相乗りで何処までも 【 〆 】

そうだけど…、善処はする。ああ、成長期が終わっていることを祈っておこう。___ 終わったよ。これが僕の服かい？
（落とし所を探すために出した問いであったが一刀両断されてしまった。相手の出した事案以外にも一日中何も食べなかったり逆にそればかり食べたりと不健康と言える行為の殆どは検索由来であり言い訳のしようがない。あまり納得いかないがこういう擦り合わせも誰かと暮らすという事なのだろう。ちょっとした抵抗に曖昧な返事をしておいた。ぽんぽんと頭を撫でられると何処か嬉しそうに受け入れる。背丈に関しては普段の生活でどうこう出来る話ではないから祈るしかないが今くらいが顔を合わせるのにもちょうどいいだろう。皿洗いを申し出ると驚いたような照れ臭そうな反応が見えた。自分がやると言い出すと思わなかったのか家事をして貰うのが照れ臭いのか、その両方か。だが悪い反応でも無さそうで移動する相手を見送っては皿洗いを行う。事務所ではない人が生活する為の部屋で家事の一部をするなんて何だか不思議な感じだ。2枚の皿と2つのマグカップ、調理器具を洗い終えるとリビングに向かう。相手に完了したことを伝えつつもベッドに並べられた服のセットに気付いて近付く。相棒の服は組み合わせこそ大体同じだが色やデザインはバリエーションがある。そのどれもが見たことがあるやつで試しにシャツを手に取りつつも同じ格好が出来ることに表情明るくしながら自分に合わせてみて）

おぅ。ありがとよ、フィリップ。いつも俺が着てる奴だけど、事務所に行くまでの間だけだからな……あぁ、ネクタイも必要か。
(洗い物の音がリビングから響く間、どこかソワソワと落ち着かない気持ちのまま服を選ぶ。筋肉の付き方は違うものの、大方体形が同じ相手が自分の服を着たらどんな雰囲気になるのだろうか。ひとまずスタンダードな色合いにしようと白にストライプが入ったシャツ、シンプルな黒のズボンとベストを選んでおく。やがて洗い物を終えて相棒がこちらにやってきて、礼を言うも心ここに在らずといった調子だ。ベッドの上に用意された服を見つけ相手は顔を明るくさせ早速シャツをあてがっている。肩幅等問題なさそうだが、やはりシックな服はいつもと雰囲気が違いすぎて服に着られている感じがある。だが今は違和感があっても自分の服をひと揃い着せてみたい。事務所に行くまでといいつつ、外を歩くだけならば要らないであろう藍色のネクタイを取り出してそれもベッドに並べると「とりあえず着替えるか」と自分の分のシャツに手をかけて)

せっかくの機会だ、君の格好を全部真似してみよう。＿ …こんな感じかな。君の服装をしているなんて何だか不思議な感じだ。
（準備されているものは相棒の持っている服の中でもシンプルな物だ。モノトーンで纏まっていてハードボイルドっぽい服装でもある。ただ出歩く為の服ならばシャツとズボンだけでも良いのだが相棒の服を着ることの出来るまたとない機会だ、存分に楽しむべきだろう。更に用意してもらったネクタイにも目を向けながらも早速着替えへと移る。普段の格好が全体的に緩く中性的とも言われることのある服装だが相棒の服は身体のラインにきっちり合う男性的な服だ。きっちりボタンを留めながら服を着てベストにも腕を通す。下を見ればいつもは客観的に見ている相棒の格好を自分がしているのが不思議で堪らない。興奮したように目を輝かせて服を上から触ったりとその着心地を確かめていたがまだネクタイをしていなかったことに気付いて手に取る。普段の相棒の首元を思い出して首を1周させることまでは出来たがそこで動きが止まる。試しに一度なんとなくで結んでみるが見るも無惨な結び目だ。大人しくそれを解くと「翔太郎、結んでくれ」とその状態のまま相棒の元へ近付いて）

まぁせっかくだからな……___やっぱこう、見慣れねぇな、まともな格好してるお前見るの……ん？あぁ分かった
(一旦相手から視線を外してこちらはいつも通りの服へと着替える。雰囲気が被らないようにと青色のカラーシャツに薄紫色のネクタイと黒のベストを着てみたが、着ている要素が同じならば結局は同じ様相になってしまいそうだ。ネクタイを結び、こちらが着替え終わった所で相手の声が聞こえてきて振り返ってみる。そこには自分と同じ格好をする相手の姿があって息を詰まらせた。いつも鏡越しに見ている格好を相手がしている、それに対して嬉しいのと小っ恥ずかしいのと相手を染めてしまった背徳感と支配欲と、様々な感情がない混ぜになって体に襲いかかった。服をぺたぺた触ったりネクタイに悪戦苦闘するのは愛らしいが、普段ゆったりとした服で隠れている体のラインが自分の服ではしっかり見えて自分しか知らなかったそこを暴いてしまった気分でもある。適当な言葉で動揺を誤魔化していると、不意に相手が近づいてくる。それがネクタイを結んで欲しいの意だと分かると軽く息を吐いて精神を落ち着けつつ胸元に手を伸ばした。だが他人のネクタイを結んだことはなくて、しばらく布を行ったり来たりさせたがちっとも結べる気はしない。このままでは終わらないと観念するよう深呼吸すると、相手の後ろ側へと回った。いつもと同じ視線なら結べるがこれでは必然的に後ろから相手に密着するわけで、鼓動が早まっている今これがバレないよう平静を保つようにしなければならない。「ここをクロスさせて、こっちを通すんだ」と解説して平常心を引き寄せつつ、最後には相手の首元にきゅっとネクタイを綺麗に結び)

僕もこんなにかっちりした服装は初めてだ。 …これを毎朝しているなんて凄いね。 …なるほど、そうやって結ぶのか。ありがとう、これで完成だ。
（振り返った相棒も色こそ違うが同じ格好をしていて並ぶとお揃いなのがよく分かる。布地や全体的なシルエットも普段と異なっていて浴衣などに続いて初めての服装の系統だ。つい声を弾ませていたがスタイルをより完璧にする為に必要となるネクタイを相棒に託す。小さく息をついて胸元に手を伸ばされる。近い距離でネクタイを真剣に結ぼうとする仕草を見ると何となくドキドキと鼓動が早くなる。自分でするのと他人にするのでは視点が変わるのか悪戦苦闘してる姿を見るとカッコイイ格好をするためにと毎朝この行為をする相棒に尊敬の念すら覚えた。向かい合ってはやりにくいのか相手は後ろに回って密着するような形で手が伸びてネクタイが結ばれていく。お好み焼きの時と同じ体勢で背中から相棒の心臓の振動が伝わってきている気がする。こちらまで妙に意識してしまいながらもネクタイの結び方を習得しようと相槌を打ちながら相手の手の動きと解説に集中した。最後に引っ張って首元で綺麗に結び目が作られると完成だ。これで帽子を除けば完璧に相棒の格好を真似したと言っていいだろう。礼を伝えながらも普段の服にはない首元の窮屈さが新鮮でネクタイの結び目を指先でなぞってみる。密着して首周りを締め付けるような過程に何となく儀式めいた物を感じて「人にして貰うと何だか首輪みたいだね」と素直な感想口にして）

慣れりゃどうって事ないけどな。俺も人のは結んだことねぇから後ろからじゃないとできないくらいだし……っ、馬鹿お前……そういうこと言うなよ…悪いことしてるみたいだろ
(正面から結べない時にはどうしようかと思ったが、なんとか相棒のネクタイを結ぶことが出来た。その代わりにこの体勢になってしまったわけだが。後ろから覗き込んでいる限りでもやはり相棒のスーツ姿は見慣れない。ネクタイをしているのを見るのだって初めてだ。なんとなく解説は挟んだが、ネクタイの結び方に関しては慣れの部分も大きい。結び目を綺麗に作れた日なんかは良いスタートを切れた気になるものだ。いよいよ相棒の格好も完成してこの場を離れようとしたところで相手の呟きが聞こえてきてドクンと心臓が脈打つ。おそらく相棒は深い意味をもって首輪なんて口にした訳では無いのだろう。しかしネクタイは奇しくも首輪のように扱われることもある代物、胸が変に高鳴った状態でそんなことを言われれば自然と思考は如何わしい方向に流れてしまって余計に鼓動が早くなる。焦りもあいまってまともな顔ではなく、顔をあわせる位置に立つこともできずその場から動けないでいた。視界の隅でネクタイが揺れている。ここを引っ張れば軌道は狭まり相手の呼吸は自分の支配下に置かれることだろう。そんな考えが過ぎった時には、相手の首元で揺れるネクタイをそっと撫でていて)

簡単に解けないような結び目とデザイン性を兼ね備えていることもあって慣れるのに苦労しそうだ。 悪い事とは言っていないよ。ネクタイを結んであげるような関係性と生命活動に重要な首元に巻き付ける物であることを考えると首輪という解釈も間違ってないはずだ、首ったけって言葉もあるくらいだしね
（簡単な固結びやリボン結びなら生活する中で習得したがネクタイの結び方はまたそれと違う方法だった。解けないようにすることと整った外見を兼ね備えただけあって重ねたり輪の中を通したりと複雑な手順が多かった。今後ネクタイをつける機会はあまりないかもしれないがつけてあげる機会は幾らかあるかもしれない。今の手順を参考に何回か練習するべきだろう。ネクタイに興味が移った延長にポツリこぼした呟きに後ろから動揺したような声が聞こえてきて背中の鼓動も幾らか早くなった気がする。首輪と悪いことの結び付きにワンテンポ遅れて気付くと悪戯っぽく笑みを零す。何となく関連づいたワードだったが人にネクタイを結んであげられる程近い距離感の人の首元を締め付けるための動作とだけ聞けばそれほど間違っていないように思う。自信たっぷりにその講釈を垂れてみながらも今の相棒の顔が見てみたくて顔が見える程度に振り返ってみる。今の解釈で言えば相棒が首輪をつけた側の人だ。そんな人にネクタイを撫でられることにぞくりと背筋に走るものを感じながらも首に関する表現の例を一つあげてみて）

……なら、早く結び方覚えろよ。自分のじゃなくて、俺の結ぶために……首輪なんだろ？
(確かにネクタイを誰かに結ぶという行為は首元を締め付けるという意味で首輪と同じだが、首輪は従属の証ともとれる代物だ。人間とペットならまだしも、人間同士となると単なる絆よりも業の深い結びつきのようにも思う。それだというのに相手は間違ったことは言っていないと何故か自信満々だ。顔を見られないようにと背後に立っていたのに、相手はこちらへと振り返って至近距離で顔を突き合わすことになる。いつかのお好み焼き作りと同じような状況に、同じく胸が跳ねると思わず目を逸らした。余計な事を考えすぎて朝だと言うのにすっかり心臓は早く顔は薄ら赤く染まっている。だがあの時と違うのは相手が既に恋人だということと、多少なりこちらも欲を隠さなくなった事だ。相手が自分のものだと言うなら首輪を繋いでおくのが道理だが、それならば逆だって同じこと。何事もお揃いを望むようになってしまった体は、目を逸らしながらもボソボソと願望を口にしていて、最後に相手の様子をうかがうようにチラリと横目を向けて)

…ああ、毎日だって結んであげるよ。自慢の恋人がちゃんと僕の元に帰って来られるようにってね。
（顔を覗き込んでみるとその顔は薄ら赤く染まっている。前にも似たような事があったがあの時のように無知ではない。多少なりとも知識と経験を身につけた今なら相手が動揺している理由も大凡は理解できる。好奇心よりも愛おしさが胸に満ちる。目は逸らされたままだが、ボソボソと呟かれた内容は相手もそれを望むといった内容に明確に心臓が跳ねた。ちらりと様子を伺う視線にまたなんとも言えない気持ちが押し寄せて軽く息を吐いた。どうやらネクタイの結び方を習得しようとした理由はお見通しらしい。まっすぐと相手を見ながらその願いを聞き届ける意思を伝える。相棒を支配したいという気持ちも勿論あるが、どちらかというと繋がりを確かめたいという意味の方が強い。危険に巻き込まれることが多い仕事だからこそ毎日ネクタイを外す時には自分の元に帰って来るようにというリードだ。相棒の前に垂れ下がるネクタイを手に取って苦しくならない程度に軽く自分の方に引っ張ってみて、この格好に見合った気取った言い回しをしながらも頬に軽くキスを落として）

っ、……毎日結んでくれるなら、何があっても迷わずお前のとこに戻ってこれるな。
(相手の目はこちらを真っ直ぐと捉えて、それにつられるように逸らしていた目を相手へと向ける。そしてこちらの願いがとげられるのを聞くと心臓がゆっくりと明確に、さらに早鐘を打ち始めた。ネクタイに結ぶ度込められるのはきっとまじないのような願いだ、今まで自分で結んできたネクタイは朝に相手に結んでもらって、夜にまた相手に解いて欲しい。ネクタイが軽く引かれ自然と顔が相手へと引き寄せられる。まるで本当に首輪に繋がるリードを引くような動き、その直後に頬に柔らかな感触があって目を見開いた。何度も口付けは受けた事があるはずなのに、これは特別熱くて意識が奪われる。相手のもつリードに繋がれているのだと強く意識させられる行為に脳が痺れて思考が霞むようだった。動揺を隠そうと笑って見せるが、その笑みは今にも崩れそうなほど浮かされたものになっている。相手が毎日ネクタイを結んでここに帰って来られるようにと願うなら、その願いにこちらも全身で応えよう。忠誠の証のように、リードたるネクタイを持つその手の甲にそっと口付けを落として)

、これも毎日のちょっとした願掛けだ。そうと決まれば今夜はネクタイの結び方を含めて全てを閲覧しなければ…！
（まるでリードを引くように相手を引き寄せて口付けた。調査などで何処かに出掛けて離れたとしても最終的には自分の元に帰ってくるように願いを込めてだ。目の前の相棒はそれを受けて笑ってみせているがその表情は浮ついている。誰がどう見てもハードボイルドを目指しているとは思わない顔だ。その反応に支配欲と独占欲が満たされているとネクタイを持っていた手に相棒の顔が近付いて甲に柔らかな感触がした。何度か口付けはしたことあるが手にはされたことはなくて思わず身体が硬直する。今度はこちらがほんのり顔に熱が登ってくる番だ。ちゃんと主の元に帰ってきてくれる事を誓う様なキスにこちらも照れ臭そうに笑って告げた。ネクタイを掴んでいた手を離すと早速その結び方や由来などについて今夜帰ってきてからでも詳しく調べようと目を輝かせながら意気込む。何はともあれ出掛ける格好は完成だ。首から垂れ下がるネクタイも含め部屋にあった姿見で自分の服装を確認すると「ハードボイルドに見えるかい？」なんて問いかけてみて）

な、寝ずに検索するなって言ったばっかだろ！…ふ、残念だなフィリップ。ハードボイルドな男ってのはこれを被らなきゃな
(手の甲に口付けると今度は相手の頬が薄らと染まる。朝っぱらから二人きりで互いに頬を染めているなんて、まだ一日の始まりだというのに。ネクタイから手が離れると多少は鼓動も落ち着いてきて、ゆっくり呼吸をすれば焦りも引いていく。相変わらず相棒のスイッチの入り方は突然で、今夜の検索対象はネクタイになりそうだ。だがネクタイなんてそれなりに歴史があるものが簡単に全て閲覧できるとは思わず、このままでは徹夜まっしぐらだろう。すかさず突っ込んで知的好奇心の暴走を止めておいた、油断も隙もない。少し距離を置いて相手の格好をみればやはりいつも鏡の中で見ている自分の姿そのままで、しかし体形は当然相棒のもので、なんだかそのチグハグさにまだ慣れない。ハードボイルドか、と問われればそのワードに途端にこちらもスイッチが入る。ニヒルな笑みを浮かべたあと、ハードボイルドな探偵の最後のパーツを手に取る、もちろん中折れのハットだ。ポールに掛けていた黒のハットを手に取り相手の頭に置いてやる。これで正真正銘自分と全く同じ格好だ。ついに服装まで同じとなれば妙な気分になるのだが、それよりもある問題点に気がつく。このまま外へ出れば全く同じ格好の二人が並んで歩くことになり、否が応でも目立つことになる。上から下まで一緒のペアルックだと考えればそっちの方が恥ずかしいような気がして変な汗と笑いが浮かぶ。まるっきり同じは避けるべく「やっぱハットとベストはなしにしねぇか？」とその半笑いの顔のままそれら二つを交互に指し)

…じゃあ今日は結び方についてだけ調べることにするよ。確かに君の目指すハードボイルドといえばこのハットだね、…これで完璧だ。 ＿ やだ、これがあっての君の格好だろう
（ネクタイに関してその由来から使用用途の変化の成り立ち、現在使用されている材質やデザインなど全てを閲覧しようと意気込んでいたが相棒からストップがかかって怪訝なそうな表情を浮かべる。実際に見てみないとその量は分からないが以前女性が使うハイヒールを調べた時は丸一日以上かかった。ネクタイもそれくらいかかると仮定すると夜通しという可能性も捨てきれない。同じような生活をすると相棒から言われたばかりで強制的に寝かされる未来が想像出来ると若干納得はいかないものの今日は結び方についてを重点的に調べることに方向転換した。そのネクタイもしっかりと結ばれ完成だと思っていたが屋内にいるせいかもう1つの重要アイテムを忘れていた。こちらもニヒルな笑みを返しながらも相棒が取ってきてくれたハットに目を向ける。頭に乗せられたそれをいつも相棒がするような気取った仕草で軽く押さえて被れば正真正銘同じ格好だ。服を借りるという状況とはいえ相手にとって特別な意味を持つハットを被せてくれたのも相まって機嫌良く呟いてまた鏡の方を向く。着ているのは間違いなく相棒の服なのに顔やその体型が異なっていてやはり不思議な感じだ。そうやって楽しんでいたのだが、相棒からそのうちのふたつを外すことを提案されると即座に却下して没収されまいとハットとベッドを手で押さえる。外を移動するためだけなら要らない物だが相棒の格好を真似するという点では必要不可欠なものだ。じーっと相手を見ながらも「僕はこの格好で行く」と子供っぽい意地を張って）

それなら夜までに終わりそうだし、これで手打ちだな。あのな、全く同じ格好の男二人で歩くのは目立つし……あーー分かった分かった！その代わりどこにも寄らずに真っ直ぐ事務所行くからな！
(検索にストップがかかると相棒は明らかに不満げな顔を浮かべていたが、今日の夜から早々ベッド脇に突っ立って夜通し検索なんて健康的生活はどこへやらといった有様だ。そもそもずっと棒立ちの相棒の横で寝れる気はしない。壁に検索結果を書き出さないかどうか今から心配だ、ノートでも用意すべきだろうか。とりあえず検索の的を絞ることで時間は短縮できそうで、妥協案として提案は受け入れることとした。ハットまで被せるとついに隅から隅まで相手は自分と同じ格好で同じ香りとなって、こちらの癖を真似るようにハットを押さえる仕草はぐっとこちらの胸を掴むものがある。相手がこちらをよく見ている証拠のようで嬉しいやら恥ずかしいやらだ。だが、ひとまず自分と全く同じ格好にしたいという欲望のまま動いた結果、それは達成できたものの状況としてはなかなかに恥ずかしい。これでは二人の探偵というよりお笑いコンビのようだ。もし誰かに見られたらそれはもう笑いものだろう。なんとか説得を試みようとするが、相手は子供が駄々を捏ねるようにハットと服を手で抱えてしまった。暫くこちらに向けられたジト目と睨み合っていたものの、服を抱える姿が愛おしく見えてきてしまえばこちらの負けだ。観念したとばかりに叫ぶと、最短ルートで事務所へ行くことを条件に服はそのままにしておいて)

……、！ ああ、分かったよ。 君の髪をセットしたら早速向かおうか。
（どうやら折衷案として自分の提案は採用されたようだ。相棒とは一緒に過ごしたいし望むのなら同じ生活リズムを送りたいとは思うのだが知的好奇心の探求となれば話は別。自分にとってはどちらも別ベクトルで大事なものでありどちらが優先という訳では無い。しばらくはこうやって折り合いをつけるか目を盗んで検索するかなど過ごし方については模索が必要そうだ。そんな相棒の譲れない物でもあるこの格好は自分にとっても特別な物でもある。1番間近くで見てきたからこそ気取ろうとする動きの真似はちょっと自信がある。だからこそこの服装を崩す事になる相棒の案は到底乗れるものでは無い。一度着せてもらったものは返さないとばかりに服を押さえて徹底抗戦の体制を取る。そうして暫くジト目を向けていたが相手が観念したように折れ、条件つきで許可が降りると途端ぱあっと表情を明るくして笑顔で頷く。相手オリジナルの格好は死守出来たようだ。朝食も済ませ服も着替えたらこちらとしては準備は完了だ。格好に似合わずご機嫌な様子でベッドに座ると後は相手が準備を済ませるだけだと告げて）

そうだな。もういい時間になってきたし
(苦渋の決断ではあったが、お揃いの格好で出歩くことを覚悟すると相手の表情はあからさまに明るくなって、やれやれとため息をつく。だが喜んでいるならそれで良いかとつい相手を甘やかすような思考になって、口には笑みが浮かんでいた。あとはこちらの準備だけと言われ時計をみればそろそろこの家を出る時間になりそうだ。軽く手をあげ了解の意を伝えると洗面所へと移動する。髪型だけは昔から大きく変えたことはなくて、いつも通りに仕上げるのにそれほど時間はかからない。毛流れと束を適度に作って清潔感とハードボイルドを両立させる。リビングに戻ってくると相棒が被っているのとは別のハットを手にして頭にのせた。これで風.都.の探偵の完成だ。朝からアキコという関門は待ち構えているが、それを除けば今日もこの街の風を存分に感じる日になるだろう。ベッドに座り待つ全く同じ格好をした相棒に「よし、いくか」と出発の合図をして)


(/いつもお世話になっております。そろそろ区切りかと思いますのでお声がけさせていただきました。朝の時間も探偵の服を着てはしゃぐ検索くんが愛らしくて可愛くて、存分に振り回されて楽しませていただきました。また事件パートから数えると1ヶ月程楽しくやらせていただき、敵の突破法も考えていただいてありがとうございました。あまり戦闘パート得意ではないのですが、めちゃくちゃ筆が乗ってしまい、大いに楽しませていただきました。
この後の展開ですが如何致しましょう？またも事件パートとなりますが、先日提案いただいていたOの逆現象だとコメディ的な色が強いのでそちらでワイワイするか、事件の調査で遊園地や水族館にお出かけしてそこでちょっとしたトラブルに巻き込まれるなんて展開はいかがかなと考えておりました。検索様はいかがでしょうか？)

ああ、…えっと、行ってきます。
（今日も相棒は自分の視線には弱いようだ。甘やかされてる事に口元が緩み切るのを感じながらも大人しく相棒の準備が整うのを待つ。帰ってきた相手はいつもの髪型をしていてハットもそこに乗ればいつものスタイルの完成だ。鏡を見れば同じ格好をした2人が並んでいて目的が達成したことにご満悦である。声を掛けられ返事をしながら立ち上がると玄関へと向かう。昨日までならこの部屋は単にお泊まりした所だったが今日からは違う。靴を履くと振り返り、言うか言うまいか少し言い淀むものの今夜も帰る場所だと思えば挨拶を口にしてから部屋を後にして）

（/こちらこそお世話になっております。そうですね、上記で区切りとして次の場面にしちゃいましょう。 探偵君の反応が好きで結構わがままに振り回しちゃってご迷惑かけてないかと内心不安だったのですが楽しんでもらえていて良かったです。また一つ2人の関係が進んだイベントでとても楽しく一夜を過ごさせて頂きました。
Oの逆現象もやりたいのですが状態異常系が続くかなと思うので後者の方が良いかなと思いました！トラブルというのはどういう類の物にしましょうか？ ストーカーされている依頼者のために彼氏役でデートする探偵君だとか情報屋の人に甘々気味になりかけていたとこに遭遇する…みたいなネタが何となく浮かんだのですが探偵様のご希望のものなどあればぜひお聞かせください）

(/一旦本体のみで失礼します。本当に何気なく出た一言だったんですが二人で暮らすことになってまた一段と親密になれてこちらも嬉しいです。日常の描写などまた入れていって同棲ならではの時間を楽しみましょう…！
彼氏役として仮初デートするのとても楽しそうですね！探偵が切り札メモリをスられる、というのも考えていたんですがそちらはまた別の機会に……仮初デートしていてストーカーが突撃してきて取り押さえ、その後は本当の恋人とデート、なんて流れはいかがでしょう？その時に情報屋と遭遇してしまって、という流れも是非やりたいです。仮初デート中検索くんは付かず離れずの位置から見張っていてインカムで会話ができる状態になっているイメージでしょうか。一番最初のお打ち合わせの時に嫉妬のさせすぎは萎えとお伺いしてたと思うので行き過ぎないよう気をつけますね。苦手な展開になった時にはおっしゃっていただければすぐ修正しますので！
あと決めることは行先でしょうか。個人的には水族館を推したいのですが、検索様はいかがでしょう？)

（/スられるってその犯人を追いかけたり実質変身不可で敵の襲撃を受けるのもハラハラして楽しそうなので別の機会に是非行いましょう！ 正にそんな流れや雰囲気をイメージしてました。ストーカーの件は中盤辺りで解決してしまってデートの方も楽しみたいですね。仕切り直しみたいな初めて嫉妬という感情する検索だとか美人さん相手だけど以前よりも惹かれない探偵君だとか色々他の人と関わったこその反応が見られたらと思ってます。
嫉妬のさせ過ぎの件ですが解決しても何度も嫉妬させようと繰り返す行為が苦手という感じなので、今回のように一過性のものなら問題ないです。恐らく探偵様とはそこの辺の塩梅も趣味が合うと思っておりますので好きに動かしてください。逆にそれを受けて検索がヤキモチ焼いたり拗ねると思うのですが苦手な反応とかありましたら今のうちにお聞かせください。
私も水族館の方がやりやすいのと雰囲気があると思いますのでそうしましょう。彼氏役として依頼人を迎えに行って水族館の入口でインカムの動作確認をする辺りから始めるのがスムーズですかね？その前段階でも作戦に対するあれこれのやり取りが出来そうなのでお好みの方をお選びください。）

よぉ、時間ピッタリだな。
(二人で初めて自宅を出たあの日、事務所は朝から予想通りの大騒ぎとなった。相棒をいつもの服に着替えさせ所長を迎えてから事情を説明すると、そこからはスリッパの嵐だ。甘んじてスリッパを受けていたが『もうキスしたの？』の問いに黙ってしまった時に受けた一発は一番理不尽だったように思う。まさか告白してその場でしたとは言えまい。暫く騒ぎはしたものの、結局アキコは諸々を飲み込んでくれて探偵事務所は日常を取り戻した。のだが、数日後にその平穏は崩れ去ることとなる。動画サイトで配信を行っているという女性が訪れ、ストーカーの被害にあっていると相談しにきたのだ。夜誰かに付けられる気配がしたり、郵便ポストに長文のラブレターが何度も届いており、内容も過激になる一方らしい。何かある前に捕まえて欲しいとの事だったが、その方法が探偵さんに彼氏役をしてもらいたいとの内容だったのだ。困っているなら依頼を受けると返事をすると所長から『浮気者！』の一言と共にスリッパが飛んできたわけだが、なんとか説き伏せ今日に至る。ストーカーは彼女を四六時中見張っているはず、そこで水族館デートをしてストーカーを炙り出すのが今回の任務だ。デートであっても格好はいつも通りで水族館の入口で待っていると依頼人である彼女がやって来て軽く手を上げる。目立つのが好きなのかなかなか派手な格好だ、これならストーカーも彼女を見失うことはないだろう。あくまで彼氏役なのだから自然な口調で迎えつつ、髪で隠し耳に着けているインカムに軽く触れながら「準備いいか、フィリップ」と小さな声で呼びかけて)


(/想定していた筋書きが同じで良かったです！それではストーカー事件で緊迫感も楽しみつつ、二人でやいのやいの言うのを楽しみましょう。
嫉妬の具合も了解しました。探偵はわざと検索くんの嫉妬を誘うようなテクニカルな事はできないと思いますので、変に肩肘張らずにいつも通りでいかせていただきます。本体含めストーリー展開の塩梅等信頼していただいて嬉しい限りです。こちらも検索様が動かす限りやりとりを存分に楽しめると思っておりますのでいつも通りで大丈夫です！今から拗ねた検索くんを宥めるのが楽しみですね。
こちらも仮初デートのスタートからかなと思っておりましたので早速始めさせていただきました！それでは水族館でツンツンしたりドキドキしたり楽しんでいきましょう！/こちら蹴り可です)