検索 2022-07-09 20:46:55 |
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っ、ナイスだフィリップ!___俺達が目指すのはダストエリアだ。ゴミは一箇所に集められて定期的にこの島の外に出てる。今日は回収船が来る日だ、それに紛れて脱出すんぞ
(夜の時間まで待てなくなってしまった今、脱出はこの瞬間から始めるしかない。男を締め上げ意識を落とそうとするが男は抵抗しながら通信機器を取り出して冷や汗が額を伝う。しかし相手が素早く通信機器を取り上げて形勢は逆転した、思わず相手を誉めながら男の意識を奪う。こうなってはもう止められないが相手も覚悟は決まったようでそのまま名前を呼ばれて腕を掴まれると部屋の外へと走り出した。いずれあの部屋から運.命,の.子.と監視役の実験体がいなくなり研究員が倒れているのが見つかる、もうここを脱出するまで一時も止まってはいられないだろう。誰もいない研究棟を走りながら行き先を聞かれれば改めて脱出ルートを説明する、といっても理屈は簡単だ。この島から出ているのは何も人だけではない、ゴミの処理はこの小さな島では賄いきれないらしく一箇所にゴミを集め定期的に島の外へと運び出しているようだ。実験の合間にゴミを専用のルートで運んでいく職員をみかけたことがある、もうすぐ回収の日だなんだと話しているのが聞こえ回収船が来る日を割り出したというわけだ。ロックされた研究室の窓越しに物品搬入用のエレベーターを見つけると「フィリップ、この部屋入れるか?あそこから抜け出そうぜ」と声をかけ)
…なるほど。メモリと違ってゴミならその建物を出る時の検査は無い、悪くない策だ。…ああ、
(移動しながら脱出経路に着いて聞けば予想もしない答えが帰ってくる。だがその理由を聞けば納得のいくものでこの騒動の中で逃げるならば一番可能性のある手だ。被検体の立場でそこまで調べられていたことに驚きと関心を抱きつつ素直に頷くと目的地を頭の中に定めた。といっても研究エリア以外は立ち寄った事がなくダストエリアは未知の場所だ。そうして研究棟を移動していれば相手が物品搬入用のエレベーターの存在を見つけて足を止める。ものを運ぶ用途の物なら搬入搬出のルートに繋がるはずだ。そこに行くための研究室のロックの解除を頼まれると施錠部分に近付く。自分の生体認証では突破出来ないタイプのものだったがこのタイプのセキュリティは裏コードで解けるはずだ。目を瞑り意識を集中させて地.球.の.本.棚を開くと設置した型番や情報からこの施錠のセキュリティコードを探る。条件が分かれば絞り込むのは簡単で直ぐにコードが出てくれば液晶にそれを打ち込み、電子音とともに解錠された。早速中に入りエレベーターのボタンを押して自分のたちの階まで呼び出す。だがそのタイミングで無人だった研究棟の警告灯が急に光り『最重要監視対象とB級実験体一人の逃亡を確認、全職員は最優先事項として彼らの身柄を押さえよ』と事態に気付いた研究員による警報がスピーカーから流れた。もう事態に気付かれた焦りが募る中エレベーターが着けば開いたその中に相手の手を引いたまま飛び乗って)
そこは良い作戦だって言えよ。……お前、今どうやって…っ、…
(相手に研究室のロック解除を頼む、当然掌をかざしてあっさり突破できるものかと思ったがそうでもないらしい。どうするのかと声をかける前に相手はその場で目を瞑って動かなくなってしまった。一刻を争うこの時に何をやっているのかと焦って話しかけようとするがまたも声をかける前に相手の目が開く。そして迷いなくコードを打ち込むとあっさりと扉は開いて呆気にとられてポカンと口を開けた。まるでエスパーな手法に戸惑いつつ中へと移動していれば警告音が鳴り響いて緊急事態を知らせるアナウンスが鳴り響く、「もうバレたのかよ」と悪態をつくがあの研究員を締め上げた時からもう止まれやしない運命なのだ。ここからは悪魔の選択を選ばないように決断をし続けるしかない。エレベーターの扉が開くとその中に飛び込んで軽く息を整える、搬入搬出路に出られるのはいいがここからダストエリアへの道は分からない。もう逃げ出した事がバレているのなら迅速に、かつ見つからないように移動しなければならないだろう。先程相手が分からないはずのコードを導き出したのを思い出せば「なぁ、このエレベーターからダストエリアの道って分からねぇのか?さっきみたいにこう、目瞑って」と聞いてみて)
僕が出来るのはこの地球に関しての知識を絞り込んで探す事とその内容を見ることだ。さっきのはその施設に使われているセキュリティの種類と割り当てられた識別子から情報を絞り込めたけど、この研究所の名前や住所などが分からなければ地図の知識を得るのは不可能だ。
(気絶した研究員を見つけたのかそれとも今の正規ではない解錠を検知したのかは分からないが施設内に警告音が響き始める。指示通りに彼らは全力を上げて自分達を捕まえに来るだろう。二人でエレベーターに飛び込むと自動で一階が選択されて動き始めた。天井で作動している監視カメラをちらりと見ながら息を整えていると相手から何とも曖昧な言い方で尋ねられ、視線を向ける。何やら先程の手法を勘違いされているようであれば自分が普段知識をすくい上げる為の方法を説明する、提示された条件を元に無数の本棚から一つを絞り込むのは出来るが逆を返せばその情報が確かで無ければ何も出来ない。ハッキリと不可能だと言葉を返すが唇で指先で触りながら考えると「…君は何かこの施設について知っているかい?」と問いかけ)
情報を絞り込んで探す、検索みたいなもんか。…住所なら絞りこめるかもしれねぇ。俺が今から言う条件に当てはまるとこをその地球の知識ってやつから絞り込んでくれ
(相手の視線が一瞬上を向いてつられてそちらを見ると監視カメラがみえる、こちらの動きは向こうに筒抜けと言ったところか。となればより迅速に動かなければならないが正確なルートが分からなければ袋小路に追い詰められる可能性もある。先程目を瞑っただけで暗証番号を解いてみせた相手ならば何らかの力でどうにか出来るかもしれないと聞いてみたがそうも簡単な方法ではないらしい。地球の知識とはまた膨大な量で普段ならば疑わしい所だが一蓮托生だと言っているこの状況で相手が嘘を言っているようには思えない。相手の言い様から先程の行為は検索を行い結果を導き出したのだと解釈する、となればこの場所だって同じく検索すれば住所が分かって地図が得られるかもしれない。自信を顔に宿すと相手に検索を頼む、風.都にある港を基準に船に乗っていた時間とスピードと方角から考え海上の範囲を絞り込み島の凡その大きさを伝えると「ただし建物はカモフラージュされてて外からは見えてねぇ。だから条件には無人島を追加してくれ」と検索のキーワードを伝え終わると結果が出るのを待って)
…分かった、やってみよう。 …無人島、…条件が当てはまる島が3つ、その内現在公に人の出入りのないはずの島は…これか。……閲覧を完了した。建設当初の構造だけど場所の配置は把握した。
(自分が地.球.の本.棚から知識を得る仕組みを説明すれば相手はおおよそを理解したようだ。メモリを作る際は詳細にその情報を指定されていたためすくい上げるのは簡単だったがその条件が分かっていなければ難しい。だが外部から侵入した相手ならば一発で分かるような的確なワードでなくても何か知っているのではないかと問いかける。するとその表情は自信に満ちたものに変わり、言われるままに目を閉じて地球に接続した。外から相手の声によって条件が与えられていく。特定の港から行くことの出来る海上の範囲とその大きさ、そして無人島であることを唱えれば目の前の本棚は次々に減っていき3冊の本が残る。そこから無人島の中でも公に人の出入りや利用がされていない場所を絞り込めば1冊となった。その本を取り出し必要なページを開いて脳内に情報を入れると意識を浮上させ目を開く。得られた情報は増設前の一番初めの建物の内装地図だがゴミ捨てなどの位置はその頃から大きくは変わらないはずだ。相手の方を向いて淡々とその結果を告げたタイミングでエレベーターが目的階に着く。そこから降りてずらりと並ぶ扉の一つに入ると「あそこから真っすぐ行くことも出来るようだけどこっちの配管整備の道の方が監視カメラに映らないはずだ」と言いながら一旦階段を降りて配管の通る道を進んでいき)
よし!建物の下層ならそうそう構造は変わらねぇはずだ。これでルートはバッチリだな……なら、コソコソ進むか
(こちらが地球の知識を使った検索を頼むと相手は集中するように目を閉じる、目を閉じるのは検索する時の癖のようなものなのかもしれない。この島の場所を特定するような情報を相手に伝えていく、固唾を飲んで見守る間相手は特に動くことは無かったが該当の島は3つに絞られ更に検索条件が追加されればやがて相手の目が開いた。そして地図情報が手に入ったと聞けば思わず拳を握ってガッツポーズをする、これで迷わずダストエリアまでたどり着けるだろう。最短ルートを通るべきかと思ったが相手は階段を降りた配管設備の道を選択して頷き後を進む、薄暗い道だが一旦は監視の目から逃れられそうだ。暫く進んでいくとそこが見覚えのある風景であるのに気がつく、ここはあの夜におやっさんと侵入してきた時にも通ったルートだ。奇しくも同じ道を通っていることに脳裏にはおやっさんの顔が浮かぶ、直後自分達が通る上の通路から誰かの足音が聞こえてきた。通路の下に人影があれば気づかれるかもしれない、咄嗟に相手の腕を掴んで配管の影へと二人して身を寄せると相手に覆い被さるようにして息を殺した。少しでも動けば何者かがいるのがバレてしまう、相手に向かい「動くな」と小さな声で囁く。しかしそれはあの夜におやっさんに自分が命じられた事で、自分が背いた命令で、そのせいでおやっさんは死んでしまった。通路の上で追手が声をあげながら走っていく、しかしそれも遠くの出来事のように聞こえておやっさんとのやり取りがフラッシュバックすれば目を伏せその場で意識をあの夜へと飛ばしてしまっていて)
…、 ……左,翔.太.郎、…左,翔.太.郎!
(完璧な地図とは言えないがそう大きく基礎的な設備は変わらないはずだ。頭に入れた地図に従って一般的な廊下ではない配管設備の道を選んで密かに移動することにする。薄暗い道を進んでいると上の方から足音と誰かの声が聞こえた。その瞬間に腕を掴まれ配管の影に隠れるような形で身を潜める。上から覆い被られると視界は狭くなって目の前の相手しか見えなくなる。そのまま小さな声で言いつけられると素直に頷いて静止を保つ。二人で息を殺しながら様子を伺っていればすぐ下にターゲットがいることに気付かなかったようでこの辺に居るはずだと指示が飛んで走り去っていく足音が聞こえた。どうやら上手く潜めたようだがすぐそこに追手がいるのには変わりない。今のうちに移動しようとするも覆いかぶさった相手は何故か動こうとしなくて小さな声で名前を呼ぶ。だが一切反応が無く先ほどまで自信が見られた目は伏せられ、心なしか血の気の失せたような顔で固まっているのを見れば強く名前を呼びながら顔を手で挟んで強引にこちらを向かせる。そのままじっと相手を見つめると「この状況で考え事とは随分と余裕だね」と思ったままの少し棘のある言い方をしながら様子を伺って)
…っ、……次のルート考える分にはいいだろ
(頭の中であの夜の出来事が早回しのフィルムのように何度も駆け巡る、おやっさんに言われた言葉が頭に響いて最後におやっさんが目の前で倒れていく。夢で繰り返しみた光景が頭から離れなくて今が現実なのか夢の中なのか、あの夜なのかもう終わったことなのか、判断がつかなくなってたるで水の中に溺れていくように上手く息が出来なくなる。視点が合わず顔を白くさせていたが何かが頬に触れて無理やり顔の向きを変えさせられるとようやく意識を手元に取り戻した。思い出したように息を吸い込んで浅く短い呼吸を繰り返す、ようやく目は焦点があって相手の顔を呆然と見つめた。少々棘のある言い方ながらも考え事をしていたのだと言われるとようやく自分の現実へと戻ってくる、だが素直に自分の非を認められなくて無理やり手を振りほどくように顔を背けると体を離した。地図情報を把握しているのは相手でルートを考えるも何もないのだが良い言葉は思い浮かばなくて言い訳になっていない言い訳を口にする。改めて周囲の気配を探れば近くに敵はいないようで「いくぞ」とぶっきらぼうに声をかけると薄暗い道を勝手に進み始めて)
……、ああ。
(反応がない事に違和感を覚えてその顔を挟んでこちらを向かせる。何処か遠くを見ていたような目はやっと焦点を結び視線が交わる。繰り返される浅く短い呼吸に何かしら異常が起きているのは分かるがそれを推測出来る材料は持ち合わせていない。相手を見つめたままいつもの口調で声を掛けると反発するように顔を背けられ体も離れていく。こちらに地図の検索を頼むならばルートを知らないはずで理解不能の言い訳に首を傾げるがひとまず動けるようなら進行に支障はない。先走って進み始めた相手に短く返答すれば大人しく後ろについて行った。暫く薄暗い道で二人の足音だけが響く中で進んでいくと行き止まりに辿り着いた。ここからはまた普通の廊下に出る必要があり、誰かに見つかるリスクは更に上がる。「さっきの様子を見る限りこの辺を巡回しているはずだ。上に上がったら一気に駆け抜けるよ」と相手に告げると音を立てないように階段を上がって外の廊下の様子を窺って)
…分かった。ちょっとは時間稼ぎしとくか
(もう何度も繰り返しみる記憶にいい加減慣れなければならないのに未だに体は動けなくなってしまう。だがそんな弱みを相手に見せるわけにもいかない、自分は今おやっさんの代わりとして相手を外に連れ出すという依頼を遂行する頼りになる人間でなければならないのだから。こちらの異変に気づかれないうちに歩き出せば背後から相手がついてくる足音が聞こえる、やがて行き止まりへとたどり着くと目の前にあるのは上にあがる階段だけとなった。ここからはまた監視カメラがあるルート、つまり時間との勝負になるはずだ。相手も同じ考えのようで一気に走り抜けるよう言われると頷く、だがここらに敵が集まっているなら多少敵をどこかへ引き付けておきたい。壁に整備用の工具箱が設置されているのを見れば相手が階段をあがるうちに中から手頃なレンチを取り出す、相手に向かって「こいつを投げたら走れ」と声をかければ自分達が歩いてきた通路に向かって力の限り遠くへレンチを投げつけた。相手に目で合図を出し走り出す、宙を舞ったレンチは遙か後方で配管にでも当たったのか派手な音が鳴った。数人の足音が聞こえて後方に集まっていくのを聴きニヒルに笑えば相手に先導を任せて走り「次どっちだフィリップ?!」と声をかけ)
…、こっちだ! …ッ、この前のド.ー.パ.ン.ト…!
(ここまでは裏の道を通ってこれたがここからは監視カメラのあるエリアを進まなくてはならない。どうにか追いつかれる前に逃げ切るためにも一気に走り抜けることを提案すれば相手は頷くが階段を登っている間近くにあった工具箱を漁る。そこから工具であろう物を取り出して指示を受けると素直に頷いた。相手が工具を遠くに投げ、目の合図を受けて走り出す。遠くの方で派手な音が響くとそちらの方に人が集まる足音が幾つか聞こえた。安直な発想だが効果はありそうだと感心しながら頭に入れた地図通りに角を曲がって最短距離で進んでいく。研究室のエリアを抜けるとひらけたエントランスのような場所に出てくる。今までと違う雰囲気に気を取られていると突如足元に光弾が飛んできてその衝撃に軽く吹き飛んでしまう。床を転がって咄嗟にその光弾の発射元に顔を向ければあの夜見たド.ー.パ.ン.トが宙に浮かびその下には警備兵が待ち構えていた。どうやら待ち伏せされていたようだ。脱出経路が割れていれば当然の出方ではあるが『お散歩の時間は終わりよ』と何処か上機嫌に語るド.ー.パ.ン.トが手をかざすと警備兵がこちらに向かって銃を構える。更にド.ー.パ.ン.トが光弾を手のひらで生み出し、こちらに放とうとするのが見える。何とか体は起こすが避けきるには時間が足りなくて来たる衝撃に体を縮こませて目を瞑るしか出来ず)
っ!!野郎…!…、フィリップ!!
(ダストエリアはゴミを船に乗せることも考えれば建物の端にあるはず、相手の支持に従い駆け抜けていけばやがてたどり着けるはずだ。やがて広いエントランスに出てくる、目立つ場所は早く走り抜けようとしたがその前に光弾が飛んできて軽く体が飛ばされた。咄嗟に受身を取って体勢を立て直せばまるであの夜と同じようにあのド.ー.パ.ン,トと銃を構えた警備兵が見えて一気に怒りが沸き起こる。余裕のある物言いに更に怒りを募らせていたがこちらが動く前にド.ー,パ.ン.トは再びこちらへ光を放とうとする。その時になってようやく相手が体勢を崩していることに気がつけば咄嗟に走り出してその体を抱えると無理やりその場から動かしなんとか光弾を回避した。光弾は次々とこちらへ打ち込まれて相手の体を抱えたまま先程の通路へと駆け込み攻撃をしのぐ。しかしこのままではダストエリアに到達できない、苦々しく思っているとド.ー.パ,ン.ト,は『あの子は痛めつける程度に、実験体の方は殺しなさい』と命令が下って警備兵がこちらへ近づいてくる。ここでも実験体呼ばわりにまた怒りを覚えていると自分たちが走ってきた方からひとりの研究員が警備兵を1人だけ連れてやってきて息が詰まる。息も絶え絶えに『やっと見つけたぞ実験体!』と叫ばれ退路さえ絶たれてしまった。しかし研究員の手には小さなジュラルミンケースがある、外からは分からないのに何かに呼ばれているような気がしてその中身を察すれば小さく笑った。相手から離れ研究員と警備兵に近づくと「いいもん持ってんじゃねぇか」と声を掛ける。その意図が分からず研究員はポカンと口をあけるがその隙にケースを奪い取ってそれを振り回し警備兵のこめかみに当てて意識を奪うと最後に手刀で研究員の意識も奪う。化け物に対抗するにはこちらも化け物になるのが手っ取り早い、おやっさんと同じように。ケースを開けて中身を取り出す、確か研究員はこれをガ.イ.ア.ド.ラ.イ.バ.ーとよんでいた。ドライバーを腰に付けてメモリを構える、そこで相手の方へ目線を向けると「フィリップ、俺は依頼人であるお前を必ず守る」と宣言すればメモリを起動させた。禍々しい声で『JOKER』のボイスが鳴り響きメモリをドライバーに挿入する、すると体は黒いモヤに包まれて次の瞬間には黒い道化師のような化け物が姿を現した。「いくぜ!」と強く叫ぶと通路から飛び出しこちらに迫る警備兵へと向かっていって)
っ、一旦引いた方が…左.翔.太.郎? っ、あれはジ.ョ.ー.カ,ー,ド.ー.パ.ン.ト…!
(初めて間近に迫った死への恐怖に体は動かなくて目を瞑った。だが思っていた衝撃が来る前に体は浮いて相手に抱えられる形で運ばれていく。光弾が次々打ち込まれるのを何とか避け先程の廊下の壁に身を隠すことは出来たが彼らが迫って来ている事には変わりない。強行突破出来ないならば一度退くべきかと考えるが直後背後に別の研究員と警備兵がやってきて挟み撃ちにされる。焦りが募る中何故か相手は小さく笑って無防備のまま研究員の方に近づいて行く。思わず様子を伺うように名前を呼ぶが相手は流れるように研究員の持っていた箱を奪い取って二人の意識を沈める。その手際にも圧倒されたが箱の中からガ.イ.ア.ド.ラ.イ.バ.ーとメモリを取りだしたのを見れば目を見開く。あれは確か上位の研究員か幹部と呼ばれるこの研究所の上位組織の人物がもっている物だったはず、最近実験に使うようになったと聞いていたが実物を見るのは初めてだ。相手はドライバーを腰に巻いて覚悟を決めたような顔でメモリを構える。堂々と自分を守ると宣言する様は何処かあの男に重なるものがあってその横顔に目を奪われる。メモリを起動させドライバーに差し込まれると相手の体は黒いモヤに包まれて道化師を象ったド.ー.パ.ン.トへ変化する。今までJOKERメモリは一部変化した物はいたがド.ー.パ.ン.ト態になった者は誰もいない。初めて見るその姿に動けないでいたがそれも向こうも同じようで『なんで実験体がガ.イ.ア.ド.ラ.イ.バ.ーを使えているの』と困惑の声が聞こえる。壁を飛び出した相手が警備兵を攻撃する姿に圧倒されていたが相手が怪物になろうともこの状況は数でこちらが不利であることには変わらない。周囲を見渡せばこの辺りのセキュリティを司る装置を見つけて念のため警備兵の持っていた銃を手にしてから相手が彼らの気を引いている内にこっそりとそちらに近づいた。侵入者対策用に幾つか機能があるようでそのロック方法を推察すれば再び地.球.の.本.棚に潜ってその方法を探る。得た情報でハッキングに近い事を行い何とか一時的に権限を得ると防衛システムを発動させれば警告音が鳴り、エントランスと奥の廊下を遮る頑固なシャッターが下り始める。まだ戦闘中の相手に「左.翔.太.郎、はやくこっちだ!」と叫ぶと一足先にシャッターの奥の廊下に入り、銃で警備兵の足を正確に狙い撃ちながら相手が来るのを待って)
あいつらは俺を『長持ち』させるためだって言ってたが、どうやらあんたには秘密にしてたみたいだな
(一瞬視界が暗転して視界が晴れると全身に力が漲るのが分かる、感情の昂りで自身の能力が上下することは何となく分かっていてだからこそ負荷をかける実験ばかり受けていたが今はあのド.ー.パ.ン,トに対する怒りで体はいつも以上に素早く力強く動く。警備兵など相手ではなく銃弾を避け時に手で払いながら近づけば拳を奮って次々に意識を奪っていく。困惑の声をあげる怪人には同じく怪人の顔の下でニヒルに笑い煽るように答えてやる、あの時研究員がドライバーを持ち歩いていたのもドライバー使用の申請や承認がされていないせいで不用意に何処かへ置いておくことも出来なかったせいだろう。いつも痛めつけられている研究員が思わぬ追い風となって警備兵を沈めていくが多勢に無勢というものでなかなか勢力を削ぐことが出来ない。宙に浮かぶド,ー,パ,ン,トは『実験体のくせに生意気な!』と叫んで再びこちらに光弾を飛ばしてくる、それを順に避けるが次々に降り注ぐ攻撃を避けきれずに肩に一発貰ってしまうと苦痛の声をあげる、警備兵には十分な力を発揮するがあのド.ー.パ.ン.トには届かないのか『プロトタイプですらないドライバーで私に勝てるはずないでしょ?』とまた余裕の声が降ってくる。このままでは追い詰められるのも時間の問題だ、奥歯を噛み締めていると突然警告音が鳴り響いて場が騒然とする。直後相手の呼ぶ声が聞こえて反射的に走り出した。下がっていくシャッターに向けて全力で走る、警備兵は相手が牽制してくれているが背後から光弾が追いかけてくる。シャッターが閉まるギリギリのタイミングで体を中へと滑り込ませるが無数に降り注いでいた光弾が再び腰へと当たってしまって、シャッターが閉まった直後に地面へと煙をあげながら転がって変身が解除されてしまう。メモリは無傷で排出されるがドライバーからは煙が上がっていてもう使えそうになく「くそ、」と悪態をつきながら無理やり上体を起こして相手と目を合わせる。どう声をかけるべきか暫く迷ったあと「……助かった」とぶっきらぼうに言って)
…短期間に過度な負荷がかかったからドライバーが耐えきれなかったようだ。…? さっき君が僕を助けたように僕もここで君が殺されては困る。二人で一緒に脱出するのだろう?
(この緊急事態に感情が昂っているのかかなり好調に動けているようだがそれでも数の利と空中浮遊しているド.ー.パ.ン.トの攻撃に押されている。防衛システムを起動させ退避を叫べば相手はこちらへ走り出す。相手を逃がすまいと追いかけてくる警備兵は銃で牽制するがギリギリで滑り込んだ身体に追尾してきた光弾が当たって転がりながら変身が解除される。シャッターが完全に閉まってひとまず遮る物が出来れば相手の側にしゃがみこんで様子を伺う。見たところ致命的な傷はない、何時の日か調べたドライバーの機能を思い出せば本体が致命的なダメージを食らう前にドライバーが衝撃を肩代わりして破壊されたのだろう。もう一度使う事は出来ないが窮地を凌ぐことはできた。相手が上体を起こしてこちらを見るがまたしても動かなくなってしまう、だが今回のは迷っているような仕草で僅かに首を傾げているとぶっきらぼうに言葉を告げられて目を瞬かせる。協力すると約束したのだからそれぞれの危機の回避を手伝うのはごく自然なことだ、相手を失ってしまえばここから脱出できる確率は一気にゼロに近づくのだから。利害関係のように淡々と答えるが先ほどの動きは確かに二人で無ければ切り抜けられないようなものだった。ふと脳内にあの男が相手のことを自分にない物を持っている人物だと言っていたことを思い出す。その時はピンとこなかったが今ならば少しだけ分かる気がする。先にこちらが立ち上がると先ほど信頼の証として行った握手でもするように相手に手を差し出してじっと相手を見ながら言葉を掛けて)
ったく、お前はそういう奴だった……こういうのもできんじゃねぇか。あぁ、絶対に風.都.に帰るぞ
(なんとかシャッターが閉まるのには間に合ったものの最後の一撃で地面を転がってしまって鈍い痛みに顔を顰める、しかしあれだけ派手に攻撃を食らった割には痛みは少ない。その理由を相手が淡々と述べるのを聞きながら体を起こした。真正面から礼を言えるガラではなくて一言ぼそりと呟いたが相手からは相変わらず淡々と機械的な返事が返ってきて思わずガクリと顔を俯ける、相手が一般常識すら知らない感情の薄い人間だということを忘れていた。気を取り直して顔をあげる、すると目の前には相手の手が差し出されていて思わず相手の顔を見上げる。相変わらず感情は読めないが先程握手の意味は教えたばかりだ。無意識に口角があがる、相手とまともに話したのは今日が初めてなのに二人であればこの島を抜け出せるはずだと自信が湧いてきた。相手の手を取り立ち上がる、相手がハッキングしたおかげで暫くこの壁が破られることはないだろう。「いくぞ」と声をかけて真っ直ぐに伸びる通路を駆け抜ける、やがて案内板が現れてコンテナが通れるくらいの扉を見つければ「あれだ!」と声をあげて大開の扉を開ける。その瞬間に潮の香りが鼻腔を擽る、海が近い証拠だ。そして目の前に広がるのはゴミが集められたコンテナがずらりと並ぶ光景、ここかゴミを集めて船で運び出すダストエリアで間違いないだろう。奥には船が見えて相手に目で合図を出すと早速乗り込んでしまおうと歩みを進める。しかしその前にコンテナの中に見覚えのあるものを見つけて足を止めた。そこにあったのはあの夜に着ていた服で「俺の服だ!」と思わず声をあげてシャツを手にとった。相手の部屋で上着を脱いでから上半身はずっと何も纏わないままでこの格好で船に乗るのは流石に厳しい。シャツの下にはジャケットもあって手に取り持ち上げる勢いで袖に腕を通したところで体が固まる。ジャケットの下から出てきたのはあの夜、あの瞬間に、おやっさんが被っていた帽子だった。どんなにねだっても被らせて貰えなかったハードボイルド探偵の帽子、それがゴミに紛れていることに酷く胸が傷んで震える手で帽子を拾い上げる。おやっさんの帽子は薄汚れてブリムが一部破れている、主を失い生気さえ失いかけている帽子を見つめるうちに目が離せなくなってまた意識が遠くへと連れていかれるとその場から動かなくなってしまって)
…左,翔.太.郎、……左,翔.太.郎!
(相手に手を差し出して待てばその顔がこちらを見上げる。こういうの、が何かは分からないがこの口角に笑みが浮かんでこちらの手を取って立ち上がる相手を見れば何処と無く満足のいくような不思議な感覚がした。並んだ相手に改めて自分たちの目的を告げられると小さく頷いて通路を進んでいった。その先には大きな扉があって二人でその扉を開ける。その瞬間今まで嗅いだことの無い類の未知の匂いがして思わず足を止める。これが外の香りなのだろうか。検証するように深く息を吸い込んでもその原因が分からず辺りをキョロキョロする。辺りにはずらりと中身の入ったコンテナが並んでここからゴミを排出しているようだ。相手の後ろを続いて歩いているとコンテナの一つに近付いてシャツを手に取る。その服は確かにあの夜に見かけた相手のものだ。その服に袖を通す姿を見守っていると突然相手の動きが止まる。視線を追えば見覚えのある帽子、あの男が身に付けていたハットがあって震える手でそれを拾い上げるとまたそれを見つめて遠い目をする。この様子を見る限り配管設備の道の時の妙な態度もあの男のことを思い出していたのだろう。隣から相手の名前を呼んでみるが反応はない。自分達が移動してきた廊下からは未だに警告音がしていて追っ手が来るのも時間の問題だ。目の合わない相手の顔をじっと見つめ変化が無いことを確認すれば目を覚まさせる為に名前を呼びながら思いっきりその頬を手で叩いた。良い音を響かせると「それを被っていた男はあの日死んでいる、目を覚ましたまえ」と冷静にその事実を告げて)
……ッ、……分かってんだよ…分かってんだよそんなこと!!おやっさんはずっとハードボイルドで誰にも知られずひとりで戦うくらいかっこよくて風.都.の探偵でずっと……俺の、憧れで……それなのに、これだけしか残ってねぇんだぞ!
(事務所の奥で何度見上げたか分からない憧れの帽子、こっそり被ってはまだ早いと怒られ、そろそろ被りたいと言う度にまだ早いと怒られ、羨望の対象でもあった帽子。しかもこれはおやっさんが特別な事件の時にしか被らない白の帽子、それが今薄汚れて形も崩れかけて、まるでおやっさんの、探偵の魂が抜けてしまいそうな姿で手の中に収まっている。頭の中でおやっさんとの会話が鳴り響くのに見える光景はおやっさんが事切れるその瞬間ばかりだった。しかし不意に頬に強い衝撃を受けて周囲の音が聞こえるようになる、いつの間にか止まっていた呼吸は酸素を取り戻すように浅く早い。そして相手の声でこの帽子の持ち主は死んだのだと言われるとまた息を詰まらせた、無理やり息を吐き出しながら奥歯を強く噛むと相手の方にようやく顔を向ける。思考の洪水は止まらなくて浮かんだままを相手にぶつける、囚われた部屋の中でおやっさんは死んだのだとなんとか飲み込んだはずなのに打ち捨てられた帽子を見た途端にあの日言葉を交わす間もなく呆気なく消えてしまった憧れの人に縋り付いてしまう。目線が再び手の中の帽子へと吸い込まれてしまうとたった一つの形見を握りしめて「おやっさんが…消えちまう……」と呟くとその場から動くことさえ躊躇っていて)
……あの男は、鳴.海.荘.吉は僕をここから連れ出そうとして死んだ。あの時意識の中で僕達は話をしていた。もし僕がもっと早く決断をしていれば鳴.海.荘.吉は命を失わずに済んだのかもしれない。…決断しなかった事が罪ならば僕は彼が付けてくれた名前で、自分で決断することでその罪を償いたい。
(頬を思いっきり打って死んだことを突きつければ息を詰まらせ、顔がむく。まるで叫ぶように思いの丈をぶつける相手から一時も目を逸らさずにその言葉を聞いた。勢いのあった声は徐々に萎み、目線が帽子に落ちる。そして小さな呟きが聞こえれば今度はこちらが口を開く。ここは自分が不自由なく過ごす事が出来る場所であの夜まで疑いもなく同じ日々を繰り返していた。だがあの男は初めて自分をメモリを作る為の道具や便利な物ではなく1人の人間として扱い、救おうとしてくれていた。もしもの話など非現実的ではあるが自分が何処かで決断をしていればあの男が撃たれることは無かったかもしれないし、そもそもこの場所に来ることも無かったかもしれない。そう視線を少し伏せてから語り、再び相手の方を見れば真っ直ぐその目を見つめながら自らの罪を口にする。そして自らの意思で贖罪の道を進むと告げれば「あの時、鳴.海.荘.吉はその場から逃げ出すのでもなく多数の銃弾から君を庇うことを選んだ。僕はあの一夜のやり取りしかしていないが君ならば彼がその決断をした意味を理解出来るのではないのかい」と言葉を続けて)
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