相乗りで何処までも 【 〆 】

っ、しょうがねぇな！
(相手をその場に留まらせ喧騒の中にひとりで突っ込んでいくつもりだったが、相手も止まる気は無いらしく叫び声が聞こえてくると思わず僅かに後ろを見る。相手も随分と感情的に動くようになったものだと内心笑みを浮かべれば完全には振り返らずに二人で暴れる女性へと駆け寄っていく。鋼鉄の如く硬く重い腕を振るう彼女の攻撃をあえて既の所で避けてその注目をこちらへと集めると怒り狂う彼女の横へと相手が動いてその腕を掴む。これで意識は分散されて隙もできるはずだと踏んだところで奇妙な現象が起こって目を見開く。彼女から相手へと流れていく光と煌めく緑色の粒子、まるで主の元へ帰っていくように動くその光には見覚えがあって思わず呆気に取られてしまった。相手の呼ぶ声で意識を呼び戻すと相手と繋がっていない彼女の腕を掴んで足をかけて体勢を崩す。男性ならそのまま地面にねじ伏せてもいいが女性に手をあげるなんてハードボイルドではない、相手の指示通りではないもののそのまま肩の下に腕をいれ支えるようにして彼女の体を受け止めた。相手に光が移り大人しくなった彼女はそのまま目を閉じて気を失ってしまう、一瞬他の怪力化した人物と同じように事切れてしまったかと思ったが息はあるようだ。安堵の息を吐いていると彼女の体から浮かび上がっていた血管が引いていき黒く変色していた首筋が元の色に戻っていく、肌の色が戻った頃そこに生.体.コ.ネ.ク.タが浮かんでいれば絶句してしまった。それに留まらずコネクタからはメモリが飛び出す、しかしそれはただのメモリではなくていつかの宗教団体が使っていた小さなメモリだった。飛び出したメモリはまもなく砕けてしまったが咄嗟に相手の方をみて「フィリップ今の…」と自分の見間違いではないことを確かめるために問いかけて)

…、ただ気絶してるみたいだね。…っ、ああ。あの宗教団体の仕業のようだ。僕が居なくなって新しい知識や情報を引き出せなくなったから既存のメモリの改造や強化に舵を切ったんだろう
(見覚えのある光景に驚くがまずは彼女を大人しくさせるのが先だ。相手に指示を飛ばすと足をかけ体勢を崩させてから優しく体を受け止めている。彼女はされるがままぐたりと腕を下ろして脱力してしまって一瞬焦るが気を失っただけのようだ。安堵したように呟きながら様子を見ていると見えるようになった首筋の黒の変色がどんどん引いていき、やがて生.体.コ.ネ.ク.タの形だけを残して肌が元の色に戻る。そこから見覚えのある小さなメモリが飛び出して粉々に割れるのを目撃すると思わず目を見開いて静止してしまう。状況を見るにずっとメモリが身体に挿入されていたことになるが一般的なメモリならかなり体に負担がかかる使い方だ。だがそれよりも引っ掛かるものがあって相手と目を合わせると頷き、この状態を作り上げた犯人達の団体を口にする。同時に今まで彼等がしてきた事とされたことを思い出すと不快感に眉を寄せる。首のコネクタは長時間メモリを受け入れていたせいか通常のものよりも深く根付いたような形をしていて確かめるようにそこに指でなぞりながら宗教団体の動きについて推測を述べた。「ひとまず彼女からも話が聞きたい。ここから近くて話し声が周りに聞かれないようなスポットを知らないかい？ 」と提案兼尋ねて)

みたいだな。あいつら何企んでやがる……なら近くの高架下だな
(自分の記憶に間違いがないか確かめるために相手の方をみれば相手も同じものを思い出していたらしく例の宗教団体の名前が出される。こちらも許せない集団ではあるが相手にとってはもっと因縁深い相手だ。相手の地.球.の.本.棚.へアクセスできる能力を欲し、崇め、無理やり教祖に仕立てあげた奴らだ。あの時目につく装置類は壊してやったがまだ組織自体は解散されていなかったようだ。胸に嫌なざわつきを覚えつつ相手から人気の少ない場所を聞かれると手頃な場所を答える、あとて警察にも届けるべきだろうがまずは彼女から情報を得るのが先だ。支えていた彼女の体を横抱きにして持ち上げるとそのまま移動を始める、気絶した女性を運べば目立ってしまうため裏道をそのまま進んで、やがて暗がりで人目につきにくい高架下へとやってきた。ひっそりと設置されたベンチへと彼女の体を下ろす、暫く見守っていればやがて彼女は目を覚ましてぼんやりとした目をしながらも周囲を見回していて)

じゃあそこに移動しよう。＿…目が覚めたかい？
(連日の件に宗教団体が絡んでいるとなればますます見逃せない自体だ。その身勝手な理想も悪質な手法も身に染みて知っているのだから。思わず繋がりが見えてきてさらに探るためにも彼女に話を聞こうと身近な良い場所を聞けば高架下が提案される。その案に乗ると相手が彼女を横抱きにする間、念の為砕けたメモリの欠片を持ってきた袋に入れて証拠として持ち運ぶことにする。傍から見て誘拐だと誤解を招かない為に裏道を使って進み、高架下へとやってくる。ベンチに座らせて様子を見守っていると彼女は目をゆっくりと開いてぼんやりと辺りを見渡す。こちらから話しかけると咄嗟に警戒した姿勢を取られるが気絶前のことを思い出したようで『わ、私また使っちゃって…』と顔を青ざめている。どうやら能力の存在は知っていたようだ。彼女から排出されて砕けたメモリの入った袋を見せながら「君の動きを止めた時、これが出てきたんだ。このメモリに身に覚えはあるかい？」と問いかけて)

……やつら人体実験してやがったのか
(彼女をベンチで休ませれば程なく目を覚まして見知らぬ男二人を見て一瞬身構えるも敵意がないと笑みを向ければ直前の記憶を思い出したこともあって聞き取りが始まる。自分が暴れたことも覚えていたようで相手が欠けたメモリを彼女に見せれば顔はますます青ざめて彼女は俯いてしまう。だが思いつめた様子の彼女は口を開くと『好きな人に会うためにお金が必要で…いいバイトがあるって言われてついて行ったら、ナントカ手術ってのを受けさせてられて、それを首にいれられて…』と経緯を説明を始めて眉間に皺が寄る。何が目的かは分からないがあの宗教団体は金で手当り次第に人を集めてこの小型メモリを埋めているようだ、既に怪力化し暴れて事切れた人達も同じようにして小型メモリを埋め込まれたのだろう。金で人を集めたのは最初から死亡するリスクがあるのが分かっていたからだろう。怒りがふつふつと沸く中で彼女の方をみればその目線がじっとメモリを見つめていることに気がつく。声をかける前に彼女は『使ったらどんどん人間じゃなくなるのは分かってたの。でも、それがだんだん…楽しくなっちゃって。使いたくないのに、使いたくて…』と葛藤するように呟き出す。怪力化した人間が軒並み様子がおかしかったのもこの小型メモリの影響のようで想像以上に例の宗教団体が動いていることに焦りと怒りとを覚えていて)

…メモリの中毒症状だね、メモリの力は感情の昂りの影響を強く受けるから悪循環になっていったのだろう。…君の首に入れられたメモリは何とか排出することは出来た、警察と病院で調べる必要はあるけどもう暴走したくはならないはずだ。
(メモリの破片を見て顔を青ざめて俯いてしまった彼女だったが敵意がないのが伝わったのかぽつぽつと経緯を話し出す。組織の資金は潤沢のようで甘い言葉で集めた人々におそらくコネクタ手術に近いことをしてからメモリを埋め込んだのだろう。ちらりと隣の相手を見ればやはり眉間に皺を寄せていて怒りが抱いているのが伝わってくる。自ら求めてメモリを使うなら自業自得な部分もあるがそんな危険なものを無理やり埋め込むなんて許されることではない。彼女がメモリの方に視線をやりながら零す言葉は典型的なメモリの毒素による中毒症状の一つだ。一度使用すれば力を振るう快感を覚えてしまい、その後の使ってしまった後悔や不安、強いストレス環境から使用するハードルは低くなってしまう。メモリを埋め込まれて作動タイミングを掴めないなら尚更だ。自分達がメモリに関して知識があると分かったのか彼女は自らの服をぎゅっと掴みながら『周りの人も直ぐにおかしくなっちゃったけど私は何とか耐えてたらナニかの適合者だ、って言われて…でも怖かったからあの場所から何とか逃げ出したの。…アレを最後にするつもりだったのに、』と先程の暴走を悔やむようにも怖がるようにも呟く。メモリの使用が分かればそれが自らの意思で無くとも警察への連行は免れない。それを避けたい被害者の心理を読んだ手法だとしたら相当悪質だ。彼女に埋め込まれたメモリは排出されて大丈夫だろうと安心させる言葉を投げかけつつ、ふと何処か引っ掛かる依頼人のことを思い出すと嫌な道筋が頭に浮かんで「そういえば君には姉が居たりするかい？」と問う。すると彼女は目を瞬かせたのち『居るはいますけど…今は海外にアメリカに留学に行ってます』という返答をする。矛盾するような状況だがずっと抱いていた違和感が解消され「…やはりそうか」と言葉零し)

(/再び背後から失礼します。金曜日からなかなかお返事出来ず申し訳ありません。本日はお返事するのが難しそうですのでご連絡させていただきました。お待たせしてばかりですみません。明日はいつも通りお返事できますので、今しばらくお待ちいただければ幸いです。よろしくお願いします。)

(/ご連絡ありがとうございます。返信速度についてはお気になさらず、こうして伝えて頂けるだけでも安心して待つことが出来るのでリアルの方優先してください。ロルも長くなりがちな部分でもあるので無理をなさらずにゆっくりとお返事お待ちしております/蹴りで大丈夫です。)

適合者、か…つまり適合者じゃない人間もいるってことだよな……どうしたフィリップ？
(きっかけは金のためだったにしろメモリを使ったのは彼女の意思ではない。あのまま自分達が遭遇しなければ彼女は他の人物同様事切れてしまっていただろう。そうやって死に至るまでメモリを使ってしまうのも彼女の意思は半分もない、つくづく卑劣な人体実験だと眉をひそめていたが彼女からさらに適合者という単語が出る。彼女が見た直ぐにおかしくなったという人、不適合者はこれまでの例を見るにきっと直ぐに命が持たなくなっているのだろう。その光景を想像すればさらにあの宗教団体への怒りは湧いて相手への被害も合わせればますます放っておけない状況になった。彼女からもっと情報を引き出すべきだろうかと考えたところで不意に相手が突拍子もない質問をする。こちらも彼女と同じく目を瞬かせると呟いた言葉の真意を問うて)

…翔太郎、ここまで彼らが手間と資金を掛けているならばそれだけその適合者が何かに必要ってことだろう。そしてバイトという名目ならある程度プロフィールを集めるのも容易だ。どしてもしその大切な適合者が逃げてしまったら彼らは必死に探すと思わないかい？…例えば身内のふりをして探偵の手を借りたりして
（元々メモリには使用者との相性があるのは知られているが改造が施されているならその範囲は狭く不適合者への毒素の反応も強くなっていることが予想出来る。先例の3人がある程度適合があったのか単に能力の加減を知りたかったのか分からないがそれなりの人に被害が及んでいるのは間違いなさそうだ。そしてそこまでこだわる姿勢と今の妙な状況に繋がりを感じると目を瞬変えた相手の問いに自信のある口調で自分の考えを述べていく。適合者の傾向を調べるためにバイトの名目で履歴書などで情報を集めて実験を決行しているだろう。それだけ苦労して見つけた適合者が逃げてしまったらきっと血眼になって探したいはずだ。相手にとっては信じたくない推察だろうがはっきりとその目を見て依頼人が宗教団体側である可能性を示すと「彼女のキツイ香水に僅かに混じっていたあの匂い…今思えば何処かお香っぽい物だった」と違和感の理由を提示して）

、！…あの依頼人、……そうかあんなに香水がキツかったのはあのお香の匂いを誤魔化すためか。奴らは今もこの子を血眼になって探してるってこと、…
(何かに思い至った様子の相手に話を振れば自信満々の顔がこちらへ向く、どうやら散らばった点が線で結ばれ始めたらしい。彼女が適合者とやらでどこかから逃げ出したなら当然奴らが取る行為はひとつ、さらに奴らが喉から手が出るほど欲しい元教祖様を巻き込んでしまえば再び相手を手に入れられるチャンスが生まれるかもしれない。違和感なく自分達に近づく手段なら悔しいが簡単だ、依頼人のフリをすればいい。相手の説明で何を言いたいのか理解すると軽く息を吐いてから数度頷く。こちらを頼ってくれた依頼人が宗教団体と繋がっていたのはあまり受け入れたくない事実だが、これならば彼女に持った違和感にも説明がつけられる。何よりも決定的なのは香りだ、相手の言うように執拗なまでにキツく付けられた香水の中に混ざる異質な香りはあの礼拝堂で嗅いだお香の匂いと同じだ。自分があの一団に属しているのを悟られないために香水で匂いを誤魔化したのだろうが、それが偽の依頼人である証拠になっている。となれば次に考えるべきは目の前の彼女のことだろう。鳴.海.探.偵事務所に相談するほどに奴らは彼女を欲している、相手を無理やり攫ったことを考えれば何をしてくるか分からない。今回の依頼は捜索から護衛に変更だと思った矢先『いたぞ！』と男の声があがってそちらを見る。目線の先には数人の男がこちらへ駆け寄ってきていて「早速お出ましみたいだな」と彼女の前へ出て)

ああ、更に言えば長居して深く事情を探られるのを避ける為でもあったのだろう。何が目的かは分からないけど彼女が連れ戻されてしまえば更に悪趣味な企みが進んでしまうのは間違いない。…大丈夫、僕たちが君を守るよ。
（こちらが言いたいことは伝わったようで相手が自らを落ち着かせるように軽く息を吐く。依頼人を信じるのが相手のポリシーではあるが今回は何か引っかかる点があったのだろう。更に根拠立てるように香りについて指摘すれば相手が納得するように呟く。単に所属を隠す為ならシャワーを浴びてきたり消臭という手をあっただろうがわざわざ香水を過度につけたのはあまり一緒の空間に居たくないと思わせる事で深く事情や妹について探られボロを出すのを防ぐためだろう。そこまでして彼女を欲する理由も捕まえて何をするのかも分からないが今までの経験上碌なことではないのは確かだ。二人の会話に彼女の顔が怯えたようなものになっているのに気付けば安心させる言葉を掛けるが暗闇の中から男の声があがってぞろぞろとこちらに駆け寄ってくる。立ち向かおうとも思ったがその内の一人が何処かに連絡をする素振りを見せているのに気付くと方針を変え後ろ手にス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンを操作して「翔太郎、大人数相手では流石に彼女を守り切れない。リボルキャリーを呼んだから応戦するフリをしながら着いたらそれで逃げよう」と作戦を耳打ちすると二人で彼女を挟んで守るようにして男達の攻撃を何とかいなして）

…よっぽど彼女を連れ戻して何かしたいみたいだな。……っ、諦めも悪ぃな！
(依頼人の香りについてさらに相手の推理が展開されるとまた数度頷く、あの息の詰まるようなキツイ香りに参ってしまったのは確かでそそくさと依頼人が立ち去ってむしろ助かったと思ったのも事実だ。良いようにされていた事に軽くため息をついていると早速彼女を連れ戻したい奴らがこちらへとやって来る。彼女を守ろうと前へ出るとこの場から引くことを相手から伝えられる、向こうはどこかに連絡をとっていてこの場所は人目に付きにくく狭い空間だ。生身の人間に対して変身するわけにもいかずこちらが圧倒的に不利な状況だろう。ここは彼女の身の安全が第一だ、「分かった」と短く返事をすれば襲いかかってきた男達へと応戦する。数人をノシたところで男のうちの一人が相手を見て驚いた顔で『教祖様…！』と口にする、その瞬間に男は相手へと手を伸ばし始めて反射的に隙だらけのその顎へ拳をお見舞いした。どうやら奴らは相手のこともまだ諦めていないらしい、彼女だけでなく相手もターゲットとなれば早いところ離脱した方が良さそうだ。遠くからリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ,ーが走ってくる音が聞こえると「フィリップ！彼女を連れて先行け！後ろは俺が守る！」としんがりを務めつつ後退を始めて)

な、…っ、分かった。行こう、
(ライブモードにしたス.タ.ッ,グ.フ,ォ.ンと共に彼女に近付けないように応戦していたがそのうちの一人と目が合う。男は驚いた顔をしてすぐ信仰対象を見つけた様にそのときの呼び方をしながら腕を伸びてくると背筋がぞくりと冷えて一瞬動きが止まってしまう。あと少しといった所で相手が男の顎を殴り地面へと転がるとはっと気を取り戻した。どうやら自分のことも諦めてはないらしい。二人で彼女を守るならともかく自分もターゲットになるならまともに応戦するのは悪手だ。ちょうど後ろからリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ,ーの音がして相手から先に行くように指示を受けるとちらり相手を見てから短く返事をして怯えっぱなしの彼女の手を取る。転けないように注意しながらその手を引いてリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ,ーに向かって走る。相手が気を引いてくれたおかげで無事に辿り着けば「ここなら安心だから」と伝えながら中の空間に座らせる。一旦ハッチを閉じて金具部分を掴んで側面部分に立つと男達の方に突っ込むように発進させる。巨大な装甲車が走ってくると慌てて逃げていく男達の中「翔太郎、逃げるよ」と相手に叫びながらギリギリまで身を乗り出して腕を差しのべて)

いいタイミングだ！
(ひとりの男が気づいた事で相手が奴らの教祖様である事がバレてしまい男達の目の色はさらに変わる。目当ての女性と探し求めた教祖様が目の前にいるとなれば躍起になってこちらへと襲いかかってきた。だが正気を失えば失う程に隙を突くのは簡単になる、この場から去っていくターゲット二人に意識を取られた敵を次々に地面へ寝かせていきながらリ.ボ,ル.ギ.ャ.リ.ーが来る時間を稼いだ。やがて背後から聞こえるエンジンの駆動音が大きくなり真っ直ぐこちらへ突っ込んでくると男達は慌てて逃げ始めてニヒルに笑う、背後から相手の呼ぶ声が聞こえて振り返れば伸ばされた手をしっかりと掴んでこちらも側面部へと飛び乗った。さすがに見た事もない装甲車を前に生身の人間ではどうしようもなかったのだろう、逃げるしかない男達を置いてリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ーはそのまま人気のない道を進み始めた。これで暫くは安心だろう、ハッチを開ければ相手と共に中へと乗り込み一息つく。ハッチの中にいた彼女といえば息付く間もなく非現実的な事が起こってただただ呆然としている。しかし二人の呼吸が整ったところで『あの、教祖様って…？』と恐る恐る質問がなされた。何か引っかかることでもあったのだろう、相手をちらりと見てから地,球,の.本.棚.等詳しい事は伏せつつ相手も適合者に近い存在だったこと、それ故に洗脳され教祖として崇められていたことを説明し)

…恐らく僕の件が上手く行かなかったから今度は選別して君のように能力に適合した者を信仰対象にしようとしているのだろう。
(相手の手をしっかり掴むとそのまま勢いよく引っ張って自分の隣に引き寄せる。それから人気の少ない道を進んで男達を無事に撒いたことを確認するとハッチを開けて中に乗り込んだ。先に中にいた彼女は非現実的なことに呆然としていて何が何だか分かっていない様子だ。ある程度息が落ち着いた所で彼女からもっともな質問がされる。相手から視線を受けると小さく頷いて続きを促す。正体に関する所は伏せて相手が 以前起こった事を説明すると近い境遇であった親近感が沸いたのか少し肩の力が抜けたのが分かった。だが話を改めて纏めると地.球.の.本,棚ないし自分が今の自体の原因のようにも思えて視線が伏せられていく。その間彼女は思い出したように『そういえばあの人達も教祖様の代わりがどうとか言ってた…！』と教えてくれた。薄らとした意識しか無かったがあの場所で聞いた話と照らし合わせると強い能力が欲しいというよりも記憶を引き出せる力を崇めたいのだろう。相変わらず悪趣味な嗜好に眉を顰めつつ「どうにか彼らの野望を阻止する方法を考えなくては」と零して)

……つまりフィリップを教祖にできねぇから代わりを探してあの小型メモリを手当り次第に使ってたわけか。聞けば聞くほど自分勝手な奴らだぜ。…今は彼女を保護できても奴らがまたメモリを彼女に使ったら意味がねぇ。なら、本陣を叩くしかねぇだろ
(奴らはよっぽどホシを信仰したいらしい、同じくよっぽど相手に教祖様になって欲しいのだろう。代わりをたてようとするほどに、だ。ちらりと相手をみやれば顔が俯いている、きっと自分のせいで彼女が危険な目にあっていると思っているのだろう。だが悪いのはどう考えてもあの宗教団体だ、相手と彼女と、実験に使われた全ての人々を自分達の目的のために都合よく使っているだけなのだから。怒りを滲ませながら暗に原因は奴らだと口にしつつ、あの宗教団体を止める方法を考える。だがやれるべきことはひとつだろう、彼女を今守れてもまたいつ脅威が降りかかるか分からず、それこそさらなる代わりを見つけるために人体実験を続けるかもしれない。となれば諸悪の根源、あの小型のメモリを生み出している施設を叩かなければならない。出処を知るなら簡単だ、彼女の方を向けば「あの小型メモリ埋め込まれた場所分かるか？」と問いかける。彼女は頷くと歓楽街のとあるビルの名前をあげる、高額バイトの受付窓口がその中にあるらしい。人が行き交う中に拠点を構えるとは大胆だが人を集めるのには効率的だろう。場所が分かればあとは乗り込むだけだ、「ならそこに正面突破か、俺がバイト志願者ってことで潜入するかだな」と口にすれば意見を伺うように相手の方を見て)

ああ、今度こそきっちり止める。…せっかくなら彼らの信仰心を利用するのはどうだい？誰か一人幹部に近い人物を呼び出して僕と君を内密に最深部まで案内させる。彼らも教祖様の教えなら団体の命令より聞いてくれるはずだ。
（あれだけ強い執着と信仰心を持っていれば相手の言う通り彼女を保護するだけでは解決には至らない。これから更に被害を広げない為にも根っこから何とかしなければならないだろう。相手の言葉に頷き彼女に場所を聞けば目的地はすぐに分かった。歓楽街ならば今も関係ない人たちを集め続けているかもしれない。問題はどうやってその施設を叩くかだが相手の提案した策は人数や手口が読めない分リスクが高い様に思う。少し考え込んであの男たちの異様な様子を思い出すとそれを逆手に取る作戦を提案する。抵抗して逃げるからこそ彼らは追いかけてくるが彼らが望む通りの教祖様として振舞えばあの場では何よりも強い立場と権力になり得るはずだ。勿論安易に身元を明かせば大変なことになるのは目に見えているが中心で動く人物のうちの一人に秘密の教えだと甘い言葉を掛ければこちらの命令を優先してくれる可能性は高い。勿論自分の身を明かすリスクはあるが彼女からメモリの埋め込みを指示した人物は青のブローチをしていたという情報を教えて貰えば準備は整っていき反応窺うように相手を見て）

…確かにその方がリスクは少ねぇし、確実に小型メモリを作ってる場所が分かるな。あいつらはお前に手を出せねぇだろうし、その作戦でいくか
(力技かひとりで潜入するか根城は分かっても内部事情が分からない以上は手を出しにくく考えを巡らせていると相手からもうひとつ別の作戦を提案される。あの宗教団体は何より相手が教祖として戻ってくることを待ち望んでいる、その欲求を満たすのはなかなかに良い作戦だ。ひとりを選んで、というのも教祖様に優遇され思考が鈍るのに加えて秘密裏に進められて目的を果たしやすい。相手が言えば喜んで中枢にも案内してくれるだろう。こちらは相手の従者とでも言っておけばいい、ニヤリと笑みを浮かべると相手の作戦に同意した。彼女は安全を考えてリ.ボ.ル.ギ.ャ,リ.ーに潜んでおいてもらうのが良さそうだ、どちらにせよ相手が表へ出れば奴らの注目は相手へと集中するだろうが。となれば幹部に引き合わせられるような教祖に声を掛ける事が必要だ。その宛は既についている、幹部に直接接触しているような、例えばお香の香りが染み付くほど熱心な信者で偽の依頼をするために相手がいる事務所へ赴くことを命じられるような人物、そんな人間には心当たりがあって「なら、あの依頼人に連絡しなきゃな」とまた悪い笑みを浮かべていて)

なるほど、その手が合ったね。…じゃあ僕たちはこの件を片付けてくるからもう少しだけここで待ってて欲しい
（彼らの狂信的ともいえる信仰心を利用した策を提案すれば相手がにやりと笑う。都合よく信仰対象に自分を祀り上げようとするならそれを利用するまでだ。その重要な起点になる信者の選別だが相手から依頼人の名前が上がると盲点で感心したようにこちらも薄い笑みを浮かべる。あの時しっかり目があったから自分の存在は良くしっているはずだ。そうと決まればリ.ボ.ル.ギ.ャ.リーを近くの空き地に止めてから彼女に待機をお願いする。こくりと頷くのを見ると何かあったら連絡してくれと電話番号を教えてハッチから降りた。これで彼女の身は安全だとして次は依頼人との連絡だ。連絡先を交換した相手のス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンから依頼人に電話を掛けると『探偵さん、妹は見つかりましたか？』と依頼を受けた時と変わらない口調で問われる。それには答えず「少しメモリのことで用があるんだ」と切り出せば電話口で彼女が息を飲んだのが分かった。相手ではなく自分の声で別件であることを匂わせてから「今君達のやってることにちょっと興味が湧いてね、だけど前みたいに騒がしいのは苦手だから他の誰にも内緒で君だけに案内して欲しい。頼めるかい？」と特別感を込めて言葉を続けると『は、はい。もちろん！ご案内します！』と歓喜するような声が聞こえてくる。上手く食いついたことに相手を見て小さく笑うと迎えに行くという彼女に待ち合わせ場所を近くの路地を指定して再度他言しないことを約束してから電話を切り「潜入開始といこうか」と声を掛けてその路地に移動して）