検索 2022-07-09 20:46:55 |
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流石名物と言われるだけある、つい見蕩れてしまうのも分かるよ。海の中に入ったことは無いけどこんな感じなのかな。…楽しそうというか、君達の姿がお似合いだと感じたんだ。彼女は罪のない魅力的な女性で君に遠慮なしにくっ付くことが出来ていた。君もそれに当たり前みたいに応じて、傍から見ても恋人にしか見えなくて……仕事だと分かっていても、もしかしたらを考えてしまったらここが凄く苦しかった。 …呆れただろう?
(相手が大声で反応してそれを気にせずに手を引っ張って目的地に向かう。すっかりいつもの空気感に戻ってきたようで巨大水槽という興味も含めて心が弾んだ。そしていざ巨大水槽を目の前にするとすっかり意識はそちらに向かう。水槽の説明を見れば太平洋を模した展示ということが分かった。世界で一番広い海、そしてこの水族館の目玉というのも納得の大きさと生体の数で各々が優雅に泳いでいる姿は相棒の言う通りいつまででも見ることが出来そうだ。海と言ってもまだ海岸くらいしか見たことがないが、本物の海も潜ってみたらこんな光景が広がっているのなら自分達が見えている世界など限られた僅かなところなのかもしれない。まだ知らぬ場所を模した景色から一つでも海の世界を知ろうと熱心に水槽を見つめていた。すっかり先程の話は終わりいつもの空気に移行したと思っていたからこそ、振り返るような問いをされて表情が僅かに曇る。不安を見抜かれた状態でその問いに応えることは抱いた身勝手な感情を明かす事でもある。だがわざわざ所長に頼み込んでまでデートに誘ってくれた相棒にこれ以上嘘をつきたくもなくて戸惑う様に視線を迷わせた後にぽつりぽつりと答えを返す。格好は多少派手だったかもしれないがそれ以外は可愛らしい女性だった。素直に甘えたり明るい笑顔を浮かべたりが出来て、人前で相手の腕に抱きつくことだって出来る。もしも自分と出会ってこういう関係になって無ければ相棒が付き合っていても可笑しくない人物だ。そんな人と演技とはいえ楽しそうに相棒が隣にいて写真を撮ったり食べさせあったりして。自分の居場所が奪われたような、それでいて本当はコチラの方が相棒も幸せで正しい事ではないかと一瞬でも思ってしまったのだ。一度口を開けばそうして思っていたことが次々と溢れてきて止まらなくなる。その時の感情を思い出してしまっては声が震えそうになって無意識に掴んでいた手を強く握りしめて何とか言葉を紡いでいく。ずっと痛みを感じていた胸元に手を添えて絞り出すように本音を吐く。言葉にしてみれば自分の思考がいかに身勝手で暴走していたのかが客観的に分かって情けなくなってくる。こんな事を長々言われても相手も困ることだろう。話も終わりその場を支配した沈黙にいたたまれなさを感じれば小さな笑みと共に茶化すように告げて)
(/そろそろだなとは思ってましたが半年も経たずに到達とは本当にあっという間ですね。特別数字に拘ってはいないですが探偵様とここまでやり取りが続いていることとても嬉しいです、ありがとうございます!返信ペースに関しては本当に楽しいからこそこちらも早く返してしまってる状況なので、お互い無理しない範囲でこれからもやって行けたらと思っております。本当に何度申し上げても足りないくらい探偵様とやり取りが出来て幸せです。これからもどうぞよろしくお願いします。 こちら蹴可です。)
……呆れたりなんかしねぇよ。……依頼だからってすぐ引き受けちまったが、もうちょっとお前と相談した方が良かったかもな。彼女は確かに魅力のある女性だったけど、俺が望んでるのは彼女じゃない。…前までの俺なら彼氏のフリなんて浮かれちまうし、あんな積極的なことされたらすぐに本気になったかもしんねぇ。でも、今日彼女に何をされても何も感じなかった。お前の言うように当たり前みたいに対応して彼氏のフリができた。その理由はお前だ、フィリップ。これまでしてきた事も、これからする事も、全部お前とがいいからだ。……さっきもお前とが良いって言ったけど、ちょっと違うな。__俺はお前とじゃなきゃ嫌だ。他人からみてお似合いかなんて関係ねぇ、罪を背負ってんならお互い様だろ。……安直に彼氏役を引き受けちまって、お前に負担かけたのは事実だ。悪かった。……でも他の可能性なんか考えられねぇ、俺はお前じゃなきゃ嫌だ。だから、相棒として、俺の恋人として、隣にいてくれ。
(食い入るように水槽を眺める相手は好奇心を輝かせ見たことの無い海に想いを馳せていて、この空気を壊してしまうのは野暮かもしれないと一瞬躊躇するが、このまま有耶無耶にするのも狡い気がして、結局問いかけを口にしていた。相手の目がまた曇る。しかしあの時のように口は閉ざされず、ゆっくりとその内心が語られた。段々と声は掠れ、最後には痛々しい笑みがこちらに向いた。ある程度覚悟はしていたがこちらの想像以上に相手は多くの事を感じて苦しんで自己嫌悪に陥っている。茶化した調子で言われた問いかけに明確に首を振ると、胸に置かれた手に自分の手を重ねる。苦しかったというそこに触れて、重なった手を強く握る。彼女の依頼を受けた時この可能性が過ぎらなかったわけではない。だが相手も依頼だからと割り切っていて、それならば大丈夫だろうと安直に考えてしまった。あの時ばかりは所長の言うことを聞くべきだったのだろう。だが誰かの大切な人のフリをする事で分かった事もある。すぐに女性に骨抜きにされて鼻の下を伸ばしていた半熟以下の自分では決して分からなかった事だ。単純なこと、自分の隣は相手以外有り得ないというただそれだけのことだ。もしもこの世界に相手が居なかったらあらゆる可能性はあったかもしれない。しかし今や相手が居ない世界なんて耐えられないのだ。こちらもゆっくりと胸の内から言葉を引き出していく。だが最終的に行き着いたのは酷く子供っぽい言い回しの言葉で、しかしこれ以外に自分の想いを形容する言葉はない。目線を重ねた手の位置、相手の胸に落として謝罪を口にする。逆の立場ならきっと自分は依頼を断ってしまっただろう。深呼吸をしたあとゆっくりと目線をあげもう一度視線を交えると、こちらの最大限のワガママであり願いを相手へと伝えて)
…依頼を引き受けても良いと言ったのは僕だ、君は仕事を全うしただけだろう。……え、…ぼくが? …ッ、…しょうたろう。 彼女が君の腕に抱き着いたのを見て凄くイライラした。僕だってした事ない初めてを奪われたのもそうだし、恋人役というだけで人前でくっつくのが許されているのが羨ましかったんだ。…僕は君の事になると凄くワガママになってしまう。仕事だとしても君の一番も特別も僕だけが良い。…そんな僕でも君は隣に居て欲しいと願ってくれるかい?
(胸元に触れていた手に相手のものが重なって強く握られる。その暖かさに少しだけ救わるような感じを覚えながらも話に耳を傾ける。依頼を引き受けることを決めたのは相棒だが、所長伝いではあるがその是非を尋ねられ構わないと言ったのは自分だ。作戦を立てる時にも参加していたし嫌ならば拒否する時間はいくらでもあった。相棒はその仕事を完璧に果たしただけで大丈夫だと思い込んで勝手にダメージを受けている自分が悪い。そんな自己嫌悪に陥っていたがスマートに当たり前のように彼氏役が出来た理由が自分だと言われると予想外の事に目を見開いて困惑したように相手を見つめる。てっきり人との近い距離に慣れただとか気合いが入ってるからこそハードボイルドになり切れたからと思っていたが真相はまるっきり逆だ。分かりやすく動揺の色が浮かんで拙く聞き返す。そして妥協でも同列でもなく自分だけを望むように子供っぽくもある言い回しで願われると息を飲んだ。その言葉が本心であることは向けられる真っ直ぐな視線と握られたままの手が物語っていて今度は違う意味で胸が締め付けられた。今日初めて知った暗く悪い方向へと思考を誘う感情と自分が良いと求めてくれて嬉しい感情が混ざり合ってまだ制御が効かない。それでも震える声で目の前の大切な相手の名前を呼ぶ。自分の気持ちを整理するように言葉を並べながらも重なっていた手を胸からゆっくり離して改めて二人の間で繋ぎ直す。色々思考は迷走したが要するに相手の特別が他の人の物になったようで嫌だったのだ。長く息を吐いて気持ちを落ち着かせると相手をしっかりと見ながら改めて話を切り出す。思っていた以上に自分は欲深く心が狭い人間だった。困っている街の人の為だとしても一時的だとしても相手の特別でないと気が済まない。そんな自分の一番弱くてどうしようもない所をさらけ出しながらも強く手を握ると今一度確認するように問いかけて)
……フィリップ。俺がこんだけワガママ言ってんだから、お前のワガママだけをダメだなんて言うわけないだろ?それに、お前はワガママなくらいがちょうど良いんだよ。だから、お前には隣に居て欲しい。もう俺の隣はお前の席しかないからな
(真っ直ぐと相手を見つめながら酷く幼い願望を伝えると、目の前の相手が一瞬固まったのが分かった。そして震える声でこちらの名前が呼ばれる、そこには先程までの暗い感情だけでなく、喜びの感情が混じっているのが何となく分かった。二人の間で改めて手が繋ぎ直されて、相手の言葉を静かに待つ。だが続いた内容には思わず目を瞬かせた。相手の感情が乱れたきっかけは彼女が腕に抱きついたというただそれだけの事だった。それだけの事だが、そんな事さえも初めてがいいと願われている事に、自分がいかに相手に望まれているかが分かってこんな状況だというのに胸に幸福が満ちてしまった。幸せで胸が詰まりそうになって、震える息を吐くと同時にその愛しい名前を呼ぶ。相手はワガママなんて言うが、その求めるものが、心を乱すものが、独占したいと思うものが、自分であるのが何よりも嬉しい。それにその思いは先程自分が願った事とまるっきり同じなのだ。どんな時も相手の一番が自分であって欲しい、そうでなければ耐えられない。繋いだ手を強く握り返す。暗がりの中、水槽の光に淡く照らし出された相手の顔を見つめる。ワガママなんてお互い様だ。それに今や相手があっちへ行きたいあれが食べたいあれをしたいだなんて、そんなワガママに振り回されるのが楽しくて居心地よく感じているのだからどうしようもない。相手の問いかけに答える。答えはイエス以外に有り得ない。相手の存在は自分の中でコントロール出来ないほどに膨れて欠けてはならないものになっているのだから。こちらもありのままの気持ちを伝えきると最後に小さく笑みを向けて)
…しょうたろう。 なら僕はずっと隣に居たい。その場所を誰にも譲りたくない…翔太郎の恋人は僕だ。 ……こんなシンプルで当たり前の結論に至るまで随分迷走してしまったよ。僕は君が必要で、君も僕を必要としてくれる、それだけで良かったんだ。 …改めて彼氏としてデートしようか、翔太郎。
(幸せそうな声色で名前を呼ばれる。そこには確かに彼女の名を呼ぶ時には無い何かが含まれていてその主に視線を向けた。優しく慰めるようでありのままを伝えるような言葉。その一つ一つが胸に沁みていって、溜まっていた暗い澱みがじわじわと湧き上がって来て幸せに混ざって薄くなっていく。完全に消えることはないけれどそれよりも大切なことに気付けたから。もう一度噛み締めるように相手の名前を呼ぶ。小さく息を吸ってからワガママな自らの望みを告げる。独占欲の塊のような願いだが相手が許容してくれるならばありのまま欲しがるだけだ。奥底の願いすら言葉にして伝えることが出来れば迷いも振り切れた。幾分晴れやかな顔で小さく笑みを浮かべながら抱いていたモヤモヤについて語る。色々な可能性を考えたり周りの目なども気になったりはしたが、いざそれでこの手を手放せるかと言われたらきっと出来ない。それに今は今でしかなくて突然過去に戻ったりもしない。なら気にするだけ無駄だ。それぞれが相手を好きで必要としている、隣にいる理由なんてそれで十分なのだとそんなシンプルな結論に至った。水槽の光に淡く照らされた恋人の顔をちゃんと見つめる。一度手を解いて再び指先を絡めるように繋ぎ直せば今度はこちらから穏やかな笑みとともにデートに誘って)
まぁ確かにシンプルで当たり前の答えだけど、そういうものほど時々確かめたくなるもんだろ?……間違いなく、お前の恋人は俺だ。___なんか彼氏っての聞き慣れねぇな。まぁでも、もちろんよろこんで。
(もう一度名前を呼ばれる。そこに含まれた感情は先程よりもさらに幸せの色が濃いもので、自然と口角が上がった。そのまま相手のどうしようも無いワガママに耳を傾ける。こちらのと同じく単純で、でも強い願い。相手の願いがどれだけ大きかろうと、自分を縛るものであろうと、相手からのものだと思えば容易に飲み込んでしまえる程には心を掴まれている。つまりは、それだけ相手の隣から離れ難い、離れたいとも思わない。これまで何度も二人の関係を確かめあってきて、相棒から恋人になった時間もそこそこに積み上げてきた。この関係はもう二人の中では当たり前だ、だからといってそれを呼吸のように意識しなくなってしまうのも何処か寂しい。どうしたって悲しい時や苦しい時があるなら、何度でも互いが互いの恋人だと口にして確かめあったって良い。それが小っ恥ずかしいのはまた別の問題ではあるが。だが今はそんな理由で逃げている場合じゃない。こちらを真っ直ぐに見つめる相手に同じ言葉を送る。あの時有耶無耶にしなくて良かったと、安堵するようため息をついた。二人の指が絡まって恋人の繋ぎ方で手が重なる。ここは風.都.で周囲に人も多い、知り合いに見られる確率だって高い。だが今繋がった手を決して離したくなかった。暗がりの水族館なら多少は誤魔化せる、かもしれない。今は他人のことを考えるよりも相手の事を考えていたい。慣れない響きに頬をかくが、デートの誘いを断るはずも無く頷いて応える。メイン水槽の脇にある通路を指さすと「あそこから水中トンネルに行けんだ」と更なるとっておきの場所を教えて)
…そうだね、確かめる為のいい機会だったと思う事にしよう。 …ん。 _ じゃあダーリンとでも呼んだ方がいいかい?。水中トンネル? …凄い! 天井までガラス張りで海の中に居るみたいだ…!
(あんなにも苦しくて辛い経験であったのに相手に二人の関係を確かめる出来事でもあったとまとめられると悪くない機会だったように思えてくる。改めて奥底の自分の願いと相手の気持ちを確かめる事が出来た。これからも探偵である以上色んな人に関わることになるし、年月が経てば様々な問題や苦しいことにぶつかるだろう。その時はまたこうして顔を突き合わせてお互いの不安や想いを確かめ合えば良い。真っ直ぐと見つめられながら相手の声で恋人だと言われると嬉しくてだけど少し照れ臭くもあって繋いだ手を握って頷くに留めた。呼び方については相棒になってからずっと同じで確かに彼氏という響きは言いなれないし聞き慣れない。だが恋人ならではの呼び方も何だか新鮮で冗談半分に別の呼び名を提案してみた。一段落して繋いだ手はそのままにまた大水槽に視線を戻して魚の動きを眺めていたが相手から教えられた馴染みのない言葉に興味を示す。教えられるまま手を引いて水槽脇の通路に移動してみて、その構造を目にした途端興奮した声をあげる。これまでの水槽は壁際の一面か円柱状の物ばかりだったが横も上もガラスで覆われていてまるで水槽の中を歩いているような展示方法だ。どこを見ても優雅に泳ぐ生物が観察出来る場所に子供のようにはしゃいでは忙しなくガラスに近づいたり視線で魚を追ったりを繰り返し)
っ、それダーリンの方が恥ずかしいだろ!____だろ?水槽の前もいいけどここだと一層海の中に入った気分になる……いつか本物の海にも行かなきゃな
(この街で探偵として生きるなら、誰かを泣かせない為に自分が傷つく事だってあるかもしれない。その度に相手を泣かしたくなんてないが、せめて自分の隣はお前しかいないんだと伝えたい。これからあらゆることを経験し、例えもっと『正しい』判断が出来るようになったとしても、何度でもこうやって愚かな願望を互いに口で伝えて手を握りあっていたい。自分の隣には相手しかいないんだと愚鈍な判断だと言われても相手を見つめていたい。繋がった手が強く握られる、今は羞恥よりも幸福の方が圧倒的に勝っていた。だが不意打ちの呼び方にはさすがに息を詰まらせる。彼氏よりもより甘い呼び方であるその呼び名は常人でもとても口にできるものではない。本気でないのは分かっているものの、すかさず突っ込まずにはいられなかった。そのままあの呼び名が定着してしまっては自分の精神が持たないだろう。こちらが指さした先に連れられるように腕を引かれ水中トンネルへとたどり着いた。最近の改装で完成したばかりのそれは先程見た大水槽を底から見上げることが出来る構造になっいて、少々冷えることもあり本当に水の中にいるような感覚になる。そこから遠くに水面の煌めきをのぞみながら、周囲にはサメやエイといった水底に生きる生物が静かに泳いでいる空間だ。相手に手を引かれるまま壁面に近づいたり、上を見上げたりと周囲を見回す。忙しない状況だが、相手の好奇心に輝く目を見れば全てがどうでもよくなってしまう。確かにここは水の中に入った気にはなれるが、相手は実際に海に入ったことはない。相手がまだ見たことの無い風景をまたひとつ数えるように呟くと、好奇心のまま水槽を眺める姿を視界に収めていて)
なるほど、君を照れさせる呼び名として覚えておこう。 __ 横からだけじゃなくて下からも眺めることが出来るから没入感も十分だ。ああ、海岸沿いは歩いたことはあるけどそれ以外の海は見たことがない。確か砂浜という物があるのだろう? また一つやらなきゃいけないことが増えたね
(記憶にあった恋人の呼び方の一つを試しに言ってみるとその反応は抜群で、どうやら彼氏よりも特殊な呼び方のようだ。すっかり染み付いた名前の方が呼びやすくて今更変えるつもりはないが何かあった時に照れさせる手段の1つとして頭に記憶しておくことにした。水中トンネルはどうやら巨大水槽の底に設計された物らしくここから先程話をしていた場所が水槽越しに見えた。天井を見上げると注がれる光を反射した水面の煌めきが見え、時々エイなどが横切っていく。横を見ても優雅に泳いでいる魚などが観察出来て相手の言う通り海の中にいることを模擬体験しているような気持ちになる。すっかりこの空間を気に入って周囲を見渡して観察を続けていたが相手の発言に反応を示す。風.都.の街を歩いたりする中で海岸沿いを歩いたりしてそこから海を眺めることはあっても実際に傍に近づいたり入った経験は一度もない。詳しくは調べたことはないが砂浜という物がある場所では夏に泳いだりするのが風物詩だとニュースなどで取り上げられていた。当時は興味が無い物の為に屋外にわざわざ出ることは億劫でしか無かったが今は違う。相手とならば何だって見てみたいし体験したい。水槽から相手に視線を移せば二人で海に行くことをすっかり既定事項として宣言して)
んなもん覚えなくていいっての……ここ海の中にいるみたいになるけど、ほんとに海に入りたくなるんだよな。__あぁ、みたいだな。次の夏になったら海水浴場に泳ぎに行くか。裸足で砂浜歩くのも海で泳ぐのもどっちも気持ちいいから楽しみにしとけよ
(いつの間に検索したのやら、また余計な知識を身につけていたようだ。ダーリンなんて呼び方アニメや海外のドラマでしか見たことがない。少なくともハードボイルドから一番遠い呼び名だろう。これ以上変な呼び名が増えないことを願いつつため息をついてやれやれと首を振った。水中トンネルを歩くと全方向水に囲まれより身近に海の生物を感じられはするが、まるで水の中にいるような感覚になると実際に水の中に入りたくなってしまうのが難点だ。夏はまだまだ遠くしばらく泳ぐのはお預けとなるだろう。相手も海に興味があるようで、想像しているのは風.都.の海岸のようだが、砂浜、特に海水浴場は雰囲気がまったく違う。あの海に飛び込んだ瞬間の気持ちよさもまだ相手は知らない。もう相棒の中で海に行く予定は確定したようだが異論は無い。浮き輪で海を漂ったり、波打ち際でぼんやりしたり、また相手の初めての瞬間をたくさん見ることができそうだ。まだまだ先の夏に思いを馳せつつ、繋いだ手を引くとまた順路を進んでいく。「どっか行きたいとこあるか?」と水中トンネルをあとにしながら聞いて)
行きたい! 君の言うことには間違いないからね。夏はまだまだ先だけど楽しみにしておくよ。事務所に帰ったらカレンダーに書いておかなければ。____ 出来れば全部回りたいが…、屋外にも展示スペースがあるのかい?
(海の中を再現した展示は経験のない自分から見ても没入感があるが、実際に入ったことのあるだろう相手にとっても海に入りたくなる程の再現度があるみたいだ。そんな中で実際に海に行く用事、それも泳ぎに行く案が相手から出されると前のめりに行きたい意思を表明する。砂が堆積してるという砂浜を見て歩くのも海を泳ぐ体験もどれも未知の物だ。夏祭りの例といいこの街で相手がオススメしてくれる物はどれも素晴らしい物で信頼を置いている。そんな相手の言葉で更に期待が膨らんでいくと楽しみを隠しきれない笑みを浮かべながらも新たに出来た予定に声を弾ませた。手を繋いだまま先へと進んでいく。新たな種類の魚が近づいてくる度にガラスに寄ったり足元にある説明パネルにも熱心に目を通したりと子供のように堪能しながらもトンネルを抜ける。開けた場所に出た所で相手に問われると全ての展示に目を通したいと素直な希望を告げてみるがこの先の順路が二つに分かれていることに気付く。その一つはどうやら外へと続いているようで『ペンギン アシカ カワウソコーナー』と文字が添えてある。これまで見てきた展示はどれも水槽の中にある物で屋内に適した物だ。それらとは違うであろう屋外の展示に興味持てば外へと続く道を指さして「是非見てみたい」と伝えて)
任せとけ、風.都.で一番の海に連れて行ってやるよ。まずはカレンダー買わねぇとだけど、手に入ったら直ぐに書いとかないとな。___あぁ、外は主に魚以外の海の生き物がいるんだ
(風の街の事なら何でもござれだ、なにせここは自分の庭である。夏に多くの人々で賑わう海水浴場というものを相棒にも見せてやりたい。その機会はなかなかに先になって、今年のカレンダーにはもうない季節の話だ。この約束を互いに忘れはしないだろうが徐々に約束の日に近づくのを見るのは期待も楽しみも募る。早いところ来年のカレンダーをかって、いち早く丸印をつけた方が良さそうだ。相手と手を繋いだまま、時に突然手を引かれ、時に突然立ち止まりを何度か繰り返しながら展示を見ていく。まるでジェットコースターのような進み方だがその度に相手が好奇心を一層輝かせた目をするのだから、振り回された分はそれで十分にチャラになる。やがて分かれ道へとたどり着くと相手の目線は案内板へと移った。全部の展示を、という点に関しては今日のことを思えば相手が満足するまで付き合った方が良さそうでとりあえずは返事を保留しておくこととする。二つの選択肢のうち相手が興味を示したのは屋外展示で、水族館のアイドルが多くいるその場所へと足を向けた。最初に目に飛び込んできた水槽はその中でも長らく人気を誇るペンギンの水槽だ。目線の高さにペンギン達がずらりと並んで立っていて、少し下に目を落とせばそこは水の中、飛ぶように泳ぐペンギンを見ることが出来る。流石の人気であってか水槽前には人が多く、自然と体を近づけることになりながら水槽の前にやってくると「海を泳ぐ鳥なんて、お前が大好きな奴じゃないか?」と視線を向けながら聞いて)
魚以外の海の生き物…、早速行こう翔太郎! ____ 凄い人の数だ、…かわいい。 鳥? …!すごい、水中を華麗に泳いでいるよ!
(相手の得意げな言葉に期待は高まるばかりだ。事務所にあるカレンダーは12月までだから夏の予定を刻むには来年の物が必要となってくる。今までは予定があってもせいぜい1週間後くらいしか埋まっていなかったが海はそれよりもずっと未来の話。前ならばそんな遠い約束直ぐに興味を失ったりしただろうが今はその時が待ち遠しくて仕方ない。その予行練習とばかりに水中トンネルを楽しみ、次の行先について尋ねるとこれまた興味惹かれる響きの言葉が返ってきて手を引きながら張り切ってそこへ向かう。まず目に入ったのは今まで見たことない形の生き物とその前に立つ多くの人だ。その人だかりを見る限り人気な生物なのだろう。その間を縫って何とか展示スペースの前まで辿り着くとその見た目と地上を歩幅小さく前のめりにたどたどしく歩く姿は自然と庇護欲を掻き立てられて目を奪われながらもぽつりと呟く。相手からこの生物についての異名を聞き不思議そうにするがその内の一匹が水中に飛び込み、地上とは打って変わってスイスイと華麗に速く泳ぐ姿を見ればこれまた興奮したように声を上げる。鳥と言えば風.都.の街中でも見かける鳩や雀を想像するが水中を泳ぐ種類など見たことがない。地上と水中とのギャップも含めて相棒の予想通りとてもこの生物について気に入ると無邪気な笑みを向けながら「これはなんと言う生物だい?」と尋ねて)
あれはペンギンってんだ。寒いとこに住んでて群れで生活してる。空を飛べない代わりに水中を飛ぶようにして泳ぐんだ。お、あそこの奥にいんのペンギンのヒナだな
(水族館の人気者は相棒の心もキッチリ掴んだようで、横から聞こえてきた呟きに思わず笑ってしまう。腕を広げヨタヨタ歩く姿や、パタパタと腕を振る姿は確かに愛らしい。ぼやりと何処を見ているか分からない目もペンギンの可愛さのひとつだろう。その姿とうって変わるのが水中での動きだ。ちょうど目の前でペンギンが水中へ飛び込むと飛ぶように腕を動かし素早く泳いでどこかへいってしまう。相棒の知的好奇心を擽るのにもバッチリだったようで、すっかり興奮した様子に視線を向けてみるとちょうど向こうもこちらを向いていた。無邪気な笑みと共に質問が飛んでくれば、詳しい解説は掲示されたパネルに任せるとして、名前と簡単な基礎知識を教える。本来陸に生き空を飛ぶはずの鳥がこんな形になった経緯を検索すればそれこそ丸一日かかりそうだ、今すぐ検索すると言い出さないことを願いつつペンギンの一群に目を向けると奥の方に毛色の違う個体を見つける。よく見ればそこにはまだフワフワとした毛に覆われた小さなヒナがいて、何処にいるか分かるよう相手の目の前に手を持ってくるとそのヒナを指さして)
ペンギン。…なるほど、それで海を泳ぐ鳥という訳だね。 ほんとだ、他の個体と一回り大きさが違う。あの中の誰かの子どもだろう、…。
(初めて知ったこの生物の名前を復唱する。続けられる説明も必要と思われる情報はしっかりと入っていて、どういった生物なのかを把握するには分かりやすい。その説明と実際のペンギンの動きを見て異名にも納得いったように頷く。空を飛べない代わりに海を泳げるようになったのはどういった経緯があるのか、生息域や体の構造など気になることは沢山あるがここで検索しても時間が足りない。今はデートを優先して帰ってからでもじっくり調べた方が効率が良さそうだ。新たな情報を得てまた違った視点で群れで身を寄せている様子や水中に飛び込む姿を観察していたところに相手がその一端を指さす。そこに目線を移すと見るからに小さく生えたてのふわふわとした毛を持つヒナがいてより可愛らしい見た目だ。小さいながらにヨタヨタ歩く姿に僅かに目を細めて見つめる。ヒナということはこの中に親がいるのだろう、とまで考えて家族というキーワードにまた何か抜け落ちているような違和感を覚えた。何とも言えない感じを振り払うように一旦視線を逸らすと展示スペースの一角にくじ引きコーナーがあるのに気付く。ペンギンのハズレ無しのくじのようで3等の手のひらサイズのペンギンのぬいぐるみ、2等の30センチくらいのぬいぐるみ、特賞は炊き枕にも出来そうなくらいの巨大ぬいぐるみだ。デフォルメされたペンギンのデザインは可愛らしく今日のお土産としてはいいかもしれない。そう思えばいても立ってもいられず「翔太郎、あれやりたい!」とそのコーナーを指さしてお強請りして)
あぁ。ヒナの頃は親に餌もらって、あのフワフワした毛が抜けたら泳げるようになって自分で魚取りにいくんだ……え、…お前あれ一番デカいの当たったらどうするつもりだよ!
(ペンギンのヒナと成体では見た目はかなり異なる、あのヒナが海に適した羽を手に入れるのにはまだまだ時間がかかりそうだ。平和を象徴するように親について歩く姿を見れば柔らかな気持ちになっていたが、一瞬隣にいる相手が固まったような気がして視線を隣へ移す。しかし何かの感情を読み取れることはなくて、そのまま相棒の目線は周囲の風景へと映っていった。直後に指さされた方へと目を向けるとこちらが固まってしまう。そこにあったのはワゴンいっぱいのペンギンのぬいぐるみだ。可愛らしいペンギンがさらに可愛らしくデフォルメされていて、可愛らしくもあって探究心を擽るペンギンのぬいぐるみは相棒にとって丁度いいお土産かもしれない。だが問題はそのサイズだ。手のひらサイズはいいとして、30cmのものもなかなかの存在感がある。一番問題は特賞だろう。人の大きさ程あるそれをどこに置くというのか。二人の部屋は元は一人部屋なのだから当然ながら置くスペースはない。事務所スペースに置くのは却下だ、ハードボイルドな探偵事務所の雰囲気が崩れる。辛うじて置くならガレージだが、暗がりの中で静かに佇むペンギンは逆に不気味なのではと想像が及んだ。だが相手の様子を見るに簡単に引く様子はないようで、特賞のペンギンを指さしつつとりあえず牽制の言葉を放ち)
普通に持って帰って飾ればいいだけの話だろう? 君の部屋みたいにインテリアとして置くのも良いし、材質を見る限りクッション代わりにも出来る。それにサイズが気になるなら君が特賞以外を当てればいい
(相手の解説もあり、ますますその生態について知る事が出来た。水槽の中で魚やエイなど色々見てみたがその中でも特にこのペンギンという生物は気に入った生物だ。そんなペンギンのグッズとなれば思い出の一つとして欲しくなって相手に強請る。指さした先を相手も見れば少し固まった後、文句の言葉が飛んでくる。だがくじ引きをやること自体に反対はされなかったから押せば何とかなるパターンだろう。どうやら相棒が気になっているのはサイズのようだがどれが当たるにしろ持って帰ればいい話だ。特賞も自分の背丈の半分くらいでそこそこの大きさだが、抱えて持って帰れば問題ない。愛らしい見た目のぬいぐるみは癒されるようなインテリアにもなるし、柔らかそうな見た目は昼寝する時や作業の際の良き相棒になってくれるかもしれない。相手が何を懸念してるか分からないといった面でつらつらと利用方法を語り、最終的には期待するような目と共に相手の引きの良さに任せてみて)
(/流石に大きすぎかなと思ったのでしれっと特賞のサイズ小さくさせて貰います…!進行に支障ないと思いますが把握お願い致します 蹴推奨。)
持ってるだけで目立つサイズだぞあれ……それに持って帰れてもインテリアとしてインパクトデカすぎるだろ。…ってか俺が引くのかよ!……ま、特賞なんて当たるもんじゃねぇしな。分かった、何当たっても文句言うなよ。
(確かに持ち帰る分には問題ないし部屋にあれば色々と使い道はあるのだろうが、それでもやはりあの特賞は大きすぎる。手に抱える程のぬいぐるみを持ち歩いて水族館を周り、帰路につくなんて何処を歩いていても注目度抜群だろう。それにやはりあれをインテリアとするにはいろいろと問題が多すぎる。だがやはり相手は退く気はないようだ、お強請りと期待が込められた瞳は引っ込む気配がない。しかもクジを引くのはこちらであるようで、クジを引いたという事実と共にこちらを巻き込む気のようだ。だがあのようなくじ引きは目玉商品に視線を奪われがちではあるものの、実際に当たるのは3等、よっぽど運がよくて2等だ。特賞なんて何百分の一の確率だろうし、そもそも悪質なところは特賞が抽選箱に入っていないこともある。せっかく相手が気に入った動物で、ぬいぐるみならばお土産にもなる。最終的には観念するようにクジを引くのを了承した。カートの前に移動すると係員に代金を支払って抽選機の前に立つ。丸い透明のドームの中で風に吹かれていくつもの抽選券が舞っていて、中に腕を突っ込んでひとつを取り出すタイプのものだ。願掛けもかねて左手を軽く振ってから抽選機へと手を伸ばす。もちろん狙うは3等だ。手を入れてすぐに手の中に抽選券が飛び込んできて、それを掴んで引っ張り出した。係員に促され抽選券をペリペリと開ける。その瞬間思わず「え、」と声が出た。抽選券に堂々書かれていたのは特賞の二文字で、それをみた係員は脇に置いていたハンドベルをひっ掴むと派手な音でそれを鳴らし『大当たりー!!』と声をあげていて)
忙しい仕事には癒しも必要だろう? …! ああ、どのサイズも可愛らしいから大切にする。___ 特賞!さすが、こういう時についているね翔太郎。 ってことはあの一番大きいやつだ!
(人の目など気にならない身としてはさほど問題でもなくこのぬいぐるみを持って帰れる事が出来ることが重要だ。あの手この手で利用方法や利点をアピールしていればついに相手が折れてくれた。相手が引いてくれたら同時に事務所でも部屋でも置く許可は取れたも同然であるし、何より形はどうあれ相棒に関わる形でプレゼントされたい。ワゴンの中の賞の割合をみるとやはり上位賞の方が数が少ない。ドームの中を舞う抽選券を掴むくじ引きの仕組み的にも透視能力でもなければ特定の賞を狙うのはほぼ不可能でこれこそ完全な運であるだろう。移動して代金を払うのを見れば期待を込めた表情で頷いてその様子を見届ける。チャンスは一回、中に腕を入れて舞っていた券の一つを相手が掴む。隣から覗き込むような形で抽選券の中身を一緒に確認すると『特賞』の文字。こちらも驚いて一瞬瞬きを挟むが店員が鳴らしたハンドベルの音で正気に戻る。低い確率を引き当てる辺り流石切札のメモリの持ち主というべきか。どの賞でも嬉しいとはいえやはり大きい物の方が欲しかったので最高の結果だ。ぱあと表情を明るくすれば相手の肩を軽く叩いて激励の言葉を向ける。周りの注目を受けながらも店員から特賞のぬいぐるみを受け取ると抱き締めるように腕に抱えてみる。予想通り柔らかな素材で出来ていて触り心地が良い。思わず軽く頬を擦り寄りながらも「ありがとう、翔太郎」と無邪気な笑みと共に礼を伝え)
こんなとこで俺の運使っちまうなんて……___大切にしろよ。でも置くのはガレージだからな。
(こういう時に当たるのは普通3等だなんて思っていたのが遠い過去のようだ。見間違いでは無いかと再度手元の抽選券をみるが間違いなくそこには大きな文字で特賞と書いていて、相棒は嬉々として特賞の巨大ぬいぐるみを今まさに受け取っている。両手に抱えるほどの大きさのそれは、抱き心地は良さそうなもののやはり存在感は抜群だ。なにせ相手の体の半分は覆っている代物である。切札のメモリを使っている身ではあるがこんなところで大事なその切札を使ってしまうとは。もう少し使い所があるだろうと自らの事なのに深々とため息をつく。しかし相手が巨大なペンギンのぬいぐるみを目いっぱい抱き締めて、無邪気な笑みと共にお礼の言葉が飛んでくると、たちまちそんな感情は吹き飛んでしまった。ぬいぐるみの大きさに引けを取らない特大の笑顔を向けられれば、特賞を引き当てて良かったと考えが変わってしまう。つられるようにこちらも笑顔を浮かべながら、軽く頭を撫で返事をしておいた。だが置き場所の話となると別。インテリアだクッションだと言っていたが、このサイズを置けるのはガレージしかない。付け足すようにさらりと置き場所を指定しつつペンギンのぬいぐるみをつついてその柔らかさを確かめていて)
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