検索 2022-07-09 20:46:55 |
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まぁあの時にしか出来ない経験とか思い出とかは確かにあるからな。なっ、お前巻き込んで危ない事しねぇって。お前が学生だったらガリ勉……いや、勉強しねぇでも点取れる天才肌だな多分。
(相手の境遇が不遇だなんてことは思わないが、毎日同じ所に集まって同じ事をしたあそこでしか生まれないものだってある。学校行事はもちろんだが毎日のちょっとした事でもなんとなく思い出に残っているものだ。そんな中でまた思いもよらない角度の言葉が飛んでくると目を開いた。相手には自分の過去についてとっくに知られてはいるのだが、改めてそこに言及されるのは気恥ずかしくて思わず声をあげてしまった。だがもし一緒に学生をしていたら、というのは興味を引かれる。もっと若造のあの時一人で暴れ回っていた頃に相手と一緒ならどんな生活を送っていたのだろうか。当然相手を同じ道には引き込まないが、きっと今と同じように相手は自分と全く違うタイプの生徒になっていただろう。ただ一つ確信はあって「俺達が学生でも今みたいに一緒に居るだろうけどな」と呟くように言い)
どうだろうか、相当暴れまわってたと聞くけど。…ああ、まだ探偵じゃなくとも何らかの形で君と相棒になって行動を共にしてそうだ。
(学生時代は相手にとってあまり触れられたくない物なのだろうが大切な人が歩んできた過去に興味が向くのは仕方ない。この前見た幼い姿と今の丁度中間あたり、刃野刑事がたまに言及する荒れていた頃はどんな感じだっただろうか。恐らく二人が一緒に学生になろうと根本的な考え方や行動は変わらないから同じ属性になることはないだろう。相手ももし一緒に学生をしていたらという想像を思いを馳せているのかこちらの事について述べていたがふと呟かれた言葉に目を瞬かせていた。だがすぐにその言葉の意味を理解すると自然に口元が緩んだ。あの始まりの夜が無くとも出会ってしまえば真逆のタイプなのに自然と一緒に行動するのが不思議と想像がつく。相手に楽しい遊びに誘われたり逆に自分が危険なことにも気にせずついて行ったりと本質的には今と変わらなそうだ。上機嫌に同意を示しつつも最後の一口を食べきった所で家が見えてきた。「まあこうして学生っぽいことが出来るだけでも満足だ」と呟いて帰路につき)
ぐ、…ジンさん喋りすぎだろ……お前と一緒に高校生やってたら全然違う生活になってそうだ……ま、俺達は今の形が一番だけどな
(酷い言われようだが『そんなことはない』と否定できる過去ではないのが痛い点だ。検索とジンさんの証言でこちらの過去は筒抜けと言ったところだろう。補導履歴は見るも無惨だ。そうやって一人で腕力を奮っていたわけだが、きっと相手があの時にいればそれは違った生活になっていただろう。教室で他愛のない話をして、テストに一喜一憂して、放課後一緒に帰って、年の差も考えれば絶対にありえない事だが現実よりも良いものになったのは確かだ。とはいえ、過去に相手に出会っていればきっと今の自分とは違う性格になっていて歩む道さえ違うかもしれない。今の生活や関係に不満を持つことなんてひとつもないのだ、想像するくらいがちょうど良いという所だろう。同意するよう頷いていればやがて家へとたどり着き、玄関を開けると「鶏肉だけ冷蔵庫に入れといてあとは早速切りにかかるか」と料理教室の幕開けを告げて)
同感だ。 ___ 了解した。 包丁の持ち方は前回教えてもらったから問題ない。まずは人参から切るとして、何か切り方の指定はあるのかい?
(刃野刑事は事件について教えてくれる情報源であると同時に相棒のことをよく知る人物だ。話に聞いた姿は今とは違うが不意に出る口調や仕草には面影がある。そんな相手ともしもの話を想像していたが何もかも違う現状では妄想に過ぎない。結局は今の二人の関係が一番という結論に落ち着いて同意を示しつつ開けてくれた玄関の中に入る。相手の指示通り買い物袋から鶏肉だけ取り出し冷蔵庫に入れると残りの野菜を台所に並べていく。下の収納から包丁とまな板のセットを2つ用意すれば準備完了だ。包丁の持ち方などは前回ので習得済だが切り方や形はキャベツと異なるだろう。手始めにと人参を手に取ってみるが切り方が分からずに相手にやり方を尋ねて)
なら前みたいな大騒ぎにはならなさそうだな。人参とジャガイモは乱切りってのをすんだ。まずは皮を剥いて…で、両端を落とす。あとは人参を転がしながら一口大に切ってくんだ
(思えば最初の料理練習とも言えるお好み焼きの時はなかなか大騒ぎをしたものだ。あの時が相手との関係が変わる第一歩であったようにも思う、そういう意味では忘れられない思い出だ。その時に教えた事を覚えているというなら好都合、とりあえず指先を切る事はないだろう。まずは見本をと人参を手に取るとピーラーで皮を剥いてヘタと先を切り落とす。乱切りは切り方さえ覚えてしまえば簡単だ、「こう斜めに置いてな…」と呟きながら包丁を真っ直ぐにしその横に人参を斜めにすると口に放り込めるサイズに切ってから切った面が上になるよう少し転がしてまた一口大に切る。多少大きさに大小はあるがそこは愛嬌だろうと大雑把に考えながら次はそちらの番だと相手の方を見て)
あの時は君の騒ぎようの方が大袈裟だったよ。…なるほど、転がしながら切る事で切断面をランダムにするんだね。…ちょっと硬い
(大騒ぎというが自分は不慣れな持ち方で切っていただけで止めようと叫び声をあげたりその後の事に動転してたのはもっぱら相手だけだ。その事を思わずツッコミながらも先に見本を見せてくれそうなのでそちらに目線を向ける。人参は皮が剥かれて両端が切り落とされる。そこから説明と共に転がしながら包丁で切られていき、1口大の不規則な形が幾つも出来ていく。わざわざ転がしながら切る辺り断面をランダムかつ広くするのがポイントなのだろう。見本を確認して目配せを受けると今度は自分の番だ。ピーラーで皮を剥いてヘタと先を切り落とした。初めの1つ分を切ってみるが生の人参はキャベツよりも硬くて少し切るのにも力が必要で思わず呟きを零した。それから断面を上側にして切り、また転がして切るを繰り返す。どうしても均一の形にしようと無意識に考えてしまって一回一回角度を調整するような動作を挟んだりと多少ぎこちなさはありながらも乱切りをして「こんな感じだろうか」と確認を求めて)
っ、あれはお前が動揺しなさすぎなんだよ。気をつけろよ、包丁を斜め前に押し出すと余計な力使わずに切れる。……やっぱ、性格出るな
(痛い所を突かれて思わず言葉を詰まらせる。確かにあの時はこちらが勝手に焦って騒いだだけだが不意に相棒の域を超えて近づいてしまったら普通は焦るものだ。あの時相手は知識不足故に平気だっただけになんとなく理不尽さを感じながら相手が人参を切る手元を見守っていた。予想は出来たが相手の手付きは丁寧ながらゆっくりで、静かにそれを見守りながら手を切らないようアドバイスだけ添えておく。やがて乱切りにされた人参が二人分並ぶ、こちらは一口大であればと形も大きさも幅があるが、相手の方はそれなりに形も大きさも揃っていてその両極端の見た目に思わず笑ってしまった。ここでも性格の違いが出て、形が揃いもしないとは自分達らしい。だがきちんと煮込めるように切りさえすれば問題ない、大丈夫だと頷けば次はジャガイモだ。同じように皮を剥いた後に包丁を手にもつと「ジャガイモは芽を取るのがポイントだ」と手元が分かりやすいように相手の方にジャガイモを近づけると包丁の角を使って芽をとって見せて)
今なら何で動揺したのか分かるよ。…ホントだ、大分違う。これなら食べる時にもどちらが切ったものか判別が付くね。 …その為の角なんだ、
(あの時は距離が近いことの意味だとかを知らずに好奇心のまま動いていた。日にちとしてはさほど遠い過去では無いはずが相手と濃厚な思い出を重ねた身としては随分と懐かしい記憶だ。アドバイスを参考にしながらも斜め前に押し出すようにしながら乱切りを進めていく。やがて二人分の人参が並ぶが相手の言う通り手際良く切って形や大きさがバラバラの物とゆっくりと切って形や大きさが揃っている物、両極端のものが並んでいる光景に気づくと相手に釣られるように笑みが浮かんだ。これくらいの差があれば煮崩れない限りは食べる時にもどちらの物か分かりそうだ。問題かないことが確認出来れば次はじゃがいもだ。皮を剥いて乱切りといった切り方は一緒だが人参に比べてじゃがいもは表面がでこぼこしていてピーラーを扱う手も若干危うい。続いて包丁の芽を取る見本を見せてもらうと思うと初めて知る角の使用用途に多少驚いた反応するもすぐさま実践しようと包丁を手に持つ。見よう見まねで包丁の角を使って芽を取り除こうとするが初めてのことにイマイチ上手くいかず、必要以上に深く抉って余計ボコボコしたじゃがいもが出来上がると「…芽の除去には成功した」と苦し紛れに主張して)
包丁にも使い方がいろいろあるって事だ。……一気に剥いて怪我すんなよ…____くくッ、まぁ食えりゃ問題ねぇって。ジャガイモもどっちが切ったか分かりやすくなったな
(この人参がシチューになればどれが相手の切ったものか一目瞭然だろう。今回は練習とはいえ相手が初めて作る料理、その初めても自分だけが体験出来るものならなるべく相手が用意したものを口に入れたい。相手が切った人参の形をそれとなく覚えておく事にし、次の野菜へと取り掛かった。ジャガイモを持つ手は不安定で傍から見ているだけでもハラハラする。思わず手を出しそうになるがその方が危ないとお好み焼きの時とは違って理解していて、固唾を飲んで見守った。なんとか皮は無事剥き終わりあとは芽を取るだけ。だがこれも慣れの必要な作業で力加減を間違えれば必要以上にジャガイモが抉れてしまう。包丁の扱いも慣れないとなれば結果は大方の予想通りで、ボロボロに角張ったジャガイモがまな板の上に並ぶのを暫く眺めていると思わず吹き出してしまった。初めてならばこんな所だろう、落ち込むなと軽く肩を叩きながらこちらの切った分と並べる。こちらの分は相変わらず形と大きさは不揃いだが芽は綺麗に取れている。ここは経験の差が出たといったところか。残りは玉ねぎだけ、皮を剥いて一口大に切るのは同じだが一番の問題は涙腺に来ることだ。「手早く切らないと目に染みるからな」と注意を添えておいて)
…この判別方法は不本意だ。だけど何となくのコツは掴めたから次こそは綺麗に取り除いて見せるよ。 手早くか、了解した。
(人参のように軽く押さえていれば安定して作業出来るものとは違い、表面がでこぼこしているじゃがいもは力を込めすぎると変な方向に行きそうな怖さがある。隣から強い視線を受けてはいるが声や手が飛んでこないあたり見守ってくれているのだろう。その中で皮を剥き芽も取り除いたがその結果がこの角張った形の悪い姿だ。何とか1口大に切る過程で綺麗に見えるように切っては見るがこの状態では無駄な足掻きに近い。出来上がったそれを見て隣の相手が吹き出し慰めるように肩を叩かれるがやはり納得のいかない結果だ。じゃがいもに関しては綺麗なまともな形が相手が手がけたものであり、自分の物とふたつを見比べるとその出来の違いに近々にでもリベンジしようと宣言を立てておいた。さていよいよ最後の野菜だ。玉ねぎをまずは皮を剥いて半分に切る。平らな面を下にして安定させてから両端を切り落としながら目が染みるの意味は分からずともとりあえず手早くという相手の注意に返事をした。手早くという言葉に何となく包丁を握り直してから大体の大きさに切っていく。初めこそ何も無く余裕そうにしていたが切っていく内にツンとした刺激が目と鼻を襲って忠告の意味を理解する。全て切り終える頃には催涙物質の効果を十分受けてしまって「翔太郎、世の中の人はこれを毎日乗り越えて調理しているのかい…?」と涙で濡れた目を向けながら確認して)
なら次の機会を楽しみにしとくか。玉ねぎはそっから適当な大きさに切って……ハッハッ!まぁこればっかりは避けられねぇな。慣れるしかねぇよ
(初めてジャガイモを切れば大体こんなものなのだろうが相手は不服らしい。今回のシチューに関してはとりあえず火が通る大きさならばいいのだから問題はないだろう、リベンジを誓う様子に次の料理にもじゃがいもは必須だなと心に留めて置くことにした。次に切り始めた玉ねぎは切る手順で言えば他の二つよりも簡単なものの、問題は催涙効果だ。微塵切りにしない限り手早くやれば目に沁みることはないのだが、相手は調理が初めてでしかも几帳面な性格となればもう結果は見えている。切り終えた相手がこちらをみればしっかりと涙目になっていて今度は声を挙げて笑ってしまった。目をしょぼしょぼとさせる様子は可愛げがあって指の背で涙を拭ってやりつつ慰めるように声をかける。これもまた要練習といったところだろう。だがこれで野菜の下準備は終わりだ、あとは鶏肉のみだと冷蔵庫から取り出すと、トレーの封を破いてまな板に鶏肉を乗せる。「鶏肉はここらへんの余分な皮と筋を軽くとって、あとは他のと同じで一口大に切ればいい」と説明を添えて)
ん…翔太郎は泣いてないから本当に慣れみたいだね。同じ事にならないようこの原因物質が何なのか後から調べなければ。あとはこの鶏肉だけだ。
(目に染みるの意味がよく分からなかったが今正に実感している。大人しく涙を拭われながらも相手の顔を観察すると本人は切ってないというのもあるが全く涙目ではなく笑みを浮かべている。初めて受ける玉ねぎの洗礼に目をしょぼしょぼさせながらも感想を口にする。様々な料理に使われている玉ねぎではあるが、調理の過程でこんな目に合うなんてこれから食べる料理の見る目が変わりそうだ。また次の機会に備えてこの目に染みる成分とその対処法について検索して今度こそ泣かさぬよう対策を立てておこうと心に決めておいた。これで野菜は全部切り終わって今度は前回扱わなかった鶏肉だ。野菜とは違う柔らかな感触に戸惑いながらもアドバイス通り包丁で切っていく。刃が滑ってなかなか切りにくい皮部分に苦戦しながらも斜め前に押し出すことを意識しながら1口大のサイズに切り分けていき)
ま、慣れもあるし俺は玉ねぎから離れてたしな。……よし、これで下準備は終わりだな。じゃあ今切ったやつを全部ここに入れてくれ
(誰しもが通る道ではあるが他人が玉ねぎにやられている様をみるのはどうにも面白い。もし練習のメニューがハンバーグだったら玉ねぎを微塵切りにしなければならず、相手の顔はもっと悲惨な事になっていただろう。玉ねぎを切りながら泣きじゃくる相手も見てみたいものだが、それは次の機会にとっておくとしよう。それまでに対策を見つけられないよう祈るしかない。鶏肉を切る手は相変わらず覚束無いがなんとか怪我せず全てが切り分けられて一安心というもの。どうにも不揃いではあるがこれで全ての具材が切り終わった。あとは煮るだけ、キッチン下の棚から深鍋を取り出すとコンロの上へ置いて具材を中に入れるよう声をかける。ルーの箱を手に取ってそこにかかれた分量を確認したあと相手へ差し出して「水はここに書かれてる通りな」とその箇所を指さして)
具材を切るだけでここまで苦労するとは思わなかったよ。あとは煮込むだけだね。分かった、…あとは火が通るのを待ってルーを入れたら完成だ!
(単に切るだけだとは思っていたが。実際には具材によって硬さや切り方が異なってそれに合わせて包丁の使い方も変えなくてはいけないため一筋縄ではいかなかった。スマートに綺麗な形で作るためには更なる練習が必要となるだろう。形はどうあれ火が通りやすいように切り分けることには成功した。ここまで終えてしまえばあとは火にかけるだけだ。準備してくれた深鍋に切った具材を順番に入れていく。パッケージのように綺麗な形ではなく不揃いではあるがこれも手作りの味だと解釈しておこう。差し出された作り方を確認してカップに水を注ぎ、水面ぴったりに合わせて分離を測る。それも鍋に注ぐと具材も水に浸りそのまま火にかける。あとは煮込み、途中ルーを入れたら完成だ。間近となった料理の仕上がりに達成感を覚えると相手の方を向き笑顔で報告して)
まぁそれも慣れってもんだ。お前ならそのうちこのパッケージみたいな綺麗なの作れそうだし、バラバラでカクカクなのを見れるのも今のうちだな
(初めてだからこそ不慣れなことも多かったろうが結局は経験だ。それに今日使っている野菜はどれもよく使われるものばかりで嫌でも触れることは多くなる。こちらはいつも食べられればそれでいいの精神で大雑把に具材を切っているが、そのうち几帳面な相手の方が綺麗で均一に食材を切れるようになるだろう。実際今もカップを使ってかなり正確に水を測りとっているのを見るに、レシピを忠実に再現できるようになるに違いない。それを思えばこういう『愛嬌』のあるものが食べられるのも最初だけかもしれない。こちらに向けられる笑顔に自然と同じように笑みを浮かべながら、揶揄うようにそこに言及してやる。十分煮込んだあとにルーを入れれば初めてのシチューは完成だ「ルー入れる時は一旦火止めろよ」とまた一言添えつつ鍋が煮えるのを待っていて)
そうかもしれないね。どちらにしろ僕が初めて作った料理が食べられるのは今日だけだ。…そろそろかな。
(あとは煮込むだけだと分かっていながらも初めて作ったものは気になるもので変化はなくともつい何度も鍋を覗き込んでしまう。そこで料理の先輩である相手からからかい混じりに野菜の形について言及される。これまでの経験から覚えの筋は悪くないはずだから慣れとコツさえ掴めばレシピ通りに作れるようになるだろう。となれば鍋の中のカクカクな野菜も初めての手料理ならではであり、仰々しい言い方で逆に不揃いであることをアピールしておいた。鍋が沸騰すれば慎重にアクを取り弱火で煮込んでいく。全体的に野菜などが柔らかくなったように見えるとアドバイス通り一旦火を止めて指定の量のルーを投入する。玉杓子で全体を混ぜると白くなってパッケージ通りの料理が出来上がった。もう一度火にかけてとろみをつけると美味しそうな匂いが広がって「…完成だ!」と無邪気な声を上げて)
そうだな。その初めての料理を食べられるのは俺だけって事だ。
(落ち着きなく何度も鍋を覗き込んでいる様子を微笑ましく見守りながら、こちらも相手の初めての料理がまもなくできあがるとなればそれなりに楽しみになってくる。正確に言えば初めての料理はお好み焼きなのかもしれないが、あの時はトッピングだけで相手がメインで作った料理はこれが初めてだろう。恋人の初めての手料理なんてなんとも心が踊る響きだ。具材が不揃いなのを揶揄えば反撃が飛んでくるかと思ったがどうやら相手は飲み込みが早い自覚があるらしく、逆にこれが貴重だと言わんばかりに大袈裟にアピールされる。それに対抗するようにこちらも少々大袈裟に返事をしておいた。アク取りもきっちりやる几帳面さを見守りつつ、ルーが入れられとろみがつけばついに完成だ。無邪気に喜ぶ相手と一緒に鍋を覗き込めば豊かな香りが漂ってきて「うまそう…」と思わず呟く。早速シチュー用の皿を取り出し玉杓子でよそうようお願いしつつ、こちらは買っておいたパンを適度な大きさにきって別の皿に並べていて)
…、ああ。君だけの相棒特権だ。 ふふ、早速食べることにしよう!
(大袈裟な言い方をしてアピールしてみたがツッコミが入ることなく肯定されてしまう。加えて今回限りの貴重さを独り占めするような返事がされると思ってもみないことにぱちりと目を瞬かせるがすぐにニヤリと笑って相棒だからこそ食べる事が出来ると特別感を演出しておく。ルーを入れてさらに煮込めばシチューの完成だ。美味しそうな匂いにコロッケで多少抑えられていた空腹も限界に近く腹の虫が頻繁に鳴いている。隣の相手もこの香りに食欲をそそられているようで思わず笑みが零れる。早速実食と移ることにしよう。任された通り2人分の皿にそれぞれシチューをよそっていく。それをテーブルに運び、スプーン等も並べればあとは相棒の切っているパンさえ揃うと食卓の完成だ。自分が作ったというのもあり目の前で湯気を立てるシチューがとても美味しそうに見えてキラキラした目を向けながら相手か食卓につくのを待ち)
よし、これで完璧だな。いただきます。_____ん、美味い!お前のジャガイモ、口の中でいい感じに崩れてこれはこれでありじゃねぇか?
(ここ数日まともな食事をしていなかった体にシチュー独特の優しい甘さが混じる香りは効果抜群で、互いの腹の虫の声が聞こえてくる。どうやら限界に近いらしい、腹の虫の為にも早く食べたいと気持ちは逸る。相手がシチューや食器類を用意してくれたようであとはこのパンを持っていけば食卓の完成だ。テーブルにパンを置き自分も席に座って相手の方をみれば、早く食べたい気持ちと初めて料理をした達成感からか目はいっそう輝いていた。これもまた今日しか見られない光景だろう、またひとつ忘れられないものになりそうだとこの視界を心に留めておくことにした。手を合わせてからスプーンを取ると、まずは相手が一番苦労したであろうジャガイモと共に白くてとろみのあるシチューを掬いあげる。そのまま口に運べば、十分柔らかくなったジャガイモがシチューによって解けていって、シチューの甘みとジャガイモの甘みで口の中はさらに味わいが豊かになった。切り終わった時は次にリベンジだと揶揄ったがこれはこれで美味しい。思わず相手の方を見ながら数度頷きつつジャガイモをスプーンで指していて)
いただきます。 …美味しい! 具材の味が溶け込んでいてスープだけでも満足な味だ。 、確かめて見よう……ん、確かに表面積が大きくなったせいか程よく解けて優しい口当たりだね。君が切った物と食感の違いがあって面白い。
(相手が食卓についたのを確認すると手を合わせてから慌ただしくスプーンを取って早速シチューをすくいあげる。自分主体で作った初めての料理の見た目をある程度視覚情報としても記憶してから口へと運ぶ。程よく柔らかくなった人参やじゃがいもとそれぞれの風味が溶けだしたクリームスープは見事な組み合わせで味わい深い。空腹という最高のスパイスもあれば食事の手は止まらず感想を述べながらも二口目を口にする。そんな中で自分の切ったじゃがいもについて好意的な感想を受けると好奇心に目を輝せながら自分の皿からカクカクのじゃがいもを探し出す。それをすくいあげて食べてみると口の中で崩れて甘みかシチューに溶けて絶妙な食感だ。意図しないものだったがこれはこれで美味しいかもしれない。相手の方を見つめ返しながらもこくこくと頷き同意を示す。先程口にした相手の切ったじゃがいもは柔らかくも素材の味そのままを楽しめる形で、2人でそれぞれ切ったからこそ楽しめる2パターンの食感に楽しげな笑みを浮かべながら食事進めて)
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