検索 2022-07-09 20:46:55 |
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、すまねぇ…___おかえりなさいませお嬢様。お早いご帰宅は私も大歓迎です。どうぞこちらへ
(散々な煽られように思わず体が動いてしまいそうになるが右隣からそれを制されて我に帰る、今から優雅で浮世離れした執事になろうというのに心乱されていては勝負に挑む前に負けてしまう。相手に一言入れながら軽く息を吐いて気持ちを整えた。執事長からご主人様を迎えることが告げられれば「いくぜフィリップ」と気合いを入れるように小声で言う、これでこの口調は暫く封印だ。一番最初に入ってきたご主人様は荒木が目当てらしくいの一番に荒木が動くと彼女の前へと踊り出てエスコートを始める。その時点で既に手を取りテーブルへと案内していて特別な雰囲気を醸し出していた。次々お嬢様が入ってきては応援する執事に声をかけホールへと移動していく、しかし次に入ってきたのは自分達が狙う新規客のようで相手に目で合図をすれば彼女達を任せることにした。次に入ってきたのはランチタイムにみたお嬢様で思わず反応してしまう、それを満足気にみたお嬢様は『約束通り来たわよ、左』と声をかけられにこやかに応対した。幸先の良いスタートに彼女をエスコートして席へと案内すれば椅子を引いてメニューを手渡す。その間に荒木と常連客とは異質な存在感を放っていて、荒木をテーブル横に跪かせたお嬢様は『まずはファーストローズね』と薔薇を荒木に早々に渡していて)
初めての紅茶であればやはり紅茶の香りと色を楽しめるダージリンはいかがでしょうか。雑味もなく普段緑茶を嗜んでいらっしゃるお嬢様のお口にも合うはずです。
(相手に目配せしてから二人組のお嬢様を席に案内してそれぞれ椅子を引いて座ったのを見てからメニューを手渡す。この場の雰囲気に圧倒されている二人を見ながらちらりと相手の方を向けばランチタイムに見たお嬢様の姿があってにこやかに対応する様子に少し胸がざわつく。だが荒木に勝つ為にはヤキモチを焼いている場合ではない。視線を戻せば『こういった場所も紅茶も初めてで…おすすめとかありますか?』と問われ、彼女達の飲み物の好みを質問してから絞るとメニューの中からおすすめの茶葉のページを開いて説明する。短い間にメニューの中身を覚えて良かったと密かに安心していると荒木の案内したお嬢様の所ではテーブル横に跪いた彼に早速薔薇を手渡している。一応名目としてはご主人様の奉仕への感謝の気持ちとしてご帰宅の前に渡す物らしいが彼らにとってはチップのようなものなのだろう。ナンバーワンを推すお嬢様の姿を横目に見ながらも『じゃあおすすめして貰ったこれにします』とお嬢様にオーダーを頂けると「ありがとうございます、それではお嬢様に相応しい紅茶をいれて参ります」と穏やかな笑みを意識して浮かべ、一礼してから一旦裏にオーダーを伝えに行く。再びホールに戻った所で荒木達のいるテーブルの前を通ると『あら、新しい執事?』とあのお嬢様に声を掛けられる。どうするか迷ったものの執事ならばどのご主人様にも同じ対応だろうと「ええ、本日だけではありますが新人のフィリップと申します」と自己紹介してから一礼すれば『へぇ…、確かに良い顔してるわね』と何処か値踏みするような視線を向けられ)
同じ、…香り高くてミルクと……あ、アッサムのミルクティーですね!
(ランチタイムのお嬢様と会話を交わしながらちらりと相手の方をみれば初めてのお嬢様二人にうまい具合に紅茶を進めている、順調そうだがあまり見慣れない相手の姿や言葉がこちらに向けられていないのはなんとも胸がモヤモヤする。心ここに在らずなのが見抜かれたのかお嬢様からは『お昼と同じのがいいわ』と言われて固まってしまった。必死に記憶を巡りカップから漂った香りとホールに出る前に詰め込んだ知識をなんとか引っ張り出して正解へとたどり着いたが、思い出せたのが嬉しくてつい顔を明るくさせながら返事をしてしまった。直後執事らしくないことをしたのに気がついて咳払いをするも『及第点ね』と笑いながら言われてしまい返す言葉もない。笑みを作って誤魔化しつつ裏にオーダーを伝えに行こうとしたがその前に相手が荒木贔屓のお嬢様に呼び止められているのが見えた。彼女の値踏みするような目線に表情を崩さないように必死になっていると彼女は荒木に『一日なんて言わずずっと雇ったらいいんじゃない?』と話を振る。水面下でやり合っていることを気づかれないよう荒木は軽く笑うと『何をおっしゃいます、景子様には私がいるでしょう?』と片方の手を取り、もう片方の手を彼女の頬へと添えた。うっとりと彼女はそれを見つめていたがあれは明らかに主人と執事の距離では無い。あれが常態しているのかと横目で見つつ裏に注文を伝えていれば彼女は『でもあなたも私に仕えてくれるんでしょう?』と片手を相手へと差し出す。それは同じことをしろという意味で様子が気になるどころではなくなると思わず勢いよく相手の方を見てしまって)
…ええ、お嬢様の望みであれば精一杯お仕えさせて頂きます。 ですが私などがお嬢様の美しいお顔に触れるなど畏れ多いですから。
(他のテーブルのお嬢様方にも顔を見せに行こうかと思った矢先荒木推しと思われるお嬢様に呼び止められ、足を止めて会話をする。新人だと名乗れば彼女は話を振るが荒木をほんの一瞬こちらに鋭い視線を送るだけで軽く笑みを浮かべると慣れた仕草で彼女の頬に手を添える。主と従者の距離感よりも恋人に近いスキンシップにこれが過剰なサービスかと彼の説明を思い出す。まるで見せつけるような行為のインパクトに固まっていると満足そうな彼女はこちらを向いて手を差し出してくる。これに従えば同じく薔薇が一輪貰えるのかもしれないが自分達が行いたい接客はこれではない。視界の端で相手がこちらを見ているのに気付くと静かに微笑みを浮かべてお仕えしていることには肯定を示す。一方伸ばされた手は軽く包み込むように握ってから荒木のように安易に触れることは出来ないと遠回しに優しく告げる。そのままそっと手を引っ込めるよう促すように手を離すと同じことをしてくれると思い込んでいたのか呆然とするお嬢様に「何かありましたらまたお声がけください」と一礼してからそのテーブルを離れる。常連客と思わしき人達が若干ざわめいたのを感じながら立ち止まったままの相手の元にやって来ると「お嬢様から紅茶のオーダーですか?」と執事としての雑談を装いながら彼女に返した言葉に少し得意げな顔を浮かべて)
…、…え、おぅ……いい感じだ
(荒木がお嬢様の頬に手を添えるのを見て直後相手にそれを要求しているのが聞こえると焦って執事であることを忘れそちらを見てしまう、あぁいうのをさせたくなかったのに早々に要求されてしまうとは思わなかった。あれくらいの接触は序の口という意味だろう。しかし相手はお嬢様の手を取るだけで実にスマートな言い回しで忠誠だけを誓う、お嬢様の気持ちを不快にさせない言い回しといい手だけは取る誠実さといい紳士的で素直にかっこいい。相手には可愛らしいと感じる機会が多いが珍しい感想を抱いてしまって勝手に動揺してしまう。相手はそのままテーブルを離れるが周囲の客、特に荒木を推すグループのテーブルからざわめきが聞こえる、今ので荒木とは違う派閥だとハッキリと周りに認識された事だろう。相手はこちらへとやってきて得意げな笑みを浮かべるが先程とは違う子供っぽい行為のギャップにやられてしまって心臓が跳ねてしまった。同時に全てが自分のものなっていない事実に思わず目を泳がせてしまう。だがここで嫉妬心が強くなれば相手と歩調が合わなくなってしまう、それでは同じ目的を達成することはできない。なんとか一言だけ絞り出すように言うとちょうど自分の紅茶の用意が出来たようで逃げるようにその場を離れてしまった。トレイにロイヤルミルクティーと紅茶についてくる薔薇を持って先程のお嬢様の元に戻る。動揺をなんとか抑えつつ「お待たせしました」と声をかけてポットからカップへお茶を注ぎお嬢様の目の前へ置いて、ついでご主人様につきひとつ用意されている花瓶に薔薇をさした。すると『あのフィリップくんと左は元からの知り合いなの?』と問われて「えぇ」と答えればお嬢様は面白いものを見つけたと言わんばかりに交互にその顔を確認する。楽しげな表情のままお嬢様は薔薇を一本手に取ると『それで、左はどういうスタンスなわけ?』と問われて先程の再現をするように手が差し出された。つまり自分はどちらの派閥なのかと問われているのだろう。相手に習いその手をすくい上げるように持ってその場に膝を着くと「もちろん、精一杯お仕えさせていただきます」と胸に手を添え相手と同じ言葉を口にした。新人二人共が荒木に反旗を翻しているのが示されるとホールはまたザワついていて)
私には勿体ないほど嬉しいお言葉とお気持ちです、お嬢様
(彼女の要求を上手く躱して自らのスタンスを示すことが出来れば立ち止まったままの相手の元に向かい成果を報告しに行く。だが相手は目を泳がせたかと思えば早々に去ってしまう。僅かに首を傾げるがあまり執事同士の私語は良くないだろうと一旦は気にしないことにして客席に目を向ける。すると荒木達のグループとは反対側のテーブルに座るお嬢様がベルを鳴らしてそちらに向かう。名前を名乗って一礼させて貰ってから軽食のオーダーを聞いているとホール内の気配が変わったこととお嬢様の視線が他所に向いたのを受け自分もそちらに目をやる。そこには昼間のお嬢様が一輪のパラを持ったまま相手に手を差し出している光景で先程の自分と同じものであるにも関わらず焦りが募る。動揺が隠しきれないままその光景を見ていたが相手はその手を取って跪くと自分と同じ言葉を告げてホールがざわめいた。新人がナンバーワンに歯向かう姿に驚いているのだろうが相手が荒木のような事をしなかった事に安堵していると傍にいるお嬢様に『案外表情に出るのね』とくすくす笑いながらご指摘を受けてしまった。誤魔化すように軽く頭を下げると『さっきの行動、とてもスマートでこのお屋敷に相応しい執事だったわ。良い物を見せてくれたお礼よ』と花瓶にさしてある薔薇を差し出される。雰囲気や言動から夏目派か穏便寄りのお嬢様だと察しがつくと笑みが浮かんでその場に跪いて謙遜の言葉を返しながら薔薇を受け取った。まずはこれで一本目だ。そのお礼として懐に入れていたブロマイドを差し出す。お嬢様が受け取って中身を確認すると目を瞬かせる。なにか不満な物か手違いがあったかと立ち上がってその様子を見ていれば『なかなか珍しい物が入っているのね』と楽しそうにその中身を見せられる。そこにはブロマイドの撮影として撮ったものではないその合間の相手と会話するツーショットの写真があって「えっ」と思わず素の反応をしてしまう。視界の端に写真を撮ってくれた彼が微笑むのが見えれば恐らく自分達には内緒で撮られて故意に混ぜられたものだろう。動揺の中楽しげに笑うお嬢様の視線を受ければこほんと咳払いしてから「なにゆえまだ私達は未熟者の新人ですので、本日はあちらの左と二人で一人の執事としてお嬢様方にご給仕させていただきます」とにこやかな笑みと共に相手を紹介しながら自分達のスタンスを表明して)
えぇ、私達は二人でやっと一人分。しかし二人であれば二人以上のことができる、そういう関係です
(跪きながら自分達が荒木とは違うスタンスであることを示せば周りはどよめいて、しかし目の前のお嬢様はさらに楽しげに笑みを深めている。そのままの体勢で『いい忠誠心ね、左』と薔薇が差し出されて礼を言いながら受け取った。お返しとしてブロマイドを手渡すと『二人のために援軍呼んでおくわね』と言い添えられて言葉の意味を聞こうとしたがその前に別のテーブルでベルが鳴るとそのまま行くように言われてしまった。真意を聞けぬまま他のテーブルへとついて注文を受けていると相手がついていたテーブルから何やら楽しげな声が聞こえてちらりと目をやる、そこには自分と相手とのツーショットのブロマイドがあって思わず目を見開いた。撮影の合間に撮られていた分もブロマイドとしてカウントされていたらしい、ワンショットよりも少々気恥ずかしいものになんとか気を取り直してオーダーを受けていると相手がいつも通り二人で一人のキーワードを出していて思わず口角を上げてしまった。相手の話し声とこちらの様子からオーダーを取るお嬢様から『フィリップさんと二人で一人なんですか?』と好奇心のままに問われる。いつもならば真正面から答えるのは恥ずかしいのだが既に執事という仮面を被っているお陰かスムーズに答えることが出来る、それを聞いたお嬢様はさらに興味を持ったようで『さっきからお互い見てたのはそういう意味だったんですね』と指摘されてしまい思わず表情を崩しそうになるのをなんとか抑えた。少し相手をみる頻度を減らした方が良いのかもしれない。その後も少々会話を交わしたあとに注文品をテーブルへと持っていけばまた別の場所でベルが鳴る、そちらへと迎えばどうやら荒木派のテーブルだったようで値踏みするような視線がこちらを撫でた。素知らぬ顔で声をかければ『コーヒー』と一言だけ注文がされる、素っ気ない言い方に表情を崩さないようにしながら裏へオーダーを伝えるとワゴンが用意されミルやフィルターが置かれると「え、」と思わず声がでた。どうやらコーヒーはお嬢様の傍でいれるシステムらしい。一通りのものが用意されて『普通にいれても美味しくなるから大丈夫』と言われてしまうがそもそも普通にいれても全く美味しくできた試しがないのだ。相手に教えてもらいある程度飲めるものにはなったがそれを出す先が荒木派のお嬢様となると下手なものは出すことができない。いつまでも突っ立っているわけにはいかずワゴンを押して先程のテーブルへと戻る、「お待たせしました」と声をかけるが返事は返ってこず空気は重苦しい。この状態でまともにコーヒーを入れれる気がしなくひとまずコーヒーを挽き始めるが内心焦って気が気ではなくなっていて)
…、失礼いたします。私少々コーヒーの腕には自信がありましてお嬢様には最高の物を味わって頂きたい為、お手伝いさせて頂いて宜しいでしょうか。
(二人揃ったブロマイドの説明としていつものフレーズを口にすれば自然と笑みが浮かぶ。ブロマイド数で争っているイベントの中で取り巻きという形でもない協力体制にお嬢様は更に微笑んで『そう、ならば後から左さんとも話してみたいわ』と話してこちらも是非と返事を返した。一礼してから裏に下がり、オーダーを通してからあのお嬢様二人分の紅茶を運ぶ。その紅茶の映えるような真っ白なカップに丁寧にお茶を注ぐと二人から感嘆の声があがる。「まずは紅茶の香りを十分に感じてからそのまま味わってみてください。それからお嬢様のお好みに合わせて砂糖などを少しずつ加えると飲みやすいはずです」と言葉を添えると少々緊張した面持ちで紅茶を飲んだ二人の口元に笑みが浮かんだのが見えればこちらまで嬉しくなった。新しい物を食べた時に見守る相手の気持ちはこんな感じなのかもしれない。そうして見守っているとワゴンを押すような音がして視線を向ける。そこにはコーヒーの一式の道具を乗せたワゴンを押す相手が居て荒木派のお嬢様の元につくと早速準備を始めている。だが相手が声を掛けても殆ど反応はなく心なしか相手の背中が緊張で固まっているように見えると「少々お待ちいただけますか」とこちらのお嬢様方に断ってからそのテーブルに向かう。相手の横に並び一礼してからお嬢様に話しかけるとあくまで執事らしく自分の腕をアピールしながら手伝いを申し出た。こちらをちらりと見て返事がないのを肯定と堪えると「左様、カップなどの準備お任せできますか?」と言葉は執事らしいが普段通り相手に役割分担をお願いする。合わせて豆を挽くのを代わり、用意してもらった道具で事務所で淹れるのと同じように丁寧にコーヒーを抽出していき)
…、……かしこまりました、フィリップ様。それでは私はその他の準備を
(自分が入れるコーヒーは良くて及第点、舌の肥えた人間なら飲むのを拒否されてしまう可能性もある。ましてや今目の前にいるのは荒木派のお嬢様だ、明確な敵意はないだろうが良くは思われていないのは態度からも明らかでコーヒーにクレームを入れられる可能性は十分にある。相手に教わったコーヒーの入れ方を必死に思い出しながら豆をひこうとするとその本人の声が隣から聞こえてきて思わず手を止め右隣をみた。どうやら相手がこちらに代わりコーヒーを入れてくれるらしい、相手のコーヒーならばきっと荒木派であってもお嬢様は満足してもらえるだろう。いつも通りに役割分担がされると緊張していた顔は途端に自信に満ちた顔へと戻って返事をする、相手がいるならばこの局面も乗り越えることができる。相手にミルを渡してその間にカップをセットしワゴン上にある物品を相手が使いやすいよう順に従って配置していく、これも何度も相手がコーヒーをいれる姿を見てきたからこそだ。相手が次の工程に移る度に道具を適切な位置に置き換えコーヒーを抽出する工程になるとお嬢様の方へ近づきテーブル上のものを整え不必要なものを片付けコーヒーを置くスペースを作る。その間一言も言葉を交わすことはなくて阿吽の呼吸で作業を進めていればいつの間にか周囲の目線がこちらへ向いているのに気がつく、どうやら二人で流れるように作業している様子に目を奪われているようだ。自覚してしまえばまた気恥ずかしくなってしまいそうで相手のコーヒーの香りを嗅ぎ集中力を取り戻すと作業を進める。相手がポットからカップにコーヒーをいれ終わるとお嬢様に「砂糖とミルクはいかがいたしますか?」と問う。『砂糖二つ』と相変わらずぶっきらぼうに言われるのも気にせず指定の角砂糖を入れると香りが飛んでしまわないよう優しく混ぜてからソーサーごとお嬢様の前に置き「お待たせいたしました」と一言添えて)
お嬢様のお気に召したようで何よりです。本日は中煎りのジャワコーヒーをご用意しました。香りと苦み、コクがあるのが特徴ですのでお食事だけでなくバターやクリームを使用したケーキなどに合わせるのもオススメな銘柄になっております。あとは…
(相手の右隣に並んで協力と役割分担を申し出ると相手の表情の硬さは解けて見慣れたものに変わる。他のことは全部任せることにして相手が用意してくれた器具をノールックで手に取り作業を進める。抽出に移れば数回に分けお湯を注ぎこの店のこだわりである豆の香りと味を十分に引き出す。満足のいく出来に仕上がると自然と笑みが浮かべながらすぐ目の前に用意してあるカップに丁寧に注ぐ、相手がお嬢様に好みを聞いてその通りに角砂糖が入れるとコーヒーの完成だ。そこで漸く周囲からの関心に気付くがやるべき事はやった。二人で横に姿勢良く並んでお嬢様の反応を待つ。お嬢様は目の前に置かれたコーヒーをじっと見てからカップを持つ、そしてゆっくりと口を付けるとその目が僅かに見開かれたようにも見えた。そして小さな声で『……美味しい』と零れるような呟きが聞こえると思わず相手の方を見て得意げな笑みを見せる。紅茶が主流な執事喫茶でコーヒーを頼むとは相当好きかこだわりがあるのだろう。ならばこのコーヒーがどんな物なのか説明を補足しようとするが話している間に段々と熱が入り、話し方は敬語のままでいつもの様にコーヒーの特徴を捲し立てようとし始めて)
……もちろんケーキのご用意もありますのでなんなりとお申し付けください
(相手と完璧な連携を取りながらコーヒーを入れ終わりお嬢様へと出す、相手と並んで立ち固唾を飲んでお嬢様がコーヒーを飲むのを見守っていた。コーヒーをいれる間に粗相はなかったはず、準備は完璧であとは相手のコーヒーさえあればこの尖った空気さえ取り払えるはずだ。お嬢様はカップに口をつけて目を開くと待望の一言がこぼされて思わず相手の方を見る、ほぼ同時に相手もこちらを見ていて思わず喜びを滲ませた笑顔を浮かべてしまった。すぐに執事らしい姿勢に戻ると相手がコーヒーの解説を始める、お嬢様はコーヒー好きなようで最初こそ熱心に話を聞いていたが相手の話は全く終わりが見えない。口調こそ執事のものだがいつもの暴走特急が走っているようだ、お嬢様が目を瞬かせたのをみれば慌てて相手の脇腹を軽く小突いて無理やり相手の解説を終わらせる。それをみたお嬢様はクスクスと笑い始めて『本当に二人で一人の執事なのね、貴方達』と楽しげに言われてしまう、だが最初の刺々しい雰囲気はなくなったのなら何よりでこちらも軽く笑みを浮かべて「恐縮です」と答えていた。彼女は笑みのまま花瓶へ手を伸ばすとそこにさされている薔薇へと手を伸ばす、しかし見かねた荒木が素早く近づいてくると『失礼しますお嬢様』と彼女へ声をかけた。自分の客の薔薇は自分が手に入れたいのだろう。荒木は彼女の頬へと手を添え身を寄せると『後で特別なカクテルをご用意しますのでどうぞそれは私に』と吐息がかかる距離まで近づき耳元で囁く、どうやら薔薇を横取りしようという魂胆らしく思わず荒木の方を睨んでしまった。彼女はそれにまた楽しげにくすくす笑うと緩慢な動作で薔薇を取り荒木をじっと見上げる、そして『貴方からの嫉妬って最高』と悪戯に笑えば花びらにひとつキスを落としてから、彼女はこちらへと薔薇を差し出してきた。驚き固まる荒木を他所に『コーヒーの分は二人へ送るわ』と彼女が楽しげに言えば今度は荒木が静かにこちらを睨んでいて)
っ、失礼致しました。…! お嬢様、ありがとうございます。他のコーヒー豆もご用意しておりますので何かありましたらまたお声掛けください。
(熱心に聞いてくれるお嬢様を前にますますテンションは上がり更に続けようとするがその前に脇腹を小突かれてしまう。話が遮られたことに一瞬むっとするもお嬢様が楽しげに笑うのを見れば今が執事であることを思い出して軽く頭を下げる。だがコーヒーの味や二人での流れるような入れ方を認めてくれたようで素っ気ない態度は無くなって何処か満足そうに花瓶の薔薇に手を伸ばしている。だがその間に荒木が割ってきて吐息がかかりそうなほど近付くと美味しい話を囁く。交渉材料をチラつかせる卑怯な手に奪い取られてしまうと焦りが募るが彼女は楽しげにくすくす笑ってから荒木を見上げ、見せつけるようにこちらに薔薇を差し出してきた。彼と同様に一瞬固まるものの相手をちらり見てから代表としてその場に跪いて薔薇を受け取る。荒木推しでも良いと思った物には薔薇を送るタイプなのか、それとも敢えて他者に薔薇を送って嫉妬を煽って更なるサービスを期待する心持ちなのかは分からないが当初狙っていたご主人様の層以外から薔薇が貰えた意味は大きい。同時に油断ならない人物だと認識を改めたのか焦ったようにこちらを睨む荒木に敢えて笑みを向けつつお嬢様にコーヒーのお代わりのアピールをしてから一礼してワゴンと共に一度裏へと戻る。ホールから見えないキッチンの近くまで二人でやってくれば「出だしは思ったより順調だね」と少し小さめな声で相手に現在の成果の話題を振って)
あぁ、助かったぜフィリップ。思ったよりも本来の執事喫茶を求めてるご主人様は多そうだ、このままいきゃ、っ
(荒木が横入りしてお嬢様を直接的に誘惑すればそちらに流れてしまうかと一瞬焦ったが薔薇はこちらへと差し出される。お嬢様が満足のいくコーヒーをいれたのは相棒なのだから相手が受け取るべきだろう、薔薇を受け取る瞬間にこちらも深く頭を下げた。顔を上げるもお嬢様の顔は相変わらず荒木の悔しげな顔を見ていて嫉妬を煽るための餌にされたようにも思うが一本は一本だ。二人でコーヒーをいれたのは軽いパフォーマンスのようにもなって自分達の存在をホール全体にアピール出来たことだろう、こちらを睨む荒木に相手と同じくすました笑みを浮かべながら一旦裏へと引っ込んだ。相手に小さな声で話しかけると頷き応える、新人だからという面も大きいが立て続けに薔薇を貰えるとは順調だ。こちらのスタンスもご主人様に浸透しただろうし荒木派と差別化すればさらに薔薇をいただけそうだ。そう思っていた矢先に上品なホールに似つかわしくない黄色い声が響いてきて言葉が途切れる、ちらりとホールを覗けばちょうど荒木の取り巻きがお嬢様の頬へキスをしているところで「あんなこともすんのかよ」と思わず呟いた。視線を戻せば裏手では先程まで紅茶が並んでいたのに今はカクテル等のアルコールの割合が大きくなっている、イベントはまだ序の口でここからどんどん羽目を外すご主人様が出てくるということだろう、相手に視線を戻せば「こっからが本番みてぇだな。変なことさせられそうになったら呼べよ。さっき助けられた分を返さねぇとな」と口角をあげて)
…なんというか未知の世界だね。…ああ、君も気を付けて。…そろそろ戻ろうか
(二人で裏に引っ込むと一旦執事の役を外して声を掛ける。相手の言う通り丁寧な接客で満足してくれるご主人様が想定よりも多く悪くない状況だ。二人でフォローし合うペアの執事というのも物珍しいようで注目度も高い。このまま行けば一位も夢では無いと思っていると黄色い声が聞こえて一緒にこっそり覗き込む。そこには堂々と頬にキスをする取り巻きの執事の姿があって今まで潜入した違法カジノや組織の取引現場とはまた違った意味での異様な光景に戸惑いの言葉を零す。自分がキスをしたいと思うのは相手だけで仕事とはいえ他の人にしようとは思わないが彼らはそれ以上にこの場で薔薇を貰うことに拘っているのだろう。裏で用意されるものもアルコールが混じっていよいよ本番という気配がすれば相手の言葉に頷く。酔った人間が思ってもみない大胆な行動に出るのは経験済だ。相手にも注意を払うように伝えると用意されたカクテルをトレイに乗せ改めて執事となってホールに戻る。荒木とその取り巻きは変わらずお嬢様と距離感が近く接しているのを横目に目的のお嬢様の元に向かい「こちら眠り姫のカクテルでございます」と言いながら目の前に置く。空になったグラスがある辺り既に飲酒しているようで『ずっとさっきから気になってたんだよね』とご機嫌に言われ、改めて自己紹介の後、先程のコーヒーの技術について積極的に問われると多少フェイクを混ぜながら会話を重ねて)
それは光栄です、フィリップにも伝えておきますよ
(執事がご主人様の肌に触れるのもなかなかだったがまさか頬とはいえキスまでするなんて、あそこまでいけばそれこそホストと変わらないだろう。相手の呟きに頷くが執事喫茶は本来あんな世界ではなくランチタイムまでのような淑やかで上品な空間のはずだ。このまま荒木派に場を支配されるわけにはいかない。相手に「あぁ」と声をかけてからホールへと戻っていった。周囲を見回せばちょうど先程相手が案内していた新規のお嬢様二人のカップが空になっていてテーブルの方へ向かう。ポットから紅茶を注いでいると『さっきのコーヒー凄かったですね!息ぴったり!』と興奮気味に言われ軽く頭を下げて礼を伝える、先程の熱心な視線の中には彼女らのものもあったらしい。自分達もコーヒーを頼もうかとお嬢様が盛り上がっている矢先また黄色い声が上がってそちらを見れば荒木がお嬢様の耳にキスをしているところだった。妙な空気にホールが侵食されるなか視界の端に相手が映る、どうやら他のご主人様と何やら話し込んでいるらしい。相手が他人と話しているだけなのにあの特別な格好を見ているとどうにも胸が苦しくなってしまう。相手に目を奪われそうになっていると『執事喫茶ってあぁいうこともやるんだ』とお嬢様が呟く、その呟きで意識を戻すとお嬢様へと目を向け「あれが彼らのやり方ですが、執事はご主人様に尽くし敬い快適で上質な時間を提供するものだと私は思っております。ですので、もしそちらの方がよろしければ私とフィリップを選んでいただければ誠心誠意心を尽くさせていただきます」と胸に手を当て言えばお嬢様方は目を合わせて笑みを浮かべる。そして一本の薔薇が手に取られると『じゃあお願いします!』とこちらへ差し出された。跪いてそれを受け取ると『こっちはフィリップさんに渡しますね』ともう一本の薔薇が確約されて「恐縮です」とまた礼を述べて)
ええ、私のコーヒーを飲んで下さる方が笑顔になってくれる事が何よりも嬉しくてやり甲斐を感じる一時です。
(熱心にこちらの話を聞くお嬢様に先程のコーヒーに関する知識から自宅での入れ方のコツ、最近飲んだコーヒーの感想などを話す。『本当にコーヒー入れるのが好きなんだ』と言われると普段幸せそうに自分の入れたコーヒーを飲む相手の顔が浮かんで無意識に柔らかい笑みが浮かんでありのままの気持ちを明かした。そうしているとまたホール内に黄色い声が上がってそちらを見ればお嬢様の耳に口付けを落としている。その異様な光景もそうだが手元には貰ったであろう薔薇が3輪程見えて一気に数を重ねる様に胸には焦りが募る。それを横目に見ていたお嬢様が『フィリップ、これ貰える?』とメニューの中でも高級帯のワインを指さす。追加のお酒の注文に内心驚きつつ二つ返事で応えて裏に向かうとワインを持って戻ってくる。付属している薔薇の花を花瓶に挿してからグラスをお嬢様の目の前に置きワインを注ぐ。お嬢様はワインに口を付けて満足そうに微笑むと生けてある薔薇を手に取って『フィリップ』と呼ばれる。薔薇を頂けることを察して跪き、差し出された薔薇に手を伸ばす。だが受け取ろうとした途端薔薇ごとお嬢様の手に包み込まれて思わず顔を上げて彼女の顔を見る。何かあっただろうかと思うも彼女はご機嫌そうな笑顔のまま変わらず握られた手も解かれる様子がない。思わず「…お嬢様?」と問えば『向こうの子もしてたし、これくらいセーフでしょ?』と返される。確かに荒木達の行為に比べれば手を触れ合わせるなどまだ健全な行為だ。それで差をつけられた薔薇が貰えるならば良いのかと迷いを見せながらお嬢様を見つめていて)
……え、…ありがとうございます
(新規のお嬢様の薔薇を貰いブロマイドを渡すと早速袋が開けられる、出てきたのは手を差し伸べる仕草をしている時のもので自分で見るには少々恥ずかしいものだ。だがお嬢様は少々残念そうにしていて『ツーショットあるんですよね?』と聞かれる。戸惑いながらも肯定の返事をすると『えーじゃあもっと薔薇買おっかな…』と呟きがこぼされた。お嬢様が楽しげにブロマイドについて話している間視界の端に相手が入ってそちらへ目を向ける。そこには膝をついて薔薇を受け取る相手がいて、それだけならば良かったのだがご主人様はその手をすぐ離さずに何処かうっとりと相手を見つめている。長い時間あの体勢でいるのだと認識した瞬間に一気に胸に感情が渦巻く、執事が持つべきでない激しい嫉妬の感情で体温さえあがった気がした。意識を完全に相手にもっていかれているとお嬢様から『早く行ってあげた方がいいんじゃないですか?』と声がかかってようやく目線が戻る。くすくす笑う彼女らから『めちゃくちゃ分かりやすい』と言われてしまい困ったように苦笑いすれば礼を言ってその場を離れた。お嬢様に話しかけられたこともあって多少は気持ちが落ち着く、軽く息を吐いてから相手の元へ向かう。未だ熱い視線を向けている彼女と相手が繋がる位置へ手を伸ばすとお嬢様の手を取った。同時に反対の手で相手の手を取るとお嬢様の視界から隠すように背中へと回してそのまま間に割り込むと相手を背後に隠してしまった。お嬢様の視界に入り込んでにこやかに笑うと「そんなにひとりの執事を見つめてちゃ他の執事が嫉妬しますよ。私もそのひとりです」とそれらしいことを言う。嫉妬した対象が違うのは脇に置いておいてそっと手を離すと「私達はお嬢様のお世話をするのが至上の喜び、どうぞその願いを叶えさせてください」と言うもその間も相手の手は背中で握ったままで)
…しょうた、左様。…お嬢様に楽しんでいただけているのであれば私達もご給仕し甲斐があります。先ほどお話させていただいたコーヒーもご用意しているのでまた何時でもお申し付けください
(伸ばした手は捕まえるように握られて離れる気配はない。こうやって触れること自体は確かに先ほど他の人にもしたことで禁止行為ではないのだが手を握られたままアルコールを含んだ熱っぽい目で見られるのはどうしていいか分からない。悪質ではないとはいえお嬢様の体温が自分の手に移り始めると流石に引っ込めようと軽く手を引くが逆に強く握られてしまった。どうするべきかと困っていれば誰かが近づいてくる気配を感じると共に繋がっていた手を取られてお嬢様よりも大きな手に包まれる。顔を向ければ相手の姿があってお嬢様との狭い間に割り込んできて思わぬ行為に反射的に普段通りの名前を呼び掛けて途中で何とか訂正する。相手はまるで存在を隠すように目の前に立って自分の代わりにお嬢様に話をしてくれるがその内容が彼女に嫉妬したと読み取れるものであれば一気に胸の鼓動が跳ねた。もっともらしいことを言いながらこちらから見える表情はにこやかな笑みではあるがその間も二人の僅かな間で手が握られていれば相手の感情が伝わってくるようだ。感謝の気持ちと申し訳なさを込めてぎゅっと手を握り返しながらお嬢様の様子を後ろから伺えば拍子抜けといった言葉が良く似合うように固まっていて更に相手が言葉を続ければ『すみません、調子に乗っちゃって』と手を引っ込めた。何とか分かって貰う事が出来れば相手の手をぎゅっと最後に握ってから離して相手の隣に立つ。今ので嫌な思いをしてしまわぬように言葉を続けつつあくまで執事喫茶の執事とお嬢様であることをアピールすると「お嬢様の気持ちありがとうございます」と薔薇を貰ったことを感謝してブロマイドを渡すと相手に目配せしてからテーブル離れ)
……っ、…ご希望であれば私達がコーヒーをいれますので
(相手をお嬢様から隠してしまいその間もずっと手を握っているのは気が付かないままお嬢様の手を離せばその手は引っ込められる、どうやら事を荒立てずに済みそうだ。安堵していると不意に背後で手を強く握りかえされてそこでようやく相手と手を繋ぎっぱなしであるのに気がついた。目の前のお嬢様からは見えないだろうが周囲の、特に先程の二人のお嬢様には見えていたのではないだろうかと思えば動揺して目が泳ぐ、その間に手は離れて相手が隣へ移動しフォローをいれるがその間も気が気ではなくなんとか一言付け加えるのが精一杯だった。相手が無事に薔薇を貰えたのを確認してチラリと見やればちょうど目が合ってまた心臓が跳ねる、軽く息を吐いて気持ちを整えたところでベルが鳴ってそちらへと目を向けた。今の騒動の間にホールのご主人様は明らかに増えていて目を瞬かせる、呼ばれたのも後から来たご主人様のようだ。彼女らのテーブルに荒木派の執事は近づいていない、というよりお互い牽制しているような雰囲気だ。テーブルへ近づくとオーダーだったようで「お帰りなさいませ、何にされますか?」と会話を交えながら話していれば『君達が清美さんイチオシの執事かぁ』と言われてまた目を瞬かせる。「清美様って…」と心当たりのある方をみれば彼女、ランチタイムにもいたお嬢様がこちらに手を振っていた。どうやら彼女は夏目さんを長い間懇意にしているらしく夏目を推している人達との繋がりも多いらしい。今日彼が欠席だからと来ないご主人様が多かったようなのだが自分達が荒木派と真正面から対立するのを見て夏目派のご主人様に声を掛けてくれたらしい。「心強い援軍ですね」と口角をあげれば『執事喫茶らしいことしてくれるなら応援しなきゃね』と薔薇を差し出され膝をつけば有難くその一輪をいただいて)
お嬢様方の期待に応えられるように務めさせていただきます。
(こっそりと繋いでいた手を握り返すと露骨に相手の目が泳ぐのが分かった。どうやら無自覚だったらしい。先程の宣言通り相手に助けて貰った所でまたホールにベルが鳴る。目を向ければ複数人のご主人様のようで今度は相手と共にテーブルに近付く。その中にはランチタイムの時のお嬢様が居て会話の内容から状況が掴めてくる。イベントが月に一回の開催であり店の目玉に近いものであればその成果は今後の執事喫茶全体に影響する可能性は高い。その為昼間の様子を見て夏目と同じく荒木派に対抗できる力があると思ってくれたのだろう。ランチタイムの行動が実を結んだことに心が弾むと相手が薔薇を受け取る横で自分も頭を下げ、礼と意気込みを口にする。オーダーを承っていればお嬢様達の対応は相手に任せて一旦裏に向かう、その道中荒木派のテーブルの横を通ると相変わらず距離感近く給仕を続けているようだが先程から付いているお嬢様は変わってないように見える。薔薇をくれる人に一点集中という作戦かもしれないがやはり執事喫茶のコンセプトから離れている。横を通る際にジロっと睨まれたが気にもせず裏に戻り注文を伝え、用意されたワゴンをテーブルに運ぶ。ワゴンの上にはコーヒーを淹れる為の一式と数種類のケーキが乗っていて好きな物を二つ選んでもらうスタイルだ。相手とお嬢様の元に戻ってくると「お好きなものを左にお申し付けください」と役割分担を決め、傍らでコーヒーを淹れる準備をして)
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