検索 2022-07-09 20:46:55 |
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ッ、!…なら約束しようぜ、春奈。この夢から覚めたらお前と本当のメンバーが一緒に演奏する曲を、俺達に聞かせてくれ!
(メモリが感情によって過剰反応しているせいかそれとも自分達ごともっと深い眠りに落とそうとしているせいか、メモリを掴む手には激しい痛みが伝わってきて歯を食いしばる。そこに相手の手が重なれば驚いてそちらを見るが痛みが半分になったおかげでまともに春奈と対峙することが出来た。こちらの言葉に春奈の目は動揺に揺らいでさらに相手がこのままでは部活のメンバーと繋がりが絶たれてしまうと、本当の願いはなんなのかと諭せば春奈が小さく呟きを零す。メモリが抵抗するように痛みを増すが相手と共に耐えていればようやく春奈の本当の願いを聞くことができた。メモリを握る春菜の手が緩んでいくのが分かれば痛みに堪え代わりにニヒルに笑う、そして彼女のクラスメイトとしてではなくこの街の探偵として現実で彼女達の演奏を聴くことを望んだ。その瞬間に春奈の目線が自分と相手へと向く、同時にメモリを掴む手が緩んだのを感じるとその手からメモリを思いっきり引き抜いた。刹那の後、体が吹き飛ばされる感覚があり世界が明滅して無理やり起こされた時のような強い衝撃が脳内を襲う。次に目を開いた時にはクレープ屋に続く並木道に体が転がっていたところだった。起きたての体を無理やり起こすと相手と春奈が倒れているのが見えて春奈の傍では火花を散らしたメモリが転がっている。床に転がってまだ痛い体を根性で動かし駆け寄ると、同時にス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.をライブモードにし地面に転がったメモリへホーンを思いっきり突き立ててメモリを破壊して )
ぅ…、…春奈ちゃん! …良かった、メモリ使用の反動で気絶しただけみたいだ。
(彼女からメモリを引き剥がすまでもう少しだ、抵抗するように痛みを発するメモリを決して離さずに彼女の本心を聞くと相手が現実に戻ってから演奏をして欲しいと願う。目が合った彼女に自分も同じ気持ちだと頷くと彼女の手から力が抜け、その瞬間にメモリを一気に引き抜いた。同時に体は夢から追い出されるように吹き飛んで夢の世界が崩壊していく。明滅した視界に耐えきれず目を瞑ると意識は途切れ、次に激しい頭痛で目を覚ます。目を開けると並木通りの道に体が転がっていて辺りに視線を向ければ先に目覚めた相手が彼女の元に向かっていた。何とか体を起こすと相手がス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.によって彼女の使ったメモリを破壊する所で自分もそちらに向かう。粉々に砕け散った共に彼女が目を開いてぼんやりとした視線をこちらに向け『翔ちゃん、フィリップくん』と呼ぶ。『ありがとう…』と弱々しい声で呟いたかと思えば再び目を閉じて焦ってしまうが慌てて彼女の首に手を添えて脈を取るとちゃんと正常な範囲のもので安堵したように息を吐いた。恐らくメモリ使用の影響と無理やりといった形であの世界を抜け出した反動的なものだろう。相手にそれを伝えるが暴走の兆しがあったなら万が一を考え一回専門の所で検査して貰うべきだ。父親への連絡など色々やることはあるがひとまずは彼女を現実に引き戻せたことに相手に目をやって「何とか最悪の事態は防ぐことが出来たようだ」と探偵として安堵の笑み見せて)
春奈っ!…あぁ。俺達も随分寝ちまったみたいだが、ちゃんと春奈との約束を守れそうだ
(ス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.でメモリを貫くとメモリは高い音と共に砕け散る、するとメモリの影響下から抜け出したのか春奈が弱々しく礼を言って意識を手放してしまった。慌てて相手と共に駆け寄るとその体を起こして支える、その間に相手が脈を取るとどうやら無事だったらしく腕にあったコネクタもなくなっていてひとまず安堵の息を吐いた。相手から笑みを向けられるとこちらも探偵としての笑みを返す、少々長い夢を見ていたようだがきっと春奈は元気を取り戻しギターを背負って彼女の仲間のもとへ行くだろう。その後はいつも通りのバタバタでジンさんに連絡してメモリの破片を渡し、春奈を専門機関に送ってもらい、喫茶店のオーナーには事の次第を言えるだけ話しおいた。最初こそ気絶した春奈にオーナーは焦っていたが退院すればまたギターをひく姿が見られると伝えると安堵の声が聞こえてきた。マッキーからの鬱陶しい現場検証も終わりやっと二人きりになるとひとつ伸びをする。隣をみれば相手はいつも通りの格好をしていてそれを懐かしいとさえ思ってしまえば「まさか参加したこのねぇ文化祭にお前と参加することになるなんてな」と冗談めかしていって)
僕もまた君のクラスメイトになって文化祭に参加するなんて思わなかったよ、…楽しかったね。
(あの世界が夢だと気付かなかったら彼女は勿論、取り込まれた自分達も現実に戻ることは出来なかっただろう。まだ少し時間はかかってしまうが本当の望みに気付いた彼女ならばまたあの夢の中と同じような笑顔を浮かべて部活の人達とまた演奏できるはずだ。それからは各所に連絡を取って手続きを行う。オーナーには退院すればきっと大丈夫だと告げ、またメモリ絡みの件に首を突っ込んだなと言う刃.野.刑事達に苦笑いをしながら対応して一通り終わればやっと二人となった。夢の中では朝の登校から後夜祭の夜近くまで過ごしたが現実世界では数時間も経っていなかったようでまだ日は沈んでいない。やけに長い一日に過ごしている妙な気分になりながらも事務所への道を歩いていれば相手がこちらを向いて夢の中の出来事に言及する。何が起きようとも現実では実現することのない幻の時間、クラスの店で接客したり校内を回ったり初めての体験ばかりで違和感に気付くまでただの生徒として幸せに過ごしていた。彼女の説得に言った言葉やメモリの能力に叶えられた場所だと思えばあまり言うべきでないかもしれないが一緒に過ごした相手の方を見ると思わず本音を零して)
…そうだな。春奈には必要な奴が居ねぇって話したけど、俺達は必要な奴が隣にいて同じ記憶も持っちまってる。…正直良い時間だったな
(全てのことが片付き相手と共に事務所へと歩き出しあの夢のことについて話題を出す。一度も顔を出さなかった文化祭に参加ししかもそれを相手と共に過ごしたのだ、絶対に有り得ない状況だが幸せを感じたのは確かで相手がポツリと本音を零すと一瞬間を置いてから同意して頷き返した。春奈に散々現実に戻れと言いメモリの危険性も知りながらも、夢で体験した時間を強く否定することはできない。それもこれも相手と共に夢に取り込まれたことが大きいだろう。春奈にとってのバンドメンバーが自分達にとってのお互いで二人が揃ってさえいればひょっとすると永遠に終わらない文化祭だって楽しんでしまっていたかもしれない。以前同じように夢の中に閉じ込められた時よりも違和感になかなか気がつけなかったのも相手との幸せが深すぎたからだろうか。春奈よりも自分達の方が危うい状況だったかもしれないと薄ら思いながら空気がおかしくなる前に「間接キスくらいでしどろもどろすんのは見てらんなかったけどな」と茶化すように言って)
ああ、ある意味こういうタイプが一番厄介なメモリかもしれないね。…それはお互い様だ、今ではなんてことない事だけど慣れる前はあんな感じだっただろう?
(あの夢の中の出来事を楽しかったと呟けば相手から少し間が空いて肯定の返事がされる。あの空間がメモリの能力だと知りながら巻き込まれない方が良かったかと聞かれると恐らく答えはノーだ。相手と幻の空間だとしても普通の学生として文化祭を過ごせたのは楽しかった。助けるべき彼女がいなければ違和感にも気付かなかった可能性を感じて薄ら寒い物を覚えつつ改めてメモリの恐ろしさについて言葉を続けた。脱出してもなおあの中の経験を引き摺っている空気に相手が茶化すようにその時の態度を話題に出すとお互い動揺しっぱなしの様子を思い出して小さく笑う。間接キスも近い距離感も今では当たり前のことで寧ろそうでなくては気になる程度のことだが想いを伝えあう前後は相手と距離が近づくだけで同じくらいパニック状態だった。それからの時間の流れを感じながらも人通りの少ない道に入ったのをいいことに相手と少し距離を詰めると「初心で顔を赤く染める翔太郎が見れて良かった」とからかい交じりにご機嫌な表情で告げ)
(/いつもお世話になっております。一区切りがつきそろそろ終わりも近いかなと思いましてお声がけさせていただきました。メモリの能力に便乗した学パロでしたがいつもと違う状況で二人のやりとりをして目一杯文化祭を楽しむことが出来てとても楽しかったです!店番や宣伝など学生ならではの参加も出来ましたし、両片思いならではのどきどきとするじれったいやりとりも沢山出来て毎回ワクワクしながら返事させて頂きました。些細なことで顔を真っ赤にする探偵君も徐々に近づく二人の距離感も本当に可愛かったです、今回もありがとうございました!
上記のやり取りが良い感じに落ち着いたら次のお話に移ろうかと思うのですが何かご希望はありますか。今回の後日談みたいな形でもいいですし、そこそこ長くなってしまったので短めの日常回やギャグっぽい話を挟むのもいいかなと思っているのですがいかがでしょうか。)
そうだったか?…っ、余計な事は忘れとけ!お前だって迷路の中でずっと真っ赤だっただろ
(相手が言うように能力にかかったことを感知できないメモリが一番厄介なものかもしれない、その効果が自分達にとって都合のいいものなら尚更だ。メモリが見せた夢に罪悪感はありながらも魅入られ多少惜しむ気持ちを持て余していて、きっちりと意識を現在に戻すためにも冗談めかして文化祭のことを有り得ない夢の事として揶揄えば当然相手からは反論が返ってくる。一度は誤魔化してみたものの距離を詰めながら初心だなんて言われてしまえばあの時の何も知らなかった気持ちを思い出して思わず声を詰まらせた。相手と共に時間を積み重ねた今、夢の中で一挙手一投足にあたふたしていたのは何とも間が抜けていてあの夢の中では数少ない思い出したくない記憶だ。思わず叫びながらツッコむも状況としては相手も全く同じで、二人でいる間半分ほどは照れているか赤面しているかしていたはずだ。しかしどうにも相手の笑顔をみれば勢いがなくなってしまうのは今も同じでやれやれと笑みを浮かべながら近い距離のまま事務所へと歩いていき)
(/こちらこそお世話になっております。こちらもメモリを使った学パロのお話でいつもとは違うシチュエーションと関係性を存分に楽しませていただきました。両片思いの二人が近づいてずっと騒がしくしているのがとても微笑ましく、改めてまた違った形で結ばれるところもできてこちらもワクワクドキドキしながら返信させていただきました。屋上で立ち上がっただけで探偵を引き止めようとする検索くんがとてもいじらしくて可愛かったです…今回もありがとうございました!
この次のお話ですが今の二人でゆっくりとした時間を過ごしたいなと思っておりまして、春奈との約束通り公園で開催されるミニライブを二人で見に行くのもいいですし、依頼人から貰ったスイーツを食べるお話なんかも良いかなと思いましたが検索様はいかがでしょうか?)
……こんな店があるのか、
(文化祭でのお互いの行動をツッコんで揶揄い合いながら事務所に帰る。相手と居ることができればいつだって幸せだと思ったがやっぱりしっくり来るのは探偵として並び立つことだ。そんなことを実感しながら普段より長い一日を終え、普段通りに眠りについてから一週間ほど。日が沈むのが徐々に早くなってきて穏やかな秋を感じるようになればそれに比例してか舞い込んでくる依頼も少ない。彼女が専門機関から退院したという知らせも入り、平和な日常が戻っていたが相棒は朝から依頼の為外出中だ。昨夜他の物に紛れて形見の指輪を売ってしまった依頼人から調査依頼を受け、検索で突き止めた買取屋からの流通していった店や関係者を当たって貰っている。無事に形見を回収出来たと連絡があったからそろそろ帰ってくるはずだ。それ以外に依頼ややる事も無ければ所長が持ってきた雑誌をぱらぱら捲り風.都.に出来た新しい店の特集に目を通していて)
(/では後者のスイーツの話はいかがでしょうか。普段は食べられないようなお高いスイーツだったり珍しい物をゆっくり味わう時間に出来たらと思います!ちょうどキリも良さそうなのでそれらしく上記で始めさせて貰ったのでいつものようによろしくお願いします!)
__ただいま。あっという間に見つけちまうなんて流石だぜ相棒。お礼にお土産も貰っちまった、俺も知らねぇ店なんだ、が……
(夢の中の文化祭は思い出深くて幸せには違いなかったがこれまでの積み重ねを全て捨て去るなんて到底できやしない。再び二人で一人の探偵として過ごし始めて一週間ほど、探偵事務所には探し物の依頼が届いていた。間違えて売ってしまった形見の指輪探しだったがこういうのは相手の得意分野で数多の候補の中から流通先が絞られるとあとはひとつずつ潰していくだけだった。やがて高級品専門の質屋に流れようとしたところを事情を話して指輪を取り戻し、相手に連絡して依頼人へと指輪を返す。依頼人はえらく感動してくれてこの前別の用事で買ったもので申し訳ないがと手土産まで持たせてくれた。一度は断ったものの是非と言われれば断りきれず、見た事のない店名で興味が湧いたのもあって丁寧に礼を言っていただくことにしたのだ。事務所へ帰ってくると帰宅の挨拶をしハットをしまってから相手を労いつつ近づく。今回の依頼の手柄はほぼ相手にあると言っていいだろう。手土産を貰ったことを話しつつ傍までやってくると相手が見ていた雑誌の内容が目に入り「え、」と言葉を零してその場に固まる。続いて貰った袋の中身と雑誌とを見比べると呆然とした顔を相手に向けて「フィリップ…これ、その雑誌に載ってる和菓子だ。めちゃくちゃ高級品じゃねぇか!」と一気にボルテージが上がると叫び出して)
(/それではスイーツを食べるお話にしましょう。めちゃくちゃ高級な秋のお菓子をゆっくり楽しめればと思います。今回もよろしくお願いします!/こちら蹴りで大丈夫です)
おかえり、翔太郎。 君が知らないなんて珍しい…、本当だ。最近風.都.に出店してきた店のようだね。…翔太郎、これ
(そうして暫く暇を潰していると相手が帰ってきて出迎えの言葉をかける。どうやら無事に依頼は解決したようだ。その手には紙袋が見えて手土産を貰ったことを伝えられる。相手が依頼の解決の際に依頼人から何かを貰ってくるのはそう珍しいことではない。だがこの街のことを知っている相手が知らない店のものとなれば珍しく少し関心を寄せると近付いた相手が小さく呟いて動きを止める。その視線は今まで読んでいた雑誌と紙袋を交互に行き交い、最後にはこちらを向いてテンションがあがったように叫び出す。紙袋にあるある店名は確かに雑誌のものと一致していて今週出来た注目の新店と記載がある。相手が知らなかった理由に納得がいきながら店の紹介の枠を見ていればイチオシ商品として例のある上生菓子の詰め合わせが紹介されているがその値段として二人の一日分の食費以上の数字が書かれていれば思わず相手に声をかけながらその箇所を指さした。普段ならば絶対に食べられない類の物が手元にあることに一気にその瞳が輝いて「有難く頂くことにしよう!」と子供のように食いついて)
デパートの一番高級フロアの店か、流石にここの情報は知らねぇな。…、…まぁ貰ったもん返すのもおかしいし、有難くいただくか
(新店舗の情報もある程度は街を歩いて人々と話していれば仕入れられるものだが一等地のさらに選ばれし店舗が並ぶフロアの噂など街に流れるはずもなく、縁遠い店となれば情報はまだこちらには届いていなかった。依頼のお礼とはいえとんでもないものを受け取ってしまった事とこれが別の用で家に置いてあった依頼人に戦々恐々としていると、相手が雑誌を指さして声をかけてくる。そちらへと目をやれば雑誌に載っている生菓子の値段が記載されていて到底手の届かない額にまたピシリと固まってしまった。気軽に受け取ったつもりはないがやはり相当なものを貰ってしまったらしい。尻込みしていると相手は目を輝かせて早速食べようと急かす、もう貰ってしまったものなのだからここはご厚意に甘えて素直に食べることにした。落としてはいろいろと問題があるだろうと普段は食事に使わない依頼用の広いテーブルの上に貰った菓子折りを取り出す。高級感溢れる箱を恐る恐る開けてみると季節の羊羹と練り切りが入っていた。見た目にも鮮やかな練り切りと控えめに輝く羊羹が目を引く中身だ、添えられた冊子を見るに雑誌に載っていたものよりも菓子の数は少ないが値段が高い、よりグレードが高いものなのだろう。気品漂う中身にまた圧倒されながら「アキコがいなくて良かったぜ…」と所長の不在に安堵の息を漏らし)
せっかくなら良いお茶でも入れようか。…綺麗だ、こんなの初めて見るよ。二人だけの秘密だね、
(庶民には到底手の届かない値段帯に相手の動きが固まる。上品な身なりの依頼人だとは思ったがまさかここまでだったとは。だが依頼解決の御礼となれば有難く貰っていいはずだ、相手を急かして食べることに決めるとこの和菓子に合うように客用に置いてある緑茶でも沸かそうと簡易キッチンでお湯を沸かす。いれる準備が整うまで相手の元に向かうと広いテーブルに菓子折りを出した所で高級感のある箱を開けると鮮やかかつ繊細なつくりの練り切りと艶のある羊羹が入っていた。美味しそうよりも先に芸術品のように美しい見た目に目を奪われ感動したように呟きを零す。あらゆる角度から観察していると相手が今日は早めに帰った所長のことを話題に出していて小さく笑う、この場にいたら誰よりも騒ぎそうだが取っておくには消費期限が心配だ。それに依頼のお礼と考えると二人占めしてしまうのも悪くないだろうとニヤリと笑って告げる。そのタイミングでお湯がわくと一旦キッチンに戻って熱いお茶を入れて戻ってきて2人の前に並べる。以前お花見で桜餅を買った後に和菓子については軽く検索済で箱に添えてある菓子楊枝を取り出すとその見た目から「これが黒文字か。これを使って食べるのが和菓子の礼儀らしい」と得た知識を確かめ、語りながら相手にもう1本を渡して)
お、頼むぜフィリップ。……こりゃしっかり証拠隠滅しなきゃいけねぇな
(値段に尻込みするのをやめ有難く高級菓子をいただくことになると相手が客用のお茶を沸かしに行ってくれる、この菓子を食べるならば相応のお茶を用意すべきで今は客用だなんだと気にしている場合ではない。お湯を沸かす間に相手と共に箱の中身を見てその見た目だけでもまた圧倒されつつお茶が用意されていよいよ食べる準備が整う。最高級菓子に客用のお茶を飲んだだなんてバレれば所長様からのスリッパは一発で済まないだろう、下手すれば同じものを買ってこいと騒ぎ出す可能性すらある。絶対にバレないようにしなければと思いつつも今は目の前の羊羹と練り切りに集中することにした。相手から黒文字を受け取る、付属されたこれすら綺麗な光沢があり隅々まで丁寧な作りだ。箱の中身に目をやると「とりあえず羊羹食うか」と名前には馴染みのあるそれへと手を伸ばす。一気に食べてしまわないよう小さいひと口大に切り分けるとゆっくりと口の中へと運んだ。咀嚼すると非常に滑らかな口当たりで共に餡子のもったりした甘みがあるのにクドくなく、そして今までに食べてきたどの羊羹よりもダントツに美味い。一番馴染みのあるはずのものが想像を遥か上をいく美味しさをしていて思わず言葉を失えば「やべぇなこれ…」と稚拙な感想を言うことしかできなくて)
…ああ、いただきます。…、小豆の味が濃いけど丁度良い甘さだね。硬さも柔らかすぎずに滑らかな舌触りでこだわりと手間暇かかっているのが伺える味だ。
(お茶を用意してきてこの事務所内では最高の準備が整うと期待は高まっていくばかりだ。所長に対して申し訳ない気持ちもあるがたまには二人だけの秘密を共有するのも悪くない。共犯者として証拠隠滅の案に頷きつつ相手が羊羹を食べるのを見守る。相手の口に運ばれた羊羹に対して言葉を失ったような感想が聞こえてくればそれだけ美味しいのだろうと期待を寄せ、自らも一口分に小さく切り分ける。分類としては練り羊羹とされる断面の艶やかさに暫し観察するような目を向けてから口に運ぶと小豆の味がしっかりと感じられながらも重たくない甘味で特有の食感と丁寧に作り上げられた舌触りが感じられて思わず目を見開く。初めての羊羹ということもあって分析するように感想を述べながら味わっているとあまりの美味しさにあっという間に口の中から消えてしまった。「これが高級品の味…」と?みしめるように呟くと堪らず更に一口分切り分けて口に運び、十分に味わってから入れたお茶を飲むと至福の息をついて)
だな。味は濃いのに嫌に残らねぇし滑らかでサラッとしてるっつーか……おい、ちゃんと俺のも残しとけよ
(今まで食べてきたどの羊羹よりも味が濃くて滑らかで、スっと上品に溶けていくこれは間違いなく今までに食べた事のないもので感動のあまり思考が鈍ってしまう。相手も一口食べれば目が見開かれてその様子に同意していると味の感想が述べられさらに同意するように頷く。同じ羊羹でもこうも違うものなのかと改めてその味を噛み締めていた。普段絶対に口に出来ないものの有難さを感じながら相手がいれてくれたお茶を啜る、口の中にほろ苦い味が広がれば思わず息を吐き出した。相手はというと同じく味に感動したのか直ぐさま二切れ目へと手を伸ばしていて揶揄い混じりに声をかける、とはいえ次の一欠片を直ぐに食べたくなるのも十分分かる味だ。しかしそうがっついてしまっては直ぐに箱の中身は無くなってしまうだろう。悩ましい矛盾を抱えながら今度は隣にある黄色い羊羹へと黒文字を差し込む、小さく切り分けた欠片を口の中に放り込むと一気に華やぐ香りが口いっぱいに広がって「おぉ!栗の味がすげぇ濃い!」と今度は感動のあまり叫んでしまい)
分かっているよ。僕も食べたい!…ん、確かにこっちは栗の甘味がしっかりと感じられて美味しい
(上品な甘さと口当たりの羊羹は絶品以外の何物でもなく客用の少しお高い緑茶と頂けば贅沢なひと時を味わう事が出来る。二切れ目に手を伸ばしていると相手から声がかかる、もちろん半分ずつにするつもりだが独り占めしたくなる気持ちも分かる美味しさだ。もっと食べたくなる気持ちと全て食べてしまうのが勿体なくなる気持ちの両方を抱えながら味わっていると相手が隣の黄色い羊羹を切り分けている。冊子を見ればこちらは季節限定の栗を使った羊羹のようで口に入れた相手が叫ぶように感想を言うのを聞けば気になって早速自分も小さく切り分けて食べてみる。先ほどのは餡子の甘味が強かったがこちらは栗の風味とまた違った甘さが口に広がって秋らしい味だ。満足のいく味に口元は緩んで「羊羹が美味しいならこっちにも期待できそうだ」と声を弾ませながらねりきりに視線を向ける。こちらも季節を反映しているようで紅葉などが目を引く中、可愛らしい月見うさぎの形の物があればきらきらした目で見つめるも黒文字を近くまで添えた所で手は止まり「こんなに可愛らしいと崩すのが躊躇われてしまう…」と困ったように呟いて)
だろ?甘いだけじゃなくて栗の味が濃いってのが高級な感じするよな
(もうひとつの羊羹である栗羊羹を口の中に入れればまた違った上品で濃い甘みが広がって滑らかに溶けていくその味を堪能する。幸せな甘さに浸りながらまたこの事務所で一番いいお茶を飲めば最高の至福の一時だ。相手も続いて栗羊羹を口にすれば当然満足する味だったようで感想を共有する、季節を感じる味ながらいつもと違う美味しさであるのは確かでこれが高級感なのだろうと頷いていた。相手はいよいよねりきりに手を出すようで黒文字を箱へと近づける。味に期待できるのは当然だがそれ以上にひとつひとつ細かな細工が施され可愛らしく箱に収まっているねりきりは何となく手が出しづらかった。相手の隣で一緒に月見うさぎを眺める、なんともつぶらな瞳をしていて「こういうのってひとつずつ手作りなんだよな…」と余計に食べづらくなることを口にする。月見うさぎを前に止まってしまった相手を見ていれば段々と悪戯心が湧いてきてこの膠着状態を崩してしまいたくなってしまう。相手がねりきりを見ているのをいい事に不意打ちで相手の肘を前に出るよう押してやった。すると月見うさぎのすぐ側にあった黒文字も当然前進するわけで、そのまま突き出された黒文字は月見うさぎの脳天にぶすりと刺さってしまい「あ、」と思わず声を漏らして)
この表情も職人技で…あっ!何するんだい、翔太郎!
(二種類の羊羹を味わうともう一方のねりきりにも期待が募っていく。だが一つ一つに細やかな模様や形が作ってあってその中でも可愛らしい月見うさぎが空を見上げる様子と目が合うと和菓子だと分かっていながらも何とも食べにくくなってしまう。そう思わせる職人の技に感心して興味を持ちながら切り分けるのを躊躇っていると相手の企みには気付かなくて肘を押されるとそのまま手が前に出る。そうすれば当然手に持っていた黒文字も動いて月見うさぎの頭に突き刺さってしまうと思わず大きな声を上げた。相手の方を見て文句を付けるようにしてから視線をうさぎの方に戻す。脳天に突き刺さったうさぎの頭はヒビが入って何とも痛々しいがすんなり刺さった辺り柔らかい生地なのが伺えて和菓子であることを実感する。きっとこちらも美味しいのだろうと食欲と興味の方に天秤が傾くと一番見ていて食べにくい頭辺りを切り分けて器用に黒文字で取ると「現行犯である君がアタマを食べたたまえ」と言いながら落とさないように相手の口元に運んで)
悪ぃこんな刺さると思わなくて……な、お前それ生首みてぇじゃねぇか!
(相手が戸惑っているのを見ているとどうしてもちょっかいをかけたくなってしまって肘を押してみる、黒文字が軽く刺さるくらいを想像していたが思った以上に黒文字は進んでしまいヒビが入るほど深く刺さってしまえば自分がやったことであるにも関わらず声が出てしまった。間発入れずに相手から抗議の声があがるが両手を広げて無罪をアピールする。つぶらな瞳が痛々しさに拍車をかけていたが、相手はねりきりを食べる方へと興味を傾けたようで黒文字を再び動かし始めた。しかしそこから頭周りを丁寧に切り取って黒文字が再び突き刺さりあろうことかこちらへと差し出される。額が割れ頭だけ切り取られた状態でつぶらな瞳を向けられればなんとも罪悪感が駆り立てられた。なんとも言えない顔のまま差し出されたウサギの頭を口の中に入れる、その瞬間にいつもより濃厚な白あんの味ともっちりとした求肥の食感が広がって一気に顔が綻ぶ。見た目はもちろんだが当たり前のように味も最高だ、感嘆の声を上げつつ「可愛い見た目でもちゃんと食ってやらねぇとな」なんて言いながら黒文字を手に取り丸い尻尾がついたお尻あたりを切り取ると「おかえしだ」と相手に差し出して)
和菓子だから問題ないだろう、…ん。こっちも上品な甘さとなめらかさがあって見た目に負けず絶品だ。
(自分の肘を押した相手に抗議の声をあげるも何処吹く風だと言う態度をとる相手に突き刺さった箇所でもあるウサギの頭部分を差し出す。するとその目で見つめられていると思ったのか相手に文句を言われてしまうがこちらも平然とした顔して和菓子だと強調しながら食べるのを見守る。相手は練り切りを口にするとその美味しさに分かりやすく顔を綻ばせるのが分かってこちらまで口元が緩む。そうしていれば今度は相手がウサギのお尻の辺りを切り取ったものをお返しだと差し出してきて顔を近づけて口に含む。形を作りやすくする為か全体的に柔らかさと程度な粘度があり、羊羹とも少し違う白餡の上品な甘さだ。違いを感じるように味わいながら感じたことを呟き「これなら幾らでも食べられてしまいそうだ」などと言いながら今度は迷いなくウサギの胴体を切り分けてまた口に運んで)
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