検索 2022-07-09 20:46:55 |
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っ、…確かに彼女は善良な人間を選ぶことに固執してた。なら彼女の基準から逸れた人形は処分されちまうかもしれねぇってことか。早く止めねぇと……彼女の執着心はかなり強い、なんとしても俺をコレクションに入れたいはずだ。ならまたここに探しに来るんじゃねぇか?
(彼女は交差点でターゲットを定め少し遠い美術館まで案内してくれた人間を自分の中で『合格』として人形にし手元に置いているのだろう。それを悪趣味と称する相手に同意するよう頷く、まるで神の視点から自分が気に入った玩具だけを問答無用で集めていくなんて許されることではない。さらに相手が処分も用意だと口にすれば紫色の宝石が丸くなってキラリと輝く。彼女はかなり拘りが強い、好ましい善良な人間を人形としてコレクションすることに執着している。一度彼女のその基準から逸れればどうなってしまうか、彼女が相手に向けていた冷たい視線からも行く末は明らかだろう。人形にされてしまっている人が処分されていないことを願っていると相手が立ち上がって軽くよろめく、ちらりと横をみれば地面は遙か下で思わず息を飲んだ。この体ではいちいち全てのスケールが大きすぎる、さりげなく相手の親指に手を掛けて掴まるようにしながらこれからの方針を話合う。彼女は自分を探しているはず、となればここに戻ってくる可能性は高く下手に動かないほうが彼女を誘い込めるはずだ。動く度にカタカタと音を鳴らしつつ「俺をそこら辺に置いてお前は隠れといてくれ。すぐに罠にかかるはずだ」とデフォルメされた顔に似合わぬ悪い顔を浮かべて)
…確かにあの口ぶりから一旦他の人形たちを置いてここに来る可能性は高いけど、……分かった。彼女が現れたら僕が出るから君はとにかく捕まらないように逃げてくれ。…翔太郎は誰にも渡さない。
(彼女の傲慢な所を見ても人形という形が人に悪影響を与える可能性を考えても早くこの事態は解決すべきだろう。その為にどうするべきか悩んで立ち上がるとその動きにも相手はよろめいて掴まるようにして親指に手を置いている。やはり人形の大きさでは全てのものがスケールが大きく感じるのだろう。その状態で相手が出したのは探しに来た彼女を待ち構えるというものだ。他に彼女が居そうな場所が分からない以上それが一番可能性が高い手段に思えるが、それはつまり今の相手を囮にするということで有効性には同意しながらも躊躇いの色を見せる。だが他に良い案が浮かばずに視線を向けた先の相手の瞳が悪い顔と共に輝くのを見れば優しく相手の体を包み込むように握りながらその案を受け入れる。彼女さえ姿を見せればあとはどうにか捉えるだけだ、目的が果たされたあとは相手には安全な所に行くことを条件にするように相手に告げる。小さく息をついてから彼女の身勝手なコレクションにはさせないと決意と独占欲の混じった言葉を告げるとそのままゆっくり歩き始める。高架下の近くは美化の為にちょっとした休憩スペースがあってそこの少し段差のある石畳にそっと相手を座らせる。まるで落し物を拾って見えやすい場所に置いたように見えるようにすると「ガジェット達にも見張りを頼むからくれぐれも無茶はしないでくれ、翔太郎」と少し過保護気味に釘を刺しながら頭部を指先で撫で、立ち上がると近くの柱の裏に隠れて様子伺って)
…、……おぅ、分かった…お前も無理すんなよ。この状態じゃ変身も出来ねぇだろうしな。…っ、……あいつの方がよっぽど大袈裟じゃねぇか
(彼女を捕らえる作戦としてこちらが囮になることを悪い顔で提案すれば相手の手の中に包まれて宝石の目を瞬かせる。相手に抱きしめられその体温を感じたことはあっても文字通り完全に包まれることなんてなくて全身で相手の体温と心配やらが混じった想いを感じると嬉しいような気恥しいような、顔が変ににやけてしまいそうになるのを必死に抑えた。彼女が現れれば逃げるように言われ頷く、人形サイズでさらに壊れやすい体となれば今自分に出来ることはなさそうだ。だがそれは相手を生身でド.ー.パ,ン,ト,の前に出すのと同じこと、メモリを使われる前に押さえられれば理想だが万が一もありうる。今の自分では相手を包み込むことなど到底できなくて、せめてもと傍にあった親指に腕を回すとそこを抱きしめてこちらの想いを伝えておいた。独占欲混じりの言葉を聞けば相変わらず顔は変にニヤけそうで何とか表情を保ちながら相手に運ばれる、相手の手のひら上という直に体温を感じる中で相手の言葉を聞くのは心臓に悪い。そうして石畳の上に下ろされるとそこへと座る、ここなら彼女も自分を見つけやすいだろう。ガジェットまで総動員すると宣言してから去っていく相手を見送りつつ呆れた声でしかし嬉しそうに呟く、大袈裟だ過保護だ言うのはいつも相手の方だが相手も大概同じらしい。あとは彼女がくるのを待つだけ、彼女以外の人間が来た場合人形が動くとまた騒ぎになりそうで人形のフリをした方が良さそうだ、などと考えていれば背後の草むらから音がして思わず振り返る。高架下のこの場所は人の往来が少ない、しかしそうなれば別の存在がいつきやすくなる。背後に振り返った先に居たのは巨大な獣、もとい猫だった。散々依頼で捕まえてきた猫もこのサイズであれば命の危機を感じて思わず「嘘だろ…」と呟いて体を動かしてしまう、しかしそれが猫の狩猟本能を刺激してしまったらしくこちらへと飛びかかってきた。慌てて逃げようとするもそのスピードに適うわけがなく首根っこを咥えられてしまい猫はそのまま走り出してしまって)
……あっ、待てっ!!
(親指に腕を回されて無理をするなと言われると「ああ」と頷いて石畳の上に運ぶ。普段より小さく脆い姿のせいで心配は尽きないがこれも事態を解決する為だと飲み込んで柱の裏に身を潜めた。あの大きさならば最悪ガジェットで持ち上げて相手を逃がすという手も取れる。それぞれをライブモードにして厳重体制を敷きながら彼女が来るのを待つ。そうして人がやって来そうな奥の道を警戒してみれば相手の後ろに現れた猫の存在に気付かずにバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.トの反応でワンテンポ遅れて接近に気付く。その時には相手に猫が飛び付いた所で思わず声を上げる、その声に驚いたのか猫が走り出してしまえば第三の刺客の存在に背が冷えるのを感じながらその後を追うように走り出す。ド.ー.パ.ン.トなら攻撃をして動きを食い止めるという手も取れるが相手の為とはいえこの街の猫に手荒な手段は取れない。ならば何処かに追い詰めそこで捕らえるしかない。幸いこの辺は相手とパトロールをしたりしてある程度地図は頭の中にある。なるべく塀など高いところに飛び移ってしまう可能性のある所は避け、分かれ道では先回って飛ばしたス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンで猫の嫌がる高周波を出してそちらには行かせないようにする。そうして追いかけっこを続けると行き止まりまで追い詰め「その人形を返してくれ」とじわじわ猫に詰め寄って)
だああああ止まれ!止まれって!!
(彼女は遠からず自分を探しにきてすぐに罠に掛かるだろうと踏んでいたが高架下に住み着いていた第三の刺客によって首根っこを掴まれその場から離されてしまう、当然相手からもだ。相手と離れれば下手すると二度と合流できず焦る気持ちで猫に向かって叫び手を振り回した。しかし人間ではありえないスピードで移動し風を受けた状態で腕をあげれば当然軽い腕は風に煽られて、後ろに引っ張られた腕からミシリと嫌な音がして冷や汗が出る。人形の体では腕を振り回すだけでも致命傷になりかねないらしい。周囲にガジェットが飛び相手の声が聞こえているあたりこちらを追ってきているのだろう、ここは相手を信じて腕と足がちぎれないように体を小さくして時が来るのを待った。しかし猫は全速力で道を駆け抜け急カーブやアップダウンを繰り返す、まるで規格外のジェットコースターのようだ。掴まれているのが首根っこだけとあっては体も大きく揺らされてしまう、相手が猫を行き止まりに追い詰めた時にはすっかり目を回してしまった。猫はというと行き場を無くし相手を一瞥したあと人形の体を抱え込んで座ってしまう、どうやら気に入られたようだ。グルグルとまだ視界はまわっているが特別暖かでモコモコの感触に包まれ無意識のうちにそこへと擦り寄ってしまう。下手すればそのまま目を閉じてしまいそうだったが相手ほ声が聞こえればなんとか意識を取り戻して「なんか猫の気引けるもんねぇか?猫じゃらし代わりになるやつとか、餌でもいい」とここから抜け出す算段を叫んで)
やっと追いついた…。気が引けるもの…そういえば確か、
(猫を見失わないように追いかけ、ガジェットの助けもあって行き止まりに追い詰めることが出来たが全力の追いかけっこに息が上がる。問題はここからであるが猫はすっかり人形の相手を気に入ったのか抱き込んで手出しが出来ない状況になってしまう。中にいる相手の言葉を聞き何か気が引ける物があったかと考えると以前パトロールの時に急遽飼い猫が逃げ出したという街の人の依頼を受けてコンビニで買った奴が残っていたような気がする。帰った時には関心が無くなって入れっぱなしのことも多いと思い懐を探ると小分けのささみジャーキーが一袋だけ残っていた。これならば気を引けるだろうとしゃがみこんでパッケージを開封すると中身の匂いが辺りに広がって猫の関心がこちらに向く。こちらを警戒しているようだが一本摘まんで前の方に差し出し危害を与えないことをアピールすると興味を持ったように相手を置いてゆっくりと近づいてくる。相手から引き離すことには成功したがお気に入りになっているならば逃げたことを悟られないように気を引き続ける必要がある。ささみジャーキーの匂いを嗅いで変な物でないことを確認する様子を見守っていれば猫はその先端を口にする。何度か咀嚼してお気に召したのか一気に食べてしまったところを見計らってもう一本差し出せばすぐに関心を引くことが出来てそのまま後ずさると猫もついてくる。十分に相手から距離ができたところでジャーキーを食べさせるとご満悦な様子で噛り付き、無くなった後も同じ匂いのする指先をペロペロ舐められると自然と表情も緩み「いい子だね」と言いながらその身体を撫でてご機嫌を取って)
…、……助かったぜフィリップ、腕がちぎれちまうかと思った
(暖かなもふもふに包まれるのは悪い気はしないがこのままでは彼女を捕まえに行くことができない。相手に気を引くように言えば以前の依頼で買った残りのささみジャーキーが出てくる、あれなら猫の気を引くのに効果抜群だろう。最初こそ警戒していた猫だったが匂いと動きが相まって関心はささみジャーキーへと向いて体がこちらから離れていき、未だふらつくもののその場に立ち上がる。相手が上手く誘導している間にある程度距離を取りなるべくゆっくりと歩いて刺激しないようにしながら大回りで相手の元へと戻った。相手の足の傍までくればもう安心だろう、なんとか頭から離さなかったハットの位置を整えながら礼を伝える。この体では猫一匹でも致命的になりうるとは、軽く服装を整えると猫の歯が刺さっていたようで服には穴が開いてしまっている。彼女がみれば怒りそうな惨状だと思いながら相手を待っていたが相手はすっかり猫の機嫌をとるのに夢中になっていて未だにその体を撫でていた。もう猫を構う必要もないのにいつまでも撫でている相手に胸に引っかかるものを感じると猫を撫でる手に近づき手首をかかえてその手を引っ張り「いつまで撫でてんだよ」と少々不満混じりに言い)
君が無事で良かった。体が小さくなればその分他の動物も脅威になるリスクが抜けていたね。…やきもちかい?
(距離を離すように誘導しながらジャーキーを与え、ご機嫌を取るように撫でていれば視界の端で相手が大回りして足元までやってくる。猫に咥えられて運ばれていたものの見た限りは大きな損傷は見られずに服に穴が開く程度で済んだようだ。安堵の言葉と彼女ばかりを考え他のリスクを想定できなかったことを反省するように口にするがその手はもっとと強請るように鳴く猫を撫でたままだ。そうしていると相手が撫でる手に近づいてきて腕などで手首を抱えるような形で引っ張ってそこから外そうとする。デフォルメされた顔で不満混じりに文句を言われると子供が不貞腐れているようにしか見えなくて小さく笑って問いかけるとその手で相手の頭を優しく撫でる。猫が再び相手を狙わないように最後のささみジャーキーを差し出して食べることに夢中にさせた所で「行こうか」と相手を手に乗せ胸を支えにさせるように抱きながら立ち上がる。そのまま行き止まりから元居た場所に歩き始めるが「やっぱり君を囮にする作戦は無しだ、二人で彼女を待ち構えるか探すようにしよう」と先ほどとは意見を翻して相手を危険に巻き込まない方向にすると宣言して)
猫に構うより彼女を見つけんのが先だろ!っ、…
(相手が今回の作戦の反省点を口にして元は自分が提案した作戦だからとフォローを入れる場面だったが相手はいつまでも猫を撫でる手を止める気はないらしくその手を止める為に体が動いてしまった。全身を使ってなんとか手首を掴むとようやく相手の意識はこちらへと向く、どこか嬉しそうに問いかけられてその問いを無視して叫ぶものの頭を撫でられれば大人しくなって目を逸らす。相手の手はいつもより何百倍も大きいが変わらず優しく触れられてそれだけ大事にされている感覚に胸は華やぎ満たされてしまう。今は犯人を追っている最中で緊急事態なのだからと気を持ちなおそうとするがその前に相手に包まれて持ち上げられる、足元がふらつかないよう胸を支えながら持ち上げられるとやはり大切にされている実感が湧いて心が浮ついてしまった。こちらからも胸にある指に軽く腕を回して抱き寄せながら元の場所へと戻っていく。囮作戦の中止が告げられると数度頷く、相手と少し離れるだけでここまで致命的になるならば相手と常に離れないようにした方が良さそうだ。猫との追いかけっこで随分高架下からは離れてしまって袋小路を抜ければ人通りがそこそこある道へと出る。相手が人形を持って歩いているのも他人から見れば怪しいだろうがその人形となれば喋っていると怪奇の目でみられ、あげく自分が喋っているところを見られれば騒ぎになるだろう。周囲に人がいなくなった隙に「暫くは大人しくした方が良さそうだな」と声をかけ)
…僕が喋る分は良いだろうけど君の声が聞こえるのは混乱を招きそうだ。…ああ、ちょっとお出掛けしてる所なんだ
(こちらの問いを無視して叫ばれてしまうがその様子ではイエスと言っているようなものだろう。上機嫌になりながら相手の頭を撫でてふらつかないように持ち上げる、指に抱きつく姿に愛おしさを覚えながら歩き始め、今からは二人で行動することに決める。今の壊れやすい状態では期待値の高い作戦よりもリスクの低い作戦を取るべきだろう。そうしていると人通りのある道に着いてすれ違った人から持っている相手に好奇の視線を向けられる。人が居なくなったタイミングで話しかけられると同意するように頷く。自分が喋る分には独り言だと思われるかもしれないが人形が喋るのは怪奇現象だ。そうして方針を固めていると下校中らしい小学生、黄色のランドセルカバーからして1年生と思われる数人が向かいからやってきて『あ!可愛いお人形だ!』と相手を指さす。その声で一気に相手に注目が集まって自分ごと小学生達に囲まれる。目がキラキラや可愛い!とはしゃぐなはしゃぐな中で『これ、お兄ちゃんの人形?』と問われると目を瞬かせるがすぐに何処か乗り気で相手を見せるが距離を保って触らせないようにして)
あぁ、別の事件が増えちま……
(相手の指に抱きつくようにしながら大人しく運ばれる、いい加減このサイズ感の相手にも慣れてきたが全身を相手に包まれるこの温かさには全く慣れなくてこうやって大事にされて運ばれるのも悪くないと思ってしまう。余計な考えを隅においやりながら人前では喋らないよう方針を共有していると進行方向から子供の声が聞こえてきて思わず口を噤んで体を固めた。直後複数人の足音がこちらへと駆け寄ってきてあっという間に囲われてしまう。いつもは見下ろすはずの子供達に巨大な目で覗き込まれ少々気圧されてしまう、しかし相手は小学生の問いに何故か乗り気で答えていて思わずツッコミを入れそうになってしまった。ここで声をあげればパニックは必須だろう、グッと人形の振りをして動かないでいたがひとりの女の子が『あーお洋服破れてる!可哀想』と声をあげ『ほんとだー』『ズボンも汚れてるね』と次々と声があがった。するとひとりの子が『私お家近くだからお洋服持ってきてあげる!』と走り出してしまって、『私も!』と他数人が声をあげて家へと走っていく。嫌な予感はするが逃げるに逃げられない状況になんとか真顔を保とうとするも顔が若干引き攣ってしまって、その間にも残った子が『お人形さんのお名前なんて言うの?』と相手に聞きながら興味のままに顔を近づけていて)
あっ、…えっとしょうた、いや、翔ちゃんって言うんだ。…、それは…
(子供の純粋な目と共に相手を褒められるのは悪い気はしなくて投げかけられる問いに答える。相手は人形の振りをしているのか自分の手元から動く気配がなく、それがますます調子づけた。そうしていると女の子が先程の猫によって出来た穴や汚れに気付くと声が上がり洋服を取ってくると走り出してしまう。あの様子では見つけ出したら直ぐに戻ってくるだろう。あの年頃の女の子が持っている服となれば嫌な予感がするが同じことを思ったのか相手の顔も若干引き攣っているように見える。その間残った子に質問をされそのまま翔太郎と呼ぼうとするが元と外見がそっくりだったのを思い出すと誤魔化すようにあだ名の方で紹介する。するとその子の目が輝いて『翔ちゃんかぁ、良い名前だね!』と褒めてくれて無邪気な顔を相手を向けている。そろそろ切り上げないと後から相手に怒られそうだと思っていたがそうしている間に一度家に帰った女の子達が何かを持ってこちらにやってきて『お洋服持ってきたよ!』と見せたのは着せ替え人形などにありがちな可愛らしいワンピースやファンシーなドレスで流石に苦笑いを浮かべる。「心配してくれて嬉しいけど服はこのままで…」と話を流そうとするが張り合うように『こっちの方が似合うって!』ともう一人の子が持ってきたのは学校の制服のような服でそれぞれ相手に服を宛がおうとしていて)
………………………………………
(服を持ってくると駆け出していった子達に頼むからまともな服を持ってきてくれと強く願うが駆けていく彼女らに届くかは微妙なところだ。まだ小学生が残っていては相手と話すどころか動くことさえ出来ずに固まっていると相手は人形の名前を聞かれて咄嗟に翔ちゃんと答えている。女子高生達に呼ばれているとはいえこの見た目で可愛らしい呼び方は少々不服だが本当の名前で後々の混乱を招くよりかは良いだろう。相変わらず調子の良い相手に後で絶対に文句を言ってやろうと決めつつ人形の演技を続けていたが何人かの足音がまたこちらへと近づいてきた。先程洋服を取りに行った子達が帰ってきたようで相手に代わる代わる服を見せているが案の定どれも女の子用のものでさらに顔がひきつりそうになる。目線だけを相手に向けて断るように念を送るが、子供達は次々に服を宛がって着せ替えるならどれが良いか話し合いが始まる。子供同士のそれは瞬く間にヒートアップして『この服が一番可愛いもん!』と言って相手から自分を取り上げてしまった。突然体が引っ張られて声が出そうになるのを必死に抑えていると先程より不安定な手のひらの上で女の子の手が伸びてきて馴れた手つきでベリと服を止めるマジックテープが剥がされた。そこからはあっという間で数秒もしないうちに上着がなくなり軽く引っ張られただけでズボンが足から抜けてついに体を覆う布は無くなってしまった。当然布の下には人形の素体があるだけなのだが小学校の女の子に服を脱がされさらに隣で相手が見ているというあんまりな状況に何も悪いことはないのにただひたすらに羞恥に苛まれてしまった。だが表情を変えるわけにもいかず僅かに眉尻を下げるだけでなんとか留めているとその間にピンク色の可愛いワンピースを着せられてしまい、もうどうにでもなれと意識が遠のきそうになっていて)
……あー…、…そうだね、どちらも可愛いと思うけど僕は最初の服が似合ってて好きかな。
(小学生達が家から着せ替えするための服を持ってきて宛てがう。引き攣ったような顔と相手の視線を受けてそれを何とか止めようとするが女の子達はどちらが似合うのか、可愛いのかを争い始めてしまってついには自分の手から相手が取られてしまう。自分の手元に来た人形だと思っている相手に対して小学生は容赦なく服を脱がせていく。その下にあるのは人形としての素体だろうが相手の意識はそのままであることを知っていればあんまりな光景に思えて思わずその光景から目を逸らした。そうしているうちに相手は可愛らしいピンクのワンピースを着せられていて心做しかその紫の目は気が遠くなっているように見えた。ワンピースを着た姿に小学生の中で歓声があがるがもう一方の女の子が『こっちも可愛いはず!』と言い出して相手を取り上げて今度は短いスカートの学生服を着せた。小学生の無邪気さや集団の勢いで完全に着せ替え人形にされている光景に見ているしか出来なかったが『お兄ちゃんはどっちが可愛いと思う?』と問われると小学生の意見は尊重しつつ話を切り上げられるように元の服が良いと答え「返してくれるかい?」と声をかけると渋々手渡される。色んな意味で相手と目を合わせるのが躊躇われて抱っこするように顔を自分の方に向かせ隠せるようにしながら服を普段と同じ最初のものに着せると服を小学生達に返す。「僕達は今から行くところがあるからまたね」と相手を抱いたまま手を振って別れ、離れていく小学生達を見送ると恐る恐る相手の様子を伺って)
…………っ、……バカッ!お前、フィリップ!!何が可愛いだ!!!
(ピンク色の可愛らしいワンピースを着せられただけならばハードボイルドじゃないと突っぱねて騒ぐだけで終われたかもしれないがその過程で女の子にテキパキと服を取り払われてしまった事の精神的ダメージがかなり大きかった。しかも相手は着替えさせられているこちらから目を逸らしていて余計に悲惨な状況なのだと思い知らされればさらに気は遠くなった。可愛いとはしゃぐ周りの小学生の声が遠くに聞こえているうちに再び服が全てなくなり今度は丈の短い制服スカートが着せられる。隠れている面積が少ないせいで逆に恥ずかしい装いに顔はなんとか変えなかったものの脳内の思考回路はもうどうにもならないほど機能していなかった。そこでようやく相手の手の中に戻り小学生達から隠されながら服が脱がされていくが、今までの蓄積と相手に白昼堂々脱がされているという事実とで思考はキャパオーバーを迎えて頬だけだった赤みは頭のてっぺんから首元まで広がって悩ましげに眉尻を下げる。人形なのだからおかしくはないだとか、そういう考えを今は持つ余裕がない。着替えが終わると小学生から隠れているのをいい事に相手の視界からなるべく逃れるように体を横向きにして顔を突っ伏す。周囲に人が居なくなったのを感じればスっと立ち上がって未だ赤い顔を伏せたまま腕の上を歩いて胸板まで移動してくると顔を埋め、ようやく溜め込んだものを爆発させる。といってもまともな文章にはなっておらず胸板を木の手で叩くものの相手にとっては痛くも痒くもないだろう。ひとしきり文句を言ったあと相手の顔の方を見上げて「もうここら辺歩けねぇじゃねぇか!!」と八つ当たりのように文句を叫び)
すまない、まさか子供たちがあそこまでするとは思わなくて…、人形に似た人物がいても気のせいだと思うだろう、…多分。
(子供達と別れ高架下に向かうために人の少ない通りに入って相手の様子を伺うとすっと立ち上がって胸板までやってくると顔を隠すように埋められてから文句を叫ばれる。だが今回は動ける人間のままの立場でありながら止められなかったことに非があって弁明の余地もない。人形になったとはいえ相手を褒められて嬉しくなって早々に切り上げずに会話に乗ったせいだろう。ぽかぽかと叩かれる胸は痛くはないが宥めるように背中を撫でる。可愛らしい服を着たというのもそうだが意識のある状態で女子小学生に白昼堂々服を脱がされたりしたのが精神的ダメージが強いのだろう。こちらを見上げた相手の顔が赤くして叫ばれた内容からもそれは伺える、普通の人はまさか人間が人形になっているとは思わず、元に戻って人形に似た人物の顔を見ても偶然だと思うはずだと言いたいのだがあの無邪気な子供達の反応を思い出せば断言しきれなくてゆらり視線を外しながらぽつりと言葉を付け足した。猫とは違う意味の危機を脱することが出来たがすぐには元の状態に戻りそうにない。ならばと相手を再び手で包み込んで顔の高さまで持ってくるとその顔を見つめ「元の姿に戻ったら一つ君のわがままを聞くから許してくれないかい」とお願いして)
お前が疑問形でどうすんだよ!!…まぁ、あの状況なら仕方ねぇよ……なら家でお前のコーヒーが飲みたい…とびきり美味いヤツ……
(脳内はパニックを通り越した状態になっていて捻り出した単語だけを叫んで相手を叩く、その間に背中を撫でられて多少落ち着きは取り戻すものの熱が上がった顔ではなかなか感情の濁流は収まらなかった。八つ当たりのように文句を付ければ一度は問題ないと返事をされるが最後に一言憶測の言葉がつけ加わってすかさず叫んでしまう、小学生達が人形が人間だったと思わないだろうし似ているだけだと誤魔化せばそれで済む話なのだが感情のままに叫ぶのを抑えられずにいた。未だオーバーヒート状態から抜けられずにいたが相手の手に包まれて持ち上げられるとその体温に多少は落ち着きを取り戻す、そして顔の前へとやってくればやっと相手が申し訳なさそうな表情をしているのに気がついた。そしてワガママを叶えると許しを乞う相手を見れば一気に頭が冷えて頬を掻きながら仕方がなかったと口にする、こんな提案をしてくれるくらいには申し訳なさを感じているらしい。だがあの勢いの有り余った小学生達を全て躱すのは至難の技だろう、立場が逆だった場合でも同じ結末になっていた可能性が高い。だが精神的ダメージが大きいのは確かでご褒美が無ければこの後のもうひと踏ん張りができなさそうだ、傍にある相手の指を両腕で優しく抱えるとこちらの希望するワガママを伝える。今日は相手に思いっきり労って貰わなければ明日以降に支障が出そうだ。相手に包まれ暴走していた脳内は緩むまでに至って「…あと頭も撫でて欲しい」とちゃっかりもうひとつワガママを追加して)
…ああ、もちろん。家に帰ったらとびきり美味しいコーヒーと共に目一杯甘やかすことにしよう
(あの無邪気かつ集団の勢いを考えれば問題ないと断言するにはいささか疑問が残ってつい推測の一言を足すと叫ばれてしまった。メモリの能力のことを知らなければ結びつくことは無いだろうが被害を受けた相手にとっては割り切れるものではないだろう。そんなどうしようもない感情を解消するためにも相手を包み込んで目の高さを一緒にしながら許しを乞うとヒートアップしていた言葉の勢いは弱まって仕方ないと返される。指に抱き着くように両腕で抱えられなんとも可愛らしい我儘が伝えられると思わず表情は緩んで声を弾ませながらそれに応じる。ちゃっかり加えられた二つ目の我儘にももちろん異論はなく、相手が触れてない方の手で優しく頭を撫でた。こうやって手のひらに収まって愛でるのだって可愛らしくていいのだがやっぱり自分の隣に立って等分の存在として接して甘やかしたい気持ちが強くなった。そうして事件が解決した後のことを約束すれば俄然彼女を捕まえることにやる気が出て軽く相手の服を整えてやると更に手を持ち上げて自分の肩に座らせてみる。こうすれば一緒に行動出来て相手の観察眼も発揮できるだろう。そのまま進むとやっと高架下に帰ってくることが出来るが人影はなく「彼女は居ないようだね」と呟き零しながら辺りを見渡して)
、……そうしてくれ。____みたいだな。彼女を待つ間にどうやって捕まえるか考えねぇと
(何でもひとつワガママを聞いてくれると言うのならこのどうにもならない精神的ダメージをあっという間に回復してくれるものがいい。こちらがコーヒーと頭を撫でる事二つのワガママをちゃっかり要望すれば相手は小言を言うこともなく両方受け入れこちらの頭を撫でて、そうやって全てを無条件に受け止められるとそれだけで随分心は晴れ渡った。甘えたいとは口にしていないはずなのだがどうやらこちらの本心はお見通しらしく短く返事をする、脆い体を包まれて特別優しく撫でられるのも心地よいがこのままでは相手に抱きしめられることも頭を撫でる合間に髪を梳くように指が触れることもない。一番欲しいいつもの温もりを取り戻すためにも早く彼女を押さえなければ。体がさらに持ち上げられて肩へと座ることになると相手の顔に近くなるよう移動し座り直してそのまま運ばれていく、人目を避けてようやく高架下へと戻ってくればあとは彼女を待つだけだ。しかし彼女が目の前に現れたとしても今は変身することもできない、相手をこのまま生身で対峙させるわけにもいかず彼女が来るまでの間に作戦を練った方が良いだろう。相手の肩に座ったまま顎に手を添えると「人形にされちまった時も瞬間移動した時も彼女は赤い布を使ってた。なら能力が発動する元はあの布ってことだよな?あれを使えば俺も元に戻れんのか?」と推測を並べていき)
あの布が能力のトリガーならばその可能性は高いだろうね。…なら僕が表に出て何とかあの布を出現させた瞬間に君が奪い取るっていうのはどうだい?今の君の小ささならバ.ッ,ト.シ.ョ.ッ.トにぶら下がったりして死角から不意打ち出来るはずだ
(全てが解決した後の約束が出来れば彼女を押さえるのにもやる気が出てくる。相手を肩に乗せるとより近くに座り直す仕草に小さく笑いながら歩いていると高架下にたどり着くが彼女の姿は見当たらず、ここに来るのを待つことになりそうだ。その間どうやって彼女を押さえるかの作戦会議を始める。この状態では変身が難しいことを考えればその前に彼女からメモリを回収するか相手を元に戻す必要がある。その方法に悩んでいると肩に乗った相手が能力を使用したときに出現した赤い布に目をつけ、1つの可能性を提示するとその時に起きたことを思い出しながら頷く。上手くあの布を回収出来たら相手を元に戻せるかもしれない。そこで相手を守ろうとした時に考えた作戦と猫に連れ去られた時の光景が重なると相手に顔を向け、一つの作戦を提案する。相手の小さな体ならば自分より気配や動きを読み取られにくいだろう、機動力をバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.トやス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンで補い、布が出現したタイミングで奪い取ればその勢いのまま能力を使うことも出来る。万が一その行為がバレても相手が彼女のコレクションにしたい人物なら手を出したりも出来ないという利点を考えると悪くない手に思えて相手の反応を伺って)
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