検索 2022-07-09 20:46:55 |
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…ん、こうなってしまった以上、翔太郎にはぼくの目としても働いて貰うよ。メモリブレイクさえ出来れば全て解決だ。……見えないと距離感も分からない物だね。
(掛けられる言葉自体はいつも通りであるが、その声色は中身があまり伴っていなかったり感情を押し殺したような静かなものだ。視覚が無い分他の感覚が敏感になっているようでいつもは気づかないような声の変化も読み取れる。表情は見えなくとも相棒が何を考えているのか分かれば前向きな方針を口にする。障害は出来てしまったがやることはいつもと同じ、メモリを破壊すれば依頼人や被害者の症状と共にこの状態は解消するだろう。永遠にこの状態では無いと自分に言い聞かせるのも含めて鼓舞するように言葉を紡いだ。その為にも一旦事務所に戻って作戦を立てた方が良い。真っ暗の中、掴んだ相棒の腕を頼りに事務所への道のりを歩き始める。周りに不審に思われないように瞼は閉じておいた。歩きやすいように歩幅を小さくしてくれては居るが些細な段差に躓きかけたりと視界が奪われた状態では満足に移動するのも厳しい。それでも来た時よりも多くの時間をかけて事務所近くまでやってくるとつい愚痴を零して)
もちろんだ、気が済むまで使ってくれ。…メモリブレイクさえ出来れば……まぁでももう事務所の下だ、あと少しだからな。ここからは階段だからゆっくり行くぞ。
(今目からの情報を仕入れられるのはこちらだけだ。情報を稼いでもその情報を理論的に積み上げるのは相手の方が得意で、この事件を終わらせるためにも相棒の分まで目からの情報を得て共有していかなければならない。こちらの雰囲気を察したのか、今後の道筋を示されると数度頷く。お互いに漠然と流れる『もしも視界が戻らなかったら』という不安、これまでの経験からしてもド.ー.パ.ン.ト.を倒してメモリさえ破壊すれば全て元通りになるのは分かっているのに、それでも目を閉じて些細な段差にさえ躓く相棒をみると、これから先ずっとこのままなのかと不安が襲い来る。同じく言い聞かせるように解決策を口にしておいた。いつものように事件が終われば日常が戻ってくるはずだ。躓きそうになる相棒を時折支えつつ、ゆっくり道を進めばようやく見慣れた看板が見えた。建物までたどり着いたのは良いが事務所は2階、ここにきて階段を上るという難所がやって来るとは。いつも何の気なしに昇り降りしているのに、今相棒は一人で事務所に帰ることさえできない。その事実にまた胸の内に不安を募らせながら、掴ませていた腕を一度離すと体勢をかえて片腕は背中側に、もう片腕は相手に持たせた。これで万が一ふらついたとしても支えられるだろう。愚痴る相棒に幾らか声を明るくしつつ状況を逐一声に出して伝えながら階段への一歩を踏み出すよう促して)
任せたよ。_ 分かった。…今だけは事務所が二階であることを不便に思うよ。 …ただいま。
(今回はより一層相棒の情報収集能力が必要となってくるだろう。特に目から入る情報に関しては自分は全く仕入れることが出来ないから相棒頼りだ。お互い根底を支配している不安を誤魔化すように明るい声で励まし合うこの空気は何処と無くぎこちない。冷静に務めながらも早く解決しなければと焦りが募る。体感とても長い距離歩いていたがやっと建物の下には到着したようだ。ここからは事務所に戻るには階段という難所がある。今度は背中にも腕が回されて完全なサポート状態の元最初の一番を踏み出す。普段なら何気なく登ることの出来る階段でさえこれだ。もしも視覚が戻らなければこれからもずっと迷惑をかけ続けてしまうのだろうか。共に歩む相棒ではあるが足を引っ張りたくはない。そんな不安を抱えながらも少し茶化したように呟き一段一段慎重に昇っていく。折り返し地点以外は支えもあって問題なく登りやっと2階に辿り着く。手探りに事務所のドアに手をかけてそのまま開けると室内から嗅ぎなれた匂いがした。漸くいつも過ごしている安全な場所に帰ってきた実感が湧くと安心して思わず安堵の息が漏れた。中から声がしない様子から所長は出払って居るようだ。ひとまず事務所の中に入ると「ここまで帰ってくれば安心だ」と掴んでいる腕の方向きながら話して)
この事件が終わればいつもみたいに何も思わなくなんだろ。……おかえりフィリップ。ここならどこに何があるかも完璧だろ?俺は飲み物用意するから、お前はここで待っててくれ。
(万が一足を踏み外しても大丈夫なように支えつついつもの倍以上の時間をかけて階段を登りきってようやく事務所へと帰ってきた。目が見えないといっても登り慣れた階段であれば歩幅など覚えているのかとも思ったが、この状態の相棒から目を離せるかと言われればノーだ。互いに気を使って不安を滲まませないようにしているのが嫌でも分かる。まるでいつ決壊するか分からないダムを抱えているような感覚だ。そのダムに溜まっていくのは不安。メモリブレイクすれば、事件が終われば、そう将来の展望を口にするが、そもそも相棒がこの状態で変身したときまともに戦える状態であるかも定かではない。体は自分のものだが右半分を動かす意思は相棒にある。油断すればどんどん悪い方へと思考は流れていってしまいそうで軽く頭を振ってその思考を払い落とした。だがひとまずは住み慣れた場所に帰ってきて互いに安心だろう。こちらを向いた相棒の目が閉じられているのをみるとまた胸が傷んで悪い方向へ思考が流れそうになり、それを阻止すべくまずは休憩しようと提案する。出入口扉から1番近いソファの傍まで軽く手を引き誘導すると、ゆっくり手を離してその場から離れていって)
そうだね、おおよその家具の配置は頭に入っているし距離感さえ慣れたら移動には問題無いと思う。ああ、頼んだ。…ぁ、……。
(初めてこの場所を訪れた時からほとんど変わっていない家具の配置。検索のし過ぎで寝不足の時など極限状態でも過ごしてあるこの事務所内なら障害物となる家具の位置も把握済だ。この状態での歩幅や方向転換の角度の感覚さえ掴めれば普通に移動する分には支障はないだろう。だが何か物を手に取ったり動かすような繊細な動きには相手のサポートが必要となりそうだ。今まで当たり前に出来ていたことが出来なくなる歯がゆさと無力感。一刻も早く解決しなければと焦燥感に駆られてしまう。だがここは一旦冷静になることも必要だ。相手から休憩の申し出をされると素直に頷いて手を引かれるままソファの側まで移動する。そこで今までずっと触れていた相棒の手が離れていって思わず小さな声と共にその先に手を伸ばす。だが足音は遠ざかり伸ばした手は宙を掴む。飲み物を準備するなら当然台所まで移動しなければならず、そこに自分がついていっても邪魔になるだけだ。それは頭では理解しながらも外界に繋いでいた糸が突然切られ再び暗闇に放り出されたような不安が一気に押し寄せていた。思っている以上に自分はこの状況に堪えているらしい。他人事のように分析しながらも手を引っ込めてソファーに座る。相棒が作業しているであろう音に耳を傾けて一人では無いと確認しながらも聞こえないようなな深くため息をつき、相手が来るのを大人しく待って)
_____………待たせたな。水持ってきたからひとまずこれでゆっくりしようぜ。
(相棒が発した小さな声に気が付かぬまま、努めていつもの歩き方で相棒から離れて台所へ向かうと、冷蔵庫に両手をついて項垂れた。思わず吐き出しそうになったため息を押し殺してゆっくり深呼吸する。ずっと目を閉じたままの相棒を、何もかもの動きが覚束無い相棒を見ているのがこんなにも堪えるとは。このままではもうホワイトボード一面に文字を書き綴る姿も、好奇心を爆発させているあの煌めく目も、こちらを愛おしげに見つめる視線も、見ることが出来なくなってしまう。依頼人の悩みを解決するはずがすっかり当事者となってしまった。私情で暴走するのは探偵としてありえない、自分がしっかりしていなければと改めて気合いを入れると、コップに水を注いで両手に持ち相棒の元へと戻った。目の前のテーブルに自分用のを置いたあと、もうひとつは相手の手元へともっていってその手に握らせる。何度話しかけようとも今はあの目がこちらを見ることは無い、背後から迫ってきたそんな不安から逃げるように、コップを手渡した後すぐに背を向けてしまう。いつもの習慣だからと自分に言い訳しながらまだ被ったままだったハットを所定位置にかけようとその場から離れ)
ありがとう。…、…翔太郎。…その、この状態でも地.球.の.本.棚は使えるし、見えなくても状況を察知する方法はある。きみとなら、射的の時みたいに息を合わせることだって出来るはずだ。…だから、…置いていかないで、欲しい。
(少し長めの時間を置いて相手が戻ってくる。気遣うように手元に運ばれたコップを受け取ると礼を伝えてこの気持ちを落ち着かせようと口に運ぶ。冷たい水は幾らか頭を冷やすが相手が手渡したきり離れていく気配がすれば不安と焦りが募る。目の見えない自分が面倒だと見ていられないと思ったのだろうか。真っ暗闇の中相手すら居なくなれば何も出来ない、その姿を追うことも出来ない。離れ離れになってしまうような悪い予感が頭を支配してコップを前方のテーブルに探りながら置くと立ち上がり、事務所の配置を思い出して躓かないようにしながら足音の方に近付く。伸ばした手が服の生地に触れるとそのまま相棒の身体を背後から抱き締める。今が昼間だとか事務所内だとかまで頭が回らない。相手の存在を確かめるように腕に力を込める。何を言うべきか纏まらずに取り留めなく浮かんだ今自分が出来ることを告げていく。メ.モ.リ.ガ.ジ.ェ,ッ.トを使えば姿は見えずとも周りの動きを察知出来る、検索だって効率は落ちるがいつも通りに出来る。そして相手となら困難なことも乗り越えられる気がするのだ。視覚がない事よりもそれによって相棒の役に立てないこと、そして何より遠巻きにされるのが何より怖い。だから役に立てる事をアピールするように並べた後、言っていいのか悩むような沈黙を挟んで縋るように小さな声でお願いして)
っ、_______馬鹿野郎、例えお前がどうなったってお前を置いていくわけないだろ!俺が一緒に居たいのはもう一人の探偵じゃなくてフィリップって男だ。だから絶対に、ぜっったいにお前を一人になんかしねぇ。____悪かった、お前が怯えてんのは分かってたのに、悪いことばっか考えてお前をちゃんと見てなかった。お前の目が開くまでもう絶対に離れねぇ
(ハードボイルドの象徴たるハットを金具にかけたが、心境は最もそこから遠い所にある。この状況に動揺して相棒にすらどう接していいのか分からない。ここから振り返った時どうやって話しかければ良いかも分からずにいると、相棒が立ち上がる音がして覚束無い足取りでこちらへ来ると、そのまま背後から抱き締められた。思わず息を飲む。その間に語られた事は相棒の懇願に近い、最後の一言に相棒の想い全てが集約されている気がした。また息が詰まるのが分かる、そして怒りが湧いてきた。相棒にこんな事を言わせてしまった自分への不甲斐なさへの怒り。自分のせいで視界を失いいつも通りでなくなった相棒を見ているのが辛いだなんて、よく言えたものだ。回された腕に自分のものを重ねて湧き上がった言葉を叫ぶ。探偵として能力があるから、地.球.の,本.棚.が使えるから相棒といるんじゃない。例え相手が探偵でなくても、きっと自分は相手を選んでいた。役に立つとか立たないだとかとは次元が違う、ただ相手の隣に立っていたいだけだ。後ろから抱きしめる腕をゆっくりと解いて、振り返って正面から抱きしめ直す。頼むから今は所長や他の面々が来訪しないようにと願う。相棒を手放すことなんてありえないのは確かだが、こちらの動揺を隠すために背を向けていたのも確かだ。こちらの存在を伝えるように背中に回した手に力を込める。相棒の手が震えてたのだって知っていた、それならばこちらのやることは何よりも相手のそばに居ることを示すことだ。抱き締めていた手を相手の後頭部に添える。よりこちらの存在を知らせるように互いの頬を寄り添わせていて)
…っ、翔太郎…。不安な気持ちに押し流されていたのはぼくも同じだ。…正直、何も見えない今の状況は凄く怖い。だけどきみがこうやって傍に居てくれるなら安心して頑張れる気がするんだ。…もう少しだけこうしてていいかい?
(やっと腕の中に閉じ込めた相手の温もり。信じていない訳ではない、力が十分に果たせないからと言って放置するような人間でないことは相棒である自分が一番よく知っている。だけど腫れ物に触るような距離感が万が一を連想させてしまってつい背中を追いかけてしまった。縋るように背中に額を押し付けて体温を感じていると回している腕に相手の手が重なり、叫ぶように返答が返ってくる。力を発揮出来ないただの自分でも必要だと強く主張してくれて、蔓延っていた不安がみるみると溶けていくのが分かる。腕は解かれて今度は正面から抱きしめられて相棒の腕の中に収まる。謝罪されて離れないと約束されると震えた声で名前を呼びながら此方からも背中に腕を回して応える。大丈夫と言いながらも実際脳内は悪い方向へ考えが及んでいた。それでは言葉に説得性を持たないのは当たり前だ。相手の体温に包まれると強がりは辞めて現状への正直な不安を吐露する。だがずっとそれに負けている訳にはいかない。自分の為にも被害者の為にも早く事件は解決するべきだろう。怖くはあるが相棒が側にいて協力してくれるならば何とかなるとも思うのだ。頬がすり寄ってくると相手の匂いがする。視覚が無くとも他の感覚で相棒の存在を実感すると漸く安心したように小さく笑って腕に力を込めながらも甘えるようにお願いして)
フィリップ、……俺達は二人で一人の探偵だ、俺だってお前が居なきゃ何も出来ねぇ。でも俺達二人ならきっと彼女を止めてお前の視覚を取り戻す事だって出来る。だから、力貸せよ相棒。お前の気が済むまでこうしてるから……
(ずっと耐えるように明るく振舞っていた相手から震えた声が聞こえて、本音とも言うべき不安が出てくると自然と腕に力が入る。相棒の心境なんて分かっていたはずなのに、本人の口から本音を聞くと胸にかかるその重さはまるで違う。しかしだからこそ必ずこの事件を終わらせなければと強い決意が宿る。被害者を、そして相棒を救うために立ち止まっている場合ではない。いつもの調子で行動してから考えるのが自分には合っているはずなのだ。だがそれをするにしても半人前の自分だけでは走っていけない。こちらが隣にいて相棒が安心出来ると言うなら自分だって同じ理屈だ。二人でなければ探偵は成り立たない。だからこそいつもの調子で協力しろと呼びかける。不安が襲い来る状況であってもやることは変わらない。上半身を少し離して、今度こそ真っ直ぐと相手の顔をみる。未だ目は閉じられたままだが、必ずこの瞳をもう一度輝かせてみせると今なら覚悟を持って言える。この目がまた開かれるようにと呪いをかけるように、閉じられた瞼に短く口付けて)
…ああ、いつも通り二人で力を合わせて解決することにしよう。依頼人の為にも、きみの気取った笑顔を見るためにもね。…ん、もう平気そうだ、ありがとう。…ひとまずぼく達の顔が割れた以上同じ接触方法は無理だと考えた方が良い。新たに彼女を見つける方法とメモリブレイクの方法を考えるのが先決かな
(素直にこぼした本音に相手の腕に力が込められるのが分かる。もしも相手があのまま視覚を奪われていたら同じようなことを考え行動するだろう。多少障害はあるがやることはいつもと同じ。二人で情報を集めて推理して事件を解決に導く。それがこの街の探偵のスタイルだ。すっかりいつものペースに戻ると安堵感を抱きながらも相棒の呼び掛けに応じる。今はハードボイルドを気取った得意げな表情を見るのが妙に恋しかった。許されるまま相手を抱きしめていたが、少し上半身が離れる。今度こそ逃げずに自分に視線が注がれているのが何となく分かる。そして願いを込めるように瞼に口付けが落とされると予期できなかった行動に少し驚くが込められた意図を察して口角が上がる。今の間にか不安は吹き飛んでいて後ろに回していた手をゆっくり解いてその事と礼を伝える。はやく万全な体勢で相手と話すためにも事件の解決は急務だ。幸せの余韻を残しながらも仕事モードに切り替えるとこれからの行動について検討を立てていき)
そこはハードボイルドな探偵の姿が見たい、とかにしとけよ。よし……俺達が闇雲に探したって逃げられるだけだ、狙いを読んで先回りするしかねぇ。これまで彼女が奪ったのは聴覚、臭覚、触覚、それに視覚。残ってんのは味覚だ。最後におあつらえ向きな最高の味覚を探してんじゃねぇか?
(こちらの呼び掛けにいつものように返事が返ってくる。ついでにいつものようにこちらを茶化すような言葉も飛んできたのできっちり突っ込んでおいた。だが相手がこの笑顔を見たいと言うならば、この事件が終わった時には最高にカッコイイ笑顔で迎えてやらなければ。平気と口にする相棒からはもう不安の色は見えない。こちらも同じく見つめているのはこの事件解決への道だ。気合いを入れるように一言呟いたあと、最後に軽く腕に力を込めてからこちらからも腕を解く。ここからは風.都.の探偵の腕の見せ所だ。相棒の推理通り、彼女はより優れた五感を求めている。彼女が欲する世界をより感じる為の五感、足りないのはあとひとつだけだ。暴走気味の彼女ならより欲深く極上の感覚を欲しているに違いない。こちらの予測を立てながら該当する人物がいないか検索するよう頼み)
ハードボイルドな探偵はこうやってぼくに寄り添ってくれないよ。 今まで奪ってきた感覚に被りがないことからその推理は合っていると思う。味覚…、例えば料理人か料理評論家、ソムリエなどが狙われるかもしれないね。あのエリアを通る可能性のある優れた味覚の持ち主について検索してみよう。きみは彼女についての情報や何か狙いを絞りこめるようなキーワードを集めてほしい
(こちらの茶化しにツッコミが入る。いつも通りのやり取りが出来ていることに心助けられている物がある。もしも相手が本当にハードボイルドな探偵なら不安を感じさせることはないだろうが、こうして抱き締めて温かな言葉をかけてくれることもないだろう。感情に揺れて寄り添ってくれる相棒のいつも甘いと揶揄う所に今自分は救われていて、ハーフボイルドの君が良いと少し遠回しに伝えておく。最後に強く抱きしめられ、周りが見えないのには変わりはないが今はさほど怖くない。相手の予測を肯定しながらも可能性のある職業の例をあげていく。情報を元に該当するものを絞り込むのは自分の役割だ。勿論検索する意思は見せるが今のキーワードだけでは複数人がヒットしてしまう事だろう。全員を見張って彼女の襲撃を先回り出来るような人員はうちにはない。もっと情報を集めて狙いを絞り込む必要がありそうだ。そこで相棒の出番だ。どれがキーワードになるか分からない以上広く情報を集める必要があるがそこは相手の得意分野だ。事件解決に向け相棒に外での情報収集を依頼して)
えっ?!いや、それは…う、……あ゛ーーとにかく!俺はあのエリアを回って優れた味覚を持った奴が来てねぇか探してみる。……一緒にいくか?
(相棒に虚をつかれて思わず言葉に詰まってしまった。確かにおやっさんなら相棒と称する人物を甘やかしたりはしなさそうだ。しかし自分があの状態の相手に対してクールに淡々と解決策を言うだけなんて事ができるかと言えばノーだ。震える相棒に向かって、冷静になれだとかそんな言葉だけをかけてやれそうにない。向こうは今のままでいいと言う意味で言ったのだろうが、それもそれで不本意ではあって、自分の理想と現実がすれ違ったことに理屈を付けようとするがひとつも思い浮かばず、最終的には大声で叫んで考えるのを止めた。とにかく今は画家の彼女を止めるのが優先だ。その他のことでモヤモヤしている場合ではない。いつもの如く足で情報を稼ぐ時間だ。金具に引っかかったハードボイルドの象徴たるハットを被り外へ出ようとするが、その足が止まる。調子はいつも通りに戻ったが、先程絶対に離れないと約束をしたばかりだ。暗闇にいる相棒をこのまま事務所に残すべきか迷いが生まれる。効率で言えば別行動の方が圧倒的に良いのに、結局はハーフボイルドな問いかけを相棒へと投げていて)
ああ、頼んだよ相棒。…いや、ぼくはここでやるべき事をやるよ。もう一人のきみが見守ってくれてることだしね。何かあったら直ぐに連絡する
(表情は見えずとも相手の狼狽える様が声色から伝わってきて微笑ましい気持ちになる。困っている人がいれば感情のまま手を差し伸べるのが相棒の素でありいい所でもあるが彼の目指すハードボイルドとは相性が悪い。結局は叫んで強引に話を流してしまったが苦労をかける分これ以上揶揄うのは辞めておくことにした。役割分担も決まりそれぞれが動き出そうとした流れで相手も自分から離れ恐らくドアの方に向かう足音がする。ふとそれが止まり不思議に思っていると思わぬ誘いに硬直してしまう。今の自分を連れていくのは帰ってきた道なりと同じく非効率的なのは明白だ。それでも誘いをもちかけてくれたのは一人にしないといけ約束を気にしてだろう。その気持ちは嬉しいし、正直なところ側にいてくれた方が安心出来る。だがそれでは事件の解決が遅れてしまう、それはこの街の探偵として望むことではない。迷いを断ち切るように首を横に振るとここに残って自分の仕事をする意思を示した。ズボンのポケットに入っている大事なお守りに手を添えながらも大丈夫だと相手に安心させるように伝える。何か問題があれば連絡すればいい話だ。「多分きみが再び狙われることは無いと思うが気を付けて、行ってらっしゃい」と見送りの言葉送り)
分かった、お前のことはそいつに任せるか。じゃあこっちからも何か分かったら連絡する。___あぁ行ってきます。
(相棒の手がポケットへと添えられた。そこにあるものが何か当然知っている。自分の半身とも言うべきお守りだ。そういえばこれを自分だと思って持っておくようにと言ったのはこちらだ。傍から離れないというのはきちんと達成できているらしい。相棒の返事に答えるとハットに手を添え気合いを入れ直した。何度聞いたか分からない行ってらっしゃいをいつもの如く返して事務所を後にした。被害者達が襲われたエリアに到着して暫く、食に関するイベントやそれらしい人物がいないかと探していると意外な人物が目に入った。特徴的な顔と髪型と喋り方、情報屋の一人ウ.ォ.ッ,チ.ャ,マ,ン,だ。コソコソ隠れているつもりらしいが逆に動きが怪しくて目立っている。背後から近づいて何をしているのかと声をかけると、デレデレとした顔で美女を待っているのだと説明された。海外のセレブらしくお忍びでここらへんに来ているらしい。「オマケに世界に名を轟かす美食家でねぇ」と口にした瞬間に目を開いた。探偵の勘がビンゴだと告げている。手短に礼を言うと困惑した情報屋はそのままに相棒へと連絡をとる。電話口に出た相手に美食家がここに来ていることを告げると「フィリップ、ここらへんに海外でも有名なレストランってあるか?」とあたりを付けようと問いかけて)
感覚器官の大幅な強化、ならこれを逆手にとれば…。___ 少し待ってくれ、調べてみる。……どうやらその辺から5分程歩いた所に【La Saetta】という名前のイタリア料理を提供する店がある。最近世界でも有名な雑誌で一つ星レストランとして紹介されたらしく、最近は予約も数ヶ月先まで埋まっているらしい。そして今夜、著名人や友人を招いての食事会が行われるみたいだけど……もしかしてこれかい?
(相棒を見送って早速自分の仕事にとりかかる。少し危険を伴うが来客が来た時のことも考えて手すりを頼りにガレージに降りるとまずは味覚に優れた人について検索を始めた。だが予想通り複数人がヒットして絞りきれない。類似したキーワードを入れてみたが結果は同じだ。この辺は相棒の追加情報待ちだろう。続いて彼女の使っていたメモリについて検索をかける。これについてはメモリの文字と機動音を確認したから一発でヒットした。Senseメモリ、文字通り動物の機能の感覚を司る物だ。他人の感覚を奪い自分の物にすることによって五感が鋭くなり広範囲かつ微細なものまで感知出来るようになるらしい。不意打ちも考えていたがこの能力を見る限り難しそうだ。打開策に着いて悩みふと良い案が浮かんだ所で電話が鳴って手探りながら応答した。現在の状況と経緯の説明を受けると通話を繋げたまま地.球.の.本.棚にアクセスして検索をかける。数冊ヒットしたがパラパラと中身を確認して相棒の話に近い一冊の情報を相手に伝える。最近高い評価の店だと雑誌に掲載されたイタリア料理店、食通も店に足を運ぶほどの美味しさのようだ。そして相棒の言う美食家が訪れそうなイベントが今夜開かれるとの記載を読み上げた。そしてこういう時の相棒の勘は大体当たる。意識を電話口に戻すと相手の意見も伺って)
きっとそれだ。ここで個展を開いてりゃ周辺の色んな噂話が仕入れられるはず。彼女はその店でイベントが開かれることを知って、最高の味覚の持ち主が向こうから現れるのを待ってんだ。
(後ろでウ.ォ.ッ.チ.ャ.マ.ン.がちょっかいをかけようとしてくるのを手で払いながら相棒の検索結果を聞く。どうやら当たりのようだ。彼女が望む世界をより感じるための最高の味覚、その持ち主がこの近くにいる。そして当然彼女もそれを狙って一つ星レストランに向かうことだろう。店名を聞けば店の場所は分かる。急いでそちらへ走れば数分もしないうちにたどり着いた。店の前には貸切の文字、入口にはガードマンが配置された厳重体制、あれで間違いない。そして探偵の勘は正しかったと証明される。スキップでもしそうなほど上機嫌に彼女は店の入口目指して一直線に歩いてきた。当然ガードマンが駆け寄り彼女を静止させる。ニコニコと親しげな笑顔を浮かべる彼女は「用事があるから通りますね」と口調だけは丁寧にそう言うと、掌にメモリを突き刺しド.ー.パ.ン.ト.へと変化した。それを見ると弾かれたように走り出す。そのままガードマンを襲おうとする彼女を横から思いっきり突き飛ばして攻撃を阻止した。こちらを見た彼女は驚くように息を飲んで「もうあなたのお友達から欲しいものは貰ったの」と冷たくあしらわれるが、生憎こちらには用がある。ドライバーを腰にあて装着する。同じ瞬間に相棒もドライバーを装着して意識が繋がることだろう。紫のメインメモリを構えれば「行くぞフィリップ!」と呼び掛けて)
海外からわざわざ来る美食家となれば相当鋭い味覚の持ち主のはずだ。彼女が狙うには絶好の獲物だろうね。…肝心なのはここからだ。 ___ 流石、きみの勘は冴え渡っているようだ翔太郎。彼女に大事なものを返してもらう事にしよう
(何やら背後が騒がしいような気がするが店名とそこからの距離だけで場所が伝わったようだ。流石この街を庭と称するだけある。確信的な証拠がある訳では無いがここまで条件が揃い相手のお墨付きもあればそこが狙われる可能性は極めて高い。相手の言葉に同意を示しながらも恐らくその場所に向かって走り出すような音がすれば一旦電話を切る。二人の推理が正しければ彼女に接触する事が出来るだろう。しかし問題はこれからだ。ドライバーにより相棒の視野も共有出来るのであれば全く問題はないがメモリの効果範囲は未知数、変身中も情報を得ることができない可能性は十分にある。二人で身体を動かす仕組みのダ.ブ.ルには致命的な状態だ。となればあまり動かず単純な動きだけで打破した方が勝率は高い。相棒からの反応を待つ間、バ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.トを起動して目的のレストランに飛ばしておいた。それから少しもしない内に腰にドライバーが現れ、相棒と意識を共有する。どうやら狙い通り彼女が店に現れたようだ。褒め言葉を送りながらも緑のメインメモリを構えた。目が見えずとも何十回も繰り返した動作は身体に染み付いている。「サイクロン」と機動音を響かせるとドライバーに差し込み、メモリごと相棒の身体に意識を転送させて)
あぁ。この街を、相棒を、泣かせる奴は許せねぇ。変身!
(彼女に夢があるのは良い事だがそのために他人が泣いていいはずがない。そして何よりあの好奇心を暴走させた煌めく相棒の目を返して貰わなければならない。「ジョーカー」の起動音が響いた後、ドライバーに緑のメモリが転送されてくる。それを差し込み自分の紫のメモリを差し込んでドライバーを起動させた。風が体を包み込み装甲を身に纏うと変身を果たす。これで意識は相棒と共有された。こちらの見たことを意識下で伝えることはできるが、相棒の動きが一瞬遅いのをみると視界が奪われたままであるのを悟る。ド.ー.パ.ン.ト.が二本の手を鞭のようにこちらにふるい落としてくるが、左半分はそれに反応できても相棒の操作下にある右半分は一瞬反応が遅れてガードしきれない。それをカバーするように右側へ放たれた一撃も左手で受けて防御する。だがこれでは動きが不自然だ、いつか右半分に攻撃を集中すれば良いことに気が付かれてしまう。防戦一方になり「くそ」と悪態をつきながら応戦を続けていて)
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