検索 2022-07-09 20:46:55 |
通報 |
なッ?!フィリッ、プ……嘘だろ、お前……いつの間にコネクタを……いくらお前が相棒でもそれだけは許せねぇ!___さぁ、お前の罪を数えろ!
(押しのけた一体は尻もちをついて、もう一体はこの場からひいていく。どちらにせよド.ー.パ.ン.ト.に対して生身では太刀打ちできない。相棒の到着を待っていたがその前に目の前の敵から耳によく馴染む自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきて目を見開く。その声は確かに相棒のものだ、何よりも大切な人の声を間違えるはずはない。それなのにその声は目の前にいる街を泣かせる奴から聞こえてくる。動揺で瞳が揺れた、その際に不気味な体躯の下に隠れた相手の姿が一瞬映る。その頬には組織のメモリを使用している証が見えて息を飲んだ。目の前の事実を信じたくない、しかしこちらへ向かってくるのは紛れもなく相棒なのだ。思わず半歩さがるがそこで踏みとどまる。何よりも大切な相手が最も憎むべき姿になってしまったのが信じられない、そして許せない。あらゆる事を叫びたい気持ちを抑える、今は相手を止めなければならない。例え生身であってもだ。罪を重ねた人間に自分は永遠に投げかけなければならない言葉がある、例えそれが大切な相手でも。左手で相手をゆっくりと指すと動揺で揺れる目で、しかしはっきりとした言葉で探偵としての言葉を口にする。意を決したように叫ぶとそのまま相手へと殴りかかって)
…翔太郎? さっきから何を言ってるんだ、君は 。 …ッ、誤解だ、翔太郎。 僕はメモリを変身以外に使ってないし、ド.ー.パ.ン.トでもない。 一回落ち着いて僕の話を聞いてくれ!
(もう一度名前を呼んでみれば今度はしっかりと自分の名前が呼び返されるのにその目は信じられないものを見たように見開かれ揺れている。明らかに異常な反応だ。こちらから見ればいつもの自分と相棒で何が起きているのか状況が掴めない。相手からこぼれ落ちる言葉も向けられる感情も身に覚えがないものばかりで困惑の色を浮かべることしか出来ない。かろうじて話が噛み合ってないことは理解すれば乾いた声でその意味を問おうと声をかけた所でいつも罪を数えさせる時に二人でする指先と言葉を今は何よりも大切な相棒から向けられる。大きく目を見開いて息が詰まった。叫びながらも殴りかかってくる拳を何とかすんでのところで躱す。ずっと二人で一人として戦ってきたから分かる、相手は本気なのだ。有り得ない光景に顔を歪ませながらも何とか止まりそうになる思考を必死に動かす。先程の戦闘の奇妙な現象、向けられた敵意、動揺した相棒の言葉。それを線で繋げば相手にはメモリの能力で自分がド.ー.パ.ン.トに見えてるのだと察しがついた。その誤解を解く為にもまずは落ち着いてこちら話を聞いて貰わないとならない。だが相手から嫌悪や失望にも似た感情を向けられると交渉に冷静な判断が出来ず距離を取りながらもひたすら必死で誤解だ無罪だと訴えかけて)
っ、……じゃあなんでお前は今ド.ー.パ.ン.ト.の姿になってんだよ!お前もしかして好奇心に負けて……じっくり話を聞かせてもらうぜ、お前を拘束してからな
(正面から殴りにかかったがすんでのところで躱されてしまう。やはりメモリによって強化された体に対してそう簡単には行かないかと、それさえ相手がド.ー.パ.ン.ト.になっているという思考に引っ張られてしまう。相手が必死な声色でこちらに対して誤解だと呼びかけてくるが、相手の姿と先程のコネクタを見せられて何がどう誤解だというのか。相手の姿は紛うことなき敵の姿になっている。強く拳を握った、相棒の声は聞こえているのになぜかその言葉を受け入れる事が出来ない。相手がド.ー.パ.ン.ト.になってしまったのだと、その考えから離れられずにいた。偏った思考は嫌な想像ばかりを掻き立てる。相手がメモリを使ってしまった理由で最初に浮かぶそれらしい理由に思い当たると顔は悲痛に歪む。相手がそんなことをするはずかないと信じたいのにその思考へとたどり着けない。声と体の震えを何とか抑えるようにゆっくり息を吐き出す。このままでは埒が明かない、まずは相手の動きを抑えなければ。ゆっくりと左手腕を相手へ向ける。ス,パ,イ,ダ.ー,シ.ョ.ッ.ク.のワイヤー発射口を相手に向け努めて静かな口調で語りかけていて)
それはさっきのド.ー.パ.ン.トの能力でそう見えているだけだ。 僕が、そんな事する訳ないだろう…。…っ、ごめん、翔太郎。また後から連絡する、
(やはり推測は当たっていたようだ。何かしらの能力の結果、相手には自分がド.ー.パ.ン.トの姿に見えているのだろう。その理屈を何とか訴えてみるが相手に響いている様子はない。寧ろ何故メモリに手を伸ばしたのかと絶望したように悪い方向に思考が引っ張られてしまっている。共に罪を背負ってこの街を守ろうと誓った決意の強さは相棒も知っているはずだ。幾ら興味があろうとも相手と共に過ごす中で分別はついててきたつもりだし、何度も街を泣かせてきたメモリの力を無くそうと二人で一人としてずっと活動してきたつもりだ。それなのに、好奇心でメモリに手を伸ばしてしまったのだろうと自分の言葉を信じて貰えない冷たい虚しさが胸に張り詰める。今は信じて貰えるような言葉や状況を説明するべきなのに実際に口から零れたのは震える小さな否定の言葉だけだ。そうしていると相手が左手をこちらに向ける。その手首にはス,パ,イ,ダ.ー,シ.ョ.ッ.ク.があって自分を捕らえようとしてる事とその意味が分かると息が詰まった。このまま大人しくしていればちゃんと話を聞いて貰えるだろうか。否、きっとド.ー.パ.ン.トだと決めつけられた上で詰め寄られるに違いない。相手に信用されていないのだと思ってしまえばいつもは無条件に信じられることも疑いの目を向けてしまう。となれば拘束される訳にはいかない。時間が経てば能力は消えるかもしれないという希望、そして何より今の相手の目をずっと向けられるのは息苦しくて堪えられない。そんな感傷的な思考に支配されると背後でス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンを起動する。悲痛に歪んだ顔で謝罪と伝言を残すとワイヤーの発射を邪魔するように相手に向けス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンを飛ばすと相手に背を向けその場から逃げ出そうと走り出して)
っ、い…んな言い訳……なっ!くそ、待てフィリップ!
(ス.パ.イ.ダ.ー.シ.ョ.ッ.ク.を真っ直ぐと相手へと向ける。こんなことをする日が来るなんて考えたこともなかったのに、今何よりも大切な相棒を拘束するためにその発射口を相手に向けている。他の可能性を考えようとするのに思考は強制的に『相手がド.ー.パ.ン.ト.だ』という結論へと引き戻されそこから逃れられなくなってくる。思考ががんじがらめになっている最中相手の震えた小さな声が聞こえた。その声が鼓膜を揺らすと激しく脳内を揺さぶられる感覚があって思わず右手で額を押さえた。何かが扉をガンガンと乱暴に叩いているよう煩くて、だが耳を傾けなければいけない気がするその音、なにかを必死に訴えている内なる自分の声。眉を顰めながら相手を見つめる。その姿はやはり街を泣かせる敵の姿だ、それなのに自分の中の何かが脳内を支配する思考に必死に抵抗を試みているような気がした。探偵なら目の前の事実から目を逸らすなと言い聞かせるように相手の言葉を一蹴しようとするがその言葉も消え入りそうになった。痛む頭を抑えながら相手を睨んでいると悲痛な顔と共に伝言を告げられる、その顔は一層頭の痛みを増幅させて動きを鈍らせるには十分だった。その間にス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.が飛んでくればこちらの動きを邪魔するように周囲を飛び回って、思わずそれを振り払うため相手から目を離してしまった。ようやく振り払った頃には相手は遠くを走っている所で思わずその名を叫ぶ。相変わらず頭は痛い、しかし相手が敵になってしまったというその思考は振り払えないまま相手を追いかけ始める。地の利はこちらにある、相手はまだこの街の地理をあまり知らず一緒に行ったことのある場所くらいしか土地勘はないはずだ。つまり検索する暇を与えなければ追いつけるはず、その姿を見失う前に遠くを走る相手の後を追いかけ始めて)
っ、ひとまず何処かでやり過ごさないと。 …、もしかして。
(背を向ける直前相手が額を押さえて何か言いたげだったように見えるが今はそれに気を配る余裕もない。逃げてしまえばより疚しい事があると疑わされてしまう可能性もあるがもう今更だ。どうやらス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンは指示通り相手の行く手を遮るように飛び回ってくれているようでその隙に走って距離を離す。少しして様子を見るために振り返ると遠くから相手が追いかけて来るのが分かる。この離れ具合なら直ぐには追い付かれないだろうが、体力と地の利では圧倒的に相手の方が上であり闇雲に逃げては逃げ切れない。そもそも相手から逃げる必要のある今が異常だ。通ってきた道や今まで歩いた事のある道を繋げて可能な限り左折右折を繰り返しながら走っているとこの街有数の大きな屋敷が見えてきた。もちろん存在は知っているし以前の依頼で所長が訪れたこともある場所だが不思議と今は目についた。そしてふと脳裏を過ぎるのはあの夢の記憶だ。登校中から始まった夢だったがこの辺を通ったことがある。その際、屋敷で働く人が通る道なのか普通に通り掛かっても入っていかないような細道があったのだ。相手がその道を知っていても自分が知っているとは思わないだろう。それに賭けて夢での記憶通りに進むとその細道を発見する。相手の姿は角の先で見えない。意を決して細道に入り少し奥に入ったところにある観葉植物の影に身を隠せば上がる息を殺しながらやり過ごそうとして)
、どこ行きやがった…メモリの能力でも使ったのか?……フィリップ
(ス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.を追い払って走り始めたものの相手との距離は大きい。いつもは頼りになるガジェットに妨害されてしまうとは。そこで本当に相手がド.ー.パ.ン.,ト.ならばわざわざガジェットで妨害などしないのでは無いかという疑問が脳内にジャミングしてくるが、すぐにそれよりも早く相手を捕まえなければという思考が脳内を支配する。頭の中にここら辺一帯の地図を描けば相手が知っている場所を軸にその逃走ルートにあたりをつける。まだ距離はあるが相手の体力がすぐに尽きるのはよく知るところ、このまま走り続ければいつかは追いつけるだろう。相手を追うように同じく右折左折を繰り返していたが、ある地点で忽然とその姿が消えて目を見開く。確かにここを曲がったはずなのに。走るのを止めてゆっくり周辺を見回す。この場所にあるのはこの街で特別大きな屋敷だけで隠れられる場所はない。まさか所長のようにこの中に入ったわけでもないだろう。ゆっくり注意深く観察するよう歩いていると、屋敷の片隅にある小さな細道が目に入る。確か使用人達が使う小道で表からは目立たない場所にひっそりとその道は横たわっている。遅い歩調のままその細道へと一歩踏み入る、道に積もっていた枯葉がくしゃりと潰れる音が周囲に響いた。そこから目を凝らしてみるが静かに草木が揺れているだけだ。確かにここなら身を隠せるかもしれないがこの道は知る人ぞ知る道、ここに来たことさえない相手が知っているはずはない。そうなると一体どこへ消えたというのか。思いつくのは人ならざる力を使った可能性、またひとつ相手が罪を重ねたのかもしれないと思えば胸は握りつぶされるように痛い。大事になるまえに早く探し出さなければ。焦る気持ちを胸に細道に踵を返すと、メインの道へと戻ってまた相手を探すために駆けていって)
…はぁ、…何で僕は逃げているんだ。……翔太郎…。
(観葉植物の裏で息を潜める。ゆっくりと聞き慣れた足音が近づいてきては細道の前で立ち止まる。それから中へと一歩踏み込んだのか枯れ葉を潰すような音が響いて可能な限り身を縮こませてその場をやり過ごそうとする。狙い通りこの先には行かないだろうと踏んだのか足音が遠ざかって元の道へと戻ったのを確認すれば緊張も解れてその場に座り込みながら息を吐く。大切な相棒が自分を探しているのにまるで組織に追われているように逃げている。一息つける状況になればこの状況の異常性と向けられた敵意や失望の色を思い出してまた胸が痛む。何かの能力で自分がメモリに手を伸ばしたのだと勘違いしているだけで相棒は全く悪くないのは分かっている。それでも初めて向けられた拒絶や敵対の感情の処理に心がついて行かなくて思わず相手の名前をよぶ。あの能力の効果はいつまでだろうか、短期のものなら良いがこれまでのメモリのようにメ.モ.リ.ブ.レ.イ.クするまで継続するのならば。それまでずっとあの目をあの顔を向けられないといけないのだろうか。それに聞く耳を持たない相手を何とか説得して共に並ぶ姿が今はあまり想像しにくかった。だがいつまでもこうしている訳にはいかない。 自分はド.ー.パ.ン.トではなくこの街を守る探偵なのだから。少しずつ落ち着いてきた頭で今までの要素からあの吹き出しのようなものを打ち込まれた人物の認識を操作する能力なのではないかと推測する。となれば客観的に撮った写真や第三者の証言があれば自分がド.ー.パ.ン.トではないと説明できるだろう。その前に能力が消えていればそれでも良い。この場で一人考えているとまた変な考えに引っ張られそうだ。丁度妨害に活躍してくれたス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンが空なら手元に戻ってくると勇気を出す為ポケットのお守りをぎゅっと握ってから相手に電話をかける。そこで「……翔太郎、今度こそ逃げないから話がしたい」と冷静を心掛けた声でいつの日かシュークリームを買いにも行った繁華街の入口を指定してみて)
……っ!フィリップ!お前今どこに………分かった、すぐにいく
(考えられる道をいくら探しても相手は見つからない、どこかへ潜伏しているのだろうか。ずっと走りっぱなしで流石にばててくれば一度立ち止まる。乱れた呼吸をゆっくり整えながら地面を見つめた。一体なぜ相棒はメモリに手を出してしまったのだろうか、一緒に居てその変化に気が付かなかった自分が情けない。メモリに手を出した理由が分からなくて重い息を吐く。一緒に何処までも行こうと何度も誓った相手が本当にあんな物に手を出すのだろうか、あんなにも悲痛な声でこちらに呼びかけていたのに。だがそう考えた直後には頭に軽い痛みが走って、思考は早く相手を見つけなければというものに切り替わった。その直後にス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.が鳴って手に取ると相手からの着信で息を飲む。慌てて電話に出るとまくし立てるように居場所を問おうとするがその前に話がしたいという申し出と場所を指定され、軽く息を吐いて平静を取り戻してから短く返事をして電話を切った。場所は繁華街の入口でここからそう遠くは無い、直ぐさま指定場所へと走って移動した。繁華街の入口にたどり着くとまだ相手は来ていないらしく、周囲では日常の光景が流れていた。つい先日二人でここを歩いた時はあんなにも幸せな時間が流れていたというのに今や相手は倒すべき敵となってしまった。人通りの多いこの場所で相手は何をするつもりなのだろうかとまた胸の内には不安が渦巻いてくる。どうか周囲にいる人々を襲わないでくれと願いつつ姿を現すのを待っていて)
…これで何とかなると良いけど、最悪の場合の逃げ道も確保しておこうか。____ …翔太郎、待たせたね。
(話がしたいと申し出を行うと比較的落ち着いた声色で短い返事が聞こえた後電話が切れる。ひとまずアポが取れたことにぽつり呟きを零す。一旦距離と時間を置いて能力の効果が消えるか冷静な思考になっていればいいのだが今の声色からは伺えなかった。指定したのは人が多く通る繁華街の入口だ。第三者が自分を見ても逃げ惑ったりしないという事から自分がド.ー.パ.ン.トではないと証明出来ると思うのだが能力の強さ等が分からない以上断言は出来ない。説得出来なかった際のパターンも考えておくべきだろう。約束をした場所付近の地理を簡単に検索して万が一の場合の逃げ道を確認するとその場から立ち上がり、指定場所へと向かった。その場所に辿り着くと見慣れた後ろ姿を発見した。大切な相棒の隣が自分の居場所のはずなのに今はそこへ行くのが少し怖い。それでも目を軽く瞑って気を入れなおすと相手に近付き、出来るだけいつも通りの口調で話しかけて)
……フィリップ。どうした?罪を数える気に……あ、?…なんで人が逃げねぇん、だ……
(静かにその時を待っていると背後から随分と聞きなれた声が聞こえた。ゆっくりと深呼吸してから振り向く、そこに立つのはやはり敵の姿だった。途端に胸には相手を捕まえなければと急かす何かが満たされていく。それはすぐにこの表情を変えさせて静かに睨むよう相手を見据えた。だがまた相手の姿が歪む、蜃気楼のように一瞬いつもの姿が見えて激しい頭痛に思わず手でハットを押さえる。明らかに相手がこの場に居られるのはおかしいのだ。この姿を見れば普通人は悲鳴を挙げて逃げていくはずなのに、周囲の人々は平然と歩き続けている。これまでずっと『相手はド.ー.パ.ン.ト.』だとその考えから離れられなかったのに、今はこの決定的な矛盾を見過ごせなくなる。相手の悲痛に叫ぶ言葉が自然と思い出されるもそれを妨害するように頭痛は激しくなってその場から動けなくなり)
っ、…! さっきも言った通りあのド.ー.パ.ン.トの能力でそう思い込まされているだけだ。ほら、いつもの僕だろう?
(振り向いた相手の瞳が睨むよう物に変わればまた突き放されるような感覚に奥歯を噛み締める。だがここで引いては何も変わらない。それから直ぐに突然相手がハットを押さえて苦しみ出す。その視線は通行人にも注がれていて自分が見えているものとの矛盾に気付いたようだ。やっと見えた誤解を解く糸口。植えつけられた物との乖離が頭痛として現れているのか苦しそうにしているが追い打ちとなろうとも今ここで更なる矛盾を叩きつけるしかない。傍に駆け寄り今一度説明を施しながらも相手の手を取ると軽く握ってみせる。ド.ー.パ.ン.ト特有の肥大した皮膚でも硬い皮膚でもない、普通の人としての手の形と温もりを伝えながらも顔色伺って)
っ、近づく、…い゛っ、………フィリッ、プ?____フィリップ!……すまねぇ、俺はお前がド.ー.パ.ン.ト.になっちまったって……お前を信じられなくて、ごめん
(頭痛で動けないでいると相手が近づいて来るのが見える。生身で敵に接近されるのはマズいと分かっているのに、本能が足を止めこの場へと留まらせている。口から出かけた拒絶の言葉も自らが言おうとしたのに自らの意思でそれを止めた。目の前にきた相手がゆっくりとこちらの手を取る、それは柔らかな温かさを持った手だ。いつも取って繋ぐ、あの時頭を撫でる、時にこちらの背に回る、あの暖かな手だ。それを認識すると耳鳴りのような音が響いて思わず声をあげた。直後何かが抜け落ちたように思考はクリアになる。顔を上げれば目の前にいるのはいつもの相手の姿、思わずコネクタが見えた頬に手を添えるがそこには何も無い。そして漸くこれが本来の敵の仕業だという相手の言葉を飲み込むことが出来れば、敵を睨む目は大切な相棒を見つめる目へと変わって思わずその名を呼んだ。だが直後自分が相手に行った所業に気がつけば目を伏せる、相手は何よりも大切な人で最も信頼のおける人物なのに敵として追い詰めてしまうなんて。どれだけの負担だったかはあの時の悲痛な声を思い出すだけでも十分分かった。相手の両肩に手を添えて目線を交えるも罪悪感で長くは持たずにまた目線は下へと向く。能力に晒されたとはいえ酷いことをしたのは確かだ、謝罪を口にするも自分で自分を許せないでいて)
…翔太郎! 能力の効果が切れたようだね、良かった…。 いいんだ、そう見えていたのだから君の反応は仕方ない。 だからそんな顔をしないでくれ。 …さっきのド.ー.パ.ン.ト! ッ、う……
(自らを証明するように手に触れる。すると顔がこちらを見て今度こそしっかりと目が合ったように思う。何かを確かめるように頬を撫でられ、睨むような目にいつも通りの温かさが戻ってくれば能力の効果が切れたのは一目瞭然で応えるようにこちらからも名前を呼ぶ。戻ってきたのだと思わず安堵の息が漏れた。だがその目は直ぐに伏せられてしまって相手の言葉から先程の言動に罪悪感を覚えているのが伺える。声が届かないことに信じて貰えないことに傷付いたのは確かだ。それを平気だったと嘘をつくつもりはないが効果が切れて、また相棒として見てくれるならそれで良かった。その気持ちを伝えようと両肩に置く相手の腕に手を添えて言葉を紡いでいく。そんな中で突然背後から悲鳴が聞こえて慌てて振り返る。そこにはこの事態を引き落とした例のド.ー.パ.ン.トが居てこちらへと接近してくる。敵は今度は『ハットを被った男と犬猿の仲だ』と書かれた吹き出しのようなものを生成しだすが要は避けてしまえば影響はない。こちらに飛ばしてきたそれをタイミング良く躱して見せるがその先で頭に鋭い何かが刺さる感覚がした。飛んできたと思った針の方が思い込みということまでは分かったが視界が突如ぐらついて側頭部を押さえながらその波をやり過ごそうとし)
フィリップ……ありがとな。この埋め合わせは絶対にする。…、あいつ。あれで他人を操れんのか___っ、フィリップ!
(謝っても謝りきれないこの状況に目線は沈むばかりだったが、再び相手の手がこちらへ触れて顔をあげる。この顔に今まで何度救われてきたことだろうか。隣にいて欲しい存在で永遠にともにありたい人、相手は自分にとってなによりの心の拠り所で帰るべき場所なのだ。小さく笑みを浮かべながら感謝を伝える、だがこれだけでは到底相手へした事へのケジメにはなっていないだろう。後で必ずケリを付けることを誓って、まずは事件解決に集中することにする。そう伝えた直後に渦中の敵がこちらへ向かってやってくる。敵から来てくれるとは好都合だったが先に動いたのは向こうだった。口元で生成される奇妙な吹き出し、それが飛んでくる様をみて漸く先程自分が何をされたのかを理解した。あの吹き出しに書かれた事を信じ込ませるのが敵の能力なのだろう。同時に血の気が引く。ハットを被った男とは自分の事だ、となれば狙われているのは相手ということになる。反応するには間に合わなかったが、飛んできた針を相手は綺麗によけた。これで反撃のチャンスが生まれたと思ったが、途端に相手の体がぐらついた。咄嗟に相手の名前を呼ぶと不安定な体を支えるように掴むとその顔を覗き込んで)
___…っ、離したまえ! 左.翔.太.郎、僕に借りを作ってあとから何を要求するつもりだい?
(ぐらついた視界を一旦何とかしようと目を軽く瞑る。若干の頭痛の後瞼を開ければ何者かが自分を支えていることに気付く。視線を向けその主がハットを被った相手だと分かれば嫌悪感が沸いてその腕を乱暴に振り払って十分に距離をとる。相手とは真逆の考え方や行動をして反りが合わない。だからこそ自分は相手のことが嫌いだし、相手の事が気に食わないだろう。ド.ー.パ.ン.トの攻撃があったとはいえこの男の手を借りたのは不覚だ。不愉快そうな面を見せながらも無機質に相手を表す固有名詞で呼ぶ。相手とはいがみ合う関係でわざわざ善意で手を貸す可能性など万一もない。可能性があるとするならこれをダシにして何かを強要したり揺さぶりをかけてくることだろうか。考えられる卑劣さに眉根を寄せつつもじとっとした疑うような視線を送り)
っ、…はぁ?お前何言って……とりあえずあいつを倒すのが先だ。変身するぞフィリップ!
(相手の体を支え転倒を防ぐことは出来たと安堵していると、相手の顔がこちらを向いた瞬間に乱暴に距離を取られてしまう。さらに謂れのない事を叫ばれると思わず間の抜けた声をあげた。助けた代わりになにかを要求するなんてそんな事を考えたこともなければ、そもそも相手とは支え合う間柄のはずで貸し借りなんて無い。思わず抗議しようとするがその目線を見て息を詰まらせる。こちらに向けられているのは嫌悪を含んだ瞳だ。出会った当初には無関心な目を見た事はあったが、それとは明確に違う不快感を孕んだ視線。無機質にフルネームで呼ばれるのなんて何時ぶりだろうか。そんな現実逃避をしたくなる程にはその目線は心を締め付けて、まともに言葉を続けられなくなってしまう。だが今はそこで愉快そうに笑う不気味なあいつを倒すのが先だ。相手の態度はあいつの能力のせいなのは理解している、ここで立ち止まれば奴の思うツボだ。こちらのやり取りをみて満足気にせせら笑っている敵を破らなければ。嫌われていようとやることは同じ、相手に向かってドライバーを掲げるとメモリを構えるよう促して)
図星のようだね。 君が僕のことを憎んでいるのは十分理解している、君もわざわざ善人ぶる必要もないだろう。…仕方ない、風.都.の為だ。
(こちらの言葉に息を詰まらせたのが分かる。不自然なその仕草を図星を突かれたからだと解釈すれば相手の優位に立てたことに薄い笑みを浮かべる。相手のことは気に入らないがそれと同じくらい相手が自分を嫌いで憎んでいる事も知っている。そんな相手がわざわざ自分の身体を支える理由などその後の弱みを握るためといったような後ろ向きの物しか浮かばなかった。何処か馬鹿にしたような口調と共に冷たい視線を送っていたがアイツという言葉を受け不気味な笑い声をあげるド.ー.パ.ン.トに意識を移す。街を泣かせる怪物、彼らは必ず倒さないとならないと理屈こそわからないが心の奥底から訴えてくる物がある。その唯一の手段が相手と一体になる事であれば気が乗らなくて深く溜息をつきつつも街の為だと促されるままメモリを構え、起動してガ.イアウ.ィ.スパーを周りに響かせる。スロットに挿入し、意識ごと相手の元に転送させ)
っ、勝手にあれこれ言ってんじゃねぇ!ったく、意識共有すりゃ俺が何考えてるか分かんだろ
(変身まで拒絶されてしまうかと懸念していたがどうやら街を守る心は失われていないらしい。それならばまだマシだろうとため息やら文句やらを口から出しつつこちらも切り札のメモリを起動させる。相手は二人が犬猿の仲だと吹き込まれた状態だが、このドライバーであればこちらの意識は向こうに伝わるはず。そこで自分と同じように事実との食い違いに気がつけば良いのだが。相手の意識とメモリが転送されてきてドライバーを起動させ変身を果たす。だが互いの意識を共有するのは最悪の一手だったかもしれない。変身を果たした途端相手の意識がこちらへ襲い来る。こちらへの不快感、拒絶心、憎悪、自分を嫌悪するあらゆる感情が濁流のように一気に自分の中へと流れ込んできた。相手から冷たい目や言葉が飛んでこようとこの態度はあのド.ー.パ.ン.ト.の仕業だからとある程度割り切れていたが、こうも直接的に相手の心理を知ってしまうと理屈を感情が遥かに超えてしまった。今までのあらゆる思い出と感情が一気に弾けて崩壊する感覚、ガラガラと崩れ去った後に胸には何も残らなくて虚無感さえ感じる。ただ呆然と立ち尽くす事しか出来ない。敵がこちらへ迫るがその場から一歩も動けぬまま、重い一発を左頬に食らうと体は後ろへとよろめいて)
…? くっ、…左.翔.太.郎、しっかりしたまえ!
(ドライバーを起動すればお互いの意識や感覚も共有される。初めこそド.ー.パ.ン.トを倒そうとする意志や自分への心配にも似た思考が伝わってきたがそれがこちらの思考と合わさって破裂したかと思えば途端何も伝わって来なくなってしまった。それには流石に不審に思い半身の様子を伺おうと意識を向けるがそのせいで重い一撃を左頬に受けることになる。その衝撃と痛みに思わず声が漏れ出て体は後ろへよろめくが何とか体勢を崩すのだけは耐える。二人で一人となり動くからこそ力を発揮する変身システムだが、それは逆に片方が戦意を失えばまともに機能しなくなる事を意味する。今の状況を良しとしたのか続いて殴りかかってくる2発目の拳をこちらの動きだけで何とか躱すが身体は重たい。いつもはこんな調子じゃないのに。街を泣かせることは許さないとどんな苦境に立たされようと挫けないのがこの男で、だからこそ自分は…とまで考えが及ぶがその先の思考が変に霞む。何か筋が通らない気がする。全くもって論理的では無い感覚に若干苛つきながらも目の前の敵に集中するようにと声を荒らげて)
トピック検索 |