検索 2022-07-09 20:46:55 |
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あぁ。こちらこそ頼んだぜ、フィリップ。……よし、お前は先にハ.ー.ド.ボ,イ,ル.ダ.ーで帰っててくれ。俺はちょっと散歩して軽く街を見守ってから帰る
(それぞれが背負った罪は一生をかけても償い切れないものかもしれない、しかし相手は名前を託され自分は帽子を託された以上その歩みを止めるわけには行かない。自分達はこの街の探偵でおやっさんがしてきたことを、街の涙を拭うことを決してやめない。おやっさんと自分達が愛するこの風.都のために。そして二人で積み上げてきたものは振り返れば目に見えるくらいには多くなっている、道は果てしなく遠く長いが自分達で得たものを誇る事だって大事なはずだ。その事を伝えて頭を撫でれば不安げな顔から緊張は消えて穏やかな笑みが宿る、手に擦り寄る姿には笑みが溢れてこれだって自分の守りたいもののひとつだと胸が温かくなる。撫でる手を止め相棒に向けて、おやっさんが名付けたその名前を呼ぶ。その瞬間にあの夜と幻とで見たおやっさんの顔が脳裏に過ぎって僅かに瞳が揺れた。しかし直ぐにまた笑みを浮かべると相手に先に帰るよう告げる。本来こんな所で相手をひとりにするべきではないのだがバイクで帰る分には大丈夫だろう、メッキが剥がれないうちにハットに手を添え目元を隠すと「お前もまだ組織から狙われてるんだし、真っ直ぐ家帰って戸締りしとけよ」と冗談めかして言えば背を向けてその場を去ろうとして)
え、…分かった。だけど最近寒くなってきたのだから用が済んだら早く帰ってきたまえ。
(犯した罪は消えないが自分達が積み上げてきたものだって消えることは無い。これが正しいことなのかは分からないが鳴.海.荘.吉の意志を継ぐためにも自分達が出来ることをしていくだけだろう。過ぎった不安は消えてこれからの事を告げれば相手の顔にも笑みが浮かぶ。そうやってこれからの事に期待を宿したというのに相手がこちらの名前を呼んだ瞬間僅かにその瞳が揺れた。ほんの少し、だけど相棒だからこそその変化に気付く。だが相手はまた笑みを浮かべると先に帰るように促してきて思わず困惑の声が零れた。いつもは一緒に帰るのに、今日に限って突き放そうとする。揺れていたはずの目元が隠されてそそくさと背を向けられると縋るように一歩足が前に出るがその要因に検討がつけばそれ以上は動けなくなる。色々言いたい気持ちも言葉も喉元まで出掛けるが全部飲み込んで受け入れる返事をした。だけどもその背がやけに小さく消えてしまいそうにも見えればいつもの相手を真似て早く帰ってくるように声を掛ける。相手が帰ってくる場所があると伝えるように「待ってるから」と言葉を続けた。十分な距離が出来てしまえば小さく息を吐く、言われたまま大人しく帰る気はなくて相手には悪いがバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.トをライブモードにすればこっそりとその背中を追わせた。どれだけ近づこうとも相手と鳴.海.荘.吉の間の感情は上手く踏み込めないでいる、何とも言えない感情を抱えながら再び海に視線を移して)
心配すんな、風邪ひく前に帰る
(押し殺したものが溢れないうちに背を向けると相手がこちらへ一歩踏み出す音がするがそれ以上は近づいて来ない。それに多少安堵しつつ早く帰るように言われて、ダメ押しで待っていると言われるとまた心は温かくなった。背を向けたままひらりと手を振って返事をすればそのまま真っ直ぐと歩いていく。相手は誰よりも信頼できる相棒で更には何よりも大切な恋人だ。どこよりも安心できるのは相手の隣なのだが今はひとりになりたい。せっかく相棒として励ましたばかりだというのに相手に格好悪いところは見せられなかった。心穏やかではないまま歩いていれば後ろから着いてきているものがあるとは気が付かずに歩みを進める、この時間の港には人気がないがさらに奥へと歩いて波止場にたどり着くとこの世にひとりではないかと思えるくらいに周囲は静寂に包まれて聞こえるのは波の音だけだった。海に向かって、あの夜にいた場所に向かって座れば遠くを眺める。幻の中であの夜を繰り返す事になったがおやっさんの死は変えられることがなかった。あの時おやっさんの言いつけに背いた瞬間におやっさんの運命は決まってしまっていたという事だろう。憧れの人が地面に倒れていく姿が脳裏に浮かぶ、ひとりでその瞬間を思い出せば途端に上手く息が出来なくなってゆっくりと項垂れた。あの夜のことは決して忘れやしないがおやっさんが死んだその事実だけは何度思い起こしても上手く感情をコントロール出来なくなる。それを幻とはいえ再び経験させられた身はまともではいられない、一度震えた呼吸を吐き出せばもう止めることは出来なくて瞳からは涙が溢れた。涙の粒は次第に大きくなり嗚咽が漏れる、ハットに手をやって目深に被るが隠し切れる量の涙ではない。あの幻の中ではハットからおやっさんの匂いを感じたが今被るこれは自分で用意したものでおやっさんの気配は感じられない、そんな分かりきったことが今はどうしようもなく悲しくて寂しくて人目のない場所で大粒の涙を流しながら「おやっさん……」とただ今はいない憧れの人の名前を呼ぶことしかできなくて)
…、……………
(暫くそうして海を見ていたがス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンで相手の様子を確認する。そこには波止場と思われる場所で1人座り込んだ相手が写っている。普段ならば悪戯で追跡をすれば大体は気付かれる事が多いが今はそれ所じゃないらしい。暫く海を見続けているようだが徐々にその顔は俯き、その体が震えたように見えた。そして少し離れたカメラからも零れ落ちた涙が光を反射したのが見えると一人にした方が良いだとか踏み込めないだとか色々悩んで澱んでいた気持ちが一気に吹き飛んで腰がけていたバイクから飛び降りる。この街の涙を拭うことが探偵としての仕事ではあるが、フィリップとなった時最初に拭いたいと思ったのは相棒の涙だ。やるべき事ではなく自分がしたい事をする決断が着けばその足を急いだ。波止場に着けばその背中はすぐに分かった。沈んだ背中に直ぐにでも駆け寄りたい気持ちを押さえつけて、ある時に教えてもらった探偵のいろはで足音を殺して相手に近付く。そしてすぐ側までたどり着けば「喜びも痛みも分け合うのが相棒じゃなかったのかい」と声を掛けながら目は合わせず、嗚咽を零す相手の右横に座って海を眺めて)
…な、…フィリッ、プ……しょうがねぇだろ……こんなの、ハードボイルドじゃねぇし……
(目元の涙を隠すはずのハットを目深に被ってみても到底隠しきれない量の涙が両目から溢れ出す。嗚咽を漏らしている間も脳裏に浮かぶのはおやっさんとの数々の思い出と死の瞬間で周囲を気にする余裕など全くなかった。コントロールの効かない感情のままに項垂れていると突然右隣から相手の声が聞こえてきて思わずそちらを見る、幸い相手の視線は海を向いていて涙でぐちゃぐちゃになった顔を見られなくて視線がこちらへ向かないうちに慌てて顔を逸らした。確かにあの幻の中で全てを分け合うのが相棒だとは言ったが自分でもどうしようもないこの感情をどう処理していいか自分でも分からなくてましてや共有の方法はもっと分からない。相手と相棒としても恋人としても過ごす中で飾らない心のまま隣にいることが出来るようになってはいたが、この痛みはまだ相手にきちんと見せていなかったものだろう。無理やり涙を止めようとしながら時折鼻をすするがそれでも感情は落ち着かない。せき止めようとした涙を時折落としながらゆっくりと右隣へと手を伸ばした。そして指先を相手の手の甲へと触れさせる、いつもの温かさに今は酷く安心を覚えて震える息を吐き出した。暫くそのままで黙った後に「…全然、慣れねぇんだ……おやっさんが死んだこと…」とポツリと言葉を零して)
そんなの今更だろう。……ああ、君がずっと背中を追いかけてきた人なのは知っているよ。
(近づいてもこちらに気付く気配はなく、そのまま右隣に座れば慌てたような視線と声を感じた。敢えてその姿を見ずにただ隣で海の方を見ていれば鼻をすするような音に混じって強がるような声が聞こえる。きっと今の相手にとって鳴.海.荘.吉の喪失はずっと塞がることの無い傷であり、一番心の柔らかい所なのだろう。そこを無闇矢鱈に触るのは躊躇われて視線は前を向いたまま、ただ隣で同じ時を共有しようとすればゆっくりと手が近付いてきて指先が触れる。相手の様に上手く言葉が伝えられない代わりに軽く指を絡めるようにそこを握って自分がそばに居ることを伝えながら暫く海風に当たっていた。それからどれくらい経っただろうか、相手がぽつりと言葉を零したのを聞けば静かな声でそれに応える。地.球,の.本.棚で二人がいつ出会ったのか、弟子入りを申し出て断られる日々も何をしてきたかも文章としての事実では知っている。だがそれでは到底計りきれない程の強い感情や思い出が大切な人との日々に宿ることを相手との関係の中で知っている。いつの日か相手の願った幸せな世界にも鳴.海.荘,吉の姿はあった。そんな存在を亡くしてしまった悲しみや寂しさがどれだけのものか自分には想像することしか出来ない。相手には泣いて欲しくないと思うがそれ以上にさっきのように無理に笑みを浮かべることをさせたくないと思えば「…別に無理に慣れる必要も無いだろう、君のその感情はそれだけ鳴.海.荘,吉を大切に思っていた証拠だ」と言葉を続ける。そしてもう少しだけ距離を詰めるようにして座り直すと「…ここは波の音が大きくて見える海も綺麗だから他の音がしたり何かが触れても気付きそうにないね」と独り言のように呟いて)
大切に…でも、おやっさんは……俺のせいで…
(ひとりでいる為にこんな人気のない所まで来たというのにいざ相手が隣に居ることが分かればその存在を確かめたくて指先を触れさせる、触れた手に軽く指が絡まるとより相手の存在を強く感じてせき止めていたものがじわじわと溢れ出してくる。相手の言葉を拾い上げて繰り返すも後悔は止まらなくて悲しみも寂しさも埋められなくて弱々しく呟く。後悔をして弱音を吐く暇があったら探偵の魂が宿るこの帽子を被ってひとりでも多くこの街の涙を拭って罪を償うべきだと、そう分かっていて実際先程相手にもそう言って励ましたと言うのに、おやっさんの事となると理屈より感情が上回ってしまう。自分でもどうしようもない感情に沈んでいると相手の体がさらに近くなってこちらを慰めるでもない独り言が呟かれた。しかしそれは下手な言葉や行動ではなくこちらの全てを受け入れてくれるもので、きっとどんな言葉を言われても癒えないこの痛みに対して静かに寄り添ってくれる相手の存在がただただ有難く瞳に涙が浮かんで視界が霞む。沈んでいた心に温かなものがじわりと広がっていよいよ我慢が効かなくなる、こちらからも少しだけ体を寄せると体を傾け相手の肩に額を当てて顔を隠す。相手の存在を感じながら視界が塞がればもうダメだった。一筋涙が頬を伝う、そこからはもう制御が効かなくて涙が次々溢れ出すと声さえ我慢出来なくなって嗚咽を漏らしながら再び泣いた。体が震えて大粒の涙が相手の服へと落ちていく。僅かに絡まった指に無意識に力を込めながら何を言うでもなくただただ涙を流していて)
…………、
(伝えたいと思ったことは伝えた。相手から視線を逸らして今から起こることには何も気付かないと前置きを起きながら距離を詰める。きっと相手の抱いた傷や感情はこちらが何をしようとも癒えたり消えるものでは無い、ならば自分が出来るのはただ傍に居て一人では無いことを伝えながらそれを受け入れることだ。黙って海を見続けていれば相手の体が傾いてこちらの肩に額を預け顔が埋められた。それから少しずつ我慢していたものが溶けていくように涙が溢れありのままの嗚咽が聞こえてきた。相手が零した温かい涙が服を濡らしていく、絡めていた指に力が込められるとそっと相手の涙を隠してしまうハットを取って自分の膝に一旦置いておくと繋いでない方の腕を相手の背中に軽く回して震える体を抱きしめ、もう少しだけ体重をこちらに預けさせる。そして相手が感じる痛みや悲しみが少しでも軽くなるように願いを込めて優しく後頭部を撫で始めた。何も言うことなく、その体勢のままただ相手の感情を受け止め生きている確かな体温を共有しながら相手の気が済むまで頭と背中を交互に撫で続けて)
………………
(相手の肩に額をあてて溢れるままに涙と泣き声をあげる。一度溢れ始めてしまえば止めることなど出来なくて、しかし相手が黙って傍にいてくれるのが何よりも温かい。泣きじゃくっている間にハットが取られて背中に腕を回されると温かな体温に包まれる、この世で一番安心できるいつもの心地に体の力は抜けて導かれるままに相手の方に体重をもう少し預けると繋いでいない方の手を相手の胸板に添えてそこへ縋り付くように服を握りしめた。やがて相手の掌が後頭部へと乗ってそこを撫で始める、今だ胸は苦しくて涙は止まらないが頭と背中とを優しく撫でられれば温かな心地はさらに広がって顔を隠しながらも肩へと擦り寄って嗚咽を漏らした。そうやって暫く相手に抱きしめ撫でられながら溢れる限り涙を流していると胸に膨らんでしまった後悔と悲しみと寂しさがゆっくりと相手の体温と共に自分の中へと溶け込んでいく。決して消えるわけではない、ただなりを潜めるだけできっとあの夜とおやっさんを思い出す度に何度でも強く思い出される感情だが、相手の存在を感じながら溢れてしまった分を全て吐き出してようやくぐちゃぐちゃになった感情は落ち着きを取り戻していった。顔は未だに酷い状況で目を合わせることはできない、その代わりに両腕を相手の背中へと回してその体を強く抱き締めると「ありがとう、フィリップ…俺の隣に居てくれて、ありがとう…」と涙で枯れ果てた声で小さく口にして)
…少しはすっきり出来たかい? 僕は君の相棒だからね、どんな時も、これからも、ずっと傍に居るよ
(相手の頭を優しく撫で始めると縋りつくように胸のあたりの服が握られて泣いている相手にただただ寄り添う。そうしていれば少しずつではあるが嗚咽は治まっていき、落ち着いていくように見えた。その様子をこっそり観察しながらも相手を撫でる手を止めないでいれば服を握っていた手から力が抜けていくのが分かり、優しく小さな声で問いかける。相手の両腕が背中に回って強く抱きしめられる、顔は隠されてしまって伺い知ることは出来ないが少しでも先ほどよりマシになっているように見えれば密かに安堵した。こちらからも軽く抱きしめ返していれば泣きつかれたような枯れ気味の声でお礼を言われて小さく笑う、やはりあのまま帰らずに決断して正解だった。あの夜には確かに最悪の別れをしたが同時に新たに結んだ相棒という関係性を口にすれば自らの存在を示すようにぽんぽんと背中を撫でてずっと傍に居ることを告げる。決して彼の代わりになれる訳ではないが思い出して相手が悲しむ所に寄り添うことは出来るはずだ。「だからいつでも頼ってくれ」と言葉を続けると抱きしめる腕に力を込めて見せ)
…、……あぁ、そうだな。お前はあの夜から俺の唯一無二の相棒だ。だから、…またこんな風になっちまいそうになった時はお前の隣にいくから
(整理が付けられないくらいにむちゃくちゃになってしまった感情はようやく落ち着いて嗚咽は穏やかな深呼吸へ変わっていく。優しく小さな声が鼓膜を揺らせばそれだけで胸はもっと穏やかになって小さく頷き応えた。こちらから抱き締める腕に力を込めれば相手からも抱き寄せられる、あの夜に相手とは運命さえ共にする相棒という関係になって今も変わらず隣に存在している。喜びも痛みも分け合う大切な存在、そんな相手から背中を優しく撫でられて改めて傍にいるのだと言われると胸にはまた温かなものが広がった。おやっさんを失った痛みは消えることはなく何かで代替できるものでもない、しかしこの痛みを思い出したとしても今のようにただ傍に相手がいてくれるのなら何度だって顔を上げられるだろう。相変わらず相手に顔を見せないように僅かに顔を肩から外して腕で涙を無理やり拭う、そして顔をあげて相手と目線を交わした。まだ目は真っ赤で頬には涙の跡が残っているが今度は感情を隠すためではない心からの笑みを小さく浮かべて返事を返す。ひとりで泣き腫らしてもいつかは立ち上がって家に帰ったのだろうがこうやって穏やかな気持ちでいられるのは間違いなく相手のおかげだ。相手の頬に手を添えて真っ直ぐと相棒の瞳を見つめると「頼りにしてるぜ、フィリップ」とその名前を呼んで)
…是非そうしてくれ。こうやって傍に居ることしか出来ないけど君の痛みや悲しみも受け止めたい。…ああ、僕も頼りにしてるよ翔太郎。
(自らは相棒だと告げて幻想の中で相手が言っていたように喜びも痛みも分け合う存在であることを伝えるように背中を撫でながら想いを口にする。そうしていれば相手は涙を拭うような仕草をしてから顔を上げる、こちらを向いた顔は目が真っ赤で涙の跡もありのまま残っているがその表情はス.タ,
ッ.グフ.ォ.ンで見た沈んだ物ではなく前を向いた明るい物で自然とこちらも小さな笑みが浮かんだ。自分には何も出来ないからと遠慮がちになっていた節があったが自分の存在が相手の助けになるのならばこれほど嬉しいことは無い。相手が格好悪いと思うであろう部分まで共有して寄り添いたいのだとありのままの気持ちを明かした。頬に手を添えられると自然と視線は相手の方を向く、そして全幅の信頼の言葉と共に名前を呼ばれると胸に温かい物が満ちて嬉しそうに目を細めると同じ言葉と名前を呼んだ。あの夜を再び繰り返す体験をして心を大きく乱してしまったが相手のおかげでまた明日からもこの街の涙を拭って平和を守ることが出来そうだ。穏やかな気持ちではあるがふとさっき相手が先に帰るように言っていたのを思い出すと「風邪をひく訳にはいかないし、そろそろ一緒に家に帰ろうか」と【一緒に】をやけに強調するような口調で声を掛けて)
何言ってんだ、傍にいてくれるだけで十分すぎるくらいだ。…俺ももう、ひとりで抱え込んだりしねぇ
(赤い目のまま視線を交わして相手の言葉には小さくまた笑う、相手は謙遜して傍に居ることしかというがそれが最も重要な事なのだ。ただ隣にいてくれるだけで、抱き寄せてくれるだけで、頭を撫でてくれるだけで、痛みを抱えていた心はもうこんなにも温かい。自分の格好悪い部分は大概相手に見せたと思っていたが今回で無意識に隠そうとしていた所さえ相手に晒して受け入れられて包み込まれて、こうなればもう遠慮するものは何もないだろう。こちらも痛みを分かち合うことに躊躇しないことを相手の瞳を見つめながら誓った。相手とこれからも自分が定義した相棒であり続けることをまた決断したところで海風は一段と冷たくなっていく、そろそろ二人の家に帰る時間のようだ。相手に強く一緒にと言われ帰宅を提案されると口角をあげて「あぁ、俺達の家に帰ろうぜ。もちろん相乗りでな」とこちらからは【相乗り】を強調して返事をした。ス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.でハ,ー,ド,ボ.イ.ル.ダ,ーを呼び寄せると傍に着けたバイクに先に跨ると相手の方へ目をやって「一緒に帰ろうぜ」と声をかけて)
僕達はそうでなくては。…ああ。じゃあ家まで事故を起こさずに頼むよ、相棒。
(自分が側にいるだけで良いと言われると擽ったい気持ちになる。そしてあの夜に関する傷まで見せてくれて共有することを伝えられると安堵したような笑みを浮かぶ。これからもきっとふとしたタイミングや何かの事件で自分の存在意義に迷ったり過去の深い傷が痛みを発したりすることもあるだろう。だけどその度にこうやってお互いの痛みや体温を共有して分かち合えば良い。改めて相棒という関係性の特別さと何度でも相手の隣に立つことになる運命を噛み締めながら一緒に帰宅するのを提案すれば相手の口角が上がって【相乗り】の返事がされる。あの夜から今日までも続く響きに上機嫌に声を弾ませると相手に続いて立ち上がった。呼び寄せたハ,ー,ド,ボ.イ.ル.ダ,ーがやってくると相手が先にバイクに跨る、そして誘うような視線を受けると嬉しそうに笑って直ぐさまその後ろに乗って相手の腰に腕を回す。1人ではなく二人でこの街に帰ってきてあるべき場所に帰ることの出来る幸せを覚えながらからかい混じりに言葉をかけると頼りになる相棒に腕に力を込めてハンドルを任せて)
(/いつもお世話になっております。そろそろ区切りが近いかと思いお声がけさせて頂きました。念願の初めの夜のお話でしたが出会ったばかりの噛み合わない二人から衝突などを起こしながら相棒だと認め合う所まで出来て本当に良かったです。探偵君がおやっさんのことを大切に思ってるのが凄く伝わってきてそれに影響を受けて変わっていく検索の描写も色々出来てとても充実したお話でした。帰ってきてからもトラウマを刺激されて寄り添う相棒としての二人のやり取りが出来たりと好きな展開の連続でドキドキとワクワクしながらお返事させて貰いました。今回もありがとうございました!
このまま少し進めて夜寝るまでの二人のやり取りをしてもよいですし、ここで区切って新しく話を進めても良いなと悩んでいるのですが探偵様はいかがでしょうか。)
大事な相棒乗せて事故るわけにはいかねぇな。任せとけ
(バイクに跨り相手を誘えばその顔には嬉しそうな笑みが灯って相手は後ろへと乗り込む、腰に腕を回されれば姿が見えなくとも相手の存在を強く感じて自然と笑みが漏れた。揶揄うような言葉には調子よく返事をしてエンジンをスタートさせるとバイクを発進させる。海沿いの道を走りそのまま街の方へとバイクを走らせる、自分達を撫でながら流れていく風.都,の風は何時にもまして心地よくて二人を迎えてくれているようにも思える。あの夜からここまでの道は決して平坦ではなくてこれから行く道だって今日以上に傷ついたり迷ったりする日もあるかもしれない。だがそれも相手が隣にいればきっと歩んでいける、何せ相手は喜びも痛みも分け合う大切な相棒なのだから。何度でも相手に寄り添って何度でも相手に弱音をはいて、そうやって進んでいくのだろう。バイクはやがて市街地を走り抜けて自分達の家の前へとたどり着く、バイクを停めて階段をあがっていけばいつもの扉が見えた。お揃いで持つ鍵で玄関を開けてくぐれば「ただいま」と声に出す。暗い幻に閉じ込められていたのも相まって相手と共にこの家に帰って来れたのが何よりも嬉しくて後ろを振り返り相手が玄関をくぐっているのを確認すればそれだけで口元には笑みを浮かべて「おかえり」と続けて声をかけて)
(/こちらこそお世話になっております。イフなお話でしたがここの二人ならではの初めの夜が出来てとてもとても楽しかったです!本筋ではおやっさんによって繋げられた絆でしたが、今回はおやっさんを通じて少しずつお互い手繰り寄せるように歩み寄って最終的には相乗りする相棒になるまた違った絆の結び方ができたなと思います。検索くんも探偵も互いの得意なことで困難を突破するカッコイイところも出来ましたし、現実に帰ってからもお互い寄り添ってまた歩き出すところまで最後まで楽しませていただきました。好きな展開詰め込みましたがどの瞬間もハラハラドキドキで毎回お返事書くのが楽しみでした。
こちらも迷ったのですが次のお話の前に少しだけ二人だけの時間が欲しいなと思いましたのでこのまま続けさせていただきました!もう少しだけ後のお話を楽しんだあとまた次の展開ご相談させてください/何も無ければこちら蹴りで大丈夫です!)
ただいま。…何だか漸く帰ってきたような気がするね。
(相手にからかい混じりの言葉を投げかければ調子の良い返事が返ってきてバイクが発進する。あの時は知らなかった潮の匂いも街へと続く道の景色も肌を撫でる心地良い風も今では馴染み深い物でここに生きていることを強く感じる。これからも唯一無二の相棒と共に助け合って、時には今日のように寄り添って何度でもその手を取って先に進んでいくのだろう。未知の未来の予想に口元を緩めながら相手に抱きついて走り抜けていく街の姿と腕の中の相棒の存在を確かめていた。そうして言えばバイクは二人の家の前に辿り着く。バイクを降りて階段を上がり、相手が鍵を開けて中へと入ったのに続く。すると先に入った相手がこちらへと振り返って出迎えの言葉を告げる。一瞬目を瞬かせるもその意味を理解すると相手の目を見ながらそれに呼応する返事を返す。靴を脱いで中に入れば肉体的な疲れはそれ程ないがあの夜をもう一度体験した精神的な疲れがどっと出て苦笑いしながら感想を口にする。それを癒す為にか気付けば相手の元に近付いてその身体を緩く抱き締めると「今日はこのままお風呂に入って寝てしまおうか」とくっついたまま提案して)
だな、今朝もこの部屋にいたのに。……あぁ、そうしようぜ。今日は、…まぁ毎日だけど……お前の隣で寝たい
(共にこの家に帰ってきたことが妙に嬉しくて声をかければ相手から返事が返ってきてまた妙に嬉しくなる。靴を脱いで部屋に上がれば相手に同意するよう頷く、実際の時間はほんの短い時間だったはずだが幻の中ではあの夜からの数日間と島を脱出する日を経験したわけで体感としては数日ぶりの帰宅だ。しかも幻の中では薄暗い空間に閉じ込められ命を凌ぎ合う緊迫した時を過ごしたのだから精神的疲労は想像以上に膨れているだろう。相手の体がふらりと近づいてこちらへと抱きつけばこちらからも腕を回して相手の背中をゆっくりと撫でる、先程散々こちらの気が済むまで寄り添ってくれたのだから今度はこちらから相手に返したい。とはいえ緩く抱きつけばこちらも同時に疲労は癒されてゆっくりと息を吐き出す、二人きりの空間に帰ってきたのならば相棒からもうひとつ加わった関係、恋人の距離で二人の時間を過ごしたい。幻のおかげで数日相手が隣にいない気分を味わったのだからその分を取り戻したかった。顔をあげて少しだけ体を離すと視線を交えて「先に風呂入ってこいよ。早く二人でゆっくり寝ようぜ」と声をかけて)
僕も同じくだ。 じゃあ先に入ってくるよ、直ぐに戻るから。
(幻の中で数日過ごし、その場所もあの心休まることのない研究所の中であれば凄く長くあの場所に居た感覚がする。その疲れや緊張を癒す為にふらりと相手に近付いて抱き着くと相手からも腕が回されて背中を撫でられる感覚に無意識に息を吐き出す。今日は他になにかする気にもなれずに早めに寝てしまうことを提案すると相手から賛成の返事がされる。一緒に寝たいと願う言葉にぽつりと毎日であることが付け足されていると思わず笑ってしまうが相手の温かな体温を抱いて眠りたいのはこちらも同意だ。顔を上げた相手に先に風呂に入るように促されると名残惜しそうに腕を解きながら素直に頷く、一人にしてしまう相手に子供扱いするように直ぐに済ませてくるように告げると風呂へと向かった。服を脱いで頭からお湯を浴びればその温もりに疲労が染み出してくる、約束を守るために手早く頭と体を洗ってから流し、十分に体が温まった所で浴室を出た。体を拭いて相手の色である紫の寝間着を身に纏うと髪を拭きながらリビングへと向かう。「上がったよ、翔太郎」と言いながら既に気持ちが溢れると一直線に相手の元に向かうとその頬に軽くキスを落とす。それから相手を見つめ「君も早く入ってきたまえ」と相手にも風呂に入ることを促して)
おかえりフィリップ。…、…あぁ、俺もとっとと入ってくる
(二人の家に帰ってきて正直もう片時も離れたくない気分だったが一緒の時間を過ごすためにも一旦離れなくてはならないらしい。体が離れて失われていく体温に名残惜しさを覚えながらも相手を風呂場へと見送った。相手が体を洗う間に帽子をいつもの場所へとしまう、おやっさんが使っていたものは事務所に置いてあるがこれが探偵の魂であるのには変わりない。しばらくそれを見つめて小さく笑ったあとに目線を外して他のものを片付けて言った。しばらくもしないうちに相手が風呂から上がってくる、いつもより入る時間は短くて早く二人で眠りたいのが伝わればいやでも口角は上がってしまう。もちろんそれはこちらも同じだ。相手は一直線にこちらへとやって来て頬にキスを落とされるとますます口角と気持ちは上がった。次はこちらが風呂に入る番で返事をすると相手の肩に手をかけ頬の中心よりも唇に近い場所へキスを落とす、とっておきは後のお楽しみだ。楽しげに笑みを浮かべながら浴室へと向かうといつもより手早く体を洗って温かいシャワーを浴びる。それでも疲労は取れるのだが全てを流し去るには到底足りない。いつもより早い時間で風呂から上がるといつも通り相手の色の寝間着を纏ってリビングへと戻ってきて「あがったぞフィリップ」と声をかけつつ真っ直ぐ相手の元へ向かえばそのまま緩く抱きついて)
おかえり、…風呂上がりだから温かいね。
(風呂から上がって溢れる気持ちのまま頬にキスを落とすと分かりやすくその口角が上がって気持ちまで温かくなる。風呂に入ることを促すと今度は相手の方から唇の辺りに口付けがされて無邪気な幸せとちょっぴり物足りなさを覚えた。それは後から十分にやってもらおうと考えながら「行ってらっしゃい」と風呂場に行く相手を見送った。一人になれば手持ち無沙汰で何となくカーテンを開けてこの街の景色を見る。あの日はそのまま事務所に戻って事務所の椅子に縋って泣きじゃくる相手をただ見ることしかしなかった。それから暫くは何となくぎこちなく暮らしていて自分もガレージのソファーに体を丸めるように寝ていた。それが今では相手の家に転がり込むようになって一緒に寝ようとしているのだから随分と変わったものだ。感慨深くこの街の景色を見ていれば背後から風呂から上がってくる音が聞こえてカーテンを閉めて振り返る。そこには自分の色を纏った相手の姿があり一目散にこちらに抱きついてくると小さく笑いながら出迎えの言葉をかける。こちらからも腕を回して緩く抱き着くと風呂上がりの体はぽかぽかしてて心地好く、軽く擦り寄りながら感想を口にする。これならばよく眠れそうだと口元を緩め「もっとくっつきたい」と素直なわがままを告げると緩く抱きついたままベットの方に相手ごと移動して)
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