検索 2022-07-09 20:46:55 |
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やはりこの状態でも視覚は奪われたままか、…! 翔太郎、Senseのメモリは感覚器官を強化する能力を持っている。厄介な能力だが、通常の人よりも音や光を感知するということはそれだけ敏感に刺激を脳が受け取るんだ。つまり、至近距離で大きな音や光、熱を感じさせれば怯ませることが出来るかもしれない
(本体の身体が床に倒れていく浮遊感を最後に意識が相棒の身体に転移する。装甲を身に纏いもう一つの自分達の姿に変身するが視界は真っ暗なままだ。悪い方の予測が当たったようだ。焦ったように呟くが今は伝わってくる相手の意識に集中する。相手の見た光景を意識下で受け取り動くことは出来るがどうしてもワンテンポ遅くなってしまい、左側でカバーしてくれて何とかなっているが今の状態を見抜かれるのも時間の問題だ。そうしていると事務所から飛ばしていたバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.トが辿り着きド.ー.パ.ン.ト.の間近でフラッシュを炊く。すると明らかにド.ー.パ.ン.ト.は呻き声をあげてその身体がよろめいたのが相手の意識から分かる。やはり推測は当たっていた。手短に調べたメモリの能力と今の検証の結果を受けた上での突破口を相棒に打診する。隙さえ作ればメモリブレイクのチャンスも生まれるはずだ。より効果的に刺激を与えるために緑のメモリを引き抜き、「ヒート」と赤いメモリを起動させてスロットに差し込むと装甲の右側を沸き立つような熱と共に赤色に変えて)
____!なるほど、彼女の望み通り全てのことをより感じられるようになってるわけか。それなら、熱くいこうぜ!
(相棒の焦った呟きが聞こえて、やはり視界が戻ってないのだとこちらも緊張感が走る。視覚を取り戻すには彼女を倒すしかない。このまま近接では不利で距離をとるべきかと思ったが、バ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.ト.が現れフラッシュを炊くとド.ー.パ.ン.ト.がよろめき、相棒の解説が入れば勝利への道筋が二人の意識下で共有される。こちらの性分としても退くより攻める方が得意だ。感覚を研ぎ澄ました彼女に過剰な刺激を与えてやろう。こちらも切札のメモリを引き抜くと「メタル」の起動音を響かせスロットへと差し込む。右半分を鋼鉄の装甲へと変え、背中に装着されたメ.タ.ル.シ.ャ.フ.ト,を手に取り構えた。シャフトの両端から炎が燃え上がり周囲にその熱波を散らすと、一気に敵へと接近して一撃を叩き込む。相棒の読み通り、重く熱く輝く一撃は敏感になり過ぎた感覚によく効くようで巨体が大きく揺らめいた。向こうからがむしゃらな反撃が飛んでくるが、長さのあるシャフトであれば右側への攻撃のカバーも容易に行える。続けて下からすくい上げるようにシャフトで巨体を叩いてやれば、ド.ー.パ.ン.ト.は後ろへ大きくよろめいて)
ああ、彼女が慣れてしまう前に一気に畳み掛ける!
(この状況での攻略方法について相棒が直ぐに理解してくれると装甲もこの場に適した物に変更される。優れた五感でこちらを感知するならばそれを上回る刺激を強く与えれば良い。読み通り熱を宿した打撃は過敏になった感覚には刺激が強すぎるようで勢いのまま巨体が揺らめき、ダメージを与えている手応えを感じられる。ワンテンポ遅れる右半分の動きも隙とシャフトの長さを活かしたガードのおかげでさほど足を引っ張らずに済んでいる。だが感覚器官には順応や馴化と呼ばれる同じ刺激に対する反応の低下が存在する。このメモリにもそれが存在するならば長期戦になればなるほど勝ち目は潰えることになる。ならば短期決戦を仕掛けるしかない。後ろによろめいた隙にシャフトにバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.ト.を合体させ今度は聴覚を刺激する強い音波を間近で放つとド.ー.パ.ン.ト.は苦しむような声をあげ片膝をついた。バ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.ト.を空に逃がすと「このまま片をつけるよ、翔太郎」と強く相棒に呼びかけて)
よし、決めるぜフィリップ。
(一心同体となった今相棒の思考がこちらにも流れてくる。難解な言葉の意味は分からずとも強い刺激に対して段々と慣れてくるのは理解できた。敵が怯む間に片をつけるべきだろう。バ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.ト.の一撃で大きな隙ができる、ここがキメ時だ。相棒に気合いの乗った声で応えると、ドライバーに刺していたメモリをメ.タ.ル.シ.,ャ.フ.ト.へと装填する。シャフトを真横に構えてマ.キ.シ,マ.,ム.ド.ラ.イ.ブ.の起動音が鳴れば、シャフトの両端から炎が吹き出した。燃え盛る炎の勢いに押されて体が滑り始め「メ.タ.ル.ブ.ラ.ン.デ.ィ,ン.グ.!」の掛け声と共にシャフトを薙いで熱い一撃をおみまいする。ド.ー.パ.ン.ト.は彼女の悲痛な叫びと共に吹き飛ばされ地面に転がって、人間の姿へと戻った。同時に彼女の掌からメモリが飛び出すとそのまま粉々に砕け散りメ.モ.リ.ブ.レ,イ.ク.を果たす。振り返って見れば彼女は粉々になったメモリに手を伸ばしうわ言のように何かを呟いていた。あとは警察の仕事、彼女はこれから自分の罪を数えることになるだろう。これで全ては終わったはず、いつも通りに戻るはずだ。それを分かっていても唯一無二の相棒の事となるとやはり言い得ぬ不安が残っていて、クルリとシャフトを回して肩にかけ、なるべくクールを装いながら「……調子はどうだ?」と意識の繋がったままの相棒に問いかけてみて)
意識が繋がった状態でカッコつけても筒抜けだよ、翔太郎。 大丈夫、ちゃんと見えるようになったみたいだ。 …ちょっとそこで待っててくれ、ぼくが迎えに行く
(燃え盛る炎の熱さを感じながらもシャフトを握る手に力を込め掛け声を合わせて最後の一撃を決める。悲痛な叫び声と共に砕け散ったメモリの破裂音が脳内にも響いて意識の中で思わず目を瞑る。真っ暗闇にぼんやりと光が差して恐る恐る目を開くと床に転がる彼女の姿と狙いであったイタリア料理店の外装が見える。元に戻った。見えるようになった。その安堵感と達成感に浸っていたが相手は口調こそクールぶっているが不安がってる思考が流れてきて少し不謹慎ながら心が暖かくなった。そのことにツッコミを入れながらも無事に視覚が戻ったことを報告する。これで本当の意味で元通りだ。ずっと暗闇にいた身とすれば見える景色全て輝いて見える。だが今は何よりも相棒の顔が見たい、会いたい。これから彼女を警察に引き渡したりと諸手続きがあるだろう。それが終わってから帰ってくるのを待つのすら惜しくてひとまず変身を解除する。意識が戻った自分の身体でも視界が正常であるのを確認すると一方的に迎えに行くと伝え事務所を飛び出す。今度は躓くことなく歩みを進め、レストランの付近にいた相棒の後ろ姿を見つけると「翔太郎」と呼んで駆け寄って)
ぐ、…うるせぇ。___そうか。え?ちょ、待てフィリップ!
(冷静を装って格好つけたわけだが、真意さえ共有する状態では無意味な行動だった。すかさず入ったツッコミに当然反論の余地はなく、一言言い返すしかない。だがこちらだってそれは同じだ。相棒が返事を返す前に伝わってきた安堵感と達成感、それできちんと視覚が戻ったのだと分かって、仮面の下で笑みを浮かべる。分かっていたことではあるが、ようやくあの目が開かれる時が来たようだ。好奇心に溢れたり、自分への想いを溢れさせたりするあの瞳が、また見れる。遠くの方からパトカーのサイレンが聞こえてくる。おそらくガードマンが通報を入れたのだろう。あとは適当にジンさんに報告して終わりだが、その前に相棒から迎えに行くと一方的に言われ、一方的にドライバーが外されてしまった。本来ならば一人で出歩くのは危険だと止めなければならないのに、今はそれが出来なかった。一刻も早く相棒に会いたい。あの目がこちらを見てくれるのが待ち遠しくて堪らなかった。ほどなくして到着したジンさんに犯人は彼女で噂の仮.面.ラ.イ.ダ.ー.が化け物を倒したのだと説明する。一通りの役目を終えたところで背後から聞きなれた声でこちらを呼ぶ声が聞こえてきて反射的に振り返る。そこにはこちらをしっかりと目で捉えながら駆けてくる相棒がいて、一気に胸に溜めていたものが溢れそうになった。このまま駆け寄る相棒を抱き締めたいと思うも背後には知り合い、ぐっと息を飲むように自分を抑えると左手を軽く振りながら「俺達の勝利だな、フィリップ」といつものキメ顔で相棒を迎えて)
ああ、一時はどうなるかと思ったけど二人で力を合わせれば怖いもの無しだ。しっかりとこの目も見えるようになった事だしね。それとアキちゃんが依頼も解決したし今日は上がりだって。
(警察の人達が数人いる辺り説明は終わったのだろう。振り向いた相棒の顔を認識するとぶわりと喜びが溢れる。時間にしてみれば半日程の出来事だが、それだけでもこの顔が見ることが出来ないのは辛いものであった。目の前に立って今度はしっかりと目線を合わせながら会話を続ける。危うく悪い考えに流されかけていたが今回も共に困難を乗り越えることが出来た。その達成感にしっかりと相手を写し出すことが出来るようになった自らの瞳を指さしながら得意げに笑って見せる。恐らく自分と同じく依頼人や他の被害者も感覚が戻っている事だろう。事務所を飛び出そうとした際、別件の依頼をこなしていた所長が帰ってきて事の顛末を手短に報告しておいた。自分が盲目になった事にとても心配してくれたが、無事に解決して元に戻った事を伝えると安心した様子でこのまま業務を終えて良いというお墨付きも貰えた。その旨を相棒にも伝えると「せっかくだし何処か寄って帰らないかい?」と提案して)
____みたいだな。やっと目が合って……良かった。なんだ、あいつも良いこと言ってくれんじゃねぇか。
(目の前にやってきた相棒と目線を交わす。その目には喜びが溢れていて、またぐっと胸を掴まれた気がした。宙を泳いでもう永遠にこちらを向かないかもしれないと予感した瞳が今まっすぐこちらを向いている。得意げに笑うその顔もやはりこの瞳がなければ輝かない。胸に溢れた想いが喉元までせりあがってそこを詰まらせるが、なんとか飲み込んで安堵の言葉を口にした。どうやら所長への報告も済んで今日はあがりでいいようだ。それならば都合がいい、このまま今日は夜眠るその時まで相棒の目を見ていたいと思っていたところだ。誘いにはもちろん乗り気で返事をする。どこかへ出かければ相棒の好奇心を刺激するものがたくさんあってまたどこかへ駆け出してしまうかもしれない。それをいつもはため息をつきながら止めるのだが、今はその時に輝く目を見たかった。「もちろんだ。お前の行きたいとこ何処でも連れてってやるよ」と頷くと、まずは知り合いがいるこの場から離れようと歩き出し)
心配掛けたね。その後に別の仕事と言われても手につきそうにないからちょうど良かった。流石ぼくの相棒だ。___ 翔太郎、このクレープという物を食べてみたい…!
(相棒が何かを言いかけて、安堵の言葉を吐き出す。視覚を奪われて周りが見えない状態に不安を覚えていたが相手には別の不安や心配を抱かせてしまっていただろう。もしかしたら自分のせいでと新たな後悔をさせてかもしれないと思うと気負わせない程度に軽く言葉を挟む。とはいえ全て解決した話だ。当事者となった気苦労を労ってか所長のくれた好意には素直に甘えさせて貰おう。自分の誘いに乗り気な返事が聞こえるとより表情を明るくして機嫌良く相手を褒める。歩き出した相棒の横に並んでその場を後にした。これまではどこかに行きたいと目的地を決めて外に出るパターンが多かったが今回は特に決めていない。歩く中で気になったところにでも行こうと考えながら歩いているとある店に女性客が複数人並んでいるのが見えた。興味惹かれるまま近づいてみるとクレープの文字と商品の写真と説明が添えられたメニュー一覧が確認出来た。初めて見るがフルーツなどが使われている辺り甘いものだろうか。今日一日目が見えなかった分、頭を動かして糖分不足な気がするしちょうど良い。相手の方を見ると興味に目を輝かせながらも店を指さしながら強請り)
アキコにはまた礼を言っとかなきゃな。____、あれは……あーー、今日はお前の言うこと何でも聞いちまいそうだ。
(明日あたりに所長からは『私聞いてない!』の言葉と共に事件の全容説明を求められそうだが、今は相棒を気遣ってくれたことに素直に感謝しなければならない。事情を説明しても結局スリッパが飛んできそうな気もするが。とはいえ事件は終わり胸に渦巻いていた不安や後悔も閉幕だ、半日の休暇を手に入れたわけなのだから今からは存分に相棒との時間を楽しむことにしよう。機嫌良さそうな相棒を引き連れて風の街を歩く。思えば街をゆっくり散歩する機会は今までほとんどなかった。自分の庭を紹介するのに丁度いい時間だと意気込んでいた所で相棒の弾んだ声が聞こえてきた。早速興味を惹かれるものがあったのかと指さされた方向をみると動きを止めてしまう。そこにあったのは甘いスイーツに、その店の前で行列を作る女性達、男二人で並べば絶対に目立ってしまう完全アウェイの空気だ。咄嗟に甘いものはハードボイルドに似合わないから他のものを、と気をそらす言葉が口をついて出そうになるが、相棒の方をみると途端にそんな言葉は引っ込んでしまう。そこにあったのはまさに自分が見たいと望んでいた好奇心を爆発させて煌めく双眼、半日見られなかっただけなのに久しぶりにみるように感じるその瞳にどうしても惹かれてしまう。いつもなら小言のひとつふたつは出てしまうのに、今日はやれやれと諦めと幸せとが混じったため息を観念したとばかりにつくのみとなった。今日はあの目に逆らえそうにない、「じゃあ並ぶか」と穏やかな返事をすると列の最後尾へと移動して)
…、翔太郎を好き勝手するチャンスタイムってことかい? _ それにしてもトッピングの組み合わせによって多くの種類があるみたいだね。…ぼくはこのいちごチョコブラウニーって奴にしよう。翔太郎は?
(甘いスイーツと女性客ばかりの店、ハードボイルドとは正反対と言っても良い光景だが興味惹かれた物は仕方ない。この街で並ぶほどの人気である未知の食べ物は立派な調査対象だろう。何かと自分に甘い相棒は小言か言い訳をしながらも最終的には折れてくれるのが殆どだから今回も断られる気はサラサラ無かったがあっさりと引き受けられると若干拍子抜けだ。こちらがぱちりと瞬きしながらもいつもの諦めに混じって何処か幸せそうな呟きが聞こえるとじんわりと胸が熱くなる。目が見える見えないに関わらずこの人に守られて甘やかされているのだと実感するようだった。それが擽ったくて揶揄するように調子よく問いかけながらも相手の呼びかけに頷いて最後尾へと並んだ。不思議な格好の青年と街に住んでいれば一度は見た事のある探偵の男二人が並んでいれば何かと視線を多く注がれている気がするはそれより今はこのクレープだ。基本の生地に入れるクレープやトッピングによって沢山の種類があるようだ。フルーツを入れたものやアイス入りの物、中にはツナやウインナーといった軽食向けの物までバラエティ豊かである。メニューを眺めながら何にするか悩んでいたがなんとなく目に付いたのを指さす。クリームにイチゴとショコラブラウニーが載せられその上からチョコソースのかかった満足感のありそうなクレープだ。自分が食べるのを決めると相手にもどれにするか視線を送りながら尋ねて)
おい、悪用しようとすんなよ! そうだな……本来ハードボイルドな俺はこんな甘いの食わないけど、郷に入っては郷に従えってことで。俺はチョコバナナアイスにする。
(思わず漏れ出てしまった呟きだったが、それを揶揄う言葉が飛んでくる。すかさずツッコミを入れるが、やっぱり前言撤回だとか、あれは冗談だ、なんて言葉は出てこない。さっきのは正真正銘本音だ。相棒に何かを頼まれて断れた試しはそもそも少ないが、さらにひとつストッパーが外れてしまっている気がする。我ながら甘やかしすぎではないかと思うのだが、今日はあの目が不満げに曇るのは見たくない。結果女性ばかりの列に並んだわけだが、やはり周囲からの注目度は高い。これは噂になってエリザベス達の耳に届くのも時間の問題だろう。適当な言い訳を考えておかなければならないと思っていた所で、相棒の呟きにつられてメニューへと目を向ける。甘いラインナップの他におかずのようなメニューもあり、ハードボイルドを貫き通すならそちらを選んでお茶を濁すのが正解だ。だがメニューの一番下段に書かれたおかず達の上には様々なフルーツやトッピングがされた煌びやかなメニューが並んでいるわけで、目は自然とそちらへと引っ張られてしまった。相棒はなかなかにボリューミーなクレープにするらしい。その名前だけでもとても美味しそうな響きをしている。そしてある意味ではいつも通り、一応言い訳を述べてからクレープを選んだ。シンプルな名前だがフルーツもアイスもチョコもかかった欲張りなチョイスだ。ほどなくして順番が回ってくると店員に注文を伝える。金銭を受け渡ししている間、隣にいたもう一人の店員が注文を受けてクレープを作り始めてベースの生地を丸い鉄板に器用に薄く伸ばしていて)
それはぼくの気分次第かな。こっちも美味しそうだね。_ これがクレープ…、興味深い。 実物は持ちやすい形なんだね
(自分の問いかけにすかさずツッコミが入るがそこに否定や撤回の意味は含まれていない。つまりそういうことなのだろう。今は悪用の方法は思いつかないが何かあったら今日は多少強引に押し切っても許されそうだ。鼻歌でも歌いそうなくらいご機嫌に返せば一つ目のわがままであるクレープに意識を移す。てっきりおかず系かシンプルな物を選ぶと思っていたが相棒が選んだのはメインメニューでもある豪華な物だ。ハードボイルドよりも素の興味で選んでくれたようで何だか嬉しくもある。メニューを見る限りクレープはイチゴがメインの物とバナナがメインの物、その他に大きく分かれているようだ。それだけ定番のトッピングなのだろう。バナナがトッピングされたクレープの味も気になっていたからちょうど良い選択だ。それぞれのクレープが決まればすぐに自分達の順番が来て相手が注文してくれた。会計をする店員の隣でもう一人の店員が生地を鉄板に流し始めて調理する様子を食いつくように観察する。熱された生地は良い匂いと共に焼けてきて表面が乾いてくる。手馴れた手つきで生地は破けることなくひっくり返されもう片面も焼かれていく。完成した生地は台に移されクリームと選んだトッピングが盛られて最後にチョコソースがかかる。それを半分に折りくるくると巻いて紙の包装も外に巻かれるとどうやら完成のようだ。続いて相手の頼んだクレープも同様に作られて店員から渡される。メニューには中身が見やすいように開かれた状態の写真だったが実物は持ちやすいように巻かれていてその工夫も好奇心を刺激して興味深そうに手元のクレープを観察する。早速食べたい所だがどうせならば座ってじっくりと味わいたい。「この辺で座って食べられそうな所ってあるかい?」と庭を自称する相棒に良い所がないかと尋ねて)
まったく悪魔みたいなこと言いやがって……食べ歩き用のスイーツだからな、コンパクトってのが大事なんだろ。座ってか…なら、ちょうどいい場所がある。
(実質好き勝手チャンスを認めるような言動に相棒の機嫌はさらに上向きだ。まったく何を言われるのか分からないが、悪いことにはならないだろう。相手と初めて出会った時に交わした契約に掛けた言葉をかけつつ、やれやれとため息をつくがその声色も楽しげなのだから説得力はひとつもない。代金を払い終え隣を見てみると案の定相棒はクレープが作られていく光景に釘付けになっている。じっと見つめられて店員は少々やりづらそうだが、相棒は気にする事無く薄い皮が焦げることなく出来上がっていくのを食い入るように見つめていた。相棒はやはりこうでなくては。クレープを観察する相手を観察しているうちに二人分のクレープが手早く作られてこちらの分を受け取った。クレープはほんわかと温かい、この温かさがあるうちに食べたいところだ。ここらへんでゆっくりと何かを食べるとしたら、少々思案した後すぐにとある場所を思い出す。「こっちだ」と指さしてそちらへと歩き出した。人気がある場所から遠ざかるように建物の間を抜ける細い道を少し進めば、ほどなくして視界が開けた。芸術にまつわる建物が多いこのエリアはその立地にも拘っていることが多い。今しがた横を通り抜けてきた建物は崖の上に立っていて、建物の裏手であるここは軽く整備がされている。いくつか簡素なベンチがあるが人気はなく、しかし崖の上にたっているおかげで遠くまで風.都.を見渡せるロケーションになっていた。おまけに崖の上にあるおかげていい風が吹く。崖の際に設置されている柵に括り付けられた風車がカラカラと小気味よい音を鳴らしていた。「お気に入りの秘密の場所だ」と大層な紹介をしながら近場のベンチに座って)
なるほど、手軽さも魅力の内なのか。ならそこに行こう。___ 細道の先にこんな場所があるなんて初めて知ったよ、確かに風.都.を見渡しながらのんびり出来る良い所だ。冷めない内に食べようか
(お祭りの食べ物と同様に食べ歩き前提のスイーツのようだ。店に入らずともすぐに出来上がって歩きながら食べられるという手軽さがクレープの付加価値なのだろう。販売方法に感心を持ちながらもその利点を活かせるようにおすすめの場所を尋ねて見たがどうやら思い当たる所があるようだ。相棒の言う所なら間違いないだろうと期待を膨らませながら歩き始めた横をついて行く。人が多くいたエリアから少し離れて細い道を通っていく。慣れた人でなければ通ることが少なそうな道だ。その先を少し進めば開けた場所に出てちょうどいいと言った理由を理解した。崖の上にあるのかこの街を見渡せる立地で目の前に大きな建物がないおかげで心地よい風が吹いている。簡素なベンチや括り付けられた風車など完全に整備されてないからこその味があって正に知る人ぞ知るといった感じの場所だ。相棒がお気に入りというのも頷ける。そんな場所を教えてくれた幸せも相まって素直な好評な感想を口にして景色を眺めていたが今の本題は手元のクレープだったのを思い出す。隣に座り緩やかな風を浴びながら相手に呼びかけると1口大きく口を開けてクレープにかぶりつく。生クリームと生地の異なる甘さとイチゴのさっぱりした甘みと酸味をまず感じると「美味しい」と満足そうな声を上げた。疲れた頭には甘味がよく染みる。今度はブラウニーの入った部分を狙って二口目を口にして)
だろ?ここは風.都.の中でも特にいい風が吹くんだ。よし早速……ん、美味いな。あんまりがっついて喉つまらすなよ?
(風を感じたい時に行く場所はいくつかあるが、ここはそのうちのひとつ。相棒も気に入ってくれたようで好感触だ。隣に腰掛けた相棒に食べようと促されるが、まずはクレープにかぶりつく相手の様子を眺めていた。相棒が頼んだクレープには様々な味が組み込まれていて、それらを分析するように租借する様子を眺める。その間にも脳は動いているのか瞳は忙しなく動き開かれしていて、見ていて飽きやしない。やがて上々の感想が告げられるとようやくこちらもクレープに一口齧り付いた。バナナのねっとりした甘みとストレートに甘いチョコソース、そこにクレープの熱でじわりと溶けたアイスが絡まって口の中でいい調和を生み出している。頭を使った相棒と同じく、体を使ってエネルギーを消費していた体にはぴったりのスイーツだ。クレープの味に満足気にしていると、相棒が二口目へと差し掛かる。たしか相棒のクレープは中にブラウニーが入っていたはず、単独でもどっしりしているケーキがまるまる入っていることになる。一気に食べるなよと忠告しつつ、また一口クレープへと齧り付いて)
風.都.に関しての情報量はきみには適わないね。…ん、分かってるよ。ただ甘いだけではなく、食感や甘さの種類の違いで飽きが来ないように作られていて最後まで美味しく食べられそうだ。……。
(地球のあらゆる知識が詰め込まれた本棚でもこの場所をピンポイントに見つけることは難しいだろう。特定の物や一定の基準以上のものを探す事は出来るが個人の感性に依存する“良い場所”を知るのにこの知識は役には立たない。一方で相棒はこの街の本にも載らないような情報を沢山知っていてそれが事件の解決に繋がったり、こうして日常的な幸せを感じるきっかけになったりもするのだ。この街を愛する探偵に尊敬の言葉を送りながらも頬を撫でる風を感じてクレープを頬張る。子供に向けるような忠告を受けると一応気持ち小さめの一口にしてブラウニー部分を齧る。全体的に柔らかいクレープの中でどっしりと固めのケーキの食感はまた違った風味を生み出す。どちらかというとブラウニーに生クリームやチョコソースをかけて食べているようでもある。見た目から甘い事は想像出来たがただひたすら同じ甘い味が続くのではなく食べる場所のトッピングの割合によって食感も甘さの度合いも変わって思った以上に食べやすい。感想に口にしながら更にと食べ進めていたが自分のクレープの味が大体理解出来れば相手の方はどうかと目線を向ける。ハードボイルドは甘い物は食べないと言った割には満足気に食べていて、齧られたバナナの断面や溶けかけているアイスが見える。単体は食べたことがあっても組み合わさった時の味は想像出来ず、気付けば興味ありげに食べる様子をじっと見つめていて)
伊達にこの街の探偵やってるわけじゃねぇからな。ま、お前もそのうちこの街のこともっと詳しくなるだろ。クレープって意外とでけぇし最後まで食べられるようにいろいろ入って……目で訴えかけてくんのはずりぃだろ。
(愛する風.都.の知識を褒められればいとも簡単に得意げな顔を浮かべて上機嫌に返事をする。この街で暮らすようになってからあるゆるところを歩き回り、街の事をを知って好きになっていった。相棒だってこんなふうに街を歩き回るようになればもっとこの街の情報を知るようになる。そして願わくばこの街をより知って、より好きになって貰いたいと思っていた。穏やかな風が吹いて風車を回す、この場を撫でるように舞う風が心地いい。相棒は二口目でブラウニーに到達したようで、先程よりも控えめな一口になったのはあえて指摘してやらないまま動向を見守った。柔らかなクレープに包まれた食べ応えあるブラウニーも美味しいらしい。相棒が満足げなのを見届けて、また一口こちらのクレープをかじろうとした。しかしその前に隣からの視線に気がついてそちらを向く。大体相棒の考えていることは分かるが、何も言わないこの状態、普段なら牽制で『なんだよ』くらい言ってやるところだ。だが今日はどうにもダメだ。その瞳が興味深げにチョコバナナアイスクレープに注がれ、食べて味を確かめたいと訴えているのをみると、また呆れの気持ちと愛おしさの気持ちが混じったため息が出る。一応文句は口にしつつも、相手の口元に自分のクレープを差し出した。本来ならクレープごと手渡すべきなのだろうが、ここには人も居ないし少しくらいはいいだろう。自分のクレープと相棒とを交互に見ながら食べていいと促して)
確かにそうだね、ぼくもこの街の探偵だ。今日のきみは、ぼくの目に特段弱いようだからね。…ん、バナナ特有の食感や甘みと溶けかけたアイスの冷たさもあってまた違った美味しさだ。
(街の知識を褒めると分かりやすく相棒は上機嫌になる。誇らしげに街の情報を語り自分の事のように喜ぶ姿を見れば風.都.が心の底から好きなことが伝わってくる。こうやって相棒と共に歩き回って自分の目や耳でこの街を感じれば更に好きになって詳しくなれるかもしれない。街の景色に今一度目を向けるとそんな予感を口にした。相手の食べているクレープに物欲しそうに視線を向けていると呆れだけではないため息が零されて顔に目線を移す。どうやら何も言わずとも自分の欲求は通じたらしい。意図したものでは無かったがクレープを強請った時と同じく多少文句を言いながらも口元に差し出されると顔が綻ぶ。いつも以上に甘い相棒を見れるのならば解決した今となっては視覚を奪われたことも悪くは無かったかもしれない。悪戯っぽい笑みをたたえて得意げに告げながらも少し身を乗り出してチョコバナナアイスクレープに齧り付く。バナナのねっとりした甘みに加えて温かい生地と詰めたいアイスのコントラストで自分のクレープとは違う方向性で満足行く味だ。味わいながら感想を述べる口元が幸せそうに緩む。十分に咀嚼して飲み込み、せっかくならば自分のクレープも食べて貰いたいと手元のいちごチョコブラウニーを相手の口元に差し出しながら「翔太郎も食べるかい?」と視線向けて)
仕方ねぇだろ、本気でもう二度と…お前と目が合わねぇかもって思っちまったし……食う、…っ!ごホッ、んん゛ッ!
(何も言わずとも差し出されたクレープをみて相棒はまた満足気に笑う。こちらがいつも以上に甘やかしてしまっているのを理解しながら、その事を突っついてくる相手を小憎たらしいと思うものの、甘やかしている張本人に言い返せる言葉など存在しない。何か反撃しようと言葉を捻り出そうとすれば、口をついて出てしまったのはハードボイルドに似合わぬ弱気な発言だ。二人で出かけるようになって敵に襲われたのは初めてだったが、いざと言う時には守ると思っていたのに、あろうことか守られてしまったのだ。焦りと後悔と自責の念で跪いてしまいそうだった数時間前を思えば、その反動で相手の瞳がこちらへ向く喜びについ浸ってしまう。風が吹いて風車がカラカラと鳴る。その音で我に返ると、弱気な発言はなかったことにしようと差し出された相手のクレープに齧りついて物理的に喋れない状況を作った。こちらのものと違ってイチゴの爽やかな酸味にブラウニーのどっしりした甘さが相まって 食べ応えのある味だ。中でもブラウニーは口の中で存在感を放っていて、大きな欠片を無理やり飲み込もうとした所で喉にその欠片が引っかかってしまい、激しく咳き込みながら胸を叩いていて)
(/まだやり取りの途中ですが少しだけご挨拶を。本日でお相手させていただいて二年が経ちましたね。途中こちらの勝手な背後事情で長い時間沈黙した上一度関係を途切れさせてしまったのに、呼び戻していただき今現在も毎日楽しくやりとりさせていただいていること、とても感謝すると共に、検索様と出会えて本当に幸運で幸せだと思っています。背後も文章も未熟ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いします。/こちら蹴り可です!)
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