検索 2022-07-09 20:46:55 |
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…、………ッ、翔太郎! 凄いよ、なんだか胸がぎゅっとなる感じだ。…これが兄の気持ち、そして庇護欲と言う訳だね。
(こちらのお願いを伝えると目の前の相手はフリーズしてしまった。確かに本来年上である相手に強請ることでは無いかもしれないがこうでもしなければ兄と呼ばれる経験を一生することが無いかもしれないのだ。撤回せずにそのまま見つめあっていると何やら考えを巡らすような仕草の後、頷かれると分かりやすく表情を明るくして期待するように目を輝かせてその瞬間を待つ。躊躇いながらも自分に向けて呼ばれるお兄ちゃんの響きに明確に心臓が跳ねた。告白を受けた時や色っぽい仕草を見た時とも違う柔らかで暖かな少し誇らしくもある感じだ。その実感を噛み締めていると続けて自分の名を含めた呼び方をされて、心臓に一気に幸せが流れ込んで破裂したような衝撃を受ける。じわじわと染み出す幸せに笑みが浮かぶと同時に居ても立ってもいられなくて思わず名前を呼びながら相手を抱き締める。初めての体験に興奮したように感想を伝えながらも愛でたい気持ちも高まって後ろ手に頭を撫でていく。弟が居たら毎回こんな気持ちなのだろうか。それとも相手だからここまで嬉しいのだろうか。その区別はつかないものの嬉しいことには変わりなく「呼び方一つでここまで印象が変わるとは興味深い結果だ」と考察しつつも撫でる手は止まらずにいて)
わっ、………俺もお兄ちゃんなんて言ったの初めてだ。なんか、凄くあったかい……へへ、フィリップ兄ちゃん
(戸惑うように発した呼び名だったが、口にしてしまえば今の相手への気持ちがすっきりと纏まったようにも思えてすんなりとその呼び名が自分の中で収まる。一方で相手はというと幸せそうな笑みを浮かべていて、それに釣られるようにこちらも口角が上がった。直後突然抱きしめられると驚きの声をあげるが、温もりに包まれ頭を撫でられると今しがた口にした呼称も相まってじわじわ暖かな幸せが胸に満ち溢れてきた。だがそれはある種の毒のようでもある。あの時に得られなかった暖かな気持ち、大好きで親愛のおける兄のような存在、全てを受け止め包み込んでくれる心地、それらは頭の片隅にこのままの姿でいたいという願望に変わってしまいそうだ。そんな片隅の心境に気づける程今は頭が回らない、何度も頭を撫でられると胸は幸せでいっぱいでこちらからも腰に腕を回すとぎゅっと抱きつく。擬似的であれ初めて出来た兄という存在、頼りになって自分を愛してくれる存在だ。照れくさいながらもう一度その呼称を呼んでみると、またじわりと幸せが滲む。二人っきりの部屋で相手を独り占めしてたくさん頭を撫でられてふわふわとした柔らかな幸せに包まれながら、顔を埋めた胸板に頬を擦り寄せると「大好き…」と心に浮かんだままを口にしていて)
なら初めて同士だ。、 僕も好きだよ、翔太郎。……僕も呼び方を変えてみた方が良いのだろうか、…翔太郎……翔ちゃん?
(再び腕の中に閉じ込めた相手は満足そうに笑ってくれていて腰に抱きつかれる。子供体温なのかいつもより温かい身体は抱いていてとても心地良い。相手からも初めてと聞くと顔を見合せてくすくす笑う。本来の年齢とは逆で模擬的なものだとは分かっているが、自分を慕ってくれる幼い存在というのは随分と可愛らしく感じてしまう。再び呼ばれる呼称も胸を擽って口元がついにやけてしまっている。きっと相手以外には見せられない顔をしてしまっているだろう。胸に擦り寄る仕草に優しく頭を撫でながらもこちらからも想いを伝える。ふと呼ばれ方を変えれば受ける印象が違うなら自分も変えた呼び方をしてみようかとアイデアが浮かんだまま口にする。出会ったばかりの頃は他人行儀にフルネームで呼んでいたものだが相棒と認め合うようになってからはずっと翔太郎だ。今までそれで不便してないがせっかくの機会だ。少し悩んで情報屋に親しげに呼ばれている名前を思い出せば様子を伺いつつも試しにそう呼んでみて)
……ふふ、なんか言われ慣れないな。でも、そう呼ばれるのも嬉しい
(相手に包まれながら頭を撫でられるのが心地よくて仕方がない、ずっとこうしていて欲しいぐらいだ。こちらの呟きに応えるような返事が帰ってくると抱きついたまま相手を見上げてくしゃりと目を細めて笑う。体だけでなく心も暖かくなるようで、より相手に近づきたいと願いが生まれるとさらに二人の距離を詰めて相手の方に少し体重を預けるように寄りかかった。手が頭の上から下へ何度も行き来するのに身を委ねていると、こちらの呼び方についても話題が上がってしばし相手を見上げていた。しばらくもしないうちにより親しみを込めた呼ばれ方をすると照れくさそうに、擽ったそうに目を伏せて笑う。相手からより親しみを込めて呼ばれるなら嬉しい以外の感情はない。照れながらも笑顔を向けて胸の内を伝えておく。相手の腕の中はこの世で一番安心できる場所だ、あまりにも離れ難い。そう思った時にはもうそれは言葉へと変換されてしまって「ずっとこのままがいいな」と呟くと抱きつく腕に力が篭って)
僕も言い慣れない名前だ。…僕は君が望むなら、今の姿でも元の姿に戻ろうと何時だってこうするし、何時間でも抱き締めるよ
(相手がこちらを見上げながらくしゃりと笑う。比較的普段の相棒もよく笑う方ではあるが今日は無邪気という形容詞が良く似合うような笑い方だ。更に距離が縮まって寄りかかられるとそれだけ気持ちを許してくれているようで口元も弧を描いたままだ。他の人が呼んでいるような親しみを込めた呼び方をしてみると照れくさそうな表情に変わる。下の名前で呼ぶのが慣れすぎていて別の人を呼んでいるような感覚ではあるが嬉しそうなら良かった。そうして2人きりの時間に浸っていたが抱きつく腕の力が強くなってつぶやきが聞こえてくる。今のこの状況を喜んでくれているような言葉、だけどそこにはあんなに戻りたがっていた年上の身体を諦めて今のままを望むようなニュアンスが込められているような気がした。めいいっぱい甘やかそうとしているのは自分だ。幼い姿が可愛らしいと思っているのは事実ではあるが、だからといって普段の姿では感じないだとか甘やかせない訳では無い。相手が左.翔.太.郎である限りは何があろうとこうして抱きしめて温もりと幸せを分け合いたい。この幸せに水を指すのは野暮ではあるがこの事は伝えた方がいい気がして、肩の上から抱きしめていた腕をわきの下に通して持ち上げて誘導し、自分の太ももの上に向かい合うように乗せる。そして再びゆっくりと頭を撫でながらも姿形変わらず相手でいる限りはこうして抱きしめて甘やかすと約束して)
…、……ぁ……本当に?そんなの、かっこ悪いのに?俺の事……嫌いになったりしない?
(この温もりをずっと離さぬようにと相手へ抱きついていたのに、不意にその手が離れて目を瞬かせる。そうしている間に体を軽く持ち上げられると、誘導されるままに相手の太ももの上へと乗った。そうすれば見上げていた目線は同じ高さになって真っ直ぐと相手を見つめる事になる。すると、じわじわと蝕んでいた自分らしくもない幼い願望を見透かすような事を告げられて小さく声を漏らす。だがそれは決して悪い話ではなくて、元に戻っても同じ様に抱きしめてくれるという申し出だ。どこかでこうやって相手に甘えたりお強請りを言ったりするのはこの姿だからこそだと思っていた。元の姿ではプライドが邪魔をするし、相手の前では格好いい姿でいたいと思っているのもその要因。相手には、というより誰にも、甘える姿なんか見せた事がない。そんな姿を見られて情けないと思われたくはない。そう思う不安はこの姿では直ぐに口をついて出ていて、相手の両肩に手を置くとじっとその目を見つめながら不安げな口調で問いかけて)
しない。風.都.の為に頑張るかっこいい君も君が情けないと思ってるであろう部分も全部引っ括めて好きだからね。 さっき僕が酷い姿を見せてしまっても君が今こうして好きで居てくれるのと一緒さ。勿論君の言動にイライラしたり怒ったり悲しんだりすることはあるかもしれない。でもそれはお互い様だろう? 僕は絶対に君の事は嫌いになったりしない。それに背伸びしている君がこうして僕にだけ弱い所を見せてくれるのは実は凄く嬉しいんだ。…だから、僕と二人の時くらいはありのままの翔太郎がいい。
(同じ高さになって見つめ合う。今話すのは対等な相棒として恋人としての話だ。自ら切り出した話はどうやら図星だったようで幸せそうな笑顔は失われて何処か不安げな瞳が映る。両肩に手を置かれて真っ直ぐとした視線と共に問われると間髪入れずにその不安を否定する。カッコイイだけの姿に惹かれた訳じゃない。全部引っ括めて好きになったのだから今更情けないところを見たところで印象が大きく揺らぐことはない。例として先程の自分の行動を持ち出す。冷静に考えれば探偵としては御法度の行為を行いかけたのにそれでも相手は引き止めて必要と言ってくれた。悪い部分を見せてしまったが今ならば相手に嫌われていないと胸を張って言える、それと同じだ。共に過ごす中で意見が合わなかったり喧嘩したりと全てが全て良い事ばかりの事じゃないかもしれないがそれでも絶対に相手を嫌うことは無いと断言出来る。それほどまで相手に惹かれて必要不可欠なレベルまで繋がっているのだから。今まで真剣な顔でそれを伝えていたが途端表情を緩め、相手の弱い部分を見ることが嬉しいことなのだと内緒話のように明かす。必死に頑張っている相棒の素を見られるのは自分だけという独占欲。その秘密を打ち明けて互いに利があることだと伝えた。最後に一呼吸間を挟むと最終的な自らの希望を伝えてみて)
……あの時、夏祭りの時もそう言ってくれたよな。だから俺はフィリップともっと深い関係になりたいと思ったんだ。…一緒にいるとイライラしたり大変だったり、いろいろあるけど、でもそれでフィリップの事嫌いになるなんて絶対にない。フィリップがちょっと間違った道を行ったって連れ戻すのが俺の役目だ。それと、同じなんだよな。…ありがとうフィリップ。それならもうちょっと甘えることにする……元の姿に戻っても
(不安げに問いかけた質問は最初の一言でキッパリと否定されて目を見開いた。そのまま語られる言葉は先程まで相手に包まれて得ていた暖かいものとはまた違って、この胸を確実に打つような力強い確信とこちらへの想いで溢れていて体の芯を震わせるような温もりがあった。柔らかな表情で伝えられた事には照れくさそうに笑うが直後の言葉でまた目を開く。以前にも聞いたその言葉、それを聞いてこの姿でなければ甘えられないと固執してしまって体の年齢よりも幼くなりかけていた精神が、元の年齢の方へと引き寄せられる。そしてあの時の光景を思い出して思わず笑みを零した。思えば最初から言われていた事ではあったのだ。背伸びをしていなければならないと思っていたあの時に、素のままでいいと言ってくれた時からありのままでも相手は受け入れてくれただろう。目の前の人は最高の相棒で最愛の恋人だ、この命尽きるまで相乗りすると誓った人間。こちらがちょっとやそっとで手放さないのと同じ様に、相手もこの手をずっと握っててくれる。それなら相手にだけは頭を撫でて欲しいなんてお強請りをしたって構わないだろう、例え風の街のハードボイルドな探偵に戻ったとしてもだ。首に腕を回して再びぎゅっと抱きつく。首元に顔を埋めると、相手と同じく秘密を話すように小さな声で返事をし)
…確かにそうだったね。…ん、君が思っている以上に僕は翔太郎の人間性とかに惚れているんだ、もっと自信を持ってワガママになりたまえ。 …なんなら何か合図でも作るかい? 言葉だとハードルが高いだろうからこれをしたら君を甘やかすようにする、みたいな二人だけの暗号だ
(自分が思ったままの言葉を伝えたつもりだったが確かに大きく関係性が変わった夏祭りの日にも似たようなことを言った覚えがある。その時からずっと想いは変わっていない。これまでもこれからも色々あるだろうが嫌いになれる気も手を離す気もさらさらないのだ。肩に触れていた手が首の後ろに回ってぎゅっと抱きつかれる。首元に顔を埋める相手の頭を肯定するようにぽんぽんと撫でながらも今度こそ本当の意味で甘やかす事が出来たことに満足気に笑い声を零す。加えてこちらからも改めて相手を抱きしめていつもの調子と口調で自分なりの言葉を送っておいた。とはいえ今までの月日を考えればすぐに甘えるようになるというのも難しい気がする。少し考えてから一つの案を出してみる。その気になった時に言葉で言わずともちょっとした仕草で分かるようになれば少しでも頼るハードルは低くなるだろう。相手が望むならという前提ではあるが一つのアイデアとして提示してみると様子を伺ってみて)
なんだその言い方。まぁでも……うん、フィリップの前ではもうちょっとワガママ言ってみる。…合図……なら、これがいい。俺が頭差し出すとか、フィリップの手を頭に乗せた時とか、頭を撫でた時がいい
(いつも通りの上から目線な言い草が飛んでくると笑いながら思わずつっこむ。だが相手の言う通り我慢することも背伸びすることも、時にはハードボイルドな探偵でいることも、相手の前ならばしなくていい。それを今頭を優しく撫でてくれる手が証明してくれている。その心地良さに目を瞑っていると、合図を作るという提案に少し顔をあげた。確かにいくらもっと甘えてわがままを言おうと決めたとしても、元の姿に戻った時に相手に向かって真正面から『今から甘やかしてくれ』なんて堂々言える気は全くしない。おそらく恥ずかしいといって言えずじまいになるのがオチだ。そういう意味でも合図というのは良い案だろう。そしてその合図は自分の中ですんなりと決まる。体を少し離して間近で相手を見つめながら、今まさに頭を撫でる手に自分の手を重ねる。一番最初にこの体へと精神が引きずられる感覚がした行為、そして一番最初に相手へお強請りした行為、すなわち頭を撫でる事だ。精神に影響が出始めたきっかけで最初に望んだこれは、きっと遠い昔から親愛なる誰かにして欲しかった事なのだろうと今なら分かる。今日だけでも頭を撫でられると途端に幸せに包まれてもっと甘えたくなってしまっているのだ、きっと元の姿に戻ってもこの素質は変わらないだろう。それに普段あまり触られない頭に手が触れるのを合図にするなら分かりやすい。手を添えたまま「いい?」と軽く首を傾げて問いかけて)
ああ、そうしてくれると僕も嬉しい。 …分かった、二人でいる時に君の頭に触れたり触れられたいような行動をすることを合図としよう。何時でも強請るといい
(こちらの意図が通じたようで何よりだ。色々背負い込んでいる相手は自分の前くらいはありのままの素でいて欲しい。甘やかすと聞けば相手にだけ利があるように見えるがこちらとしても相手にならば振り回されるのは本望で嬉しいことだ。ふわりと笑って自らの想いも告げた。合図という案を出すと自分でも思うところはあるようで顔が上がる。今まさに相手を撫でていた手に相手の物が重なるとぱちりと目を瞬かせるがその後続いた言葉で意味を理解した。一番最初に年相応な反応を見せたのも促して強請った中身もどちらも頭を撫でる行為だ。何度か撫でるだけで幸せそうな表情を見せる辺りずっとして欲しかったことなのだろう。相手が望むことなら異論はない。こくりと頷いて合図の内容を再確認する。もう一度何時でもを強調しながらも添えられた手と共に軽く数度頭を撫でると今後頼られる予感に得意気に笑って)
うん、それがいい。……フィリップに頭撫でられると凄く気持ちいいし、もっとして欲しくなるから、合図にちょうどいいな
(思えばこちらが相手のお強請りを聞いたり甘やかしたりする時だって、そうやって振り回されたり満足気にしているのを見たりしてこちらも満たされる気持ちになっている。それと同じような事をきっと相手も今思ってくれているのだろう。それならば遠慮する事も無い。晴れて合図も決まった。頭が撫でられるのが再開すると目を瞑って触れられる心地良さとそこから注がれる想いとをたっぷりと享受する。そうしていれば自然と笑みが浮かんで何時までもこうして欲しいとすぐに思ってしまう。今日一日で相手へ甘えるハードルは大きく下がったと言えよう。念押されるように言われる何時でもという言葉に頷く。相手の顔には頼られる事が嬉しいのか得意げな笑みが浮かんでいて、言葉通りいつでも来いといった表情だ。また何時でもこの心地が味わえると思うと嬉しくて「へへ」と照れた笑いを浮かべていた。まだまだこうやって頭を撫でられていたいが濃厚な半日を過ごしているせいか、いつの間にかお腹の虫は食べ物を求めてぐぅと音を立てる。それにその後には待ちに待ったシュークリームも控えているのだ、頭を撫でられている手が止まるのは名残り惜しいがまた後でお強請りすればいい。目を開いて視線を交えると「そろそろ晩飯食べたいな」とこちらのお強請りを伝えて)
君が元に戻るのが少し楽しみになったかもしれない。…そうだね、そろそろご飯にしようか。
(相手に改めて甘えても良いことを伝えられたと思えばこの機会も悪いものでは無かったかもしれない。頭を撫でると目を瞑って心地よさそうに受けている。その姿を見ているだけでもこちらまで胸に幸せが満ちる。これが元に戻っても多少照れながら受け入れる姿が見られると思えば楽しそうな笑みが溢れた。そうして穏やかな時間を過ごしていたが相手の腹の虫の音が部屋に響く。気付けばそれなりの時間が経っていたようだ。それに色々慣れないことばかりでいつもよりエネルギーの消費が激しかったのだろう。相手からも夕食の催促を受けると最後に一撫でしてから軽く持ち上げてからベッド傍に下ろし二人してベッドを後にする。夕食のメニューは既に決まっている。買ってきた乾麺の裏書を確認して鍋に水を張ると火にかける。食器を準備しながらも「あとは任せても良いかい?」とお願いして)
俺も、ちょっと楽しみ……___ありがとうフィリップ。あとは任せて
(今は元の姿に引っ張られているしいろいろと言い訳も揃っているわけで、甘えるのもお強請りをいうのも自分の中ですんなりと受け入れる事が出来る。だが元の姿になった時はそうはいかず、そのための合図やさっきのやり取りだった。今まできちんと出来ていなかった恋人に甘える行為をした時、どんな気持ちになるのかその時を楽しみに待つことにした。夕飯の提案は受け入れられ相手の膝の上からも退く事となった。あとでまたさっきのをして貰おうなんてもう先の事を考えながらキッチンへ向かう。簡単な準備を済ましてもらい後は任せろと胸を叩いた。といってもやることは茹でるのと温めるのだけで、もう一つ鍋を用意してレトルトパウチを温めつつ、大鍋の方が沸騰したらパスタを時間通り茹でるだけだ。シンクにザルを置いて茹で上がったパスタの湯切りをすると食器にくるりと円を描くようにパスタを盛りつける。ちょうどパウチも温め終わって、火傷しないよう気をつけながらミートソースをかければ即席の夕飯の完成だ。フォークを添えて皿を二つ持つと「出来た!」と声をかけつつリビングに持っていき)
_ ありがとう、翔太郎。じゃあ早速食べようか。
(簡単な下準備をして後の工程は相手に託すことにする。胸を叩く仕草がいまの容姿では子供らしい印象を受ける。説明書きを見る限りはあとは温めたり茹でてあえるだけで危険な動作は入っていないが念の為に傍で見守ることとする。だがさほど心配する必要まなく手際よく作業が進んで皿には綺麗にパスタが盛られてその上にソースがかけられる。これで夕食の完成だ。相手の後ろに続いてリビングに向かうとそれぞれの席に着く。料理をしてくれた礼を伝えつつも声を掛けて手を合わせる。フォークでくるくるとパスタを巻いて口にすると安定した味が広がる。あまり食にこだわりが無い身からしては最新の加工技術が施されたレトルト食品は外食と遜色ない美味しさだ。そしてなにより相手と食べることが出来るならなんだって美味しく感じる。そんなことを考えながらもふと相手のサイズの服が今着ているだけの一着だったことを思い出すと様子を伺いつつ「ミートソースで服を汚さぬよう気をつけた方が良い」と軽く注意して)
お易い御用だ。いただきます。……そうか、俺の服一着しかないもんな
(これだけ簡単な工程だと料理と呼べるかは微妙なラインだが夕食を準備したというのは紛れもない事実だ。胸を張って礼に応えるとリビングのいつもの席へと座った。今の体では少々椅子は不安定だが食べるのに支障はないだろう。相手に合わせて手を合わせると、早速食べ始めようとフォークを握る。クルクルとパスタを巻きある程度フォークに塊が出来たところで口に運ぼうとするが、そこで相手の忠告が入った。確かにこの姿は一時的なものだからと服は一揃い分しかない。汚れてしまえばまたもダボダボの服に逆戻りだ。納得するように数度頷くと、口に運ぼうとしていたのを止めて、再びクルクルとフォークを動かしてしっかりとパスタを巻き付けた。だがそうなるとフォークに巻きついたパスタの塊はより大きくなって、だがソースを飛ばさないようにするならこれを一口で食べるしかない。大口を開けると一思いにパスタを口に放り込んだ。頬が膨らむほど口いっぱいにパスタをふくむとやはり量が多かったようで暫く口の中のパスタを咀嚼するのに四苦八苦していて)
…なんだかハムスターみたいだね。 少し面倒だけど一回の量を減らした方が安全そうだ。…あーん、
(いつもの席に着く。小さな体にはこの椅子は多少不安定には見えるが他の場所で食べる訳にもいかないだろう。パスタを食べ進めながらも相手の様子に気を配っていると汚さないように丁寧にフォークに巻き直している。だがそれで出来た塊は大人なら普通に食べられる程のサイズだが子供の口にとってはそこそこの大きさだ。喉に詰まらせないかと口にするのを見守っていると案の定量が多かったようで苦しそうに何とか咀嚼している。手助けする程では無さそうで一応グラスに注いだお茶を近くに置いてやりながらも頬いっぱいに食べ物を詰める様子が何かに似ていてつい観察するように見つめる。それが以前何処かで見かけたハムスターが木の実を沢山溜め込んでいる姿に似ているのだと思い出せば思わず口にしながらも微笑んだ。とはいえ毎回この調子では食べるのに苦労してしまう。巻き付ける回数を増やしても量を減らして食べやすくする方が利口だ。相手が咀嚼しきって飲み込んだのを確認すると相手の皿のパスタを先程よりも食べ切れるだけの少量しっかりと巻き取ってから口元にフォークを差し出して)
そこまで小さくないのに……そうだな、慎重にちょっとずつ……ん、…フィリップ、もう一回して欲しい
(しばらく口の中に入ったパスタと格闘していたがようやく少しずつ飲みこんでいき何とか喉を詰まらせずに口の中身を空にできた。ハムスターだとさらに小さな存在に例えられると不満気な顔をしながら差し出してくれた水を一口飲む。だが服を汚さない為にはこうやって食べていくしかない。相手のアドバイスに従い次は量を減らそうとフォークを構えた所で相手のフォークがこちらの皿にやってきて問題なく食べ切れる量のパスタが巻かれてこちらへと差し出された。それくらい出来るのになんて思いながらも、こちらの事を想って世話を焼かれるのを今はすんなり受け入れることが出来て、ちらりと相手を見上げ嬉しそうに口角をあげた後、差し出されたパスタを食べる。簡単に飲み込める量のそれを咀嚼すればきちんとその味も楽しみながら食す事ができる。これでちょうど良い量も分かりあとは自分で食べるべきなのだが、特段意味もないのにただ相手に食べさせてもらいたくてじっとその目を見つめながらお強請りして)
食べ方の話だよ。これくらいの量なら食べやすいだろう? …、仕方ないな、…あーん、
(ハムスターに例えられるのはどうやら不服らしい。身体的な見た目というより頬いっぱいにする姿から連想したのだがどちらにしろハードボイルド探偵には相反する例えだ。それに今の相手は例えるならば犬とかの方が近い気がする。そんな相手に適量巻いたフォークを差し出してみるとちらりとこちらを見ては口にする。今までも似たようなことはしてきてその時はもう片方の味を知るための味見や半分こという意味合いが強かったが、今回のこれは体格の差もあって餌付けって表現が近い気がする。これも本人に言ったら怒られそうだから口にはしないが。量もちょうど良かったようで特に苦しそうな様子もなく食べられているようだ。その様子を微笑ましく観察しつつもいい見本になっただろうと自分の皿に戻ろうとした所で声が掛かる。見上げるような目線でもう一度を強請られると一瞬驚いた後、愛おしさが湧き上がって心臓が跳ねる。可愛らしいとはこの事だろう。照れにも似た動揺を誤魔化すように仕方ないと口にはするがその口角は緩みきっていて声色も甘くなってしまう。その間に再び相手の皿から適量パスタをフォークに巻き付けて一口分を準備し、相手の口元に差し出して)
へへ……ん、美味しい。ありがとうフィリップ
(ただ食べさせて欲しいからとそんな理由で強請ったもう一回だったが、相手は驚きはしたもののすぐに二口目を用意してくれる。甘えられるのが嬉しいと聞いた後に相手の様子をうかがうと、その言葉通り声はより柔らかで耳触りの良い物になっていて、口では仕方がないなんて言っているがその口元は緩みきっている。こちらが甘えてそれによって幸せそうな顔をする相手にこちらも心満たされるものがあって、自然と口も緩んで思わず照れ笑いが漏れる。先程までは自分の中で溢れる幸せを感じるのでいっぱいだったが今は相手のそれも感じる余裕が出てきていて、こんな顔をしてくれるならますます甘えたくなってしまう。差し出された二口目をそんな互いの幸せごと口に含んで咀嚼して飲み込むと、また口は三日月の形を描く。溢れる気持ちが抑えられなくて、意味もなく相手の足に自分の足を擦り寄せていた。こうなったら全部食べさせて欲しいとさらに強請ってしまいそうだが、流石に食べ終わるのに時間がかかってしまうだろう。礼を伝えたあとフォークを手に取り相手に習った量をとってパスタを食べ進め)
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