相乗りで何処までも 【 〆 】

ちゃんと覚えてるみてぇだな。……なんか、雪があるとさらに幻想的だ
(相手と目線を交え少々引っ張られるようにして階段を登っていく。音もなく雪が降る中階段を一段登る毎に新雪を踏みこんで登っていけばやがて目の前に神社が広がる。そのまま鳥居へと近づけば相手がここを通る時の作法を確認していて頷き返した。前回相手にとってはここが初めてのお参りでそれならば初詣だと冗談混じりに言ったのが懐かしい。こちらも一礼して鳥居をくぐる、境内は前回もひっそり佇んでいる印象を受けたが音を吸収し一面白に染める雪に包まれているとさらに人の寄り付かない神聖な場所に見えて、澄んだ空気をゆっくり吸い込み吐き出した。神社にやってきたのならまずは参拝だがそのためにもやらなければならない事がある。未だ手は繋いだままポケットに入れているがその手を手水舎で清めなければお参りにはいけない。手水舎に近づき静かに流れ出る水を暫し見つめた後「気合い入れろよ、フィリップ…」と神妙な面持ちで言えば両手をポケットから出して)

確かに特別な場所って感じがするね。…、ああ。…つめたっ、
（一連のレクチャーを受けたのもあって前回の様な緊張や未知への好奇心もそれほどなく落ち着いた気持ちで鳥居をくぐる。神社は元々独特の雰囲気を携えているが人気もなく雪が積もって白くなっていればより神聖な空気を強く感じて同意するように頷く。早速目的である参拝をしようと思うがその前に大きなハードルがあって相手と共に手水舎の前に来るとそこで立ち止まってしまう。この雪が降り積もる寒い中で流れている水がどれだけ冷たいかはすぐに想像がつく。暖を取っているこの手を離してその冷たさに晒されることを考えればなかなか踏ん切りがつかない。相手から神妙な面持ちで声がかかると短く返事をしてポケットから出した手を解く。手早く済ませてしまおうと柄杓を手に取り水を汲み左手にかける。予想以上の冷たさが襲い掛かってくれば小さく体は震えて思わず声をあげる。ここでやめたくなってしまうが神様にお願いする以上何とか堪えてもう片方の手も順に清めていく。持ち手まで清めた頃には完全に手は冷え切ってしまってハンカチで水分を拭いながら「冬の参拝は試練のようだ…」としみじみ呟き）

っ、…やっぱ冷てぇ……ここは耐えた分だけご利益があるってことにしとこうぜ
(ポケットから手を出した時点で冷たい風があたりなかなかの寒さだったが、繋がっていた手が離れて熱源さえなくなってしまえば指先は一気に冷えていく。この状態でさらに冷たい水で手を洗うのだからもはや修行のような行為だ。柄杓を手に取り水を汲むと片手へと水をかける、指先にかかる水は想像以上に冷たくて思わず息を詰まらせた。だがこれも参拝してお礼を伝えるためだ、呟きを零しながらも反対の手と柄の部分を洗うも終わる頃にはすっかり指先の感覚がなくなっていた。ハンカチで手を拭くもすっかり指先はかじかんでしまっている。これを乗り越えてこそ得られるものがあるはずと勝手にこじつけながら再び相手の手を取るもやはりそこはすっかり冷たく、指がしっかり動かせずに緩くだけ手を握ると本殿の方へと向かう。階段を数段あがり相手の方をみやると「参拝の方法はばっちりか？」と鳥居をくぐる時と同じく作法を覚えているかと問いかけて)

ちゃんと覚えているよ。ニ礼ニ拍手一礼だろう？
（冬の冷たい水で手を清めれば一気に冷え切ってしまって指先がかじかむ。それらしい事を言いながら手が取られるも触れる相手の手も十分に冷たくて軽く握り返しながら本殿へと向かった。参拝について問われると得意げな表情をしながら問題ないと返す。あの時は説明を受けながら見様見真似でやったものだが一通りの動作は頭に入っている。本殿に進み賽銭箱の前に立てば準備していた五円玉を財布から取り出す。賽銭を投げ入れ鈴緒を振れば小気味良い鈴の音が辺りに響いた。作法に則り姿勢を正してから深いお辞儀を二回、胸の高さ辺りで二回手を打ち鳴らす。そのまま両手を合わせて目を閉じる。この場所で言いたいことは沢山あって前回の願いを叶えてくれて見守ってくれていることへの感謝、再び相手と共にこの地に訪れることが出来た報告、これからも風.都と相手を守っていく誓いと今回のお願い事などを心の内で唱えていればかなり長い間手を合わせることになり、最後に目を開いて一礼すると相手の方を向いて）

間違えちゃいけねぇところだからな、念の為の確認だ
(参拝の仕方を問うもこちらも相手はばっちりのようで自信満々の返事が返ってくる。この様子ならば問題なく参拝ができそうだ。準備万端の相手に返事をした後に階段を登りきりいよいよ賽銭箱の前に立つ。こちらも五円玉を賽銭箱へと入れると鈴緒を手にして振ってから深くお辞儀を二回して二回手を打ち鳴らすと目を閉じる。伝えたいことは山ほどあるが、まずはここに無事また来れた事への感謝を述べ、これからも変わらず風.都.と何よりも大事な相手の大切なものを守っていくことを誓う。そしてまたいつか再びここへ訪れる事を心の中で宣言した後に、それまでにまた相手の事を守って欲しいと、その他の事もあわせて願っておいた。自分たちの他に誰もいないならとゆっくりと時間をかけてそれらを唱えると一礼してから目を開ける。隣を見てみれば相手もほとんど同じタイミングで参拝が終わったようだ、お互いここで伝えたい事は山ほどあったようで「随分長かったな」と自分のことは棚にあげて言い)

伝えたいことが沢山あったからね、少し欲張り過ぎたかもしれないけど神様も許してくれるだろう、
(目を閉じてずっと考えていた神様に伝えたい事を唱えると瞼を開ける。ほぼ同じタイミングで隣の相手が一礼してこちらを向けばこんな所までお揃いであることに笑顔が零れた。前よりも長く目を閉じていたことに言及されると色々な事を唱えたからと告げる。前回との間に色々あったのもあって感謝とお願いを沢山してしまったがこれでバチが当たる程神様も狭量ではないだろう。再び相手の手を取って階段を降りていく。ひとまず今日一番のやりたい事はこれで達成した訳だがもう少しこの特別な空間に居たいと思った。手を緩く繋いだまま辺りを見ると社務所が目に付いてそちらに向かいながら「お守りもココで貰った物だったね」と懐かしむように呟いて)

俺もいろいろ言っちまったが……まぁ大体同じ内容だろうし、二人分って事で聞いてくれるだろ
(相手に揶揄いまじりに問いかけてみれば相手もこちらと同じくこの神社にいる神様に言いたい事が山ほどあったようだ。前回は何をお願いしたか聞いたものだが、きっと二人並んで神様に言った事は大方同じようなものだろう。それならばこのお揃いの願いをきっと神様も聞き入れてくれるはずだ。こういうものはそう考えたもの勝ちな部分もある、良い方向へと思考を持っていきつつ社務所へとよれば相手が懐かしむようにお守りのことを口にした。互いに願いを込めて送りあった特別なお守りの事をこちらも思い出していると「せっかくだし今持ってるお守りは返して新しいのにしねぇか？」と持ちかけて)

ふふ、違いない。…そうしようか、新しいのもまた君が願いを込めてくれるのだろう？
(ドライバーが無ければお互いの思考は共有出来ない。だがきっと今願ったことは大体同じだろうと言うことは容易に推測がついて相手もそれを断言すれば緩く微笑んだ。二人で願ったならば神様も多少多いお願いも聞いてくれるはずだ。社務所によってお守りのことを話題に出すと相手から思わぬ提案をされる。確かにお守りの効力というのはある程度決まっているらしく新しいのにするにはいい機会だろう。懐から貰った藤色のお守りを取り出す。これに力を貰ったことも守られたであろうことも何度もあって少し古びた特別なお守りを手放すのは惜しい。じっとお守りを見つめていたが考えが決まれば同意の返事をする。せっかくの機会というのもあるが色々変化した今の想いを改めて込めたお守りが欲しいし渡したい。願いを込めるのは当然とばかりに話を振れば早速カウンターの品々を見る。そこには見覚えのある藤色のお守りと自分の渡した若葉色のお守りがあって同じ物を授かる事が出来そうだ。手元のお守りを握りしめ「…今まで力をくれてありがとう」と感謝の気持ちを込めるように呟き、端に置いてある納札所に返納して)

…当然だ。そうじゃなきゃ世界にひとつのお守りにならねぇからな
(こちらもジャケットの内ポケットから肌身離さず持っている若葉色のお守りを取り出す。薄いフィルムに入っているおかげでお守り自体はまだ綺麗ではあるがよく動くジャケットに入っていたせいか外側のフィルムはそこそこヨレてきていた。願いを込めるのが規定事項だと聞けば少々照れくさい気もするがあれが無ければ二人だけの特別なお守りにはならない。相手の手にある藤色のお守りと自分のものとに順に目を向ける、数え切れない困難を共に越えてきた特別な品だけに少々名残惜しい気もするが、再びこの神社に訪れられたことを踏まえてまた新たな気持ちで相手にお守りを送りたい。こちらも心の内で礼を言いつつ納札所にお守りを返納する。そしてカウンターの方へ向かえば新たなお守りを手にする、選ぶのはもちろん藤色のお守りだ。お金を巫女さんへ収めて相手の方に向き直る、あの時は相手にお返しをしなければと勢いがあったが今はそれはなく、相手と視線を交えるも照れくさそうに笑ってしまう。だがその視線を逸らす事はなくて両手で優しくお守りを包み込むとそれを胸に当て目を瞑る。そのまま暫く真剣な表情で黙ったままお守りへと願いを込めて)

……僕の君への想いと願いをしっかりとお守りに込めておいた。この地球にひとつだけの君だけのお守りだ、受け取ってくれ
(願いを込めることに関して相手からも同意を得られると思い出深いお守りを手放す決心がついた。感謝の気持ちを込めて返納すれば相手と並んで新しい若葉色のお守りを手に取って代金を巫女さんに渡す。視線が交わると今から二人でする事を考えて照れ臭そうに笑い合う。これからこの手元のお守りがいつも相手の側にいて守ってくれることになる。ならばその分沢山強い想いを込めなくては。お守りを両手で包みこむように握り目を閉じる。相手が大きな怪我や病気をしない事、厄介な物や人に巻き込まれないこと、相手が望むように探偵として街を守れること、ずっと幸せで笑顔で居てくれること、そしてこれからも自分と居てくれますようにと真摯な想いも自分本意な願いも一緒くたにしてお守りに込めるとゆっくりと目を開ける。そのまま相手の方に視線を向けると真っ直ぐとその瞳を見つめ、込めた気持ちについて告げながら藤色のお守りを差し出して)

……あぁ、大切にする。____フィリップ、俺もいろいろと願っといたが……まとめると、また二人でここに来れますようにって思い込めといた。俺代わりにずっと持っててくれ
(互いの手に相手へ送るお守りが収まって真正面に向き合う。照れ笑いを浮かべるもここに込める想いは真剣なものだ。目を閉じて手の中にあるお守りへと集中する。何よりもこの先相手が無事に健やかに過ごせること、いつまでも笑顔でいられること、襲い来るものから守られるようにあること、そして風.都の探偵である時もそうでない時も自分が隣にいられること、思いつく限りあらゆる願いをお守りへと込めた。最後には自分の願望も入ってしまったが相手を見守るお守りに託す願いならこれだけは外せない。目を開くと相手もその目を開いていて視線が交わる、真っ直ぐな目を逸らさずに見つめていればお守りが差し出された。お守りを受け取り暫くながめる、相手が願いを込めた正真正銘この世界にたったひとつだけのお守りだ。貰ったお守りを手にしたまま差し出されていた手をすくい上げるように取るとこちらのお守りを相手の手のひらに乗せ、そのまま両手で相手の手を包み込む。そしてこちらも真っ直ぐな目線を向けながらお守りを送る、二つのお守りが互いを守るよう願いを込めてぎゅっと包み込む手に力をこめて)

こちらも願うことは同じのようだ。……ああ、大切に肌身離さず持ち歩くよ。 ありがとう、翔太郎
(相手と視線を交えると真っ直ぐその目を見ながらお守りを渡す。相手は暫くそれを見つめていて大切にする事を約束されると擽ったいようで暖かな気持ちが胸に広がって笑みを見せる。差し出していた手を取られるとその上にお守りが乗せられて両手で包まれる。冷えてしまっていたはずなのにじんわりと相手の体温と想いが伝わってくるようで自分も下からもう片方の手を添える。きっとこのお守りに託した想いも似た様なものだろう。願掛けではあるが時に人の想いが理屈を超えることを知っている。このお守りだってこれだけ相手を大切に思う気持ちを込めたのだ、きっと力を貸してお互いを守ってくれるだろう。こちらからもぎゅっと力を込めて想いを送ると改めてお礼を告げた。そっと手を離して藤色のお守りを幸せそうに見つめると無くさない様にしっかりとポケットにしまい込む。「これで何があっても大丈夫そうだ」と嬉しげに微笑んで)

そうしてくれ。こっちこそ、ありがとなフィリップ
(こちらが相手の手を包み込めばもう片方の手も添えられて二人の手で二人のお守りを包む。参拝の内容も同じとなればお守りに込める願いも同じようで、相手の言葉に自然とこちらも笑みを見せる。きっとこのお守りが自分が相手のそばに居られない時に守ってくれるだろうし、相手が隣にいない時には相手を想うものになるだろう。二人で一人の探偵は例え離れている時であろうと常に隣にいる、その証明であるこのお守りをこれまで通り肌身離さず持っていなければ。手が解かれて相手が幸せそうにお守りを見つめる、その様子に言いようのない幸せを感じながらこちらも若葉色のお守りをジャケットの内ポケットへとしまった。嬉しそうに微笑む相手に「あぁ、またここに戻って来れるようにきっと見守っててくれるはずだ」と頷き返してちらりと本殿の方を見やった。相手の手を取って繋ぐと再びこちらのポケットに二人分の手を入れて雪が降る中鳥居の方へと歩き出して)

(/お世話になっております。この後なのですがあらかた一日目にこちらのやりたい事はやってしまいまして、神社へのお参りも終わりましたし、もし検索様がやりたい事も終わっていれば帰りの場面まで一気に飛んでも良いかなと思うのですがいかがでしょう？)

＿＿…あらかた街の方も見て回ったしアキちゃんのお土産は買うことは出来たけど他に行きたい所はあるかい？
(それぞれにお守りを贈り合うことも出来てこの地の神様に挨拶も済めば再び手を繋いで歩き出す。帰りも鳥居にお辞儀をしてから神社を後にした。そこから街の方に向かう途中白い猫がちらりと視界の端を走っていったがもしかしたら二人の様子を見に来てくれたのかもしれない。それから温泉街の方に向かって気になった物を食べ歩きをしたり手湯などを体験したりして満喫した時間を過ごした。それから所長にリクエストされていたお土産も忘れずに購入する事が出来ればひとまずはやるべき事は済んだ。すっかり雪の道を歩くのにも慣れてメインの道に戻ってきた所で相手の方を向けばやり残しはないかと尋ねて)

(/お世話になっております。こちらもやりたいことは済んだかなと思いましたので帰る時間ぐらいまで経過させて頂きました。その間にした事も好きに決めて貰って大丈夫です。残り僅かになりましたが帰るまでが旅行ですので引き続きよろしくお願いします！/蹴り可能です。)

これでアキコにスリッパ食らわずにすみそうだな。いや俺の方は満足だ。それに…そろそろ時間みてぇだ
(二人手を繋いで神社を後にして温泉街の方へと向かう、最初こそ人気のなくシンとした道を歩いていたが徐々に周囲は活気づいていく。温泉街へたどり着き人々が行き交うようになると一段寒さが和らいだ気がした。そこから目に付いたものを食べたり再び温泉の温かさに浸ったりしたあと、所長へのお土産もバッチリ揃えてメインの道へと戻ってくる。土産話も土産も揃えればさすがに所長様も満足してくれるだろう。ひとしきりやる事は済んでやり残しを聞かれるも十分に満喫できたと返事をする。ちらりと通りに掲げられた時計を見やればこの温泉街を離れる時間が近づいている。相手の事だけを考える幸せな時間を思えば名残惜しくはあるが、距離のことを考えるとそろそろ駅へと向かった方が良さそうだ。繋がった手に僅かに力を込めて目を合わせると「よし、俺たちの街に戻るか」と声をかけて駅の方へと歩き出し)

本当だ。ああ、あまり長く離れていては風.都に嫉妬されてしまうからね。
(一通り満喫してから相手に尋ねると十分だと返事がされて視線が時計の方を向く。時計の針は帰りの列車の時間に近くを刺していてこの街にいるタイムリミットも近いようだ。普段見慣れない雪に囲まれ名物を満喫し相手のことだけを考える事が出来る特別な場所と時間が終わってしまうことに名残惜しさはあるが今回の様にまた来る機会があると思えば前回ような寂しさは無い。繋がった手に僅かに力が篭れば視線を向けちょっぴりキザな言い回しをしながら駅の方向に歩き出す。メインの通りの賑わいと雪の景色をしっかりと記憶に残しながら進んでいけばあっという間に駅に到着してしまった。一度街の方を振り返って深く呼吸をする。硫黄の匂いと冬特有の静かな音と頬に触れる冷たい空気、そして街を染める真っ白な景色といった非日常な数々を最後にもう一度しっかりと実感すると「行こうか」と声をかける。チケットで改札を抜けホームに降りると帰りの列車が来るのを並んで待って)

それ、前に俺が言ったのじゃねぇか。お前もハードボイルドの何たるかが分かってきたんじゃねぇか？
(相手がこちらに視線を向けながらキザな台詞を口にする、それは前回の旅で言った覚えがあって思わず吹き出してしまった。こちらも冗談めかしたことを言いながら駅への道を歩いていく。程なくして駅へとたどり着くと相手が温泉街の方を振り向いて、こちらも最後の別れのために通りの方へと目をやる。いつか見ようと言った雪景色を見る約束とコタツを存分に満喫する約束と、二つの約束のために再びやってきた温泉街だったが新たな思い出と前回の旅の思い出をより強くするような思い出と、今回も様々な時間を過ごすことが出来た。穏やかな幸せをたっぷりと満喫して相手の事を思う存分見つめて互いの祈りを込めたお守りを交換した今回の旅も想像以上に良い旅になった。雪景色をしっかりと目に焼き付けたあと相手の合図で改札へと向かう。ホームで暫し待つとラッピングされた電車がやって来て相手に目配せして乗り込む。行きと同じく相手に窓側の席を譲って座れば、アナウンスのあとに電車は風の街へ向けて走り始めて)

…来たのは二回目だけど前回とは違う楽しみ方が出来たね。冬の温泉街も悪くない
(前回相手の言っていた言葉を拝借して見せればちゃんと覚えがあったようで隣で相手が吹き出す。やはりこういう台詞を言ってみようとしても相手の影響が強くてつい似たような事を言ってしまう。そんな会話をしながら冬の温泉街をしっかりと目に焼きつければその手を引いて駅の中に入っていく。ホームで寒さの中待っていれば帰りの電車がやってきて相手に続いて乗り込む。窓際の席を譲られると素直に奥に詰めて座席に座る。発車のアナウンスが流れると電車はゆっくりと動き始め温泉街を離れていく。窓から遠ざかっていく街をじっと眺めていたが段々と小さくなってやがてトンネルに入って見えなくなってしまえば今度は相手の方に視線を向ける。前回と同じ場所で旅行や温泉の良さは十分に知っていたはずだが冬ならではの良さと一棟貸切の宿のおかげでまた違う良さを満喫することが出来た。充実した2日間を過ごした満足感に軽い笑みを浮かべながら感想を告げる。二人の席の間で繋いだ手を指を絡ませるような繋ぎ方に変えて軽く力を込めながら「想像以上に寒かったけどね」と茶化すように言葉遣い続けて)

あぁ、雪国の温泉もコタツも最高だっただろ？確かに、あの寒さは慣れなかったな
(指定された席につきアナウンスの後に列車は駅を離れ温泉街から遠ざかっていく。窓から見える白に染まった温泉街は相変わらず幻想的でだんだんと遠ざかる風景を見ながら今回出来た思い出を脳内に描き出していた。やがて列車はトンネルへ入り窓の外は真っ暗になる。そのタイミングで相手がこちらへと向く、背景に一面の白を背負って雪が降る中でこちらを向く相手の姿もしばらくはお預けのようだ。相手は今回の旅も満喫できたようで何よりだろう、こちらも笑みを浮かべて返事をするも鋭く刺さるような寒さに話題が及べば笑いながら同意を示した。宿に引きこもっていたせいもあるがあの寒さだけは慣れる気がしない。神社で手を清めた時は本当に修行のようなものだった。だが悪いことばかりではない、指が絡まった手に力が籠るのを感じると「おかげでこれがねぇと歩けなかった」と冗談めかしていいながらこちらからも軽く繋がる手を握り返して)

君の言う通り恐ろしい魔力を秘めていたよ。 外にいる時は殆ど繋ぎっぱなしだったね、
(この街に来るきっかけだったコタツと冬の温泉もその魅力を相手から事前に聞いて期待をしていたがどちらもそれを超える心地良さがあった。特にこたつはガレージにでも置いた日には出たくなくて仕事にならないかもしれない。感想を告げながら手を繋ぎ直すと相手が温泉街の寒さについて笑いを零す。雪の白さは綺麗だったが経験したことの無い突き刺すような寒さだった。そんな理由もあって繋ぎっぱなしだった手を今も握り返されると暖かな気持ちが胸を満たす。風.都では出来ないと分かっているから他の事を考えずに繋いでいられる時間が幸せだった。電車はトンネルの中に入り外は真っ暗だ。帰りのピークと思われる時間から少しずらしたおかげで辺りの見える範囲に他の客の姿が見られないのを確認すると今だけと心の内で言い訳すると少し距離を詰めてから相手の肩に寄りかかる。くっついた状態でいながら「…またあの街でも他の場所でも君と旅行に行きたい」と望みを口にして)