検索 2022-07-09 20:46:55 |
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………ん、……おはようフィリップ…お前と暮らすようになってから決まった時間に起きれなくなっちまったな
(本能のままに動けば幸せな倦怠感は免れなくて深く眠っていたが、腕の中で僅かに何かが動く感覚があって意識が浮上する。正直このままもう一度眠りに着いてしまっても良かったが体内時計ではとっくに朝の時間を過ぎていて、せっかくの休みを二度寝で潰してしまうのももったいない。微睡みの中でゆっくり目を開けるとこちらを見つめる相手の顔が見えて自然と口角はあがった。会えない間の一週間、目覚めた時に見ることが叶わなかった景色が今はいつも通り目の前にある。朝一番に恋人の顔を見るのが当たり前になっていたが、今回の経験からみるに朝のこの時間も欠けてはいけないものになっているらしい。ふと窓の方を見遣ればいつも目覚める時間はとっくに過ぎているようだ。一人で暮らしている時は目覚ましがなくともある程度定刻に起きていたというのに、一緒に暮らすようになってからは相手の抱き心地がいいせいか、それとも寝る直前に際限なく体力を使ってしまうからか、あるいはそのどちらもか、とにかく深く深く眠りについて定刻に起きるのを逃してしまう事が多い。だがそれも相手と暮らすからこその幸せな変化というもので、間近にある相手の頬を親指の腹で緩く撫でながら緩く微笑んでいて)
おはよう、翔太郎。 …ん、君と一緒に寝るのは居心地が良いからね。今日が休みで良かった
(暫くそうして寝顔を観察するように見つめていたがゆっくりとその瞼が開く。こちらの顔を見た途端笑みを浮かべるものだから自然とこちらも緩く笑いながらも挨拶を返す。朝一番に視界に入るのも声を掛けられるのも相棒であることが幸せだ。相手の親指の腹が頬を撫でる感触が心地良くて目を細めながら大人しく撫でられる。ずっと探偵として生活しているからか相手の体内時計はかなり正確だ。どれだけ夜遅くまで仕事しようと次の日寝坊したという話は殆ど聞いたことがない。だが一緒に寝るようになってから寝坊こそしないが深く寝るせいか定刻を過ぎる事が多い。今日に至っては仕事の日なら遅刻確定だ。それだけ共に寝ることが深く眠ってしまえるくらい心地良いと思ってくれてるのが素直に嬉しい。自分が相手の体内時計に勝ったと思えると更に笑みが深まる。いつもならば出勤の準備で慌ただしい時間だが今日は休日のおかげでのんびりと過ごす事が出来る。相手の手に擦り寄りながらも「今日は今から何をしようか」と予定を尋ねて)
同感だ。ここから一歩も動きたくなくなるし、ほんとお前は悪魔だよっ……そうだなせっかくアキコに休みもらったけど…その前に腹減らねぇか?昨日の夜なんも食ってねぇし
(相変わらず相手の頬は柔らかい、この体の中で一番触り心地がいいのはきっとここだろう。それも昨日全身の肌の感触を確かめたからこそ分かることだ。微睡んでいた意識がはっきりとしてくると起き抜けの相手の体が特別に温かいことに気がついて、せっかく浮上した意識はまた眠りに落ちてしまいそうだ。実際この誘惑に負けてしまった過去もある。相変わらずの寝心地に揶揄うような事をいいながら体を少し上にし、こちらの手へ擦り寄っていた相手の頭を胸にかかえるようにして抱きしめた。宝物を抱えるようにしながらこの後の事について考えを巡らせる。今日は所長様からいただいた有難い休みの日だ。 いろいろと出来ることはありそうだが、その前に意識がはっきりしてきたことでもう一つ感じた事がある。それは腹の虫の鳴き声だ。帰宅して即我慢が効かなくなり相手の事しか考えずにそのまま寝たのは良かったが、その代わりに食欲は満たされぬまま朝を迎えてしまった。なかなかの腹のすき具合で、がっつりと何かを食べるのも良いかもしれない。ひとまずは相手の具合を伺おうと抱える相手を見下ろしながら聞いてみて)
君を魅了する悪魔なら悪くないね。…確かに空腹だ、何をするにしろ先に食事を済ませた方が良さそうだ。…でも翔太郎、家にはまともな食料は残っていなかったはずだから外食するか食料を買いに行く必要があるよ。
(大切な人の温もりは何よりも安心出来るものだ。手に擦り寄っているとその頭ごと抱えるように包み込まれてじわじわと広がる幸せに口角があがる。相手の精神を乱してしまうほど大きな存在になっていることを嬉しくなれば胸板に擦り寄ると共に揶揄うような言葉に乗っかって満更でもない反応を示す。そうしてふわふわとした柔らかな時間を味わっていたが相手の言葉と至近距離で聞こえた腹の虫の音に意識が向かう。昨夜は食事を取ることのないまま眠りについたし、そもそも朝や昼も漸く終わりが見えた依頼に夢中になってまともなものを食べた記憶がない。一度そのことに気付くと思い出したかのようにお腹が空腹を訴え始めて何かを食べたくなってくる。この後の予定がどうあれ食事をするのが先だろう。一つの方針ができた所でふと最後に家を出た一週間前のことを思い出しては相手を見上げて声を掛ける。確か買い置きの食料も全て食べきってしまって仕事帰りに何か買って帰ろうと話していたはずだ。そのタイミングで今回の山積みの依頼を任されたから冷蔵庫なども空っぽなままだろう。一番手っ取り早い家にある物を食べるという選択肢がない今、どうしようかと判断を委ねて)
あーそうか、冷蔵庫空だったな……お前、俺が居ない間ちゃんと食事とってなかったんだろ?どうせならしっかり飯作るか。あ、ついでに料理の作り方教えてやろうか?
(抱えていた相手の頭が擦り寄る動きをすると、胸板に温かい肌が当たって心地よいが同時に髪が腕や頬やらを撫でて擽ったい。その感触に笑みを浮かべながらまずは食事をという方向は定まったのだが、不意に相手がこちらを見上げた。こちらからも相手の方に目線をむければ家に食材がない事を言われてやっと冷蔵庫の悲惨な状況を思い出す。二人で帰るタイミングで買って帰ろうと補充を先延ばしにしていたツケが回ってきたようだ。しばしどうしようかと考える。所長から相手の様子はちょくちょく聞いていたがもちろん食事状況も聞き取りをしていた。なにせ目を離せば一番疎かになる部分だ、所長が一緒に食べてくれていたようだがそれでも二人で居る時よりかは頻度は落ちていた。依頼の謎が佳境となっていた昨日あたりはほぼ何も口にしていないに違いない。とはいえこちらも説教が出来るほどまともなものは食べていない、栄養が不足しがちな互いのためにもここはしっかり腹に溜まるようなメニューを食べた方が良さそうだ。だがしょっちゅう外食出来るほど懐も充実してはいない、自炊するのは決定だろう。そこまで考えてふと体が縮んだ時のやり取りを思い出すと、休日だからこそできる提案をしてみて)
…まあ、否定は出来ないね。 …っ! ああ、是非とも教えて貰いたい!
(心地良い温かさに包まれながらもこれからの予定について検討をする。相手も冷蔵庫の状況を思い出したようだ。それと同時にこの一週間の食事状況について確認されると大分疎かだった自覚があり、バツの悪そうな顔をしながらも認める。熱中していればその他のことを適当にしてしまうのは相変わらずで管理する相手がいなければ尚更だ。自分程ではないが相手も仕事の方を優先する節があるからお互い栄養不足だろう。そんな中でしっかりとしたご飯を作って食べるという案には賛成だ。加えて料理の作り方を教えてくれるという話が出た途端、顔を上げて目を輝かせながらこくこくと頷く。仕事終わりでは何かと手短に終わる料理を選びがちだが今日は休日でもあるし、少し前に話した自分も料理をしてみたいという希望が叶えられる良い機会だ。新たに出来た興味の対象に眠気もすっかり吹き飛ぶとわくわくした笑みを浮かべながら「そうと決まれば早く準備しよう、翔太郎!」と腕を引っ張るように上体を起こして早く出掛けようと急かして)
ま、大体想定内だな……どぁッ?!分かった分かった!お前が飯作んなきゃいけない場面も出てくるだろうし、覚えといて損はないからな
(腕の中で相手の顔が分かりやすくバツの悪そうなものに変わる。大方のことはアキコに聞いていたが食事不足であるのは自覚もあるようだ。そして次に相手の顔はまたもや分かりやすく好奇心に煌めくものへと変わった。腕の中に閉じ込めていると相手の興奮が体の動きや熱やらでよく伝わってきて思わず笑ってしまう。だが相変わらずそのスイッチが入れば制御は不可能だ、勢いよく腕を引っ張られて起こされると思わず声を挙げた。どうやら心地よい熱の中で微睡む時間は終了らしい。やれやれとため息をつきながらも確かに胸はこの騒がしさに幸せを覚えていて表情は穏やかだ。どちらにしろ相手が出来る事が増えるのならば悪いことはない、唯一心配なのは好奇心が大暴走してキッチンがむちゃくちゃにならないかどうかだけだ。ひとまずは食材を買う所からだろう、着替えのためにクローゼットを開けながら「スーパー行きながら作るメニュー考えるか」と声をかけ)
僕達の仕事上、この前みたいな事がいつ起きるか分からないからね。僕も料理が出来るに越したことはない。 ああ、初心者でも作りやすく栄養のある料理から考えるとしよう。____ …準備出来たかい?
(腕ごと引っ張りあげて起こすと変な声があがるが今は気にならない。今の空腹の具合ならば尚更早く買い物をして調理に取り掛かった方が良いだろう。探偵としての仕事やド.ー.パ.ン.トと戦う中で怪我やこの前のようなメモリの効果を受けて相棒が十分に動けなくなる可能性はある。そうでなくとも相手に何かを施して世話をする喜びは最近知ったばかりだ。その手段でもある料理の技術を身につけるのは悪いことでは無い。好奇心を第一にそれらしい理屈を上機嫌に語りながらもベッドから移動する。メニューについても移動中に考えたりスーパーで食材を見てから決めても良いだろう。脱ぎ捨てた衣類を拾って洗濯機に入れるとスーパーに行くために着替えの服に袖を通す。近場ならさほど特別な支度も必要なく、準備は直ぐに終わる。クローゼットの方に向き直ると今か今かと待ち遠しそうな様子で相棒に声をかけて)
そういうこった。あぁ、準備万端だ。腹減ったしとっとと買いに行こうぜ。_____にしても、初心者でも作りやすくて栄養のある料理ってのも難しいな……シチューとかハンバーグとかか?
(この前はレトルトを使って何とか乗り切ったものの、あまり考えたくは無いシチュエーションだがこちらが全く動けなくなることだってありえる。それにこうやってやる気のあるうちに覚えておいてもらわなければ、いつその時が来るかは分からない。その為にもこの休日を料理を教えるのに費やすべきだろう。着替えを手にしようとした所で相手の動きを目で追えば、相手は床に散財した昨日の服を集めていて思わず目を逸らす。昨夜の痕跡を隠すためにも首元には気をつけなければ。そうこうしているうちに着替えと髪のセットが終わって待ちきれない様子の相手に頷き返すと外へと出た。スーパーの道すがら最大の問題について頭を悩ませる。料理を教えると決めたのは良いものの一番の問題はメニューだ。栄養は取りたいところだが初めての料理で工程が多いのも問題だろう。腕を組んで唸りつつひとまず頭に浮かんだ候補を言ってみて)
複雑な工程があまりなくて不足しがちな栄養素が取れるものが良いね。…こういった思考は料理の知識がないと難しいな。…シチューというのは良いアイデアかもしれない。確か白いスープの様なもので具材を切って煮込む料理だろう?
(新しい服への着替えを済ませて相手も準備が終わったのを確認すると楽しみが隠しきれない表情で共に外へ出る。家を後にしてスーパーに向かう道を歩みながらも唇に指先を触れ悩む仕草をしながらも今夜の献立について考える。料理を教わるのに向いている料理という事と栄養を得る為の料理、その両方を満たす物となるとなかなか難しいように思う。そもそも自分の知っている料理のレパートリー自体が少なくて出せる候補もあまりない。地.球の.本.棚では主観の強い条件での絞込みが難しいため自分にしては苦手とする思考で若干眉を寄せながらも呟く。その中で隣の相手が絞り出した候補に好意的な反応を示す。実際に食べたことは無いがシチューについては知っている。白くて野菜や肉などが入った煮込み料理の総称だ。過去にカレーを食べた時に似た物の例として聞いたことがある。様々な具材が入っていて調理工程も具材を切って水分と共に火を通すだけなはずで先程あげた条件をどちらもクリアしている。具体的な料理名が出たことに興奮の色を見せながらも今頭に浮かんでいる情報がシチューであるか確認して)
あぁ、それで合ってる。シチューなら切るもんはたくさんあるが手間がかかるのはそこだけだし、肉も野菜も食えるからちょうど良いな。よし、ならメニューは決定だ。
(季節柄や手軽さを考えて候補に挙げたシチューだったが、どうやら相手はそちらに興味を示したらしい。具材が多く仕込みの多い料理ではあるが、裏を返せばそれだけ練習になるということ。あらゆる料理をするのにおいて食材を切るという事は不可欠であるし、最初の調理練習としていろいろな具材に触れながら切り方を学ぶのにちょうど良いだろう。それに切りさえすれば後はひとつの鍋で炒めて煮込んで終わりだ。こちらとしてもそれほど料理が得意と言う訳でもない、横について一緒に作るのにいい塩梅のメニューだろう。それに栄養面の方も申し分ない。二人に不足している野菜も力の源なる肉も、たっぷり取る事ができるのがシチューの良い所だ。決まりだと相手の方に頷き返すとちょうどスーパーへとたどり着く。入口をくぐって買い物カゴを手にすると「まずは野菜からだな」と声をかけて)
最近寒くなってきたからあったまる料理という意味でも都合が良いメニューだ。野菜は…人参とじゃがいも、あとは玉ねぎぐらいかな。 …あと入れたい具材はあるかい?
(どうやら思い浮かんだ料理はシチューで間違いないようだ。包丁を持つのはこれで2回目だが、前回の復習と基本的な切り方をマスターするのに様々な具材を切る必要のあるシチューは良いチョイスだろう。CMとして見た映像では冬に湯気のたつシチューを家族で囲んで楽しそうに食べていたことだし、冷え始めたこの季節には最適な献立だ。具体的なメニューが決まったことに弾んだ言葉で返事をしているとちょうどスーパーに着いた。あとは必要な材料を買うだけだ。声かけられるまま相手に続いて入店して野菜コーナーへと向かう。確かシチューは基本的なカレーとほぼ同じ材料だ。様々な野菜が並ぶ一帯から記憶の中にある見た目から使うであろう物をカゴの中に入れていく。基本的な野菜はこれだけだったはずだが手料理は好きに具材を加えたり抜いたりできるのも魅力の一つ。カゴから相手に視線を移すと何か追加の希望はあるか問いかけて)
いや野菜はこんなもんだろ。あんま入れても味薄まっちまうし。後は鶏肉とルーとパンだな。
(思いつきでの提案だったが我ながら丁度いいメニューを選択出来たようだ。シチューなら朝から食べてもくどくなり過ぎないだろうし体も温まってちょうどいい。早速基本的な野菜がカゴへと入れられる、シチューにもいろいろ入れることはできるが今日はシンプルな具材でいいだろう。それに具材が増えれば相手が切るべきものも増える。最初から大量の切り物をするのは大変だ、そういう意味でも今日は基本的な具で十分だろう。そのまま野菜コーナーの奥に設置された精肉コーナーへ向かい鶏肉を確保すると、続いてはルーが並べられているコーナーへ向かう。いろいろと種類があるがこれといったこだわりも無い、ひとまず無難に店がオススメしているであろう山積みにされている箱をひとつ手に取りカゴへと入れて)
分かった。…パンもこれで良いかな。_ 翔太郎、シチューが出来上がるまでも時間がかかることだし、これを食べながら帰るのはどうだい?
(具材が多ければ多い方が良いと思っていたが味が薄くなるというのは新しい気付きだ。様々なことを考える必要がある料理の奥深さに感心しながらも野菜はこれだけにしておく。続いて鶏肉も確保してルーも一般的な物がカゴに入る。一応パッケージ裏の調理例も確認してみるが基本的な材料はこれくらいのようだ。続いてパンの売り場に向かい共に食べられていることの多いフランスパンをカゴに入れる。他に買うものが無ければこのままレジに、といった所で近くの惣菜コーナーで揚げたてという店員のコールと共に美味しそうなコロッケが売り場に並べられていく。揚げたての衣の感じと匂いは空腹の身には宝物のようにも思える。すぐさまそこまで相手の腕を軽く引っ張って連れていくと帰る道中にたべてみたいと熱心にお願いしてみて)
これで買うもんは全部…、?なん、だ……名案だな。身体も温まるだろうし買い食いするか
(フランスパンがカゴに入ればこれでシチューの材料は一揃いした。後はレジを通せば終わりという所で相手に腕を引かれ連れられるままにそちらへ移動する。だがその意図は直ぐに理解できた。近づくと漂ってくる香ばしい匂い、黄金色のコロッケが目に入れば暫くまともなものを食べていなかったこの体にはそれがご馳走に見えてくる。無意識のうちに唾を飲み込んで相手を見れば、向こうもこの香りと見た目にすっかりやられたらしくこちらにお強請りが飛んできていた。とはいえこれを見せられては相手のお願いがなくとも手を出してしまうというものだ。それにあまりの空腹で料理を練習するのは効率が落ちる、少々の腹ごしらえは必要だろう。頷き同意すれば揚げたてのコロッケをトレーに二つ取り、今度こそレジへと向かった。会計が終わり買い物品を袋に詰めると最後にトレーを取り出してコロッケをひとつ相手へと差し出して)
流石相棒、話が通じるね。じゃあ早速レジに向かおう。 _ ありがとう。まだ十分あつあつみたいだ。
(不思議そうにしていたが実物を前にすると相手もこの魅力に気付いたらしい。揚げたてならではの美味しそうな見た目と匂いは今の自分達には抗い難い誘惑だ。相手からも乗り気な承諾の返事が返ってくるとぱぁと顔を明るく笑顔を浮かべた。トレーに2人分のコロッケを取ったのを見れば上機嫌のまま急かすようにしてレジに向かう。会計を済ませるとレジ袋に買った物を詰めていく。差し出されたコロッケを礼を伝えると共に受け取り、薄い紙の包み越しでもまだ熱いのが分かると思わず口元が緩んだ。スーパーを後にして家への道を進みつつ一口齧り付く。衣はサクサクとしていて中はホクホクという揚げたてならではの食感に「予想通りの絶品だ」と嬉しそうに感想呟き)
___ん、美味い。学生の時よくやってたけど、こうやって寒い冬に外で食うコロッケとか肉まんは最高に美味いな
(コロッケを買うことはほぼ規定事項だったが、相手のお願いに乗るような返事をすればその顔は明確に明るくなってそれだけで買って良かったと思える。冷たい風が時折吹く中揚げたてのコロッケを手にするとそこだけホカホカと温かくて食べる前から味への期待があがってしまった。相手に続き一口齧りつけば予想を超えた美味しさに満足気に頷く。揚げたてはいつだって美味しいが、冬に買い食いする温かいスナックはさらに一段と美味しい気がする。隣に目をやると同じく嬉しそうにコロッケを頬張る相手の姿が見えて小さな笑みを浮かべた。こうやって何かを食べながら帰るのも相手にとっては『初めて』の経験だろう。その初めてを目に焼き付けつつ空きっ腹に嬉しいコロッケをまた一口頬張っていて)
ああ、これもある意味冬の風物詩に近い物かもしれない。…エリザベスやクイーンを見てても思うけど、学生というのは楽しいのかい?
(最近冷え込んできた気候の中でほかほかのコロッケをさらに一口頬張る。勿論コロッケ自体の味もあるだろうが相手の言う通り揚げたての物を寒い中で食べるからこそより美味しく感じるのかもしれない。ある意味この時期だからこそ感じることの出来る幸せについ口元が緩む。隣を見ると相手も満足気にコロッケを食べている。家で持ち帰ってから食べるのとも違う『初めての買い食い』を楽しんでいるとふと相手の言葉が引っ掛かる。自分は知らない学生の頃の話。情報屋の女子高生達もいつも楽しそうで年齢は近くとも全く縁がない自分にとって学生という身分には興味がある。今のような事を良くしたという学生の頃に興味を持つと経験者である相手に質問してみて)
あー…まぁ俺はあんまり自慢できるもんじゃねぇけど……なんつーか、世界の中心が自分みてぇに思えるんだよな。それに気の合う奴がいりゃ思い出もたくさんできる。だからまぁ、楽しいのは楽しいな
(コロッケから想いを馳せた言葉に相手は興味を示したようで、不意打ちの質問に目を瞬かせる。その後思考を巡らせるように唸ったが自分の学生時代はというとあまり誇れるものではない。力にものを言わせるような事をしてジンさんに何度お世話になった事か。だが楽しかったかと聞かれれば答えはイエスだろう。好きなように振る舞うが責任感を全て背負う事も無い、子供故の特別な時間だ。そこに同い年の仲間が加われば自分達の世界が構築され、かけがえのない時間も生まれる。相手の正確な年齢は分からないが、外見からすれば本来ならまさにその学生時代を謳歌している頃、今とはまったく違う人間関係を築いていたに違いない。「興味あるか?」とまた一口コロッケを齧りながら聞いてみて)
世界の中心…思い出…。 …今更勉学に励む必要はないけど、今みたいな学生らしい事とか思い出というのは少し興味があるかもしれない。 それこそ君と学生時代を共にしていたら賑やかだっただろうね。
(隣の相棒は目を瞬かせるが何とか自分の質問に答えようとしてくれている。だが言葉自体の意味は理解出来てもそういった経験があまりない身としてはピンと来ずに気になったワードを口にして少し考え込む。別に今の境遇が不満だと思ったことは一度もなく、同世代だと思われる彼らのように学校に通いたいとは思わない。地.球.の.本.棚の方がずっと広く深い知識を得ることが出来るし人間関係も相棒と所長と情報屋の皆くらいで十分だ。だがそれ以外の学生だからこその経験だとか思い出は得る機会がなく、時折こうしてちらっと話を聞くからこそ気になるものではある。素直にその気持ちを打ち明けつつも一つの仮定として相手と共に学生だったらということを考えてみる。不良だったなんて話を聞く若い相棒と一緒に学生時代を送っていたなら今以上に騒がしい物なのだろうと想像しては相手の方に目線を向け、くすくす笑いつつも感想を口にして)
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