰わなければならない。それにおそらく身長の関係で嫌でも目立つ運命にあるのだ、一人だと不審がられるかもしれないが二人いれば怪しさよりも物珍しさが勝って目立ちはするだろうが怪しい目を向けられることはないはずだ。そう言いつつも結局は一人だけ女装するのが嫌なだけなのだが。相手を見送ったあと依頼人に電話をかける。こちらの作戦に彼女は驚いていたが事件解決のために動いている事に喜んでくれいてるようでお店に口利きしてもらった。いきなりロリータ専門店に男二人で押しかければ店員も驚くだろうが、これでスムーズに事が運びそうだ。電話を終えて事務所スペースまで上がってくると早速所長のニヤケ顔がこちらに向けられる。完全に楽しんでいる様子に気づかないフリをしながら努めていつも通りに事務所の出入口に近づくと愛用のハットを手に取り相手へ出発すると告げて)

ああ、分かった。それじゃあ行こうか。___ ここのようだね、見るからに可愛らしいというか僕達が浮きそうなお店だ。
（軽い変装や浴衣などといった季節の服の経験はあるが、こうもガッツリテイストの違う女性服を着るのは初めてだ。今の心境を分析するなら未知の服への好奇心半分悲惨な絵面になる不安半分といったところだろうか。相手が事務所スペースに戻ってきて依頼人や店に話を通した旨を聞けば早速出発だ。露骨に所長をスルーしているようで自らもそれに便乗して事務所を後にした。依頼人から教えてもらった店はサブカル系の店が立ち並ぶエリアの一角にある。表のマネキンに飾られている服はどれも依頼人が着ていた物と似たようなテイストでフリルやリボンなとが多用された可愛らしいデザインの物だ。これを着ることになるのだと改めて思えばつい素直な感想を口にする。バレンタインフェアの会場よりも男二人で立っていることに強く場違い感を覚えるような場所ではあるが依頼解決の為には仕方がない。店のドアを開いて中に入ればこれまたロリータ服を着用している店員が出迎えてくれる。話は通っているようで「話に聞いていた探偵さんですね！」と店員が笑顔を見せたかと思えば可愛らしい服の並ぶ店の奥に案内されていき）

先に連絡入れといて正解だったな……、…これは……なかなか難航しそうだ…
(あまり寄り付かないサブカル系の店が並ぶエリアのさらに縁のないロリータファッション専門店、表に飾られた服を相手と並んで見ればそのインパクトに言葉を失っていて呆然としながら頷く。このフリルとリボンが溢れた店構えの中にはさらにそれらが広がっていることだろう。意を決して中に入れば店員が出迎えてくれた。どうやら服だけでなく靴やタイツ、ウィッグまで揃えてあって一通りのものはここで揃えることができそうだ。店員さん曰く潜入するイベントの主催者として探偵さんに協力してくれる、とのことで特別価格で販売をしてくれるそうだ。値段を気にせず選ぶ事ができそうだが、周囲を見渡せばまるで御伽噺に放り込まれたようにファンシーの洪水が襲いかかってきて頭がクラクラする。未だこの場所に相手と男二人でいることに違和感を抱きながら店員に礼を伝えておいた。さてここからが大変だ。女性に見えるような服を選ぶ必要があるが化粧云々もよく分からない身としては直感で服を選ぶしかない。ひとまず中性的な顔な相手から選んだ方が早いだろう。「とりあえずお前の分探すか」と声をかけつつ手頃なドレスをひとつ手に取っていて)

全く縁のないジャンルの服だから何が良いのか判断に困るね。 その服のように派手なデザインにして服に注目を集めるか控えめな物にしてその場に馴染むようにするか…。 …例えばこういう物だろうか？
（専門店を名乗るだけあって品揃えは豪華だがその分全く縁が無いものからすれば何がなんやらだ。店は全面協力の姿勢で特別価格で販売してくれるようで財布の方は心配しなくて良さそうなのは幸いではあるが。ひとまずぐるりと店内を見て回ってみる。ロリータ服と一言でいってもどうやら系統があるようだ。例えば相手が手に取った物はフリルが大量にあしらわれたいかにもなドレスだ。現場に潜入する以上男だとバレずに周りに溶け込める様なものが良いだろう。インパクトの大きいデザインの物を着て性別の違和感から意識をそらすかその場に馴染むように似合う物を着るか。「意外に堂々としてる方が分からないものですよ！」との店員のアドバイスの元、何となく目に付いたのは貴族のお嬢様のような落ち着いたストライプ柄のグリーンのワンピースだ。手に取って自分に何となく合わせてみる。フリルがついた真っ白なブラウスとセットで売り出されていて、ワンピースにはハイウエストの部分にコルセットのような装飾でくびれがありそこからふわりと裾にフリルが重なったスカートが広がっている。全体的に上品な印象で他の物よりも挑戦しやすいデザインだろう。「それはクラシカルロリィタという種類で西洋のお嬢様のようなデザインが楽しめるお洋服なんです！」と店員の解説が入りながらも相手の意見を伺ってみて）

あぁ、しかもこんなに種類豊富とはな……悪目立ちすんのが一番マズイからできれば場に馴染む方がいいが…………かわいいな……あっ！いや…いいんじゃねぇか？顔立ち上品なんだからお嬢様ってのも合ってるし、なんなら髪もそっち方面で纏めりゃ良くなりそうだ
(手に取ったのは店の一番目立つ所に置いてあった服だがこれは所謂王道なものらしい。店内をよく見回せばそれぞれの系統のようなものがあるらしく、ますます選択肢が広がればさらに頭を捻ってしまう。服に注目を向かせ顔の印象を薄くするのも手だが、長時間滞在する事を考えると場に馴染む服の方が潜入に適していると言える。ただ派手な服を選べばいいという話でもないとなれば余計に難易度はあがった。こちらの不慣れさを見かねてか店員もアドバイスを添えてくれるようで有り難い限りだ。暫くいくつかの服を出しては戻しを繰り返していたが、ふと振り返ると相手はひとつのドレスを体に当てていた。相手を象徴するグリーンでありながら控えめな色合い、本来女性特有のくびれを出すためのコルセットだがあの大きさなら相手の体にフィットすることは自分がよく知っている。そこからふわりと広がるフリルは派手すぎず上品で店員の解説する通りまさにお嬢様といった雰囲気だ。得意げな顔やすました顔をよく浮かべる相手にはそのコンセプトも合っていて、思わずボソリと本音が漏れてしまった。慌てて首を振って言葉を正すと今の発言を誤魔化そうといつもより早口で捲し立て)

、ならメインの服はこれにしよう。雰囲気に合う靴やアクセサリーを見繕って貰えるかい？ 次は君の服を選ぶとしよう。パステルカラーというよりも普段のシャツやネクタイに近い色の方が似合いそうだね…
（何となく手に取った服を試しに当ててみながら相手の意見を伺うとその視線が服を辿った後、ぽつりと感想が零される。本当に意識せぬ発言だったのだろう、その後慌てたように早口で捲し立てられるのだがその内容もこちらを褒めるような物だ。本来男である自分に可愛いはあまり褒め言葉ではないのだが、恋人から告げられたその一言は着る服を決めるのに十分な理由だろう。緩く笑って直ぐにこの服にすることに決めると店員にこれに合わせたその他のコーデの品を任せることにする。こちらの服の方針が決まれば今度は相手の番だ。普段の格好を見慣れているせいかこの店の服を着ている姿があまり想像出来ない。どちらかと言うとピンクや水色といったカラーよりも普段の服でも見たことがあるような青や紫、ボルドーやグレーといった色の方が似合うかもしれない。ミリタリーロリィタやゴスロリなどのコーナーを含め自分の服を探すのよりも真剣に服を取り出しては遠くから合わせたりなどして似合う服を探していて）