検索 2022-07-09 20:46:55 |
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今の状況を見られたら経緯を1から説明しなくてはならないからね。 ああ、今の服の状況ではこの方法が一番手っ取り早く事務所に戻ることが出来るはずだ。周りの目が気になるならハットで顔を隠すといい
(持ち上げた身体は縮んで年相応の体重になったおかげもあって事務所まで運べなくもない重さだ。明らかに非日常な現象、その姿を警察、特に相棒の顔なじみに見られてはこうなった経緯を説明する必要があるだろう。そうなればド.ー.パ.ン.トを倒した件も必然的に話す事になり、それは正体を明かす事と同義だ。見えている厄介は回避した方が良い。落し物がないか確認しながら歩き始めると腕の中の相手から抗議の声があがる。ハードボイルドを目指す身として許容し難い体勢なのは理解出来るが服を落とさず迅速に事務所に戻るにはこの移動方法が一番効率的だ。細身とはいえ中学生に入りたて程度の年齢に見える相手よりも体格は上で抵抗されるのも気にせず冷静に説明を施す。いつもは相手が歳上で振り回すことはあれど心身共に頼れる相棒ではあるが、今は縮んだ背丈も相まって幼く守るべき対象に見えてくる。逆転したような立場に無意識に口元が緩みつつも顔を覗きこみ、根本的な解決になっていないアドバイスを伝えながらも事務所への帰路を歩み)
……お前この状況楽しんでないか?言っとくけどな、見た目はガキになってても中身は元のハードボイルドな探偵のまんまだからな!
(これが一番効率的であるのは分かるが恥ずかしいものは恥ずかしいのである。体を縮めるなら服も一緒に小さくしてくれれば良かったのに。いや寧ろ服に逆回しがかかった場合布や糸になってしまうのだからもっと悲惨な事になっていたか。相手に運ばれるしかない状況に不服な顔をしつつ向こうをみやるが、こちらを覗き込むその顔には笑みが浮かんでいる。普通ならば絶対にありえないこの状況に気をよくしているのだろうか。しっかり子供扱いしてくる相棒にさらなる抗議の声を上げつつ、ハットを被り直して中身は大人であることを主張する。だがブカブカのハットはフラフラとその位置をすぐに変えて、すぐにこちらの顔へとずり落ちてしまった。ハットさえ決まらない状態に悔しげに強く歯を噛むと不貞腐れるようにハットで顔を隠してしまう。視界を遮れば感じられるのは相手に揺られる感触だけだ。今まで抱き締められた事はあっても、こうやって体全体を包み込まれたことは無い。相手の体形は変わっていないはずなのにしっかり支えられ僅かに揺られていると随分と心地よくて、無意識に頭を相手の体の方へとくっ付けており)
…なんの事だい? 分かってるよ、姿が変わっても君は僕の大事な相棒だ。 ____ 着いたよ、降ろすから足元注意してくれ
(仕方ないと分かりつつもこの状況は気に入らないと顔全体が分かりやすくそれを訴えている。未知の現象でこれからの探偵業の将来を揺るがす一大事なのだが普段なら有り得ない現状を楽しんでいるのは否定出来ずに曖昧にしらばくれる。ハードボイルドだと主張する姿はよく見かける物だがこの体型では余計子供が駄々をこねているようにしか見えない。象徴でもあるハットは頭のサイズが合わずに被った先から滑り落ちてしまうようで背伸びしている子供という印象に拍車をかける。すっかり不貞腐れてしまって助言通り顔を隠してしまったが、ハードボイルド云々は抜きにしても小さくなっただけで相棒という点には変わりない。頭を委ねるようにくっつけられるのを感じながらも宥めるようにそう告げればしっかりと抱き直して帰路を歩く。出来るだけ人通りの少ない最短距離を選びながら移動し、大きなトラブルもなく事務所前に辿り着くとゆっくりと階段を上がっていく。この様子では依頼を受けれまいと扉の前の表記をCLOSEにしてから事務所に入る。どうやらまだ所長は帰ってきていないようだ。腕の中の相手に優しく声を掛けると慎重にしゃがんで地に足をつけるように促して)
ったく、子供扱いしやがって……___ん、まだアキコは帰ってきてねぇみたいだな。とりあえず服待ちだ、な、っ~~
(明確に否定しなかったあたりやはりこの状況を楽しむ気持ちはあるようだ。この姿が治るかも分からないのにとますます不服な気持ちが募る。こちらへ声をかけてくるがいつもより随分優しげな声色で完全に子供をあやす時のそれだ。思わず呟くも、しっかりと抱きかかえ直されると相手に包まれる感覚に安心して眉間に寄った皺が解けそうになってしまった。ハットで顔を隠していて正解だったと言えよう。事務所へとたどり着くとようやく顔からハットを外し、促されるままその場に立った。いつも通りの光景のはずなのに目線は随分と下がってしまって何もかもが大きく見える。まるで違う世界にいるようで居心地も快適とは言えない。ひとまずはいつもの通りハットを掛けようとガレージの扉の方へ向かう。相変わらずズボン一式はブカブカで片手で押さえなければいけない。それに加えて靴もサイズはあっておらずズリズリと足を引きずるように歩く。だが途中でズボンの裾を自ら踏んでしまって片足の身動きが取れなくなってしまった。とはいえ金具までもう少し、上を見上げれば運悪く一番高いところにしか空きはないがなんとか届くだろうか。その場からハットを持った手を目いっぱい伸ばす。しかしハットは金具にギリギリ届かなくて、根性でなんとかしようと唸り声を上げながらハットを持った腕を伸ばし続けていて)
子供服となると少し遠くの店まで行かないと無かったはずだ、もう少し待つしかないね。 …、君が小さくなって不便な部分は僕がサポートする。だからこういう時は素直に頼ってくれ
(事務所まで戻ってきて相手を下ろすと小さく息を吐く。いくら子供といえそこそこの重量の物を長い距離手にして帰ってきたのだ、普段は使うことの無い場所を酷使した実感があって明日は筋肉痛になってそうだ。近場は普通の服屋ばかりで今の相手が着るくらいのサイズの服は浴衣を調達した店くらいまで行かないと無かった気がする。それに一式を買ってくることを任せたから時間がかかってるのかもしれない。所長が帰ってくるのを待ちながらも早速解決案を探る為にガレージで検索してこようとした所で必死に金具にハットを掛けようとする相手の動きに気付く。大きすぎる服と靴で足元は不安定な状態でギリギリ届くか届かないかという所で背伸びして腕を伸ばしている姿は微笑ましいより危なかしいという印象の方が上回る。実際の身体に中身が伴っていない事と自分でやろうとしてしまう所が悪い方に作用してしまっている。後ろから近付いて伸ばした手からハットを取り上げると代わりに金具に掛けてあげる。それから相棒の方に向き直れば忠告も兼ねて頼りにして欲しいと肩に手を置きながら告げて)
あ、…だから子供扱い……分かった。必要な時はお前に頼む……こんな形でお前に背丈抜かされるとはな
(なんとかこのままハットを掛けられないかと腕を伸ばしていたが、金具へ届く前にハットが手元からなくなってしまう。相棒に取られたのだと分かると咄嗟に文句を言おうと振り返った。だがその目線の先に相棒の顔は無く胸板しかない、実際の位置はもっと上だ。目線を上げる仕草をしているうちに文句は言い損ねてしまって、その間に相手がこちらを向いた。両肩に手を置かれ至って真面目な顔で申し入れがされる。形はお願いだが実際は忠告だ、それこそ子供に言い聞かせるような仕草にまた文句が口をついて出そうになる。だが今の状態では一人で歩くのもままならないのは事実で、下手すれば転んで怪我をしそうだ。それに同じようなやり方で相棒へ言い聞かせた記憶は何度かあって、その時の心境を思えば無碍にできるものでは無い。それにここで反論すればそれこそこちらが子供だろう。いろいろ言いたい事はあるが一旦飲み込んで数度頷いた。こちらも真剣な表情を向けようとするがやはり目線は上へと向く。背を抜かされないようにと何度もツムジを押したのにまさかこちらが縮むことになるとは思わなかった。「首が痛くなっちまいそうだ」と見慣れない角度から見る相手の顔を見上げていて)
この現象も恐らくガ.イ.ア.メ.モ.リのダメージであるのには変わりない。用心するに越したことはないだろう。…ああ、何だか違和感が凄いよ。
(また子供扱いと抗議の声があがりかけるがこれは重要な事でもある。本来あれほどのメモリによる攻撃を受けたなら重傷になってもおかしくない程の距離と衝撃波だった。それが何故小さくなると言う形で現れているかは分からないがダメージであるのには違いない。原因が分からない以上怪我を重ねるのはあまり良くないはずだ。どうやらその想いも伝わったようで完全に納得という訳では無さそうだが飲み込んではくれたようだ。安心したように手を離して背筋を元に戻す。そんな自分を見つめるとなると相棒はこちらを見上げる形になり、自分も視線はいつもよりかなり下だ。身長も今は自分の胸ほどの高さしかない。成長期云々などと話してはいたが相手が縮む形で背丈が逆転するとは思わなかった。隣を見ればあるはずの相棒の顔がない。相手が居ることには変わりないが違うことへの違和感が強くて身長差を確かめるように頭に手を置いてはぽつりと呟く。そんなやり取りをしていると階段を駆け上がる音の後に扉の開く音。視線を向けると所長が大きな袋を持って立っていて相手を見るなり「まさかこれが翔太郎くん!?」と大きな声をあげて駆け寄ってきてはいつもの口癖を言いながらあらゆる所を確認している。小さいだの可愛いだのはしゃぐ所長に服のことを促すと袋から一式の衣類を出してくれた。パーカーにスボン、スニーカーと普段の格好に対しては大分カジュアルな格好だが普通に動く分には問題ないだろう。それらをそのまま相手に渡すと「着替えてくるかい?」と問いかけて)
まぁそうだな。時間を操る厄介な奴だったし、後からダメージがくるかも、……絶対に戻る方法見つけるからな。__アキコ!待ってたぜ!
(間違いなくあのメモリは破壊したが、今イレギュラーな事が起こっているのならまたいつイレギュラーが起こるか分からない。心配事は増やすべきでは無いのは同意でいつも以上に無茶はしない方が良いだろう。返事をしていると相手が呟きの後に頭の上に手を置いてくる。相棒からすればただ手を置いただけなのだろうが、それはこちらと背丈の差があるからこそできる行為で身長の低さを思い知らされるようでもある。怒っても仕方がないのだが悔しさを滲ませた顔を相棒へ向けつつ、必ずこの状況を抜け出すことを誓った。そうしているうちに待望の所長様が帰ってきて出入り口の方へ声をかける。が、アキコの興味は速攻でこちらへ向いてジロジロこちらを見つつ周囲をグルグルする様に「あーーー鬱陶しい!!」と叫んで牽制すれば『性格は可愛くない!』と勝手な事を言われて額に青筋が走りそうだった。相棒に促されてようやく服の話になりやれやれとため息をつく。受け取ったのは随分カジュアルな格好だが、この状況でスーツを買ってくれとはさすがに言えない。というよりこの背丈でスーツを着れば卒業式か入学式になってしまう。まずは自由に動くために着替えなければ始まらない。着替えてくると返事をしてその場から動こうとするとすぐに足が動かずつんのめった。先程ズボンの裾を踏んだままで相変わらず片足は動かず、片腕には服を抱え、片手はズボンがずり落ちないよう掴んだままだ。目を伏せ歯ぎしりをする。正直ここから一歩も動けない。先程サポートすると言われたばかりであるし、ここで頼るべきは相棒だろう。アキコの前でこれを言うのはかなり屈辱的だがやむを得ない。ちらりと相手の方をみやると「着替えれるとこに運んでくれ……」と消え入りそうな声で言い)
うるさいよ、二人とも。アキちゃんひとまず助かったよ。あとは解決法を僕なりに探って…、承知した。 じゃあ下で翔太郎を着替えさせてくるよ。
(後からダメージが来るなどあまり考えたくは無いが用心するに越したことはない。相変わらず背丈の差を感じられる行為には悔しそうな顔をしているがこの身長差が不思議なのだから仕方ない。そう思うのはどうやら所長も同じようで興味津々に相手の周りを見回っては何やら騒がしく争っている。いつもの光景といえばそうなのだが少年特有の声の高さもあってより耳に響くやり取りに仲裁に入って注意をしておく。だがひとまずサイズのあった服さえ着ることが出来れば普通に動く分には問題なくなるはずだ。相手からの返事を聞くとわざわざ遠くまで買ってきてくれた所長に礼を伝えて早速解決案を探るためにも検索しようと思った最中だ。隣から消え失せそうな声で助けを呼ばれ再び視線を向けると裾を踏んだり服を掴んだりと精一杯で下手に動けない状況であることに気付く。素直に頼られたことに密かに嬉しさを感じながらも直ぐに頷けば「服は自分で持っていてくれ」とだけ伝えてズボンがずり落ちないように再び相手を抱き上げる。シャワールームの脱衣場でも良かったが検索することを考えるとガレージの方が良いと判断し、所長に一声かけると器用に肘と肩で扉を開け、螺旋階段を降りていく。ホワイトボードのところまで歩いていき、ペンギンのぬいぐるみが鎮座しているソファの上にゆっくり下ろしては何処までサポートするべきか分からず「一人で着替えられるかい?」と問いかけ)
アイツがうるせぇのに……____っ、そこまでガキになってねぇよ!一人で着替えられる。全部変えなきゃいけねぇんだから、暫くこっちみんなよ
(どうにも動けない状態から再び相棒に抱きかかえられる。さっきはまだ誰にも見られていなかったので良かったが今や所長の目の前だ。アキコは大袈裟に『きゃっ』なんて言って両手を頬にあてこちらを揶揄ってくる。手を振って向こうへ行けと追い払い、頬が赤くなる前に顔を逸らしておいた。ガレージへと降りて行きソファの上へとおろされる。相変わらず軽々と持たれてしまうのは納得がいかない。元の体であれば体格差もあってこちらからだけが相手を抱える事ができたのに。降ろされた先のソファには先日獲得した特大のペンギンが鎮座していて、奇しくもこれが年相応なものとなってしまった。この並びを見られればまた所長が煩くなりそうだ。早いとこ着替えてしまおうと思ったところで相棒は更に手伝おうとしてきて思わず声をあげる。幼稚園児ならまだしも流石に服は一人で着替えられる年齢だ。多少手間はかかるだろうがここなら服を脱ぎ散らかしても問題ないのだから手助けは不要だ。今となっては相棒に裸を見られようとどうとも思わないが、なんとなく子供の姿で見られるのは恥ずかしくアッチを向けと反対側を指さしていた。ソファに座ってしまえば服が大きくても脱げないことは無い。丈のあっていない上着からズボンその他もろもろを引っ張るようにして脱ぎ捨てると所長に買ってきてもらった服一式へと着替える。パーカーにスニーカーなのは良いが下半身はスースーしていて「あいつなんで半ズボンにしたんだよ」と愚痴りながらようやく自由に動けるようになったとため息をついて)
…それもそうだね。君の裸なんて見慣れているんだから今更恥ずかしがる必要は無いと思うのだが…まあ君がそう言うなら従おう。
(依頼の報告書作りなどは所長に任せるとして今自分達がやるべきはこの事態の究明だろう。相手を運び着替えの手伝いを申し出たが即座に拒否されてしまった。つい見た目の印象から気を配りがちだが中身は歳上の相棒のままだ。施設から逃げ出してきてまともな服の着方も分からなかったあの頃の自分とは違う。手伝う件は素直に引き下がるが加えて着替える上で他所を向くことも指示される。着替えや風呂等で散々相手の素肌を見てはいるし触れることだっているのだから羞恥を覚える必要はないと率直な感想を口にするが特にここで張り合うほど見ていたい訳でもない。不思議そうにしながらも視線をホワイトボードの方に向ける。今回の依頼を追う中で手がかりになった証言や証拠、メモリの能力についてが纏めてある。それに再び目を通しながらも何か手掛かりがないかと思考を始める。時を操る能力、対象の物に対する時間を巻き戻したり逆に進めたりすることができる代物で事案にも明らかに異常に早く錆びた金属や修復された車などが見つかっている。だがそれだけでは今の相手の状況は説明出来ない。なぜメモリが壊れたのに能力は消えないのか。悩んでいるとふと今回の能力を気付くきっかけとなった時刻が遅れている電波時計の写真が目に付く。その瞬間脳内で点と点が繋がり謎が解けると相手に着替えさせていたことも忘れて「翔太郎! 何故君に能力が掛けられたままなのか分かったよ!」と興奮しながら気付きを報告して)
いつもと今の状態で見られるのとじゃ違うんだよ。____うぉっ?!なんだ急、に……ほんとか?!元に、戻れそうか?
(一緒に風呂に入っている時点で相手に隠すものも何も無いのだが、それはいつもの姿の話だ。もう見られぬことも無いはずだった過去の姿になっているのも恥ずかしいのにさらに恥ずかしい姿を見られるのは憚られる。いつか初めて相手が自室に来た時にクローゼットを覗いて過去を垣間見られた事があったが、それよりももっと深い過去を晒している気分だ。精神が元のままなのは幸いだが、恋人の前くらいでは最後の意地で格好つけていたい。相手の視線がホワイトボードに向いてから着替えを始め、子供服になるとソファに乱雑に放り投げた元の服へと目を向けた。ズボンを手に取り広げてみれば今の自分にしては相当大きいもので、つまりはそれだけの成長を遂げたということになる。そう言えば中学が終わる頃に毎晩ひじや腕の関節が痛くて成長痛に悩まされていたなと思いを馳せていると、突然後ろから大声が飛んできてこちらも大声を出してしまった。慌てて振り返るもやはりあるのは相手の胸板、文句をいいつつ相手の顔に目線を上げると待ち望んだ朗報に顔を明るくさせる。この状態の理屈が分かれば元の姿に戻れるか否かも分かるはずだ。まずはその一番重要なポイントを聞いてみると固唾を飲んで相棒の返答を待ち)
ああ。まず君が幼くなってしまった理由はこれまでの事例にあった対象物の時間を操作するという能力の影響で間違いないはずだ。だが実はTimeメモリはもう一つの能力があったんだ。それがこれ。彼は確かにこの現場で自らの怪我を出来る前に巻き戻したが電波時計の時刻まで巻き戻す必要はなかったはずだ。そしてこの時彼は焦っていた。メモリを使う際気持ちが昂ったあまり周囲の空間ごと時間を巻き戻して現在と時差が生まれたんだ。…そしてあの時倒されると分かって咄嗟に同様の事を君にも施したんだと思う。まず1つ目の能力で君の身体を巻き戻して幼くした後に2つ目の能力で君の周りの時間を過去に戻した。つまり、君に関してだけはまだメモリブレイクの前の時間を過ごしているという判定なんだ。だから君の過ごしている時間がメモリブレイクされた時間に到達すればその能力も同時に消える、元に戻るはずさ。
(謎が解明したスッキリさと興奮に比べれば相手の大声など全く気にならない。早くこの理論を説明したいという気持ちの方が上回る。幸い相手にとっても重要な情報のためその先を促され、早速その理屈の説明に移る。ホワイトボードに書いてあるこれまでの事案をペンで印をつけながらも今まで認識していなかったもう一つの能力の存在を明かす。それを解明するのが現場にあった時刻が遅れて表示された電波時計の写真だ。電波時計は標準電波を受信して時刻を表示する時計であり基本的にズレたりすることはない。そして今まで追っていた事案とメモリについての本によると時間を大きく操作出来るのは狙いを定めた一点だけ。そうなればもう一つ違う能力があると思った方が自然だ。ガ.,イ.ア.メ
モ,リは使用者の精神状態や適合率によって異なる反応を示すことがある。そこで気付いたのが時差だ。気持ちが昂った際、対象物だけでなく周りまで巻き込んで時間を巻き戻したとすれば説明がつく。その理論についてホワイトボードに書きながら整理しつつ相手の今の状態についても当てはめていく。相棒単体の時間を巻き戻して幼くした後に相手の周りの空間ごと巻き戻す。相手の時間はまだメモリが存在しているという事になっている為能力が持続しているという訳だ。端的に言ってしまえば先延ばししているだけで時間が経過すれば能力の効果は消える。その結論を書き記すと相棒の方に向き直り「あの一瞬の判断ならば戻せても1日か2日かのはずだ。明日か明後日になれば元に戻るだろうね」と恐らくの目安も伝えて)
……なるほど俺自身だけじゃなくて俺の周りの空間も時が戻っちまってるってことか。電波時計自体が時を戻されちまったと思ってたけど、これは空間の方に作用してたわけだな。お手柄だ、流石だなフィリップ。ってことは何時かは元に戻れるってことだが……もうちょっとこの体に付き合わなきゃならねぇか
(相棒の隣に並んでいつもよりも高い位置にあるホワイトボードを眺める。順に説明されていく事柄をさながら捜査の時と同じように聞き入っていた。一通りの説明をされると合点がいったとばかりに数度頷く。時を前後されたであろう物体の写真は自分たちの捜査や警察の資料からいくつか見ていたが、まさに相手の能力を知るきっかけとなった電波時計の写真がもうひとつの能力を示しているとは思わなかった。いつもの事ながら相棒の高い洞察力と理論を組み立てる力には恐れ入る。労いと感謝の意味を込めて肩を叩こうかと相手の方をみずに手を伸ばしたが、手を伸ばした先に残念ながら肩はなく代わりに背中へと手が当たって、取り繕うように背中を叩いておいた。自分の周りの空間も時が戻っているとは正直実感はないが、メモリが破壊された時に追いつくのを待てば自然と全ては終わるということだ。つまり時間さえ経てば元の姿に戻れる。だがその時間は数時間単位ではないとの予想に顔を下に向け項垂れた。ここまででもなかなか苦労が多かったがまだまだそれも続きそうだ。ひとまず上で待っている所長にこのことは報告した方がいいだろう「アキコんとこ戻るか」と事務所スペースの方を指さし)
その写真を撮った君のおかげでもあるよ。それにしてもなかなか厄介なメモリだ。もし2つ目の能力を意識的に使えるようになっていたならもっと被害は甚大だっただろうね。 …まあでも過剰な心配をする必要はなくなった。時間が経つのを待つだけ、だ。その格好、なかなか似合ってるね、
(一通り説明すれば今回の事案の理屈について理解してくれたようだ。いつもの労うような仕草も今日は肩ではなく背中を叩くような仕草だ。発想のきっかけとなった写真について感謝しながらも今回のメモリについて感想を口にする。この電波時計の際と相棒に対してだけ使われたということは本人もあまり自覚のない能力だったのだろう。もし自由に使えるものだったら周りは巻き戻っているのに物質は劣化していたなどが頻繁に起きて足取りを掴むことも容易ではなかっただろう。相手がこうなったとはいえ早い段階で身柄を抑えられたのは不幸中の幸いだ。謎も解明して無事に戻ることが分かれば薄ら感じていた不安も消えて気が楽になった。項垂れている相手には悪いが心配しなくても良くなったということはもう少しこの幼い姿を鑑賞したり触れ合ったり出来るということでこちらとしては悪くない。正確には過去では無いが昔の面影のある相手の姿を見るのはなかなかレアな体験だ。そんな企みを抱きつつも事務所に戻ろうと声掛ける相手を見て着替えさせていたことを思い出す。いつものきちっとしたスーツではなくカジュアルなパーカーに下は子供らしい半ズボンだ。小さくなった背丈も相まってより幼い印象を受けると上から下までしっかり観察した後に自然と口元に笑みを浮かべつつ感想を言えば「是非アキちゃんにも見せよう!」と手を取って事務所に上がっていき)
あぁ早めに解決できて良かったぜ。俺がこれになったこと以外は良かった……、しっかりキに見えるってことじゃねぇか…ちょ、フィリップ!
(今回の犯人は表面上の能力にしか気づかなかったから幸いだったものの、長期戦になればかなり手強い相手になっただろう。その代償がこれなわけだが、いつしか治ると見込みがたっただけでも良しとする。王道の子供服を似合っていると言われてしまえばそれはすなわち年相応の格好になったというわけで、相手は褒めたつもりかもしれないが子供扱いには違いない。やはり悔しさを滲ませつつジト目で相手の方を見ていた。そうしているうちに手を引かれてしまって、相棒と共に階段を駆け上がっていく。これまでもよくある光景だが、この姿では相手の手を引き返して止めることは無理そうで、相手の気の向くまま振り回されるしかなさそうだ。願わくばそんな場面がないよう願っていると事務所スペースにたどり着き、またも所長が好奇の目でこちらを見てくる。『私の見立て通り!』なんて誇らしげだが子供服が似合うのはやはりいただけない。ため息がでかかったところで誰かが事務所を訪れようと階段を上がってくる音が聞こえた。相棒が扉にCLOSEの札を掛けたはずだが止まる気配はない。ガチャリと扉が開く音と共に見慣れた二人の顔が見えた。先程顔を合わせるのを回避した警察の二人、ジンさんとマッキーが片手をあげ挨拶しながら入ってくる。今回の事件解決に至った礼を言いに来たそうだが、すぐに探偵の姿が見えないことに気がついたジンさんは『翔太郎は?』なんて問いを投げてくる。マッキーはと言えば見知らぬ子供の姿、すなわち自分に興味を示したようで『こんにちは僕、お名前は?』なんていつもの調子では考えられないほど気持ち悪く優しい声で話しかけられてしまった。当然本名を名乗る訳にはいかず、暫く目を泳がせたあと「小太郎……です」とその場しのぎの安直な名前を名乗って)
こういった機会じゃないと他の系統の服は着てくれないからね、ナイス判断だ、アキちゃん。 …、アキちゃんの親戚の子を急遽預かることになったんだ。少し人見知りがちだからそっとしておいて欲しい。 それと翔太郎はガキの面倒を見るのはハードボイルドらしくないとか言ってまた出掛けていったよ。僕で良ければ伝言しておこう
(事務所スペースに戻り所長にその姿を見せると思った通りの反応だ。本人に選ばせたなら絶対着ることのない類の服装をしているのはなかなか珍しく相棒の違った姿を見ることが出来るのは嬉しいことでもある。不服そうな相棒とは対称的に所長を褒める言葉を向けていると2人以上が階段を登ってくる音がした。入口はCLOSEの札をつけているはずだがそれも気にせず扉が開かれた。中に入ってきたのは事務所としても良くして貰っている刑事二人でこのトラブルに咄嗟に相手に目配せする。情報提供してもらいこちらからも推理と身柄を渡した関係で事件解決の礼を伝えに来たのは分かったがなかなか不味い状況だ。刃野刑事が相手の不在を気にしていると同時に真倉刑事が相棒に話しかける。普段の二人のやり取りをしっていれば噴き出してしまいそうな声と会話だ。この状態がバレたくないのかわかりやすい偽名を名乗る相棒に『小太郎って言うのかー、良い名前だね。歳は?』と更に質問を重ねる真倉刑事にこちらからもフォローを加える。所長の親戚で急遽面倒に見ることになったという筋書きの元、さりげなく相手と2人の間に入る。所長も大袈裟なくらい頷いて話を合わせてくれている。今の相棒は若くなった相棒そのままでよく見ればバレてしまう可能性は高い、昔から付き合いのある刃野刑事なら尚更だ。人見知りということにして自分の背中に隠すように身をこちらに寄せつつも探偵は不在であることを告げて、代わりの引き継ぎを申し出て)
じゅ………じゅう、にさい…
(予想出来た事ではあったが最悪のタイミングで最悪の来訪者が来てしまった。マズいと思ったのは相棒も同じようで同じタイミングで互いに目配せをしていた。マッキーはなんとかなるかもしれないが問題はジンさんだ。この風.都.の中でも付き合いが長い部類に入るジンさんはもう少し子供だった頃の自分の顔つきも知っている。さすがにこの年齢の時は会っていないが気づかれる可能性は十二分にあった。相棒がさりげなくこちらの体を隠してくれる。アキコの親戚の子というのもナイスアドリブだ。ジンさんはというと近くを通っただけだからお礼を言いに来たとかこれからも互いに『協力』しようなんて他愛ない話しを相棒へと連絡事項として伝えていて、とりあえずこちらから気はそらせているようだ。だがマッキーはこちらを離してくれそうにない。仕方がなく年齢を答えるも、いくらフリとはいえ自ら子供と認めるように年齢を言わされるのは屈辱的だった。ぐっと堪えていると『へーもうちょっと下かと思った』なんて更なる追撃が飛んでくる。こっちの成長期はもう少し後だ、それまでは確かに年齢よりも幼く見られていたが今更その記憶を呼び起こされるとは。文句を言いたいのをぐっと堪えていたが『お前はあんな探偵みたいになんなよー』と言われついに堪忍袋の緒が切れた。人見知りという設定を忘れ「翔太郎お兄ちゃんはかっこいいけどな!」と相棒の体から顔を出し言い返してしまい)
こちらとしても警察の情報はとても助かっている。これからも翔太郎共々よろしくお願いしたい。 …残念ながら小太郎君は既に翔太郎派のようだよ、真倉刑事。この髪型も憧れてのことらしい。
(どうやらそこまで重要な用があった訳でなく通りがかりでの挨拶だったらしい。そのせいでピンチになってることなど知る由もないだろう。一番危険性の高い刃野刑事の関心を集めようと会話に応じていたがもう片方は注意を配ることくらいしか出来ない。年齢を答えてそれを茶化すような感想が返ってくる。明らかに堪えている表情だが何も知らない人から見れば知らない人に話しかけられてどうしていいか分からない子供か子供扱いされて拗ねているように見えるだろう。後者はある意味あってはいるが中身はとっくに成人済なのだ。真倉刑事は更に探偵、つまり相手自身を小馬鹿にする発言を重ねて遂に相手からも強く言い返してしまう。当然今までしどろもどろだった子どもが大きな声をあげれば注目は2人は驚いて相手に視線を向ける。まるっきり逆効果だ。『探偵はな、』と今までの情けないところなどをあげようとする真倉刑事を止めようと会話に口を挟む。関心を持たれたなら逆の手だ。先程掛けたばかりのハットを手に取ると相手に被せる。髪型や雰囲気が似ているのは相棒に憧れているからだと更に設定を付け加えると刃野さんが近付いてきて『確かにヤンチャしてた頃の翔太郎に似てんな』とハットごと相手の頭を撫でる。そして『子供いじめてないで帰るぞ』と真倉刑事に声を掛けると二人とも事務所を去っていき)
___なっ?!…、………おいフィリップ!邪魔すんなよ!!
(完全にスイッチが入ってマッキーとやり合うモードに入る。こちらが言い返したのに何かを言おうとしてくる様子にとうとう詰めよろうとするが、その前に相棒に帽子を被せられ当然ブカブカのそれは目深に沈むと視界を奪われてしまった。その間にまた相手からの説明が入るが今はそれどころではない。早くハットをのけなければと思っていた所に、ジンさんの声が近づいてきて頭を撫でられた。その瞬間に動きが止まる。遠い昔、親がいなくなって近しい人さえいない期間、こうやって大の大人に頭を撫でられたことなんてなかった。あの時望んでいたものが不意に降ってきて、気持ちが体の年齢の頃へと一瞬引っ張られる。そのまま固まっているとジンさんが帰るぞとマッキーに声をかける。ハットをあげてようやく視界を確保する頃にはジンさんは既に事務所の扉をくぐった後で、代わりにマッキーがこちらを揶揄うよう大袈裟に手を振っていてまたイラッとくると気持ちは元へと戻ってしまった。二人が階段を降りたのを見計らってハットを取って相手の方に向き直ると抗議の声をあげる。馬鹿にしてきたのはあっちなのだから言い返して当然だろうと怒りのスイッチは入ったままで)
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